(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047814
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】船舶
(51)【国際特許分類】
B63B 27/14 20060101AFI20240401BHJP
B63B 11/04 20060101ALI20240401BHJP
B63B 27/24 20060101ALI20240401BHJP
B63B 25/00 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
B63B27/14 101B
B63B11/04 B
B63B27/24 E
B63B25/00 102A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153512
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】521511542
【氏名又は名称】三菱重工マリタイムシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】澤田 俊紀
(57)【要約】
【課題】構造の複雑化を回避しつつ、ランプウェイを適切に接地することができる船舶を提供する。
【解決手段】一対の舷側11を有する船体10と、船体10上に設けられ、舷側11よりも船幅方向中央側に位置し、船幅方向外側かつ船首尾方向の斜め方向に開口する車両乗込口46を有する上部構造物30と、上部構造物30内に設けられて、車両乗込口46につながる車両甲板70と、車両乗込口46から車両乗込口46の開口方向である斜め方向に延びて船首尾方向中央付近で岸壁Qに接地される架橋位置と、車両乗込口46に沿って配置されることで車両乗込口46を外部から閉塞する格納位置と、の間で変位可能に設けられたランプウェイ80と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の舷側を有する船体と、
前記船体上に設けられ、前記舷側よりも船幅方向中央側に位置し、船幅方向外側かつ船首尾方向の斜め方向に開口する車両乗込口を有する上部構造物と、
前記上部構造物内に設けられて、前記車両乗込口につながる車両甲板と、
前記車両乗込口から前記車両乗込口の開口方向である斜め方向に延びて船首尾方向中央付近で岸壁に接地される架橋位置と、前記車両乗込口に沿って配置されることで前記車両乗込口を外部から閉塞する格納位置と、の間で変位可能に設けられたランプウェイと、
を備える船舶。
【請求項2】
前記車両乗込口は、前記船体の船首尾方向中央よりも船首側又は船尾側に位置しているとともに、
前記船幅方向外側、かつ、船首尾方向中央側の斜め方向に開口している請求項1に記載の船舶。
【請求項3】
前記上部構造物は、船首尾方向の一部が船幅方向中央側に凹むようにして形成されたくびれ部を有し、
前記車両乗込口は、前記くびれ部を形成する外壁面に開口している請求項2に記載の船舶。
【請求項4】
前記船体上における前記車両乗込口より船首尾方向中央側に、洋上作業設備をさらに備える請求項2に記載の船舶。
【請求項5】
前記船体内の前記車両甲板よりも下方に設けられ、他船に給油可能な燃料が貯留された給油タンクをさらに備え、
前記洋上作業設備は、前記船体から上方に向かって延びるとともに前記他船に給油可能な給油マストをさらに備える請求項4に記載の船舶。
【請求項6】
前記上部構造物の内側に設けられて、前記車両乗込口に接するとともに前記車両甲板よりも下方に位置する車両乗込甲板と、
前記上部構造物の内側に設けられて、前記車両乗込甲板と前記車両甲板とを接続するように傾斜して延びる接続スロープと、
をさらに備える請求項1に記載の船舶。
【請求項7】
前記ランプウェイは、前記格納位置において、下方から上方に向かうに従って船幅方向中央側に向かって傾斜して延びている請求項1から6のいずれか一項に記載の船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶における荷役作業の効率化及び省人化のため、船舶と岸壁とを架橋するランプウェイによって貨物を積んだ車両がそのまま乗降可能なロールオン・ロールオフ方式による荷役方法が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、ランプウェイを構成するスロープが舷側に設けられ、航行時にはスロープが舷側に密着するように格納される船舶の構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の船舶では、舷側にランプウェイが設けられているため、ランプウェイの格納位置での海水の侵入を防止する水密又は風雨密構造を有する転回部が必要となる。そのため、船舶の構造が複雑化するという課題があった。
