(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047745
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】着脱式跳ね上げ眼鏡
(51)【国際特許分類】
G02C 9/02 20060101AFI20240401BHJP
G02C 5/00 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
G02C9/02
G02C5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153406
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】397038565
【氏名又は名称】株式会社エニックス
(74)【代理人】
【識別番号】230124763
【弁護士】
【氏名又は名称】戸川 委久子
(74)【代理人】
【識別番号】100224742
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】山出 重克
【テーマコード(参考)】
2H006
【Fターム(参考)】
2H006CA01
(57)【要約】
【課題】任意のレンズが取り付けられたフロントフレームを着脱自在に眼鏡フレームに固定できるうえ、外観上の不体裁を防止することができるとともに安価に製造することができる着脱式跳ね上げ眼鏡を提供すること。
【解決手段】本発明の着脱式跳ね上げ眼鏡100は、智部12・12同士を連結する連結部材13、または眼鏡フレーム1とは別体でありレンズ22が取り付けられたフロントフレーム2の何れか一方に、フロントフレーム2の跳ね上げにおける回転軸部15を設ける一方、フロントフレーム2、または連結部材13の回転軸部15が設けられていない他方には、回転軸部15に着脱可能に挟持するクリップ部3を設け、クリップ部3が回転軸部15に挟持力を与えながらフロントフレーム2を回動して跳ね上げ可能であり、クリップ部3の挟持力によってフロントフレーム2を任意の跳ね上げ位置で保持可能な構成とした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右のテンプルと前記テンプルを各々回動自在に連結する一対の智部と前記智部同士を連結する連結部材とを少なくとも備える眼鏡フレームに、レンズが取り付けられ前記眼鏡フレームとは別体であるフロントフレームを着脱できる着脱式跳ね上げ眼鏡において、
前記連結部材には回転軸部が設けられており、
前記フロントフレームには前記回転軸部を着脱可能に挟持するクリップ部が設けられ、
前記クリップ部が前記回転軸部に挟持力を与えながら前記フロントフレームを回動して跳ね上げ可能であり、
前記クリップ部の挟持力によって前記フロントフレームを任意の跳ね上げ位置で保持可能であることを特徴とする、着脱式跳ね上げ眼鏡。
【請求項2】
左右のテンプルと前記テンプルを各々回動自在に連結する一対の智部と前記智部同士を連結する連結部材とを少なくとも備える眼鏡フレームに、レンズが取り付けられ前記眼鏡フレームとは別体であるフロントフレームを着脱できる着脱式跳ね上げ眼鏡において、
前記フロントフレームには回転軸部が設けられており、
前記連結部材には前記回転軸部を着脱可能に挟持するクリップ部が設けられ、
前記クリップ部が前記回転軸部に挟持力を与えながら前記フロントフレームを回動して跳ね上げ可能であり、
前記クリップ部の挟持力によって前記フロントフレームを任意の跳ね上げ位置で保持可能であることを特徴とする、着脱式跳ね上げ眼鏡。
【請求項3】
前記クリップ部は、前記回転軸部を受ける軸受け部と、前記回転軸部に荷重を与える可動片とを備え、
前記可動片を操作することで、前記回転軸部に対して前記クリップ部を挟持状態または非挟持状態に切り換え可能であることを特徴とする、請求項1または2に記載の着脱式跳ね上げ眼鏡。
【請求項4】
前記回転軸部の横断面形状は多角形であり、
前記クリップ部における前記回転軸部との当接面の少なくとも一部は、横断面形状が前記回転軸部の横断面に対応した多角形であることを特徴とする、請求項1または2に記載の着脱式跳ね上げ眼鏡。
【請求項5】
前記クリップ部における前記回転軸部との当接面の一部の横断面形状が多角形であるとともに、多角形である部分以外の面が平面または曲面であることを特徴とする、請求項1または2に記載の着脱式跳ね上げ眼鏡。
