IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カゴメ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-穀類加工品含有食品及びその製造方法 図1
  • 特開-穀類加工品含有食品及びその製造方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047736
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】穀類加工品含有食品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/135 20160101AFI20240401BHJP
   A23L 19/00 20160101ALI20240401BHJP
【FI】
A23L7/135
A23L19/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153395
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000104113
【氏名又は名称】カゴメ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 淳史
(72)【発明者】
【氏名】岡本 彩椰
【テーマコード(参考)】
4B016
4B025
【Fターム(参考)】
4B016LG06
4B016LG10
4B016LG11
4B016LP08
4B016LP11
4B016LP13
4B025LB01
4B025LE01
4B025LE05
4B025LG32
4B025LG42
4B025LG44
4B025LP05
4B025LP12
4B025LP15
(57)【要約】
【課題】本発明が解決しようとする課題は、食感が豊かな穀類加工品含有食品を提供することである。
【解決手段】前記課題を解決するのは、穀類加工品含有食品であって、当該食品が含有するのは、少なくとも以下の加工品である:
第一の加工品、第二の加工品、及び第三の加工品、ただし、第一の加工品、第二の加工品、及び第三の加工品の各加工品のかたさの平均値の差は互いに0.5N以上であり、前記、第一の加工品、第二の加工品、及び第三の加工品のうち、少なくとも何れか一つは、穀類の加工品である。
ここで、好ましくは、第一の加工品のかたさは、10.0N~22.0Nであり、第二の加工品のかたさは、3.0N~16.0Nであり、第三の加工品のかたさは、2.0N~13.0Nである。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀類加工品含有食品であって、当該食品が含有するのは、少なくとも以下の加工品である:
第一の加工品、第二の加工品、及び第三の加工品、
ただし、第一の加工品、第二の加工品、及び第三の加工品の各加工品のかたさの平均値の差は互いに0.5N以上であり、
前記、第一の加工品、第二の加工品、及び第三の加工品のうち、少なくとも何れか一つは、穀類の加工品である。
【請求項2】
請求項1に記載の穀類加工品含有食品であって、前記、第一の加工品、第二の加工品、及び第三の加工品のかたさは以下の通りである:
第一の加工品のかたさは、10.0N~22.0Nであり、
第二の加工品のかたさは、3.0N~16.0Nであり、
第三の加工品のかたさは、2.0N~13.0Nである。
【請求項3】
請求項2に記載の穀類加工品含有食品であって、前記第一の加工品、及び第二の加工品の、穀類加工品含有食品における含有割合の和は、70重量%以上である。
【請求項4】
請求項2に記載の穀類加工品含有食品であって、前記第一の加工品の、穀類加工品含有食品における含有割合は、50重量%以上であり、前記第二の加工品の、穀類加工品含有食品における含有割合は、10重量%以上である。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の穀類加工品含有食品であって、前記第一の加工品、及び前記第二の加工品は、大豆の加工品であり、当該第一の加工品、及び当該第二の加工品は、形状が互いに異なる。
【請求項6】
請求項5に記載の穀類加工品含有食品であって、前記大豆の加工品は、組織状大豆タンパクである。
【請求項7】
請求項5に記載の穀類加工品含有食品であって、前記第一の加工品の形状は、粒状であり、前記第二の加工品の形状は、扁平状である。
【請求項8】
