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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047817
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】異物検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/02 20060101AFI20240401BHJP
【FI】
G01N27/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153515
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】臼杵 司
(72)【発明者】
【氏名】石垣 将紀
(72)【発明者】
【氏名】石川 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】駒形 将吾
【テーマコード(参考)】
2G060
【Fターム(参考)】
2G060AA09
2G060AE40
2G060AF06
2G060EA06
2G060EB07
2G060HC15
2G060KA09
(57)【要約】
【課題】リチウムイオン電池等の検出対象物内の異物を非破壊かつ高精度で検出する。
【解決手段】計測器10と、測定対象物200と計測器10とを電気的に接続する伝送線路12とを備え、測定対象物200及び伝送線路12を含む電気回路のインピーダンスを計測器10によって測定し、測定されたインピーダンスの変化から測定対象物200内の異物を検出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測器と、測定対象物と前記計測器とを電気的に接続する伝送線路と、を備え、
前記測定対象物及び前記伝送線路を含む電気回路のインピーダンスを前記計測器によって測定し、測定された前記インピーダンスの変化から前記測定対象物内の異物を検出することを特徴とする異物検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の異物検出装置であって、
前記インピーダンスの変化は、前記電気回路の共振周波数又は共振のピーク値の変化から検出することを特徴とする異物検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の異物検出装置であって、
前記計測器と前記測定対象物との間にインピーダンス調整回路を設け、前記インピーダンス調整回路によって前記電気回路のインピーダンスを調整可能であることを特徴とする異物検出装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の異物検出装置であって、
前記インピーダンスの変化は、前記インピーダンスの実部成分及び虚部成分の測定値のばらつきが所定の精度閾値未満となる周波数帯域において検出することを特徴とする異物検出装置。
【請求項5】
請求項1に記載の異物検出装置であって、
前記伝送線路の電気長を変更することによって測定周波数を調整することを特徴とする異物検出装置。
【請求項6】
請求項5に記載の異物検出装置であって、
複数の前記伝送線路を切り替えることによって前記伝送線路の電気長を変更することを特徴とする異物検出装置。
【請求項7】
請求項5に記載の異物検出装置であって、
前記伝送線路の比誘電率及び比透磁率の少なくとも1つを変化させることで前記伝送線路の電気長を変更することを特徴とする異物検出装置。
【請求項8】
請求項1に記載の異物検出装置であって、
前記測定対象物は、リチウムイオン電池であることを特徴とする異物検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池等の異物検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
検査対象物の静電容量の微小な変化を高精度で検出するための静電容量型変位センサが開示されている(特許文献1)。測定対象物と対向するプローブ内に2つの電圧の周波数特性を急峻化させるRLC共振回路を採用し、RLC共振回路の共振周波数特性をそれぞれの共振点がわずかに異なるようにする。測定対象の容量成分が変化することに伴って共振周波数に変化が生じることで、特定周波数における共振電流の強度が変化することを利用して高い感度の静電容量検出を行う。
【0003】
