(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047747
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】模擬臓器モデル
(51)【国際特許分類】
G09B 23/32 20060101AFI20240401BHJP
G09B 9/00 20060101ALI20240401BHJP
G09B 19/00 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
G09B23/32
G09B9/00 Z
G09B19/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153410
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】720009479
【氏名又は名称】オンキヨー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】定家 弘一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 誠
【テーマコード(参考)】
2C032
【Fターム(参考)】
2C032CA03
2C032CA06
(57)【要約】
【課題】心臓等の臓器の複雑な動きを再現可能な手段を提供すること。
【解決手段】模擬臓器モデル1は、外殻2と、外殻2を振動させるための加振器3と、を備える。加振器3は、臓器の振動に基づいた交流信号により、駆動される。模擬臓器モデル1は、臓器の振動に基づいた交流信号により、加振器3を駆動するための増幅器4をさらに備える。加振器3は、ボイスコイル3bを含む可動部と、磁気回路3aを含み、可動部を駆動する駆動部と、を有する。加振器3の可動部と駆動部とは、外殻2の内側に固定されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外殻と、
前記外殻を振動させるための加振器と、を備え、
前記加振器は、臓器の振動に基づいた交流信号により、駆動されることを特徴とする模擬臓器モデル。
【請求項2】
前記臓器の振動に基づいた交流信号により、前記加振器を駆動するための増幅器をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の模擬臓器モデル。
【請求項3】
前記外殻は、弾性体により形成されていることを特徴とする請求項1に記載の模擬臓器モデル。
【請求項4】
前記加振器は、
ボイスコイルを含む可動部と、
磁気回路を含み、前記可動部を駆動する駆動部と、を有し、
前記加振器の前記可動部と前記駆動部とは、前記外殻の内側に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の模擬臓器モデル。
【請求項5】
前記加振器単体において、前記可動部と前記駆動部とは、外部に露出していることを特徴とする請求項4に記載の模擬臓器モデル。
【請求項6】
前記外殻は、二分割される第1外殻と第2外殻とを有し、
前記加振器の前記可動部及び前記駆動部の一方は、前記第1外殻の内側に固定され、
前記加振器の前記可動部及び前記駆動部の他方は、前記第2外殻の内側に固定されることを特徴とする請求項4に記載の模擬臓器モデル。
【請求項7】
前記第1外殻の外側表面に、臓器の一方表面の外形形状が模されており、
前記第2外殻の外側表面に、臓器の他方表面の外形形状が模されていることを特徴とすることを特徴とする請求項6に記載の模擬臓器モデル。
【請求項8】
自モデルを載置するための台座をさらに備え、
前記外殻の外縁は、前記台座の外縁に固着され、
前記加振器は、
ボイスコイルを含む可動部と、
磁気回路を含み、前記可動部を駆動する駆動部と、を有し、
前記加振器の前記可動部及び前記駆動部の一方は、前記外殻の内側に固定され、
前記加振器の前記可動部及び前記駆動部の他方は、前記台座の内側に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の模擬臓器モデル。
【請求項9】
自モデルを載置するための台座をさらに備え、
前記外殻と前記台座とは、分離しており、
前記加振器は、
ボイスコイルを含む可動部と、
磁気回路を含み、前記可動部を駆動する駆動部と、を有し、
前記加振器の前記可動部及び前記駆動部の一方は、前記外殻の内側に固定され、
前記加振器の前記可動部及び前記駆動部の他方は、前記台座の内側に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の模擬臓器モデル。
【請求項10】
前記外殻に、心臓の外形形状が模されており、
前記加振器は、複数であり、