請求項2に記載の穀類加工品含有食品であって、前記第三の加工品の、穀類加工品含有食品における含有割合は、1重量%以上、かつ、20重量%以下である。
【請求項9】
請求項8に記載の穀類加工品含有食品であって、前記第三の加工品は、ゲル状物を凍結乾燥したものである。
【請求項10】
請求項9に記載の穀類加工品含有食品であって、前記第三の加工品が含有するのは、少なくとも、野菜又は果実の加工品である。
【請求項11】
穀類加工品含有食品の製造方法であって、それを構成するのは、少なくとも以下の工程である:
混合:ここで混合されるのは、少なくとも、第一の加工品、第二の加工品、及び第三の加工品であり、
第一の加工品、第二の加工品、及び第三の加工品の各加工品のかたさの平均値の差は互いに0.5N以上であり、
前記、第一の加工品、第二の加工品、及び第三の加工品のうち、少なくとも何れか一つは、穀類の加工品である。
【請求項12】
請求項11に記載の製造方法であって、前記、第一の加工品、第二の加工品、及び第三の加工品のかたさは以下の通りである:
第一の加工品のかたさは、10.0N~22.0Nであり、
第二の加工品のかたさは、3.0N~16.0Nであり、
第三の加工品のかたさは、2.0N~13.0Nである。
【請求項13】
請求項12に記載の製造方法であって、前記混合を構成するのは、以下の工程である:
第一の混合:ここで混合されるのは、第二の加工品、及び第三の加工品であり、これによって得られるのは、第一の混合物であり、
第二の混合:ここで混合されるのは、前記第一の混合物、及び第一の加工品である。
【請求項14】
請求項12に記載の製造方法であって、前記第一の加工品の、穀類加工品含有食品における含有割合は、50重量%以上であり、前記第二の加工品の、穀類加工品含有食品における含有割合は、10重量%以上である。
【請求項15】
請求項11又は12に記載の製造方法であって、前記第一の加工品、及び前記第二の加工品は、大豆の加工品であり、当該第一の加工品、及び当該第二の加工品は、形状が互いに異なる。
【請求項16】
請求項15に記載の製造方法であって、前記大豆の加工品は、組織状大豆タンパクである。
【請求項17】
請求項12に記載の製造方法であって、前記第三の加工品の、穀類加工品含有食品における含有割合は、1重量%以上、かつ、20重量%以下である。
【請求項18】
請求項17に記載の製造方法であって、前記第三の加工品は、ゲル状物を凍結乾燥したものである。
【請求項19】
請求項11又は12に記載の製造方法であって、前記第三の加工品が含有するのは、少なくとも、野菜又は果実の加工品である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明が関係するのは、穀類加工品含有食品及びその製造方法である。
【背景技術】
【0002】
現在、穀類や種実、及びドライフルーツを含有する穀類加工品含有食品(シリアル)は、手軽に栄養補給ができるとして好まれ需要があり、市場において複数の商品が販売されている。
穀類を含む複数の具材を含有するシリアル食品においては、具材同士が張り付いて食感や品質を損なわないような技術が提案されている。例えば、特許文献1には、野菜又は果実の真空凍結乾燥食品と、粒状穀類の真空凍結乾燥食品とにおいて、何れかに調味液を含侵後、それぞれを混合し、さらに真空乾燥することによりスナック食品を製造する方法が開示されており、かかる方法によりスナック食品同士の貼り付きを防止できることが記載されている。
また、複数の具材同士を接着させて成形したシリアルバーも、良好な食感が得られ手軽に栄養補給できるものとして提案されている。例えば、特許文献2には、具材入り成型食品の製造方法であって、成型を容易にし、かつ、種々の具材と蛋白成分を補給可能とするため、粒状又はフレーク状具材と蛋白粉を混合し、当該混合物と糖液をさらに混合し、これを非焼成で所定形状に成型することが開示されている。
【0003】
シリアル食品には、穀類の他に野菜や果実の加工品も具材として配合されることもある。かかる加工品としては、野菜や果実を、油調したり乾燥したものなどがある。
【0004】
特許文献3には、すり潰された野菜または果実と結着剤の混合物を、加熱、成型、冷却、真空凍結乾燥することにより、食べやすく心地よい食感の真空凍結乾燥菓子を製造することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開第2015-188418号公報
【特許文献2】特開第2018-082670号公報
