(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047770
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240401BHJP
【FI】
B41J2/01 303
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153445
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】粟野原 佑紀
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EB03
2C056EB13
2C056EB37
2C056EC11
2C056EC26
2C056EC33
2C056HA12
2C056HA29
(57)【要約】
【課題】多段階のプラテンギャップを高精度に設定可能な印刷装置を提供する。
【解決手段】第1軸に沿う方向にキャリッジを変位させる間隔調整部を備え、間隔調整部は、支持部に対して搬送方向に沿って移動可能に支持部に取り付けられたスライド構造体と、スライド構造体を移動させる駆動部と、を有し、スライド構造体は、階段部を有し、階段部は、支持面と平行であり、第1軸における位置がそれぞれ異なる複数の平坦面を有し、複数の平坦面は、第1軸における一方側に位置する平坦面から順に、搬送方向に沿って並び、キャリッジの階段部と対向する位置には、凸部が形成されており、凸部が複数の平坦面のうちいずれかと接触することで、支持面と印刷ヘッドとの間の間隔が規定され、スライド構造体を移動させることで、凸部に接触する平坦面が変更され、第1軸における支持面と印刷ヘッドとの間の間隔が変化する、印刷装置。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を支持する支持面を有する支持部と、
前記支持面に沿った搬送方向に搬送される前記媒体に印刷を行う印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドが搭載されるキャリッジと、
前記印刷ヘッドと対向する位置において前記支持面と前記印刷ヘッドとの間の間隔が変化する第1軸に沿う方向に前記キャリッジを変位させる間隔調整部と、を備え、
前記間隔調整部は、
前記支持部に対して前記搬送方向に沿って移動可能に前記支持部に取り付けられたスライド構造体と、
前記スライド構造体を、前記搬送方向に沿って移動させる駆動部と、
を有し、
前記スライド構造体は、階段部を有し、
前記階段部は、前記支持面と平行であり、前記第1軸における位置がそれぞれ異なる複数の平坦面を有し、
前記複数の平坦面は、前記第1軸における一方側に位置する前記平坦面から順に、前記搬送方向に沿って並び、
前記キャリッジの前記階段部と対向する位置には、凸部が形成されており、前記凸部が前記複数の平坦面のうちいずれかと接触することで、前記支持面と前記印刷ヘッドとの間の間隔が規定され、
前記駆動部が前記スライド構造体を前記搬送方向に沿って移動させることで、前記凸部に接触する前記平坦面が変更され、前記第1軸における前記支持面と前記印刷ヘッドとの間の間隔が変化する、
印刷装置。
【請求項2】
前記スライド構造体は、前記支持部を挟んで配置された第1スライド部材と第2スライド部材とを有し、
前記第1スライド部材は、前記階段部であって前記搬送方向において上流に配置された第1階段部と、前記第1階段部よりも前記搬送方向において下流に配置された前記階段部である第2階段部と、を有し、
前記第2スライド部材は前記階段部である第3階段部を有し、
前記キャリッジは、前記第1階段部と接触する前記凸部である第1凸部と、前記第2階段部と接触する前記凸部である第2凸部と、前記第3階段部と接触する前記凸部である第3凸部と、を有する、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記搬送方向において、前記第3階段部は、前記第1階段部と前記第2階段部との間に位置する、
請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記駆動部は、前記支持面から見て前記第1軸に沿った方向において前記キャリッジと反対側に配置され、
前記駆動部の駆動力を前記第1スライド部材または前記第2スライド部材のどちらか一方に伝達する伝達部材と、前記第1スライド部材と前記第2スライド部材とを連結して連動させる連結部材を備える、
請求項2に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記伝達部材は、前記第1スライド部材または前記第2スライド部材のどちらかが取り付けられる前記支持部の面に配置される、
請求項4に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記駆動部を制御する制御部を有し、
前記制御部は、前記駆動部を駆動させ、前記複数の平坦面のいずれかに前記凸部が接触する位置に前記スライド構造体を移動させることにより、前記媒体と前記印刷ヘッドとの間の前記第1軸における間隔を変更する、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項7】
入力を受け付ける受付部を備え、
前記制御部は、前記入力に基づいて前記複数の平坦面のいずれかを特定し、特定した前記平坦面に前記凸部が接触する位置に前記スライド構造体を移動させる、
請求項6に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記第1軸における前記媒体のサイズを取得し、取得した前記媒体のサイズが、前記複数の平坦面のうち前記制御部が特定した前記平坦面に対応する第1の範囲に含まれない場合に、報知を行う、
請求項7に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記第1軸における前記媒体のサイズを取得し、取得した前記媒体のサイズに基づいて前記複数の平坦面のいずれかを特定し、特定した前記平坦面に前記凸部が接触する位置に前記スライド構造体を移動させる、
請求項6に記載の印刷装置。
【請求項10】
前記制御部の制御に従って、前記キャリッジを、前記第1軸および前記搬送方向と交わる第2軸に沿ってキャリッジ移動区間内で移動させるキャリッジ駆動部を備え、
前記制御部は、前記キャリッジが、前記キャリッジ移動区間に設けられたホームポジションに位置する場合に、前記駆動部を駆動させ、
前記印刷ヘッドは、前記ホームポジションに前記キャリッジが位置する状態で、前記第1軸と交差する平面視で前記支持面と重ならない
