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特開2024-47759二次電池の充電制御装置及び二次電池の充電制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047759
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】二次電池の充電制御装置及び二次電池の充電制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20240401BHJP
   H02J 7/16 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
H02J7/00 B
H02J7/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153429
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110858
【弁理士】
【氏名又は名称】柳瀬 睦肇
(74)【代理人】
【識別番号】100172627
【弁理士】
【氏名又は名称】宮澤 亘
(72)【発明者】
【氏名】塚田 峻也
【テーマコード(参考)】
5G060
5G503
【Fターム(参考)】
5G060CA02
5G060CA03
5G060CA21
5G060CB03
5G060DB07
5G503AA07
5G503BA03
5G503BB02
5G503CA02
5G503CA11
5G503GB06
(57)【要約】
【課題】二次電池の電圧が相対的に低い場合に、充電電流が減少することなく定電流で充電することで充電効率の低下を抑制しつつ二次電池の劣化を抑制できる二次電池の充電制御装置を提供する。
【解決手段】本発明は、充電部101と、前記充電部101から出力電圧を供給することで二次電池100を充電する制御部102と、を有する二次電池の充電制御装置103において、前記制御部102は、前記二次電池100の電圧を検出する二次電池電圧検出部104を有し、前記制御部102は、前記二次電池電圧検出部104により検出した前記二次電池100の電圧と前記出力電圧との電位差が同じになるように前記出力電圧を制御することを特徴とする二次電池の充電制御装置である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電部と、前記充電部から出力電圧を供給することで二次電池を充電する制御部と、を有する二次電池の充電制御装置において、
前記制御部は、前記二次電池の電圧を検出する二次電池電圧検出部を有し、
前記制御部は、前記二次電池電圧検出部により検出した前記二次電池の電圧と前記出力電圧との電位差が同じになるように前記出力電圧を制御することを特徴とする二次電池の充電制御装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記充電部は、
界磁束発生用磁石を有する回転子及び発電出力発生用の固定子巻線が巻回された固定子を備える三相交流発電機と、
前記三相交流発電機から供給される交流電流を直流電流に変換するためのスイッチング動作を行う複数のスイッチング素子を有するAC/DC変換部と、
を有し、
前記複数のスイッチング素子は、前記スイッチング動作の動作タイミングを駆動制御信号で制御されるものであることを特徴とする二次電池の充電制御装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記制御部は、前記二次電池を充電する際に、前記三相交流発電機の前記回転子の回転数及び回転位置を位置検出部により検知し、前記回転子の回転数を回転数検出部で検出し、前記回転子の回転位置を回転位置検出部で検出し、前記回転子の前記回転位置に同期した基準位置から遅角した遅角量を呈する前記駆動制御信号を前記複数のスイッチング素子に印加して制御するものであり、
前記遅角量は、前記二次電池の電圧と前記出力電圧との電位差が同じになるような遅角リミット値であることを特徴とする二次電池の充電制御装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記制御部は、前記遅角リミット値と前記回転子の回転数と前記二次電池の電圧との関係が予め規定されたマップデータを参照して、前記回転子の前記回転数に対応する遅角リミット値を算出することを特徴とする二次電池の充電制御装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記制御部は遅角量算出部を有し、
前記遅角量算出部が、前記マップデータを参照して、前記回転子の前記回転数に対応する遅角リミット値を算出することを特徴とする二次電池の充電制御装置。
【請求項6】
請求項2から5のいずれか一項において、