【請求項6】
前記可動片は、前記軸受け部との間に設けられたねじりばねの弾性力によって、前記回転軸部に荷重を与えることを特徴とする、請求項3に記載の着脱式跳ね上げ眼鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者が装着する眼鏡フレームとは別体の、レンズが取り付けられたフロントフレームを必要に応じて選択して着脱でき、さらに装着したフロントフレームを跳ね上げるとともに任意の角度で固定して使用することもできる着脱式跳ね上げ眼鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
周知の眼鏡には近視や遠視等の視力矯正用のレンズの他、日光や反射光を遮るレンズ、視認対象物を拡大するレンズ等の種々のレンズが取り付けられている。利用者は、自身の視力の具合や使用目的に応じてそれらレンズが取り付けられた眼鏡を適宜選択して装着する。しかし、視力の異常が複数ある場合や使用目的によっては、最適なレンズが取り付けられた異なる眼鏡を頻繁に取り替えなければならない。そのため、利用者は普段から複数の眼鏡を携行しなければならないという不便を強いることがあった。
【0003】
このような不便を解消することができるものとして、任意のレンズが取り付けられたフロントフレームを、眼鏡フレームに回動自在に固定した眼鏡が知られている。この眼鏡はいわゆる跳ね上げ眼鏡と呼ばれ、フロントフレームを跳ね上げたり降ろしたり(以下、何れの操作も「跳ね上げ」という)することで裸眼の状態とレンズを介した状態とを容易に切り換えて使用することができる。また、眼鏡フレームにあらかじめ別のレンズが取り付けられている場合には、例えば視力矯正用のレンズを介した状態と、それにサングラス用レンズが重ね合わさった状態とを切り換えて使用することができる。
【0004】
ところが、跳ね上げ眼鏡であっても、フロントフレームに取り付けたレンズの度数が合わなくなった場合や、サングラス用のレンズの色や偏光の具合が環境に合わないような場合には結局眼鏡全体を別のレンズが取り付けられた眼鏡と取り替えなければならない。そのため、跳ね上げ眼鏡であっても複数の眼鏡を携行しなければならない点には変わりなく、嵩張って不便であるという問題が残っていた。
【0005】
一方、眼鏡フレームにあらかじめレンズが取り付けられている場合においても、例えば暗いところでは、視力矯正用のレンズに重ねて用いているサングラス用のレンズのみが不要になる場合がある。このように、眼鏡フレームにあらかじめレンズが取り付けられている跳ね上げ眼鏡であっても、一時的にフロントフレームのレンズが不要になる場合には、上述のように跳ね上げて用いることができるため便利である。
【0006】
しかし、長時間にわたりフロントフレームが不要である場合、跳ね上げた状態では、フロントフレームの重量により装着者の疲労が蓄積したり、眼鏡フレームを装着した状態の外見がフロントフレームのデザインによって不体裁になったりする。そのため、フロントフレームを取り外すことができない跳ね上げ眼鏡であると、フロントフレームが長時間にわたり不要である場合には、装着感や外見の点で不都合が生じるという問題がある。
【0007】
このような従来の跳ね上げ眼鏡においては、例えば、フロントフレームを眼鏡フレームに磁石によって着脱可能とするとともに、フロントフレームを跳ね上げて、フロントフレームを使用位置と不使用位置とに枢転可動とする技術が開発されている。
特許文献1では、
図11に示すようなサブレンズ装置付き眼鏡フレームの技術が開示されている。この技術では、サブレンズ装置付き眼鏡フレーム800を、メインフレーム810、サブレンズ装置820及び連接手段830とから構成し、メインフレーム810に取り付けた磁石840と、連接手段830とを磁着することで、連接手段830に固定されたサブレンズ装置820をメインフレーム810に対して着脱可能としている。また、サブレンズ装置820の連接棒850、及びそれを受け入れる連接手段830の収容室860は、横断面がそれぞれ同じ多角形状となっており、跳ね上げにおいて収容室860に対して連接棒850が回転するとき、多角形の内角ごとに収容室860と連接棒850とがかみ合い、『サブレンズ装置を適宜位置に保持できる』とされている。
【0008】
また、特許文献2では、