【特許文献3】特開第2016-013113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来市場にある穀類加工品含有食品は、いずれも食感が単調であることに本願発明者らは着目した。
そこで、食感を豊かにすることで、穀類加工品含有食品をより美味しく、また喫食を楽しくすることができると考えた。
かかる状況に鑑みて、本発明が解決しようとする課題は、食感が豊かな穀類加工品含有食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者らは、穀類加工品含有食品において如何にして食感の豊かさを生み出すかを検討したところ、食感の豊かさに寄与する要因として以下の3つを見出した。すなわち、(1)かたさの互いに異なる複数の加工品を、穀類加工品含有食品を構成するものとして用いること、(2)かたさの互いに異なる複数の加工品の配合割合を適正なものとすること、及び(3)かたさの互いに異なる複数の加工品として、特定の形状や性状のものを使
用すること、である。ここで、前記課題を解決するに際し、要因(1)は必須であり、要因(2)及び(3)は任意である。
この観点から、本発明は以下の通り定義される。
【0008】
本発明の第一の側面は、穀類加工品含有食品であって、当該食品が含有するのは、少なくとも以下の加工品である:
第一の加工品、第二の加工品、及び第三の加工品、
ただし、第一の加工品、第二の加工品、及び第三の加工品の各加工品のかたさの平均値の差は互いに0.5N以上であり、
前記、第一の加工品、第二の加工品、及び第三の加工品のうち、少なくとも何れか一つは、穀類の加工品である。
好ましい態様において、前記、第一の加工品、第二の加工品、及び第三の加工品のかたさは以下の通りである:
第一の加工品のかたさは、12.0N~20.0Nであり、
第二の加工品のかたさは、3.0N~16.0Nであり、
第三の加工品のかたさは、2.0N~13.0Nである。
好ましい態様において、前記第一の加工品、及び第二の加工品の、穀類加工品含有食品における含有割合の和は、70重量%以上である。
好ましい態様において、前記第一の加工品の、穀類加工品含有食品における含有割合は、50重量%以上であり、前記第二の加工品の、穀類加工品含有食品における含有割合は、10重量%以上である。
好ましい態様において、前記第一の加工品、及び前記第二の加工品は、大豆の加工品であり、当該第一の加工品、及び当該第二の加工品は、形状が互いに異なる。
好ましい態様において、前記大豆の加工品は、組織状大豆タンパクである。
好ましい態様において、前記第一の加工品の形状は、粒状であり、前記第二の加工品の形状は、扁平状である。
好ましい態様において、前記第三の加工品の、穀類加工品含有食品における含有割合は、1重量%以上、かつ、20重量%以下である。
好ましい態様において、前記第三の加工品は、ゲル状物を凍結乾燥したものである。
好ましい態様において、前記第三の加工品が含有するのは、少なくとも、野菜又は果実の加工品である。
【0009】
本発明の第二の側面は、穀類加工品含有食品の製造方法であって、それを構成するのは、少なくとも以下の工程である:
混合:ここで混合されるのは、少なくとも、第一の加工品、第二の加工品、及び第三の加工品であり、
第一の加工品、第二の加工品、及び第三の加工品の各加工品のかたさの平均値の差は互いに0.5N以上であり、
前記、第一の加工品、第二の加工品、及び第三の加工品のうち、少なくとも何れか一つは、穀類の加工品である。
好ましい態様において、前記、第一の加工品、第二の加工品、及び第三の加工品のかたさは以下の通りである:
第一の加工品のかたさは、12.0N~20.0Nであり、
第二の加工品のかたさは、3.0N~16.0Nであり、
第三の加工品のかたさは、2.0N~13.0Nである。
好ましい態様において、前記混合を構成するのは、以下の工程である:
第一の混合:ここで混合されるのは、第二の加工品、及び第三の加工品であり、これによって得られるのは、第一の混合物であり、
第二の混合:ここで混合されるのは、前記第一の混合物、及び第一の加工品である。
好ましい態様において、前記第一の加工品の、穀類加工品含有食品における含有割合は
、50重量%以上であり、前記第二の加工品の、穀類加工品含有食品における含有割合は、10重量%以上である。
好ましい態様において、前記第一の加工品、及び前記第二の加工品は、大豆の加工品であり、当該第一の加工品、及び当該第二の加工品は、形状が互いに異なる。