前記制御部はスイッチ司令部を有し、前記スイッチ司令部は前記複数のスイッチング素子の各々に電気的に接続されており、前記駆動制御信号は前記スイッチ司令部から前記複数のスイッチング素子に入力されることを特徴とする二次電池の充電制御装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記スイッチ司令部は回転位置検出部及び遅角量算出部の各々に電気的に接続されており、
前記スイッチ司令部が、前記遅角量算出部によって算出された遅角リミット値に基づいて遅角量を制御することで、前記二次電池の電圧と前記出力電圧との電位差が同じになるように前記駆動制御信号を前記複数のスイッチング素子に入力することを特徴とする二次電池の充電制御装置。
【請求項8】
請求項5において、
前記遅角量算出部は前記回転数検出部及び前記二次電池電圧検出部の各々に接続されていることを特徴とする二次電池の充電制御装置。
【請求項9】
充電部から出力電圧を供給することで二次電池を充電する二次電池の充電制御方法において、
前記二次電池の電圧を検出し、
前記二次電池の電圧と前記出力電圧との電位差が同じになるように前記出力電圧を制御することを特徴とする二次電池の充電制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の充電制御装置及び二次電池の充電制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、二次電池の電圧が相対的に低い場合に、充電部の出力電圧と、二次電池の電圧との電位差が大きくなる分、充電電流が流れるようになるが、二次電池の劣化を抑制するために、このときの充電電流を抑える必要があり、充電部の出力電圧と、二次電池の電圧との電位差が大きくならないように、充電部の出力電圧も相対的に低くなるように、位相を所定の遅角リミット値で制限することで、定電流で二次電池を充電しようとしている。
【0003】
しかし、遅角リミットが発電機の回転子の回転数で一意に決まり、これにより、充電部の出力電圧が制限されることで、充電により徐々に上昇する二次電池の電圧との電圧差が小さくなり、充電電流も減少してしまい、充電効率が低下するという問題がある。
【0004】
そこで、二次電池の電圧が相対的に低い場合に、充電効率の低下を抑制しつつ二次電池の劣化を抑制するために、充電電流が減少することなく定電流で充電することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6404108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の種々の態様は、二次電池の電圧が相対的に低い場合に、充電電流が減少することなく定電流で充電することで充電効率の低下を抑制しつつ二次電池の劣化を抑制できる二次電池の充電制御装置及び二次電池の充電制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に本発明の種々の態様について説明する。
【0008】
[1]充電部と、前記充電部から出力電圧を供給することで二次電池を充電する制御部と、を有する二次電池の充電制御装置において、
前記制御部は、前記二次電池の電圧を検出する二次電池電圧検出部を有し、
前記制御部は、前記二次電池電圧検出部により検出した前記二次電池の電圧と前記出力電圧との電位差が同じになるように前記出力電圧を制御することを特徴とする二次電池の充電制御装置。
【0009】
本発明の一態様に係る上記[1]の二次電池の充電制御装置によれば、制御部は、二次電池電圧検出部により検出した二次電池の電圧と充電部から二次電池に供給される出力電圧との電位差が同じになるように前記出力電圧を制御する。これにより、二次電池の電圧が相対的に低い場合に、充電による二次電池の電圧上昇に伴い電位差が同じになるように充電部の出力電圧も上昇するように制御できる。その結果、充電による二次電池の充電電流が減少することなく定電流で充電することができ、それにより充電効率の低下を抑制しつつ二次電池の劣化を抑制できる。
【0010】
[2]上記[1]において、
前記充電部は、
界磁束発生用磁石を有する回転子及び発電出力発生用の固定子巻線が巻回された固定子を備える三相交流発電機と、
前記三相交流発電機から供給される交流電流を直流電流に変換するためのスイッチング動作を行う複数のスイッチング素子を有するAC/DC変換部と、
を有し、
前記複数のスイッチング素子は、前記スイッチング動作の動作タイミングを駆動制御信号で制御されるものであることを特徴とする二次電池の充電制御装置。
【0011】
本発明の一態様に係る上記[2]の二次電池の充電制御装置によれば、充電部は、回転子及び固定子を備える三相交流発電機と、前記三相交流発電機から供給される交流電流を直流電流に変換するAC/DC変換部と、を有し、複数のスイッチング素子は、スイッチング動作の動作タイミングを駆動制御信号で制御される。従って、二次電池の電圧が相対的に低い場合に、充電電流が減少することなく定電流で充電することで充電効率の低下を抑制しつつ二次電池の劣化を抑制できる。
