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特開2024-47751液体吐出ヘッド、液体吐出ヘッドの液体充填方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047751
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド、液体吐出ヘッドの液体充填方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20240401BHJP
【FI】
B41J2/14 603
B41J2/14 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153414
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003362
【氏名又は名称】弁理士法人i.PARTNERS特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仁田 昇
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AF80
2C057AG12
2C057AG45
2C057AG68
2C057AN05
(57)【要約】
【課題】液体を共通液室内に充填することのできる液体吐出ヘッドを提供する。
【解決手段】実施形態の液体吐出ヘッドは、複数の圧力室、共通液室、液体供給口、および液体排出口を備える。複数の圧力室は、第1の方向に配列する。共通液室は、複数の前記圧力室の夫々に連通し、前記圧力室の配列方向を水平方向に位置させたときに前記圧力室の配列の一端側から他端側に向かって高くなる天井面を有する。液体供給口は、前記圧力室の配列の中央部で前記共通液室に連通する。液体排出口は、前記天井面が高くなる端部で前記共通液室に連通する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に配列した複数の圧力室と、
複数の前記圧力室の夫々に連通し、前記圧力室の配列方向を水平方向に位置させたときに前記圧力室の配列の一端側から他端側に向かって高くなる天井面を有する共通液室と、
前記圧力室の配列の中央部で前記共通液室に連通する液体供給口と、
前記天井面が高くなる端部で前記共通液室に連通する液体排出口と、を備えたことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記天井面は、前記圧力室の配列の一端側から他端側に向かって高くなる傾斜面であることを特徴とする請求項1に液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記液体供給口と前記液体排出口のいずれか一方は、前記天井面に形成した開口であることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記液体供給口と前記液体排出口のいずれか一方は、前記天井面以外の壁面に形成した開口であることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
複数の圧力室と、複数の前記圧力室の夫々に連通し、液体を充填する姿勢にしたときに前記圧力室の配列の一端側から他端側に向かって高くなる天井面を有する共通液室と、前記圧力室の配列の中央部で前記共通液室に連通する液体供給口と、前記天井面が高くなる端部で前記共通液室に連通する液体排出口と、を備える液体吐出ヘッドの液体充填方法であって、
前記液体供給口から前記液体排出口に向けて液体を流し、前記液体の流れを一旦止めて気泡が前記共通液室を浮上するのを待ち、再び前記液体供給口から前記液体排出口に向かって前記液体を流すことを特徴とする液体吐出ヘッドの液体充填方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、液体吐出ヘッド、及び液体吐出ヘッドの液体充填方法に関する。
【背景技術】
【0002】
所定量の液体を所定の位置に供給する液体吐出ヘッドが知られている。液体吐出ヘッドは、例えばインクジェットプリンタ、3Dプリンタ、分注装置などに搭載する。インクジェットプリンタは、インクの液滴をインクジェットヘッドから吐出して、記録媒体の表面に画像等を形成する。3Dプリンタは、造形材の液滴を造形材吐出ヘッドから吐出し、硬化させて、三次元造形物を形成する。分注装置は、試料の液滴を吐出して複数の容器等へ所定量供給する。
