(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047737
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】模様付製品成形用押出しダイス
(51)【国際特許分類】
B21C 25/02 20060101AFI20240401BHJP
【FI】
B21C25/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153396
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004743
【氏名又は名称】日本軽金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096644
【弁理士】
【氏名又は名称】中本 菊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(72)【発明者】
【氏名】林 沛征
【テーマコード(参考)】
4E029
【Fターム(参考)】
4E029AA06
4E029MB02
4E029MB09
(57)【要約】
【課題】中空部を有する製品用部材の異なる表面に任意の凹凸模様を連続して成形できる模様付製品成形用押出しダイスを提供する。
【解決手段】熱可塑性部材に中空部形状を成形する内側ベアリング部15を設けたマンドレル13を有する上型ダイ10と、上記熱可塑性部材の外形形状を成形する外側ベアリング部25を有する中間型20と、上記中間型を介して上記上型ダイを支持する下型ダイ30とを具備する。上記下型ダイは、それぞれ上記ベアリング部により成形された製品用部材3の移動とともに回転して、上記製品用部材の対向する表面の少なくとも一方に模様を成形する第1の模様成形具40Aと、上記製品用部材における上記模様が成形された面と異なる対向する表面の少なくとも一方に模様を成形する第2の模様成形具40Bとを具備する第1の下型31と、上記第2の模様成形具を固定すべく上記第1の下型に連結される第2の下型37とを具備する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素材供給側から連続して押し出される熱可塑性部材で形成される中空部を有する製品用部材の異なる表面に模様を成形する模様付製品成形用押出しダイスであって、
上記熱可塑性部材を導入し、上記熱可塑性部材に中空部形状を成形するベアリング部を設けたマンドレルを有する上型ダイと、上記熱可塑性部材の外形形状を成形するベアリング部を有する中間型と、上記中間型を介して上記上型ダイを支持する下型ダイとを具備し、
上記下型ダイは、上記ベアリング部により成形された上記製品用部材の移動とともに回転して、上記製品用部材の対向する表面の少なくとも一方に模様を成形する第1の模様成形具と、上記製品用部材の移動とともに回転して、上記製品用部材における上記模様が成形された面と異なる対向する表面の少なくとも一方に模様を成形する第2の模様成形具とを具備する第1の下型と、上記第2の模様成形具を固定すべく上記第1の下型に連結される第2の下型とを具備する、
ことを特徴とする模様付製品成形用押出しダイス。
【請求項2】
請求項1に記載の模様付製品成形用押出しダイスであって、
上記下型ダイを構成する上記第1の下型には、上記ベアリング部により成形された上記製品用部材の移動を案内する下側ガイド部が設けられ、
上記マンドレルには、上記第1の模様成形具及び上記第2の模様成形具による模様成形時の押圧力を吸収する逃げ部が形成されている、
ことを特徴とする模様付製品成形用押出しダイス。
【請求項3】
請求項2に記載の模様付製品成形用押出しダイスであって、
上記マンドレルは、上記第1の模様成形具及び上記第2の模様成形具によって上記製品用部材を押圧する位置よりも、上記製品用部材の移動方向における下流側まで形成され、
上記逃げ部は、上記マンドレルの先端まで形成されている、
ことを特徴とする模様付製品成形用押出しダイス。
【請求項4】
請求項1に記載の模様付製品成形用押出しダイスであって、
上記第1の模様成形具及び上記第2の模様成形具は、上記製品用部材の異なる表面に同一の模様を成形する同一模様成形具にて形成されている、ことを特徴とする模様付製品成形用押出しダイス。
【請求項5】
請求項1に記載の模様付製品成形用押出しダイスであって、
上記第1の模様成形具及び上記第2の模様成形具は、上記製品用部材の対向する表面の一方に模様を成形しない無模様成形具を含む、ことを特徴とする模様付製品成形用押出しダイス。
【請求項6】
請求項1に記載の模様付製品成形用押出しダイスであって、
上記第1の模様成形具及び上記第2の模様成形具は、上記製品用部材の異なる表面にそれぞれ異なる模様を成形する異形模様成形具を含む、ことを特徴とする模様付製品成形用押出しダイス。
【請求項7】
請求項1,4ないし6のいずれかに記載の模様付製品成形用押出しダイスであって、
上記第1の模様成形具及び上記第2の模様成形具は、それぞれ上記第1の下型に回転自在に、かつ、上記製品用部材側に向かって押圧調整可能に配設されている、ことを特徴とする模様付製品成形用押出しダイス。
【請求項8】
請求項7に記載の模様付製品成形用押出しダイスであって、
上記第1の模様成形具及び上記第2の模様成形具は、それぞれ回転軸の両端が軸受を介して第1の取付部材及び第2の取付部材に回転自在に支持され、
上記第1の取付部材は、上記第1の下型における上記上型ダイ側面に形成された第1の取付部材設置用凹部に配置され、上記第2の取付部材は、上記第1の下型における上記第2の下型側面に形成された第2の取付部材設置用凹部に配置され、
上記第1の下型には、それぞれ上記第1の取付部材及び上記第2の取付部材を上記製品用部材の移動方向に対して直交する方向に沿ってスライドさせる上記第1の模様成形具及び上記第2の模様成形具の上記製品用部材に対する押圧を調整する押圧調整機構が設けられている、
ことを特徴とする模様付製品成形用押出しダイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、熱可塑性材料としての、例えばアルミニウム合金で形成される中空部を有する製品用部材の異なる表面に所定の模様を成形して模様付製品を製造する模様付製品成形用押出しダイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にアルミニウム合金等は、加工性に優れており、断面形状の自由度も高く期待できる等、様々な形状を得ることができることから押出し加工に適しており、現在では広く採用されている。