図12に示すようなメガネに取り付ける捲り上げ式サングラスの技術が開示されている。この技術では、メガネに取り付ける捲り上げ式サングラス900を、2枚のサングラスレンズとしてのグラスレンズ910・910と挟み装置920とで構成し、挟み装置920のはじき片930を操作することで、挟み爪940を眼鏡のブリッジに挟み込んで固定したり、取り外したりすることができるようにしている。また、グラスレンズ910を跳ね上げるときには、グラスレンズ910がU字型ピボット950の固定面960を回転軸として回転する。断面四角形の固定面960が回転によって反転するとき、固定面960の一方の面に弾性力を与えて位置を固定させていたスプリング970が、固定面960の反対面に弾性力を与えるように切り換わる。これにより、グラスレンズ910を『所定の角度に旋回できる』とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実用新案登録第3074887号公報
【特許文献2】実用新案登録第3175958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、特許文献1の技術では、サブレンズ装置をメインフレームに取り付けるための、連接手段のメインフレームに対する固定部分と、サブレンズ装置の回転軸とが異なる位置に配置されている。そのため、連接手段それ自体が大きなものになってしまい、サブレンズ装置全体が目立って外観上不体裁になるという問題が生じてしまう。
【0011】
この問題は特許文献2の技術であっても同様であり、挟み装置をブリッジに挟み込んで固定するための挟み爪と、グラスレンズの回転軸となるU字型ピボットの固定面とが異なる位置に別個に構成されているため、挟み装置それ自体が大きなものにならざるを得ない。
【0012】
本発明は、上記のような問題に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、任意のレンズが取り付けられたフロントフレームを着脱自在に眼鏡フレームに固定できるうえ、外観上の不体裁を防止することができるとともに安価に製造することができる着脱式跳ね上げ眼鏡を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者が上記課題を解決するために採用した手段を以下に説明する。
本発明の着脱式跳ね上げ眼鏡は、左右のテンプルと前記テンプルを各々回動自在に連結する一対の智部と前記智部同士を連結する連結部材とを少なくとも備える眼鏡フレームに、レンズが取り付けられ前記眼鏡フレームとは別体であるフロントフレームを着脱できる着脱式跳ね上げ眼鏡である。
本発明において、智部は連結部材とは別体の構成である場合だけでなく、連結部材と一体に構成され、連結部材の一部が智部となっている場合も含まれる。
【0014】
その基本的な構成としては、前記連結部材には回転軸部を設け、前記フロントフレームには前記回転軸部を着脱可能に挟持するクリップ部を設けた構成としている。前記回転軸部は、前記フロントフレームを跳ね上げる際に回転の中心軸となる軸部である。
ここで、本発明においてクリップ部とは、対象物に対して任意の手段で挟持力を与えながら挟みこむための構成をいう。また、クリップ部とは、フロントフレームの一部として構成されているものだけでなく、フロントフレームと別体としてフロントフレームに設けられている構成も含まれる。
【0015】
そして、前記クリップ部が前記回転軸部に挟持力を与えながら前記フロントフレームを回動して跳ね上げ可能であり、前記クリップ部の挟持力によって前記フロントフレームを任意の跳ね上げ位置で保持可能としている。
クリップ部が回転軸部に挟持力を与えていることにより、フロントフレームを眼鏡フレームに対して安定的に固定することができる。それに加えて、クリップ部が回転軸部に挟持力を与えながらフロントフレームを回動させることができるため、跳ね上げ操作において適度な抵抗感が伴い、装着者の希望する跳ね上げ位置に調整しやすくなる。
また、クリップ部が回転軸部に挟持力を継続的に与えていることによって、フロントフレームを任意の跳ね上げ位置で安定して保持し続けることができる。
【0016】
本発明は、上記のように、回転軸部が、クリップ部の着脱のための固定部であるとともに、クリップ部によって固定される回転軸部それ自体が、フロントフレーム跳ね上げにおける回転の中心軸にもなっている。