【0003】
液体吐出ヘッドは、液体を吐出するチャネルを複数有している。各チャネルは、液体を吐出するノズル、ノズルに連通する圧力室、圧力室の容積を変えるアクチュエータを備える。液体は、各圧力室に連通する共通液室から供給する。液体吐出ヘッドは、例えば共通液室に液体を充填する際、液体の流入口と排出口をそれぞれ設ける。液体の流入口と排出口を共通液室の両端に設けると液体の充填は容易になる。しかしながら、通常運転時に流入口から供給される液体とヘッド内にある液体との温度差によって、ヘッド全体に亘る濃度分布が生じてしまうことがある。この温度分布を抑えるためは流入口を共通液室の中央付近に設けることが望ましいが、排出口を共通液室のどちらか一方の端部に設けると、排出口を設けなかった反対側の領域に出来るだけ気泡を残さず液体を充填するのは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-311995号公報
【特許文献2】特開2017-193132号公報
【特許文献3】特開2002-144576号公報
【特許文献4】WO2010-109578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、液体を共通液室内に充填することのできる液体吐出ヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態の液体吐出ヘッドは、複数の圧力室、共通液室、液体供給口、および液体排出口を備える。複数の圧力室は、第1の方向に配列する。共通液室は、複数の前記圧力室の夫々に連通し、前記圧力室の配列方向を水平方向に位置させたときに前記圧力室の配列の一端側から他端側に向かって高くなる天井面を有する。液体供給口は、前記圧力室の配列の中央部で前記共通液室に連通する。液体排出口は、前記天井面が高くなる端部で前記共通液室に連通する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に従うインクジェットヘッドを備えたインクジェットプリンタの全体構成図である。
図2】上記インクジェットヘッドの斜視図である。
図3】上記インクジェットヘッドの側面図とインクの回収容器である。
図4】上記インクジェットヘッドのヘッド部の展開図である。
図5】上記インクジェットヘッドのアクチュエータの動作説明図である。
図6】上記アクチュエータに与える駆動波形である。
図7】上記初期充填時におけるインクの流れの説明図である。
図8】上記初期充填時におけるインクの流れの説明図である。
図9】第2実施形態に従うインクジェットヘッドのヘッド部の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態に従う液体吐出ヘッド及び液体充填方法について、添付図面を参照しながら詳述する。なお、各図において、同一構成は同一の符号を付している。
【0009】
(第1実施形態)
第1実施形態の液体吐出ヘッドを搭載した画像形成装置の一例として、記録媒体に画像を印刷するインクジェットプリンタ10を説明する。図1は、インクジェットプリンタ10の概略構成を示す。インクジェットプリンタ10は、筐体11の内部に、記録媒体の一例であるシートSを収納するカセット12、シートSの上流搬送路13、カセット12内から取り出したシートSを搬送する搬送ベルト14、搬送ベルト14上のシートSに向けてインクの液滴を吐出する複数のインクジェットヘッド100~103、シートSの下流搬送路15、排出トレイ16、及び制御基板17を配置する。ユーザーインターフェイスである操作部18は、筐体11の上部側に配置する。
【0010】
シートSに印刷する画像データは、例えば外部接続機器であるコンピュータ200で生成する。コンピュータ200で生成した画像データは、ケーブル201、コネクタ202,203を通してインクジェットプリンタ10の制御基板17に送る。
【0011】
ピックアップローラ204は、カセット12からシートSを一枚ずつ上流搬送路13へ供給する。上流搬送路13は、送りローラ対131、132と、シート案内板133、134で構成する。シートSは、上流搬送路13を経由して、搬送ベルト14の上面に送る。図中の矢印104は、カセット12から搬送ベルト14へのシートSの搬送経路を示す。
【0012】
