(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047774
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】送気量制御装置、水処理システム、送気量制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
C02F 3/12 20230101AFI20240401BHJP
C02F 3/34 20230101ALI20240401BHJP
【FI】
C02F3/12 J
C02F3/34 101C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153449
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】504193837
【氏名又は名称】国立大学法人室蘭工業大学
(71)【出願人】
【識別番号】523183714
【氏名又は名称】月島JFEアクアソリューション株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】500433959
【氏名又は名称】月島ジェイテクノメンテサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100206391
【弁理士】
【氏名又は名称】柏野 由布子
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 真也
(72)【発明者】
【氏名】矢澤 伸弘
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 央貴
(72)【発明者】
【氏名】深澤 淳基
(72)【発明者】
【氏名】木村 葵
(72)【発明者】
【氏名】橋本 悠司
(72)【発明者】
【氏名】篠野 充
【テーマコード(参考)】
4D028
4D040
【Fターム(参考)】
4D028BC24
4D028BD06
4D028CA09
4D028CC04
4D028CD00
4D028CE03
4D040BB05
4D040BB57
4D040BB65
4D040BB91
(57)【要約】
【課題】生物反応槽への空気の送気量を最適に制御するためのコストを削減することが可能な送気量制御装置、水処理システム、送気量制御方法、及びプログラムを提供する。
【解決手段】アンモニア計によって計測される、生物反応槽の好気槽で処理されている下水の第1のアンモニア態窒素濃度に基づき、前記生物反応槽へ流入する際の前記下水の第2のアンモニア態窒素濃度を逆算する濃度逆算部と、逆算された前記第2のアンモニア態窒素濃度に基づき、送風機から前記好気槽へ送気される空気の目標送気量を算出する送気量算出部と、算出された前記空気の目標送気量となるよう、前記送風機から前記好気槽へ送気される前記空気の送気量を制御する送気量制御部と、を備える送気量制御装置。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニア計によって計測される、生物反応槽の好気槽で処理されている下水の第1のアンモニア態窒素濃度に基づき、前記生物反応槽へ流入する際の前記下水の第2のアンモニア態窒素濃度を逆算する濃度逆算部と、
逆算された前記第2のアンモニア態窒素濃度に基づき、送風機から前記好気槽へ送気される空気の目標送気量を算出する送気量算出部と、
算出された前記空気の目標送気量となるよう、前記送風機から前記好気槽へ送気される前記空気の送気量を制御する送気量制御部と、
を備える送気量制御装置。
【請求項2】
第1のタイミングにおいて前記生物反応槽へ流入した下水のアンモニア態窒素濃度が前記第2のアンモニア態窒素濃度であり、前記第1のタイミングよりも後で前記アンモニア計によって前記第1のアンモニア態窒素濃度が計測された第2のタイミングにおいて前記生物反応槽へ流入した下水のアンモニア態窒素濃度が第3のアンモニア態窒素濃度であるとして、前記第2のアンモニア態窒素濃度に対する前記第3のアンモニア態窒素濃度を予測する濃度予測部、
をさらに備え、
前記送気量算出部は、予測された前記第3のアンモニア態窒素濃度に基づき、前記空気の目標送気量を算出する、
請求項1に記載の送気量制御装置。
【請求項3】
前記濃度予測部は、前記第2のアンモニア態窒素濃度と、前記生物反応槽へ流入する際の下水のアンモニア態窒素濃度が変化する要因を示す要因情報と、前記下水を処理するプロセスで計測されるプロセス計測情報と、前記第3のアンモニア態窒素濃度との関係を機械学習した予測モデルを用いて、前記第3のアンモニア態窒素濃度を予測する、
請求項2に記載の送気量制御装置。
【請求項4】
前記空気の送気量の制御後に前記アンモニア計によって計測される前記第1のアンモニア態窒素濃度が前記好気槽における目標アンモニア態窒素濃度となるよう、算出された前記空気の目標送気量を補正するフィードバック制御部、
をさらに備える請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の送気量制御装置。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の送気量制御装置を備える水処理システム。
【請求項6】
濃度逆算部が、アンモニア計によって計測される、生物反応槽の好気槽で処理されている下水の第1のアンモニア態窒素濃度に基づき、前記生物反応槽へ流入する際の前記下水の第2のアンモニア態窒素濃度を逆算する濃度逆算過程と、
送気量算出部が、逆算された前記第2のアンモニア態窒素濃度に基づき、送風機から前記好気槽へ送気される空気の目標送気量を算出する送気量算出過程と、
送気量制御部が、算出された前記空気の目標送気量となるよう、前記送風機から前記好気槽へ送気される前記空気の送気量を制御する送気量制御過程と、
を含む送気量制御方法。
【請求項7】
コンピュータを、
アンモニア計によって計測される、生物反応槽の好気槽で処理されている下水の第1のアンモニア態窒素濃度に基づき、前記生物反応槽へ流入する際の前記下水の第2のアンモニア態窒素濃度を逆算する濃度逆算手段と、