また、船尾に備えたランプウェイを船の長さより岸壁の長さが短い岸壁に架橋しようとすればランプウェイの架橋長さが不用意に長くなってしまう他、適切な接地が困難となるという課題があった。
【0006】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、構造の複雑化を回避しつつ、ランプウェイを適切に接地することができる船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係る船舶は、一対の舷側を有する船体と、前記船体上に設けられ、前記舷側よりも船幅方向中央側に位置し、船幅方向外側かつ船首尾方向の斜め方向に開口する車両乗込口を有する上部構造物と、前記上部構造物内に設けられて、前記車両乗込口につながる車両甲板と、前記車両乗込口に沿って配置されることで前記車両乗込口を外部から閉塞する格納位置と、前記車両乗込口から前記車両乗込口の開口方向である斜め方向に延びて船首尾方向中央付近で岸壁に接地される架橋位置と、の間で変位可能に設けられたランプウェイと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、構造の複雑化を回避しつつ、船の全長より岸壁の長さが短い場合でもランプウェイを適切に接地することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施形態に係る船舶の側面図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る船舶の平面図である。
【
図3】本開示の実施形態に係る船舶における上部構造物及びランプウェイ付近の水平断面図である。
【
図4】本開示の実施形態に係る船舶の側面図の一部拡大図であって、架橋位置とされたランプウェイを示す図である。
【
図5】本開示の実施形態に係る船舶の側面図の一部拡大図であって、格納位置とされたランプウェイを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態に係る船舶1について、
図1から5を参照して説明する。本実施形態に係る船舶1は、貨物を積んだ車両がそのまま乗降可能とされ、かつ、洋上で他船に対して給油することが可能とされた船舶1である。
【0011】
図1に示すように、船舶1は、船体10、上甲板20、上部構造物30、洋上作業設備としての給油マスト50、給油タンク51、車両甲板70、車両乗込甲板60、接続スロープ75、及びランプウェイ80を備えている。
【0012】
<船体>
図1及び
図2に示すように、船体10は、左右一対の舷側11及び船底12を有しており、船舶1の外殻を構成している。各舷側11は、舷側外板から構成されている。船底12は、これら左右の舷側同士を船高さ方向下方(以下、単に下方と称する。)の端部で接続する船底12外板から構成されている。船体10の船尾には、プロペラ15及び舵16が設けられている。
【0013】
<上甲板>
上甲板20は、船底12よりも船高さ方向上方(以下、単に上方と称する。)で左右一対の舷側11を接続している。上甲板20は、一対の舷側11の上端にわたって水平方向に延びている。上甲板20は、船首から船尾にわたって延びる全通甲板としての暴露甲板である。上甲板20は、乾舷甲板以上の船高さ位置に設けられている。即ち、上甲板20自体が乾舷甲板とされていてもよいし、船体10内に設けられた乾舷甲板よりも上甲板20が上方に位置している構成であってもよい。
【0014】
<上部構造物>
上部構造物30は、船体10の上甲板20から上方に突出するように設けられている。即ち、上部構造物30は船体10の舷側11よりも上方に位置している。上部構造物30は、船首及び船尾よりも船首尾方向中央側にこれら船首及び船尾から離間して設けられている。
本実施形態の上部構造物30は、船首側から船尾側に向かって順次設けられた船首側構造物31、中央構造物32及び船尾側構造物40によって構成されている。
【0015】
<船首側構造物>
船首側構造物31は、上部構造物30における最も船首側の部分を構成している。船首側構造物31内には、船舶1を操縦するための操縦室等が設けられている。該操縦室は、船舶1の前方を高所から見渡せるように構成されている。そのため、船首側構造物31は上部構造物30のうち最も高い構造物とされている。
【0016】
