(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047749
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド
(51)【国際特許分類】
B41J 2/015 20060101AFI20240401BHJP
B41J 2/14 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
B41J2/015 101
B41J2/14 307
B41J2/14 611
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153412
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003362
【氏名又は名称】弁理士法人i.PARTNERS特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仁田 昇
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AF99
2C057AG47
2C057AG99
2C057AR14
2C057AR16
(57)【要約】 (修正有)
【課題】圧電アクチュエータと駆動回路の発熱を抑えることのできる液体吐出ヘッドを提供する。
【解決手段】液体吐出ヘッドは、圧電アクチュエータ、電源供給部、補助電位供給部、および制御回路を備える。電源供給部は、圧電アクチュエータに最大の変形を与える最大電位、変形を与えない最低電位、最大の変形より小さい定常変形を与える中間電位を供給する。補助電位供給部は、最大電位と中間電位の電位差をn等分に分圧してn-1個の補助電位を生成すると共に、補助電位の電荷を圧電アクチュエータの合計静電容量よりも大きい静電容量をそれぞれ有するn個のキャパシタに圧電アクチュエータに充放電可能に蓄える。制御回路は、液体吐出動作を行う際、まず圧電アクチュエータに中間電位を与えて圧電アクチュエータを定常変形させ、その後1ドット分の液体を吐出する毎に中間電位を起点に補助電位を含む各電位に電圧を変化させ最後に中間電位に戻す制御を行う。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルから液体を吐出するように構成した圧電アクチュエータと、
前記圧電アクチュエータに最大の変形を与える最大電位、前記圧電アクチュエータに変形を与えない最低電位、前記圧電アクチュエータに前記最大の変形より小さい定常変形を与える中間電位を供給する電源供給部と、
前記最低電位と前記中間電位の電位差をn等分に分圧してn-1個の補助電位を生成すると共に、前記圧電アクチュエータの合計静電容量よりも大きい静電容量をそれぞれ有するn個のキャパシタに前記補助電位の電荷を前記圧電アクチュエータに充放電可能に蓄える補助電位供給部と、
前記圧電アクチュエータに電圧波形を与えて一連の液体吐出動作を行う際、まず前記圧電アクチュエータに前記中間電位を与えて前記圧電アクチュエータを定常変形させ、その後、1ドット分の液体を吐出する毎に前記中間電位を起点にして前記補助電位を含む各電位に電圧を変化させ最後に前記中間電位に戻す制御回路と、を備えたことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
複数ドットの吐出を繰り返し、最後のドットの吐出が終了したら、前記最低電位に戻して一連の液体吐出動作を終了することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
ノズルから液体を吐出するように構成した圧電アクチュエータと、
前記圧電アクチュエータに最大の変形を与える最大電位、前記圧電アクチュエータに変形を与えない最低電位、前記圧電アクチュエータに前記最大の変形より小さい定常変形を与える中間電位を供給する電源供給部と、
前記中間電位と前記最大電位の電位差をm等分に分圧してm-1個の補助電位を生成すると共に、前記圧電アクチュエータの合計静電容量よりも大きい静電容量をそれぞれ有するm個のキャパシタに前記補助電位の電荷を前記圧電アクチュエータに充放電可能に蓄える補助電位供給部と、
前記圧電アクチュエータに電圧波形を与えて一連の液体吐出動作を行う際、まず前記圧電アクチュエータに前記中間電位を与えて前記圧電アクチュエータを定常変形させ、その後、1ドット分の液体を吐出する毎に前記中間電位を起点にして前記補助電位を含む各電位に電圧を変化させ最後に前記中間電位に戻す制御回路と、を備えたことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項4】
複数ドットの吐出を繰り返し、最後のドットの吐出が終了したら、前記最低電位に戻して一連の液体吐出動作を終了することを特徴とする請求項3に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記圧電アクチュエータは、一方の端子を個別端子に接続し、他方の端子をコモン端子に接続し、前記個別端子に電圧を与えると縦変形するアクチュエータであり、
前記1ドット分の前記圧電波形は、前記補助電位供給部から前記圧電アクチュエータに充電するときの前記補助電位供給部と前記圧電アクチュエータの電圧差と充電回数が、前記圧電アクチュエータから前記補助電位供給部へ充電するときの前記圧電アクチュエータと前記補助電位供給部の電圧差と充電回数と等しいことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、液体吐出ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