請求項6から9のいずれかに記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、記録ヘッドと媒体を支持する支持面との間のギャップを変化させるギャップ調整手段を、キャリッジを走査方向にガイドするガイド部材に設けた記録装置を開示する。この記録装置のギャップ調整手段は、階段状の階段状部を有するカム部材と、階段状部に接触する接触部を有してガイド部材に対して摺動する摺動部材と、を備える。ギャップ調整手段は、カム部材を摺動部材に対して走査方向に移動させることで、階段状部と接触部との接触位置が変化し、カム部材の高さを変化させる。カム部材の高さが変化することで、カム部材に係合するキャリッジの高さが変化し、プラテンギャップが変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の記録装置において、ギャップ調整手段の摺動部材は、ガイド部材によって高さ方向の位置が決まるため、プラテンギャップの精度にはガイド部材の精度が関係する。また、プラテンギャップの精度には、摺動部材やカム部材の精度も関係するため、部品の寸法公差および取り付け位置のずれを鑑みて、プラテンギャップの精度を向上させる余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する一様態は、媒体を支持する支持面を有する支持部と、前記支持面に沿った搬送方向に搬送される前記媒体に印刷を行う印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドが搭載されるキャリッジと、前記印刷ヘッドと対向する位置において前記支持面と前記印刷ヘッドとの間の間隔が変化する第1軸に沿う方向に前記キャリッジを変位させる間隔調整部と、を備え、前記間隔調整部は、前記支持部に対して前記搬送方向に沿って移動可能に前記支持部に取り付けられたスライド構造体と、前記スライド構造体を、前記搬送方向に沿って移動させる駆動部と、を有し、前記スライド構造体は、階段部を有し、前記階段部は、前記支持面と平行であり、前記第1軸における位置がそれぞれ異なる複数の平坦面を有し、前記複数の平坦面は、前記第1軸における一方側に位置する前記平坦面から順に、前記搬送方向に沿って並び、前記キャリッジの前記階段部と対向する位置には、凸部が形成されており、前記凸部が前記複数の平坦面のうちいずれかと接触することで、前記支持面と前記印刷ヘッドとの間の間隔が規定され、前記駆動部が前記スライド構造体を前記搬送方向に沿って移動させることで、前記凸部に接触する前記平坦面が変更され、前記第1軸における前記支持面と前記印刷ヘッドとの間の間隔が変化する、印刷装置、である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図10】印刷装置のプラテンギャップ調整時のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[1.全体の構成]
図1は、実施形態に係る印刷装置1の斜視図である。
図2は、印刷装置1の縦断面図であり、印刷装置1の内部構造を模式的に示す。印刷装置1は、印刷ヘッド53から、支持部20に支持された長い帯状の媒体Mに対してインクを吐出することにより印刷を行うラインプリンターである。
【0008】
図1には、X軸、Y軸、及びZ軸を示す。X軸、Y軸、及びZ軸は互いに直交する。Z軸は、上下方向に延びる軸であり、鉛直方向に延びる軸ということもできる。X軸、及び、Y軸は、水平面に平行である。以下の説明において、X軸に沿った方向を左右方向とし、Y軸に沿った方向を前後方向とする。また、X軸に沿った方向のうち、+X方向が印刷装置1の右側、-X方向が印刷装置1の左側となる。Z軸は、「第1軸」の一例に対応する。X軸は、「第2軸」の一例に対応する。前方向は、「搬送方向」の一例に対応する。上方は、「第1軸における一方」の一例に対応する。
【0009】
図1に示すように、印刷装置1は、略直方体形状の筐体3と、印刷ヘッド53を支持するキャリッジ50と、媒体Mを支持する支持面21を有する支持部20と、を備える。
【0010】
筐体3は、内部にキャリッジ50および支持部20等の印刷装置1の各部を格納する。筐体3の前面3aには、表示部4a、入力部4b、および排紙口5が設けられる。表示部4aは、制御部91の制御に従う液晶パネルやLEDなどによって構成される。入力部4bは、スイッチやボタンによって構成され、受け付けたユーザーの入力に対応する信号を制御部91に送信する。入力部4bは、「受付部」の一例に対応する。
排紙口5は、筐体3の内部と外部とを連通する開口である。媒体Mにおいて印刷が完了した部分は、排紙口5を介して筐体3の外部に排出される。
【0011】
図2に示すように、キャリッジ50は、ヘッドユニット51と、キャリッジフレーム55と、ヘッドユニット移動機構57と、を有する。ヘッドユニット51は、印刷ヘッド53を支持する。印刷ヘッド53は、制御部91の制御に従うピエゾアクチュエーターを有し、ピエゾアクチュエーターの駆動によって下端のノズル面53aからインクを下方に吐出する。キャリッジフレーム55は、ヘッドユニット51を上下方向に移動可能に支持するフレームである。キャリッジフレーム55は、左右方向に延びる前後一対の軸55aにより、左右方向に移動可能に支持される。軸55aは、筐体3に対して固定される。
【0012】
キャリッジフレーム55は、筐体3に支持されるキャリッジ駆動部54に連結され、キャリッジ駆動部54によって左右方向に移動させられる。キャリッジ駆動部54は、従来のシリアルプリンターにおいて印刷ヘッドを移動させるための機構と同様のものであり、一対のタイミングプーリー、環状のタイミングベルト、および、制御部91の制御に従うキャリッジ駆動モーター54aを備える。一対のタイミングプーリーは、後方側の軸55aの左右方向両端の近傍に配置されている。タイミングベルトは、これら一対のタイミングプーリーに掛け渡され、一部がキャリッジフレーム55に連結される。一方のタイミングプーリーには、変速装置を介して第1モーターの出力軸からのトルクが伝達される。制御部91がキャリッジ駆動モーター54aを駆動させることにより、出力軸から駆動力を伝達された一方のタイミングプーリーが回転し、タイミングベルトが循環駆動する。これにより、タイミングベルトに連結されるキャリッジフレーム55は、軸55aに沿って左右方向に移動する。また、キャリッジ駆動モーター54aはロータリーエンコーダーを有する。ロータリーエンコーダーは、キャリッジ駆動モーター54aの出力軸の回転角を検出し、検出した回転角を信号として制御部91に対して送信する。
【0013】