<中央構造物>
中央構造物32は、船首側構造物31の船尾側の端部に接続されている。中央構造物32は、船体10の船首尾方向中央を船首尾方向にまたがるように延びている。中央構造物32の高さは船首側構造物31よりも低い。中央構造物32は、一対の中央側壁33、中央天井壁34及び一対の角壁35を有しており、内側にはこれら壁によって区画された空間が形成されている。
【0017】
中央側壁33は、左右一対設けられており、それぞれ船高さ方向及び船首尾方向に延びている。天井壁は、中央構造物32の天井を形成するように水平方向に延びている。中央天井壁34は、一対の中央側壁33を互いに接続している。中央天井壁34の船首側の端部は船首側構造物31に接続されている。
【0018】
一対の角壁35は、中央構造物32の船尾側の端部の左右の角部を斜めに切り欠いて形成された形状をなしている。角壁35は、上下方向に延びているとともに、船尾側に向かうに従って船幅方向中央に向かう斜め方向に延びている。
【0019】
<船尾側構造物>
船尾側構造物40は、上部構造物30における最も船尾側の部分を構成している。船尾側構造物40は中央構造物32の船尾側の端部に接続されている。船尾側構造物40の高さは、船首側構造物31の高さより低く、中央構造物32の高さより高い。
【0020】
船尾側構造物40は、一対の船尾側側壁41、後方壁42、前方壁43、船尾側天井壁44及び斜壁45を有している。船尾側構造物40の内側にはこれら壁によって区画された空間が形成されている。船尾側構造物40内の空間と中央構造物32内の区間とは、これら船尾側構造物40と中央構造物32との接続箇所で船首尾方向に互いに連通している。
【0021】
一対の船尾側側壁41は、左右一対設けられており、それぞれ船高さ方向及び船首尾方向に延びている。一対の船尾側側壁41は、上甲板20から上方に向かうに従って船幅方向中央に向かうように傾斜して配置されている。
後方壁42は、船高さ方向及び船幅方向に延びており、一対の船尾側側壁41同士を船高さ方向にわたって接続している。後方壁42は上方に向かうに従って船首側に向かうように傾斜して延びている。
【0022】
前方壁43は、船高さ方向及び船幅方向に延びており、船尾側構造物40の船首側の部分を構成する。前方壁43には中央構造物32の船尾側の端部、即ち、中央側壁33と中央天井壁34の船尾側の端部が接続されている。前方壁43の下方に、上記の船尾側構造物40内の空間と中央構造物32内の空間との連通箇所が形成されている。
船尾側天井壁44は、船尾側構造物40の天井を形成するように水平方向に延びている。船尾側天井壁44は、船尾側構造物40の各壁の上端同士を互いに接続している。
【0023】
<斜壁>
斜壁45は、船幅方向に離間して左右一対が設けられている。各斜壁45は、それぞれが左右で対応する船尾側側壁41と前方壁43との間に設けられている。各斜壁45の船尾側の端部は左右で対応する船尾側側壁41の船首側の端部に上下にわたって接続されている。各斜壁45の船首側の端部は、前方壁43の船幅方向の端部及び中央構造物32の角壁35の船尾側の端部にそれぞれ接続されている。各斜壁45は、船尾側から船首側に向かうにしたがって、即ち、船尾側側壁41から前方壁43に向かうに従って、船幅方向内側に向かって斜めに延びている。
【0024】
各斜壁45は、上方に向かうに従って船幅方向中央側かつ船尾側に向かって傾斜して延びている。斜壁45の外壁面は、船幅方向外側に向かうに従って船首尾方向中央側に向かう斜め方向を向いており、さらに、わずかに上方を向いている。
斜壁45は、船尾側構造物40の各船尾側側壁41と前方壁43との間の部分を平面状に面取りして形成されたような形状をなしている。これに応じて、船尾側天井壁44も船首側の船幅方向両側の角部が切り欠かれたような形状をなしている。
【0025】
<くびれ部>
中央構造物32に角壁35が設けられているとともに船尾側構造物40に斜壁45が設けられていることで、上部構造物30における中央構造物32と船尾側構造物40との間には、くびれ部Cが形成されている。即ち、くびれ部Cは、上部構造物30の船首尾方向の一部が船幅方向外側から船幅方向中央側に凹むようにして形成された凹部である。くびれ部Cは、斜壁45と角壁35との接続箇所で上下に延びる谷底線を形成するように船高さ方向にわたって延びており、平面視では上記谷底線を頂部とする三角形状をなしている。上甲板20はこのくびれ部Cの形状に従って、中央構造物32と船尾側構造物40との間の部分が他の箇所よりも広く外部に露出している。
【0026】
<車両乗込口>