例えば、アルミニウム合金の押出加工により表面にラック形状や波形状等の凹凸模様、表面の長手方向及び長手方向と直交する幅方向に連続して形成される等の凹凸模様を成形することも行われている。
【0003】
従来、凹凸模様付製品を押出し成形する技術として、素材供給側から連続して押し出される熱可塑性部材で形成される中空部を有する製品用部材の二つの側面に模様を成形する模様付製品成形用押出しダイスが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載の模様付製品成形用押出しダイスによれば、略粘土状の柔らかさで連続して押し出される熱可塑性部材であるアルミニウム合金からなるメタルをベアリング部で製品用部材に成形し、メタルの押出しに伴って回転する、表面に凹凸模様成形部を有する二つの模様成形具によって製品用部材の対向する表面に同時に凹凸模様が成形される。
【0005】
このように成形される中空部を有する模様付製品は、例えば、ルーバーやフェンスの支柱などに使用される。この模様付製品の表面に凹凸模様を施すことによって意匠性を高めることができ、また、模様の持つ表示,認識等の機能性を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1に開示された技術では、中空部を有する製品の対向する二面に模様を成形することができるが、連続して残りの二面に模様を成形することはできない。
この種の中空部を有する製品において、更に意匠性を高めると共に、模様の持つ表示,認識等の機能性を高めるためには、製品の対向する二面以外の異なる表面を利用して模様を成形することが望まれる。
【0008】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、中空部を有する製品用部材の異なる表面に任意の凹凸模様を連続して成形できる模様付製品成形用押出しダイスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するために、この発明は、素材供給側から連続して押し出される熱可塑性部材で形成される中空部を有する製品用部材の異なる表面に模様を成形する模様付製品成形用押出しダイスであって、 上記熱可塑性部材を導入し、上記熱可塑性部材に中空部形状を成形するベアリング部を設けたマンドレルを有する上型ダイと、上記熱可塑性部材の外形形状を成形するベアリング部を有する中間型と、上記中間型を介して上記上型ダイを支持する下型ダイとを具備し、 上記下型ダイは、上記ベアリング部により成形された上記製品用部材の移動とともに回転して、上記製品用部材の対向する表面の少なくとも一方に模様を成形する第1の模様成形具と、上記製品用部材の移動とともに回転して、上記製品用部材における上記模様が成形された面と異なる対向する表面の少なくとも一方に模様を成形する第2の模様成形具とを具備する第1の下型と、上記第2の模様成形具を固定すべく上記第1の下型に連結される第2の下型とを具備する、ことを特徴とする(請求項1)。
【0010】
このように構成することにより、熱可塑性部材を押し出して熱可塑性部材が上型ダイのマンドレルのベアリング部と中間型のベアリング部を通過することによって熱可塑性部材が中空部を有する製品用部材の形状に成形される。また、上型と中間型の下流側に設けられた下型ダイを熱可塑性部材が通過すると、熱可塑性部材の対向する表面に第1の模様成形具による押圧力が作用して製品用部材の対向する表面又は対向する表面の少なくとも一方に凹凸模様が成形され、次いで、製品用部材における上記模様が成形された面と異なる対向する表面又は対向する表面の少なくとも一方に第2の模様成形具による押圧力が作用して製品用部材の対向する表面に凹凸模様が成形される。
【0011】
この発明において、上記下型ダイを構成する上記第1の下型には、上記ベアリング部により成形された上記製品用部材の移動を案内する下側ガイド部が設けられ、上記マンドレルには、上記第1の模様成形具及び上記第2の模様成形具による模様成形時の押圧力を吸収する逃げ部が形成されているのが好ましい(請求項2)。
【0012】
このように構成することにより、第1の模様成形具及び第2の模様成形具によって模様を成形する際には、その押圧力が逃げ部によって吸収される。
【0013】
また、この発明において、上記マンドレルは、上記第1の模様成形具及び上記第2の模様成形具によって上記製品用部材を押圧する位置よりも、上記製品用部材の移動方向における下流側まで形成され、上記逃げ部は、上記マンドレルの先端まで形成されているのが好ましい(請求項3)。
【0014】
このように構成することにより、第1の模様成形具及び第2の模様成形具の模様成形部の押圧により熱可塑性部材の下流側に流動した材料のうち中空部側に流動する材料は、逃げ部によって規制される。
【0015】
また、この発明において、上記第1の模様成形具及び上記第2の模様成形具は、上記製品用部材の異なる表面に同一の模様を成形する同一模様成形具にて形成されるもの(請求項4)、上記製品用部材の対向する表面の一方に模様を成形しない無模様成形具を含むもの(請求項5)、あるいは、上記製品用部材の異なる表面にそれぞれ異なる模様を成形する異形模様成形具を含むもの(請求項6)などを用いるのが好ましい。
【0016】
このように構成することにより、中空部を有する製品用部材の異なる表面に、無模様を含む任意の模様を選択して成形することができる。
【0017】
加えて、この発明において、上記第1の模様成形具及び上記第2の模様成形具は、それぞれ上記第1の下型に回転自在に、かつ、上記製品用部材側に向かって押圧調整可能に配設されているのが好ましい(請求項6)。この場合、上記第1の模様成形具及び上記第2の模様成形具は、それぞれ回転軸の両端が軸受を介して第1の取付部材及び第2の取付部材に回転自在に支持され、上記第1の取付部材は、上記第1の下型における上記上型ダイ側面に形成された第1の取付部材設置用凹部に配置され、上記第2の取付部材は、上記第1の下型における上記第2の下型側面に形成された第2の取付部材設置用凹部に配置され、上記第1の下型には、それぞれ上記第1の取付部材及び上記第2の取付部材を上記製品用部材の移動方向に対して直交する方向に沿ってスライドさせる上記第1の模様成形具及び上記第2の模様成形具の上記製品用部材に対する押圧を調整する押圧調整機構が設けられているのが好ましい(請求項7)。
【0018】