所定量の液体を所定の位置に供給する液体吐出ヘッドが知られている。液体吐出ヘッドは、例えばインクジェットプリンタ、3Dプリンタ、分注装置などに搭載する。インクジェットプリンタは、インクの液滴をインクジェットヘッドから吐出して、記録媒体の表面に画像等を形成する。3Dプリンタは、造形材の液滴を造形材吐出ヘッドから吐出し、硬化させて、三次元造形物を形成する。分注装置は、試料の液滴を吐出して複数の容器等へ所定量供給する。
【0003】
液体吐出ヘッドは、液体を吐出するチャネルを複数有している。各チャネルは、液体を吐出するノズル、ノズルに連通する圧力室、圧力室の容積を変える圧電アクチュエータを備える。液体吐出ヘッドは、複数のチャネルの中から液体を吐出するチャネルを選択し、圧電アクチュエータに駆動信号を与えて駆動させる駆動回路をさらに備える。液体吐出ヘッドは、圧電アクチュエータの静電容量、充電電圧、充電回数、放電回数などに応じて、液体を吐出する動作時に、圧電アクチュエータと駆動回路が発熱する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許5624734号公報
【特許文献2】特許5759710号公報
【特許文献3】特許4152757号公報
【特許文献4】特許4483884号公報
【特許文献5】米国特許公開US2007/0076026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、液体を吐出する動作時の圧電アクチュエータまたは駆動回路の発熱を抑えることのできる液体吐出ヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態の液体吐出ヘッドは、圧電アクチュエータ、電源供給部、補助電位供給部、および制御回路を備える。圧電アクチュエータは、ノズルから液体を吐出するように構成する。電源供給部は、前記圧電アクチュエータに最大の変形を与える最大電位、前記圧電アクチュエータに変形を与えない最低電位、前記圧電アクチュエータに前記最大の変形より小さい定常変形を与える中間電位を供給する。補助電位供給部は、前記最低電位と前記中間電位の電位差をn等分に分圧してn-1個の補助電位を生成すると共に、前記補助電位の電荷を前記圧電アクチュエータの合計静電容量よりも大きい静電容量をそれぞれ有するn個のキャパシタに前記圧電アクチュエータに充放電可能に蓄える。制御回路は、前記圧電アクチュエータに電圧波形を与えて一連の液体吐出動作を行う際、まず前記圧電アクチュエータに前記中間電位を与えて前記圧電アクチュエータを定常変形させ、その後1ドット分の液体を吐出する毎に前記中間電位を起点に前記補助電位を含む各電位に電圧を変化させ最後に前記中間電位に戻す制御を行う。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態に従うインクジェットヘッドを備えたインクジェットプリンタの全体構成図である。
【
図3】上記インクジェットヘッドのヘッド部を部分拡大した断面図である。
【
図4】上記インクジェットヘッドのヘッド部を部分拡大した断面図である。
【
図5】上記インクジェットヘッドのヘッド部を部分拡大した平面図である。
【
図6】上記インクジェットヘッドの駆動回路である。
【
図7】上記インクジェットヘッドの補助電位供給回路である。
【
図9】上記インクジェットヘッドの波形生成回路の回路図である。
【
図10】上記インクジェットヘッドのアクチュエータに与える電圧波形である。
【
図11】上記電圧波形を与えたアクチュエータの動作説明図である。
【
図12】第2実施形態に従う補助電位供給回路である。
【
図15】第2実施形態のアクチュエータに与える電圧波形である。
【
図16】第3実施形態に従うインクジェットヘッドの駆動回路である。
【
図18】第3実施形態の選択スイッチの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態に従う液体吐出ヘッドについて、添付図面を参照しながら詳述する。なお、各図において、同一構成は同一の符号を付している。
【0009】
(第1実施形態)
実施形態の液体吐出ヘッドを搭載した画像形成装置の一例として、記録媒体に画像を印刷するインクジェットプリンタ10を説明する。
図1は、インクジェットプリンタ10の概略構成を示す。インクジェットプリンタ10は、筐体11の内部に、記録媒体の一例であるシートSを収納するカセット12、シートSの上流搬送路13、カセット12内から取り出したシートSを搬送する搬送ベルト14、搬送ベルト14上のシートSに向けてインクの液滴を吐出する複数のインクジェットヘッド100~103、シートSの下流搬送路15、排出トレイ16、及び制御基板17を配置する。ユーザーインターフェイスである操作部18は、筐体11の上部側に配置する。
【0010】
シートSに印刷する画像データは、例えば外部接続機器であるコンピュータ200で生成する。コンピュータ200で生成した画像データは、ケーブル201、コネクタ202,203を通してインクジェットプリンタ10の制御基板17に送る。
【0011】
ピックアップローラ204は、カセット12からシートSを一枚ずつ上流搬送路13へ供給する。上流搬送路13は、送りローラ対131、132と、シート案内板133、134で構成する。シートSは、上流搬送路13を経由して、搬送ベルト14の上面に送る。図中の矢印104は、カセット12から搬送ベルト14へのシートSの搬送経路を示す。
【0012】