逆算された前記第2のアンモニア態窒素濃度に基づき、送風機から前記好気槽へ送気される空気の目標送気量を算出する送気量算出手段と、
算出された前記空気の目標送気量となるよう、前記送風機から前記好気槽へ送気される前記空気の送気量を制御する送気量制御手段と、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送気量制御装置、水処理システム、送気量制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下水処理場では、活性汚泥法を用いた水処理システムによって生活排水などの下水の処理が行われている。当該水処理システムでは、例えば生物反応槽において水中の汚濁物質が微生物によって分解され、きれいな処理水を得ることができる。微生物の活動には酸素が必要であり、生物反応槽には外部から空気が送気される。生物反応槽にて酸素が不足すると処理水の水質が悪化してしまう。このため、酸素が不足しないように生物反応槽へ空気を送気する必要があるが、空気の送気量に応じたコストがかかるため、空気が過剰に送気されることを抑制する必要があった。
【0003】
そこで、生物反応槽への空気の送気量を制御するための技術が各種提案されている。例えば、下記特許文献1には、生物反応槽へ流入する原水のアンモニア態窒素濃度を原水槽に設けられたアンモニア計で計測し、好気槽のアンモニア態窒素濃度を好気槽に設けられたアンモニア計で計測し、各アンモニア態窒素濃度に基づき生物反応槽への空気の送気量を制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、生物反応槽への空気の送気量を制御するためにフィードフォワードとフィードバックを組合せた制御を行う場合、少なくとも2つのアンモニア計を用いる必要がある。アンモニア計の維持に相応のコストが必要であるため、生物反応槽への空気の送気にかかるコストを削減するためには、アンモニア計の数も減らすことが望まれる。
【0006】
上述の課題を鑑み、本発明の目的は、生物反応槽への空気の送気量を最適に制御するためのコストを削減することが可能な送気量制御装置、水処理システム、送気量制御方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために、本発明の一態様に係る送気量制御装置は、アンモニア計によって計測される、生物反応槽の好気槽で処理されている下水の第1のアンモニア態窒素濃度に基づき、前記生物反応槽へ流入する際の前記下水の第2のアンモニア態窒素濃度を逆算する濃度逆算部と、逆算された前記第2のアンモニア態窒素濃度に基づき、送風機から前記好気槽へ送気される空気の目標送気量を算出する送気量算出部と、算出された前記空気の目標送気量となるよう、前記送風機から前記好気槽へ送気される前記空気の送気量を制御する送気量制御部と、を備える。
【0008】
本発明の一態様に係る水処理システムは、送気量制御装置を備える。
【0009】
本発明の一態様に係る送気量制御方法は、濃度逆算部が、アンモニア計によって計測される、生物反応槽の好気槽で処理されている下水の第1のアンモニア態窒素濃度に基づき、前記生物反応槽へ流入する際の前記下水の第2のアンモニア態窒素濃度を逆算する濃度逆算過程と、送気量算出部が、逆算された前記第2のアンモニア態窒素濃度に基づき、送風機から前記好気槽へ送気される空気の目標送気量を算出する送気量算出過程と、送気量制御部が、算出された前記空気の目標送気量となるよう、前記送風機から前記好気槽へ送気される前記空気の送気量を制御する送気量制御過程と、を含む。
【0010】
本発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータを、アンモニア計によって計測される、生物反応槽の好気槽で処理されている下水の第1のアンモニア態窒素濃度に基づき、前記生物反応槽へ流入する際の前記下水の第2のアンモニア態窒素濃度を逆算する濃度逆算手段と、逆算された前記第2のアンモニア態窒素濃度に基づき、送風機から前記好気槽へ送気される空気の目標送気量を算出する送気量算出手段と、算出された前記空気の目標送気量となるよう、前記送風機から前記好気槽へ送気される前記空気の送気量を制御する送気量制御手段と、として機能させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、生物反応槽への空気の送気量を最適に制御するためのコストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態に係る水処理システムの概略構成を示す図である。
【
図2】本実施形態に係る送気量制御装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】本実施形態に係るアンモニア態窒素と生物化学的酸素要求量(BOD)との関係の一例を示す図である。
【
図4】本実施形態に係るアンモニア態窒素と浮遊物質量(SS)との関係の一例を示す図である。
【
図5】本実施形態に係る処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
【0014】
<1.水処理システムの概略構成>
まず、
図1を参照して、本実施形態に係る水処理システムの概略構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る水処理システムの概略構成を示す図である。
図1に示す水処理システム1は、下水処理場において活性汚泥法によって下水処理を行うためのシステムである。下水処理場には、例えば家庭や工場などで排出された下水(原水)が下水管を通って運ばれてくる。下水処理場へ運ばれた下水は、まず、沈砂池(不図示)へ運ばれる。沈砂池では、下水から大きなごみや土砂が除去される。次に、下水は、水処理システム1へ運ばれる。水処理システム1では、下水から小さなごみや砂の除去、汚濁物質の分解などが行われる。次に、下水(上澄み水)は、消毒設備(不図示)へ運ばれる。消毒設備では、下水の消毒が行われる。消毒された下水は、河川などに放流される。
【0015】
図1に示すように、本実施形態に係る水処理システム1は、最初沈殿池10と、生物反応槽20と、散気装置24と、ブロワ25と、調整弁26と、流量計27と、アンモニア計28と、ポンプ29と、最終沈殿池30と、ポンプ32と、送気量制御装置100とを有する。