【0012】
[3]上記[2]において、
前記制御部102は、前記二次電池を充電する際に、前記三相交流発電機の前記回転子の回転数及び回転位置を位置検出部により検知し、前記回転子の回転数を回転数検出部で検出し、前記回転子の回転位置を回転位置検出部で検出し、前記回転子の前記回転位置に同期した基準位置から遅角した遅角量を呈する前記駆動制御信号を前記複数のスイッチング素子に印加して制御するものであり、
前記遅角量は、前記二次電池の電圧と前記出力電圧との電位差が同じになるような遅角リミット値であることを特徴とする二次電池の充電制御装置。
【0013】
本発明の一態様に係る上記[3]の二次電池の充電制御装置によれば、回転子の回転位置に同期した基準位置から遅角した遅角量は、二次電池の電圧と充電部からの出力電圧との電位差が同じになるような遅角リミット値とすることで、二次電池の電圧が相対的に低い場合に、充電電流が減少することなく定電流で充電することで充電効率の低下を抑制しつつ二次電池の劣化を抑制できる。
【0014】
[4]上記[3]において、
前記制御部は、前記遅角リミット値と前記回転子の回転数と前記二次電池の電圧との関係が予め規定されたマップデータを参照して、前記回転子の前記回転数に対応する遅角リミット値を算出することを特徴とする二次電池の充電制御装置。
【0015】
本発明の一態様に係る上記[4]の二次電池の充電制御装置によれば、制御部は、遅角リミット値と回転子の回転数と二次電池の電圧との関係が予め規定されたマップデータを参照して、回転子の回転数に対応する遅角リミット値を算出する。これにより、変化する二次電池の電圧に対して、充電電流が減少することなく定電流で充電することができ、その結果、充電効率の低下を抑制しつつ二次電池の劣化を抑制できる。
【0016】
[5]上記[4]において、
前記制御部は遅角量算出部を有し、
前記遅角量算出部が、前記マップデータを参照して、前記回転子の前記回転数に対応する遅角リミット値を算出することを特徴とする二次電池の充電制御装置。
【0017】
本発明の一態様に係る上記[5]の二次電池の充電制御装置によれば、遅角量算出部が、遅角リミット値と回転子の回転数と二次電池の電圧との関係が予め規定されたマップデータを参照して、前記回転子の前記回転数に対応する遅角リミット値を算出する。これにより、変化する二次電池の電圧に対して、充電電流が減少することなく定電流で充電することができ、その結果、充電効率の低下を抑制しつつ二次電池の劣化を抑制できる。
【0018】
[6]上記[2]から[5]のいずれか一項において、
前記制御部はスイッチ司令部を有し、前記スイッチ司令部は前記複数のスイッチング素子の各々に電気的に接続されており、前記駆動制御信号は前記スイッチ司令部から前記複数のスイッチング素子に入力されることを特徴とする二次電池の充電制御装置。
【0019】
本発明の一態様に係る上記[6]の二次電池の充電制御装置によれば、駆動制御信号がスイッチ司令部から複数のスイッチング素子に入力されることで、二次電池の電圧が相対的に低い場合に、充電電流が減少することなく定電流で充電することで充電効率の低下を抑制しつつ二次電池の劣化を抑制できる。
【0020】
[7]上記[6]において、
前記スイッチ司令部は回転位置検出部及び遅角量算出部の各々に電気的に接続されており、
前記スイッチ司令部が、前記遅角量算出部によって算出された遅角リミット値に基づいて遅角量を制御することで、前記二次電池の電圧と前記出力電圧との電位差が同じになるように前記駆動制御信号を前記複数のスイッチング素子に入力することを特徴とする二次電池の充電制御装置。
【0021】
本発明の一態様に係る上記[7]の二次電池の充電制御装置によれば、スイッチ司令部が、遅角量算出部によって算出された遅角リミット値に基づいて遅角量を制御することで、二次電池の電圧と充電部からの出力電圧との電位差が同じになるように駆動制御信号を複数のスイッチング素子に入力する。これにより、二次電池の電圧が相対的に低い場合に、充電電流が減少することなく定電流で充電することで充電効率の低下を抑制しつつ二次電池の劣化を抑制できる。
【0022】
[8]上記[5]において、
前記遅角量算出部は前記回転数検出部及び前記二次電池電圧検出部の各々に接続されていることを特徴とする二次電池の充電制御装置。
【0023】
本発明の一態様に係る上記[8]の二次電池の充電制御装置によれば、遅角量算出部が、遅角リミット値と回転子の回転数と二次電池の電圧との関係が予め規定されたマップデータを参照して、前記回転数検出部で検出された前記回転子の前記回転数及び前記二次電池電圧検出部で検出された前記二次電池の電圧から遅角リミット値を算出する。これにより、変化する二次電池の電圧に対して、充電電流が減少することなく定電流で充電することができ、その結果、充電効率の低下を抑制しつつ二次電池の劣化を抑制できる。
【0024】