複数の前記加振器のうちの第1加振器は、前記外殻の心臓の心尖部が模された位置に対応した位置に設けられ、
前記複数の加振器のうちの第2加振器は、前記外殻の心臓の心基部が模された位置に対応した位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の模擬臓器モデル。
【請求項11】
前記複数の加振器のうちの第3加振器は、前記外殻の心臓が模された中央に対応した位置に設けられていることを特徴とする請求項10に記載の模擬臓器モデル。
【請求項12】
前記第1加振器は、心臓の心尖部で採取された振動を基に加振され、
前記第2加振器は、心臓の心基部で採取された振動を基に加振されることを特徴とする請求項10に記載の模擬臓器モデル。
【請求項13】
前記第1加振器と前記第2加振器とは、所定の時間差で加振されることを特徴とする請求項10に記載の模擬臓器モデル。
【請求項14】
前記第1加振器と前記第2加振器とは、心臓の1音と2音との時間差で加振されることを特徴とする請求項10に記載の模擬臓器モデル。
【請求項15】
前記第3加振器は、心臓の中央で採取された振動を基に加振されることを特徴とする請求項11に記載の模擬臓器モデル。
【請求項16】
前記加振器は、前記外殻の内部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の模擬臓器モデル。
【請求項17】
前記外殻に、臓器の外形形状が模されていることを特徴とする請求項1に記載の模擬臓器モデル。
【請求項18】
前記臓器の振動に基づいた交流信号は、臓器の振動に比例した交流信号であることを特徴とする請求項1に記載の模擬臓器モデル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臓器を模擬した模擬臓器モデルに関する。
【背景技術】
【0002】
心臓等の臓器を模擬した模擬臓器モデルは、例えば、生体の仕組みを学ぶための学習教材、外科手術の訓練等に用いられる。模擬臓器モデルにおいて、臓器の挙動を正確、且つ、簡潔な構造で再現する手法が提案されている。例えば、特許文献1に記載された発明は、周期的な反復動作を再現させるために、偏心モーターを用い、偏心モーターの表面と、動物臓器又は弾性素材によって形成される柔らかい臓器モデルと、を摺動させることにより、実物に近い動きを再現しようと試みている。
【0003】
例えば、心臓モデルの場合、偏心モーターの回転制御では、駆動電圧の制御によって鼓動の周波数に近づけて動きを模擬できるが、あくまで、ひとつの周期的なパルスの再現に過ぎない。しかしながら、心臓の動きを観測すると、実際の心臓の鼓動は、I音II音を一周期とした波形であり、それぞれ、収縮と拡張とによる複雑な動きを表した複数の周波数を含む交流的な振動となっている。また、心臓に異常がある場合は、雑音成分が重畳する。医療学習のためにこれらの動きを正確に再現しようとする場合、偏心モーターの電圧制御だけでは不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、従来技術では、心臓等の臓器の複雑な動きを再現できないという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、心臓等の臓器の複雑な動きを再現可能な手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明の模擬臓器モデルは、外殻と、前記外殻を振動させるための加振器と、を備え、前記加振器は、臓器の振動に基づいた交流信号により、駆動されることを特徴とする。
【0008】
本発明では、外殻を振動させるための加振器は、臓器の振動に基づいた交流信号により、駆動される。これにより、加振器によって、外殻に複雑な動きが与えられるため、心臓等の臓器の複雑な動きを再現することができる。
【0009】
第2の発明の模擬臓器モデルは、第1の発明の模擬臓器モデルにおいて、前記臓器の振動に基づいた交流信号により、前記加振器を駆動するための増幅器をさらに備えることを特徴とする。
【0010】
第3の発明の模擬臓器モデルは、第1の発明の模擬臓器モデルにおいて、前記外殻は、弾性体により形成されていることを特徴とする。
【0011】
第4の発明の模擬臓器モデルは、第1の発明の模擬臓器モデルにおいて、前記加振器は、ボイスコイルを含む可動部と、磁気回路を含み、前記可動部を駆動する駆動部と、を有し、前記加振器の前記可動部と前記駆動部とは、前記外殻の内側に固定されていることを特徴とする。
【0012】
第5の発明の模擬臓器モデルは、第4の発明の模擬臓器モデルにおいて、前記加振器単体において、前記可動部と前記駆動部とは、外部に露出していることを特徴とする。
【0013】