【0016】
最初沈殿池10は、沈砂池から流入した下水に含まれる小さなごみや砂などを沈殿させることで除去する設備である。最初沈殿池10は、沈殿した小さなごみや砂などからなる初沈汚泥11を除去した下水を排水する。最初沈殿池10から排水された下水は、生物反応槽20へ運ばれる。なお、最初沈殿池10にて除去された初沈汚泥11は、汚泥処理施設へ運ばれて処理される。また、汚泥処理設備で発生した排水(例えば、汚泥濃縮装置から排出される分離液など)は返流水として沈砂池へ送られ、下水と併せて水処理システム1で処理されてもよい。
【0017】
生物反応槽20は、初沈汚泥11が除去された下水に含まれる汚濁物質を活性汚泥法によって除去する設備である。
図1に示すように、生物反応槽20は、嫌気槽21と、無酸素槽22と、好気槽23とを有する。
【0018】
嫌気槽21には、最初沈殿池10から排水された下水と、後述する最終沈殿池30から排出された活性汚泥を主とする返送汚泥が運ばれる。嫌気槽21は、外部から空気が送気されないため、下水には酸素が溶け込んでいない状態である。このため、返送汚泥に含まれる微生物の活動により、微生物からリンが放出される。
【0019】
無酸素槽22には、嫌気槽21にて処理された下水と、好気槽23からポンプ29により送水される循環水が運ばれる。無酸素槽22は、嫌気槽21と同様に、外部から空気が送気されないため、下水には酸素が溶け込んでいない状態である。無酸素槽22では、微生物(脱窒菌)が無酸素の状態から呼吸のための酸素を得るために、下水中の亜硝酸イオン(NO2
-)や硝酸イオン(NO3
-)を分解する。窒素は、分解されて窒素ガスとなり、大気中に放出される。
【0020】
好気槽23には、無酸素槽22にて処理された下水が運ばれる。また、好気槽23には、散気装置24が設けられている。
散気装置24は、ブロワ25(送風機の一例)から送気される空気を、好気槽23の下水中に気泡にして放出する装置である。
散気装置24とブロワ25との間の任意の位置には、ブロワ25から散気装置24へ送気される空気の送気量を調整するための調整弁26が設けられている。調整弁26の動作は、後述する送気量制御装置100によって制御される。
また、散気装置24と調整弁26との間の任意の位置には、調整弁26によって調整され散気装置24へ送気される空気の送気量を計測するための流量計27が設けられている。以下、流量計27によって計測される送気量は、「計測送気量」とも称される。流量計27が計測した計測送気量は、送気量制御装置100へ送信される。
また、好気槽23には、好気槽23で処理されている下水のアンモニア態窒素濃度(第1のアンモニア態窒素濃度)を計測するためのアンモニア計28が設けられている。以下、アンモニア計28によって計測されるアンモニア態窒素濃度(第1のアンモニア態窒素濃度)は、「計測アンモニア態窒素濃度」とも称される。アンモニア計28が計測した計測アンモニア態窒素濃度は、送気量制御装置100へ送信される。
なお、アンモニア計28は、好気槽23で処理されている下水のアンモニア態窒素濃度を計測可能であれば、好気槽23の任意の位置に設けられていてもよいし、好気槽23に直接設けられていなくてもよい。
【0021】
上述のようにして、生物反応槽20は、嫌気槽21、無酸素槽22、及び好気槽23を通して汚濁物質を除去した下水を排水する。生物反応槽20から排水された下水は、最終沈殿池30へ運ばれる。また、生物反応槽20から排水された下水の一部は、循環水としてポンプ29によって無酸素槽22へ運ばれる。
【0022】
最終沈殿池30は、生物反応槽20から流入した下水に含まれる活性汚泥を沈殿させることで除去する設備である。最終沈殿池30は、沈殿した活性汚泥すなわち終沈汚泥31を除去した上澄み水を排水する。最終沈殿池30から排水された上澄み水は、上述した消毒設備へ運ばれて処理される。なお、最終沈殿池30にて除去された終沈汚泥31の一部は、ポンプ32によって嫌気槽21へ運ばれる。残りの終沈汚泥31は、余剰汚泥として汚泥処理施設へ運ばれて処理される。
【0023】
送気量制御装置100は、好気槽へ送気される空気の送気量を制御するための装置である。送気量制御装置100は、例えば、PC(Personal Computer)やサーバ装置などによって実現される。
送気量制御装置100は、アンモニア計28から受信する計測アンモニア態窒素濃度に基づき、好気槽23への送気量を制御する。
また、送気量制御装置100は、アンモニア計28から受信する計測アンモニア態窒素濃度に基づき、フィードバック制御を行う。
なお、送気量制御装置100による各制御の詳細については後述する。
【0024】
<2.送気量制御装置の機能構成>
以上、本実施形態に係る水処理システム1の概略構成について説明した。続いて、
図2から
図4を参照して、本実施形態に係る送気量制御装置100の機能構成について説明する。
図2は、本実施形態に係る送気量制御装置100の機能構成の一例を示すブロック図である。
図2に示すように、送気量制御装置100は、通信部110と、記憶部120と、制御部130とを備える。
【0025】
(1)通信部110
通信部110は、外部装置と通信を行う機能を有する。外部装置は、送気量制御装置100の外部に設けられた装置である。外部装置には、例えば、流量計27やアンモニア計28などのセンサ装置、調整弁26などの制御対象となる機器などが含まれる。
通信部110は、外部装置から受信する情報を制御部130へ出力する。例えば、通信部110は、流量計27から受信する計測送気量やアンモニア計28から受信する計測アンモニア態窒素濃度を制御部130へ出力する。
また、通信部110は、制御部130から入力される信号を外部装置へ送信する。例えば、通信部110は、制御部130から入力される調整弁26の制御信号を調整弁26へ送信する。
【0026】
(2)記憶部120
記憶部120は、各種情報を記憶する機能を有する。記憶部120は、送気量制御装置100がハードウェアとして備える記憶媒体、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、RAM(Random Access read/write Memory)、ROM(Read Only Memory)、又はこれらの記憶媒体の任意の組み合わせによって構成される。
