IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-車両のリレー除湿装置 図1
  • 特開-車両のリレー除湿装置 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047779
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】車両のリレー除湿装置
(51)【国際特許分類】
   H01H 47/00 20060101AFI20240401BHJP
   B60L 1/00 20060101ALI20240401BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20240401BHJP
【FI】
H01H47/00 C
B60L1/00 L
B60L3/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153457
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】平 真和
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 朋也
【テーマコード(参考)】
5H125
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AC12
5H125CD04
5H125EE31
5H125EE42
5H125EE51
(57)【要約】
【課題】メカニカルリレーの接点の氷結を好適に抑制する。
【解決手段】リレー除湿装置1は、メカニカルリレー本体21を収容し、サージタンク30及びエバポレータ40と個別に連通されるリレー筐体22と、サージタンク30とリレー筐体22とを連通する第1連通管31に配置されるソレノイドバルブ32と、ECU50と、を備える。ECU50は、常態でソレノイドバルブ32を閉止させるとともに、サージタンク30が負圧を発生させ、かつ、エバポレータ40の出口40bが所定値以下の湿度の場合に、ソレノイドバルブ32を開放させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メカニカルリレー本体を収容し、負圧源及びエバポレータと個別に連通されるリレー筐体と、
前記負圧源と前記リレー筐体とを連通する第1連通管に配置されるバルブと、
バルブ制御部と、を備え、
前記バルブ制御部は、
常態で前記バルブを閉止させ、
前記負圧源が負圧を発生させ、かつ、前記エバポレータの出口が所定値以下の湿度の場合に、前記バルブを開放させる、
ことを特徴とする車両のリレー除湿装置。
【請求項2】
前記負圧源はサージタンクである、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両のリレー除湿装置。
【請求項3】
前記バルブ制御部は、エンジンが動作中であり、かつ、アクセル操作部が操作されていない場合に、前記負圧源が負圧を発生させると判定する、
ことを特徴とする請求項2に記載の車両のリレー除湿装置。
【請求項4】
前記エバポレータと前記リレー筐体とを連通する第2連通管に配置され、当該第2連通管内の流れを前記エバポレータの出口から前記リレー筐体内への一方向のみに保つ逆止弁を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両のリレー除湿装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されたメカニカルリレーの内部を除湿する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるメカニカルリレーでは、コイルに含まれる水分が次第に蒸発するなどしてリレー筐体内の湿度が上昇する。リレー筐体内の湿度が上昇すると、低温環境下において接点が結露して氷結する場合がある。接点が氷結すると、接点の接触が阻害されて導通不良が発生し得る。
【0003】
そこで、特許文献1に記載の技術では、コイルの励磁電流を高くすることにより、コイルに含まれる水分を蒸発させてリレー筐体の内圧を上昇させ、リレー筐体内の湿度の高い空気を貫通孔から外へ放出させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-30738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術は、コイルに含まれる水分が減ってくると有効に機能しなくなる。また、リレー筐体に貫通孔を設けているため、むしろ貫通孔から湿り空気が流入するおそれがある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、メカニカルリレーの接点の氷結を好適に抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一実施の形態は、
車両のリレー除湿装置であって、
メカニカルリレー本体を収容し、負圧源及びエバポレータと個別に連通されるリレー筐体と、
前記負圧源と前記リレー筐体とを連通する連通管に配置されるバルブと、
バルブ制御部と、を備え、
前記バルブ制御部は、
常態で前記バルブを閉止させ、