このように構成することにより、第1の模様成形具及び第2の模様成形具は、製品用部材側に向かって押圧調整されることによって、第1の模様成形具及び第2の模様成形具の製品用部材に対する押圧力、すなわち第1の模様成形具及び第2の模様成形具が製品用部材に食い込む量が調整される。この場合、第1の模様成形具は、第1の下型における上型ダイ側面に形成された第1の取付部材設置用凹部に配置された第1の取付部材によって支持される。第1の取付部材は、押圧調整機構によって製品用部材の移動方向に対して直交する方向にスライドさせて押圧力すなわち食い込み量が調整される。一方、第2の模様成形具は、第1の下型における第2の下型側面に形成された第2の取付部材設置用凹部に配置された第2の取付部材によって支持される。第2の取付部材は、押圧調整機構によって製品用部材の移動方向に対して直交する方向にスライドさせて押圧力すなわち食い込み量が調整される。これにより、異なる模様を成形する第1の模様成形具及び第2の模様成形具の第1の下型への組込を容易にすることができる。また、第1の模様成形具及び第2の模様成形具が製品用部材の異なる面に食い込む量が調整される。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載の発明によれば、中空部を有する製品用部材の形状に成形された熱可塑性部材の対向する表面に第1の模様成形具による押圧力が作用して製品用部材の対向する表面又は対向する表面の少なくとも一方に凹凸模様が成形され、次いで、製品用部材における上記模様が成形された面と異なる対向する表面又は対向する表面の少なくとも一方に第2の模様成形具による押圧力が作用して製品用部材の対向する表面に凹凸模様が成形される。したがって、中空部を有する製品用部材の異なる表面に任意の凹凸模様を連続して成形することができる。
【0020】
請求項2に記載の発明によれば、第1の模様成形具及び第2の模様成形具によって模様を成形する際には、その押圧力が逃げ部によって吸収されて、製品用部材の内面を逃げ部に密着させることができるため、製品用部材の内面に凹凸形状が生じることや、その凹凸形状を形成する一面が変形することを抑制できる。
【0021】
請求項3に記載の発明によれば、第1の模様成形具及び第2の模様成形具の模様成形部の押圧により熱可塑性部材の下流側に流動した材料のうち中空部側に流動する材料は、逃げ部によって規制される。その結果、製品用部材の内面を逃げ部に密着させた状態を維持することができることにより、製品用部材の内面に凹凸形状などが生じるのを抑制できる。
【0022】
請求項4,5,6に記載の発明によれば、第1の模様成形具及び第2の模様成形具は、同一模様成形具にて形成するか、製品用部材の対向する表面の一方に模様を成形しない無模様成形具を含むか、あるいは、製品用部材の異なる表面にそれぞれ異なる模様を成形する異形模様成形具を含むものものを任意に組み合わせることができるので、中空部を有する製品用部材の異なる表面に、無模様を含む任意の模様を選択して成形することができる。
【0023】
請求項6,7に記載の発明によれば、第1の模様成形具及び第2の模様成形具は、製品用部材側に向かって押圧調整されることによって、第1の模様成形具及び第2の模様成形具の製品用部材に対する押圧力、換言すると第1の模様成形具及び第2の模様成形具が製品用部材に食い込む量が調整される。したがって、製品用部材に付される模様の深さを適宜調整することができる。また、請求項7に記載の発明によれば、異なる模様を成形する第1の模様成形具及び第2の模様成形具の第1の下型への組込を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】この発明に係る模様付製品成形用押出しダイスの全体を示す斜視図である。
【
図2】この発明における上型ダイの斜視図(a)及び上型ダイの拡大断面図(b)である。
【
図3】この発明における中間型の斜視図(a)及び中間型の拡大断面図(b)である。
【
図4】この発明における下型ダイを構成する第1の下型の上方斜視図(a)、第1の下型の下方斜視図(b)及び第2の下型を取り付けた状態の斜視図(c)である。
【
図4A】この発明における第1の下型、第2の下型及び連結ボルトを示す分解断面図である。
【
図5】この発明における模様成形用具を収容した下型ダイを示す平面図である。
【
図6】上記模様成形具を収容した下型ダイを示す底面図である。
【
図7】この発明における第1の模様成形具の取付状態を示す断面斜視図である。
【
図10】第1の模様成形具を上記第1の下型に取り付けた状態を示す断面斜視図(a)及び第2の模様成形具を上記第1の下型に取り付けた状態を示す断面斜視図(b)である。
【
図11A】
図10(a)の状態から第1の模様成形具と第1の取付部材を取り出した状態を示す分解斜視図である。
【
図11B】
図10(b)の状態から第2の模様成形具と第2の取付部材を取り出した状態を示す分解斜視図である。
【
図12】この発明における模様成形具の押圧調整機構を表し、(a)は模様成形具が製品用部材に最大限食い込んだ状態であり、(b)は模様成形具が製品用部材に僅かに食い込んだ状態の一部を断面で示す平面図である。
【
図13】
図12(b)のIII-III線に沿う断面図である。
【
図14A】この発明に係る模様付製品成形用押出しダイスにより成形された異なる面が同一の模様の模様付製品を示す上方斜視図(a)及び下方斜視図(b)である。
【
図14B】この発明に係る模様付製品成形用押出しダイスにより成形された三面が同一模様、一面が無模様の模様付製品を示す上方斜視図(a)及び下方斜視図(b)である。
【
図14C】この発明に係る模様付製品成形用押出しダイスにより成形された隣接する二面が同一模様と無模様の模様付製品を示す上方斜視図(a)及び下方斜視図(b)である。
【
図15】この発明に係る模様付製品成形用押出しダイスにより成形された一方の対向する二面が同一の波形状模様、他方の対向する二面が菱形模様の模様付製品を示す上方斜視図(a)及び下方斜視図(b)である。
【
図16】この発明に係る模様付製品成形用押出しダイスにより成形された一方の対向する二面が同一の波形状模様、他方の対向する二面が菱形模様と四角形模様の模様付製品を示す上方斜視図(a)及び下方斜視図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、この発明を実施するための形態について、添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0026】
この発明の模様付製品成形用押出しダイス1(以下、単に押出しダイス1という)は、コンテナ2から押圧された熱可塑性部材(メタルM)を導入し、熱可塑性部材に中空部形状を成形する内側ベアリング部15を設けたマンドレル13を有する上型ダイ10と、熱可塑性部材の外形形状を成形する外側ベアリング部25を有する中間型20と、中間型20を介して上型ダイ10を支持する下型ダイ30とを具備する。