[9]充電部から出力電圧を供給することで二次電池を充電する二次電池の充電制御方法において、
前記二次電池の電圧を検出し、
前記二次電池の電圧と前記出力電圧との電位差が同じになるように前記出力電圧を制御することを特徴とする二次電池の充電制御方法。
【0025】
本発明の一態様に係る上記[9]の二次電池の充電制御方法によれば、二次電池の電圧と充電部からの出力電圧との電位差が同じになるように前記出力電圧を制御する。これにより、二次電池の電圧が相対的に低い場合に、充電による二次電池の電圧上昇に伴い電位差が同じになるように充電部の出力電圧も上昇するように制御できる。その結果、充電による二次電池の充電電流が減少することなく定電流で充電することができ、それにより充電効率の低下を抑制しつつ二次電池の劣化を抑制できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の種々の態様によれば、二次電池の電圧が相対的に低い場合に、充電電流が減少することなく定電流で充電することで充電効率の低下を抑制しつつ二次電池の劣化を抑制できる二次電池の充電制御装置及び二次電池の充電制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一態様に係る二次電池の充電制御装置を説明するための模式的な構成図である。
図2図1に示す二次電池の充電制御装置を用いて定電流での充電動作の一例のイメージを説明する図である。
図3図1に示す三相交流発電機90の回転子の回転数を一定とし、二次電池の電圧の違いによる遅角量と充電電流との関係を示す図である。
図4図1に示す二次電池100の変化する電圧に対して定電流で充電するために、遅角リミット値と三相交流発電機90の回転子の回転数と二次電池100の電圧との関係のマップを予め設定する方法の一例のイメージを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下では、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0029】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の一態様に係る二次電池の充電制御装置を説明するための模式的な構成図である。
【0030】
二次電池の充電制御装置103は、充電部101と、充電部101から出力電圧を供給することで二次電池100を充電する制御部102と、を有する。
二次電池の充電制御装置103において、制御部102は、二次電池100の電圧を検出する二次電池電圧検出部104を有し、制御部102は、二次電池電圧検出部104により検出した二次電池100の電圧と前記出力電圧との電位差が同じになるように前記出力電圧を制御する。これにより、二次電池100の電圧が相対的に低い場合に、充電による二次電池100の電圧上昇に伴い電位差が同じになるように充電部101の出力電圧も上昇するように制御できる。その結果、充電による二次電池100の充電電流が減少することなく定電流で充電することができ、それにより充電効率の低下を抑制しつつ二次電池の劣化を抑制できる。
【0031】
充電部101は、界磁束発生用磁石を有する回転子及び発電出力発生用の固定子巻線が巻回された固定子を備える三相交流発電機90と、三相交流発電機90から供給される交流電流を直流電流に変換するためのスイッチング動作を行う複数のスイッチング素子31a~31fを有するAC/DC変換部91と、を有する。複数のスイッチング素子31a~31fは、スイッチング動作の動作タイミングを駆動制御信号で制御されるものである。
【0032】
制御部102は、二次電池100を充電する際に、三相交流発電機90の回転子の回転数及び回転位置を位置検出部80により検知し、回転子の回転数を回転数検出部32bで検出し、回転子の回転位置を回転位置検出部32aで検出し、回転子の回転位置に同期した基準位置から遅角した遅角量を呈する駆動制御信号を複数のスイッチング素子31a~31fに印加して制御するものである。この遅角量は、二次電池100の電圧と出力電圧との電位差が同じになるような遅角リミット値である。これにより、二次電池100の電圧が相対的に低い場合に、充電電流が減少することなく定電流で充電することで充電効率の低下を抑制しつつ二次電池の劣化を抑制できる。
なお、遅角リミット値とは、交流発電機の発電量を最大にする遅角量のリミット値をいう。遅角制御状態において遅角量を、0から増加させることにより発電量(バッテリ充電量)を次第に増加させることができる。しかし、ある一定の遅角量までは発電量を増加させることができるが、この一定の遅角量(遅角リミット値)を超えると逆に発電量が低下してしまう性質がある。
【0033】
制御部102はスイッチ司令部32dを有し、スイッチ司令部32dは複数のスイッチング素子31a~31fの各々に電気的に接続されており、駆動制御信号はスイッチ司令部32dから複数のスイッチング素子31a~31fに入力される。