そのため、眼鏡フレームに対してフロントフレームを固定するための構成と、フロントフレームを回動させて跳ね上げ、保持させるための構成とを一体で実現することができ、構成を単純にすることができる。
【0017】
課題解決のために採用し得る手段としては、前記フロントフレームに回転軸部を設け、前記連結部材には前記回転軸部を着脱可能に挟持するクリップ部を設けた構成とすることも可能である。
このように、回転軸部を設ける対象が連結部材ではなくフロントフレーム側であり、クリップ部を設ける対象が連結部材側であったとしても、同様の作用により、回転軸部が、クリップ部の着脱のための固定部であるとともに、クリップ部によって固定される回転軸部それ自体が、フロントフレーム跳ね上げにおける回転の中心軸とすることができる。
そのため、眼鏡フレームに対してフロントフレームを固定するための構成と、フロントフレームを回動させて跳ね上げ、保持させるための構成とを一体で実現することができ、構成を単純にすることができる。
【0018】
課題解決のために採用し得る手段においては下記の手段を用いることも可能である。
他の手段における着脱式跳ね上げ眼鏡のひとつとしては、上記の構成に加え、前記クリップ部を、前記回転軸部を受ける軸受け部と、前記回転軸部に荷重を与える可動片とを備えた構成とし、前記可動片を操作することで、前記回転軸部に対して前記クリップ部を挟持状態または非挟持状態に切り換え可能することも可能である。
【0019】
クリップ部を軸受け部と可動片とにより構成することで、クリップ部を一体のものとして構成する場合と比較して、挟持状態または非挟持状態への切り換え操作がしやすくなる。そのため、クリップ部の回転軸部への着脱操作が容易になる。
【0020】
上記いずれの構成においても、前記回転軸部の横断面形状を多角形にするとともに、前記クリップ部における前記回転軸部との当接面の少なくとも一部を、横断面形状が前記回転軸部の横断面に対応した多角形とすることも可能である。
回転軸部、及びクリップ部における回転軸部の当接面の少なくとも一部を多角形とすることにより、多角形の内角に応じた角度ごとにクリップ部を位置決めすることができる。これにより、フロントフレームの跳ね上げ位置を、所定の角度ごとに選択的に位置決めすることができる。
【0021】
また、回転軸部の当接面は、跳ね上げにおける回転の摺動面であるところ、回転軸部、及びクリップ部における回転軸部との当接面の横断面が多角形となるようにすると、回転時に回転軸部の多角形の角に相当する部分をクリップ部の当接面が乗り上げる際に、クリップ部の挟持力によって抵抗感が徐々に増加し、次いで角を乗り越えると抵抗感が急激に減少するような感触(いわゆるクリック感)となる。これにより、位置決めされたことが感触として装着者に伝わりやすくなる。
なお、回転軸部の横断面に対応した多角形とは、回転軸部の横断面形状と同一の多角形であることに限定されず、所定の角度ごとに位置決めできるような多角形であれば、互いに角度や外接円の大きさが異なっているものも含まれる。
【0022】
上記の構成のように、回転軸部、及びクリップ部における回転軸部の当接面の少なくとも一部の横断面形状を多角形とする構成とした場合、多角形である部分以外の面を平面または曲面とすることも可能である。
クリップ部における回転軸部との当接面の横断面の全体が多角形であると、回転の抵抗が過度に強くなり、クリック感が鈍い感触となる場合がある。しかし、前記クリップ部における前記回転軸部との当接面の一部の横断面形状を多角形とするとともに、多角形である部分以外の面を平面または曲面とすると、抵抗感を適度に減少させることができ、クリック感と、任意の跳ね上げ位置におけるフロントフレームの安定的な保持とを両立させることができる。
この構成において、クリップ部を軸受け部と可動片とによって構成する場合は、軸受け部または可動片の何れか一方の回転軸部との当接面を多角形とし、他方の回転軸部との当接面を平面または曲面とすることができる。
【0023】
さらに、上記の構成とする場合には、前記可動片を、前記軸受け部との間に設けられたねじりばねの弾性力によって、前記回転軸部に荷重を与える構成とすることも可能である。