搬送ベルト14は、表面に多数の貫通孔を形成した網状の無端ベルトである。駆動ローラ141、従動ローラ142,143の3本のローラは、搬送ベルト14を回転自在に支持する。モータ205は、駆動ローラ141を回転することによって搬送ベルト14を回転させる。モータ205は、駆動装置の一例である。図中105は、搬送ベルト14の回転方向を示す。搬送ベルト14の裏面側に、負圧容器206を配置する。負圧容器206は、減圧用のファン207と連結する。ファン207は、形成する気流によって負圧容器206内を負圧にし、搬送ベルト14の上面にシートSを吸着保持させる。図中106は、気流の流れを示す。
【0013】
液体吐出ヘッドの一例であるインクジェットヘッド100~103は、搬送ベルト14上に吸着保持したシートSに対して、例えば1mmの僅かな隙間を介して対向するように配置する。インクジェットヘッド100~103は、シートSに向けてインクの液滴を夫々吐出する。インクジェットヘッド100~103は、下方をシートSが通過する際に画像を印刷する。各インクジェットヘッド100~103は、吐出するインクの色が異なることを除けば、同じ構造である。インクの色は、例えば、シアン,マゼンタ,イエロー,ブラックである。
【0014】
インクジェットヘッド100~103は、夫々、インク流路311~314を介してインクタンク315~318及びインク供給圧力調整装置321~324と連結する。各インクタンク315~318は、各インクジェットヘッド100~103の上方に配置する。待機時に、インクジェットヘッド100~103のノズル24(
図2参照)からインクが漏れ出ないように、各インク供給圧力調整装置321~324は、各インクジェットヘッド100~103内を大気圧に対して負圧、例えば-1.2kPaに調整している。画像形成時、各インクタンク315~318のインクは、インク供給圧力調整装置321~324によって各インクジェットヘッド100~103に供給する。
【0015】
画像形成後、搬送ベルト14から下流搬送路15へシートSを送る。下流搬送路15は、送りローラ対151,152,153,154と、シートSの搬送経路を規定するシート案内板155,156で構成する。シートSは、下流搬送路15を経由し、排出口157から排出トレイ16へ送る。図中矢印107は、シートSの搬送経路を示す。
【0016】
続いて、インクジェットヘッド100~103の構成について説明する。以下は、
図2~
図5を参照しながら、インクジェットヘッド100について説明しているが、インクジェットヘッド101~103もインクジェットヘッド100と同じ構造である。
【0017】
図2に示すように、インクジェットヘッド100は、液体吐出部の一例であるヘッド部2を備える。ヘッド部2は、フィルム配線基板の一例であるフレキシブルプリント配線板21と接続する。フレキシブルプリント配線板21は、中継基板の一例であるプリント基板22と接続する。ヘッド部2は、ノズル部の一例であるノズルプレート23を備える。ヘッド部2は、インク流路311を介して
図1のインク供給圧力調整装置321と接続する。
【0018】
インクを吐出する各チャネルのノズル24は、ノズルプレート23の第1の方向の例えばX方向に沿って配列する。ノズル密度は、例えば150~1200dpiの範囲内に設定する。ノズル24は、一列に限らず、複数列であってもよい。ヘッド部2の詳しい構成は、後述する。
【0019】
フレキシブルプリント配線板21は、例えばポリイミドなどの合成樹脂フィルムを用いたフレキシブルなプリント配線基板である。フレキシブルプリント配線板21は、ドライバチップである駆動用のIC(Integrated Circuit)3を搭載している(以下、駆動ICと称す)。プリント基板22は、ガラス繊維入りのエポキシ樹脂層と銅配線層を多重に積層した硬質のスルーホール基板である。制御部としての駆動IC3は、インクジェットプリンタ10の制御基板17からプリント基板22を介して送られてくるプリントデータを一時的に格納し、所定のタイミングでインクを吐出するよう各チャネルに駆動信号を与える。
【0020】
図3~
図5は、ヘッド部2の部分断面図である。ノズルプレート23は、圧力室基板4の一面に接合する。ノズルプレート23は、例えばポリイミドなどの樹脂又はステンレスなどの金属で形成した矩形状のプレートである。振動板5は、ノズルプレート23とは反対側の圧力室基板4の一面に接合する。振動板5は、外力を加えたときに変形する可撓性を有する。振動板5は、例えばニッケルやステンレスなどの金属で形成した薄板状のプレートである。振動板5の材質は、ポリイミドフィルムなど、金属以外でもよい。
【0021】
圧力室42は、圧力室基板4に形成する。複数の圧力室42は、各ノズル24の位置に配列して、ノズル24とそれぞれ連通させている。圧力室基板4は、例えばステンレスなどの金属で形成する。圧力室42は、一例として、第2の方向の例えばZ方向に貫通する矩形状の開口を圧力室基板4に形成し、両側の開口をノズルプレート23と振動板5でそれぞれ塞ぐことによって形成する。
【0022】
圧力室42は、狭窄部を有するガイド流路43と連通し、さらに振動板5を貫通する開口穴であるインク供給口44を介してインク供給マニホールド45に連通する。ガイド流路43は、圧力室42ごとに、圧力室基板4の振動板5側の一面に第3の方向の例えばY方向に溝状に形成する。インク供給マニホールド45は、振動板5の一面に接合したフレーム46内に形成する。インク供給マニホールド45は、X方向に延び、各チャネルのインク供給口44及びガイド流路43を介して、各チャネルの圧力室42とそれぞれ連通する。共通インク室としてのインク供給マニホールド45は、インク流路311と連通する(
図1,
図2参照)。
【0023】
各チャネルのアクチュエータ6は、振動板5を挟んで圧力室42およびガイド流路43と対向する位置に配列している。各アクチュエータ6は、Z方向における振動板5とは反対側の一面を支持部材47にそれぞれ接合することによって固定している。
【0024】