【0027】
下型ダイ30は、マンドレル13における内側ベアリング部15と中間型20における外側ベアリング部25により成形された製品用部材3の移動とともに回転して、製品用部材3の対向する表面に模様Daを成形する第1の模様成形具40Aと、製品用部材3の移動とともに回転して、製品用部材3における模様Daが成形された面と異なる対向する表面に模様Daを成形する第2の模様成形具40Bとを具備する第1の下型31と、第2の模様成形具40Bを固定すべく第1の下型31に連結される第2の下型37とを具備する。
【0028】
この場合、上型ダイ10と中間型20は、上型ダイ10の下面外周に設けられた環状凹部10aに中間型20の上面外周に設けられた環状凸部20bが嵌合して連結され、中間型20と下型ダイ30を構成する第1の下型31は、中間型20の下面外周に設けられた環状凹部20aに第1の下型31の上面外周に設けられた環状凸部31bが嵌合して連結されている。上型ダイ10、中間型20及び第1の下型31は、第1の下型31の裏面から差し込まれる連結ボルト(図示せず)によって連結されている。この状態において、中間型20は、上型ダイ10と第1の下型31とで挟持された状態で連結されているため、撓みや変形が抑制される。
【0029】
また、下型ダイ30を構成する第1の下型31と第2の下型37は、第2の下型37の4箇所に設けられた貫通孔37aを貫通する連結ボルト38を第1の下型31の下面の4箇所に設けられたねじ孔36に螺合することで連結されている(
図4A,
図8,
図8A参照)。
【0030】
図8及び
図8Aに示すようにコンテナ2は、上型ダイ10の上面に載置されていて、メタルMを収容すると共に、そのメタルMの温度を400~500℃に保つことができるように構成されている。
【0031】
上型ダイ10の上面は、コンテナ2を載置するために中央部分が僅かに窪んで形成されていて、その窪んだ部分に、上型ダイ10の中心軸を中心として所定角度ずつずらして扇状の4つの導入孔11が形成されている。導入孔11は、メタルMを通過させるためのものであって、導入孔11を区分けするように二つのブリッジ12が交差して設けられている。言い換えると、導入孔11を区分けする部分がブリッジ12として機能している。
【0032】
これらのブリッジ12は、マンドレル13を支持するための部分であって、その中央部分(ブリッジ12同士が交差した部分)の裏面側に、上型ダイ10の軸線方向における下側に垂下して支持軸14が連結され、その支持軸14の先端にマンドレル13が連結されている。
【0033】
マンドレル13は、その下端面が、中間型20における外側ベアリング部25及び下型ダイ30を構成する第1の下型31に設けられた第2の模様成形具40Bの回転中心と水平な位置よりも下方側まで形成されている。すなわち、マンドレル13は、製品用部材3の移動方向において、第2の模様成形具40Bが後述するように製品用部材3を押圧する位置よりも下流側まで成形されている(
図8,
図8A参照)。
【0034】
このマンドレル13の上方側には、
図2(b)に示すように製品4の内方形状と略同一に、すなわち、断面形状が四角形状(長方形状)に形成された内側ベアリング部15が形成されている。また、外側ベアリング部25よりも下方の部分のうち製品用部材3の側面に対応した位置には、第1の模様成形具40A及び第2の模様成形具40Bによって製品用部材3の外面が押圧された際に、その内面に凹凸形状が成形されることを抑制するための逃げ部16が形成されている(
図9参照)。なお、逃げ部16は、マンドレル13の先端まで形成されている。
【0035】
図3に示すように中間型20は、上型ダイ10を載置するために中央部分が僅かに窪んで形成され、その窪んだ部分には、上記導入孔11の外縁と略同一形状の、メタルMを溜める第1の溜まり部21が形成されている。この第1の溜まり部21は、導入孔11から導入されたメタルMを次第に製品4の外形形状である四角形状(長方形状)に成形するためのものである。この第1の溜まり部21には、中間型20の外周側から内側に向けて突出した4つの突起部24が、ブリッジ12の外周側の部分の裏面と接触するように、中間型20の中心軸を中心として所定の角度の間隔を空けて形成されている。この突起部24は、メタルMとマンドレル13との摩擦力(または流動抵抗)などによってブリッジ12が撓むことを抑制するため、すなわち、ブリッジ12の曲げ剛性を向上させるために設けられている。
【0036】
第1の溜まり部21の中心部分には、第1の溜まり部21に連続して第2の溜まり部22が形成されている。この第2の溜まり部22の上側の開口は、製品4の外形寸法よりも大きく形成されている。また、第2の溜まり部22の下側は、内径が次第に小さくなるように形成されている。そして、第2の溜まり部22の下側には、更に、第2の溜まり部22に連続してかつ第2の溜まり部22よりも開口が絞られた第3の溜まり部23が形成されている。すなわち、第1の溜まり部21、第2の溜まり部22及び第3の溜まり部23と、メタルMが進行するに連れて、メタルMの外形寸法が次第に小さくなるように形成されている。
【0037】
また、第3の溜まり部23の下流であり、かつ上述したマンドレル13における内側ベアリング部15に対向した位置に、第3の溜まり部23に連続し、かつ第3の溜まり部23よりも開口が絞られた外側ベアリング部25が形成されている。この外側ベアリング部25は、メタルMの外形形状を、製品4の外形形状に仕上げるための部分であって、外側ベアリング部25の内側の寸法は、製品4の外形寸法と略同一に形成されている。また、上述したように内側ベアリング部15は、製品4の内方形状と略同一に形成されているため、内側ベアリング部15と外側ベアリング部25との間をメタルMが通過することにより、製品4のうちの模様Daを除く他の形状と、メタルMの形状とが同一となるように形成されている。
【0038】
更に、外側ベアリング部25の下方には、この外側ベアリング部25に連続した上側ガイド部26が形成されている。この上側ガイド部26は、内側ベアリング部15と外側ベアリング部25で成形されて押し出されてくるメタルM(以下に、成形されたメタルMを製品用部材3という)を、下型ダイ30側にガイドする部位である。
【0039】