図1に示すように、キャリッジ50は、筐体3の内部において、印刷ポジションPPと、ホームポジションHPと、の間のキャリッジ移動区間において、左右方向に移動可能である。キャリッジ50が印刷ポジションPPにあるとき、印刷ヘッド53は、平面視で支持部20の支持面21に重なる。キャリッジ50がホームポジションHPにあるとき、印刷ヘッド53は、平面視で支持面21に重ならず、ヘッドメンテナンスユニット7に重なる。ヘッドメンテナンスユニット7は、印刷ヘッド53のノズル面53aを覆うフラッシング用のキャップなどを搭載する。
【0014】
ヘッドユニット移動機構57は、キャリッジフレーム55の上方に固定され、ヘッドユニット51を上下に移動させる。ヘッドユニット移動機構57は、制御部91の制御に従うヘッドユニット移動モーター57aと、図示しない偏心カムおよびレバー部材と、を有する。偏心カムは、ヘッドユニット移動モーター57aの出力軸に対して、変速装置を介して連結され、ヘッドユニット移動モーター57aの駆動によって回転する。レバー部材は、一方の端部がキャリッジフレーム55に対して回動可能に支持され、他方の端部にヘッドユニット51が連結される細長い部材である。レバー部材は、コイルばねに付勢されて偏心カムの側面に当接しており、偏心カムの回転に従って、一方の端部を中心にして上下に揺動する。これにより、レバー部材の他方の端部に連結されるヘッドユニット51は、上下に移動する。
【0015】
支持部20は、筐体3に対して固定された略直方体形状の装置であり、略水平な面である支持面21によって、媒体Mを支持する。支持面21は、キャリッジ50およびノズル面53aよりも下方に位置している。キャリッジ50が印刷ポジションPPにあるとき、支持面21は媒体Mを挟んでノズル面53aに対向する。媒体Mは、支持面21に支持された状態において、搬送方向である前方に搬送されながら、印刷ヘッド53のノズル面53aから吐出されるインクを受けて印刷される。支持面21に支持された媒体Mの上面と、ノズル面53aと、の間の上下方向の距離は、プラテンギャップPGと呼ばれる。プラテンギャップPGは、ノズル面53aから下方に吐出されたインクが、媒体Mに付着するまでの飛距離に相当する。そのため、プラテンギャップPGの大きさは、印刷品質への影響が大きいので、高品質な印刷を実行するためには適正なプラテンギャップPGを設定することが望ましい。また、上下方向における支持面21とノズル面53aとの間の間隔を、ギャップG0と呼称する。
【0016】
支持部20の後部には、搬送モーター27aの動作によって回転する駆動ローラー27が配置される。駆動ローラー27の上方には、自由回転する従動ローラー29が配置されている。駆動ローラー27および従動ローラー29は、ともに左右方向を軸として回転する。従動ローラー29は、駆動ローラー27に向けて付勢されており、媒体Mは、駆動ローラー27および従動ローラー29に挟まれて、駆動ローラー27の駆動によって前方に送り出される。
【0017】
図2に示すように、媒体Mは、支持部20の後方に設けられた軸9により、ロール状に巻き回された状態で支持される。印刷に伴って媒体Mが支持面21上を前方に搬送されることに伴い、ロール状の媒体Mが引き出される。
【0018】
図3は、キャリッジ50の斜視図であり、下方から視たキャリッジ50を示す。ノズル面53aには、それぞれ4つずつのインクジェットヘッド53a1~53a4が配置される。インクジェットヘッド53a1~53a4は、印刷対象となる媒体Mの左右方向の幅よりも、左右方向において広い幅に渡って配置される。インクジェットヘッド53a1~53a4は、ノズル面53aにおいてインクを吐出する部分であり、それぞれ、イエローインク、マゼンタインク、シアンインク、およびブラックインク、を吐出する。
【0019】
また、
図3に示すように、ヘッドユニット51の下面には、それぞれ下方に突出する第1凸部51a、第2凸部51b、および第3凸部51cが設けられる。第1凸部51a、第2凸部51b、および第3凸部51cは、「凸部」の一例に対応する。第1凸部51aおよび第2凸部51bは、ヘッドユニット51の左端に配置される。第3凸部51cは、ヘッドユニット51の右端に配置される。第1凸部51aは、ヘッドユニット51の後端に配置され、第3凸部51cは前後方向におけるヘッドユニット51の中央に配置され、第2凸部51bは、ヘッドユニット51の前端に配置される。ヘッドユニット51において、第1凸部51a、第2凸部51b、および、第3凸部51cは、キャリッジ50が印刷ポジションPPにあるとき、後述の第1階段部31a、第2階段部31b、および第3階段部41にそれぞれ対向する位置に配置される。
【0020】
また、
図3に示すように、ヘッドユニット51の下面の後端には、媒体センサー59が配置される。媒体センサー59は、光学式の距離センサーであり、媒体センサー59の下端は、インクジェットヘッド53a1~53a4の下端と同等の高さに配置される。媒体センサー59は、支持面21に支持される媒体Mの上面と、媒体センサー59の下端と、の間の上下方向における距離、すなわちプラテンギャップPGを検出し、検出値を制御部91に送信する。
【0021】
図4は、支持部20の斜視図である。
図4に示すように、支持面21には、多数の吸気孔が形成されている。吸気孔は、支持部20の内部に配置された送風機の吸引側と連通している。吸気孔は、送風機の駆動によって支持面21に支持された媒体Mを支持面21に吸着する。これにより、媒体Mは支持面21に密着した状態で搬送および印刷される。
【0022】
支持部20は、印刷ポジションPPにおいて支持面21と印刷ヘッド53との間の間隔が変化する上下方向にキャリッジ50を変位させる間隔調整部11を有する。間隔調整部11は、ヘッドユニット51を支持するスライド構造体10と、スライド構造体10を駆動させる駆動部60と、を有する。
【0023】
スライド構造体10は、支持部20の左側に配置された第1スライド部材30と、第1スライド部材30との間に支持部20を挟んで配置された第2スライド部材40と、を有する。
図4に示すように、キャリッジ50が印刷ポジションPPにあるとき、第1スライド部材30は、ヘッドユニット51の第1凸部51aおよび第2凸部51bを支持し、第2スライド部材40は、第3凸部51cを支持する。
【0024】
図5は、支持部20の側面図であり、左側から見た支持部20を示す。
図5に示すように、第1スライド部材30の上面には、第1階段部31aと、第2階段部31bと、が形成される。第1階段部31aおよび第2階段部31bは、それぞれ第1凸部51aおよび第2凸部51bを支持する。第1階段部31aは、Z軸における位置がそれぞれ異なり支持面21に平行な平面である、5つの平坦面71~75を有する。第2階段部31bは、第1階段部31aと同一の形状であり、5つの平坦面71~75を有する。第1階段部31aは、第1スライド部材30の後方側、すなわち、搬送方向の上流に配置される。また、第2階段部31bは、第1階段部31aよりも前方側、すなわち、搬送方向の下流に位置する。第1階段部31aと第2階段部31bとは、それぞれ「階段部」の一例に対応する。第1階段部31aと第2階段部31bの詳細については、後述する。