好ましい態様において、前記大豆の加工品は、組織状大豆タンパクである。
好ましい態様において、前記第三の加工品の、穀類加工品含有食品における含有割合は、1重量%以上、かつ、20重量%以下である。
好ましい態様において、前記第三の加工品は、ゲル状物を凍結乾燥したものである。
好ましい態様において、前記第三の加工品が含有するのは、少なくとも、野菜又は果実の加工品である。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、食感が豊かな穀類加工品含有食品が提供される。その結果、穀類加工品含有食品をより美味しく、また喫食行為が楽しいものとなる。
なお、本明細書において、食感の豊かさとは、歯応えや舌触りを様々に感じ、単調ではない咀嚼に楽しさを感じることをいう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】穀類加工品含有食品の製造方法の流れ図。
図2】実施例1の穀類加工品含有食品を構成する各加工品の断面をデジタルマイクロスコープで撮影した図面代用写真。各スケールバーは2mmを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<穀類加工品含有食品>
本発明に係る穀類加工品含有食品とは、少なくとも穀類の加工品を含有する食品であって、シリアル食品、フレーク、などと呼ばれることもある。
本発明の穀類加工品含有食品は、少なくとも、第一の加工品、第二の加工品、及び第三の加工品を含有する。
第一の加工品、第二の加工品、及び第三の加工品の各加工品のかたさの平均値の差は互いに0.5N以上であることが、本発明の特徴である。好ましくは、各加工品のかたさの平均値の差は、互いに1.0N以上である。これは、穀類加工品含有食品が含有する複数の加工品が互いに異なるかたさを有することを意味し、それにより喫食時に様々な歯応え・歯ざわりを感じることができ、食感を豊かなものとなる。
各加工品のかたさの順は特に限定されないが、例えば第一の加工品が最もかたく、次いで第二の加工品、次いで第三の加工品の順でかたいものとする。各加工品のかたさの平均値の差は互いに0.5N以上であればその上限は特に限定されないが、例えば第一の加工品のかたさと第二の加工品のかたさの平均値の差は、0.5N~15.0Nが好ましく、3.0N~10.0Nがより好ましく、5.0N~8.0Nがさらに好ましい。また、第二の加工品のかたさと第三の加工品のかたさの平均値の差は、0.5~5.0Nが好ましく、0.5N~3.0Nがより好ましく、0.5N~2.0Nがさらに好ましい。また、第一の加工品のかたさと第三の加工品のかたさの平均値の差は、1.0N~16.0Nが好ましく、3.5N~13.0Nがより好ましく、5.5N~10.0Nがさらに好ましい。
また、各加工品のかたさの平均値は、特に限定されないが、好ましくは以下のとおりである。第一の加工品のかたさの平均値は、12.0N~18.0Nであり、より好ましくは、14.0N~17.0Nである。第二の加工品のかたさの平均値は、6.0N~10.0Nであり、より好ましくは、7.0N~9.0Nである。第三の加工品のかたさの平均値は、5.0N~9.0Nであり、より好ましくは、6.0N~8.0Nである。
【0013】
本発明の穀類加工品含有食品において各加工品のかたさは、以下の通りであることが好
ましい。
第一の加工品のかたさは、10.0N~22.00Nが好ましく、12.0~20.0Nがより好ましく、12.80~19.0Nがさらに好ましい。
第二の加工品のかたさは、3.0N~16.0Nが好ましく、5.0~14.0Nがより好ましく、5.38~13.48Nがさらに好ましい。
第三の加工品のかたさは、2.0N~13.0Nが好ましく、3.0~12.0Nがより好ましく、3.21~11.56Nがさらに好ましい。
このようなかたさの複数の加工品を組み合わせることにより、喫食時に様々な歯応えを感じることができ、食感を豊かなものとなる。
【0014】
なお、本明細書における加工品の「かたさ」は、具体的には加工品の破断応力を指す。
破断応力は、テクスチャー測定方法により測定することができる。測定手法としては後述の試験例に示すように、測定機器は株式会社山電クリープメーター(RE2-33005C)を用い、プランジャーにはくさび型(No.49、W20mm×D30mm×H25mm(先端角45°))を使用し、測定条件は試料台移動速度1.0mm/s、変形率は試
料の高さの90%として圧縮して行い、破断特性値は自動解析「破断強度解析Ver2.