図2に示すように、記憶部120は、予測モデル121を記憶する。
なお、予測モデル121の詳細については後述する。
【0027】
(3)制御部130
制御部130は、送気量制御装置100の動作全般を制御する機能を有する。制御部130は、例えば、送気量制御装置100がハードウェアとして備えるCPU(Central Processing Unit)にプログラムを実行させることによって実現される。
図2に示すように、制御部130は、逆算情報取得部131と、濃度逆算部132と、予測情報取得部133と、濃度予測部134と、算出情報取得部135と、送気量算出部136と、アンモニア制御フィードバック情報取得部137と、アンモニア制御フィードバック制御部138と、送気量制御部139とを備える。
【0028】
(3-1)逆算情報取得部131
逆算情報取得部131は、逆算情報を取得する機能を有する。逆算情報は、濃度逆算部132によるアンモニア態窒素濃度の逆算に必要な情報である。例えば、逆算情報は、計測アンモニア態窒素濃度、生物反応槽20の設計に関する情報、好気槽23における水質の推算式を示す情報、下水を処理するプロセスで計測される情報などである。
【0029】
計測アンモニア態窒素濃度は、アンモニア計28によって計測されたアンモニア態窒素濃度である。
逆算情報取得部131は、通信部110を介して、アンモニア計28から計測アンモニア態窒素濃度を取得する。
【0030】
生物反応槽20の設計に関する情報(以下、「設計情報」とも称される)は、例えば、生物反応槽20の容量、散気装置24の効率、生物化学的酸素要求量(BOD:Biochemical Oxygen Demand)として計測される汚濁物質の酸化に必要なBODの単位あたりの酸素量、脱窒により消費される汚泥の単位あたりの酸素量、溶解性BODの汚泥転換率、浮遊物質量(SS:Suspended Solid)の汚泥転換率、汚泥の自己分解係数、余剰汚泥の窒素含有率などである。
なお、設計情報は、ユーザによって予め設定される情報であり、例えば記憶部120に記憶されている。逆算情報取得部131は、記憶部120から設計情報を取得する。
【0031】
好気槽23における水質の推算式を示す情報(以下、「推算式情報」とも称される)は、例えば、BODとアンモニア態窒素(NH4-N)との相関式、SSとアンモニア態窒素との相関式、BODと溶解性BOD(S-BOD:Soluble-Biochemical Oxygen Demand)の相関式などである。
BOD、SS、S-BODなどは、連続計測することが難しく、その取得にコストがかかる場合がある。そこで、本実施形態では、BOD、SS、S-BODの各々と、計測アンモニア態窒素濃度との相関関係を予め取得し、この相関関係からBOD、SS、S-BODを算出するための相関式を予め用意した。これにより、BOD、SS、S-BODの取得にかかるコストを削減し、逆算アンモニア態窒素濃度の算出精度を向上することを可能とした。
なお、推算式情報は、ユーザによって予め用意される情報であり、例えば記憶部120に記憶されている。逆算情報取得部131は、記憶部120から推算式情報を取得する。
【0032】
下水を処理するプロセスで計測される情報(以下、「プロセス計測情報」とも称される
)は、例えば、送気量、下水流入量、酸化還元電位(ORP:Oxidation Reduction Potential)、活性汚泥浮遊物質(MLSS:Mixed Liquor Suspended Solids)、溶存酸素(DO:Dissolved Oxygen)、水素イオン指数(pH)、水温、循環水量、返送汚泥量などである。
送気量は、好気槽23への空気の送気量であり、流量計27によって計測される。
下水流入量は、最初沈殿池10から生物反応槽20へ流入する下水の流入量であり、当該流入量を計測可能な任意の位置に設けられた流量計(不図示)によって計測される。
酸化還元電位は、嫌気槽21における下水の酸化還元電位であり、当該酸化還元電位を計測可能な任意の位置に設けられORP計(不図示)によって計測される。
活性汚泥浮遊物質は、好気槽23における下水の活性汚泥浮遊物質であり、当該活性汚泥浮遊物質を計測可能な任意の位置に設けられたMLSS計(不図示)によって計測される。
溶存酸素は、好気槽23における下水の溶存酸素であり、当該溶存酸素を計測可能な任意の位置に設けられたDO計(不図示)によって計測される。
水素イオン指数は、好気槽23における下水の水素イオン指数であり、当該水素イオン指数を計測可能な任意の位置に設けられたpH計(不図示)によって計測される。
水温は、好気槽23における下水の水温であり、当該水温を計測可能な任意の位置に設けられた水温計(不図示)によって計測される。
循環水量は、生物反応槽20から排水された下水のうちポンプ29によって無酸素槽22へ運ばれる循環水の量であり、当該循環水の量を計測可能な任意の位置に設けられた流量計(不図示)によって計測される。
返送汚泥量は、最終沈殿池30にて除去された終沈汚泥31のうちポンプ32によって嫌気槽21へ運ばれる返送汚泥の量であり、当該返送汚泥の量を計測可能な任意の位置に設けられた流量計(不図示)によって計測される。
逆算情報取得部131は、通信部110を介して、上述した各種の計測装置からプロセス計測情報を取得する。
【0033】
ここで、
図3を参照して、本実施形態に係るアンモニア態窒素と生物化学的酸素要求量との関係について説明する。
図3は、本実施形態に係るアンモニア態窒素と生物化学的酸素要求量(BOD)との関係の一例を示す図である。
【0034】
図3には、横軸を入口側アンモニア態窒素、縦軸を生物化学的酸素要求量(BOD)として、実測値に基づき入口側アンモニア態窒素と生物化学的酸素要求量との関係がプロットされている。このプロットに基づく近似直線ASL1から、BODとアンモニア態窒素(NH
4-N)との相関式(y=ax+b)を求めることができる。
【0035】
ここで、
図4を参照して、本実施形態に係る入口側アンモニア態窒素と浮遊物質量との関係について説明する。
図4は、本実施形態に係る入口側アンモニア態窒素と浮遊物質量(SS)との関係の一例を示す図である。
【0036】