【0034】
スイッチ司令部32dは回転位置検出部32a及び遅角量算出部32cの各々に電気的に接続されている。スイッチ司令部32dが、遅角量算出部32cによって算出された遅角リミット値に基づいて遅角量を制御することで、二次電池100の電圧と出力電圧との電位差が同じになるように駆動制御信号を複数のスイッチング素子31a~31fに入力する。これにより、二次電池100の電圧が相対的に低い場合に、充電電流が減少することなく定電流で充電することで充電効率の低下を抑制しつつ二次電池の劣化を抑制できる。
【0035】
遅角量算出部32cは回転数検出部32b及び二次電池電圧検出部104の各々に接続されている。
【0036】
以下に詳細に説明する。
図1に示すように、二次電池の充電制御装置103は、三相交流発電機90からの発電電力を電力変換するAC/DC変換部91の動作を制御するECU(Electronic Control Unit)111を備えている。また、AC/DC変換部91は二次電池100に電気的に接続されており、二次電池100の正負の両端子間には負荷2が電気的に接続されている。なお、二次電池100としては、鉛バッテリ、ニッケル水素バッテリ、リチウムイオンバッテリ等が利用可能である。なお、ECU111は、二次電池100を充電する充電制御処理機能を有していればよい。
【0037】
三相交流発電機90は、その詳細な構成は省略するが、U相のコイル10a、V相のコイル10b、及びW相のコイル10cから成る3相の発電出力発生用のコイル(固定子巻線)が巻回された固定子と、これらの各相のコイル10a、コイル10b及び10cに対応する界磁束発生用の永久磁石が各々装着されると共に固定子の外周側を周回するように配設された回転子と、を備え、かかる回転子が例えばエンジン(図示せず)のクランク(図示せず)によって駆動される。また、三相交流発電機90に対向して、位置検出部80が配設されている。
【0038】
U相のコイル10aは、AC/DC変換部91の一方のU相のスイッチング素子31aの他方の端子と、AC/DC変換部91の他方のU相のスイッチング素子31bの一方の端子と、に電気的に接続する接続端子11aを有している。V相のコイル10bは、AC/DC変換部91の一方のV相のスイッチング素子31cの他方の端子と、AC/DC変換部91の他方のV相のスイッチング素子31dの一方の端子と、に電気的に接続する接続端子11bを有している。また、W相のコイル10cは、AC/DC変換部91の一方のW相のスイッチング素子31eの他方の端子と、AC/DC変換部91の他方のW相のスイッチング素子31fの一方の端子と、に電気的に接続する接続端子11cを有している。
【0039】
ここで、三相交流発電機90から出力される出力電圧の経時的変化は、例えばエンジンのクランクによって駆動される三相交流発電機90の回転子の回転に同期している。詳しくは、回転子の回転位置(回転角)の1周期を360°(回転子の1回転)とすると、回転子の回転位置の1周期に対して、U相のコイル10a及びそれに対応する永久磁石の位置は、V相のコイル10b及びそれに対応する永久磁石の位置よりも120°ほど早く、V相のコイル10b及びそれに対応する永久磁石の位置は、W相のコイル10c及びそれに対応する永久磁石の位置よりも120°ほど早くなるように設定されている。これに対応して、U相のコイル10aから出力される出力電圧は、V相のコイル10bから出力される出力電圧よりも120°ほど位置が進み、V相のコイル10bから出力される出力電圧は、W相のコイル10cから出力される出力電圧よりも120°ほど位置が進むように設定されている。
【0040】
位置検出部80は、三相交流発電機90の回転子の各相の回転位相、具体的には、U相のコイル10a及びそれに対応する永久磁石の回転位相、V相のコイル10b及びそれに対応する永久磁石の回転位相、並びにW相のコイル10c及びそれに対応する永久磁石の回転位相に各々対応する電気信号を、ECU111における制御部102に出力する。
【0041】
ECU111は、マイクロコンピュータ等を含む演算処理装置であり、図示せぬメモリやタイマを有していてもよい。かかるメモリには、必要な制御プログラム及び制御データが記憶され、ECU111は、メモリから必要な制御プログラム及び制御データを読み出して、制御プログラムを実行することによって、充電制御処理等の制御処理を実行する制御装置である。
【0042】
具体的には、ECU111は、電力変換器であるAC(Alternate Current)/DC(Direct Current)変換部91及び制御部102を備え、制御部102は、回転位置検出部32a、回転数検出部32b、遅角量算出部32c、スイッチ指令部32d及び二次電池電圧検出部104を備えている。なお、図1中では、回転位置検出部32a、回転数検出部32b、遅角量算出部32c、スイッチ指令部32d及び二次電池電圧検出部104を、ECU111が制御プログラムを実行する際のその機能ブロックとして各々示している。また、回転位置検出部32a、回転数検出部32b、遅角量算出部32c、スイッチ指令部32d及び二次電池電圧検出部104を機能ブロックとして機能させるプログラムは、メモリ中に予め記憶されている。また、AC/DC変換部91は、ECU111外にパワーモジュール等として設けられていてもよい。