第6の発明の模擬臓器モデルは、第4の発明の模擬臓器モデルにおいて、前記外殻は、二分割される第1外殻と第2外殻とを有し、前記加振器の前記可動部及び前記駆動部の一方は、前記第1外殻の内側に固定され、前記加振器の前記可動部及び前記駆動部の他方は、前記第2外殻の内側に固定されることを特徴とする。
【0014】
第7の発明の模擬臓器モデルは、第6の発明の模擬臓器モデルにおいて、前記第1外殻の外側表面に、臓器の一方表面の外形形状が模されており、前記第2外殻の外側表面に、臓器の他方表面の外形形状が模されていることを特徴とすることを特徴とする。
【0015】
第8の発明の模擬臓器モデルは、第1の発明の模擬臓器モデルにおいて、自モデルを載置するための台座をさらに備え、前記外殻の外縁は、前記台座の外縁に固着され、前記加振器は、ボイスコイルを含む可動部と、磁気回路を含み、前記可動部を駆動する駆動部と、を有し、前記加振器の前記可動部及び前記駆動部の一方は、前記外殻の内側に固定され、前記加振器の前記可動部及び前記駆動部の他方は、前記台座の内側に固定されていることを特徴とする。
【0016】
第9の発明の模擬臓器モデルは、第1の発明の模擬臓器モデルにおいて、自モデルを載置するための台座をさらに備え、前記外殻と前記台座とは、分離しており、前記加振器は、ボイスコイルを含む可動部と、磁気回路を含み、前記可動部を駆動する駆動部と、を有し、前記加振器の前記可動部及び前記駆動部の一方は、前記外殻の内側に固定され、前記加振器の前記可動部及び前記駆動部の他方は、前記台座の内側に固定されていることを特徴とする。
【0017】
第10の発明の模擬臓器モデルは、第1の発明の模擬臓器モデルにおいて、前記外殻に、心臓の外形形状が模されており、前記加振器は、複数であり、複数の前記加振器のうちの第1加振器は、前記外殻の心臓の心尖部が模された位置に対応した位置に設けられ、前記複数の加振器のうちの第2加振器は、前記外殻の心臓の心基部が模された位置に対応した位置に設けられていることを特徴とする。
【0018】
本発明では、複数の加振器のうちの第1加振器は、外殻の心臓の心尖部が模された位置に対応した位置に設けられている。また、複数の加振器のうちの第2加振器は、外殻の心臓の心基部が模された位置に対応した位置に設けられている。このため、それぞれの部位(心尖部、心基部)で採取した振動を基に加振器を加振させることで、より実態に即した挙動を再現することができる。
【0019】
第11の発明の模擬臓器モデルは、第10の発明の模擬臓器モデルにおいて、前記複数の加振器のうちの第3加振器は、前記外殻の心臓が模された中央に対応した位置に設けられていることを特徴とする。
【0020】
本発明では、複数の加振器のうちの第3加振器は、外殻の心臓が模された中央に対応した位置に設けられている。心臓の中央には、弁が集中している。従って、この部分に加振器を設けることで、より実態に即した挙動を再現することができる。
【0021】
第12の発明の模擬臓器モデルは、第10の発明の模擬臓器モデルにおいて、前記第1加振器は、心臓の心尖部で採取された振動を基に加振され、前記第2加振器は、心臓の心基部で採取された振動を基に加振されることを特徴とする。
【0022】
第13の発明の模擬臓器モデルは、第10の発明の模擬臓器モデルにおいて、前記第1加振器と前記第2加振器とは、所定の時間差で加振されることを特徴とする。
【0023】
第14の発明の模擬臓器モデルは、第10の発明の模擬臓器モデルにおいて、前記第1加振器と前記第2加振器とは、心臓の1音と2音との時間差で加振されることを特徴とする。
【0024】
第15の発明の模擬臓器モデルは、第11の発明の模擬臓器モデルにおいて、前記第3加振器は、心臓の中央で採取された振動を基に加振されることを特徴とする。
【0025】
第16の発明の模擬臓器モデルは、第1の発明の模擬臓器モデルにおいて、前記加振器は、前記外殻の内部に設けられていることを特徴とする。
【0026】
第17の発明の模擬臓器モデルは、第1の発明の模擬臓器モデルにおいて、前記外殻に、臓器の外形形状が模されていることを特徴とする。
【0027】
第18の発明の模擬臓器モデルは、第1の発明の模擬臓器モデルにおいて、前記臓器の振動に基づいた交流信号は、臓器の振動に比例した交流信号であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、心臓等の臓器の複雑な動きを再現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】(a)は、本発明の第1実施形態に係る模擬臓器モデルを示す平面図である。(b)は、本発明の第1実施形態に係る模擬臓器モデルを示す断面図である。
【
図4】複数の加振器の配置を説明するための図である。
【
図5】
図4における加振器と増幅器との関係を示す図である。る。
【
図6】複数の加振器の配置を説明するための図である。