圧電アクチュエータの一例であるアクチュエータ6は、例えばピエゾ素子などの圧電体61、第1の内部電極62、及び第2の内部電極63を交互に層状に積層して形成した積層型圧電アクチュエータである(特に
図3参照)。各圧電体61は、分極方向が例えばZ方向において互いに逆向きに配置し、d33モードで変形させる。第1の内部電極62と第2の内部電極63は、圧電体61の主面にそれぞれ形成した導電膜である。第1の内部電極62は、それぞれY方向におけるアクチュエータ6の一方の端面まで形成し、この端面に形成した第1の外部電極64に接続する。第2の内部電極63は、それぞれY方向におけるアクチュエータ6の他方の端面まで形成し、この端面に形成した第2の外部電極65に接続する。ダミー層68は、圧電体61と同材料である。但し、ダミー層68は、内部電極を設けず、電界が印加されないので変形しない。ダミー層68は、アクチュエータ6を支持部材47に固定するベースとなり(特に
図4参照)、あるいは組立中や組立後の精度を出すために研磨する研磨代となる。
【0025】
複数の圧電体61を積層したアクチュエータ6は、一例として、薄板状に加工した各圧電体61の主面に第1の内部電極62と第2の内部電極63をそれぞれ成膜する。そして圧電体61同士を積層し焼成して一体にする。その後、第1の外部電極64と第2の外部電極65を成膜する。その後、圧電体61を着分極する。圧電体61は、チタン酸ジルコン酸鉛 (PZT)などの鉛含有圧電材料、或いはニオブ酸ナトリウムカリウムなどの鉛非含有圧電材料で形成する。第1の内部電極62と第2の内部電極63は、銀パラジウムなどの焼成可能な導電性材料で成膜する。第1の外部電極64と第2の外部電極65は、メッキ法やスパッタ法など既知の方法で、Ni、Cr、Auなどで成膜する。
【0026】
各アクチュエータ6の第1の外部電極64は、フレキシブルプリント配線板21の個別配線66にそれぞれ接続する(
図3参照)。フレキシブルプリント配線板21は、基材26,個別配線66,接着層27,絶縁層28を有する。フレキシブルプリント配線板21は、ハンダメッキ層29を形成した領域が第1の外部電極64と対向するように配置し、ハンダを溶融させることによって各チャネルの第1の外部電極64と個別配線66を電気的及び機械的に接続する。一方、各チャネルの第2の外部電極65は、共通配線(不図示)に接続し、例えばフレキシブルプリント配線板21を介して共通電位に接続する。
【0027】
支柱60は、各チャネルのアクチュエータ6の間に溝69を介して配置する。駆動用のアクチュエータ6および支柱60とするダミーのアクチュエータは、共通の圧電体61、第1の内部電極62、及び第2の内部電極63を用いて一括で形成し、溝69を形成することで個々のアクチュエータ6と支柱60に分ける。支柱60は、隣接する圧力室42間の隔壁40にあたる位置に配置する(
図4参照)。支柱60は、アクチュエータ6と同様に圧電体61等で形成するのに代えて、別の部材で形成してもよい。例えば支持部材47と一体的に支柱を形成してもよい。
【0028】
図6は、インクジェットヘッド100の駆動回路である。
図6に示すように、各チャネルのアクチュエータ6(C
X1~C
Xn)は、第1の外部電極64に接続した個別配線66を介して駆動IC3の出力端子にそれぞれ接続する。第1の外部電極64と個別配線66の接続点がアクチュエータ6の個別端子である。一方、各アクチュエータ6(C
X1~C
Xn)の第2の外部電極65は、共通配線67を介して例えばグランド(GND)などの共通電位に接続する。第2の外部電極65と共通配線67の接続点がアクチュエータ6のコモン端子である。
【0029】
各アクチュエータ6(CX1~CXn)の個別配線66は、チャネル毎の駆動ドライバDにそれぞれ接続する。各駆動ドライバDには、アクチュエータ6に与える複数の電位V1,V2,V31,V32,V0の電源を接続する。複数の電位は、最大電位V1、最低電位V0、中間電位V2、および補助電位V31,V32である。最大電位V1は、インク吐出動作時におけるアクチュエータ6の変形範囲内で、最大の変形を与える電位である。最低電位V0は、アクチュエータ6に変形を与えない電位である。中間電位V2は、最大の変形よりも小さい変形をアクチュエータ6に与える電位である。
【0030】
ここで、アクチュエータ6に中間電位V2を与えて変形させることを「定常変形」と称する。定常変形は、例えばインクを吐出する動作の基準とする。例えばコモン端子が共通電位に接続され個別端子に電圧を与えるとd33モード或いはd31モードで縦変形するアクチュエータ6の場合、定常変形を基準にすれば、最大電位V1を与えて第1の方向(例えば伸長する方向)に変形させ、最低電位V0を与えて第1の方向とは反対の第2の方向(例えば収縮する方向)に変形させることができる。
【0031】
最大電位V1、中間電位V2及び最低電位V0は、外部電源から供給する。中間電位V2は、電圧V2の外部電源7から供給する。最大電位V1は、直列に接続した電圧V2の外部電源7と電圧V1-V2の外部電源71から供給する。最低電位V0は、外部電源7の負極側から供給する。各電位V1,V2,V0の値は、アクチュエータ6の構造やインクの種類などによって決定してよい。一例を挙げると、最大電位V1が20V、中間電位V2が10V、最低電位V0が0Vである。最大電位V1、中間電位V2、最低電位V0の電源7,71は、電源供給部の一例である。
【0032】
補助電位V31,V32は、中間電位V2と最低電位V0の間にある互いに異なる電位である。補助電位V31,V32は、個別に外部電源は設けず、補助電位供給回路72で生成する。この例では、中間電位V2と最低電位V0の電位差を三等分に分圧し、中間電位V2の1/3の電位を補助電位V31とし、中間電位V2の2/3の電位をV32としている。生成する補助電位の数は2個に限らない。すなわち、中間電位V2と最低電位V0の電位差をn等分に分圧し、n-1個の補助電位を生成する。「n」は、2以上である。