【0025】
第1スライド部材30は、前後方向に延び、左右方向に貫通する2つの長孔35a、35bを有する。長孔35aは、第1階段部31aの下方において、第1階段部31aの前後方向の略全長に渡って形成される。長孔35bは、長孔35aと同一の形状であり、第2階段部31bの下方において、第2階段部31bの略全長に渡って形成される。長孔35a、35bは、互いに同じ高さに設定される。長孔35a、35bには、支持部20に固定されるピン23a、23bが挿入される。ピン23a、23bは、長孔35a、35bと相対的に摺動可能であり、左端には、長孔35a、35bの上下方向の幅よりも大径の抜け止めが形成される。これにより、第1スライド部材30は、支持部20に対して前後方向に移動可能に取り付けられる。
【0026】
また、第1スライド部材30の前部には、左右方向に貫通し、上下方向に延びる長孔33が形成される。第1スライド部材30には、長孔33を介して、駆動部60の駆動力が伝達される。
【0027】
駆動部60は、支持面21よりも下方に設けられ、PGモーター61と、変速機構63と、伝達部材65と、を有する。PGモーター61は、制御部91に従って駆動し、出力軸61aを回転させる直流モーターである。PGモーター61は、ロータリーエンコーダーを有しており、出力軸61aの回転角度を検知して信号として制御部91に出力する。変速機構63は、支持部20の左側面20aに取り付けられ、出力軸61aに噛み合うギヤ63aと、ギヤ63aおよび伝達部材65に噛み合うギヤ63bと、を有する。変速機構63は、出力軸61aから入力されるトルクを、所定の減速比で伝達部材65に伝達する。伝達部材65は、支持部20の左側面20aに取り付けられ、左側に突出する突起65aを有するギヤであり、ギヤ63bに噛み合って回転する。突起65aは、円柱形状であり、第1スライド部材30の長孔33に対して、右方向から左方向に向けて挿入される。突起65aの直径は、長孔33の前後方向の幅と略同一であり、突起65aは長孔33に対して、相対的に上下方向に摺動可能であり、前後方向に相対移動ができない。そのため、伝達部材65が回転して突起65aが円運動した際には、突起65aは、長孔33内を上下に摺動しながら、長孔33を介して第1スライド部材30を前後に移動させる駆動力を第1スライド部材30に伝達する。
【0028】
図6は、
図5のVI-VI断面における断面視図である。また、駆動部60は、連結部材67を有する。
図5および
図6に示すように、連結部材67は、支持部20を左右方向に貫通する部材であり、伝達部材65の回転中心に連結される。連結部材67は、伝達部材65の回転とともに回転する軸状の部材である。連結部材67の右端には、支持部20の右側面20bの外側に配置されるカム66が連結される。
【0029】
図7は、支持部20の斜視図であり、右側から見た支持部20を示す。カム66は、連結部材67の回転とともに回転する円盤状の部材であり、右側に突出する突起66aを有する。突起66aは、第2スライド部材40の長孔43に対して左側から挿入される。カム66は、突起66aを介して、第2スライド部材40に駆動力を伝達する。また、突起66aと突起65aとは、X軸に沿って視て互いに重なる位置に配置される。
【0030】
第2スライド部材40の上面には、第3凸部51cを支持する第3階段部41が形成される。第3階段部41は、第1階段部31a、第2階段部31bと同一の形状であり、5つの平坦面71~75を有する。第3階段部41は、「階段部」の一例に対応する。第3階段部41は、前後方向において、第1階段部31aと第2階段部31bとの間に位置する。
【0031】
第2スライド部材40には、2つの長孔45a、45bが形成される。長孔45a、45bは、長孔35a、35bと同形状の孔である。長孔45a、45bには、支持部20に固定されるピン25a、25bが挿入される。ピン25a、25bは、長孔45a、45bに対して前後方向に摺動可能であり、右端には長孔45a、45bの上下方向の幅よりも大径の抜け止めを有する。これにより、第2スライド部材40は、支持部20に対して前後方向に移動可能に取り付けられる。
【0032】
また、第2スライド部材40の前部には、長孔33と同一形状の長孔43が形成される。長孔43には、上述したカム66の突起66aが挿入される。突起66aは長孔43に対して、上下に摺動可能であり、前後方向に相対移動できない。そのため、カム66が回転して突起66aが円運動した際には、突起66aは、長孔43内を上下に摺動しながら、長孔43を介して第2スライド部材40を前後に移動させる。
【0033】
伝達部材65とカム66とは、共に連結部材67に連結され、互いに同期して回転する。また、突起66aと突起65aとは、X軸に沿って視て互いに重なる位置に配置される。これにより、第1スライド部材30と第2スライド部材40とは、連結部材67によって連結され、PGモーター61の駆動により、Y軸に沿って、同じ方向に同じ移動量だけ連動して移動する。
【0034】
図8は、第2階段部31bの側面図であり、左方から見た第2階段部31bを示す。
図8に示すように、平坦面71~75は、平坦面71~75のうち上方に位置する平坦面71から下方に位置する75まで順に、搬送方向に向けて並んでいる。第2階段部31bは、平坦面71~75のうち、いずれかによって第2凸部51bを支持する。
【0035】
図8においては、第2凸部51bが平坦面73に接触している状態を示す。このとき、第1凸部51aおよび第3凸部51cは、第2凸部51bと同様に、第1階段部31aおよび第3階段部41の平坦面73に接触している。
図8の状態において、第1凸部51a、第2凸部51b、及び第3凸部51cの上下方向の位置は、平坦面73によって位置決めされる。そのため、印刷ヘッド53の上下方向の位置およびギャップG0の大きさは、平坦面73によって規定される。
【0036】
第1階段部31a、第2階段部31b、および第3階段部41は、駆動部60の駆動によってスライド構造体10が前後方向に移動することに伴い、第1凸部51a、第2凸部51b、及び第3凸部51cに対して前後方向に相対移動する。例えば、スライド構造体10が移動範囲の後端まで移動した場合、第2凸部51bは、図中に矢印Aで示すように、第1階段部31aに対して前方に相対移動し、最も低い位置にある平坦面75に接触する。このとき、第1凸部51aおよび第3凸部51cは、第2凸部51bと同様に、平坦面75に接触する。これにより、印刷ヘッド53の上下方向の位置が平坦面75によって規定され、ギャップG0の大きさが最小に変更される。また、例えば、スライド構造体10が移動範囲の前端まで移動した場合、第2凸部51bは、図中に矢印Bで示すように、第2階段部31bに対して後方に相対移動し、最も高い位置にある平坦面71に接触する。これにより、印刷ヘッド53の上下方向の位置は、平坦面75によって規定され、ギャップG0の大きさが最大に変更される。