一対の斜壁45のうちの一方の斜壁45(本実施形態では右舷側の斜壁45)には、船尾側構造物40の内外を連通させるように車両乗込口46が形成されている。これにより、車両乗込口46は船尾よりも船首側の船首尾方向中央に近接した領域(中央近接領域)に設けられている。車両乗込口46は、斜壁45の下部に形成されている。車両乗込口46は、船尾側構造物40の内部から見て、船幅方向外側に向かうに従って船首尾方向に向かう斜め方向に開口しており、特に本実施形態では、船幅方向外側に向かうに従って船首尾方向中央側に向かう斜め方向に開口している。車両乗込口46の開口方向は、例えば平面視で船首尾方向に対して30~60°傾いた方向であり、好ましくは40~50°傾いた方向であって、より好ましくは45°傾いた方向である。
【0027】
車両乗込口46は、斜壁45の下辺、上辺及び一対の側辺に沿う矩形状をなしている。車両乗込口46の下端は、上甲板20よりも上方に位置している。車両乗込口46の幅及び高さは、一般車両や大型車両等の各種車両が通過可能なサイズとされている。
車両乗込口46は、斜壁45に設けられているため、上甲板20よりも上方で舷側11よりも船幅方向中央側に位置している。
【0028】
<給油マスト50(洋上作業設備)>
給油マスト50は、船体10上における車両乗込口46より船首尾方向中央側(本実施形態では船首側)に設けられている。給油マスト50は、中央構造物32の中央天井壁34からさらに上方に向かって延びる柱状をなしており、船首尾方向に離間して一対が設けられている。
【0029】
<給油タンク>
給油タンク51は、船体10内における中央構造物32の下方の領域に設けられている。給油タンク51には、他船に給油するための燃料が貯留されている。船舶1には、給油タンク51から給油マスト50の上部にわたって延びる給油ライン(図示省略)が設けられている。これら給油ラインにおける給油マスト50側の端部に給油ホースを接続することにより、該給油ホースを介した他船への燃料供給が可能とされている。
【0030】
<車両甲板>
図1及び
図3に示すように、車両甲板70は、各種車両が搭載される甲板であって、上部構造物30内に水平方向に延びるように設けられている。車両甲板70は上甲板20よりも上方、かつ、車両乗込口46の下端よりも上方に設けられている。車両甲板70は、車両乗込口46の下端よりも上方に位置している。本実施形態では、車両甲板70として、船首側車両甲板71及び船尾側車両甲板72を有している。船首側車両甲板71は、中央構造物32内の空間内に船首尾方向全域にわたって設けられている。船尾側車両甲板72は、船尾側構造物40内の空間内における船首側の一部領域を除く船尾側の領域に設けられている。
【0031】
<車両乗込甲板>
車両乗込甲板60は、車両が車両乗込口46から直接的に乗り込むことができる甲板である。車両乗込甲板60は船尾側構造物40内の空間における車両乗込口46に接する船尾側の領域に設けられている。車両乗込甲板60は、上部構造物30内に水平方向に延びるように設けられている。車両乗込甲板60の船高さ位置は、車両乗込口46の下端の高さと同一とされている。車両乗込甲板60は、上甲板20より上方に位置しており、車両甲板70より下方に位置している。
【0032】
<接続スロープ>
接続スロープ75は、上部構造物30の内側で船高さ方向位置が互いに異なる車両乗込甲板60と車両甲板70とを接続するための傾斜通路である。即ち、接続スロープ75は、一端が車両乗込甲板60に接続され、一端から他端に向かうに従って上方に向かって延び、他端が車両甲板70に接続されている。本実施形態では、船尾側車両甲板72と車両乗込甲板60との接続及び船首側車両甲板71と車両乗込甲板60との接続のために二つの接続スロープ75が設けられている。
【0033】
<ランプウェイ>
ランプウェイ80は、岸壁Qから船舶1への車両の乗込を可能とする可動式の通路である。ランプウェイ80は、第一スロープ81及び第二スロープ82を有している。
【0034】
図4及び
図5に示すように、第一スロープ81は矩形板状をなす部材であって、矩形状の短辺を構成する長手方向の一端が、車両乗込口46の下端に沿う第一軸線O1回りに回動可能に連結されている。
第二スロープ82は第一スロープ81同様に矩形板状をなす部材であって、矩形状の短辺を構成する長手方向の一端が第一スロープ81の長手方向の他端に、第一軸線O1と平行な第二軸線O2回りに回動可能に連結されている。
【0035】
ランプウェイ80は、架橋位置と格納位置との間で変位可能な構成とされている。
架橋位置は、
