(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047844
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】露光装置、および露光方法
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1337 20060101AFI20240401BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20240401BHJP
G02F 1/13 20060101ALN20240401BHJP
【FI】
G02F1/1337
G03F7/20 501
G02F1/13 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153567
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】510138741
【氏名又は名称】フェニックス電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147706
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 裕司
(72)【発明者】
【氏名】井上 智彦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 祐治
(72)【発明者】
【氏名】松本 弘
【テーマコード(参考)】
2H088
2H197
2H290
【Fターム(参考)】
2H088FA30
2H088MA20
2H197CA03
2H197CD12
2H197CD41
2H197CD50
2H197DB18
2H197DB34
2H197DC03
2H197DC14
2H197HA05
2H290BF92
(57)【要約】
【課題】処理対象物の温度を適正に調節することができる露光装置を提供する。
【解決手段】露光装置10を、露光用光を放射する光源装置12と、処理対象物Xが載置されるステージ14と、光源装置12およびステージ14を覆う露光用ケース16と、記処理対象物Xの温度を測定する温度センサ18と、温度センサ18からの温度信号に基づいて処理対象物Xを加熱あるいは冷却する温度調節装置20とで構成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光用光を放射する光源装置と、
処理対象物が載置されるステージと、
前記ステージを覆う露光用ケースと、
前記処理対象物の温度を測定する温度センサと、
前記温度センサからの温度信号に基づいて前記処理対象物を加熱あるいは冷却する温度調節装置とを有する
露光装置。
【請求項2】
前記温度調節装置は、前記露光用ケース内に加熱あるいは冷却された気体を送るものである
請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
前記温度センサには、放射温度計が使用されている
請求項1に記載の露光装置。
【請求項4】
前記温度センサは、前記処理対象物の表面に規定された複数の露光エリアごとに温度を測定する
請求項1に記載の露光装置。
【請求項5】
前記温度調節装置は、前記光源装置を通過して前記気体を前記処理対象物に向けて送るようになっている
請求項2に記載の露光装置。
【請求項6】
前記温度調節装置は、前記ステージを通過して前記気体を前記処理対象物に向けて送るようになっている
請求項2に記載の露光装置。
【請求項7】
前記温度調節装置は、前記ステージを加熱あるいは冷却することで、前記処理対象物の温度を調節するようになっている
請求項1に記載の露光装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の露光装置を用いて行う処理対象物の露光方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネルや樹脂フィルム等の処理対象物に紫外線光等を照射して露光する露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従前より、多種多様な種類の露光装置が開発されている。露光装置の開発に際してポイントとなる事項は、例えば、処理対象物に対する露光用光の均一性や、露光用光の波長の設定、さらには、処理対象物に対する露光用光の照射角度等、多岐に亘っている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示された露光装置では、液晶表示装置等に用いられる配向膜の製造にもちいられ、安定的に配向処理を行うことができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、多種多様な観点で露光装置が開発されてきているものの、露光開始前から露光完了までの処理対象物の温度を適正に調節することについては注意が払われていなかった。