ねじりばねはトルク(ねじりモーメント)によって力を発生させる弾性素子であるため、小さな構成で大きな弾性力を生じさせることができる。このような特徴から、可動片と軸受け部との間という僅かな領域においても弾性素子を配置することができ、可動片を回転軸部に押し付けて適切な挟持力を与えることができる。そのため、クリップ部の大きさを大きくすることなく構成することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明では、眼鏡フレームの前記連結部材または前記フロントフレームの何れか一方に回転軸部を設け、その他方に設けられたクリップ部を、前記回転軸部に着脱可能に取り付けることができる。そのため、レンズの異なる複数のフロントフレームから任意のひとつを選択して装着することができるほか、フロントフレームが長時間にわたって不要である場合には、眼鏡フレームから適宜取り外すことができる。すなわち、本発明は、任意のレンズが取り付けられたフロントフレームを着脱自在に眼鏡フレームに固定することができるという効果を奏する。
【0025】
また、クリップ部が回転軸部に挟持力を与えながらフロントフレームを回動して跳ね上げ可能であり、クリップ部の挟持力によってフロントフレームを任意の跳ね上げ位置で保持可能としている。これにより、クリップ部を回転軸部へ固定する構成と、フロントフレームを跳ね上げて任意の位置で保持させる構成とを、一つの構成で実現することができ、跳ね上げや着脱に係る構成を単純で小さくすることができる。すなわち、本発明は、クリップ部が目立つことなく、外観上の不体裁を防止することができるとともに、部品点数も少なくすることができるため、安価に製造することができるという効果をも奏する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の着脱式跳ね上げ眼鏡を表す三面図である。
【
図2】本発明の連結部及び回転軸部を表す部分平面図及び拡大端面図である。
【
図4】本発明のフロントフレームを跳ね上げる場合の説明図である。
【
図5】本発明の変形例1のフロントフレームを表す三面図である。
【
図6】本発明の変形例1のクリップ部を表す側面図である。
【
図7】本発明の変形例1のフロントフレームを跳ね上げる場合の説明図である。
【
図8】本発明の変形例2のクリップ部及び回転軸部を表す側面図である。
【
図9】本発明の変形例3のクリップ部及び回転軸部を表す側面図である。
【
図10】本発明の変形例4である着脱式跳ね上げ眼鏡を表す三面図である。
【
図11】特許文献1の従来例を表す分解斜視図及び側面図である。
【
図12】特許文献2の従来例を表す分解斜視図及び側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明を実施するための形態について、
図1から
図4に基づいて以下に説明する。
本発明の着脱式跳ね上げ眼鏡100は、
図1に示すように、眼鏡フレーム1と、レンズが取り付けられ眼鏡フレーム1とは別体であるフロントフレーム2とを備えている。
眼鏡フレーム1は、左右のテンプル11・11と、テンプル11・11を各々回動自在に連結する一対の智部12・12と、智部12・12同士を連結する連結部材であるブローバー13とを備えている。なお、
図1の形態では、智部12はブローバー13と一体に構成され、ブローバー13の端部が智部12を形成している。
ブローバー13の中央部には、一対の鼻当て部14・14が設けられている。眼鏡フレーム1にはレンズを備えておらず、もっぱら顔面に装着するとともに、フロントフレーム2を装着するためのベースとなるフレームである。
【0028】
眼鏡フレーム1のブローバー13は、
図2に示すように、中間部に回転軸部15が設けられている。回転軸部15は、正面視において左右方向に水平に設けられた横断面六角形の六角柱形状であり、後述するフロントフレーム2のクリップ部3が取り付けられる。この回転軸部15は、クリップ部3の挟持力に対して変形しない十分な弾性及び表面硬さを有していれば材質は限定されないが、製造コストの観点からは樹脂製であるのが好ましい。
【0029】
再び
図1を参照すると、フロントフレーム1は、前記回転軸部15を挟持して固定するためのクリップ部3と、クリップ部3と一体に形成されたレンズ固定部21と、レンズ固定部21に固定されたレンズ22・22とを備えている。
図1の形態では、レンズ固定部21はレンズ22の上半分を固定するとともにナイロン糸によってレンズ22の下半分を吊り下げた形態であり、いわゆるハーフリムとなっている。
レンズ22・22は、視力矯正用のレンズやサングラス用のレンズ、拡大レンズ等種々のレンズを用いることができる。
【0030】
クリップ部3は、
図3に示すように、回転軸部15を受け入れるための間隙部31を有している。