図4には、横軸を入口側アンモニア態窒素、縦軸を浮遊物質量(SS)として、実測値に基づき入口側アンモニア態窒素と浮遊物質量との関係がプロットされている。このプロットに基づく近似直線ASL2から、SSと入口側アンモニア態窒素(NH
4-N)との相関式(y=ax+b)を求めることができる。
【0037】
なお、S-BODについては、下水において一般的に使用される以下の式(1)によって算出することができる。
S-BOD,in=BOD,in×2/3 …(1)
【0038】
(3-2)濃度逆算部132
濃度逆算部132は、アンモニア態窒素濃度を逆算する機能を有する。例えば、濃度逆算部132は、好気槽23で処理されている下水の計測アンモニア態窒素濃度に基づき、当該下水が生物反応槽20で処理される前であって当該下水が生物反応槽20へ流入する際のアンモニア態窒素濃度を逆算する。以下、濃度逆算部132によって逆算されるアンモニア態窒素濃度(第2のアンモニア態窒素濃度)は、「逆算アンモニア態窒素濃度」とも称される。
【0039】
具体的に、濃度逆算部132は、逆算情報取得部131によって取得される、計測アンモニア態窒素濃度を含む逆算情報に基づき、逆算アンモニア態窒素濃度を算出する。
まず、濃度逆算部132は、実際にブロワ25から好気槽23へ送気された空気の送気量に基づき、好気槽23へ供給された酸素濃度(SOR)を以下の式(2)によって算出する。
SOR=f(Gs,Ea,ρ,Ow)
=Gs×Ea/100×ρ×Ow×24×{273/(273+20)}…(2)
上記式(2)において、Gsは実際の送気量、Eaは散気装置の酸素移動効率、ρは空気の密度、Owは空気中の酸素重量比である。なお、上記式(2)は、20℃、1気圧でのSORを算出する場合の式である。
【0040】
次いで、濃度逆算部132は、算出したSORに基づき、実際の運転時に必要な酸素量(AOR)を以下の式(3)によって算出する。
AOR=f(SOR,Csw,Cs,Coa,r,H,T,α,β,P)
=SOR×[{1.024^(T-20)×α(β×Cs×r-Coa)}/(Csw×r)]×(P/101.3) …(3)
上記式(3)において、Cswは20℃における清水の飽和酸素濃度,CsはT℃における清水の飽和酸素濃度,Coaは活性汚泥混合液の平均DO濃度,rは散気水深によるCsの補正係数,Hは散気水深,Tは活性汚泥混合液の水温,αは総括酸素移動容量係数の清水に対する差異の補正係数,βは飽和溶存酸素濃度の清水に対する差異の補正係数,Pは大気圧である。なお、rは、以下の式(4)によって算出される。
r=1/2×[{(10.24+H)/10.24}+1] …(4)
【0041】
次いで、濃度逆算部132は、算出したAORに基づき、アンモニア態窒素濃度を以下の式(5)によって逆算する。
AOR=DB+DN+DE+DO …(5)
上記式(5)において、DBはBODの酸化に必要な酸素量、DNは硝化反応に必要な酸素量、DEは内生呼吸に必要な酸素量、DOは反応タンク流出水により系外に出る酸素量である。
【0042】
DEは、以下の式(6)によって算出される。
DE=f(B,Va,Xa’)
=B×Va×Xa’/1000 …(6)
上記式(6)において、Bは活性汚泥内の微生物量(MLVSS:Mixed liquor volatile suspended solid)の単位当たりの内生呼吸による酸素消費量、Vaは好気槽容量、Xa’はMLVSSである。
【0043】
DOは、以下の式(7)によって算出示される。
DO=f(COA,Qin,Qr,Qc)
=COA×(Qin+Qr+Qc)/1000 …(7)
上記式(7)において、COAは好気槽末端の溶存酸素量、Qinは流入水量、Qrは返送汚泥量、Qcは循環水量である。
【0044】
DBは、以下の式(8)式によって算出される。
DB=f(CBODin,CBODeff,Qin,LNOXdn,LNOXa,K,A)
={(CBODin-CBODeff)×Qin/1000-(LNOXdn-LNOXa)×K}×A …(8)
上記式(8)において、CBODinは流入水BOD、CBODeffは流出BOD、LNOXdnは反応タンクNOT-N負荷量、LNOXaは反応タンクNOT-N流出量、Kは脱窒により消費されるBOD量、Aは除去BOD当たりに必要な酸素量である。
【0045】
DNは、以下の式(9)によって算出される。
DN=f(C,CKNin,CKNeff,Nx,a,CS-BODin,b,CSSin,c,θ,Xa,Qin)
=C×{(CKNin-CKNeff)-Nx(a×CS-BODin+b×CSSin+c×θ×Xa)}×Qin/1000 …(9)
上記式(9)において、Cは硝化に伴い消費される酸素量、CKNinは流入ケルダール窒素量kj-N、CKNeffは流出ケルダール窒素量kj-N、Nxは余剰汚泥の窒素含有率、aは溶解性BODの汚泥転換率、CS-BODinはS-BOD(溶存性BOD)、bはSSの汚泥転換率、CSSinは浮遊物質量SS、cは汚泥の自己分解係数、θはHRT、XaはMLSSである。
【0046】
一般的にケルダール窒素は(有機態窒素+アンモニア態窒素)と定義される。さらに、下水は、一般的に、(有機体窒素<<アンモニア態窒素)であるため、ケルダール窒素(kj-N)は流入アンモニア態窒素の計測値で代表とする。即ち、(流入ケルダール窒素量CKNin=流入アンモニア態窒素)とする。
さらに、以下の式(10)から式(12)を換算式として代入することで、上記式(5)から式(9)において、逆算アンモニア態窒素濃度を算出することができる。
CSSin=流入アンモニア態窒素CKNin+31 …(10)
CBODin=3.7317×[kj-N]+51.869 …(11)
CS-BODin=BOD×2/3 …(12)
【0047】
(3-3)予測情報取得部133
予測情報取得部133は、予測情報を取得する機能を有する。予測情報は、濃度予測部134による時間ずれを考慮した第3のアンモニア態窒素濃度の予測に必要な情報である。
【0048】