また、複数の部材を組み合わせ構成される構造体の磁気を測定し、当該構造体の磁気の情報に基づいて構造体に含まれる金属異物を検出する異物検出技術が開示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-167143号公報
【特許文献2】特開2012-138318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
LC共振回路を用いた静電容量型変位センサでは、LC共振の共振周波数は容量成分や誘導成分といったインピーダンスの虚部成分によって変化することから、虚部成分の微小変化を検出するためには有効な手法である。しかしながら、当該技術は、インピーダンスの実部成分の変化には感度がない。検出対象物内の異物によってはインピーダンスの実部成分にも影響することもあり、虚部成分の微小変化を伴わず、実部成分の微小変化のみを示す異物の検出には適用できない。
【0006】
また、磁気情報に基づいて構造体に含まれる金属異物を検出する技術では、電池に対して着磁と適切な消磁の操作を行うことで磁性を有する異物検出することができる。しかしながら、電池に混入する異物としてはアルミニウムや銅といった非磁性の金属もあり、当該技術ではこれらの異物の検出は困難である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの態様は、計測器と、測定対象物と前記計測器とを電気的に接続する伝送線路と、を備え、前記測定対象物及び前記伝送線路を含む電気回路のインピーダンスを前記計測器によって測定し、測定された前記インピーダンスの変化から前記測定対象物内の異物を検出することを特徴とする異物検出装置である。
【0008】
ここで、前記インピーダンスの変化は、前記電気回路の共振周波数又は共振のピーク値の変化から検出することが好適である。
【0009】
また、前記計測器と前記測定対象物との間にインピーダンス調整回路を設け、前記インピーダンス調整回路によって前記電気回路のインピーダンスを調整可能であることが好適である。
【0010】
また、前記インピーダンスの変化は、前記インピーダンスの実部成分及び虚部成分の測定値のばらつきが所定の精度閾値未満となる周波数帯域において検出することが好適である。
【0011】
また、前記伝送線路の電気長を変更することによって測定周波数を調整することが好適である。例えば、複数の前記伝送線路を切り替えることによって前記伝送線路の電気長を変更することが好適である。例えば、前記伝送線路の比誘電率及び比透磁率の少なくとも1つを変化させることで前記伝送線路の電気長を変更することが好適である。
【0012】
また、前記測定対象物は、リチウムイオン電池であることが好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、リチウムイオン電池等の測定対象物内の異物がインピーダンスの実部成分のみに影響したり、非磁性であったりしても非破壊かつ高精度で検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態における異物検出装置の構成を示す図である。
図2】本発明の実施の形態における伝送線路の構成例を示す図である。
図3】本発明の実施の形態における伝送線路の構成例を示す図である。
図4】本発明の実施の形態における異物検出装置のシャントスルー接続モデルを示す図である。
図5】本発明の実施の形態における異物検出装置のSパラメータ行列表現を示す図である。
図6】測定対象物の負荷インピーダンスの実部成分の変化に対する共振周波数の変化の関係を示す図である。
図7】測定対象物の負荷インピーダンスの虚部成分の変化に対する共振周波数の変化の関係を示す図である。
図8】測定対象物の負荷インピーダンスの実部成分と虚部成分の比率に対する共振周波数の変化の関係を示す図である。
図9】本発明の実施の形態における異物検出装置の構成の別例を示す図である。
図10】本発明の実施の形態における異物検出装置の構成の別例を示す図である。
図11】本発明の実施の形態における異物検出装置の構成の別例を示す図である。
図12】本発明の実施の形態におけるインピーダンス調整回路を含む異物検出装置の構成を示す図である。
図13】本実施の形態におけるインピーダンス調整回路の構成を示す図である。
図14】本実施の形態における異物検出方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態における異物検出装置100は、図1に示すように、計測器10及び伝送線路12(12a,12b)を含んで構成される。異物検出装置100では、計測器10と測定対象物200とを伝送線路12によって電気的に接続した状態において測定対象物200内に存在する異物の検出を行う。