【0043】
AC/DC変換部91は、3相ブリッジ接続されたスイッチング素子31a、31b、31c、31d、31e及び31fを有し、制御部102のスイッチ指令部32dからの制御信号に従って、スイッチング素子31a、31b、31c、31d、31e及び31fの各々をオン状態又はオフ状態にして三相交流発電機90から供給された3相交流電流を直流電流に変換すると共に、直流電流を二次電池100に供給する。なお、スイッチング素子31a、31b、31c、31d、31e及び31fは、各々トランジスタであり、図1中では、一例として、N型のMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)として各々示している。
【0044】
具体的には、AC/DC変換部91は、U相、V相及びW相の3相の各相に対して、一対のスイッチング素子31a、31b、31c、31d、31e及び31fを各々対応して有している。
【0045】
つまり、AC/DC変換部91では、U相の一対のスイッチング素子31aとスイッチング素子31bとが電気的に接続されており、スイッチング素子31aがオン状態で、且つ、スイッチング素子31bがオフ状態の場合にU相の出力電圧をハイレベルにし、スイッチング素子31aがオフ状態で、且つ、スイッチング素子31bがオン状態の場合にU相の出力電圧をローレベルにする。
【0046】
また、AC/DCC変換部91では、V相の一対のスイッチング素子31cとスイッチング素子31dとが電気的に接続されており、スイッチング素子31cがオン状態で、且つ、スイッチング素子31dがオフ状態の場合にV相の出力電圧をハイレベルにし、スイッチング素子31cがオフ状態で、且つ、スイッチング素子31dがオン状態の場合にV相の出力電圧をローレベルにする。
【0047】
更に、AC/DCC変換部91では、W相の一対のスイッチング素子31eとスイッチング素子31fとが電気的に接続されており、スイッチング素子31eがオン状態、且つ、スイッチング素子31fがオフ状態の場合にW相の出力電圧をハイレベルにし、スイッチング素子31eがオフ状態、且つ、スイッチング素子31fがオン状態の場合にW相の出力電圧をローレベルにする。
【0048】
ここで、スイッチング素子31aは、制御部102のスイッチ指令部32dに電気的に接続された制御端子と、二次電池100の高電位側に電気的に接続された一方の入力端子と、スイッチング素子31b及び三相交流発電機90の接続端子11aに電気的に接続された他方の入力端子と、を有している。かかるスイッチング素子31aは、その制御端子に対してスイッチ指令部32dから印加される所定の制御信号に従って、オン/オフ動作し、それがオン状態のときは、一方の入力端子から他方の入力端子へ電流が流れる。
【0049】
また、スイッチング素子31bは、制御部102のスイッチ指令部32dに電気的に接続された制御端子と、スイッチング素子31a及び三相交流発電機90の接続端子11aに電気的に接続された一方の入力端子と、二次電池100の低電位側に電気的に接続された他方の入力端子と、を有している。かかるスイッチング素子31bは、その制御端子に対してスイッチ指令部32dから印加される所定の制御信号に従って、オン/オフ動作し、それがオン状態のときには、一方の入力端子から他方の入力端子へ電流が流れる。
【0050】
また、スイッチング素子31cは、制御部102の指令部132dに電気的に接続された制御端子と、二次電池100の高電位側に電気的に接続された一方の入力端子と、スイッチング素子31d及び三相交流発電機90の接続端子11bに電気的に接続された他方の入力端子と、を有している。かかるスイッチング素子31cは、その制御端子に対してスイッチ指令部32dから印加される所定の制御信号に従って、オン/オフ動作し、それがオン状態のときには、一方の入力端子から他方の入力端子へ電流が流れる。
【0051】
また、スイッチング素子31dは、制御部32のスイッチ指令部32dに電気的に接続された制御端子と、スイッチング素子31c及び三相交流発電機90の接続端子11bに電気的に接続された一方の入力端子と、二次電池100の低電位側に電気的に接続された他方の入力端子と、を有している。かかるスイッチング素子31dは、その制御端子に対してスイッチ指令部32dから印加される所定の制御信号に従って、オン/オフ動作し、それがオン状態のときには、一方の入力端子から他方の入力端子へ電流が流れる。
【0052】