ここで、時間ずれについて説明する。まず、第1のタイミングにおいて生物反応槽20へ流入した下水のアンモニア態窒素濃度が、濃度逆算部132によって算出された第2のアンモニア態窒素濃度(逆算アンモニア態窒素濃度)であるとする。また、第1のタイミングよりも後でアンモニア計28によって第1のアンモニア態窒素濃度(計測アンモニア態窒素濃度)が計測されたタイミングが第2のタイミングであるとする。また、第2のタイミングにおいて生物反応槽20へ流入した下水のアンモニア態窒素濃度が第3のアンモニア態窒素濃度であるとする。この場合において、時間ずれは、第1のタイミングにおける第2のアンモニア態窒素濃度に対する、第2のタイミングにおける第3のアンモニア態窒素濃度の時間のずれを示す。なお、第3のアンモニア態窒素濃度は、後述する濃度予測部134によって予測されるアンモニア態窒素濃度である。このため、以下、第3のアンモニア態窒素濃度は、「予測アンモニア態窒素濃度」とも称される。
【0049】
予測情報は、例えば、逆算アンモニア態窒素濃度、生物反応槽20へ流入する際の下水のアンモニア態窒素濃度が変化する要因を示す情報、プロセス計測情報などである。
【0050】
逆算アンモニア態窒素濃度は、濃度逆算部132によって算出されたアンモニア態窒素濃度である。
予測情報取得部133は、濃度逆算部132から逆算アンモニア態窒素濃度を取得する。
【0051】
生物反応槽20へ流入する際の下水のアンモニア態窒素濃度が変化する要因を示す情報(以下、「要因情報」とも称される)は、例えば、降水量情報、月日情報、時刻情報、曜日情報、休日情報などである。
降水量情報は、下水処理場における降水量を示す情報である。降水によって雨水が下水に流入した場合には、下水のアンモニア態窒素濃度が変化し得る。
月日情報は、濃度予測部134による予測が行われる月日を示す情報である。月日によっては季節に関係する原因等により下水のアンモニア態窒素濃度が変化し得る。
時刻情報は、濃度予測部134による予測が行われる時刻を示す情報である。時刻によっては下水のアンモニア態窒素濃度が変化し得る。
曜日情報は、濃度予測部134による予測が行われる曜日を示す情報である。曜日によっては下水のアンモニア態窒素濃度が変化し得る。
休日情報は、濃度予測部134による予測が行われる日が休日であるか否かを示す情報である。休日であるか否かによっては下水のアンモニア態窒素濃度が変化し得る。
なお、予測情報取得部133は、システム日付、インターネットなどから要因情報を取得してもよいし、ユーザによって予め用意されて記憶部120に記憶されている場合には記憶部120から要因情報を取得してもよい。
【0052】
予測情報取得部133が取得するプロセス計測情報は、逆算情報取得部131が取得したプロセス計測情報と同様である。
【0053】
(3-4)濃度予測部134
濃度予測部134は、時間ずれを考慮した第3のアンモニア態窒素濃度を予測する機能を有する。例えば、濃度予測部134は、逆算アンモニア態窒素濃度と、要因情報と、プロセス計測情報とに基づき、逆算アンモニア態窒素濃度から時間ずれを考慮した予測アンモニア態窒素濃度を予測する。
濃度予測部134は、予測モデル121を用いて、予測アンモニア態窒素濃度を予測する。予測モデル121は、逆算アンモニア態窒素濃度と、要因情報と、プロセス計測情報と、第3のアンモニア態窒素濃度(実測値)との関係を機械学習した学習済みモデルである。このため、予測モデル121は、逆算アンモニア態窒素濃度と、要因情報と、プロセス計測情報とを入力として、第3のアンモニア態窒素濃度(予測値)を出力する。
よって、濃度予測部134は、予測情報取得部133によって取得された予測情報を予測モデル121に入力して出力される第3のアンモニア態窒素濃度(予測値)を、予測アンモニア態窒素濃度の予測結果として取得することができる。
これにより、送気量制御装置100は、計測アンモニア態窒素濃度から、好気槽23において当該計測アンモニア態窒素濃度である下水が生物反応槽20へ流入した過去の時点におけるアンモニア態窒素濃度ではなく、計測アンモニア態窒素濃度が計測された現在の時点において生物反応槽20へ流入した下水のアンモニア態窒素濃度を取得することができる。
即ち、送気量制御装置100は、1つのアンモニア計のみを用いて、同時点における生物反応槽20の入口側アンモニア態窒素濃度と出口側アンモニア態窒素濃度を取得することができる。
これにより、送気量制御装置100は、現時点において生物反応槽20の出口側のみに設けられたアンモニア計が計測した計測アンモニア態窒素濃度と時間ずれのない、現時点における入口側のアンモニア態窒素濃度を取得することができる。また、送気量制御装置100は、当該入口側のアンモニア態窒素濃度を用いて、現時点における適切な送気量を取得して、送気量を制御することができる。よって、送気量制御装置100は、時間ずれを考慮せずに入口側のアンモニア態窒素濃度を逆算して送気量を制御する場合と比較して、より精度高く送気量を制御することができる。
また、水処理システム1では、生物反応槽20の入口側にアンモニア計を設ける必要がなくなり、生物反応槽20の出口側のみにアンモニア計が設けられていればよくなるため、アンモニア計の数を削減してコストを削減することができる。
【0054】
(3-5)算出情報取得部135
算出情報取得部135は、算出情報を取得する機能を有する。算出情報は、送気量算出部136による送気量の算出に必要な情報である。例えば、算出情報は、予測アンモニア態窒素濃度、プロセス計測情報などである。
【0055】
予測アンモニア態窒素濃度は、濃度予測部134によって予測された予測アンモニア態窒素濃度(第3のアンモニア態窒素濃度)である。算出情報取得部135は、濃度予測部134から予測アンモニア態窒素濃度を取得する。
【0056】
算出情報取得部135が取得する算出情報は、逆算情報取得部131や濃度予測部134が取得したプロセス計測情報と同様である。
【0057】
(3-6)送気量算出部136
送気量算出部136は、送気量を算出する機能を有する。例えば、送気量算出部136は、濃度予測部134によって予測された予測アンモニア態窒素濃度に基づき、ブロワ25から好気槽23へ送気される空気の適切な送気量(以下、「目標送気量」とも称される)を算出する。これにより、送気量算出部136は、より精度高く送気量を算出することができる。
【0058】
より具体的には、送気量算出部136は、算出情報取得部135によって取得された予測アンモニア態窒素濃度とプロセス計測情報とに基づき、目標送気量を算出する。