【0006】
処理対象物の温度が適切に管理できない場合、露光によって製造される成果物の品質が一定しない等、様々な問題が生じる。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、処理対象物の温度を適正に調節することができる露光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面によれば、
露光用光を放射する光源装置と、
処理対象物が載置されるステージと、
前記ステージを覆う露光用ケースと、
前記処理対象物の温度を測定する温度センサと、
前記温度センサからの温度信号に基づいて前記処理対象物を加熱あるいは冷却する温度調節装置とを有する
露光装置が提供される。
【0009】
好適には、
前記温度調節装置は、前記露光用ケース内に加熱あるいは冷却された気体を送るものである。
【0010】
好適には、
前記温度センサには、放射温度計が使用されている。
【0011】
好適には、
前記温度センサは、前記処理対象物の表面に規定された複数の露光エリアごとに温度を測定する。
【0012】
好適には、
前記温度調節装置は、前記光源装置を通過して前記気体を前記処理対象物に向けて送るようになっている。
【0013】
好適には、
前記温度調節装置は、前記ステージを通過して前記気体を前記処理対象物に向けて送るようになっている。
【0014】
好適には、
前記温度調節装置は、前記ステージを加熱あるいは冷却することで、前記処理対象物の温度を調節するようになっている。
【0015】
本発明に係る別の局面によれば、
上述した露光装置を用いて処理対象物を露光する方法が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る露光装置によれば、温度センサからの温度信号に基づいて処理対象物を加熱あるいは冷却する温度調節装置が設けられているので、露光開始前から露光完了までの処理対象物の温度を適正に調節することができるようになる。
【0017】
処理対象物の温度を適切に調節することで、露光によって製造される成果物の品質をより安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態に係る露光装置10を示す図である。
【
図2】実施形態に係る光源装置12を示す図である。
【
図3】ステージ14における、処理対象物Xと温度センサ18と支持部材36との位置関係を示す図である。
【
図4】変形例3に係る露光装置10を示す図である。
【
図5】変形例4に係る露光装置10を示す図である。
【
図6】変形例5に係る露光装置10を示す図である。
【
図7】変形例9に係る露光装置10を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(露光装置10の構成)
本実施形態に係る露光装置10は、
図1に示すように、大略、光源装置12と、ステージ14と、露光用ケース16と、温度センサ18と、温度調節装置20とで構成されている。
【0020】
光源装置12は、
図2に示すように、大略、光源22と、基板24と、ヒートシンク26とで構成されている。なお、基板24およびヒートシンク26で「LED保持具」が構成される。
【0021】
光源22は、露光に必要な波長の露光用光を放射する発光素子である。本実施形態では、光源22としてLEDが使用されているが、高圧放電灯、有機EL、白熱灯等を光源22として用いてもよい。
【0022】
基板24は、複数の光源22が表面に実装される板材であり、各光源22に給電するための給電回路(図示せず)も表面に実装されている。本実施形態では、ひとつの基板24に9つの光源22が実装されているが、ひとつの基板24に実装される光源22の数およびピッチ(光源22同士の配置間隔)は特に限定されるものではない。
【0023】
ヒートシンク26は、複数の基板24が表面に取り付けられる部材であり、各基板24に実装された光源22から発生した熱を当該基板24を介して受け取り、空冷あるいは水冷等の手段で当該熱を放射する役割を有している。なお、本実施形態では、ひとつの部材でヒートシンク26が構成されているが、複数の部材を組み合わせてヒートシンク26を構成してもよい。
【0024】