前記負圧源が負圧を発生させ、かつ、前記エバポレータの出口が所定値以下の湿度の場合に、前記バルブを開放させる、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、メカニカルリレーの接点の氷結を好適に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係るリレー除湿装置を備える車両の概略構成を示すブロック図である。
図2】実施形態に係るリレー除湿装置の動作の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、本実施形態に係るリレー除湿装置1を備える車両100の概略構成を示すブロック図である。
本実施形態に係るリレー除湿装置1は、車両100に搭載されてメカニカルリレー20の内部を除湿するものである。
【0012】
メカニカルリレー20は、メカニカルリレー本体21と、メカニカルリレー本体21を収容するリレー筐体22とを備える。
メカニカルリレー本体21では、コイル211が通電されて磁石化した鉄芯212が接極子213を引き寄せることにより、2つの接点214が接触する。これにより、2つの接点214に接続された図示しない電気機器等が動作する。
【0013】
リレー筐体22は、例えばエポキシ樹脂又はPBT樹脂等で形成され、内部のメカニカルリレー本体21を所定の密封度で密封している。リレー筐体22は、サージタンク30及びエバポレータ40と個別に連通されている。具体的には、リレー筐体22とサージタンク30とが第1連通管31を介して連通され、リレー筐体22とエバポレータ40の出口40bとが第2連通管41を介して連通されている。
サージタンク30は、内燃機関であるエンジン35のインテークマニホールドに設けられ、気筒側へ流れる吸気を一時的に溜める容器状の部分である。
エバポレータ40は、車両100の車室内の空気を冷却及び/又は除湿する機器である。より詳しくは、エバポレータ40では、ファン40aにより送風される車室内の空気が冷媒との熱交換によって冷却され、その際に生じる凝縮水が外部に排出される。そのため、エバポレータ40の動作時には、当該エバポレータ40の出口40bからは除湿された乾燥空気が送出される。
【0014】
第1連通管31には、ソレノイドバルブ32が配置されている。
ソレノイドバルブ32は、本発明に係るバルブの一例であり、本実施形態では第1連通管31とリレー筐体22との連通部分に配置されて当該連通部分を開閉する。ソレノイドバルブ32の開閉動作は、エンジン35の電子制御を行うECU(Electronic Control Unit)50によって制御される。ソレノイドバルブ32は、ECU50によって開放されていない常態において、閉状態となっている。リレー除湿装置1は、少なくともリレー筐体22と、ソレノイドバルブ32と、ECU50を含む。
【0015】
第2連通管41には、逆止弁42と湿度センサ43が配置されている。
逆止弁42は、第2連通管41内の流れを、エバポレータ40出口からリレー筐体22内への一方向のみに保ち、その逆流を抑制する。逆止弁42は、本実施形態では、第1連通管31とリレー筐体22との連通部分に配置され、常態においてリレー筐体22内と外部との圧力差が一定に保たれるように構成されている。つまり、常態におけるリレー筐体22内の圧力は、逆止弁42を通じて略一定に保持される。ただし、逆止弁42の位置は、エバポレータ40出口とリレー筐体22内とを連通する部分のどこかであれば特に限定されない。
湿度センサ43は、エバポレータ40の出口40bの湿度を計測し、計測した湿度値をECU50に出力する。なお、湿度センサ43は、エバポレータ40の出口40bの湿度を計測できればその位置は特に限定されず、第2連通管41に配置されてもよいし、エバポレータ40に配置されてもよい。
【0016】
続いて、リレー除湿装置1の動作について説明する。
図2は、リレー除湿装置1の動作の流れを示すフローチャートである。
なお、上述のとおり、常態においてソレノイドバルブ32は閉止されており、第1連通管31内は閉塞されているものとする。
【0017】
図2に示すように、まずECU50は、エンジン35が動作中か否かを判定し(ステップS1)、動作中でないと判定した場合(ステップS1;No)、後述のステップS5へ処理を移行する。
【0018】
一方、ステップS1において、エンジン35が動作中であると判定した場合(ステップS1;Yes)、ECU50は、アクセル操作部36が操作されていないか否か、すなわちアクセル開度が閉であるか否かを判定する(ステップS2)。
そして、ステップS2において、アクセル操作部36が操作されている(アクセルON)と判定した場合(ステップS2;No)、ECU50は、後述のステップS5へ処理を移行する。
【0019】
一方、ステップS2において、アクセル操作部36が操作されていない(アクセルOFF)と判定した場合(ステップS2;Yes)、ECU50は、湿度センサ43の出力値に基づいて、エバポレータ40の出口40bの湿度が所定の閾値以下であるか否かを判定する(ステップS3)。
ここで、「所定の閾値」の湿度とは、例えば、リレー筐体22内が当該閾値の湿度雰囲気であったときに、リレー筐体22内が所定の低温まで冷却された場合でも結露が生じない湿度条件である。
【0020】