より具体的には、外側ベアリング部25の下方側の側面のうち後述する第1の模様成形具40Aが設けられた部分に対応した側面、又は第1の模様成形具40Aの上方に位置する側面には、下流側に向けて突出した突出部27が設けられている。この突出部27は、第1の模様成形具40Aの上部側の外周一部に沿ってかつ外周一部を覆うように形成されている。この突出部27のうちの製品用部材3に対向した面は、製品用部材3と所定の隙間が空くように形成されている。また、この突出部27が形成されていない側面は、製品用部材3が進行するに連れて製品用部材3との隙間が大きくなるように傾斜して形成され、その傾斜面が上側ガイド部26として機能するように構成されている。
【0040】
下型ダイ30を構成する第1の下型31は、
図4,
図4A,
図5に示すように円柱状に形成されており、その上面外周には、中間型20の裏面に形成された環状凹部20aを嵌合する環状凸部31bが形成されている。第1の下型31には、その平面の略中央部近傍に第1の模様成形具40Aと第2の模様成形具40Bを配置するための横断面が略長方形の模様成形具配置空間32(以下に配置空間32という)が形成されている。
【0041】
第1の下型31には、製品用部材3をガイドする下側ガイド部39が形成されている。この下側ガイド部39は、その上端面から下端面に亘って形成されている。また、下側ガイド部39は、
図8及び
図8Aに示すように、上側ガイド部26の下端側の開口面積よりも大きな開口面積に形成され、第1の下型31の軸線方向に沿って形成されている。なお、第1の下型31に連結される第2の下型37には、第1の下型31に形成された下側ガイド部39と同じ開口面積の開口37bが形成されている。
【0042】
第1の下型31の上部側すなわち中間型20側の配置空間32に、製品用部材3の対向する表面に模様Daを成形する第1の模様成形具40Aが配置されている。また、第1の下型31の下部側(裏面側)の配置空間32には、製品用部材3における第1の模様成形具40Aによって模様Daが成形された面と異なる対向する表面に模様Daを成形する第2の模様成形具40Bが配置されている。
【0043】
第1の下型31の上部側(中間型20側)の配置空間32の長さ方向に沿った両側には、第1の模様成形具40Aの取付部材41(以下に、第1の取付部材41という)を設置する第1の取付部材設置用凹部33(以下に、第1の設置用凹部33という)が形成されている。なお、
図7,
図10(a)では、一方の第1の設置用凹部33を示している。この第1の設置用凹部33は、配置空間32の長手方向に沿って設けられ、所定幅の矩形状で、かつ所定深さに形成されている。このように形成される第1の設置用凹部33に、第1の取付部材41が挿入される。
【0044】
また、
図10(a),
図11Aに示すように、第1の下型31の外周面のうちの各第1の設置用凹部33の延長線上の位置には、第1の設置用凹部33に連通した貫通孔34が形成されている。この貫通孔34は、第1の設置用凹部33側の内径が、第1の下型31の外周側の内径よりも小さく形成されていて、その内径が小さい部分に雌ねじ34aが形成されている。この雌ねじ34aに、後述する第1の模様成形具40Aの押圧調整機構を構成する押圧調整用ボルト51が螺合されるようになっている。この雌ねじ34aを有する貫通孔34は、第1の取付部材41の側面の上側と下側との2箇所を押圧するように二つ形成されている。
【0045】
一方、
図10(b)に示すように、第1の下型31の下部側(裏面側)の配置空間32における上記第1の模様成形具40Aが配置される方向と直交する長さ方向に沿った両側には、第2の模様成形具40Bの取付部材42(以下に、第2の取付部材42という)を設置する第2の取付部材設置用凹部35(以下に、第2の設置用凹部35という)が形成されている。この第2の設置用凹部35は、第1の設置用凹部33と同様に、所定幅の矩形状で、かつ所定深さに形成されている。このように形成される第2の設置用凹部35に第2の取付部材42が挿入される。
【0046】
また、
図10(b),
図11Bに示すように、第1の下型31の外周面のうちの各第2の設置用凹部35の延長線上の位置には、第2の設置用凹部35に連通した貫通孔34が形成されている。この貫通孔34は、第2の設置用凹部35側の内径が、第1の下型31の外周側の内径よりも小さく形成されていて、その内径が小さい部分に雌ねじ34aが形成されている。この雌ねじ34aに、後述する第2の模様成形具40Bの押圧調整機構を構成する押圧調整用ボルト51が螺合されるようになっている。この雌ねじ34aを有する貫通孔34は、第2の取付部材42の側面の上側と下側との2箇所を押圧するように二つ形成されている。
【0047】
上記第1の模様成形具40Aと第2の模様成形具40Bは、中空矩形状の製品用部材3の表面に長手方向に連続する凹凸形状の模様Daを成形するもので、外周面に頂部と谷部とを適宜間隔をおいて設けたローラーにて形成されている。なお、第1の模様成形具40Aは製品用部材3の短辺側表面に模様Daを成形するのに対し、第2の模様成形具40Bは製品用部材の長辺側表面に模様Daを成形するため、模様成形部の長さが異なるが、それ以外は同様に構成されている。このように形成される第1の模様成形具40Aと第2の模様成形具40Bにより、製品用部材3の表面に成形される模様Daは、第1の模様成形具40A及び第2の模様成形具40Bの頂部と谷部とに対応した凹部Da1と凸部Da2とを有し、製品用部材3の表面を第1の模様成形具40A及び第2の模様成形具40Bと逃げ部16との間で挟み込むことにより成形される。
【0048】
具体的には、
図9に示す第1の模様成形具40Aについて説明すると、内側ベアリング部15と外側ベアリング部25との間で所定の板厚に形成された製品用部材3の側面が、そのまま荷重を受けることなく垂下するとした場合に、その側面の内面と逃げ部16との間に所定の隙間Sが空くように逃げ部16が形成されている。この隙間Sは、第1の模様成形具40Aが側面の表面に連続した凹凸形状の模様Daを成形する際、第1の模様成形具40Aの頂部による押圧力を逃がすように構成されている。そのため、第1の模様成形具40Aがその頂部により側面の表面に連続した凹凸形状の模様Daを成形する際、第1の模様成形具40Aの頂部が側面を押圧すると、第1の模様成形具40Aによる押圧力が逃げ部16で吸入されて、側面が押されて逃げ部16に押し付けられる。その結果、側面の内面と逃げ部16とが密着しているので、側面の内面に凹凸形状が生じることを抑制できる。
【0049】