【0016】
計測器10は、測定対象物200について電力、電圧及び電流の少なくとも1つの反射及び透過が測定可能な計測装置である。計測器10は、例えばネットワークアナライザとすることができる。
【0017】
伝送線路12(12a,12b)は、計測器10と測定対象物200とを電気的に接続する電線である。伝送線路12は、図2に示すように、信号線14及びリターン線16を同軸上に配置して、その間を絶縁体18で電気的に絶縁した同軸ケーブルとすることができる。また、伝送線路12は、図3に示すように、板状の絶縁体18の表面に信号線14を配置し、裏面にリターン線16を配置した構造を有するマイクロストリップラインとしてもよい。なお、伝送線路12は、これらに限定されるものではなく、ツイストペアケーブル等としてもよい。
【0018】
測定対象物200は、特に限定されるものではなく、例えば電池とすることができる。具体的には、測定対象物200は、例えばリチウムイオン電池とすることができる。測定対象物200を電池とした場合、伝送線路12によって測定対象物200の正電極及び負電極をそれぞれ計測器10に電気的に接続した状態で異物の検出を行う。
【0019】
図1に示した異物検出装置100では、伝送線路12a及び伝送線路12bを介して計測器10の2つポートをそれぞれ測定対象物200に電気的に接続したシャントスルー接続としている。すなわち、伝送線路12aの信号線14aを介して、計測器10の第1のポートに対して測定対象物200の正電極及び負電極の一方を接続する。また、伝送線路12bの信号線14bを介して、計測器10の第2のポートに対して測定対象物200の正電極及び負電極のうち信号線14aを接続した側の電極に接続する。また、伝送線路12aのリターン線16aを介して、計測器10の第1のポートに対して測定対象物200の正電極及び負電極のうち信号線14aが接続されていない側の電極を接続する。さらに、伝送線路12bのリターン線16bを介して、計測器10の第2のポートに対して測定対象物200の正電極及び負電極のうちリターン線16aが接続された側の電極を接続する。
【0020】
異物検出装置100では、Sパラメータに基づいて測定対象物200のインピーダンスを測定する。異物検出装置100では伝送線路12を介して計測器10と測定対象物200とが接続されており、共振が発生し、測定対象物200のインピーダンスの変化を共振周波数の変化から計測可能である。また、伝送線路12の長さ、誘電率、透磁率の少なくとも1つを変えることで伝送線路12の電気長を変化させ、共振周波数を調整し、任意の周波数でインピーダンスの変化を測定することも可能である。
【0021】
図4及び図5は、伝送線路12を含むシャントスルー接続モデル及びSパラメータ行列表現をそれぞれ示す。ここで、Zは回路の特性インピーダンス、Zrefは基準インピーダンス、Zは測定対象物200の負荷インピーダンス、lは伝送線路12の線路長、SZLは負荷インピーダンスのSパラメータ行列、STLは伝送線路12のSパラメータ行列を示す。このモデルにおいて、負荷インピーダンスZ及び伝送線路12のSパラメータSTLは、それぞれ数式(1)及び数式(2)で表される。
【0022】
【数1】
【0023】
【数2】
【0024】
数式(1)及び数式(2)から合成Sパラメータは数式(3)で表される。
【0025】
【数3】
【0026】
シャントスルー接続の構成では、観測上の負荷インピーダンスZL,observedは数式(3)の合成Sパラメータの2行1列目の要素S21から数式(4)のように算出される。
【0027】
【数4】
【0028】
負荷インピーダンスZを実部成分R及び虚部成分Xに分解して、Z=R+jXとして表すと数式(5)となる。
【0029】
【数5】
【0030】
図6及び図7は、それぞれ数式(5)において負荷インピーダンスZの実部成分R及び虚部成分Xが変化した際の共振周波数の変化を示す。負荷インピーダンスZの実部成分R及び虚部成分Xの変化に伴って共振周波数がシフトすることが確認できた。
【0031】
すなわち、異物検出装置100の計測器10を用いて共振周波数の変化を検出することによって負荷インピーダンスZの実部成分R及び虚部成分Xの変化を検出することができる。測定対象物200の負荷インピーダンスZの実部成分R及び虚部成分Xは測定対象物200内に異物が入り込む前後によって変化するので、共振周波数の変化から測定対象物200内に存在する異物を検出することができる。特に、共振周波数を異物の検出に利用することで、測定対象物200の負荷インピーダンスZの虚部成分Xのみならず、実部成分Rのみに変化を及ぼす異物や非磁性の異物も検出することができる。