ステップS3において、エバポレータ40の出口40bの湿度が所定の閾値以下であると判定した場合(ステップS3;Yes)、ECU50は、ソレノイドバルブ32を開放する(ステップS4)。
つまり、ステップS1~S3の条件が全て満足された場合(エンジン35が駆動中であってアクセル操作部36が操作されており、かつ、エバポレータ40の出口40bが所定の閾値以下の湿度であった場合)、ソレノイドバルブ32が開かれる。
【0021】
これにより、サージタンク30がリレー筐体22内を介してエバポレータ40の出口40bと連通する。このときには、エンジン35が駆動中であってアクセル操作部36が操作されていないため、サージタンク30内は大気圧より低い負圧となっている。そのため、リレー筐体22内がエバポレータ40の出口40bの乾燥空気によって掃気され、リレー筐体22内が乾燥空気で満たされる。掃気された空気は、サージタンク30を通じてエンジン35で燃焼される。
【0022】
一方、ステップS3において、エバポレータ40の出口40bの湿度が所定の閾値以下でないと判定した場合(ステップS3;No)、ECU50は、ソレノイドバルブ32を閉止する(ステップS5)。つまり、ステップS1~S3の条件のうちいずれか1つでも満足されない場合、ソレノイドバルブ32が閉じられる。すでにソレノイドバルブ32が閉じていた場合、その閉状態が保持される。
なお、ステップS1~S3の判定の順序は特に限定されない。
【0023】
次に、ECU50は、リレー除湿装置1の動作制御を終了させるか否かを判定し(ステップS6)、終了させないと判定した場合には(ステップS6;No)、上述のステップS1へ処理を移行する。
そして、例えばエンジン35の動作停止等により、リレー除湿装置1の動作制御を終了させると判定した場合には(ステップS6;Yes)、ECU50は、リレー除湿装置1の動作制御を終了させる。
【0024】
以上のように、本実施形態によれば、リレー筐体22がサージタンク30及びエバポレータ40と個別に連通され、サージタンク30とリレー筐体22とを連通する第1連通管31にソレノイドバルブ32が配置されている。このソレノイドバルブ32は、常態で閉止されるとともに、サージタンク30が負圧を発生させ、かつ、エバポレータ40の出口40bの湿度が所定の閾値以下の場合に開放される。
そのため、ソレノイドバルブ32の開放によって、サージタンク30内の負圧でリレー筐体22内の空気が吸引され、エバポレータ40の出口40bの乾燥空気でリレー筐体22内が掃気される。これにより、リレー筐体22内が乾燥空気で満たされるため、リレー筐体22内の結露の発生を抑制できる。したがって、メカニカルリレー20の接点214の氷結を好適に抑制できる。
【0025】
また、本実施形態によれば、エンジン35とエバポレータ40の動作に伴って、リレー筐体22内が乾燥空気で定期的に掃気される。そのため、特に長期的な使用の場合に、透湿等によるリレー筐体22内の湿度上昇が懸念されるところ、このようなリレー筐体22内の湿度上昇も好適に抑制できる。
【0026】
また、本実施形態によれば、エンジン35が動作中であり、かつ、アクセル操作部36が操作されていない場合に、サージタンク30が負圧を発生させると判定される。
これにより、サージタンク30を負圧源として好適に利用できる。
【0027】
また、本実施形態によれば、エバポレータ40とリレー筐体22とを連通する第2連通管41に逆止弁42が配置され、当該逆止弁42により、第2連通管内41の流れがエバポレータ40の出口40bからリレー筐体22内への一方向のみに保たれる。
これにより、リレー筐体22からエバポレータ40の出口40bへの空気の逆流を抑制できる。
【0028】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限られない。
例えば、上記実施形態では、本発明に係る負圧源の一例としてサージタンクを挙げて説明した。しかし、本発明に係る負圧源は、負圧を発生されるものであればサージタンクに限定されず、例えばラジエータ用の冷却ファン等であってもよい。この場合、冷却ファンが負圧を発生させる条件(上記ステップS1、S2に対応する条件)は、冷却ファンが駆動中であるか否かとなる。
【0029】
また、上記実施形態では、本発明に係るバルブ制御部の一例として、エンジン35の電子制御を行うECU35を挙げて説明した。しかし、本発明に係るバルブ制御部は、当該ECU35とは別体の制御部であってもよい。
【0030】
また、上記実施形態では、メカニカルリレー20が1つの場合について説明したが、メカニカルリレー20の数量は特に限定されない。メカニカルリレー20が複数の場合、当該複数のメカニカルリレー20は、個別にサージタンク(負圧源)及びエバポレータと連通されるとともに、個別に動作制御される。
その他、上記実施形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 リレー除湿装置
20 メカニカルリレー
21 メカニカルリレー本体
22 リレー筐体
30 サージタンク(負圧源)
31 第1連通管
32 ソレノイドバルブ(バルブ)
35 エンジン
36 アクセル操作部
40 エバポレータ
40b 出口
41 第2連通管
42 逆止弁
43 湿度センサ
50 ECU(バルブ制御部)
100 車両
図1
図2