【
図7】(a)は、本発明の第2実施形態に係る模擬臓器モデルを示す平面図である。(b)は、本発明の第2実施形態に係る模擬臓器モデルを示す断面図である。
【
図8】(a)は、本発明の第3実施形態に係る模擬臓器モデルを示す平面図である。(b)は、本発明の第3実施形態に係る模擬臓器モデルを示す断面図である。
【
図9】第3実施形態の変形例に係る模擬臓器モデル301を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0031】
(第1実施形態)
図1(a)は、本発明の第1実施形態に係る模擬臓器モデル1を示す平面図である。
図1(b)は、本発明の第2実施形態に係る模擬臓器モデル1を示す断面図である。
図1に示すように、模擬臓器モデル1は、外殻2と、加振器3と、等を備える。
【0032】
外殻2は、二分割される上殻2a(第1外殻)と、下殻2b(第2外殻)と、を有する。外殻2は、弾性体により形成されている。弾性体としては、例えば、シリコンエラストマー、ウレタンエラストマー等、柔軟性が高いものが使用可能である。外殻2には、臓器の外形形状が模されている。例えば、上殻2aの外側表面に、臓器の一方表面の外形形状が模されている。また、下殻2bの外側表面に、臓器の他方表面の外形形状が模されている。本実施形態では、臓器として、心臓の外形形状が模されている。人体の顔側を正面とすると、上殻2aの外側表面に、心臓の正面側の外形形状が模されている。下殻2bの外側表面に、心臓の背面側の外形形状が模されている。なお、本実施形態では、模擬される臓器は、心臓であるが、これに限らず、例えば、肺、小腸、大腸等であってもよい。また、外殻2は、弾性体で形成されていなくてもよい。
【0033】
外殻2の内部に、加振器3が設けられている。
図2は、加振器3を示す断面図である。加振器3は、内磁型の磁気回路3aを備える動電型の加振器である。内磁型の磁気回路3aは、ヨーク3aaと、磁石であるマグネット3abと、プレート3acと、から構成されている。磁気回路3は、入力される電気音声信号を振動に変換するために、ボイスコイル3bが配置される磁気空隙を有する。円環状の磁気空隙は、円環状のポール3acの外周端面と、凹状のヨーク3aaと、の間に規定され、マグネット3abからの磁力により、強い直流磁界が発生する。加振器3の振動方向は、図における上下方向である。
【0034】
加振器3単体では、ボイスコイル3bを含む可動部と、磁気回路3aを含む駆動部とは、外部に露出している。言い換えれば、可動部と駆動部とは、露出しており、閉じていない構造を有している。駆動部は、可動部を駆動する。
図1に示すように、加振器3の可動部と駆動部とは、外殻2の内側に固定されている。具体的には、可動部の板材3cが、上殻2aの内部に固定されている。また、駆動部のヨーク3aaが、下殻2bの内部に固定されている。
【0035】
加振器3は、臓器の振動に基づいた交流信号により、駆動される。具体的には、加振器3は、臓器の振動に比例した交流信号により、駆動される。このため、
図2に示すように、模擬臓器モデル1は、臓器の振動に比例した交流信号により、加振器3を駆動するための増幅器4をさらに備えている。本実施形態では、増幅器4は、臓器として、心臓の振動に比例した交流信号により、加振器3を駆動する。増幅器4は、外殻2の内部に設けられていてもよいし、外殻2の外部に設けられていてもよい。
【0036】
増幅器4は、予め収録された心臓(臓器)の振動(動き)に比例した交流信号、又は、心臓(臓器)のデジタル聴診器等のセンシング機器から得たリアルタイムの交流信号を増幅した電気信号によって加振器3を駆動する。これにより、表側の外殻である上殻2aは、交流信号に忠実に振動し、心臓(臓器)の動きを正確に模すことが可能となる。また、裏側の外殻である下殻2bに関しても、加振器3の反作用による振動で同様に振動する。
【0037】
使用者は、模擬臓器モデル1を手のひらで支えて持つことで、模擬臓器モデル1の裏側の外殻2である下殻2bに伝わる加振器3の反作用による振動で、心臓(臓器)の動きを体感することができる。また、表側の外殻2である上殻2aの動きにより視覚的に心臓(臓器)の動きをとらえることができ、生体の仕組みについて、従来の方法を超えた深い理解を得ることが可能となる。
【0038】
第1実施形態では、外殻2の上殻2aと下殻2bとに、心臓(臓器)の表裏の形状が造形されており、ボイスコイル3bの振動に応じた弾性体(外殻2)の伸縮により、模擬臓器モデル1が動く。
【0039】
本実施形態では、加振器3は、複数設けられている。