0A」にて算出することにより行うことができる。
また、本明細書におけるかたさの平均値は、所定の個数の加工品のかたさの測定値の数平均をいう。
【0015】
本発明において、第一の加工品、及び第二の加工品の、穀類加工品含有食品における含有割合の和は、70重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがより好ましく、90重量%以上であることがさらに好ましい。これにより、比較的かたい加工品の含有割合が多いことにより、歯応えを十分に感じることができ、喫食の満足感がより得られやすい。
さらに好ましい態様において、前記第一の加工品の、穀類加工品含有食品における含有割合は、50重量%以上であることが好ましく、60重量%以上であることがより好ましく、70重量%以上であることがさらに好ましい。また、前記第二の加工品の、穀類加工品含有食品における含有割合は、10重量%以上であることが好ましく、15重量%以上であることがより好ましく、20重量%以上であることがさらに好ましい。
別の好ましい態様において、第三の加工品の、穀類加工品含有食品における含有割合は、1重量%以上であることが好ましく、3重量%以上であることがより好ましく、5重量%以上であることがさらに好ましい。またその上限は20重量%以下であることが好ましく、15重量%以下であることがより好ましく、10重量%以下であることがさらに好ましい。
これらのような含有割合とするのは、第三の加工品のかたさが第一の加工品のかたさ及び第二の加工品のかたさよりも小さい場合に好ましく、第一の加工品が最もかたく、次いで第二の加工品、次いで第三の加工品の順でかたい場合がより好ましい。
【0016】
本発明において、第一の加工品、第二の加工品、及び第三の加工品はそれぞれ独立して、任意の食物の加工品であってよいが、少なくとも何れか一つは、穀類の加工品である。
ここで穀類とは、小麦、大麦、米、トウモロコシ、ライ麦、ハト麦、粟、えんばく、きび、ひえ等の他に、大豆、グリーンピース、そら豆、いんげん豆等の豆類も包含する。本明細書においては、特に大豆が好ましい。
通常、穀類の加工品は、これら穀類を加熱し、任意の成形処理を施されて得られるものをいう。
【0017】
好ましい態様において、第一の加工品、及び第二の加工品は、大豆の加工品である。大豆の加工品としては、例えば組織状大豆タンパクが挙げられる。組織状大豆タンパクとは、少なくとも、大豆タンパク原料を加熱、加圧、及び膨化することによりタンパク質を組
織化した加工物をいい、例えば特開平5-103593号公報に開示される製法により製造される。より好ましくは、第一の加工品、又は第二の加工品の少なくとも一方の組織状大豆タンパクは、製造時の混合原料として、炭酸カルシウムを用いることが好ましい。製造時の混合原料として炭酸カルシウムを用いることによって、加圧加熱混練後、大気圧解放時の膨張が高まるため、軽い食感となる。本発明に係る組織状大豆タンパクのタンパク質含量は、特に限定されないが、50重量%以上、かつ、70重量%以下であることが好ましい。
【0018】
好ましい態様において、前記第三の加工品は、少なくとも、野菜又は果実の加工品を含有する。また好ましくは、前記第三の加工品は、乾燥物である。乾燥方法は特に限定されないが、凍結乾燥物であることが好ましい。前記第三の加工品のより好ましい態様は、ゲル状物を凍結乾燥したものである。かかるゲル状物としては、たとえば野菜又は果実をすり潰したもの、或いは野菜又は果実の搾汁、又は濃縮汁に、任意にゲル化剤を添加して調製されるものが挙げられる。かかる凍結乾燥物は、凍結乾燥時に水分が抜けるために内部に空隙を有し、またゲルによる三次元構造により独特の歯ごたえを生じるものである。そのような加工品としては、例えば特許文献3に記載される方法により得られる凍結乾燥物が挙げられる。当該第三の加工品の水分含量は、特に限定されないが、11%以下であることが好ましい。
【0019】
その他に、第一の加工品、第二の加工品、及び第三の加工品としては、あるいは穀類加工品含有食品がその他に含んでもよい加工品としては、野菜(ニンジン、カボチャ、サツマイモ、ジャガイモ、レンコンなど)、果実(イチジク、マンゴー、パパイヤ、モモ、バナナ、イチゴ、ブルーベリー、パイナップルなど)、種子(カボチャの種、松の実など)を乾燥、油調、焼成などの処理したものなどが挙げられる。