搬送ベルト14は、表面に多数の貫通孔を形成した網状の無端ベルトである。駆動ローラ141、従動ローラ142,143の3本のローラは、搬送ベルト14を回転自在に支持する。モータ205は、駆動ローラ141を回転することによって搬送ベルト14を回転させる。モータ205は、駆動装置の一例である。図中105は、搬送ベルト14の回転方向を示す。搬送ベルト14の裏面側に、負圧容器206を配置する。負圧容器206は、減圧用のファン207と連結する。ファン207は、形成する気流によって負圧容器206内を負圧にし、搬送ベルト14の上面にシートSを吸着保持させる。図中106は、気流の流れを示す。
【0013】
液体吐出ヘッドの一例であるインクジェットヘッド100~103は、搬送ベルト14上に吸着保持したシートSに対して、例えば1mmの僅かな隙間を介して対向するように配置する。インクジェットヘッド100~103は、シートSに向けてインクの液滴を夫々吐出する。インクジェットヘッド100~103は、下方をシートSが通過する際に画像を印刷する。各インクジェットヘッド100~103は、吐出するインクの色が異なることを除けば、同じ構造である。インクの色は、例えば、シアン,マゼンタ,イエロー,ブラックである。
【0014】
インクジェットヘッド100~103は、夫々、インク供給路311~314を介してインクタンク315~318及びインク供給圧力調整装置321~324と連結する。各インクタンク315~318は、各インクジェットヘッド100~103の上方に配置する。待機時に、インクジェットヘッド100~103のノズル26(図2参照)からインクが漏れ出ないように、各インク供給圧力調整装置321~324は、各インクジェットヘッド100~103内を大気圧に対して負圧、例えば-1.2kPaに調整している。画像形成時、各インクタンク315~318のインクは、インク供給圧力調整装置321~324によって各インクジェットヘッド100~103に供給する。
【0015】
画像形成後、搬送ベルト14から下流搬送路15へシートSを送る。下流搬送路15は、送りローラ対151,152,153,154と、シートSの搬送経路を規定するシート案内板155,156で構成する。シートSは、下流搬送路15を経由し、排出口157から排出トレイ16へ送る。図中矢印107は、シートSの搬送経路を示す。
【0016】
続いて、インクジェットヘッド100~103の構成について説明する。以下は、図2図5を参照しながら、インクジェットヘッド100について説明しているが、インクジェットヘッド101~103もインクジェットヘッド100と同じ構造である。
【0017】
図2及び図3に示すように、インクジェットヘッド100は、液体吐出部の一例であるヘッド部2を備える。ヘッド部2は、フィルム配線基板の一例であるフレキシブルプリント配線板21と接続する。さらにフレキシブルプリント配線板21は、中継基板としてのプリント基板22と接続する。
【0018】
フレキシブルプリント配線板21は、ドライバチップである駆動用のIC(Integrated Circuit)23を搭載している(以下、駆動ICと称す)。制御部としての駆動IC23は、インクジェットプリンタ10の制御部である制御基板17からプリント基板22を介して送られてくるプリントデータを一時的に格納し、所定のタイミングでインクを吐出するように駆動信号を各チャネルに与える。
【0019】
ヘッド部2は、ノズルプレート24、アクチュエータ基板25、及び共通インク室3を備えている。ノズル部の一例であるノズルプレート24は、例えばポリイミドなどの樹脂又はステンレスなどの金属で形成した矩形状のプレートである。インクを吐出する各チャネルのノズル26は、例えばノズルプレート24の長手方向(X方向)に沿って配列する。詳しくは後述する3分割駆動とする場合、互いにY方向に位置をずらして千鳥配置とした3個一組のノズル26をX方向に配列する。ノズル密度は、例えば150~1200dpiの範囲内に設定する。
【0020】
共通インク室3は、インク供給路311を介してインク供給圧力調整装置321(図1)と接続する。通常運転時だけでなく例えばインク充填時においても、インク供給圧力調整装置321からインク供給路311を介して共通インク室3内にインクを供給する。共通インク室3には、さらにインク排出路30を接続する。図3に一例を示すように、インク排出路30は、インク回収容器37に接続する。インク回収容器37は、例えばインクジェットプリンタ10内に配置する。インク排出路30は、例えばインクを吐出する通常動作には使用せず、ヘッド部2にインクを充填する際に使用する。インク排出路30には、開閉自在なバルブ31を設けるのが好ましい。インクの流れを遮断できればバルブ31以外でもよい。なお、インク排出路30は、例えばヘッド部2にインクを循環供給するなど、通常動作に使用してもよい。通常動作に使用する場合、インク排出路30は、インクタンク315側のラインのいずれかに接続する。インク排出路30を分岐してインク回収容器37とインクタンク315側のラインの両方に接続し、バルブ(不図示)で流路を切り替え可能にしてもよい。
