(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004775
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】ヒートシンク
(51)【国際特許分類】
H01L 23/473 20060101AFI20240110BHJP
H01S 5/024 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
H01S5/024
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104596
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000133788
【氏名又は名称】株式会社テクニスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】山岡 文彦
(72)【発明者】
【氏名】奥田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】山野 高広
(72)【発明者】
【氏名】武田 淳
【テーマコード(参考)】
5F136
5F173
【Fターム(参考)】
5F136CB06
5F136DA34
5F136FA03
5F136FA14
5F136FA15
5F136FA16
5F136FA17
5F136FA24
5F173MC12
5F173ME54
(57)【要約】
【課題】流路が電気的に絶縁されているとともに、上面と下面との導通が確保されているヒートシンクを提供する。
【解決手段】ヒートシンク2は、内部に流路が形成された流路部材4と、流路部材4の上面を電気的に絶縁する上側絶縁プレート6と、流路部材4の下面を電気的に絶縁する下側絶縁プレート8と、上側絶縁プレート6の上方に配置され、上側絶縁プレート6の端部から突出する突出部10aを有する上側導電性プレート10と、下側絶縁プレート8の下方に配置され、下側絶縁プレート8の端部から突出する突出部12aを有する下側導電性プレート12と、上側導電性プレート10の突出部10aと下側導電性プレート12の突出部12aとの間に配置され、上側導電性プレート10と下側導電性プレート12とを電気的に接続する導電性ブロック14とを備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子を冷却するためのヒートシンクであって、
内部に流路が形成された流路部材と、
前記流路部材の上面を電気的に絶縁する上側絶縁プレートと、
前記流路部材の下面を電気的に絶縁する下側絶縁プレートと、
前記上側絶縁プレートの上方に配置され、前記上側絶縁プレートの端部から突出する突出部を有する上側導電性プレートと、
前記下側絶縁プレートの下方に配置され、前記下側絶縁プレートの端部から突出する突出部を有する下側導電性プレートと、
前記上側導電性プレートの突出部と前記下側導電性プレートの突出部との間に配置され、前記上側導電性プレートと前記下側導電性プレートとを電気的に接続する導電性ブロックとを備えるヒートシンク。
【請求項2】
前記導電性ブロックには、上下方向に延びる切り欠きが形成されている、請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項3】
前記流路部材と前記導電性ブロックとの間には隙間が設けられている、請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項4】
半導体素子が装着される領域は一端部に設けられ、前記導電性ブロックは他端部に設けられている、請求項1に記載のヒートシンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子を冷却するためのヒートシンクに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザダイオードなどの半導体素子を冷却するためのヒートシンクとして、水冷式ヒートシンクが使用されている。水冷式ヒートシンクは、半導体素子が装着される放熱部材を備え、この放熱部材の内部には、マイクロチャンネルと呼ばれる流路が形成されている。そして、水冷式ヒートシンクにおいては、流路に冷却水が流れることによって、発熱した半導体素子を冷却するようになっている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体素子を冷却するヒートシンクにおいては、複数のヒートシンクが積層されて使用される場合がある。この場合、複数のヒートシンクが積層された積層体の上端および下端が電極となることから、各ヒートシンクの上面と下面との間の導通が必要である。他方、ヒートシンクにおいては、流路を流れる水が電気と反応してしまうと、流路を形成する部材の腐食の進行を助長してしまうため、流路は電気的に絶縁されていなければならない。