【0033】
図7は、補助電位供給回路72の好ましい一例である。補助電位供給回路72は、中間電位V2と最低電位V0の間に3個の分圧抵抗Rd
1,Rd
2,Rd
3を直列に接続して分圧する。3個の分圧抵抗Rd
1,Rd
2,Rd
3は、抵抗値が同じものを用いる。これにより中間電位V2と最低電位V0の電位差を、三等分に分圧する。さらに、中間電位V2と最低電位V0の間に、3個のキャパシタC
S1,C
S2,C
S3を直列に接続する。キャパシタC
S1,C
S2,C
S3の静電容量は、夫々、全チャネルのアクチュエータ6(C
X1~C
Xn)の合計静電容量よりも大きくする。好ましくは10倍以上である。一例として、個々のアクチュエータ6(C
X1~C
Xn)の静電容量が1000pF、チャネル数が300chの場合、合計静電容量は0.3μFである。この場合、キャパシタC
S1,C
S2,C
S3は、夫々、静電容量が10倍以上となる3μF以上のものを用いる。
【0034】
各分圧抵抗Rd1,Rd2,Rd3間のノードと各キャパシタCS1,CS2,CS3間のノードは、オペアンプ73,74を介して接続する。オペアンプ73は、プラス入力に分圧抵抗Rd1,Rd2間のノードを接続し、マイナス入力にアンプの出力を接続したボルテージフォロワーの構成とする。さらにオペアンプ73の出力とキャパシタCS1,CS2間のノードとの間に、制限抵抗RS1を接続する。同様に、オペアンプ74は、プラス入力に分圧抵抗Rd2,Rd3間のノードを接続し、マイナス入力にアンプの出力を接続したボルテージフォロワーの構成とする。さらにオペアンプ74の出力とキャパシタCS2,CS3間のノードとの間に、制限抵抗RS2を接続する。
【0035】
オペアンプ73,74は、分圧抵抗Rd1,Rd2,Rd3で決まる補助電位を目標値として、キャパシタCS1,CS2,CS3を充放電する。キャパシタCS1,CS2,CS3に充電した補助電位V31,V32の電荷は、詳しくは後述するように、アクチュエータ6の充電に用いる。さらにキャパシタCS1,CS2,CS3は、アクチュエータ6から放電された補助電位V31,V32の電荷を受け取って蓄える。つまり、補助電位V31,V32のアクチュエータ6の充放電は、キャパシタCS1,CS2,CS3とアクチュエータ6との間の電荷の受け渡しによって行う。
【0036】
上述の補助電位供給回路72は、中間電位V2と最低電位V0の電位差を等分に分圧して補助電位V31,V32を生成し、生成した補助電位V31,V32の電荷をアクチュエータ6に充放電可能に蓄える補助電位供給部の一例である。さらに
図6及び
図7の例では、アクチュエータ6に最大電位V1と中間電位V2を与える電源供給部も、補助電位供給回路72が兼ねている。
【0037】
制限抵抗RS1,RS2は、オペアンプ73,74が補助電位V31,V32の電位変動に過剰に反応して動作するのを防ぐ。すなわち、補助電位V31(V32)の電荷をアクチュエータ6に与えて充電すると、キャパシタCS1,CS2(CS2,CS3)電圧が下がるが、このキャパシタCS1,CS2(CS2,CS3)の電圧低下にオペアンプ73(74)がすぐに反応して動作すると、電力を消費する。そこで制限抵抗RS1,RS2を設けて、オペアンプ73,74の反応の速さを調整している。オペアンプ73,74は、出来るだけキャパシタCS1,CS2,CS3の初期充電時にだけ動作するのが望ましい。また、オペアンプ73,74を用いると、分圧抵抗Rd1,Rd2,Rd3の抵抗値を大きくすることができ、その分、消費電力を抑えられる利点もある。
【0038】
但し、補助電位供給回路72は、
図8に変形例を示すように、オペアンプ73,74と制限抵抗R
S1,R
S2を省略するようにしてもよい。
【0039】
各電位V1,V2,V0,V31,V32は、インクを吐出する電圧波形の生成に用いる。駆動IC3の各駆動ドライバDは、夫々、波形生成回路を有し、チャネル毎に独立して電圧波形を生成する。
図9は、波形生成回路8の一例である。波形生成回路8は、制御入力C1に従って最大電位V1を与える電流ソーススイッチ81、制御入力C0に従って最低電位V0を与える電流シンクスイッチ82、制御入力C2に従って中間電位V2を与える双方向スイッチ83、制御入力C3に従って補助電位V32を与える双方向スイッチ84、制御入力C4に従って補助電位V31を与える双方向スイッチ85を備える。中間電位V2、補助電位V31,V32は、アクチュエータ6を充電する場合と放電させる場合の両方があるため双方向スイッチとしている。
【0040】
各チャネルの駆動ドライバDは、インクを吐出させる電圧波形に従い所定の順に制御信号C0~C4を排他的に出力する。波形生成回路8は、制御信号C0~C4に従って各スイッチ81~85のON-OFFを切り替え、各電位V1,V2,V0,V31,V32を用いた電圧波形を生成する。各スイッチ81~85のうち2以上が同時にONすることは無い。どのチャネルからインクを吐出するかは、例えばプリンタ10の制御部である制御基板17(
図1参照)から送られてくるプリントデータに基づく。
【0041】
図10は、一連のインク吐出動作のシーケンスを示す。
図10には、1ドットのインクを吐出する電圧波形と、制御信号C0~C4のON-OFFのタイミングを併せて示す。一連のインク吐出動作は、制御回路の一例である駆動ドライバDによって制御する。
図11は、アクチュエータ6の動作を模式的に示す。以下、
図10及び
図11を参照しながらアクチュエータ6のインク吐出動作について説明する。
【0042】
例えば初期状態では、