まず、送気量算出部136は、上述した式(5)から式(12)を用いてAORを算出する。
【0059】
次いで、送気量算出部136は、算出したAORに基づき、SORを以下の式(13)によって算出する。
SOR=f(AOR,Csw,Cs,Coa,r,H,T,α,β,P)
=[(AOR×Csw×r)/{1.024^(T-20)×α×(β×Cs×r-Coa)}]×101.3/P …(13)
なお、rは、式(4)によって算出される。
【0060】
次いで、送気量算出部136は、算出したSORに基づき、目標送気量(=必要送気量Gs)を以下の式(14)式によって算出する。
Gs=f(SOR,Ea,ρ,Ow)
={SOR/(Ea/100×ρ×Ow×24)}×{(273+20)/273}
…(14)
なお、上記式(14)は、20℃、1気圧での目標送気量を算出する場合の式である。
【0061】
(3-7)アンモニア制御フィードバック情報取得部137
アンモニア制御フィードバック情報取得部137は、アンモニア制御のフィードバック情報を取得する機能を有する。フィードバック情報は、アンモニア制御フィードバック制御部138によるフィードバック制御に必要な情報である。例えば、フィードバック情報は、アンモニア計28によって計測される計測アンモニア態窒素濃度と、予め設定されている好気槽23における目標アンモニア態窒素濃度とを組にした情報である。
【0062】
(3-8)アンモニア制御フィードバック制御部138
アンモニア制御フィードバック制御部138は、フィードバック制御を行う機能を有する。例えば、アンモニア制御フィードバック制御部138は、アンモニア計28によって計測される計測アンモニア態窒素濃度が好気槽23における目標アンモニア態窒素濃度となるよう補正すべき送気量(補正送気量)を算出する。送気量算出部136によって算出された空気の目標送気量を補正送気量と合算し補正目標送気量を算出する。
これにより、逆算アンモニア態窒素濃度、予測アンモニア態窒素濃度、目標送気量などの算出において生じる誤差の影響を軽減することができる。
【0063】
(3-9)送気量制御部139
送気量制御部139は、送気量を制御する機能を有する。例えば、送気量制御部139は、アンモニア制御フィードバック制御部138によって補正された空気の目標送気量となるよう、ブロワ25から好気槽23へ送気される空気の送気量を制御する。具体的に、送気量制御部139は、通信部110を介して、制御信号を調整弁26へ送信し、調整弁26の動作を制御する。これにより、送気量制御部139は、ブロワ25から散気装置24へ送気される空気の送気量が補正目標送気量となるように制御する。
【0064】
<3.処理の流れ>
以上、本実施形態に係る送気量制御装置100の機能構成について説明した。続いて、
図5を参照して、本実施形態に係る処理の流れについて説明する。
図5は、本実施形態に係る処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0065】
図5に示すように、まず、逆算情報取得部131は、逆算情報を取得する(ステップS101)。具体的に、逆算情報取得部131は、アンモニア計28から計測アンモニア態窒素濃度を取得し、記憶部120から設計情報と推算式情報を取得し、不図示の各計測装置からプロセス計測情報を取得する。逆算情報取得部131は、取得した各情報を含む逆算情報を濃度逆算部132へ出力する。
次いで、濃度逆算部132は、逆算アンモニア態窒素濃度を算出する(ステップS102)。具体的に、濃度逆算部132は、逆算情報取得部131によって取得された逆算情報に基づき、逆算アンモニア態窒素濃度を算出する。
【0066】
次いで、予測情報取得部133は、予測情報を取得する(ステップS103)。具体的に、予測情報取得部133は、濃度逆算部132から逆算アンモニア態窒素濃度を取得し、システム日付、インターネット、記憶部120などから要因情報を取得し、逆算情報取得部131が取得したプロセス計測情報を取得する。予測情報取得部133は、取得した各情報を含む予測情報を濃度予測部134へ出力する。
次いで、濃度予測部134は、予測アンモニア態窒素濃度を予測する(ステップS104)。具体的に、濃度予測部134は、予測情報取得部133によって取得された予測情報を予測モデル121へ入力して出力される予測アンモニア態窒素濃度を、予測アンモニア態窒素濃度の予測結果として取得する。
【0067】
次いで、算出情報取得部135は、算出情報を取得する(ステップS105)。具体的に、算出情報取得部135は、濃度予測部134から予測アンモニア態窒素濃度を取得し、逆算情報取得部131が取得したプロセス計測情報を取得する。
次いで、送気量算出部136は、目標送気量を算出する(ステップS106)。具体的に、送気量算出部136は、算出情報取得部135によって取得された予測アンモニア態窒素濃度とプロセス計測情報とに基づき、目標送気量を算出する。
【0068】
アンモニア制御フィードバック情報取得部137は、フィードバック情報を取得する(ステップS107)。具体的に、アンモニア制御フィードバック情報取得部137は、アンモニア計28から計測アンモニア態窒素濃度を取得し、記憶部120から目標アンモニア態窒素濃度を取得する。
次いで、アンモニア制御フィードバック制御部138は、アンモニア態窒素濃度のフィードバック制御を行う(ステップS108)。具体的に、アンモニア制御フィードバック制御部138は、アンモニア制御フィードバック情報取得部137によって取得された目標アンモニア態窒素濃度と計測アンモニア態窒素濃度とに基づき、計測アンモニア態窒素濃度が好気槽23における目標アンモニア態窒素濃度となるよう補正すべき送気量(補正送気量)を算出する。
次いで、アンモニア制御フィードバック制御部138は、送気量算出部136によって算出された目標送気量を補正送気量と合算して補正目標送気量を算出する(ステップS109)。
次いで、送気量制御部139は、送気量を制御する(ステップS110)。具体的に、送気量制御部139は、通信部110を介して、アンモニア制御フィードバック制御部138によって補正された目標送気量となるよう制御信号を調整弁26へ送信し、調整弁26の動作を制御することで、補正目標送気量になるよう制御する。