【0021】
特に図4に示すように、共通インク室3は、枠部材32と蓋部材33を備える。枠部材32は、その開口がアクチュエータ基板25の一面によって塞がれるように配置する。蓋部材33は、アクチュエータ基板25とは反対側の枠部材32の開口を塞ぐ。これにより、蓋部材33と枠部材32で囲われた空間が共通インク室3の室内となる。さらにアクチュエータ基板25に形成した各チャネルの圧力室4と、共通インク室3とが連通する。共通インク室3は、各チャネルの圧力室4に液体を供給する共通液室の一例である。
【0022】
枠部材32は、少なくとも内周面の一部を傾斜させている。図4の例では、枠部材32を四角枠で形成し、長手方向(X方向)の一面を傾斜面34にしている。この傾斜面34は、ヘッド部2にインクを充填する際に、天井面となる。すなわち、傾斜面(天井面)34は、例えばインクジェットヘッド100を図1の姿勢(ノズル26が下向き)にしたときに、重力が働く方向とは反対側に位置する面である。但し、インクジェットヘッド100は、図1に示した姿勢で使用するとは限らない。傾斜面34は、通常運転時のインクジェットヘッド100の姿勢に関わらず、ヘッド部2にインクを充填する姿勢としたときに天井面となる一面であればよい。
【0023】
よって、傾斜面34は、圧力室4の配列方向が水平方向(X方向)を向き、さらにノズル23が下向きになるようヘッド部2を位置させたときに(すなわちインク充填時の姿勢の一例としたときに)、圧力室4の配列の一端側から他端側に向かって高くなっている。傾斜面34は、一端から他端までの高低差が所定の値、例えば一端から他端までの長さに対して3mm以上の高低差となる勾配を有するのが好ましい。詳しくは後述するように、共通インク室3内の気泡が他端側に移動し易いからである。インクの粘度等によって気泡の移動し易さが変わる場合は、インクの種類に応じた勾配に設定するのが望ましい。勿論、好ましいのは直線状の傾斜面34であるが、これに限定されない。例えば湾曲した局面などの天井面であってもよい。また、傾斜面34は、気泡が移動し易い親液特性、表面粗さを有するようにしてもよい。そのための表面処理を施してもよい。
【0024】
蓋部材33は、例えば板状の部材で形成する。蓋部材33は、枠部材32の外周形状に対応する形状にする。インク供給口35とインク排出口36は、それぞれ蓋部材33を貫通して共通インク室3の室内に連通する開口である。インク供給口35は液体供給口の一例であり、インク排出口36は液体排出口の一例である。インク供給口35とインク排出口36は、好ましくは円形の開口穴である。穴の向きは、例えば蓋部材33の厚み方向である。或いは、重力が働く方向とは反対方向に穴の向きを傾斜させてもよい。
【0025】
インク供給口35とインク排出口36は、蓋部材33の主面に形成するが、このとき枠部材32の傾斜面34側、すなわちインク充填時の姿勢において重力が働く方向とは反対側に形成する。特にインク供給口35は、傾斜面34の中央部に配置する。すなわち、圧力室4の配列の中央部である。一方、インク排出口36は、傾斜面34が高くなる端部に配置する。インク排出口36の位置は、最も傾斜面34が高くなるところが望ましい。なお、直線状の傾斜面34以外の天井面にしても同様である。
【0026】
インク供給口35は、インク流路311に接続する。インク排出口36は、インク排出路30に接続する。インク流路311及びインク排出路30は、共通インク室3から気泡が抜け易いように、傾斜面34よりも高い方向に延ばすのが好ましい。傾斜面34よりも下げなければ同じ高さであってもよい。
【0027】
アクチュエータ基板25は、例えば絶縁性のセラミックスで形成した矩形状の基板である。上記したように、各チャネルの圧力室4は、第1の方向の例えばX方向に沿ってアクチュエータ基板25に配列する。各チャネルの圧力室4は、各チャネルのノズル26と連通する。
【0028】