【0032】
なお、負荷インピーダンスZの実部成分R及び虚部成分Xを検出する計測の分解能は外乱により精度が1%程度となるのに対して、周波数を決定する位相同期回路(PLL)は自由に周波数を変更することができ、狭帯域のバンドパスフィルタを用いることによって高い分解能を実現することができる。
【0033】
図8は、数式(5)における負荷インピーダンスZの実部成分R及び虚部成分Xの比率(R/X)の変化に対する共振周波数の変化率を示す。図8に示されるように、負荷インピーダンスZの実部成分R及び虚部成分Xの比率と共振周波数の変化率には相間関係がある。負荷インピーダンスZの実部成分R及び虚部成分Xの比率がある値になると共振周波数の変化率は極大を示す。なお、負荷インピーダンスZの実部成分R及び虚部成分Xの比率をこの値に近づけておくことによって、負荷インピーダンスZの変化に対する共振周波数の変化量を最大に近づけることができる。
【0034】
以上のように、共振周波数や共振のピーク値の変化を捉えることによって負荷インピーダンスZの実部成分R及び虚部成分Xの微小な変化を増感して検出することが可能である。すなわち、共振周波数や共振のピーク値の変化から負荷インピーダンスZの実部成分R及び虚部成分Xに影響を与える測定対象物200内の異物の存在を検出することができる。
【0035】
なお、計測器10と測定対象物200との接続方式は、図1に示したシャントスルー接続に限定されるものではない。
【0036】
例えば、図9に示すように、反射法接続とした異物検出装置102としてもよい。異物検出装置102では、伝送線路12aを介して計測器10の1つポートを測定対象物200に電気的に接続した構成としている。すなわち、伝送線路12aの信号線14aを介して、計測器10の第1のポートに対して測定対象物200の正電極及び負電極の一方を接続する。また、伝送線路12aのリターン線16aを介して、計測器10の第1のポートに対して測定対象物200の正電極及び負電極のうち信号線14aを接続していない側の電極に接続する。
【0037】
異物検出装置102では、観測上の負荷インピーダンスZL,observedは数式(6)で表すことができる。
【0038】
【数6】
【0039】
また、例えば、図10に示すように、シリーズスルー接続とした異物検出装置104としてもよい。異物検出装置104では、伝送線路12a及び伝送線路12bを介して計測器10の2つポートをそれぞれ測定対象物200に電気的に接続した構成としている。すなわち、伝送線路12aの信号線14aを介して、計測器10の第1のポートに対して測定対象物200の正電極及び負電極の一方を接続する。また、伝送線路12bの信号線14bを介して、計測器10の第2のポートに対して測定対象物200の正電極及び負電極のうち信号線14aを接続していない側の電極を接続する。また、伝送線路12aのリターン線16a及び伝送線路12bのリターン線16bを介して、計測器10の第1のポートと第2のポートを接続する。
【0040】
また、例えば、図11に示すように、四端子対接続とした異物検出装置106としてもよい。なお、異物検出装置106では、計測器10は4つのポートを備える。異物検出装置106では、伝送線路12a、伝送線路12b、伝送線路12c及び伝送線路12dを介して計測器10の4つポートをそれぞれ測定対象物200に電気的に接続した構成としている。すなわち、伝送線路12aの信号線14aを介して、計測器10の第1のポートに対して測定対象物200の正電極及び負電極の一方を接続する。また、伝送線路12bの信号線14bを介して、計測器10の第2のポートに対して測定対象物200の正電極及び負電極のうち信号線14aを接続した側の電極を接続する。伝送線路12cの信号線14cを介して、計測器10の第3のポートに対して測定対象物200の正電極及び負電極の信号線14a及び信号線14bが接続されていない側の電極を接続する。また、伝送線路12dの信号線14dを介して、計測器10の第4のポートに対して測定対象物200の正電極及び負電極の信号線14cが接続された側の電極を接続する。さらに、伝送線路12aのリターン線16a及び伝送線路12cのリターン線16cを介して、計測器10の第1のポートと第3のポートを接続する。また、第2のポートの伝送線路12bのリターン線16b及び第4のポートの伝送線路12dのリターン線16dは電気的に解放状態とする。
【0041】
異物検出装置104及び異物検出装置106では、観測上の負荷インピーダンスZL,observedは数式(7)で表すことができる。