図4に示すように、第一スロープ81及び第二スロープ82が車両乗込口46の開口方向である斜め方向(船幅方向外側かつ船首尾方向)に延びて第二スロープ82の他端が岸壁Qに接地される状態である。これにより、ランプウェイ80が車両乗込口46と岸壁Qとを橋渡しした状態となり、ランプウェイ80を介しての船舶1への車両の乗下船が可能となる。
【0036】
格納位置は、
図5に示すように、第一スロープ81と第二スロープ82とが重なるように折りたたまれて、斜壁45に沿って配置された位置である。即ち、架橋位置から第二スロープ82が第一スロープ81に対して第二軸線O2回りに山折り状に回動されることで第一スロープ81と第二スロープ82とが重ねられた状態となる。このように第二軸線O2回りの回動と同時に第一スロープ81を第一軸線O1回りに斜壁45に対して谷折り状に回動することで、第一スロープ81及び第二スロープ82からなるランプウェイ80を斜壁45に重ねられた格納位置となる。このような格納位置のランプウェイ80は、斜壁45と一体となることにより、上方に向かうに従って船幅方向中央側かつ船尾側に向かって傾斜して延びている。また、ランプウェイ80を格納位置とすることにより、車両乗込口46はランプウェイ80によって外側から閉塞された状態となる。
【0037】
ここで
図2に示すように、架橋位置とされたランプウェイ80は、上部構造物30に干渉していない。即ち、中央構造物32の船尾側の端部の船幅方向両端が切り欠かれた形状をなしていることにより、架橋位置のランプウェイ80と中央構造物32との干渉が避けられている。また、ランプウェイ80を架橋位置と格納位置との間で変位させる際の可動域には構造物は設けられておらず、ランプウェイ80の変位が妨げられない。即ち、上部構造物30にくびれ部Cが形成されていることで、ランプウェイ80の可動域は他の構造物に侵食されない。
【0038】
<作用効果>
上記構成の船舶1では、
図2に示すように船舶1の船首尾方向を岸壁Qの長手方向に揃えた状態で車両の乗下船が行われる即ち、車両の乗船を行う際には、船舶1が岸壁Qに接岸した状態で、ランプウェイ80が架橋位置に変位されることで当該ランプウェイ80が岸壁Q上に接地される。ランプウェイ80の接地の際には、車両乗込口46に対する第一スロープ81の第一軸線O1回りの回動角度、及び第一スロープ81に対する第二スロープ82の第二軸線O2回りの回動角度が適宜調整される。これにより、各スロープの傾斜角を車両の最大登坂許容角度以下とした状態での接地を潮位にかかわらず行うことができる。
【0039】
そして、車両は岸壁Qからランプウェイ80を経由して、車両乗込口46を介して車両乗込甲板60に至り、その後、接続スロープ75を介して車両甲板70上に移動する。これにより、車両甲板70上に車両が搭載される。車両が下船する際には乗船の逆のルートで車両が岸壁Qに至ることとなる。また、船舶1が航行する際にはランプウェイ80は架橋位置から格納位置に変位され、これにより車両乗込口46が閉塞される。
【0040】
本実施形態の船舶1によれば、車両乗込口46が船体10上の舷側11よりも上方の乾舷甲板以上の船高さ位置、かつ、船幅方向中央側に設けられている。そのため、車両乗込口46が海水に浸漬されることはなく、即ち、海水に直接的にさらされることはない。したがって、ランプウェイ80を格納位置として車両乗込口46を閉塞した際に、車両乗込口46からの海水の侵入を回避するための水密構造を設ける必要がない。
【0041】
仮に格納位置のランプウェイ80が舷側11にある場合には、舷側11同様、ランプウェイ80も当然に海水に浸漬し、又は波によって海水にさらされる。この場合、ランプウェイ80の周囲からの海水の侵入を避けるためにランプウェイ80周囲に水密構造を設ける必要がある。車両が乗降するランプウェイ80の体格上、水密構造もまた大型かつ複雑なものとなってしまう。
これに対して本実施形態では、このような水密構造を設ける必要がないため、ランプウェイ80接地に伴う構造の複雑化を回避することができる。
【0042】
ここで一般にランプウェイ80の長さが長い程、ランプウェイ80の岸壁Qに対する傾斜角度を小さくすることができ、即ち、車両の最大登坂許容角度以下の傾斜角度での岸壁Qへの設置が可能となる。しかしながら、ランプウェイ80の長さが長くなると、特に岸壁Qの奥行きが短い場合には、船舶1を接岸しながらのランプウェイ80の設置が困難となってしまう。
【0043】
この点、本実施形態では、ランプウェイ80が車両乗込口46から船幅方向外側かつ船首尾方向の斜め方向に延びて岸壁Qに架橋される。そのため、車両乗込口46から接地箇所までのランプウェイ80の全長を確保しながら、ランプウェイ80の船幅方向への張り出し長さを抑えることができる。これにより、奥行きの短い岸壁Qに対しても車両の最大登坂許容角度以下となるような適切に接地を行うことが可能となる。