図1に戻り、ステージ14は、露光される処理対象物Xが載置される矩形板状の部材である。本実施形態では、ステージ14は、露光用ケース16の一部であるベース架台28に配置された複数のアクチュエータ30によって支持されている。
【0025】
アクチュエータ30は、自身が伸縮することによってベース架台28の表面とステージ14との間隔を調整することができる。複数のアクチュエータ30の長さを調整することにより、ベース架台28からのステージ14の高さを調整できるとともに、水平面に対するステージ14の傾きを自由に設定することができる。
【0026】
また、ステージ14の上面には、複数の支持部材36が上方に突設されている。これら支持部材36の上端に処理対象物Xが載置される(
図3参照)。
【0027】
露光用ケース16は、光源装置12およびステージ14を気密的に覆う役割を有する部材であり、本実施形態では、上述したベース架台28と、ケース本体32とを備えている。
【0028】
ケース本体32は、内部空間34を有する略箱状の部材であり、底部が開口した形状になっている。このケース本体32の底部の開口にベース架台28が取り付けられることで、ケース本体32の内部空間34が気密されるようになっている。なお、ここでいう「気密」とは、内部空間34の圧力を一定保持するような意味合いではなく、一連の露光処理手順において処理対象物Xの温度を制御コントロールできる程度の密閉度合いでよい。
【0029】
温度センサ18は、処理対象物Xの温度を測定するためのセンサであり、本実施形態では、4つの温度センサ18がステージ14の上面に配置されている(
図3参照)。また、本実施形態では、処理対象物Xの表面が4つの露光エリアAからDに分けられており、4つの温度センサ18がそれぞれ異なる露光エリアAからDの温度を測定するようになっている。もちろん、露光エリアは、複数であれば4つに限定されるものではない。また、露光エリアを1つにしてもよい。
【0030】
また、本実施形態では、温度センサ18として放射温度計が使用されているが、露光の前後にかけて処理対象物Xの温度を測定できるものであれば、他の種類の温度計を使用してもよい。また、内部空間34やステージ14、あるいはケース本体32の温度を測定して、間接的に処理対象物Xの温度を測定し、処理対象物Xの温度を直接的に測定しないようにしてもよい。
【0031】
温度調節装置20は、温度センサ18からの温度信号に基づいて処理対象物Xを冷却するための装置であり、本実施形態では、空気冷却器38と、送風ダクト40と、制御装置42とを備えている。
【0032】
空気冷却器38は、取り込んだ外気を冷却して送風ダクト40に送る役割を有している。空気冷却器38の冷却方式は、空冷・液冷・ヒートポンプ等といったいずれの方式でもよい。
【0033】
送風ダクト40は,空気冷却器38からの冷却空気をケース本体32の内部空間34に導く役割を有している。
【0034】
制御装置42は、温度センサ18からの温度信号に基づいて、空気冷却器38から送風ダクト40に送る冷却空気の温度や風量を調整するための装置である。
【0035】
(露光装置10の特徴)
次に、上述した露光装置10を用いて処理対象物Xの温度調節および露光を行う手順について説明する。
【0036】
先ず、処理対象物Xをステージ14の支持部材36上に載置した後、ケース本体32の内部空間34を気密する。
【0037】
然る後、露光装置10を作動させて露光作業を開始すると、最初に温度センサ18が処理対象物Xの温度を測定する。処理対象物Xの温度が予め設定した範囲にあれば、光源装置12が作動して、処理対象物Xの露光が開始される。
【0038】
処理対象物Xの温度が予め設定した範囲になければ、光源装置12は作動せず、温度調節装置20が作動する。具体的には、制御装置42が温度センサ18からの温度信号に基づいて空気冷却器38を作動させて冷却空気を内部空間34に送り込む。
【0039】
より具体的には、露光装置10を作動後、まずステージ14が上下方向に移動し処理対象物Xと光源装置12との距離(照射距離)が規定値になるよう位置決めされる。この間、温度調節装置20は常時運転しており、ケース本体32の内部空間34の温度はすばやく処理対象物Xの露光開始温度相当に調整される。処理対象物Xが位置決めされた後は、温度センサ18が処理対象物Xの温度を測定する。処理対象物Xの温度が予め設定した範囲にあれば、光源装置12が作動して、処理対象物Xの露光が開始される。
【0040】
なお、露光条件は露光装置10におけるPLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)に設定、保持されており、このPLCによって各光源22の点灯、消灯、点灯時間等が制御される。温度センサ18はPLCにも接続されており、PLCでは予め設定した値と比較し露光開始可否を判定する。