ここでは、第1の模様成形具40Aについて説明したが、第2の模様成形具40Bによって模様Daを成形する場合においても同様に、第2の模様成形具40Bがその頂部により側面の表面に連続した凹凸形状の模様Daを成形する際、第2の模様成形具40Bの頂部が側面を押圧すると、第2の模様成形具40Bによる押圧力が逃げ部16で吸入されて、側面が押されて逃げ部16に押し付けられる。その結果、側面の内面と逃げ部16とが密着しているので、側面の内面に凹凸形状が生じることを抑制できる。
【0050】
次に、第1の模様成形具40A及び第2の模様成形具40Bの取付構造について説明する。ここでは、同一部分には同一符号を付して説明する。第1の模様成形具40A(第2の模様成形具40B)は、前述のように逃げ部16に対向した位置に配設されている。また、
図10,
図11A及び
図11Bに示すように、第1の取付部材41(第2の取付部材42)には、軸受43が嵌着されていて、その軸受43に第1の模様成形具40A(第2の模様成形具40B)を支持するための軸部44が嵌着している。この第1の取付部材41(第2の取付部材42)は、
図10~
図12などに示すように、第1の設置用凹部33(第2の設置用凹部35)に挿入され、かつ製品用部材3(メタルM)側にスライド自在に嵌め込まれている。なお、第1の模様成形具40A(第2の模様成形具40B)と軸部44とはキー45で連結されている。
【0051】
次に、
図12を参照して押圧調整機構の構造について説明する。押圧調整機構は、第1の取付部材41(第2の取付部材42)の長さ方向の一方側の端部と当接する押圧調整用ボルト51と、第1の設置用凹部33(第2の設置用凹部35)に挿脱自在に設けられる調整用スペーサ52とで構成されている。
【0052】
この押圧調整用ボルト51は、第1の下型31の外周側から第1の取付部材41(第2の取付部材42)の側面に向けて形成された貫通孔34に設けられた雌ねじ34aにそれぞれ螺合させることで、各押圧調整用ボルト51の先端部を第1の取付部材41(第2の取付部材42)の長さ方向における一方側の端部に当接させるように構成されている。
【0053】
例えば、
図12(a)に示すように、押圧調整用ボルト51を雌ねじ34aにねじ込むと、第1の取付部材41(第2の取付部材42)が第1の設置用凹部33(第2の設置用凹部35)内を矢印Y方向にスライドし、これにより、模様成形具30の頂部が製品用部材3の所定の表面に食い込む量の調整、すなわち、第1の模様成形具40A(第2の模様成形具40B)と表面との距離を調整することができる。なお、
図12(a)では、押圧調整用ボルト51を最大限ねじ込んだ状態を示しており、このとき、第1の取付部材41(第2の取付部材42)の他方側の側面部が第1の設置用凹部33(第2の設置用凹部35)の端部に当接している。また、第1の取付部材41(第2の取付部材42)の一方側の側面部と第1の設置用凹部33(第2の設置用凹部35)の一方側の側面部との間は、所定寸法の隙間Lとなっている。
【0054】
図12(b)には、第1の模様成形具40A(第2の模様成形具40B)の頂部が製品用部材3の表面に食い込む量を少なくする場合の調整方法を示してある。この場合、押圧調整用ボルト51を逆方向に回すと、第1の取付部材41(第2の取付部材42)が第1の設置用凹部33(第2の設置用凹部35)内をスライド自在となる。そこで、まず、上記所定寸法の隙間Lがなくなるまで押圧調整用ボルト51を逆方向に回す。
【0055】
次いで、第1の模様成形具40A(第2の模様成形具40B)を手で掴んで押圧調整用ボルト51側に引き寄せる。その後、第1の模様成形具40A(第2の模様成形具40B)の頂部の製品用部材3への設定された食い込み量となるように、他方側の側面の寸法の隙間L1に調整用スペーサ52を挿入しておいて、押圧調整用ボルト51を第1の取付部材41(第2の取付部材42)の側面に当接するまでねじ込む。このとき、第1の取付部材41(第2の取付部材42)と第1の設置用凹部33(第2の設置用凹部35)の側面との間の隙間L1と、第1の取付部材41(第2の取付部材42)と第1の設置用凹部33(第2の設置用凹部35)の他方側の側面の隙間L2とを合わせた寸法は、上記
図12(a)における隙間L(=L1+L2)と同じである。
【0056】
なお、押圧調整用ボルト51は、いずれか一方の押圧調整用ボルト51を操作するだけでもよく、あるいは、押圧調整用ボルト51を一つのみ設けていてもよい。
【0057】
図13に示すように、調整用スペーサ52は、所定厚さ寸法に仕上げられたプレートで形成されており、調整用スペーサ52は、第1の模様成形具40A(第2の模様成形具40B)の頂部の製品用部材3に対する食い込み量を調整できるように、厚さの異なる複数種類のプレートが予め準備されている。この調整用スペーサ52は、第1の取付部材41(第2の取付部材42)の厚さと略同じ寸法の長さに形成されている。
【0058】
また、調整用スペーサ52の上端部には、
図13に示すように、幅方向における両端部に把持部53が形成されている。この把持部53は、調整用スペーサ52を第1の設置用凹部33(第2の設置用凹部35)内に挿入させる際に、所定の挟み具(治具)で挟んで作業するために形成されている。
【0059】
次に、以上のように構成される押出しダイス1による製品4の成形方法を説明する。作業に先立って、製品用部材3の表面に凹凸形状の模様Daを成形するための第1の模様成形具40Aと第2の模様成形具40Bを下型ダイ30にセットする。
【0060】
具体的には、第1の模様成形具40Aは、第1の下型31の上部側(中間型側)に設けられた第1の設置用凹部33に第1の取付部材41を挿入してセットする。また、第2の模様成形具40Bは、第1の下型31の下部側(裏面側)に設けられた第2の設置用凹部35に第2の取付部材42を挿入してセットする。このとき、第1の模様成形具40Aと第2の模様成形具40Bの頂部が製品用部材3の側面に食い込む量、つまり凹部Da1及び凸部Da2の高さ寸法を所望の寸法とするために、押圧調整用ボルト51により第1の模様成形具40Aと第2の模様成形具40Bの位置を設定しておく。
【0061】
なお、第1の模様成形具40Aをセットした後、上型ダイ10、中間型20及び第1の下型31は、第1の下型31の裏面から差し込まれる連結ボルト(図示せず)によって連結される。また、第2の模様成形具40Bをセットした後、第2の下型37の4箇所に設けられた貫通孔37aを貫通する連結ボルト38を第1の下型31の下面の4箇所に設けられたねじ孔36に螺合することで、第2の模様成形具40Bが固定される(
図4A,
図8,
図8A参照)。
【0062】