【0044】
特に満潮時には車両乗込口46と岸壁Qとの船高さ方向の高低差が大きくなるため、ランプウェイ80の傾斜角度を車両の最大登坂許容角度以下とするためにはそれだけランプウェイ80の長全長を確保する必要がある。本実施形態ではこのような場合であっても上述の通り斜め方向にランプウェイ80を延ばすことにより、ランプウェイ80の全長を確保しながらランプウェイ80の船幅方向外側への張り出しを抑えることができる。
【0045】
また、本実施形態のランプウェイ80は直線状に斜め方向に延びており直角や曲線状のカーブが存在せず、即ち、ランプウェイ80に車両の進行方向を変えるための転回部が存在しない。よって、ランプウェイ80の構造の複雑化を回避することができる。さらに、例えば大型トラック等の大型車両がランプウェイ80上で旋回する場合を考慮する必要がない。よって、ランプウェイ80の全長を有効に使用して傾斜角度を抑えた接地を行うことが可能となる。
【0046】
さらに、ランプウェイ80が船幅方向に大きく張り出せば船首尾方向回りのヒーリングモーメントが発生し復原力が低下してしまうが、本実施形態ではランプウェイ80の張り出し量を抑えることができるため、船舶1の復原性を確保することができる。
【0047】
ここで、接岸長さの短い岸壁Qに船舶1を接岸する場合、船首及び船尾が岸壁Qよりもはみ出すことになる。この場合、ランプウェイ80を岸壁Qに接地することが困難となる。
【0048】
これに対して本実施形態では車両乗込口46が船首尾方向中央よりも船尾側にやや偏った中央近接領域に配置されていながら、車両乗込口46の開口方向及びランプウェイ80の延在方向は船幅方向外側かつ船首尾方向中央側とされている。そのため、ランプウェイ80の岸壁Qへの接地箇所は、船首尾方向中央付近となる。ここで、船首尾方向中央付近とは、車両乗込口46よりもさらに船首尾方向中央に近接した位置である。そのため、岸壁Q長さが短い場合であっても、車両の乗下船を適切に行うことが可能となる。
【0049】
また、不用意に斜め方向に開口する車両乗込口46を設け、さらにこれに対応してランプウェイ80の可動域を確保しようすれば、上部構造物30や船体10の一部を大きく削る必要が生じてしまう場合がある。この点、上部構造物30の船首尾方向の一部のみに最小限のくびれ部Cを設け、当該くびれ部Cを形成する外壁面に車両乗込口46を形成したため、ランプウェイ80の可動域を確保しつつ、上部構造物30の容積を確保することができる。
【0050】
さらに、本実施形態ではランプウェイ80周囲の水密構造を必要としない分、ランプウェイ80周囲の構造の複雑化を避けることができる。そのため、ランプウェイ80の周囲に他船への油のための給油マスト50等の洋上作業設備がある場合であっても、当該洋上作業設備を用いた作業がランプウェイ80周辺機器によって妨げられることはない。
即ち、給油マスト50や給油ホース等とランプウェイ80の周辺機器との干渉を回避することができ、給油作業等の洋上作業を行うための十分なスペースを確保することが可能となる。
【0051】
また、本実施形態では、車両甲板70の下方に車両乗込口46に接続された車両乗込甲板60が設けられており、車両甲板70と車両乗込甲板60とは接続スロープ75で互いに接続されている。即ち、車両乗込口46を車両甲板70の高さに合わせることなく下方に位置させることができる。これにより、ランプウェイ80の船舶1への接続箇所も下方に位置することになる。そのため、ランプウェイ80の長さを過度に長くせずとも、ランプウェイ80を車両の最大登坂許容角度以下となるように適切に接地することが可能となる。さらに船尾側構造物40内での車両乗込甲板60から天井面までの高さを確保することができ、高さのある車両を船舶1内に進入させることが可能となる。
【0052】
さらに、格納位置のランプウェイ80は下方から上方に向かうに従って船幅方向中央側に向かって傾斜して延びた構成となる。そのため、船舶1の外形をコンパクトなものとすることができる。よって、例えば他船への給油作業等の洋上作業を行う際に格納状態のランプウェイ80が妨げになってしまうことはなく、洋上作業を円滑に行うことが可能となる。
【0053】
<その他の実施形態>
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0054】
例えば実施形態では右舷側にのみ車両乗込口46及びランプウェイ80を設けたが、右舷側に代えて左舷側に設けてもよいし、右舷側及び左舷側の双方に設けてもよい。