送気量の制御後、送気量制御装置100は、処理をステップS101から繰り返す。
【0069】
以上説明したように、本実施形態に係る送気量制御装置100は、アンモニア計28によって計測される、生物反応槽20の好気槽23で処理されている下水の第1のアンモニア態窒素濃度に基づき、生物反応槽20へ流入する際の下水の第2のアンモニア態窒素濃度を逆算する。また、送気量制御装置100は、逆算された第2のアンモニア態窒素濃度に基づき、ブロワ25から好気槽23へ送気される空気の目標送気量を算出する。また、送気量制御装置100は、算出された空気の目標送気量となるよう、ブロワ25から好気槽23へ送気される空気の送気量を制御する。
【0070】
かかる構成により、送気量制御装置100は、1つのアンモニア計のみを用いて生物反応槽20の出口側のアンモニア態窒素濃度を計測することで入口側のアンモニア態窒素濃度を逆算し、逆算したアンモニア態窒素濃度に応じた送気量となるよう、好気槽23への送気量を制御することができる。
よって、本実施形態に係る送気量制御装置100は、生物反応槽への空気の送気量を最適に制御するためのコストを削減することを可能とする。
【0071】
<4.変形例>
以上、本発明の実施形態について説明した。続いて、本発明の実施形態の変形例について説明する。なお、以下に説明する各変形例は、単独で本発明の実施形態に適用されてもよいし、組み合わせで本発明の実施形態に適用されてもよい。また、各変形例は、本発明の実施形態で説明した構成に代えて適用されてもよいし、本発明の実施形態で説明した構成に対して追加的に適用されてもよい。
【0072】
上述の実施形態では、予め生成された予測モデル121が送気量制御装置100の記憶部120に記憶されている例について説明したが、かかる例に限定されない。例えば、送気量制御装置100が学習機能を有し、送気量制御装置100が機械学習によって予測モデル121を生成して、記憶部120に記憶することが可能な構成であってもよい。
また、水処理システム1が、学習機能を備えた装置を、送気量制御装置100とは別の装置として有していてもよい。この場合、送気量制御装置100は、当該別の装置によって生成された予測モデル121を記憶部120に記憶する。
また、いずれの場合においても、予測モデル121を再学習することが可能な構成であってもよい。
【0073】
上述の実施形態では、生物反応槽20における処理方式として嫌気無酸素好気法を用いる例について説明したが、かかる例に限定されない。例えば、生物反応槽20における他の処理方式として、嫌気好気法又は標準活性汚泥法などが用いられてもよい。
生物反応槽20における他の処理方式として嫌気好気法を用いる場合、生物反応槽20の構成は、無酸素槽22がなく、嫌気槽21と好気槽23を有する構成となる。この場合、ポンプ29は不要となる。
また、生物反応槽20における他の処理方式として標準活性汚泥法を用いる場合、生物反応槽20の構成は、嫌気槽21と無酸素槽22がなく、好気槽23のみを有する構成となる。この場合も同様に、ポンプ29は不要となる。
【0074】
以上、本発明の実施形態について説明した。なお、上述した実施形態における送気量制御装置100の一部又は全部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0075】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【0076】
(付記1)
アンモニア計によって計測される、生物反応槽の好気槽で処理されている下水の第1のアンモニア態窒素濃度に基づき、前記生物反応槽へ流入する際の前記下水の第2のアンモニア態窒素濃度を逆算する濃度逆算部と、
逆算された前記第2のアンモニア態窒素濃度に基づき、送風機から前記好気槽へ送気される空気の目標送気量を算出する送気量算出部と、
算出された前記空気の目標送気量となるよう、前記送風機から前記好気槽へ送気される前記空気の送気量を制御する送気量制御部と、
を備える送気量制御装置。
【0077】
(付記2)
第1のタイミングにおいて前記生物反応槽へ流入した下水のアンモニア態窒素濃度が前記第2のアンモニア態窒素濃度であり、前記第1のタイミングよりも後で前記アンモニア計によって前記第1のアンモニア態窒素濃度が計測された第2のタイミングにおいて前記生物反応槽へ流入した下水のアンモニア態窒素濃度が第3のアンモニア態窒素濃度であるとして、前記第2のアンモニア態窒素濃度に対する前記第3のアンモニア態窒素濃度を予測する濃度予測部、
をさらに備え、
前記送気量算出部は、予測された前記第3のアンモニア態窒素濃度に基づき、前記空気の目標送気量を算出する、
付記1に記載の送気量制御装置。
【0078】
(付記3)
前記濃度予測部は、前記第2のアンモニア態窒素濃度と、前記生物反応槽へ流入する際の下水のアンモニア態窒素濃度が変化する要因を示す要因情報と、前記下水を処理するプロセスで計測されるプロセス計測情報と、前記第3のアンモニア態窒素濃度との関係を機械学習した予測モデルを用いて、前記第3のアンモニア態窒素濃度を予測する、
付記2に記載の送気量制御装置。
【0079】
(付記4)
前記空気の送気量の制御後に前記アンモニア計によって計測される前記第1のアンモニア態窒素濃度が前記好気槽における目標アンモニア態窒素濃度となるよう、算出された前記空気の目標送気量を補正するフィードバック制御部、
をさらに備える付記1から付記3のいずれか1つに記載の送気量制御装置。
【0080】
(付記5)
付記1から付記4のいずれか1つに記載の送気量制御装置を備える水処理システム。
【符号の説明】
【0081】
1…水処理システム、10…最初沈殿池、11…初沈汚泥、20…生物反応槽、21…嫌気槽、22…無酸素槽、23…好気槽、24…散気装置、25…ブロワ、26…調整弁、27…流量計、28…アンモニア計、29…ポンプ、30…最終沈殿池、31…終沈汚泥、32…ポンプ、100…送気量制御装置、110…通信部、120…記憶部、121…予測モデル、130…制御部、131…逆算情報取得部、132…濃度逆算部、133…予測情報取得部、134…濃度予測部、135…算出情報取得部、136…送気量算出部、137…アンモニア制御フィードバック情報取得部、138…アンモニア制御フィードバック制御部、139…送気量制御部