図3は、クリップ部3を装着者側から見た三面図である。間隙部31の大きさは、回転軸部15よりも僅かに小さく設定されている。また、間隙部31には一部に切り欠き部32が設けられている。
この切り欠き部32に対して回転軸部15を押し付けると、切り欠き部32が大きく拡開して回転軸部15が間隙部31内に挿入される。拡開した間隙部31内に回転軸部15が挿入されると、切り欠き部32が弾性力によって元に戻る。
前述のとおり、間隙部31の大きさは回転軸部15よりも僅かに小さいため、挿入された状態では、クリップ部3が弾性的に変形し、間隙部31が僅かに拡開している。すなわち、間隙部31の元の大きさと回転軸部15の大きさとの差分だけ、クリップ部3が撓んで間隙部31が僅かに拡開した状態を維持しているため、その撓み量に応じた弾性力が回転軸部15に挟持力として作用するようになっている。
【0031】
このように、クリップ部3が回転軸部15に対して挟持力を与え続けているため、フロントフレーム2が、眼鏡フレーム1に対してガタつくことなく安定的に保持される。
なお、
図1の形態では、クリップ部3は弾性的に変形して回転軸部15に挟持力を与える必要があることから、クリップ部3は適度な弾性を有する材質であるのが好ましく、製造コストの観点からは樹脂製であることがより好ましい。
【0032】
次に、フロントフレーム2を跳ね上げる場合について、
図4に基づいて説明する。
フロントフレーム2のレンズ22・22が装着者の眼前に取り付けられている状態から、レンズ22・22が装着者の目を覆わない位置まで跳ね上げる場合、レンズ22・22の下辺が前方かつ上方に移動するように操作する。すると、眼鏡フレーム1は装着されたまま、回転軸部15を中心軸としてクリップ部3が回転する。
【0033】
このとき、
図4(a)(b)に示すように、横断面視では、回転軸部15の六角形の任意の角に、間隙部31の六角形の直線部が摺動する。それとともに、六角形の外接円と内接円との差分だけ、間隙部31が拡開し、その撓み量に応じて挟持力が増加する。
【0034】
クリップ部3が、六角形の内角(この場合約60度)だけ回転すると、
図4(c)に示すように、間隙部31の横断面の六角形と、回転軸部15の横断面の六角形とがずれて、隣り合う角同士が同じ位置となる。回転においては、間隙部31の六角形の直線部の中央が、回転軸部15の六角形の角を乗り越える(通り過ぎる)までは徐々に力を増加させる必要があるが、乗り越えた後は、反対に間隙部31の拡開が元に戻ろうとするため、力を入れなくとも六角形の角同士が同じになる位置まで吸引されるように回転する。このような感触は、いわゆるクリック感と呼ばれ、位置決めされたことが装着者に感触として伝わりやすくなる。
【0035】
約60度跳ね上がって位置決めされた状態においては、上述のように、間隙部31の元の大きさと回転軸部15の大きさとの差分だけ、クリップ部3が撓んで間隙部31が僅かに拡開した状態を維持しているため、フロントフレーム2は、その挟持力によって跳ね上がった位置で安定的に保持されている。
【0036】
上記操作のあと、再びフロントフレーム2を跳ね上げるように操作すると、同じ作用によってフロントフレーム2は、さらに約60度だけクリック感を伴って跳ね上がり、跳ね上がった位置で再び安定的に固定される。
一方、上記操作のあと、逆方向となるようにレンズ22・22の下辺が後方かつ下方に移動するように操作すると、フロントフレーム2は、上方に跳ね上げる場合と同様の作用により、約60度だけクリック感を伴って降ろされ、レンズ22・22が眼前となる位置に安定的に保持される。
【0037】
以上のように、
図1から
図4の形態では、クリップ3それ自体が弾性的に変形することによって、回転軸部15に対して挟持力を与えている。そのため、挟持力を与えながらフロントフレーム2を回動して跳ね上げ可能であるとともに、クリップ部3の挟持力によってフロントフレーム2を約60度ごとの跳ね上げ位置で保持可能としている。
【0038】
『変形例1』
次に、本発明の変形例に係るフロントフレーム2について、
図5から
図7に基づいて説明する。なお、以降の説明においては同一の部分については同一の符号を用い、重複する説明は割愛する。
【0039】
本変形例は、
図5に示すように、フロントフレーム2にハイカーブの左右一体のレンズ22が取り付けられたサングラスとなっている。レンズ固定部21は、クリップ部3と一体に形成されるとともに、リム形状ではなくレンズ22の上辺中央部のみを固定する構成となっている。