【0042】
【数7】
【0043】
すなわち、異物検出装置102,104,106の計測器10を用いて共振周波数の変化を検出することによって、異物検出装置100と同様に、負荷インピーダンスZの実部成分R及び虚部成分Xの変化を検出することができる。したがって、共振周波数の変化から測定対象物200内に存在する異物を検出することができる。
【0044】
また、図12に示すように、計測器10と測定対象物200の間にインピーダンス調整回路110を設けてもよい。図8に示したように測定対象物200の負荷インピーダンスZの変化に対する共振周波数の変化率は測定対象のインピーダンス値にも影響される。そこで、インピーダンス調整回路110を用いることで測定対象物200の見かけの負荷インピーダンスZを変化させることで測定感度を向上させることができる。インピーダンス調整回路110は、異物検出装置102,104,106の構成に対しても同様に適用することができる。
【0045】
インピーダンス調整回路110は、図13に示すように、例えばT型にインピーダンス素子20、インピーダンス素子22、インピーダンス素子24を接続した回路構成とすることができる。ただし、インピーダンス調整回路110の構成は、測定対象物200の見かけの負荷インピーダンスZを調整するものであればよく、L型にインピーダンス素子を接続した回路構成等としてもよい。
【0046】
図14は、測定対象物200内の異物検出方法を示すフローチャートである。以下、図14のフローチャートを参照して、異物検出装置100を用いた測定対象物200内の異物検出方法について説明する。なお、下記の異物検出方法は、異物検出装置102,104,106についても同様に適用することができる。
【0047】
ステップS10では、2種類以上の電気長の伝送線路を用いて測定対象物200の負荷インピーダンスZの基準値及び精度を測定する。すなわち、伝送線路12a及び伝送線路12bの電気長を変換して測定周波数を調整したうえで測定対象物200の負荷インピーダンスZの基準値及び精度を測定する。例えば、伝送線路12a及び伝送線路12bのそれぞれについて互いに異なる電気長である伝送線路を複数設けておき、それらを切り替えることによって伝送線路12a及び伝送線路12bの電気長を変換して測定周波数を調整することができる。また、例えば、伝送線路12a及び伝送線路12bの比誘電率又は比透磁率を変更可能な構成としておき、比誘電率又は比透磁率を変化させることによって伝送線路12a及び伝送線路12bの電気長を変換して測定周波数を調整することができる。なお、負荷インピーダンスZの精度とは、測定における負荷インピーダンスZの実部成分R及び虚部成分Xの測定値のばらつきを意味する。
【0048】
ステップS12では、得られた負荷インピーダンスZの基準値を踏まえて、計測器10によって計測可能な周波数範囲において共振周波数の変化又は共振のピーク値に対する測定感度が最大化されるようにインピーダンス調整回路110のインピーダンスを調整する。すなわち、測定対象物200内への異物の侵入等によって測定対象物200の負荷インピーダンスZが変化したときに、計測器10で測定される共振周波数の変化又は共振のピーク値が最大化されるようにインピーダンス調整回路110のインピーダンスを調整する。
【0049】
ステップS14では、伝送線路12a及び伝送線路12bの電気長を変化させることで測定周波数を変化させながら測定対象物200の負荷インピーダンスZを測定する。すなわち、様々な周波数における共振周波数の変化と逆に共振の影響を除外した周波数帯域における負荷インピーダンスZの変化を網羅的に検出する。
【0050】
ステップS16では、ステップS14において測定された測定対象物200の負荷インピーダンスZが高精度か低精度かを判定する。ここで、高精度とは、測定における負荷インピーダンスZの実部成分R又は虚部成分Xの測定のばらつきが所定の精度閾値未満であり、低精度とは、当該精度閾値以上であることを意味する。閾値は、測定装置を含む測定系、測定対象物、異物等に応じて適宜設定することが好適である。測定された測定対象物200の負荷インピーダンスZが高精度であると判定した場合にはステップS18に処理を移行させ、低精度であると判定した場合にはステップS20へ処理を移行させる。
【0051】
ステップS18では、負荷インピーダンスZが高精度で測定されたものとして、共振周波数や共振のピーク値の変化に基づいて測定対象物200内の異物の存在を検出する。すなわち、測定対象物200内に異物が存在していない状況における共振周波数や共振のピーク値に対する測定された共振周波数や共振のピーク値の変化量が所定の基準変化量以上となった場合に測定対象物200内に異物が存在すると判定する。