図10に示すように、駆動ドライバDは、制御信号C0によって波形生成回路8のスイッチ82をONし、アクチュエータ6の個別端子に最低電位V0を与えておく。そして、一連のインク吐出動作のシーケンスを開始すると、駆動ドライバDは、まず制御信号C2を出力してスイッチ83をONし、アクチュエータ6に中間電位V2を与える。中間電位V2が与えられたアクチェータ6は、定常変形する。具体的には、
図11(a)に示すように、圧電体61の分極軸の向きに電界が印加され、アクチュエータ6が積層方向(Z方向)に伸長して圧力室42の容積が縮小した状態になる。これはインク吐出のタイミングに先立って行っておく。そして、プリントデータに従ってインクの吐出動作が開始されるまで、中間電位V2を保持して、待機状態とする。
【0043】
その後、プリントデータに従って1ドットのインクを吐出する動作を開始する場合、制御信号C3によりスイッチ84をONし、アクチュエータ6に補助電位V32を与える。次いで、制御信号C4によりスイッチ85をONし、アクチュエータ6に補助電位V31を与える。さらに次いで、制御信号C0によりスイッチ82をONし、アクチュエータ6に最低電位V0を与える。このように、補助電位V31,V32を介して段階的に中間電位V2から最低電位V0までアクチュエータ6の電圧を下げる。これにより、
図11(b)に示すように、伸長していたアクチュエータ6が元に戻り、すなわち相対的に収縮し、圧力室42の容積が相対的に拡張する。圧力室42の容積が拡張した分、ガイド流路43を介して圧力室42内にインクが流れ込む。
【0044】
そして、駆動電圧をV2からV0に下げる変化をさせ始めてから例えばヘッド部2の圧力振動周期の1/2の時間が経過した後、制御信号C4によりスイッチ85をONし、アクチュエータ6に補助電位V31を与え、次いで制御入力C3によりスイッチ84をONし、アクチュエータ6に補助電位V32を与え、さらに次いで制御入力C2によりスイッチ83をONし、アクチュエータ6に中間電位V2を与える。このようにして最低電位V0から中間電位V2にアクチュエータ6の電圧を上げることによって、
図11(c)に示すように、アクチュエータ6が積層方向(Z方向)に伸長して相対的に圧力室42の容積が縮小することでノズル24からインクの液滴Rが吐出する。
【0045】
そして、中間電位V2に上げてから例えばヘッド部2の圧力振動周期の1/2の時間が経過した後、制御信号C1によりスイッチ81をONし、アクチュエータ6に最大電位V1を与え、所定時間後に制御信号C2によってスイッチ83をONし、中間電位V2に戻す。その際のアクチュエータ6の伸長(
図11(d))と復帰(
図11(a))によって圧力室42の容積を縮小、復帰させ、この動作によって残留振動を減衰させる。この一連の動作によって、1ドットのインクの液滴Rを吐出することができる。プリントデータに基づき続けてインクを吐出する場合、中間電位V2で始まり中間電位V2で終わる1ドットのインクの吐出動作を繰り返す。そして最後のドットのインクの吐出が終了したら、
図10に示すように最低電位V0に戻して一連の液体吐出動作を終了する。
【0046】
1ドットのインクを吐出する電圧波形(
図10参照)は、中間電位V2で始まり中間電位V2で終わる。その間、
図10のf2でヘッド部2のアクチュエータ6(すなわち駆動させる各アクチュエータ6)から補助電位V32の電源に充電するときのヘッド部2のアクチュエータ6と補助電位V32の電源の電圧差V2-V32は、r2で補助電位V32の電源からヘッド部2のアクチュエータ6に充電するときの補助電位V32の電源とヘッド部2のアクチュエータ6の電圧差V32-V31と等しい。また、f1でヘッド部2のアクチュエータ6から補助電位V31の電源に充電するときのヘッド部2のアクチュエータ6と補助電位V31の電源の電圧差V32-V31は、r1で補助電位V31の電源からヘッド部2のアクチュエータ6に充電するときの補助電位V31の電源とヘッド部2のアクチュエータ6の電圧差V31-V0と等しい。これによって、キャパシタC
S1,C
S2,C
S3への充電電荷と放電電荷は等しくなる。このため1ドットのインク吐出動作の間にキャパシタC
S1,C
S2,C
S3から放電された電荷と同じだけの電荷がキャパシタC
S1,C
S2,C
S3に回生され、補助電位V31、V32は、インクを吐出した後も従前の電圧を維持する。この補助電位V31、V32の電荷の供給と回生により、消費電力を軽減することができ、インクジェットヘッド100の駆動回路とアクチュエータ6の発熱が抑えられる。勿論、1ドットのインクを吐出する電圧波形は、
図10の電圧波形に限らない。例えば複数のインク滴をドロップして1ドットを形成するマルチドロップの電圧波形などであってもよい。さらに、上述の引き打ちの電圧波形に限らない。中間電位V2で始まり中間電位V2で終わる間、補助電位の電源からアクチュエータ6に充電するときのアクチュエータ6と補助電位の電源の電圧差と回数が、アクチュエータ6から補助電位の電源へ充電するときのアクチュエータ6と補助電位の電源の電圧差と回数と等しいという規則を維持する限り、どのような電圧波形であっても補助電位V31、V32の電荷の収支は保たれるからである。従って、オペアンプ73,74による充電量は小さく、消費電力を節約することができる。
【0047】
さらに、キャパシタCS1,CS2,CS3の静電容量を、全チャネルのアクチュエータ6(CX1~CXn)の合計静電容量よりも十分大きく設定しているので、1ドットのインクを吐出する駆動波形のシーケンスの中でキャパシタCS1,CS2,CS3の電圧変化を小さくできる。これにより、オペアンプ73,74が過剰に反応して電力を消費するのを抑えることができる。更にオペアンプ73,74の出力に制限抵抗RS1,RS2を設けたことで、キャパシタCS1,CS2,CS3の僅かな電圧変化にも、オペアンプ73,74が反応しないようにしている。