【0037】
このように、間隔調整部11は、第1凸部51a、第2凸部51b、及び第3凸部51cが、平坦面71~75のうちいずれに接触するかを変更することにより、ギャップG0を5段階で設定可能である。換言すれば、5段階のギャップG0は、5つの平坦面71~75と一対一に対応している。そのため、特定の段階のギャップG0に対応する平坦面71~75を即座に特定できる。
【0038】
なお、平坦面71と平坦面72のように、隣り合う平坦面71~75同士の上下方向における位置の差は、適正なプラテンギャップPGの大きさの幅以下の大きさに設定される。具体的には、適正なプラテンギャップPGの大きさが、1.0mmから1.2mmまでである場合、隣り合う平坦面71~75同士の上下方向における位置の差は、0.2mm以下に設定される。これにより、5段階のギャップG0は、適正なプラテンギャップPGの幅よりも細かく設定されるので、様々な厚みの媒体Mに対して抜けなく対応できる。
【0039】
[2.印刷装置の制御系の構成]
図9は、印刷装置1のブロック図であり、印刷装置1の制御系の機能的構成を示す。印刷装置1は、制御装置90を有する。制御装置90は、制御部91と、記憶部93と、を有する。
制御部91は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro-processing unit)等のプロセッサーである。制御部91のプロセッサーは、記憶部93に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、ハードウェアとソフトウェアとの協働により各種機能を実現する。制御部91は、記憶部93が記憶するプログラムを実行することにより、入力受付部91a、印刷制御部91b、および、報知制御部91cとして機能する。
【0040】
記憶部93は、制御部91が実行するプログラムや、制御部91によって処理されるデータを記憶するメモリーである。記憶部93は、不揮発性の記憶領域、及び揮発性の記憶領域を有する。揮発性の記憶領域は、制御部91のワークエリアを構成してもよい。
【0041】
記憶部93は、制御部91に読みだされるプログラムの他、間隔調整部11の制御に用いられる、ギャップ情報93aを記憶する。ギャップ情報93aは、適正なプラテンギャップPGの値の範囲の情報、および、後述の第1の範囲の情報を含む。また、ギャップ情報93aは、PGモーター61のロータリーエンコーダーからの出力信号とスライド構造体10の前後方向の位置との対応関係を定める情報、および、スライド構造体10の前後方向の位置とギャップG0との対応関係を定める情報を含む。
【0042】
制御装置90には、I/F95が接続される。I/F95は、所定の通信規格に従い、ケーブルを利用する有線通信または無線通信回路を利用する無線通信を実行する通信装置である。制御装置90は、I/F95を介して、印刷装置1の外部に設けられるホスト装置100との間で通信を実行する。
【0043】
ホスト装置100は、任意のスマートフォン、タブレット端末、またはパーソナルコンピューターなどの端末である。ホスト装置100は、例えば、ユーザーの操作に従い、印刷対象となる画像データや印刷を指示するコマンド等を、制御装置90に送信する。
【0044】
入力受付部91aは、ホスト装置100よりI/F95を介して送信される、印刷対象の画像データ、および印刷の実行を指示するコマンドなどを受信する。また、入力受付部91aは、制御装置90に接続される入力部4bより、ユーザーの入力に対応する信号を受信する。
【0045】
印刷制御部91bは、制御装置90に接続される印刷ヘッド53、および、搬送モーター27a等を制御することにより、媒体Mに対しての印刷を実行する。また、印刷制御部91bは、制御装置90に接続されるPGモーター61、キャリッジ駆動モーター54a、および、ヘッドユニット移動モーター57aをそれぞれ駆動させ、駆動部60、キャリッジ駆動部54、およびヘッドユニット移動機構57を制御する。印刷制御部91bは、駆動部60、キャリッジ駆動部54、およびヘッドユニット移動機構57を制御することにより、プラテンギャップPGの調整を行う。
【0046】
報知制御部91cは、報知を実行する。報知の態様としては、例えば、表示部4aに表示を行うことが挙げられる。この場合、報知制御部91cは、制御装置90に接続される表示部4aを制御することにより、ユーザーに対する報知を実行する。報知制御部91cは、例えば、表示部4aが有する液晶パネルに所定の画面を表示させ、表示部4aが有するLEDを点滅させることにより、ユーザーに対する報知を行う。
報知制御部91cによる報知の態様として、ホスト装置100による表示や音声の出力が挙げられる。この場合、報知制御部91cは、ホスト装置100に報知を実行させるためのコマンドを送信する。このコマンドに応じて、例えば、ホスト装置100が液晶パネル等に所定の画面を表示させることにより、ユーザーに対する報知が実行される。
【0047】
また、制御装置90には、媒体センサー59が接続される。制御部91は、媒体センサー59からの信号を受信し、受信した信号により媒体Mとノズル面53aとの間の上下方向の間隔を検知する。
【0048】
[3.プラテンギャップ調整]
次に、印刷装置1の動作を説明する。
図10は、印刷装置1のフローチャートであり、プラテンギャップPGを調整する際における制御部91の動作を示す。
【0049】
制御部91は、ユーザーによってギャップG0の大きさを指定する入力がされたか否かを判定する。ステップSA1では、例えば、制御部91が表示部4aの液晶パネルに5段階のギャップG0の大きさの選択肢を表示させ、ユーザーが入力部4bを操作して選択肢のうち一つを選択することにより、ギャップG0の大きさを指定する入力が行われる。また、ステップSA1で、ユーザーがホスト装置100を操作することにより、ギャップG0の大きさを指定する入力が行われてもよい。この場合、ギャップG0の大きさを指定する入力は、入力受付部91aが受け付ける。制御部91は、指定されたギャップG0の大きさに基づいて、対応する平坦面71~75を一つに特定する。
ステップSA1において、ギャップG0の大きさを指定する入力がされたと判定した場合、制御部91は、ステップSA4に移行する。
【0050】