【0020】
第一の加工品、第二の加工品、及び第三の加工品、並びに含まれてよい他の加工品は、任意の調味料、香辛料、着色料などで調味されていてもよいし、任意の油脂、糖質などで被覆されていてもよい。
【0021】
本発明において、第一の加工品、第二の加工品、及び第三の加工品はそれぞれ独立して任意の形状、大きさ、及び重さを有してよい。
第一の加工品、第二の加工品、及び第三の加工品の形状は、それぞれ独立して、例えば粒状、扁平状、キューブ状(ダイス状)などであってよい。好ましくは、互いに異なる形状であると、穀類加工品含有食品の食感をより豊かにし、見た目にも楽しさを付与することができる。より好ましい態様では、第一の加工品及び第二の加工品は、形状が互いに異なるものとする。さらに好ましい態様では、第一の加工品の形状は粒状であり、第二の加工品の形状は、扁平状である。
粒状の加工品は、穀類加工品含有食品にボリューム感を付与し、またザクザクした歯ざわりを演出する。扁平状の加工品は、比重の観点から、見た目のボリューム感がより付与され、またサクサクした軽い歯ざわりを演出する。キューブ状の加工品は、ホロホロと崩れる歯ざわりを演出しやすい。
ここで、粒状は、立体的に丸みを帯びた形状で、縦、横、高さの長さの差がほとんどなく、該差が互いに20%以下程度の形状をいう。扁平状は、平べったい形状で、縦と横の長さの差は任意で例えば60%以下程度であるが、高さが縦及び横の各長さの30%以下の小ささを有する形状をいう。キューブ状は、略立方体や略直方体の形状をいう。
【0022】
第一の加工品、第二の加工品、及び第三の加工品の大きさは、それぞれ独立して、例えば、長辺が3~20mmの範囲であってよい。好ましくは、長辺が4~15mmの範囲である。また、短辺が0.5~3mmの範囲であってよい。好ましくは、短辺が1~2mmの範囲である。或いは、第三の加工品の形状が、キューブ状である場合、1辺の長さが5
~15mmの範囲であってよい。好ましくは、1辺の長さが、8~12mmである。
第一の加工品、第二の加工品、及び第三の加工品の重さは、それぞれ独立して、例えば10~300mgの範囲であってよい。好ましくは、第一の加工品は、10~50mgである。第二の加工品は、50~200mgである。第三の加工品は、30~300mgである。
第一の加工品、第二の加工品、及び第三の加工品は、内部に空隙があること(多孔性)が好ましい。それにより、軽い舌触りや、サクサクした歯ざわりが演出される。そのため各加工品のかさ比重は、それぞれ独立して、例えば0.05~0.4g/cmの範囲であってよい。好ましくは、第一の加工品は、0.2~0.4g/cmである。第二の加工品は、0.1~0.2g/cmである。第三の加工品は、0.05~0.1g/cmである。
【0023】
本発明の穀類加工品含有食品は、第一の加工品、第二の加工品、及び第三の加工品の他に、任意の成分が配合されていてよい。かかる任意の成分としては、例えば、ブドウ糖、果糖、ショ糖、マルトース、ソルビトール、コーンスターチ、デキストリン、ステビオサイド、コーンシロップ、乳糖、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、L-アスコルビン酸、dl-α-トコフェロール、エリソルビン酸ナトリウム、グリセリン、プロピレングリコール、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、セルロース、アラビアガム、カラギーナン、カゼイン、ゼラチン、ペクチン、寒天、ビタミンB類、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、アミノ酸類、カルシウム塩類、色素、香料、保存剤等の食品添加物が挙げられる。
【0024】
<穀類加工品含有食品の製造方法>
本発明の穀類加工品含有食品は、任意の方法で製造することができる。好ましくは、本発明に係る穀類加工品含有食品の製造方法(以下、「本製法」ということもある。)を概念的に構成するのは、少なくとも、混合である。図1が示すのは、本製法の流れの一例である。この製法を構成するのは、混合(S10)、及び充填(S20)である。
通常は、第一の加工品、第二の加工品、及び第三の加工品を混合する工程を含む。