図4は、複数の加振器3の配置を説明するための図である。上述したように、外殻2には、心臓の外形形状が模されている。複数の加振器3のうちの一つ(以下、「第1加振器」という。)は、外殻2(上殻2a)の心臓の心尖部が模された位置に対応した位置、すなわち、心尖部が模された位置の下方に設けられている。また、複数の加振器3のうちの一つ(以下、「第2加振器」という。)は、外殻2(上殻2a)の心臓の心基部が模された位置に対応した位置、すなわち、心基部が模された位置の下方に設けられている。言い換えれば、2つの加振器3は、心筋の動きの変化が順に伝わる方向に連ねて配置されている。
【0040】
心尖部と対応する位置に配置された第1加振器3は、心臓の心尖部で採取された振動を基に加振される。また、心基部と対応する位置に配置された第2加振器3は、心臓の心基部で採取された振動を基に加振される。
図5は、
図4における加振器3と増幅器4との関係を示す図である。
図5に示すように、2つの加振器3は、2つの増幅器4によって、それぞれ、駆動されている。
【0041】
第1加振器3と第2加振器3とは、所定の時間差で加振される。第1加振器3は、1音のタイミングで加振され、第2加振器3は、2音のタイミングで加振される。従って、第1加振器3と第2加振器3とは、1音と2音との時間差で加振される。ここで、正常な心臓では、1音が心尖部で大きく聞こえ、2音が心基部で大きく聞こえる。このため、心音は、心尖部から心基部の順に聞こえる。従って、第1加振器3、第2加振器3の順で、加振器を配置すれば、実際の心臓により近い動作を再現可能となる。なお、心音、特に、1音及び2音のタイミングについては、株式会社医学書院のホームページ(https://www.igaku-shoin.co.jp/paper/archive/old/old_article/n2000dir/n2392dir/n2392_11.htm#p01)を参照されたい。
【0042】
図4においては、2つの加振器3が、それぞれ、心尖部と心基部とに対応する位置に設けられている。これに加え、
図6では、複数の加振器3のうちの一つ(以下、「第3加振器」という。)は、外殻2(上殻2a)の心臓が模された中央に対応した位置、すなわち、心臓が模された中央の下方に設けられている。第3加振器3は、心臓の中央で採取された振動を基に加振される。
【0043】
心臓の中央には、弁が集中している。弁周辺(心臓の中央)に対応した位置に設けられた第3加振器3は、疾患時のシミュレーションを行うため、高周波特性の優れた加振器を用いることで、更に再現性を上げることができる。なお、加振器3は、複数ではなく、一つだけ設けられていてもよい。
【0044】
(第2実施形態)
図7(a)は、本発明の第2実施形態に係る模擬臓器モデル101を示す平面図である。
図7(b)は、本発明の第2実施形態に係る模擬臓器モデル101を示す断面図である。第2実施形態に係る模擬臓器モデル101は、第1実施形態に係る模擬臓器モデル1と比較して、台座105を備える点が相違する。以下、模擬臓器モデル101について、模擬臓器モデル1と相違する点を主に説明する。従って、特に説明がない場合は、模擬臓器モデル101は、模擬臓器モデル1と同様の構成を有する。
【0045】
図7に示すように、模擬臓器モデル101は、外殻102と、加振器103と、台座105等を備える。外殻102は、第1実施形態における上殻2aに相当する部分で構成されている。外殻102の外側表面に、臓器の一方表面の外形形状が模されている。本実施形態では、臓器として、心臓の外形形状が模されている。人体の顔側を正面とすると、上殻102の外側表面に、心臓の正面側の外形形状が模されている。
【0046】
台座105は、模擬臓器モデル101を載置するためのものである。このため、台座105の底面は、平面となっており、臓器の外形形状は、模されていない。台座104は、例えば、断面視台形形状となっている。外殻102の外縁は、台座105の外縁に固着されている。
【0047】
加振器103は、加振器3と同様の構成である。外殻102と台座105との内部に加振器103が設けられている。加振器103の可動部は、外殻102の内側に固定されている。また、加振器103の駆動部は、台座105の内側に固定されている。
【0048】
第2実施形態では、外殻102に、心臓(臓器)の表側の形状が造形されており、外殻102の外縁が、裏側の台座105に固着されている。台座105によって、模擬臓器モデル101は、机上に安定した状態で載置可能となる。また、第1実施形態と同様に、表側の弾性体である外殻102の伸縮により、模擬臓器モデル101が動く。
【0049】
(第3実施形態)
図8(a)は、本発明の第3実施形態に係る模擬臓器モデル201を示す平面図である。
図8(b)は、本発明の第3実施形態に係る模擬臓器モデル201を示す断面図である。第3実施形態に係る模擬臓器モデル201は、第2実施形態に係る模擬臓器モデル101と比較して、外殻及び台座の構成が相違する。以下、模擬臓器モデル201について、模擬臓器モデル101と相違する点を主に説明する。従って、特に説明がない場合は、模擬臓器モデル201は、模擬臓器モデル101と同様の構成を有する。