【0005】
本発明の課題は、流路が電気的に絶縁されているとともに、上面と下面との導通が確保されているヒートシンクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、上記課題を解決する以下のヒートシンクが提供される。すなわち、
「半導体素子を冷却するためのヒートシンクであって、
内部に流路が形成された流路部材と、
前記流路部材の上面を電気的に絶縁する上側絶縁プレートと、
前記流路部材の下面を電気的に絶縁する下側絶縁プレートと、
前記上側絶縁プレートの上方に配置され、前記上側絶縁プレートの端部から突出する突出部を有する上側導電性プレートと、
前記下側絶縁プレートの下方に配置され、前記下側絶縁プレートの端部から突出する突出部を有する下側導電性プレートと、
前記上側導電性プレートの突出部と前記下側導電性プレートの突出部との間に配置され、前記上側導電性プレートと前記下側導電性プレートとを電気的に接続する導電性ブロックとを備えるヒートシンク」が提供される。
【0007】
好ましくは、前記導電性ブロックには、上下方向に延びる切り欠きが形成されている。前記流路部材と前記導電性ブロックとの間には隙間が設けられているのが望ましい。半導体素子が装着される領域は一端部に設けられ、前記導電性ブロックは他端部に設けられているのが好適である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のヒートシンクにおいては、上側絶縁プレートおよび下側絶縁プレートによって流路が電気的に絶縁されているとともに、上側導電性プレートの突出部と下側導電性プレートの突出部との間に導電性ブロックが配置されているので、上面と下面との導通が確保される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に従って構成されたヒートシンクの斜視図。
【
図2】
図1に示すヒートシンクから上側導電性プレートおよび上側絶縁プレートを除いた状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に従って構成されたヒートシンクの実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0011】
(ヒートシンク2)
図1に示すとおり、水冷式のヒートシンク2は、放熱性の良好な材料から形成されている。ヒートシンク2は全体として直方体形状であり、ヒートシンク2の上面の所定領域(図示の実施形態では
図1において符号Rで示す領域)に、レーザダイオードなどの半導体素子(被冷却物)が装着される。
図1を参照することによって理解されるとおり、領域Rは、ヒートシンク2の長手方向(X方向)一端部に設けられている。なお、X方向は
図1に矢印Xで示す方向である。また、Y方向はX方向に直交する方向であり、Z方向は、X方向およびY方向に直交する上下方向である。
【0012】
ヒートシンク2には、ヒートシンク2の流路に冷却水を供給するための供給孔2aと、ヒートシンク2の流路から冷却水を排出するための排出孔2bと、ネジ(図示していない。)を通すための締結孔2cとが上下方向(Z方向)に貫通して形成されている。なお、締結孔2cを通るネジによって、上下方向に積層された複数のヒートシンク2が互いに締結される。
【0013】
図2ないし
図4を参照して説明すると、ヒートシンク2は、流路部材4と、上側絶縁プレート6と、下側絶縁プレート8と、上側導電性プレート10と、下側導電性プレート12と、導電性ブロック14とを備える。
【0014】
(流路部材4)
流路部材4は、放熱性の良好な材料から形成され得るところ、加工性がよく、比較的低コストの銅であるのが好ましい。図示の実施形態では
図3および
図4に示すとおり、流路部材4は、長方形状の銅製の6枚の流路プレート4a、4b、4c、4d、4e、4fが上下方向に積層され、かつ、互いに接合された積層体である。各流路プレート4a~4fのサイズ(X方向・Y方向の寸法)は、同一でよい。
【0015】