圧力室4は、アクチュエータ基板25に、例えば分極方向が相反する方向(一例として対向方向)に積層した2枚の圧電部材41を、第2の方向の例えばZ方向に例えば矩形の溝状に切り欠くことによって形成する。圧電部材41は例えばピエゾ素子である。すなわち、隣り合う圧力室51の間は、第3の方向の例えばY方向に積層した2枚の圧電部材41を側壁にして仕切っている。各圧力室4は、ノズル26と連通する側が開口し、Z方向における反対側の端部を閉じている。
【0029】
特に図5に示すように、溝状の圧力室4の底面及び両側面には電極42を一体的に形成する。電極42は配線電極43と接続する。圧電部材41及び電極42は、圧力室4の容積を変えるアクチュエータ5を構成する。電極42及び配線電極43は、例えば無電解メッキなどによるニッケル薄膜などで形成する。
【0030】
配線電極43は、アクチュエータ基板25の端部でフレキシブル配線板21と接続し、駆動IC23の駆動ドライバ(すなわち、駆動回路)に接続する。各チャネルの駆動ドライバは、各チャネルのアクチュエータ5に対し、駆動信号として例えば駆動電圧を夫々与える。この構成により、駆動電圧を与えたアクチュエータ5は、圧電部材41の分極軸と交差(望ましくは、直交)する方向に電界が印加され、圧力室4のX方向の側壁となっている圧電部材41がシアモードでX方向に対称に変形する。
【0031】
図6は、アクチュエータ5に与える駆動電圧の一例として、駆動波形(DRP波形)を示す。図6には、駆動時の圧力室4内のインクの圧力及びインクの流速の変化を併せて示している。駆動波形は、期間t1で負電位の電圧(-V)、期間t2でグランド電位(GND)、期間t3で正電位の電圧(+V)をアクチュエータ5に順に与える。期間t1は、例えばヘッド部2の圧力振動周期の1/2の時間に設定する。
【0032】
アクチュエータ5の駆動は、例えば圧力室4を2つおきに3つの組に分けて分割駆動する、いわゆる3分割駆動とすることができる。図5(a)は、互いに隣接する3個一組の圧力室4の電極42の電位がいずれもグラウンド電位(GND)である状態を示している。この状態では、圧力室4間の隔壁である圧電部材41は何ら歪み作用を受けない。図5(b)は、図6の駆動波形の期間t1に、中央の圧力室4の電極42に負電位の電圧(-V)を印加した状態を示している。この状態では、電圧(-V)を印加した中央の圧力室4の両側にある圧電部材41に、その分極方向と直交する方向に電界が作用し、圧電部材41がそれぞれ外側に変形することで、中央の圧力室4の容積が拡張する。
【0033】
続く期間t2に、中央の圧力室4の電極42の電位をグラウンド電位(GND)にすることで、拡張していた中央の圧力室4の容積が図5(a)の状態まで収縮する。このように圧力振動周期の1/2の時間に設定した期間t1の終点で圧力室4の容積を収縮させることによって、図6に示すように圧力室4内のインクの圧力が高まって、インクの液滴が吐出ノズル3から吐出する。
【0034】
さらに続く期間t3に、中央の圧力室4の電極42に正電位の電圧(+V)を印加する。この状態では、図5(c)に示すように、中央の圧力室4の両側にある圧電部材41に対し、図5(b)のときとは逆の方向に電界が作用し、圧電部材41がそれぞれ内側に変形することで、中央の圧力室4の容積が収縮する。期間t3の経過後、中央の圧力室4の電極42の電位をグラウンド電位(GND)にすることで、収縮していた中央の圧力室4の容積が図5(a)の状態まで復帰する。この収縮と復帰によって残留振動をキャンセルする。
【0035】
続いて、ヘッド部2にインクを充填する手順について、図7図8を参照しながら説明する。図7図8は、各工程における共通インク室3内の状態を模式的に示した図である。
【0036】
インクの充填は、例えばインクジェットプリンタ10にインクジェットヘッド100を装着し、インク供給圧力調整装置321からインクを供給して行う。すなわち、ヘッド部2をインク充填時の姿勢にする。具体的には、圧力室4の配列方向が水平方向(X方向)を向き、さらにノズル23が下向きになる姿勢である。続いて図7(a)に示すように、インク供給口35からインクを供給し、共通インク室3内にインク7を充填する。このときバルブ31を開いておき、インク供給口35からインク排出口36に向かってインクが流れるようにする。インク排出口36から排出されるインクは、インク回収容器37に回収する。インク供給口35から供給したインク7は、共通インク室3内のインク排出口36とは反対側の領域にも流れるが、気泡71が残る。なお、例えばノズルプレート24の表面が解放されていればノズル26からもインク7が流出するが、ノズル26側の流路抵抗は大きいので多くのインクはインク排出口36に向かう。またこの期間、ノズルプレート24の表面をキャップしてノズル26から流出するインク7を止めてもよい。