また、スイッチング素子31eは、制御部102のスイッチ指令部32dに電気的に接続された制御端子と、二次電池100の高電位側に電気的に接続された一方の入力端子と、スイッチング素子31f及び三相交流発電機90の接続端子11cに電気的に接続された他方の入力端子と、を有している。かかるスイッチング素子31eは、その制御端子に対して指令部32dから印加される所定の制御信号に従って、オン/オフ動作し、それがオン状態のときには、一方の入力端子から他方の入力端子へ電流が流れる。
【0053】
更に、スイッチング素子31fは、制御部102のスイッチ指令部32dに電気的に接続された制御端子と、スイッチング素子31e及び三相交流発電機90の接続端子11cに電気的に接続された一方の入力端子と、二次電池100の低電位側に電気的に接続された他方の入力端子と、を有している。かかるスイッチング素子31fは、その制御端子に対してスイッチ指令部32dから印加される所定の制御信号に従って、オン/オフ動作し、それがオン状態のときには、一方の入力端子から他方の入力端子へ電流が流れる。
【0054】
制御部102は、回転位置検出部32a、回転数検出部32b、遅角量算出部32c、スイッチ指令部32d及び二次電池電圧検出部104を機能ブロックとして各々有し、位置検出部80から出力された出力信号が担持するU相、V相及びW相の各々の回転位置を規準位置として、スイッチング素子31a、31b、31c、31d、31e及び31fの各々のオン状態とオフ状態とを切り替えるスイッチング制御を行う。また、回転位置検出部32a、遅角量算出部32c及びスイッチ指令部32dが協働して行うスイッチング素子31a、31b、131c、31d、31e及び31fの各々のオン状態とオフ状態とを切り替えるスイッチング制御は、それらの各々のオン状態とオフ状態とを切り替えるスイッチングタイミングを、対応する規準位置から遅らせる遅角制御である。
【0055】
具体的には、回転位置検出部32aは、三相交流発電機90の回転子のU相、V相及びW相の各々の回転位置を検出する。詳しくは、回転位置検出部32aは、位置検出部80から各々出力された出力信号に基づき、U相のコイル10a及びそれに対応する永久磁石の回転位置、V相のコイル10b及びそれに対応する永久磁石の回転位置、並びにW相のコイル10c及びそれに対応する永久磁石の回転位置を各々検出する。そして、回転位置検出部32aは、かかる回転位置を示す各々の検出値をスイッチ司令部32dで利用可能とする。
【0056】
また、回転数検出部32bは、三相交流発電機90の回転子の回転数を検出する。詳しくは、回転数検出部32bは、位置検出部80から各々出力された出力信号に基づき、U相のコイル10a及びそれに対応する永久磁石の回転位置、V相のコイル10b及びそれに対応する永久磁石の回転位置、並びにW相のコイル10c及びそれに対応する永久磁石の回転位置の時間変化、それらのいずれかの時間変化から回転子の回転数を検出し、かかる回転数を示す各々の検出値を遅角量算出部32cで利用可能とする。なお、回転数検出部32bは、三相交流発電機90のU相、V相及びW相の各相の発電電圧を示す出力信号の波形から回転子の回転数を検出するようにしてもよい。
【0057】
また、二次電池電圧検出部104は二次電池100の電圧を検出するものである。その目的としては、二次電池電圧検出部104により検出した二次電池100の電圧と充電部101からの出力電圧との電位差が同じになるように、制御部102によって前記出力電圧を制御するためである。
【0058】
図2は、定電流での充電動作のイメージ図であり、回転数を一定とすることを前提とした場合の図である。
図2に示すように、二次電池の電圧が相対的に低いときは充電による二次電池の電圧上昇に伴い、AC/DC充電器(充電部101)の出力電圧と二次電池の電圧との電位差が小さくなり、充電電流が減少することがある。そこで、二次電池の電圧が相対的に低いときは充電による二次電池の電圧上昇に伴い電位差が同じになるようにAC/DC充電器(充電部101)の出力電圧も上昇するように制御する。その結果、充電による二次電池100の充電電流が減少することなく定電流で充電することができ、それにより充電効率の低下を抑制しつつ二次電池の劣化を抑制できる。
【0059】
また、上記の電位差が同じになるように制御すれば、抑制したい電流値での定電流充電が可能となる。また、電位差が同じになるように制御するためには、充電による二次電池の電圧上昇に伴って遅角リミットは遅角側に調整することになる。
【0060】
また、制御部102は、遅角リミット値と回転子の回転数と二次電池100の電圧との関係が予め規定されたマップデータ(図示せず)を有する。
【0061】
また、遅角量算出部32cは、二次電池100の電圧と充電部101からの出力電圧との電位差が同じになるような遅角リミット値である遅角量を算出する。その際、遅角量算出部32cは、上記のマップデータを参照して、回転数検出部32bで検出された回転子の回転数に対応する遅角リミット値を算出する。これは、変化する二次電池100の電圧に対して、充電電流が減少することなく定電流で充電するためであり、充電効率の低下を抑制しつつ二次電池の劣化を抑制するためである。