【0048】
(第2実施形態)
続いて、第2実施形態に従うインクジェットヘッド100について説明する。第2実施形態に従うインクジェットヘッド100は、補助電位V32に代えて、最大電位V1と中間電位V0の間に補助電位V41を生成することを除けば、第1実施形態と同様の構成である。従って、第1実施形態と同様の構成については詳しい説明を省略する。
【0049】
図12は、第2実施形態の補助電位供給回路72の一例である。
図13は、補助電位供給回路72の変形例である。
図14は、波形生成回路8の一例である。
図15は、一連のインク吐出動作のシーケンスを示す。
図15には、1ドットのインクを吐出する電圧波形と、制御信号C0~C4のON-OFFのタイミングを併せて示す。一連のインク吐出動作は、制御回路の一例である駆動ドライバDによって制御する。
【0050】
図12に示すように、補助電位供給回路72は、最大電位V1と最低電位V2の間に2個の分圧抵抗Rd
4,Rd
5を直列に接続して分圧する。2個の分圧抵抗Rd
4,Rd
5は、抵抗値が同じものを用いる。これにより最大電位V1と中間電位V2の電位差を二等分に分圧する。さらに、最大電位V1と中間電位V2の間に、2個のキャパシタC
S4,C
S5を直列に接続する。分圧抵抗Rd
4,Rd
5間のノードとキャパシタC
S4,C
S5間のノードは、オペアンプ75を介して接続する。オペアンプ75は、プラス入力に分圧抵抗Rd
4,Rd
5間のノードを接続し、マイナス入力にアンプの出力を接続したボルテージフォロワーの構成とする。さらにオペアンプ75の出力とキャパシタC
S4,C
S5間のノードとの間に、制限抵抗R
S3を接続する。生成する補助電位の数は1個に限らない。すなわち、最大電位V1と中間電位V2の電位差をm等分に分圧し、m-1個の補助電位を生成する。「m」は、2以上である。キャパシタC
S4,C
S5の静電容量は、夫々、全チャネルのアクチュエータ6(C
X1~C
Xn)の合計静電容量よりも大きくする。好ましくは、10倍以上である。
【0051】
さらに補助電位供給回路72は、中間電位V2と最低電位V0の間に2個の分圧抵抗Rd6,Rd7を直列に接続して分圧する。2個の分圧抵抗Rd4,Rd5は、抵抗値が同じものを用いる。これにより中間電位V2と最低電位V0の電位差を二等分に分圧する。さらに中間電位V2と最低電位V0の間に、2個のキャパシタCS6,CS7を直列に接続する。分圧抵抗Rd6,Rd7間のノードとキャパシタCS6,CS7間のノードは、オペアンプ76を介して接続する。オペアンプ76は、プラス入力に分圧抵抗Rd6,Rd7間のノードを接続し、マイナス入力にアンプの出力を接続したボルテージフォロワーの構成とする。さらにオペアンプ76の出力とキャパシタCS6,CS7間のノードとの間に、制限抵抗RS4を接続する。キャパシタCS6,CS7の静電容量は、夫々、全チャネルのアクチュエータ6(CX1~CXn)の合計静電容量よりも大きくする。好ましくは、10倍以上である。
【0052】
補助電位供給回路72は、
図13に変形例を示すように、オペアンプ75,76と制限抵抗R
S3,R
S4を省略するようにしてもよい。
【0053】
図14に示すように、波形生成回路8は、制御入力C1に従って最高電位V1を与える電流ソーススイッチ81、制御入力C0に従って最低電位V0を与える電流シンクスイッチ82、制御入力C2に従って中間電位V2を与える双方向スイッチ83、制御入力C3に従って補助電位V41を与える双方向スイッチ84、制御入力C4に従って補助電位V31を与える双方向スイッチ85を備えている。中間電位V2、補助電位V41,V31は、アクチュエータ6を充電する場合と放電させる場合の両方があるため双方向スイッチとしている。
【0054】
続いて
図15を参照しながらアクチュエータ6のインク吐出動作について説明する。
例えば初期状態では、
図15に示すように、制御信号C0によって波形生成回路8のスイッチ82をONし、アクチュエータ6の個別端子に最低電位V0を与えておく。そして、一連のインク吐出のシーケンスを開始すると、制御信号C2によってスイッチ83をONし、アクチュエータ6に中間電位V2を与える。中間電位V2が与えられたアクチェータ6は、定常変形する(
図11(a)参照)。
【0055】
その後、プリントデータに従って1ドットのインクを吐出する動作を開始する場合、制御信号C4によりスイッチ85をONし、アクチュエータ6に補助電位V31を与える。次いで制御入力C0によりスイッチ82をONし、アクチュエータ6に最低電位V0を与える。このように、補助電位V31を介して段階的に中間電位V2から最低電位V0までアクチュエータ6の電圧を下げることで、圧力室42内にインクが流れ込む(
図11(b)参照)。
【0056】
そして、駆動電圧をV2からV0に下げる変化をさせ始めてから例えばヘッド部2の圧力振動周期の1/2の時間が経過した後、制御信号C4によりスイッチ85をONし、アクチュエータ6に補助電位V31を与え、次いで制御信号C2によりスイッチ83をONし、アクチュエータ6に中間電位V2を与える。このようにして最低電位V0から中間電位V2にアクチュエータ6の電圧を上げることによって、ノズル24からインクの液滴Rが吐出する(
図11(c)参照)。
【0057】
そして、中間電位V2に上げてから例えばヘッド部2の圧力振動周期の1/2の時間が経過した後、制御信号C3によりスイッチ84をONし、アクチュエータ6に補助電位V41を与え、次いで制御入力C1によりスイッチ81をONし、アクチュエータ6に最大電位V1を与える。さらに所定時間後に、制御信号C3によりスイッチ84をONし、アクチュエータ6に補助電位V41を与え、次いで制御入力C2によりスイッチ83をONして、中間電位V2に戻す。その際のアクチュエータ6の伸長と復帰によって残留振動を減衰させる(