【0041】
処理対象物Xの温度が予め設定した範囲内になると、制御装置42は空気冷却器38の動作を停止させ、その後、光源装置12が作動して処理対象物Xの露光が開始される。
【0042】
露光中も温度センサ18からの温度信号による処理対象物Xの温度管理は継続される。例えば、露光用光によって処理対象物Xの温度が上昇し(露光用光によって内部空間34に配置されたステージ14等の部品の温度が上昇し、これら部品からの輻射熱によって処理対象物Xが昇温する場合もある)、予め設定した範囲を外れると、制御装置42が再び空気冷却器38を作動させて処理対象物Xの温度を低下させる。なお、露光中の処理対象物Xの温度管理は省略してもよい。
【0043】
光源装置12が所定の光量を放射すると露光が完了する。なお、必要に応じて、露光完了後の所定時間、処理対象物Xの温度管理を継続してもよい。
【0044】
このように、温度センサ18からの温度信号に基づいて処理対象物Xを冷却する温度調節装置20が設けられているので、露光処理中は露光照度を変化させる必要がなく露光開始前から露光完了までの処理対象物Xの温度を適正に調節することができるようになる。露光照度を一定にすることで、露光の仕上がりが安定化する。
【0045】
処理対象物Xの温度を適切に調節することで、露光によって製造される成果物の品質をより安定させることができる。
【0046】
(変形例1)
上述した実施形態では、温度調節装置20に空気冷却器38が設けられていたが、空気冷却器38に変えて、加熱した外気をケース本体32の内部空間34に送って処理対象物Xを加熱してもよい。もちろん、加熱・冷却の両方が可能な温度調節装置20としてもよい。
【0047】
(変形例2)
上述した実施形態では、温度調節装置20で冷却(あるいは加熱)した外気をケース本体32の内部空間34に送るようになっていたが、例えば、冷水あるいは温水をステージ14に送り、ステージ14を冷却あるいは加熱することで、処理対象物Xを冷却あるいは加熱してもよい。もちろん、温度調節装置20で冷却(あるいは加熱)した外気をケース本体32の内部空間34に送ることと、ステージ14を冷却あるいは加熱することとを組み合わせてもよい。
【0048】
(変形例3)
また、
図4に示すように、温度調節装置20における送風ダクト40の先端を処理対象物Xに近づけて、送風ダクト40からの冷却あるいは加熱された外気が処理対象物Xに直接当たるようにしてもよい。
【0049】
(変形例4)
さらに、
図5に示すように、例えば、光源装置12におけるヒートシンク26に温度調節装置20からの外気が通過する外気通過孔44を設け、この外気通過孔44を通して冷却あるいは加熱された外気を処理対象物Xに向けて送るようにしてもよい。
【0050】
(変形例5)
また、
図6に示すように、例えば、ステージ14に温度調節装置20からの外気が通過する外気通過孔44を設け、この外気通過孔44を通して冷却あるいは加熱された外気を処理対象物Xに向けて送るようにしてもよい。
【0051】
(変形例6)
また、温度調節装置20から処理対象物Xに送られる媒体は、外気(空気)に限られず、その他の気体(例えば、窒素等)であってもよい。
【0052】
(変形例7)
また、露光用ケース16内に処理対象物Xを入れる前に、当該露光用ケース16の外で(例えば、予備冷却/加熱用のステージやケース[チャンバー]を用意して)処理対象物Xを予め冷却あるいは加熱しておいてもよい。これにより、露光用ケース16内に入れた段階で既に処理対象物Xが適温になっているので、処理対象物Xの温度調節時間が不要あるいは短時間となり、露光作業全体のタクトタイムを短縮できる。
【0053】
(変形例8)
また、例えば、温度調節装置20にフィードバックするための温度センサ18と、露光開始を判定して光源装置12を制御するための温度センサ18とを共通にしてもよいし、別々の温度センサ18にしてもよい。
【0054】
(変形例9)
また、
図7に示すように、露光用ケース16を構成するケース本体32でステージ14のみを覆うようにして、光源装置12をケース本体32の外に配置してもよい。
【0055】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0056】
10…露光装置、12…光源装置、14…ステージ、16…露光用ケース、18…温度センサ、20…温度調節装置、22…光源、24…基板、26…ヒートシンク、28…ベース架台、30…アクチュエータ、32…ケース本体、34…内部空間、36…支持部材、38…空気冷却器、40…送風ダクト、42…制御装置、44…外気通過孔
X…処理対象物