【0040】
本変形例のクリップ部3は、
図6に示すように、レンズ固定部21と一体に形成された軸受け部33と、軸受け部33に対向するように配置された可動片34と、軸受け部33と可動片34との間に配置されたねじりばね35と、ねじりばね35のコイル部分を挿通させて軸受け部33と可動片34とを固定している固定ピン36とから構成されている。なお、固定ピン36は、軸受け部33または可動片34と一体に構成されていてもよいが、別体の棒体として構成してもよい。
【0041】
クリップ部3の軸受け部33は、眼鏡フレーム1の回転軸部15との当接面331(すなわち、軸受けの一部となる面)の横断面が、回転軸部15の横断面に対応した六角形状となっている。一方、クリップ部3の可動片34は、眼鏡フレーム1の回転軸部15との当接面341(すなわち、軸受けの一部となる面)は、やや湾曲した曲面となっている。
【0042】
クリップ部3が回転軸部15に取りつけられているとき、可動片34の下方に配置されているねじりばね35が僅かに変形した状態となっている。これにより、可動片34の回転軸部15との当接面341を押し下げるような弾性力が作用している。すなわち、可動片4は、ねじりばね35によって、当接面341を回転軸部15に押し付けるように作用しており、可動片34の当接面341と、軸受け部33の当接面331とによって、回転軸部15を挟持している状態となっている。
【0043】
クリップ部3が回転軸部15に取り付けられている状態から、可動片34の操作面342を押すと、固定ピン36が回転軸となって当接面341が浮き上がる。これにより生じた間隙部から回転軸部15を引き抜くと、フロントフレーム2を眼鏡フレーム1から取り外すことができる。
逆に、取り外した状態から、可動片34の操作面342を押すことによって生じた間隙部に回転軸部15を差し込むことで、軸受け部33の当接面331と可動片34の当接面341との間隙部に回転軸部15が収納され、フロントフレーム2を眼鏡フレーム1に取り付けることができる。
【0044】
次に、フロントフレーム2を跳ね上げる場合について、
図7に基づいて説明する。
まず、フロントフレーム2のレンズ22が装着者の眼前に取り付けられている状態から、レンズ22が装着者の目を覆わない位置まで跳ね上げる場合、レンズ22の下辺が前方かつ上方に移動するように操作する。すると、眼鏡フレーム1は装着されたまま、回転軸部15を中心軸としてクリップ部3が回転する。
【0045】
このとき、
図7(a)(b)に示すように、横断面視では、回転軸部15の六角形の任意の角に、軸受け部33の当接面331及び可動片34の当接面341の六角形の直線部が摺動する。それとともに、六角形の外接円と内接円との差分だけ、可動片34の当接面341が上方に浮き上がり、そのとき生じるねじりばね35の変形量に応じて挟持力が増加する。
【0046】
クリップ部4が、六角形の内角(この場合約60度)だけ回転すると、
図7(c)に示すように、軸受け部33の当接面341の六角形と、回転軸部15の横断面の六角形とがずれ、隣り合う角同士が同じ位置となる。回転においては、軸受け部33の当接面331の六角形の直線部の中央が、回転軸部15の六角形の角を乗り越える(通り過ぎる)までは徐々に力を増加させる必要があるが、乗り越えた後は、ねじりばね35の作用により可動片34の当接面341が元に戻ろうとするため、力を入れなくとも六角形の角同士が同じになる位置まで吸引されるように回転する。
【0047】
前述のように、本変形例では、可動片34の当接面341を曲面としている。回転軸部15に対する当接面の全体を六角形状とすると、回転軸部15と確実に嵌合されるため、フロントフレーム2をより安定的に保持することができる。しかし、回転時においては、六角形の角と直線部との摺動箇所が多くなるため、回転の抵抗感が強くなり、フロントフレーム2の跳ね上げ時に、眼鏡フレーム1がともに浮き上がって顔面から外れやすくなってしまう場合がある。
【0048】
そこで、本変形例のように、軸受け部33の当接面331は、回転軸部15の横断面形状に対応した六角形とする一方で、可動片34の当接面341は、曲面あるいは平面としておくことにより、六角形の角と直線部との摺動箇所が減少し、回転の抵抗感が適度に緩和されて、フロントフレーム2の跳ね上げ時に、眼鏡フレーム1がともに浮き上がって顔面から外れてしまうことを防止することができる。