図11(d)、
図11(a)参照)。プリントデータに基づき続けてインクを吐出する場合、中間電位V2で始まり中間電位V2で終わる1ドットのインクの吐出動作を繰り返す。そして最後のドットのインクの吐出が終了したら、
図15に示すように最低電位V0に戻して一連の液体吐出動作を終了する。
【0058】
第2実施形態においても、中間電位V2で始まり中間電位V2で終わる。その間、
図15のf1でヘッド部2のアクチュエータ6(すなわち駆動させる各アクチュエータ6)から補助電位V31の電源に充電するときのヘッド部2のアクチュエータ6と補助電位V31の電源の電圧差V2-V31は、r1で補助電位V31の電源からヘッド部2のアクチュエータ6に充電するときの補助電位V31の電源とヘッド部2のアクチュエータ6の電圧差V31-V0と等しい。また、f2でヘッド部2のアクチュエータ6から補助電位V41の電源に充電するときのヘッド部2のアクチュエータ6と補助電位V41の電源の電圧差V1-V41は、r2で補助電位V41の電源からヘッド部2のアクチュエータ6に充電するときの補助電位V41の電源とヘッド部2のアクチュエータ6の電圧差V41-V2と等しい。従って1ドットのインク吐出動作の間にキャパシタC
S4,C
S5,C
S6,C
S7から放電される電荷と同じだけの電荷がキャパシタC
S4,C
S5,C
S6,C
S7に回生され、補助電位V41、V31は、インクを吐出した後も従前の電圧を維持する。この補助電位V41,V31の電荷の供給と回生により、消費電力を軽減することができ、インクジェットヘッド100の駆動回路とアクチュエータ6の発熱が抑えられる。
【0059】
(第3実施形態)
続いて、第3実施形態に従うインクジェットヘッド100について説明する。第3実施形態に従うインクジェットヘッド100は、チャネル毎に電圧波形を独立して生成するのに代えて、共通電圧波形VCOMを生成することを除けば、第1実施形態と同様の構成である。従って、第1実施形態と同様の構成については詳しい説明を省略する。
【0060】
図16は、インクジェットヘッド100の駆動回路である。
図16に示すように、本実施形態は、共通波形生成回路9を備える。共通波形生成回路9は、補助電位供給回路72からの各電位V1,V2,V0,V31,V32を電源にして共通電圧波形VCOMを生成する。共通電圧波形VCOMは、例えば
図10に示した電圧波形と同じ波形である。生成した共通電圧波形VCOMは、駆動IC3に与える。駆動IC3は、例えばチャネル毎に設けた選択スイッチのON-OFFを切り替えて、アクチュエータ6に共通電圧波形VCOMを選択的に与える。
【0061】
図17は、共通波形生成回路9の一例である。共通波形生成回路9は、制御入力C1に従って最高電位V1を与える電流ソーススイッチ91、制御入力C0に従って最低電位V0を与える電流シンクスイッチ92、制御入力C2に従って中間電位V2を与える双方向スイッチ93、制御入力C3に従って補助電位V32を与える双方向スイッチ94、制御入力C4に従って補助電位V31を与える双方向スイッチ95を備えている。中間電位V2、補助電位V31,V32は、アクチュエータ6を充電する場合と放電させる場合の両方があるため双方向スイッチとしている。共通波形生成回路9は、制御信号C0~C4に従い各スイッチ91~95のON-OFFを切り替えて、例えば
図10に示した電圧波形と同じ形状の共通電圧波形VCOMを生成する。
【0062】
図18は、駆動IC3の選択スイッチ96の一例である。駆動IC3は、プリントデータに基づき、インクを吐出するチャネルに制御信号C
C1~C
C2を与える。該当するチャネルの選択スイッチ96は、制御信号C
C1~C
C2によってONし、共通電圧波形VCOMをアクチュエータ6に与える。そのときのアクチュエータ6の動作は、上述した通りである(
図11参照)。このような構成であっても、共通電圧波形VCOMの1ドットのインクを吐出する電圧波形が中間電位V2で始まり中間電位V2で終わるという規則を維持する限り、補助電位V31、V32の電荷の供給と回生により、消費電力を軽減することができ、インクジェットヘッド100の駆動回路とアクチュエータ6の発熱が抑えられる。なお、第2実施形態のように、補助電位V32に代えて補助電位V41を生成する構成としてもよい。
【0063】
以上説明したように、上述のいずれかの実施形態によれば、インク吐出動作時のアクチュエータ6及び駆動回路の発熱と消費電力を抑えることが可能である。また補助電源を経由することによってアクチュエータ6の動作から不要な高周波成分を取り除いてインクを安定に吐出することが可能となる。
【0064】
なお、アクチュエータ6は、複数の圧電体61を積層した積層型に限らない。圧電体61が単一層のアクチュエータであってもよい。また、駆動電圧を印加したときのアクチュエータの動作は、縦振動に限らない。さらに、ドロップオンデマンド・ピエゾ方式に限らず、コンティニアス方式に適用してもよい。
【0065】
上述の実施形態では、インクジェットプリンタ10のインクジェットヘッド100を液体吐出装置の一例として説明したが、液体吐出装置は、3Dプリンタの造形材吐出ヘッド、分注装置の試料吐出ヘッドであってもよい。
【0066】
本発明の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0067】
10 インクジェットプリンタ
100~103 インクジェットヘッド
24 ノズル
3 駆動IC
6 アクチュエータ
72 補助電位供給回路
73,74,75,76 オペアンプ
8 波形生成回路
D 駆動ドライバ(駆動回路)
Rd 分圧抵抗
Cs キャパシタ
Rs 制限抵抗
V1 最大電位
V2 中間電位
V0 最低電位
V31,V32,V41 補助電位