各流路プレート4a~4fには、互いに接合される前にエッチングが施され、供給孔2a、排出孔2bおよび締結孔2cを構成する複数個の開口(符号省略)が形成される。各流路プレート4a~4fが互いに接合された際には、各流路プレート4a~4fの開口によって、供給孔2aと排出孔2bとを接続する流路が形成されるようになっている。なお、流路部材4の流路の形状および流路プレートの枚数は、任意に設定され得る。
【0016】
(上側絶縁プレート6、下側絶縁プレート8)
上側絶縁プレート6および下側絶縁プレート8は、たとえば、公知のDCB基板から形成され得る。DCB基板は、Direct Copper Bond法によって、絶縁層の上面および下面に金属製の導電層が直接接合された積層基板である。
【0017】
図4に示すとおり、上側絶縁プレート6は、長方形状の絶縁層6aと、絶縁層6aの上面および下面に直接接合された長方形状の導電層6b、6cとを有する。下側絶縁プレート8も、上側絶縁プレート6と同様に、長方形状の絶縁層8aと、絶縁層8aの上面および下面に直接接合された長方形状の導電層8b、8cとを有する。
【0018】
絶縁層6a、8aの材料としては、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、ダイヤモンド、サファイアのような電気絶縁性および高い放熱性を有する材料が採用され得る。導電層6b、6c、8b、8cの材料は銅でよい。
【0019】
上側絶縁プレート6は流路部材4の上面に配置されており、導電層6cの下面が最上部の流路プレート4aの上面に接合されている。また、下側絶縁プレート8は流路部材4の下面に配置されており、導電層8bの上面が最下部の流路プレート4fの下面に接合されている。そして、上側絶縁プレート6は、流路部材4の上面を電気的に絶縁し、下側絶縁プレート8は、流路部材4の下面を電気的に絶縁するようになっている。
【0020】
図示の実施形態の上側・下側絶縁プレート6、8のサイズ(X方向・Y方向の寸法)は、流路部材4のサイズと同一であるが、流路部材4の上面および下面を電気的に絶縁することができれば、流路部材4のサイズと同一でなくてもよい。
【0021】
なお、
図3に示すとおり、上側・下側絶縁プレート6、8には、供給孔2a、排出孔2bおよび締結孔2cを構成する円形の開口(符号省略)が形成されている。
【0022】
(上側導電性プレート10、下側導電性プレート12)
上側・下側導電性プレート10、12は、それぞれ長方形状であり、銅などの放熱性・導電性の良好な金属材料から形成され得る。
図4に示すとおり、上側導電性プレート10は、上側絶縁プレート6の上方に配置され、上側絶縁プレート6の上部の導電層6bに接合されている。上側導電性プレート10のX方向寸法は、上側絶縁プレート6のX方向寸法よりも大きく、上側導電性プレート10は、上側絶縁プレート6のX方向端部からX方向に突出する突出部10aを有する。
【0023】
下側導電性プレート12は、下側絶縁プレート8の下方に配置され、下側絶縁プレート8の下部の導電層8cに接合されている。下側導電性プレート12のX方向寸法は、下側絶縁プレート8のX方向寸法よりも大きく、下側導電性プレート12は、下側絶縁プレート8のX方向端部からX方向に突出する突出部12aを有する。
【0024】
なお、上側・下側導電性プレート10、12のY方向寸法は、流路部材4、上側・下側絶縁プレート6、8のY方向寸法と同一でよい。また、上側・下側導電性プレート10、12にも、上側・下側絶縁プレート6、8と同様に、供給孔2a、排出孔2bおよび締結孔2cを構成する円形の開口(符号省略)が形成されている。
【0025】
(導電性ブロック14)
導電性ブロック14は、直方体形状であり、銅などの放熱性・導電性の良好な金属材料から形成され得る。
図4に示すとおり、導電性ブロック14は、上側導電性プレート10の突出部10aと、下側導電性プレート12の突出部12aとの間に配置されている。また、導電性ブロック14は、半導体素子(被冷却物)が装着される領域Rから離れた位置に配置されているのが好適であり、図示の実施形態では
図1に示すとおり、領域Rは、ヒートシンク2の長手方向(X方向)一端部に設けられ、導電性ブロック14は、ヒートシンク2の長手方向(X方向)他端部に設けられている。なお、導電性ブロック14は、複数個設けられていてもよい。
【0026】
導電性ブロック14のZ方向寸法(上下方向寸法)は、上側導電性プレート10の突出部10aと、下側導電性プレート12の突出部12aとの間の距離に対応している。導電性ブロック14の上面は、突出部10aの下面に接合され、導電性ブロック14の下面は、突出部12aの上面に接合されている。このため、上側導電性プレート10と下側導電性プレート12とが導電性ブロック14によって電気的に接続されており、ヒートシンク2の上面と下面との導通(上側導電性プレート10の上面と下側導電性プレート12の下面との導通)が確保されている。