上記のようにして第1の模様成形具40Aと第2の模様成形具40Bをセットした状態で、コンテナ2から上型ダイ10にメタルMが導入され、更に、導入孔11,第1ないし第3の溜まり部21,22,23を経由して下流側に押し出されると、上型ダイ10のマンドレル13の内側ベアリング部15と中間型20の外側ベアリング部25との間をメタルMが通過することにより、メタルMの外形形状が製品4の外形形状に形成され、かつメタルMに中空形状が形成される。中空矩形状に成形されたメタルMすなわち製品用部材3は中間型20の上側ガイド部26に沿って下型ダイ30側に押し出される。上述したように中間型20には、下型ダイ30に設けられた第1の模様成形具40Aを覆うように突出部27が形成されているため、特に、メタルMを押出し始めた時点における先端部分が、第1の模様成形具40Aとマンドレル13との間に挟まれる以前に、第1の模様成形具40Aと接触することを抑制できる。すなわち、製品用部材3の意図した位置に第1の模様成形具40Aの押圧力を作用させることができる。
【0063】
そして、下型ダイ30に押し出された製品用部材3は、下型ダイ30の配置空間32内をガイドされながら下方に押し出される途中で、製品用部材3の押出しに伴って回転する第1の模様成形具40Aにより、製品用部材3の短辺側の対向する表面に凹凸形状の模様Daが連続して成形される。すなわち、第1の模様成形具40Aは、メタルMを押出しダイス1に押圧する荷重を利用して回転するように構成されている。
【0064】
上述したように第1の模様成形具40Aの頂部が、中間型20から押し出される製品用部材3の側面に食い込むとき、その押圧力が製品用部材3に伝わるため、側面が第1の模様成形具40Aと対向する反対側に押される。しかし、
図9に示すように、マンドレル13の第1の模様成形具40Aと対向する面、すなわち逃げ部16と製品用部材3の内面との間には、隙間Sが広い範囲に亘って設けられているので、押された製品用部材3は、その内面が逃げ部16に押し付けられる。すなわち、第1の模様成形具40Aによる製品用部材3の側面への押圧力は逃げ部16で吸収された状態となる。また、第1の模様成形具40Aに押圧されることによって製品用部材3(メタルM)の一部が、第1の模様成形具40Aを既に通過した部分に流動したとしても、第1の模様成形具40Aを通過した部分の内面も、逃げ部16に当接していることにより、中空部側に材料が流動することを抑制できる。これにより、製品用部材3の内面を平滑面に維持することができる。言い換えると、製品用部材3の内面に凹凸形状が生じることを抑制できる。
【0065】
第1の模様成形具40Aによって短辺側の対向する表面に模様Daが成形された製品用部材3は、更に下型ダイ30の配置空間32内をガイドされながら下方に押し出される途中で、製品用部材3の押出しに伴って回転する第2の模様成形具40Bにより、製品用部材3における第1の模様成形具40Aによって模様Daが成形された表面と異なる表面、すなわち製品用部材3の長辺側の対向する表面に凹凸形状の模様Daが連続して成形される。すなわち、第2の模様成形具40Bは、メタルMを押出しダイス1に押圧する荷重を利用して回転するように構成されている。
【0066】
第2の模様成形具40Bにより製品用部材3の長辺側の対向する表面に模様Daを成形する際、第2の模様成形具40Bの頂部が、製品用部材3の側面に食い込むとき、その押圧力が製品用部材3に伝わるため、側面が第2の模様成形具40Bと対向する反対側に押される。しかし、
図9Aに示すように、マンドレル13の第2の模様成形具40Bと対向する面、すなわち逃げ部16と製品用部材3の内面との間には、隙間Sが広い範囲に亘って設けられているので、押された製品用部材3は、その内面が逃げ部16に押し付けられる。すなわち、第2の模様成形具40Bによる製品用部材3の側面への押圧力は逃げ部16で吸収された状態となる。また、第2の模様成形具40Bに押圧されることによって製品用部材3(メタルM)の一部が、第1の模様成形具40Aを既に通過した部分に流動したとしても、第2の模様成形具40Bを通過した部分の内面も、逃げ部16に当接していることにより、中空部側に材料が流動することを抑制できる。これにより、製品用部材3の内面を平滑面に維持することができる。言い換えると、製品用部材3の内面に凹凸形状が生じることを抑制できる。
【0067】
上記のようにして第1の模様成形具40Aにより製品用部材3の短辺側の対向する表面に凹凸形状の模様Daを成形した後、連続して第2の模様成形具40Bにより製品用部材3の長辺側の対向する表面に凹凸形状の模様Daを成形する。そして、所定の製品長さとするまでその作業が継続される。
【0068】
上記のようにして成形された製品4は、
図14Aに示すように、短辺側の対向する表面及び長辺側の対向する表面に凹部Da1と凸部Da2が連続する凹凸波形状の模様Daが成形される。
【0069】
第1の模様成形具40Aと第2の模様成形具40Bの頂部による食い込み量を変えたい場合、上型ダイ10、中間型20、第1の下型31及び第2の下型37の連結を解除して、第1の下型31を取り出す。そして、例えば、食い込む量を少なくする場合には、押圧調整用ボルト51を逆方向に回して、第1の取付部材41(第2の取付部材)が第1の設置用凹部33(第2の設置用凹部35)内をスライド可能にする。ついで、第1の模様成形具40A(第2の模様成形具40B)の押圧調整用ボルト51側に引き寄せた後、第1の模様成形具40A(第2の模様成形具40B)の頂部による所定の食い込み量となるように、第1の設置用凹部33(第2の設置用凹部35)内に所定の調整用スペーサ52を挿入し、押圧調整用ボルト51を第1の模様成形具40A(第2の模様成形具40B)の側面に当接するまでねじ込む。
【0070】
上記実施形態では、この発明に係る押出しダイス1により、製品4の異なる面に同一の凹凸波形状の模様Daを成形する場合について説明したが、この発明に係る押出しダイス1は、これに限定されるものではなく、以下に示すような製品の異なる面に任意の模様を成形するように構成してよい。
【0071】
(a)
図14Bに示すように、製品4の短辺側の対向する表面に凹凸波形状の模様Daを成形し、長辺側の対向する一方の表面に凹凸波形状の模様Daを成形し、対向する他方の表面を無模様Da0に成形する。この場合、第2の模様成形具40Bにおける対向する一方の第2の模様成形具40Bを、その表面に凹凸がないローラーにて形成する。このように構成することにより、短辺側の対向する表面に凹凸波形状の模様Daを成形し、長辺側の対向する一方の表面に凹凸波形状の模様Daを成形し、対向する他方の表面を無模様Da0に成形することができる。
【0072】
(b)