ステップSA1において、ギャップG0の大きさを指定する入力がされていないと判定した場合(ステップSA1:NO)、制御部91は、媒体Mの厚みを指定する入力がされたか否かを判定する(ステップSA2)。ステップSA2では、ギャップG0の大きさを指定する入力と同様に、ユーザーが入力部4bまたはホスト装置100を操作することによって、媒体Mの厚みを指定する入力が行われる。ただし、媒体Mの厚みを指定する入力は、5通りの選択肢から一つの選択肢をユーザーに選択させる構成に限らず、数値による入力であってもよい。なお、媒体Mの厚みの定義は、Z軸における媒体Mの寸法(サイズ)である。媒体Mの厚みを指定する入力は、制御部91の入力受付部91aが受け付ける。
【0051】
ステップSA2において、媒体Mの厚みを指定する入力がされたと判定した場合(ステップSA2:YES)、制御部91は、指定された媒体Mの厚みに対応するギャップG0を特定する。制御部91は、記憶部93に記憶されたギャップ情報93aを参照し、指定された媒体Mの厚みに対応するギャップG0を特定する(ステップSA3)。ギャップ情報93aは、媒体Mの厚みの範囲と、適正なギャップG0の段階と、を対応付ける情報を含む。制御部91は、ギャップ情報93aを参照することにより、媒体Mの厚みに対して適正なギャップG0を求めることができる。
【0052】
ステップSA2において、数値入力によって媒体Mの厚みが指定された場合、制御部91は、ギャップ情報93aにより対応づけられたギャップG0の段階、および、その段階に対応する平坦面71~75を特定する。
【0053】
また、例えば、ギャップ情報93aは、媒体Mの厚みについての5通りの選択肢と、適正なギャップG0の段階と、を対応づける情報を含む構成としてもよい。この場合、ステップSA2において、5通りの選択肢から一つの選択肢をユーザーが選択することによって媒体Mの厚みが指定されることに応じて、制御部91は、ギャップ情報93aを参照する。このように、制御部91は、選択肢に対応づけられたギャップG0の段階、および、その段階に対応する平坦面71~75を特定することができる。
【0054】
ステップSA4において、制御部91は、ステップSA1においてユーザーに指定されたギャップG0の段階、または、ステップSA3において特定されたギャップG0の段階に対応する、スライド構造体10の位置を特定する。上述したように、ギャップ情報93aには、ギャップG0の段階と、スライド構造体10の位置とを対応づける情報が含まれる。制御部91は、ギャップ情報93aを参照することにより、指定または特定されたギャップG0に対応づけられるスライド構造体10の位置を特定する。
【0055】
ステップSA5において、制御部91は、キャリッジ50がホームポジションHPに位置するか否かを判定する。制御部91は、例えば、キャリッジ駆動モーター54aのロータリーエンコーダーからの信号により、キャリッジ駆動モーター54aの出力軸の回転角を検知する。制御部91は、検知した出力軸の回転角により、ステップSA5の判定を行う。
【0056】
ステップSA5において、制御部91は、キャリッジ50がホームポジションHPに位置しないと判定した場合(ステップSA5:NO)、ステップSA6に移行してキャリッジ50をホームポジションHPに移動させる。ステップSA6において、制御部91は、キャリッジ駆動モーター54aを駆動させることにより、キャリッジ50をホームポジションHPに移動させる。ステップSA6の後は、ステップSA5に移行する。
【0057】
ステップSA5において、制御部91は、キャリッジ50はホームポジションHPに位置すると判定した場合(ステップSA5:YES)、ステップSA7に移行して、PGモーター61を駆動させてスライド構造体10を移動させる。ステップSA6において、制御部91は、ギャップ情報93aを参照し、PGモーター61のロータリーエンコーダーの信号を監視しながらPGモーター61を駆動させる。これにより、スライド構造体10を、ステップSA4で特定した位置まで移動させる。
【0058】
ステップSA7が終了した時点で、制御部91がプラテンギャップPGを調整する動作は終了する。
ステップSA7以後に印刷を実行する場合、制御部91は、キャリッジ駆動モーター54aを駆動させてキャリッジ50を印刷ポジションPPまで移動させる。その後、制御部91は、ヘッドユニット移動モーター57aを駆動させて、ヘッドユニット51を下方に移動させる。これにより、第1凸部51a、第2凸部51b、および第3凸部51cは、それぞれ第1階段部31a、第2階段部31b、および第3階段部41に接触し、ヘッドユニット51が上下方向に位置決めされる。このとき、第1凸部51a、第2凸部51b、および第3凸部51cは、平坦面71~75のうち、ステップSA1で指定された、またはステップSA3で特定されたギャップG0に対応する1つに、それぞれ接触する。これにより、ギャップG0はステップSA1で指定された、またはステップSA3で特定された値となり、プラテンギャップPGが適正に調整される。
【0059】
[4.印刷動作]
次に、印刷装置1が印刷を実行する際の動作について説明する。
図11は、印刷装置1のフローチャートであり、印刷時における制御部91の動作を示す。
ステップSB1において、制御部91のうち、入力受付部91aは、ホスト装置100より送信される、印刷対象の画像データ、印刷を指示するコマンドを受信する。
【0060】
ステップSB2において、制御部91は、現在のギャップG0の設定値を取得する。制御部91は、
図10に示したプラテンギャップPGの調整を行った際に、どのギャップG0が指定または特定されたかを、記憶部93の不揮発領域に記憶している。制御部91は、記憶部93に記憶された、前回のプラテンギャップPGの調整時において指定されたギャップG0を読み出すことにより、現在のギャップG0の設定値を取得する。また、制御部91は、PGモーター61のロータリーエンコーダーの出力信号によってスライド構造体10の位置を特定し、現在のギャップG0の設定値を取得してもよい。制御部91は、特定したギャップG0の設定値に対応する平坦面71~75を1つ特定する。
【0061】
ステップSB3において、制御部91は、媒体センサー59の検出値を取得する。詳細には、制御部91は、媒体センサー59の検出値から、プラテンギャップPGの大きさを検知する。また、制御部91は、ステップSB2で取得した現在のギャップG0の規定値から、媒体センサー59によって検知したプラテンギャップPGの大きさを引き、媒体Mの厚みを検知する。
【0062】
ステップSB4において、制御部91は、媒体Mの厚みが、ステップSB2で取得した現在のギャップG0の設定値に対して適正な厚みの範囲外であるか否かを判定する。ギャップ情報93aは、5段階のギャップG0に対し段階ごと、或いはそれぞれの平坦面71~75ごとに設定される、媒体Mの適正な厚みの範囲である第1の範囲の情報を含む。制御部91は、記憶部93に記憶されたギャップ情報93aから、第1の範囲の情報を参照し、ステップSB3で検知した媒体Mの厚みが、第1の範囲に含まれるか否かを判定する。ステップSB4において、媒体Mの厚みが第1の範囲に含まれると制御部91が判定した場合(ステップSB4:NO)、制御部91の印刷制御部91bは、ステップSB7で印刷を実行し、動作を終了する。