【0027】
図4を参照して説明を続けると、導電性ブロック14のX方向寸法は、突出部10a、12aのX方向寸法よりも小さく、導電性ブロック14と流路部材4との間には隙間Gが設けられているのが好ましい。これによって、導電性ブロック14と流路部材4との間に絶縁部材(図示していない。)を介在させることなく、導電性ブロック14と流路部材4との導通を遮断できるからである。
【0028】
また、図示の実施形態においては、導電性ブロック14と、上側・下側絶縁プレート6、8のそれぞれとの間にも隙間Gが設けられており、上側絶縁プレート6の下部の導電層6c、下側絶縁プレート8の上部の導電層8bを介して、導電性ブロック14と流路部材4とが導通することがないようになっている。
【0029】
なお、導電性ブロック14のY方向寸法は、上側・下側導電性プレート10、12のY方向寸法と同一でよい。
【0030】
図2および
図3に示すとおり、導電性ブロック14には、上下方向に延びる切り欠き14aが形成されているのが好ましい。切り欠き14aが形成されていると、流路部材4、上側・下側絶縁プレート6、8、上側・下側導電性プレート10、12および導電性ブロック14を接合する際の熱歪みが吸収されるため、上記部材の接合不良が防止される。
【0031】
図示の実施形態においては、流路部材4に対向する側面に切り欠き14aが形成されているが、この側面に限定されず、切り欠き14aが上下方向に延びていれば、どの側面に切り欠き14aが形成されていてもよい。また、切り欠き14aは1個以上形成されていてもよい。
【0032】
(ヒートシンク2の製造方法)
ヒートシンク2を製造する際は、まず、エッチングなどによって所要の開口を形成した上記各プレート(流路プレート4a~4f、上側・下側絶縁プレート6、8、上側・下側導電性プレート10、12)を準備するとともに、切り欠き14aを形成した導電性ブロック14を準備する。
【0033】
次いで、上記各プレートの表面に酸化膜を形成する。酸化膜の形成方法は、公知の方法を用いることができる。なお、上側・下側絶縁プレート6、8の表面には、酸化膜を形成しなくてもよい。
【0034】
次いで、
図3および
図4に示すように、上記各プレートを所定の順で積み重ねるとともに、上側導電性プレート10の突出部10aと下側導電性プレート12の突出部12aとの間に導電性ブロック14を配置する。
【0035】
そして、積み重ねた上記各プレートおよび導電性ブロック14を所定温度(たとえば、1085℃)で加熱する。そうすると、酸化膜が還元されて消失するとともに、積み重ねた上記各プレートおよび導電性ブロック14が互いに接合される。このようにして、ヒートシンク2が形成される。
【0036】
上記のように、積み重ねた上記各プレートおよび導電性ブロック14を互いに接合する際の加熱温度は、1085℃のような高温である。また、上述したとおり、上記各プレートの積層体(流路プレート4a~4f、上側・下側絶縁プレート6、8および上側・下側導電性プレート10、12の積層体)には、窒化アルミニウムなどから形成される絶縁層6a、8aが含まれる。一方、導電性ブロック14は、銅などの放熱性・導電性の良好な金属材料から形成される。
【0037】
すなわち、絶縁層6a、8aの材料の熱膨張係数は、導電性ブロック14の材料の熱膨張係数よりも小さくなるのが一般的であるといえる。このため、上記各プレートの積層体の接合時における熱歪みは、絶縁層6a、8aによって抑制され、導電性ブロック14の接合時における熱歪みよりも小さくなる。この点に関し、図示の実施形態においては、導電性ブロック14に切り欠き14aが形成されていることによって、接合時の熱歪みが吸収されるので、熱歪みによる接合不良が防止される。
【0038】
以上のとおりであり、図示の実施形態のヒートシンク2においては、上側絶縁プレート6および下側絶縁プレート8によって流路が電気的に絶縁されているとともに、上側導電性プレート10の突出部10aと下側導電性プレート12の突出部12aとの間に導電性ブロック14が配置されているので、上面と下面との導通が確保されている。
【符号の説明】
【0039】
2:ヒートシンク
4:流路部材
6:上側絶縁プレート
8:下側絶縁プレート
10:上側導電性プレート
10a:突出部
12:下側導電性プレート
12a:突出部
14:導電性ブロック
14a:切り欠き