【0052】
一方、ステップS20では、共振周波数付近における負荷インピーダンスZの測定のばらつきが大きいため、共振周波数付近でない周波数帯域における測定対象物200の負荷インピーダンスZの測定値に基づいて測定対象物200内の異物の存在を検出する。ここで、共振周波数付近でない周波数帯域とは、測定における負荷インピーダンスZの実部成分R及び虚部成分Xの測定のばらつきが上記の精度閾値以上となる周波数帯域である。
【0053】
具体的には、測定対象物200内に異物が存在していない状況における負荷インピーダンスZの実部成分Rに対する測定された実部成分Rの変化量が所定の基準インピーダンス実部変化量以上となった場合に測定対象物200内に異物が存在すると判定する。または、測定対象物200内に異物が存在していない状況における負荷インピーダンスZの虚部成分Xに対する測定された虚部成分Xの変化量が所定の基準インピーダンス虚部変化量以上となった場合に測定対象物200内に異物が存在すると判定する。この場合、高精度時におけるステップS18の処理に比べると異物検出の感度が低下する可能性があるが、共振によるインピーダンス測定におけるばらつきが小さい周波数帯域を利用することで異物検出の感度はある程度保つことができる。
【0054】
なお、ステップS20において共振周波数からどの程度離した周波数で測定対象物200の負荷インピーダンスZを測定するのがよいかは、異物検出装置100の構成、測定対象物200の性質、検出対象である異物の種類や特性等に応じて適宜設定することが好適である。
【0055】
以上のように、共振周波数の変化又は共振のピーク値の変化に基づいて測定対象物200内の異物を検出することで、測定対象物内の異物がインピーダンスの実部成分のみに影響したり、非磁性であったりしても非破壊かつ高精度で検出することができる。また、測定対象物200の負荷インピーダンスZの測定が高精度である場合は共振周波数の変化を利用して異物を検出し、測定対象物200の負荷インピーダンスZの測定が低精度である場合は負荷インピーダンスZの実部成分R又は虚部成分Xの変化を利用して異物を検出することで、測定対象物200の負荷インピーダンスZの値や精度に依らず従来技術に比べて高い感度での異物検出が可能となる。
【0056】
[本発明の構成]
[構成1]
計測器と、測定対象物と前記計測器とを電気的に接続する伝送線路と、を備え、
前記測定対象物及び前記伝送線路を含む電気回路のインピーダンスを前記計測器によって測定し、測定された前記インピーダンスの変化から前記測定対象物内の異物を検出することを特徴とする異物検出装置。
[構成2]
構成1に記載の異物検出装置であって、
前記インピーダンスの変化は、前記電気回路の共振周波数又は共振のピーク値の変化から検出することを特徴とする異物検出装置。
[構成3]
構成2に記載の異物検出装置であって、
前記計測器と前記測定対象物との間にインピーダンス調整回路を設け、前記インピーダンス調整回路によって前記電気回路のインピーダンスを調整可能であることを特徴とする異物検出装置。
[構成4]
構成1~3のいずれか1項に記載の異物検出装置であって、
前記インピーダンスの変化は、前記インピーダンスの実部成分及び虚部成分の測定値のばらつきが所定の精度閾値未満となる周波数帯域において検出することを特徴とする異物検出装置。
[構成5]
構成1~4のいずれか1項に記載の異物検出装置であって、
前記伝送線路の電気長を変更することによって測定周波数を調整することを特徴とする異物検出装置。
[構成6]
構成5に記載の異物検出装置であって、
複数の前記伝送線路を切り替えることによって前記伝送線路の電気長を変更することを特徴とする異物検出装置。
[構成7]
構成5に記載の異物検出装置であって、
前記伝送線路の比誘電率及び比透磁率の少なくとも1つを変化させることで前記伝送線路の電気長を変更することを特徴とする異物検出装置。
[構成8]
構成1~7のいずれか1項に記載の異物検出装置であって、
前記測定対象物は、リチウムイオン電池であることを特徴とする異物検出装置。
【符号の説明】
【0057】
10 計測器、12(12a,12b,12c,12d) 伝送線路、14(14a,14b,14c,14d) 信号線、16(16a,16b,16c,16d) リターン線、18 絶縁体、20,22,24 インピーダンス素子、100,102,104,106 異物検出装置、110 インピーダンス調整回路、200 測定対象物。
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