【0050】
図8に示すように、模擬臓器モデル201は、外殻202と、加振器203と、台座205等を備える。外殻202は、第2実施形態における外殻102に相当する部分である。外殻202の外側表面に、臓器の一方表面の外形形状が模されている。本実施形態では、臓器として、心臓の外形形状が模されている。人体の顔側を正面とすると、上殻202の外側表面に、心臓の正面側の外形形状が模されている。
【0051】
台座205は、模擬臓器モデル201を載置するためのものである。このため、台座205の底面は、平面となっており、臓器の外形形状は、模されていない。台座205は、例えば、断面視台形形状となっている。第2実施形態では、外殻102の外縁は、台座105の外縁に固着されているが、本実施形態では、外殻202と台座205とは、分離している。すなわち、外殻202の外縁は、台座205の外縁に固着されていない。
【0052】
加振器203は、加振器103と同様の構成である。外殻202と台座205との内部に加振器203が設けられている。加振器203の可動部は、外殻202の内側に固定されている。また、加振器203の駆動部は、台座205の内側に固定されている。
【0053】
第3実施形態では、外殻202に、心臓(臓器)の表側の形状が造形されており、外殻202は、裏側の台座205とは結合されずに、分離している。加振器203のボイスコイルの動きが、そのまま、模擬臓器モデル203の動きとして見える。
【0054】
以上説明したように、本実施形態では、外殻2を振動させるための加振器3は、臓器の振動に基づいた交流信号により、駆動される。これにより、加振器3によって、外殻2に複雑な動きが与えられるため、心臓等の臓器の複雑な動きを再現することができる。
【0055】
また、本実施形態では、複数の加振器3のうちの第1加振器3は、外殻2の心臓の心尖部が模された位置に対応した位置に設けられている。また、複数の加振器3のうちの第2加振器3は、外殻2の心臓の心基部が模された位置に対応した位置に設けられている。このため、それぞれの部位(心尖部、心基部)で採取した振動を基に加振器3を加振させることで、より実態に即した挙動を再現することができる。
【0056】
また、本実施形態では、複数の加振器3のうちの第3加振器3は、外殻2の心臓が模された中央に対応した位置に設けられている。心臓の中央には、弁が集中している。従って、この部分に加振器3を設けることで、より実態に即した挙動を再現することができる。
【0057】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明を適用可能な形態は、上述の実施形態には限られるものではなく、以下に例示するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることが可能である。
【0058】
図9は、第3実施形態の変形例に係る模擬臓器モデル301を示す断面図である。上述の第3実施形態では、
図8(b)に示すように、加振器203の可動部は、外殻202の内部に固定され、駆動部は、台座205の内部に固定されている。これに限らず、
図9に示すように、駆動部が、外殻302の内部に固定され、可動部が、台座305の内部に固定されていてもよい。すなわち、加振器303は、駆動部が上に、可動部が下になるように、
図8(b)とは、逆に配置されていてもよい。
【0059】
同様に、第1実施形態においても、加振器3の駆動部が、上殻2aの内部に固定され、可動部が、下殻2bの内部に固定されていてもよい。第2実施形態においても、加振器103の駆動部が、外殻102の内部に固定され、可動部が、台座105の内部に固定されていてもよい。
【0060】
動電型の加振器においては、重い磁気回路を上向き(可動部が上)と下向き(可動部が下)に配置した場合で、自重がかかるか、かからないかの違いがあり、このため、共振周波数が異なる。変形例のように、可動部が下となるように配置し、共振周波数を低くした方が、心拍の信号で大きな振幅をとり、模擬臓器モデルがダイナミックに動く。従って、上側の外殻の重量及び加振器のスペックによって、最適な使い方が変化するため、変形例のような形態が適する場合もある。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、臓器を模擬した模擬臓器モデルに好適に採用され得る。
【符号の説明】
【0062】
1、101、201、301 模擬臓器モデル
2、102、202、302 外殻
2a 上殻(第1外殻)
2b 下殻(第2外殻)
3、103、203、303 加振器
4 増幅器
105、205、305 台座