図14Cに示すように、製品4の短辺側の対向する表面の一方に凹凸波形状の模様Daを成形し、対向する他方の表面を無模様Da0に成形する。また、長辺側の対向する一方の表面に凹凸波形状の模様Daを成形し、対向する他方の表面を無模様Da0に成形する。この場合、第1の模様成形具40Aにおける対向する一方の第1の模様成形具40Aを、その表面に凹凸がないローラーにて形成する。また、第2の模様成形具40Bにおける対向する一方の第2の模様成形具40Bを、その表面に凹凸がないローラーにて形成する。このように構成することにより、短辺側の対向する表面の一方に凹凸波形状の模様Daを成形し、対向する他方の表面を無模様Da0に成形することができ、長辺側の対向する一方の表面に凹凸波形状の模様Daを成形し、対向する他方の表面を無模様Da0に成形することができる。
【0073】
(c)
図15に示すように、製品4の短辺側の対向する表面に連続する菱形模様Dbを成形し、長辺側の対向する表面に凹凸波形状の模様Daを成形する。この場合、第1の模様成形具40Aを、連続する菱形凸部を有するローラーにて形成し、第2の模様成形具40Bを、連続する凹部Da1と凸部Da2を成形する頂部と谷部を有するローラーにて形成する。このように構成することにより、短辺側の対向する表面に連続する菱形模様Dbを成形し、長辺側の対向する表面に凹凸波形状の模様Daを成形することができる。
【0074】
(d)
図16に示すように、製品4の短辺側の対向する一方の表面に連続する菱形模様Dbを成形し、対向する他方の表面に連続する四角形模様Dc成形する。また、長辺側の対向する表面に凹凸波形状の模様Daを成形する。この場合、第1の模様成形具40Aにおける一方を、連続する菱形凸部を有するローラーにて形成し、対向する他方の第1の模様成形具40Aを、連続する四角形凸部を有するローラーにて形成し、第2の模様成形具40Bを、連続する凹部Da1と凸部Da2を成形する頂部と谷部を有するローラーにて形成する。このように構成することにより、短辺側の対向する一方の表面に連続する菱形模様Dbを成形し、対向する他方の表面に連続する四角形模様Dc成形し、長辺側の対向する表面に凹凸波形状の模様Daを成形することができる。
【0075】
なお、上記(a)~(d)に説明した、凹凸形状の模様Da,菱形模様Db,四角形模様Dc等は1例であって、上記以外のその他の形状の模様、例えば、丸形模様、三角形状の模様、五角形模様、多角形状の模様等を成形するようにしてもよい。また、上記実施形態では、マンドレル13の断面を長方形にして、製品4を断面矩形状にした場合について説明したが、製品4の形状はこれに限定されるものではない。例えば、マンドレル13の断面を正方形にして、製品4を断面正方形状にしてもよい。
【0076】
上記のように構成される実施形態の押出しダイス1によれば、中空部を有する製品用部材3の対向する表面又は対向する表面の少なくとも一方に無模様D0を含む凹凸模様Da,Db,Dcが成形され、次いで、製品用部材3における上記模様Da,Db,Dcが成形された面と異なる対向する表面又は対向する表面の少なくとも一方に第2の模様成形具40Bによる押圧力が作用して製品用部材3の対向する表面に無模様D0を含む凹凸模様Da,Db,Dcが成形される。したがって、中空部を有する製品用部材3の異なる表面に任意の無模様D0を含む凹凸模様Da,Db,Dcを連続して成形することができる。
【0077】
また、第1の模様成形具40A及び第2の模様成形具40Bによって模様Da,Db,Dcを成形する際には、その押圧力が逃げ部16によって吸収されて、製品用部材3の内面を逃げ部16に密着させることができるため、製品用部材3の内面に凹凸形状が生じることや、その凹凸形状を形成する一面が変形することを抑制できる。
【0078】
また、第1の模様成形具40A及び第2の模様成形具40Bの模様成形部の押圧により製品用部材3の下流側に流動した材料のうち中空部側に流動する材料は、逃げ部16によって規制される。その結果、製品用部材3の内面を逃げ部16に密着させた状態を維持することができることにより、製品用部材3の内面に凹凸形状などが生じるのを抑制できる。
【0079】
また、第1の模様成形具40A及び第2の模様成形具40Bは、同一模様成形具にて形成するか、製品用部材3の対向する表面の一方に模様を成形しない無模様成形具を含むか、あるいは、製品用部材3の異なる表面にそれぞれ異なる模様Da,Db,Dc(無模様Da0を含む)を成形する異形模様成形具を含むものを任意に組み合わせることができるので、中空部を有する製品用部材3の異なる表面に、無模様Da0を含む任意の模様Da,Db,Dcを選択して成形することができる。
【0080】
更に、第1の模様成形具40A及び第2の模様成形具40Bは、製品用部材3側に向かって押圧調整されることによって、第1の模様成形具40A及び第2の模様成形具40Bの製品用部材3に対する押圧力、換言すると第1の模様成形具40A及び第2の模様成形具40Bが製品用部材3に食い込む量が調整される。したがって、製品用部材3に付される模様Da,Db,Dcの深さを適宜調整することができる。また、異なる模様Da,Db,Dcを成形する第1の模様成形具40A及び第2の模様成形具40Bの第1の下型への組込を容易にすることができる。
【0081】
なお、上記実施形態では、製品の材料がアルミニウム合金である場合について説明したが、製品の材料は、アルミニウム合金に限らず、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)などの汎用のプラスチックや、PA(ポリアミド)などのエンジニアリング・プラスチックなどの合成樹脂を使用してもよい。
【0082】
また、この発明に係る押出しダイス1は、メタルMを上方側から供給する縦型構成に限らず、例えば、押出しダイスを水平方向に配置し、メタルMを横側から供給する横型構成としてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 押出しダイス
3 製品用部材
4 製品
10 上型ダイ
13 マンドレル
15 内側ベアリング部
16 逃げ部
20 中間型
25 外側ベアリング部
26 上側ガイド部
30 下型ダイ
31 第1の下型
32 配置空間(模様成形具配置空間)
33 第1の設置用凹部
34 貫通孔
34a 雌ねじ
35 第2の設置用凹部
37 第2の下型
38 連結ボルト
39 下側ガイド部
40A 第1の模様成形具
40B 第2の模様成形具
41 第1の取付部材
42 第2の取付部材
43 軸受
44 軸部
51 押圧調整用ボルト
52 調整用スペーサ
Da 波形状模様
Db 菱形模様
Dc 四角形模様
M メタル