【0063】
ステップSB4において、媒体Mの厚みが第1の範囲外であると制御部91が判定した場合(ステップSB4:YES)、制御部91は、ステップSB5に移行して報知を実行する。ステップSB5において、制御部91のうち、報知制御部91cは、表示部4aの液晶パネルに所定の画面を表示させ、表示部4aのLEDを点滅させることにより、ユーザーに対して報知を行う。このとき、表示部4aの液晶パネルには、ギャップG0の設定値に対して適正ではない厚みの媒体Mがセットされている旨をユーザーに伝える文字または図が表示される。また、報知制御部91cは、ホスト装置100の液晶パネル等に、ギャップG0の設定値に対して適正ではない厚みの媒体Mがセットされている旨をユーザーに伝える文字または図を表示させる構成としてもよい。
【0064】
ユーザーに対する報知が終了した後は、制御部91はステップSB6において印刷を中止し、動作を終了する。
【0065】
[5.他の実施の形態]
上記実施形態は、本発明を適用した一具体例を示したものに過ぎない。本発明は上記実施形態の構成に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。
【0066】
上記実施の形態において、第1階段部31a、第2階段部31b、および第3階段部41は、それぞれ、上下方向における位置の異なる5つの平坦面71~75を有すると説明したが、これは一例である。第1階段部31a、第2階段部31b、および第3階段部41は、それぞれ、上下方向における位置の異なる2つ以上の平坦面を有していればよい。
【0067】
上記実施の形態では、第1階段部31aにおいて、平坦面71~75は、平坦面71~75のうち上方に位置する平坦面71から下方に位置する75まで順に、搬送方向に向けて並ぶと説明したが、これは一例である。例えば、第1階段部31aにおいて、平坦面71~75は、平坦面71~75のうち下方に位置する平坦面75から上方に位置する71まで順に、搬送方向に向けて並ぶ構成としてもよい。また、第1階段部31aにおいて、平坦面71~75は、搬送方向に向けて上下方向における位置が単調に変化する順に並ばなくともよい。例えば、平坦面71~75は、搬送方向に向けて順に、平坦面75、72、74、71、73のように、高さが2段階以上異なる平坦面同士が隣り合うように並ぶ構成としてもよい。
【0068】
上記実施の形態において、ヘッドユニット51は、3つの凸部である第1凸部51a、第2凸部51b、および第3凸部51cが、スライド構造体10に支持されることにより、上下方向に位置決めされると説明したが、これは一例である。例えば、ヘッドユニット51は、4つ以上の凸部を有し、4つ以上の凸部がスライド構造体10の4つ以上の階段部に接触することにより、ヘッドユニット51が上下方向において位置決めされる構成としてもよい。
【0069】
上記実施の形態において、媒体センサー59は、プラテンギャップPGを検出する光学式の距離センサーであると説明したが、これは一例である。例えば、媒体センサー59は、支持部20に設けられ、媒体Mを上下に挟み込むように配置される光学式の同軸変位計であり、媒体Mの厚みを直接検出する構成としてもよい。
【0070】
上記実施の形態では、
図10に示す制御部91がプラテンギャップPGの調整を行う動作中において、入力受付部91aは、ユーザーに入力された媒体Mの厚みを取得する(ステップSA2)と説明したが、これは一例である。入力受付部91aは、媒体センサー59の検出値から媒体Mの厚みを検知する構成としてもよい。この構成によれば、ユーザーはギャップG0についても媒体Mの厚みについても入力することなく、自動でのプラテンギャップPGの調整が可能となる。
【0071】
上記実施の形態では、
図11に示す印刷中の制御部91の動作において、制御部は、媒体Mの厚みが第1の範囲に含まれるか否かを判定する(ステップSB4)と説明したが、これは一例である。例えば、制御部91は、ステップSB4において、ステップSB3で取得したプラテンギャップPGの検出値が、適正なプラテンギャップPGの範囲外か否かを判定する構成としてもよい。この場合、プラテンギャップPGの検出値が、適正なプラテンギャップPGの範囲外であれば、ステップSB5に移行する。このときの判定に用いられる適正なプラテンギャップPGの範囲についての情報は、ギャップ情報93aに含まれていてもよい。また、この場合、ステップSB2におけるギャップG0の設定値の取得は不要である。
【0072】
図10、及び
図11に示す動作のステップ単位は、動作の理解を容易にするために、主な処理内容に応じて分割したものであり、処理単位の分割の仕方や名称によって、動作が限定されることはない。処理内容に応じて、さらに多くのステップ単位に分割してもよい。また、1つのステップ単位がさらに多くの処理を含むように分割してもよい。また、そのステップの順番は、本開示の趣旨に支障のない範囲で適宜に入れ替えてもよい。
【0073】
図9に示した印刷装置1、およびホスト装置100の構成は一例であって、具体的な実装形態は特に限定されない。つまり、必ずしも各部に個別に対応するハードウェアが実装される必要はなく、一つのプロセッサーがプログラムを実行することで各部の機能を実現する構成とすることも勿論可能である。また、上述した実施の形態においてソフトウェアで実現される機能の一部をハードウェアとしてもよく、或いは、ハードウェアで実現される機能の一部をソフトウェアで実現してもよい。その他、印刷装置1の他の各部の具体的な細部構成についても、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変更可能である。
【0074】
[6.実施形態により説明される構成]
上記の実施形態により、以下の構成が説明される。
【0075】
(構成1)媒体を支持する支持面を有する支持部と、前記支持面に沿った搬送方向に搬送される前記媒体に印刷を行う印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドが搭載されるキャリッジと、前記印刷ヘッドと対向する位置において前記支持面と前記印刷ヘッドとの間の間隔が変化する第1軸に沿う方向に前記キャリッジを変位させる間隔調整部と、を備え、前記間隔調整部は、前記支持部に対して前記搬送方向に沿って移動可能に前記支持部に取り付けられたスライド構造体と、前記スライド構造体を、前記搬送方向に沿って移動させる駆動部と、を有し、前記スライド構造体は、階段部を有し、前記階段部は、前記支持面と平行であり、前記第1軸における位置がそれぞれ異なる複数の平坦面を有し、前記複数の平坦面は、前記第1軸における一方側に位置する前記平坦面から順に、前記搬送方向に沿って並び、前記キャリッジの前記階段部と対向する位置には、凸部が形成されており、前記凸部が前記複数の平坦面のうちいずれかと接触することで、前記支持面と前記印刷ヘッドとの間の間隔が規定され、前記駆動部が前記スライド構造体を前記搬送方向に沿って移動させることで、前記凸部に接触する前記平坦面が変更され、前記第1軸における前記支持面と前記印刷ヘッドとの間の間隔が変化する、印刷装置。