さらに、車両乗込口46及びランプウェイ80は、船尾側構造物40のみならず、中央構造物32や船首側構造物31に設けてもよい。即ち、車両乗込口46及びランプウェイ80は上部構造物30のいずれの箇所に設けてもよい。これに応じて、車両乗込甲板60及び車両甲板70の位置も上部構造物30内のいずれの位置に設けてもよい。
【0055】
また、実施形態では、車両乗込口46が船尾側に偏った位置に配置され、さらに車両乗込口46の開口方向が船幅方向外側、かつ、船首尾方向中央側(船首側)の斜め方向とした場合について説明したが、これに限定されることはない。
例えば、車両乗込口46が船首側に偏った船首側構造物31に設けられており、車両乗込口46の開口方向が船幅方向外側かつ船首尾方向中央側(船尾側)の斜め方向とされていてもよい。
即ち、車両乗込口46の開口方向が、船幅方向外側かつ船首尾方向中央側とされていればよく、当該開口方向に延びるようにランプウェイ80が架橋される構成であればよい。
【0056】
また、実施形態では車両乗込口46がくびれ部Cを形成する外壁面に開口した例について説明したがこれに限定されることはない。例えば、車両乗込口46が、上部構造物30の船首尾方向の端部における船幅方向いずれか一方の角部に設けられていてもよい。
なお、くびれ部Cは必ずしも右舷側及び左舷側の両方に設けられている必要はなく、右舷側及び左舷側のいずれか一方に設けられていてもよい。
【0057】
さらに、上記実施形態では、車両乗込口46を有する斜壁45が船尾側構造物40に設けられているが、これに限るものではない。例えば、船首側構造物31に設けられていてもよいし、中間構造物に設けられていてもよい。
【0058】
また、実施形態では洋上作業設備として他船に給油可能な給油マスト50を採用した場合に説明したが、これに限定されることはない。
例えば洋上作業設備として、捕鯨その他の漁獲を目的とした漁業設備を採用してもよいし、洋上構造物の建設設備、海洋調査に供される調査設備等、種々の設備を採用することができる。これらの場合であっても、ランプウェイ80が作業に干渉することはないため、各種作業を円滑に行うことができる。
なお、洋上作業設備は中間構造物に設けられている必要ななく、ランプウェイ80と互いに干渉しないその他の箇所に設けられていてもよい。
【0059】
さらに実施形態では、上部構造物30が、船首側構造物31、中間構造物及び船尾側構造物40の3つの構造物から構成された例について説明したが、上部構造物30の態様は問わない。上部構造物30が単一の構造物のみから構成されていてもよいし、4つ以上の複数の構造物から構成されていてもよい。
【0060】
また、実施形態では互いに高さの異なる車両甲板70及び車両乗込甲板60が設けられている例について説明したが、車両甲板70の高さを車両乗込口46の下端の高さと揃えることにより、車両乗込甲板60の設置を省略してもよい。
【0061】
さらに、実施形態ではランプウェイ80が第一スロープ81及び第二スロープ82の二つのスロープから構成された例について説明したが、ランプウェイ80は単一のスロープから構成されていてもよく、また3つ以上の複数のスロープから構成されていてもよい。
【0062】
また、ランプウェイ80としては種々の構成のものを採用することが可能である。例えば、車両乗込口46に沿う回動軸線の位置が船高さ方向にスライドする昇降式の構成であってもよい。また、複数のスロープから構成されている場合に、隣り合うスロープ同士を連結する回動軸線の船高さ方向位置を適宜調整可能な構成を採用してもよい。
【0063】
<その他の実施形態>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0064】
<付記>
各実施形態に記載の船舶1は、例えば以下のように把握される。
【0065】
(1)第1の態様に係る船舶1は、一対の舷側11を有する船体10と、前記船体10上に設けられ、前記舷側11よりも船幅方向中央側に位置し、船幅方向外側かつ船首尾方向の斜め方向に開口する車両乗込口46を有する上部構造物30と、前記上部構造物30内に設けられて、前記車両乗込口46につながる車両甲板70と、前記車両乗込口46に沿って配置されることで前記車両乗込口46を外部から閉塞する格納位置と、前記車両乗込口46から前記車両乗込口46の開口方向である斜め方向に延びて船首尾方向中央付近で岸壁Qに接地される架橋位置と、の間で変位可能に設けられたランプウェイ80と、を備える。
【0066】