ここで、第一の加工品、第二の加工品、及び第三の加工品にかかる種々の説明は、前述したとおりである。
第一の加工品、第二の加工品、及び第三の加工品を混合する順序は任意であり、特に限定されない。
【0025】
好ましい態様において、まず第二の加工品、及び第三の加工品を混合して第一の混合物を得て(第一の混合)、次いで、第一の混合物と第一の加工品を混合する(第二の混合)ことができる。
このような順で混合することにより、複数の加工品を均一に混合することができる。
特に、第一の加工品、次いで第二の加工品、次いで第三の加工品の順でかたい場合は、各加工品の破損を防ぐ観点から、このような順で混合することが好ましい。第二の加工品と第三の加工品とを先に混合することで、第三の加工品の破損、崩れを防止することができる。また、必要に応じて、前記混合工程において得られた混合物を成型することもできる。
【0026】
以上に加えて、本製法が適宜採用するのは、容器詰めである。容器詰めの方法は、公知の方法でよい。本穀類加工品含有食品が詰られる容器は、公知の物で良く、例示すると、ポリエチレン製容器、アルミ製容器、ビニル製容器、缶、瓶、紙容器、その他プラスチック製容器、等である。
【実施例0027】
<製造例>穀類加工品含有食品の製造
以下の方法で、野菜キューブ入りシリアルを製造した。
【0028】
粒状大豆タンパク質として、「ニューフジニック58」(不二製油社製、「ニューフジニック」は、登録商標)を用いた。これは、脱脂大豆を粉砕し、エクストルーダーにて加圧加熱混錬処理を行った後に乾燥処理を行ったものである。「ニューフジニック58」の大きさは、縦4~8mm、横2~5mm、高さ1.5~2mmであり、タンパク質量は51.6g/100gである。
【0029】
扁平状大豆加工品として「ソヤパフ20」(不二製油社製、「ソヤパフ」は登録商標)を用いた。これは、脱脂大豆を粉砕し、大豆タンパクと食用油脂、及び炭酸カルシウムを混合後、エクストルーダーにて加圧加熱混錬処理を行った後に乾燥処理を行ったものである。「ソヤパフ20」の大きさは、縦10~15mm、横10~15mm、高さ1~1.5mmであり、タンパク質量は63.2g/100gである。
【0030】
野菜キューブ(赤、緑、黄、紫)を、特許文献3に記載の方法に準じて以下の方法で製造した。
トマトピューレ、及びトマトペーストの混合物に、デキストリン、寒天、及び澱粉を混合し、85℃で加熱溶解させた。これを平バットに充填し、4℃で冷蔵することでダイス状(縦8~10mm、横10mm、高さ10mm)のトマト寒天を製造した。このトマト寒天に凍結乾燥処理を行い、トマトフリーズドライ品を作製し、野菜キューブ赤とした。
ホウレンソウピューレに、デキストリン、寒天、及び澱粉を混合し、85℃で加熱溶解させた。これを平バットに充填し、4℃で冷蔵することでダイス状(縦10mm、横10mm、高さ10mm)のホウレンソウ寒天を製造した。このホウレンソウ寒天に凍結乾燥処理を行い、ホウレンソウフリーズドライ品を作製し、野菜キューブ緑とした。
カボチャピューレに、デキストリン、寒天、及び澱粉を混合し、85℃で加熱溶解させた。これを平バットに充填し、4℃で冷蔵することでダイス状(縦10mm、横10mm、高さ10mm)のカボチャ寒天を製造した。このカボチャ寒天に凍結乾燥処理を行い、カボチャフリーズドライ品を作製し、野菜キューブ黄とした。
ムラサキイモ濃縮汁、ビート濃縮汁に、デキストリン、寒天、及び澱粉を混合し、85℃で加熱溶解させた。これを平バットに充填し、4℃で冷蔵することでダイス状(縦10mm、横10mm、高さ10mm)のムラサキイモビート寒天を製造した。このムラサキイモビート寒天に凍結乾燥処理を行い、ムラサキイモビートフリーズドライ品を作製し、野菜キューブ紫とした。
【0031】
前述の「ニューフジニック58」、「ソヤパフ20」、野菜キューブ赤、野菜キューブ緑、野菜キューブ黄、及び野菜キューブ紫を混合することにより、野菜キューブ入りシリアルを製造した。具体的には、「ソヤパフ20」24重量%、野菜キューブ赤1重量%、野菜キューブ緑1重量%、野菜キューブ黄2重量%、及び野菜キューブ紫2重量%を混合したところに、「ニューフジニック58」70重量%を添加し、混合することにより、野菜キューブ入りシリアル(実施例の穀類加工品含有食品)とした。
【0032】