この構成によれば、スライド構造体と凸部とが接触することでキャリッジの位置決めがされるため、印刷ヘッドと支持面との間隔を高精度に設定できる。また、スライド構造体を搬送方向に移動させることにより、印刷ヘッドと支持面との間隔が変化するため、多段階のプラテンギャップを高精度に設定できる。
【0076】
(構成2)前記スライド構造体は、前記支持部を挟んで配置された第1スライド部材と第2スライド部材とを有し、前記第1スライド部材は、前記階段部であって前記搬送方向において上流に配置された第1階段部と、前記第1階段部よりも前記搬送方向において下流に配置された前記階段部である第2階段部と、を有し、前記第2スライド部材は前記階段部である第3階段部を有し、前記キャリッジは、前記第1階段部と接触する前記凸部である第1凸部と、前記第2階段部と接触する前記凸部である第2凸部と、前記第3階段部と接触する前記凸部である第3凸部と、を有する、構成1に記載の印刷装置。
この構成によれば、キャリッジはスライド構造体に対して3点で接触するため、印刷装置の部品数を少なくしつつ、印刷ヘッドと支持面との間隔を高精度に設定できる。
【0077】
(構成3)前記搬送方向において、前記第3階段部は、前記第1階段部と前記第2階段部との間に位置する、構成2に記載の印刷装置。
この構成によれば、第1凸部、第2凸部、及び第3凸部の配置が偏りにくくなり、印刷ヘッドと支持面との間隔を高精度に設定できる。
【0078】
(構成4)前記駆動部は、前記支持面から見て前記第1軸に沿った方向において前記キャリッジと反対側に配置され、前記駆動部の駆動力を前記第1スライド部材または前記第2スライド部材のどちらか一方に伝達する伝達部材と、前記第1スライド部材と前記第2スライド部材とを連結して連動させる連結部材を備える、構成2または3に記載の印刷装置。
この構成によれば、1つの駆動部により、支持面を挟んで配置される第1スライド部材および第2スライド部材を駆動させることができる。
【0079】
(構成5)前記伝達部材は、前記第1スライド部材または前記第2スライド部材のどちらかが取り付けられる前記支持部の面に配置される、構成4に記載の印刷装置。
この構成によれば、印刷装置をコンパクトにすることができる。
【0080】
(構成6)前記駆動部を制御する制御部を有し、前記制御部は、前記駆動部を駆動させ、前記複数の平坦面のいずれかに前記凸部が接触する位置に前記スライド構造体を移動させることにより、前記媒体と前記印刷ヘッドとの間の前記第1軸における間隔を変更する、構成1から5のいずれかに記載の印刷装置。
この構成によれば、制御部の制御によって、いずれかの平坦面に凸部が当接する位置にスライド構造体を移動させることができ、利便性が向上する。
【0081】
(構成7)入力を受け付ける受付部を備え、前記制御部は、前記入力に基づいて前記複数の平坦面のいずれかを特定し、特定した前記平坦面に前記凸部が接触する位置に前記スライド構造体を移動させる、構成6に記載の印刷装置。
この構成によれば、入力に従って自動的に印刷ヘッドと支持面との間隔を設定でき、利便性が向上する。
【0082】
(構成8)前記制御部は、前記第1軸における前記媒体のサイズを取得し、取得した前記媒体のサイズが、前記複数の平坦面のうち前記制御部が特定した前記平坦面に対応する第1の範囲に含まれない場合に、報知を行う、構成7に記載の印刷装置。
この構成によれば、印刷装置は、プラテンギャップが過大又は過小であるときに印刷することを抑制できる。
【0083】
(構成9)前記制御部は、前記第1軸における前記媒体のサイズを取得し、取得した前記媒体のサイズに基づいて前記複数の平坦面のいずれかを特定し、特定した前記平坦面に前記凸部が接触する位置に前記スライド構造体を移動させる、構成6に記載の印刷装置。
この構成によれば、印刷装置は、第1軸における媒体のサイズに基づいて、自動的に適正なプラテンギャップを設定することができる。
【0084】
(構成10)前記制御部の制御に従って、前記キャリッジを、前記第1軸および前記搬送方向と交わる第2軸に沿ってキャリッジ移動区間内で移動させるキャリッジ駆動部を備え、前記制御部は、前記キャリッジが、前記キャリッジ移動区間に設けられたホームポジションに位置する場合に、前記駆動部を駆動させ、前記印刷ヘッドは、前記ホームポジションに前記キャリッジが位置する状態で、前記第1軸と交差する平面視で前記支持面と重ならない構成6から9のいずれかに記載の印刷装置。
この構成によれば、スライド構造体は凸部と離れた状態のときに移動するため、階段部および凸部が損傷しにくい。
【符号の説明】
【0085】
1…印刷装置、3…筐体、3a…前面、4a…表示部、4b…入力部、5…排紙口、7…ヘッドメンテナンスユニット、9…軸、10…スライド構造体、11…間隔調整部、20…支持部、左側面20a、21…支持面、23a…ピン、23b…ピン、25a…ピン、25b…ピン、27…駆動ローラー、27a…搬送モーター、29…従動ローラー、30…第1スライド部材、31a…第1階段部、31b…第2階段部、33…長孔、35a…長孔、35b…長孔、40…第2スライド部材、41…第3階段部、43…長孔、45a…長孔、45b…長孔、50…キャリッジ、51…ヘッドユニット、51a…第1凸部、51b…第2凸部、51c…第3凸部、53…印刷ヘッド、53a…ノズル面、53a1…インクジェットヘッド、53a2…インクジェットヘッド、53a3…インクジェットヘッド、53a4…インクジェットヘッド、54…キャリッジ駆動部、54a…キャリッジ駆動モーター、55…キャリッジフレーム、55a…軸、57…ヘッドユニット移動機構、57a…ヘッドユニット移動モーター、59…媒体センサー、60…駆動部、61…PGモーター、61a…出力軸、63…変速機構、63a…ギヤ、63b…ギヤ、65…伝達部材、65a…突起、66…カム、66a…突起、67…連結部材、71…平坦面、72…平坦面、73…平坦面、74…平坦面、75…平坦面、90…制御装置、91…制御部、91a…入力受付部、91b…印刷制御部、91c…報知制御部、93…記憶部、93a…ギャップ情報、95…I/F、100…ホスト装置、A…矢印、B…矢印、G0…ギャップ、HP…ホームポジション、M…媒体、PG…プラテンギャップ、PP…印刷ポジション。