【0062】
また、スイッチ司令部32dは、回転位置検出部32aが検出したU相のコイル10a及びそれに対応する永久磁石の回転位置に対応したタイミングを規準位置に設定し、同様に、回転位置検出部32aが検出したV相のコイル10b及びそれに対応する永久磁石の回転位置に対応したタイミングを規準位置に設定し、回転位置検出部32aが検出したW相のコイル10c及びそれに対応する永久磁石の回転位置に対応したタイミングを規準位置に設定して制御される。
【0063】
ここで、U相の遅角量と、V相の遅角量と、W相の遅角量は互いに等しく設定される。そして、遅角量算出部32cは、かかる遅角量を示す各々の算出値をスイッチ指令部32dで利用可能とする。
【0064】
更に、スイッチ指令部32dは、各スイッチング素子31a、31b、31c、31d、31e及び31fの制御端子に電気的に接続され、遅角量算出部32cが算出した遅角量に従って、スイッチング素子31a、31b、31c、31d、31e及び31fの制御端子に対してハイレベル及びローレベルから成る制御信号を対応する位置のタイミングで各々印加することにより、これらを対応してオン/オフ動作させる。
【0065】
次に、上記のマップデータについて説明する。
図3は、三相交流発電機90の回転子の回転数は一定として、所定の回転数における二次電池100の電圧の違いによる「遅角量-充電電流特性」のイメージ図である。
図3に示すように、回転数は変わらなくても、抑制したい電流値となる二次電池100の電圧の上昇に伴い、遅角リミット値は遅角側に調整することで、充電電流を抑制したい電流値とすることができる。つまり、二次電池100の電圧が相対的に低いときに、遅角リミット値の調整により定電流値で二次電池100の充電をするためには、充電により変化する二次電池100の電圧もパラメータに加えるとよい。
【0066】
図4は、充電により変化する二次電池100の電圧に対して、定電流で充電するための「遅角リミット値-回転数-二次電池の電圧マップ」の設定イメージ図である。
図4に示すように、充電電流を抑制するために二次電池100の電圧が高いときほど遅角リミット値は遅角側に設定する。二次電池100の電圧が高くなるほど遅角リミット値は遅角側に設定する。これにより、充電電流が抑制され、定電流での充電が可能となる。
【0067】
図3及び図4に示すことから、遅角リミット値と回転子の回転数と二次電池100の電圧との関係が予め規定されたマップデータを作製しておき、そのマップデータを参照して、回転数検出部32bで検出された回転子の回転数及び二次電池電圧検出部104で検出された二次電池100の電圧から遅角リミット値を遅角量算出部32cで算出する(図1参照)。これにより、二次電池100の電圧が相対的に低いときに、変化する二次電池100の電圧に対して、充電電流が減少することなく定電流で充電することができ、その結果、充電効率の低下を抑制しつつ二次電池の劣化を抑制できる。
【0068】
(第2の実施形態)
本発明の一態様に係る二次電池の充電制御方法について説明する。
この二次電池の充電制御方法は、充電部101から出力電圧を供給することで二次電池100を充電する方法において、二次電池100の電圧を検出し、この二次電池100の電圧と前記出力電圧との電位差が同じになるように前記出力電圧を制御するものである。
【0069】
以下に詳細に説明する。
図1に示す充電部101から出力電圧を供給することで二次電池100を充電する際に、二次電池電圧検出部104により二次電池100の電圧を検出する。また、三相交流発電機90の回転子の回転数を回転数検出部32bにより検出する。
【0070】
次に、第1の実施形態で説明したマップデータを参照して、回転数検出部32bで検出された回転子の回転数及び二次電池電圧検出部104で検出された二次電池100の電圧から遅角リミット値を遅角量算出部32cにより算出する。この遅角リミット値は、二次電池100の電圧と充電部101からの出力電圧との電位差が同じになるような値である。この遅角リミット値に基づいてスイッチ司令部32dによって遅角量が制御され、スイッチ司令部32dから駆動制御信号が複数のスイッチング素子31a~31fに入力される。これにより、二次電池100の電圧と出力電圧との電位差が同じになるように制御され、その結果、二次電池100の電圧が相対的に低い場合に、充電電流が減少することなく定電流で充電することができ、充電効率の低下を抑制しつつ二次電池の劣化を抑制することができる。
【符号の説明】
【0071】
31a,31b,31c,31d,31e,31f スイッチング素子
80 位置検出部
32a 回転位置検出部
32b 回転数検出部
32c 遅角量算出部
32d スイッチ司令部
90 三相交流発電機
91 AC/DC変換部
100 二次電池
101 充電部
102 制御部
103 二次電池の充電制御装置
104 二次電池電圧検出部
図1
図2
図3
図4