<試験例1>食感の豊かさに関する官能評価
製造例で製造した野菜キューブ入りシリアルについて、喫食したときに食感の豊かさを感じるか否かを評価した。社外の15名のパネリストにより野菜キューブ入りシリアルを試食してもらい評価を行ったところ、15名全員が食感豊かであると評価した。
【0033】
<試験例2>市販の穀類加工品含有食品との食感の官能評価の比較
製造例で製造した野菜キューブ入りシリアルと、市販の穀類加工品含有食品とについて、それに含まれる加工品の構成、及び食感の評価を行った。
以下の市販の穀類加工品含有食品を比較例とした。比較例1として、コーンフレーク(日本ケロッグ合同会社製、商品名:「コーンフロスティ」、「コーンフロスティ」は登録商標)を用いた。比較例2として、オートミール(日本ケロッグ合同会社製、商品名:「オートミール」)を用いた。比較例3として、フルーツグラノーラ(カルビー社製、商品名:「フルグラ」、「フルグラ」は、登録商標)を用いた。各穀類加工品含有食品に含まれる加工品の構成及びその含有割合を表1に示す。
食感を示す「かたさ相対強度」として、一般的な穀類加工品含有食品として、比較例1のコーンフレークを基準(評点4)として、被験品を一口目に噛んだときのかたさを以下の7段階の評点にて評価した。一般パネル24名の評点の平均を評価結果とした。結果を表1に合わせて示す。
7:非常にかたくない
6:かなりかたくない
5:ややかたくない
4:基準(比較例1)と同じ
3:ややかたい
2:かなりかたい
1:非常にかたい
【0034】
【表1】
【0035】
野菜キューブ入りシリアルは、少なくとも3種の原材料があり、異なるかたさが味わえることによって食感の豊かさがあることがわかった。オートミールは、1種の原材料しか
含まれておらず、単調な食感となることが考えられた。フルグラは、複数の種類の原材料があり、かたさも異なっていた。しかし、90重量%配合されている3種の穀物は、何れもかたさが同等であった。
【0036】
<試験例3>穀類加工品含有食品に含まれる各加工品のかたさの測定
製造例で製造した野菜キューブ入りシリアルを構成する「ニューフジニック58」、「ソヤパフ20」、及び野菜キューブ(赤、緑、黄、紫)について、それぞれのかたさを定量的に測定した。
測定は、テクスチャー測定方法にて行った。測定機器は株式会社山電クリープメーター(RE2-33005C)を用い、プランジャーにはくさび型(No.49、W20mm×D30mm×H25mm(先端角45°))を使用し、測定条件は試料台移動速度1.0m
m/s、変形率は試料の高さの90%として圧縮した。破断特性値は自動解析「破断強度解析Ver2.0A」にて算出し、得られた破断応力(N)を試料の「かたさ」とした。
「ニューフジニック58」、「ソヤパフ20」については、それぞれ測定数(n)を15として、平均値、標準偏差、最大値、及び最小値を算出した。野菜キューブについては、4種(赤、緑、黄、紫)について、それぞれ測定数(n)を5として、4種合計での破断応力の平均値、標準偏差、最大値、及び最小値を算出した。
結果を表2に示す。
【0037】
【表2】
【0038】
野菜キューブ入りシリアルに含まれる3種の原材料について破断応力を測定したところ、「ニューフジニック58」が最もかたく、次いで「ソヤパフ20」、次いで野菜キューブの順にかたかった。当該破断応力の数値から見られるかたさの違いと、官能評価でのかたさの違いは、一致することがわかった。
【0039】
<試験例4>穀類加工品含有食品に含まれる各加工品の断面の観察
製造例で製造した野菜キューブ入りシリアルを構成する「ニューフジニック58」、「ソヤパフ20」、及び野菜キューブ(赤、緑、黄、紫の混合品)について、それぞれの断面を、キーエンス社 デジタルマイクロスコープ VHX-7000を用いて観察した。
各断面写真を図2に示す。
【0040】
「ニューフジニック58」「ソヤパフ20」及び「野菜キューブ」は、いずれも内部に空隙があり(多孔性)、これによって食感が生み出されていることが考えられた。また、それぞれ原料によっても空隙の数や大きさ、原料が異なるため、これによってかたさの違いが出ていることが考えられた。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明が有用な分野は、食品事業である。
図1
図2