上記構成によれば、車両乗込口46が舷側11より上方側、かつ、船幅方向中央に設けられており、格納位置のランプウェイ80は車両乗込口46に沿って配置される。そのため、ランプウェイ80の開閉構造に伴う水密構造を設ける必要がない。また、ランプウェイ80を斜め方向に延ばすことにより、ランプウェイ80上に車両の進行方向を変えるための転回部を設ける必要もない。これにより船舶1全体の構造の複雑化を回避することができる。
またランプウェイ80を岸壁Qの船首尾方向中央付近に接地することで、岸壁Qの長さが短い場合であってもランプウェイ80の長さを不用意に延長することなく、適切に接地することができる。
さらに、ランプウェイ80が斜め方向に延びて岸壁Qに架橋されるため、ランプウェイ80の全長を確保しながら船幅方向への突出長さを抑えることができる。そのため、奥行きの短い岸壁Qに対しても車両の最大登坂許容角度以下となるように適切に接地することができる。
【0067】
(2)第2の態様に係る船舶1は、(1)の船舶1であって、前記車両乗込口46は、前記船体10の船首尾方向中央よりも船首側又は船尾側に位置しているとともに、前記船幅方向外側、かつ、船首尾方向中央側の斜め方向に開口している。
【0068】
上記構成によれば、長さの短い岸壁Qに船舶1が接岸している場合であっても、船舶1と岸壁Qとの間にランプウェイ80をより適切に架橋することができる。
【0069】
(3)第3の態様に係る船舶1は、(2)の船舶1であって、前記上部構造物30は、船首尾方向の一部に外壁面が船幅方向中央側に凹むようにして形成されたくびれ部Cを有し、前記車両乗込口46は、前記くびれ部Cを形成する外壁面に開口している。
【0070】
これによって、上部構造物30を大きく浸食することなく上部構造物30の容積を確保しながら、斜めに開口する車両乗込口46を適切に形成することができ、さらにランプウェイ80の可動域も確保することができる。
【0071】
(4)第4の態様に係る船舶1は、(2)又は(3)の船舶1であって、前記船体10上における前記車両乗込口46より船首尾方向中央側に、洋上作業設備をさらに備える。
【0072】
上記構成によれば、ランプウェイ80の周辺構造を簡素化しながらランプウェイ80を斜め方向に延ばして架橋する構造としているため、洋上作業設備とランプウェイ80を構成する構造とが互いに干渉することを回避することができる。
【0073】
(5)第5の態様に係る船舶1は、(4)の船舶1であって、前記船体10内の前記車両甲板70よりも下方に設けられ、他船に給油可能な燃料が貯留された給油タンク51をさらに備え、前記洋上作業設備は、前記船体10から上方に向かって延びるとともに前記他船に給油可能な給油マスト50をさらに備える 。
【0074】
上記構成によれば、水密構造を取る必要がなく船舶1構造の複雑化を回避することができるため、ランプウェイ80の関連設備が給油作業の妨げとなってしまうことを回避することができる。
【0075】
(6)第6の態様に係る船舶1は、(1)から(5)のいずれかの船舶1であって、前記上部構造物30の内側に設けられて、前記車両乗込口46に接するとともに前記車両甲板70よりも下方に位置する車両乗込甲板60と、前記上部構造物30の内側に設けられて、前記車両乗込甲板60と前記車両甲板70とを接続するように傾斜して延びる接続スロープ75と、をさらに備える。
【0076】
車両甲板70の高さに合わせてランプウェイ80を設ければ、車両の最大登坂許容角度以下で接地するランプウェイ80の全長が長くなってしまう。これに対して、車両甲板70の下方にランプウェイ80に接続された車両乗込甲板60を設けることによって、車両甲板70の高さを確保しながらランプウェイ80の全長を短くすることができる。
【0077】
(7)第7の態様に係る船舶1は、(1)から(6)のいずれかの船舶1であって、前記ランプウェイ80は、前記格納位置において、下方から上方に向かうに従って船幅方向中央側に向かって傾斜して延びている。
【0078】
上記構成によれば、ランプウェイ80を格納位置とした船舶1の外形をコンパクトなものとすることができる。
【符号の説明】
【0079】
1…船舶 10…船体 11…舷側 12…船底 15…プロペラ 16…舵 20…上甲板 30…上部構造物 31…船首側構造物 32…中央構造物 33…中央側壁 34…中央天井壁 35…角壁 40…船尾側構造物 41…船尾側側壁 42…後方壁 43…前方壁 44…船尾側天井壁 45…斜壁 46…車両乗込口 50…給油マスト(洋上作業設備) 51…給油タンク 60…車両乗込甲板 70…車両甲板 71…船首側車両甲板 72…船尾側車両甲板 75…接続スロープ 80…ランプウェイ 81…第一スロープ 82…第二スロープ C…くびれ部 O1…第一軸線 O2…第二軸線 Q…岸壁