【0049】
以上のように、本変形例では、可動片34の下方に配置されたねじりばね35が弾性的に変形することによって、可動片34の当接面341が回転軸部15に対して挟持力を与えている。そのため、挟持力を与えながらフロントフレーム2を回動して跳ね上げ可能であるとともに、クリップ部3の挟持力によってフロントフレーム2を約60度ごとの跳ね上げ位置で保持可能としている。
【0050】
また、弾性力を生じさせる構成にねじりばね35を採用したことにより、固定ピン36と同軸にねじりばね35のコイル部分を配置することができるとともに、僅かな変形量で大きなねじりモーメントを発生させることができる。そのため、狭い範囲に部品を密集して配置することができるとともに、適切な挟持力を与えることができる。これにより、クリップ部3を大きくすることなく構成することができ、デザインを工夫する幅を広げることができる。
【0051】
『変形例2』
次に、本発明の別の変形例に係るクリップ部3及び回転軸部15について、
図8に基づいて説明する。
本変形例は、
図6の形態に対して、回転軸部15の横断面形状が四角形であり、クリップ部3における軸受け部33の当接面331もそれに対応した四角形となっている点が異なっている。
また、可動片34の当接面341は、平面としている。
【0052】
回転軸部15の横断面形状を四角形とすることで、内角が約90度となるため、フロントフレーム2のレンズ22を、装着者の眼前の位置から、装着者の眼を覆わない位置まで、一度の跳ね上げ操作で跳ね上げることができる。
【0053】
『変形例3』
次に、本発明の別の変形例に係るクリップ部3及び回転軸部15について、
図9に基づいて説明する。
本変形例は、
図6の形態に対して、回転軸部15の横断面形状が円形であり、クリップ部3における軸受け部33の当接面331、及び可動片34の当接面341もそれに対応した円形となっている点が異なっている。
【0054】
回転軸部15の横断面形状を円形とすることで、クリック感を生じさせる角が存在せず、フロントフレーム2の跳ね上げ位置を随意の位置で保持することができる。なお、この形態であっても、可動片34の当接面341が、ねじりばね35によって挟持力を与えながらフロントフレーム2を回動して跳ね上げ可能であるため、クリップ部3の挟持力によってフロントフレーム2を随意の跳ね上げ位置で保持可能である。
【0055】
『変形例4』
次に、本発明の別の変形例に係る着脱式跳ね上げ眼鏡101について、
図10に基づいて説明する。
本変形例は、
図10に示すように、眼鏡フレーム1の連結部材であるリム部16に、レンズ17・17が取り付けられている。このレンズ17・17は、近視や老眼を矯正するための視力矯正用のレンズであり、装着者は日常生活においてはこのレンズ17・17を介して対象物を視認する。
【0056】
また、クリップ部3は、
図1の形態とは異なり、眼鏡フレーム1側に設けられている一方、フロントフレーム2には回転軸部23が設けられている。この構成であっても、クリップ部3には、
図3のような形態や、
図6や
図8、
図9のような形態を採用することもできる。
このように、クリップ部3を眼鏡フレーム1側に設けることによって、フロントフレーム2の構成をより簡素化することができるため、レンズの種類が異なる複数のフロントフレーム2・2…を携行する場合に、携帯性が良くなる。
【0057】
本発明は以上の実施形態に限られず、例えば、クリップ部3における軸受け部33と可動片34を上下反対にしてもよいし、弾性力を与える構成をコイルばねやその他の弾性体を介在させるように構成してもよい。
また、回転軸部15・23の断面形状を、正多角形ではなく、異なる角度が混在する多角形や、円形の一部に角を持つ形状(いわゆる涙形)等のように、所定の角度のときだけクリック感が生じるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0058】
100,101 着脱式跳ね上げ眼鏡
1 眼鏡フレーム
11 テンプル
12 智部
13 ブローバー
14 鼻当て部
15 回転軸部
16 リム部
17 レンズ
2 フロントフレーム
21 レンズ固定部
22 レンズ
23 回転軸部
3 クリップ部
31 間隙部
32 切り欠き部
33 軸受け部
331 当接面
34 可動片
341 当接面
342 操作面
35 ねじりばね
36 固定ピン