【0037】
続いて図7(b)に示すように、放置する。すなわち、インク7の供給を止め、バルブ31を閉じてインク排出口36を遮断し、例えば所定時間、放置する。これにより気泡71は傾斜面(天井面)43に沿って共通インク室3内を上昇する。たとえこの状態でインク7の充填を終了し通常動作を行ったとしても、気泡71はインク供給口35から圧力室4に向かう流線外にある為、通常動作時のインク7の流れを妨げることが抑えられる。更に圧力室4に向かって気泡が移動してくることも抑えられる。
【0038】
続いて、図8(c)に示すように、放置後に、気泡71抜きを行う。一例として、インク供給口35からインク7を供給しつつ例えばバルブ31を開いてインク排出口36を解放する。放置したことで気泡71はインク排出口36付近に移動しているので、インク7を流すことでインク排出口36から気泡71が排出され、共通インク室3内の気泡71のサイズを小さくすることができる。気泡71が全て排出されるまでインク7を流してから、図8(d)に示すように、インク排出口36を閉じ、共通インク室3内を気泡71の無い状態にすることも可能である。
【0039】
こうしてインク7が充填されたインクジェットヘッド100は、プリントデータに基づき、駆動電圧をアクチュエータ5に与えることでノズル26からインク7を吐出することができる。インク供給口35からアクチュエータ5に向かうインク7の流れは、中央から両側に向かって発散する為、アクチュエータ5のチャネル間の温度の違いを最小化できる。これによって全ノズルに亘って安定に吐出できる。又濃度ムラを低減できる。さらに、アクチュエータ5を駆動して圧力室4の容積を拡張させたとき、万が一ノズル26から空気を吸ってしまったとしても、その気泡71はインク排出口36付近まで浮上する。従って、気泡71は、インク供給口36から圧力室4に向かう流線外にある為、インク供給口35からアクチュエータ5に向かう流れを邪魔しない。
【0040】
(第2実施形態)
続いて、第2実施形態に従うインクジェットヘッド100について、図9を参照しながら説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については、同じ符号を付している。図9に示すように、インク供給口35とインク排出口36は、蓋部材33に形成するのに代えて、枠部材32に形成してもよい。この場合も、第1実施形態と同様に、インク供給口35は、圧力室4の配列の中央部に配置する。インク排出口36は、傾斜面34が高くなる端部に配置する。
【0041】
変形例として、インク供給口35を枠部材32に形成し、インク排出口36を蓋部材33に形成してもよく、その逆にしてもよい。
【0042】
更なる変形例として、傾斜面43は、必ずしも枠部材32に形成しなくともよい。インク充填時の姿勢としたときに例えば蓋部材33が天井面となる場合には、傾斜面43は、蓋部材33に形成する。すなわち、傾斜面43は、インク充填時の姿勢としたときに天井面となるところに形成すればよい。
【0043】
以上説明したように、上述のいずれかの実施形態によれば、液体を容易に共通液室内に充填することのできる液体吐出ヘッドを提供することが可能である。
【0044】
インクジェットヘッド100は、圧力室4を複数配置したシアモード型のアクチュエータ5に限らない。ドロップオンデマンド・ピエゾ方式のアクチュエータなどであってもよい。
【0045】
上述の実施形態では、インクジェットプリンタ10のインクジェットヘッド100を液体吐出装置の一例として説明したが、液体吐出装置は、3Dプリンタの造形材吐出ヘッド、分注装置の試料吐出ヘッドであってもよい。
【0046】
本発明の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0047】
10 インクジェットプリンタ
100~103 インクジェットヘッド
26 ノズル
3 共通インク室
32 枠部材
33 蓋部材
34 傾斜面
35 インク供給口
36 インク排出口
4 圧力室
5 アクチュエータ
7 インク
71 気泡
図1
図2
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図6
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図9