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特開2024-47852スプレッダー装置及びスプレッディング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047852
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】スプレッダー装置及びスプレッディング方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/34 20060101AFI20240401BHJP
   C12Q 1/06 20060101ALI20240401BHJP
   C12M 1/26 20060101ALI20240401BHJP
   C12Q 1/24 20060101ALI20240401BHJP
   C12N 1/00 20060101ALN20240401BHJP
【FI】
C12M1/34 D
C12Q1/06
C12M1/26
C12Q1/24
C12N1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153580
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】599067053
【氏名又は名称】株式会社ピーエムティー
(74)【代理人】
【識別番号】100114627
【弁理士】
【氏名又は名称】有吉 修一朗
(74)【代理人】
【識別番号】230110397
【弁護士】
【氏名又は名称】田中 雅敏
(74)【代理人】
【識別番号】100182501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100175271
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 宣圭
(74)【代理人】
【識別番号】100190975
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 聡子
(72)【発明者】
【氏名】武居 修
(72)【発明者】
【氏名】今出 浩志
(72)【発明者】
【氏名】福田 景樹
(72)【発明者】
【氏名】戸丸 勝博
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029AA27
4B029BB01
4B029CC01
4B029FA02
4B029FA10
4B029FA11
4B029GA01
4B029GA08
4B029GB06
4B029GB10
4B063QA01
4B063QQ05
4B063QQ16
4B063QQ17
4B063QR74
4B063QS08
4B063QS36
4B063QX02
4B065AC20
4B065CA46
(57)【要約】
【課題】検体や培地の種類によらず、培地上で試料液を所望の範囲に均等に拡げることができ、再現性の高いスプレッディング処理が可能なスプレッダー装置及びスプレッディング方法を提供する。
【解決手段】スプレッダー装置Aは、ベースユニット1と、枠体ユニット2と、押圧ユニット3と、を備えている。枠体ユニット2は、押えリング板20と、ガイドシャフト21と、を有しており、押えリング板20は、フィルム培地における、フィルム培地本体と、保護フィルムとの間に試料液を挟んだ状態で、保護フォルムを押圧して、試料液を拡げる予定範囲の外縁を、液漏れしないように押える。押圧ユニット3は、スポンジ部30と、スポンジ取付板31と、を有しており、スポンジ部30は、フィルム培地における、フィルム培地本体と、保護フィルムとの間に試料液を挟んだ状態で、保護フォルムを押圧して、試料液を拡げる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
培地を含むシート状のフィルム培地本体と、保護フィルムとに挟まれた試料液を拡げるスプレッダー装置であって、
前記保護フィルムを押圧すると共に、押圧方向から見た形状が枠状に形成され、かつ、前記フィルム培地本体における前記枠状の内側は前記培地のみで構成されるように前記培地を囲む枠体部と、
前記枠体部から独立して昇降動作を行い、前記保護フィルムを押圧すると共に、前記押圧方向から見て前記枠体部の内側に配置され、弾性体で形成された押圧部と、
を備える、スプレッダー装置。
【請求項2】
請求項1記載のスプレッダー装置において、
前記枠体部による前記保護フィルムに対する押圧を規制する枠体部圧力調整機構、
をさらに備える、スプレッダー装置。
【請求項3】
請求項2記載のスプレッダー装置において、
前記押圧部及び前記枠体部の前記押圧方向と反対方向に配置されると共に、前記押圧部と一体的に昇降動作するベース部、
をさらに備え、
前記枠体部圧力調整機構は、
前記ベース部と、前記枠体部との間に配置され、一端が前記枠体部に固定され、他端が前記ベース部に抜け止めされて挿通された第1のシャフトと、
コイル状のばね部材であり、前記第1のシャフトに外嵌めされた第1の規制ばねと、を有するスプレッダー装置。
【請求項4】
請求項1記載のスプレッダー機構において、
前記押圧部による前記保護フィルムに対する押圧を規制する押圧部圧力調整機構、
をさらに備える、スプレッダー装置。
【請求項5】
請求項4記載のスプレッダー装置において、
前記押圧部及び前記枠体部の前記押圧方向と反対方向に配置されると共に、前記押圧部と一体的に昇降動作するベース部、
をさらに備え、
前記押圧部圧力調整機構は、
前記ベース部と、前記枠体部との間に配置されると共に、他端が前記ベース部に固定され、一端が前記枠体部に向けて延び出して形成され、前記一端が前記枠体部に当接することで、前記押圧部の前記押圧方向への移動を停止するストッパー部、を有するスプレッダー装置。
【請求項6】
請求項4記載のスプレッダー装置において、
前記押圧部及び前記枠体部の前記押圧方向と反対方向に配置されると共に、昇降動作するベース部、
をさらに備え、
前記押圧部圧力調整機構は、
前記ベース部と、前記押圧部との間に配置され、一端が前記押圧部に固定され、他端が前記ベース部に抜け止めされて挿通された第2のシャフトと、
コイル状のばね部材であり、前記第2のシャフトに外嵌めされた第2の規制ばねと、を有するスプレッダー装置。
【請求項7】
請求項1記載のスプレッダー装置において、
前記枠体部は、前記弾性体よりも変形量が少ない部材で構成された、スプレッダー装置。
【請求項8】
請求項1記載のスプレッダー装置において、
前記弾性体はスポンジである、スプレッダー装置。
【請求項9】
培地を含むシート状のフィルム培地本体と、保護フィルムと、で挟んだ試料液を拡げるスプレッディング方法であって、
前記保護フィルムを持ち上げた状態で、前記フィルム培地本体に試料液を滴下する試料液滴下工程と、
押圧方向から見た視点において、枠状体の内側が、前記フィルム培地本体における前記培地のみで構成されるように前記枠状体で前記培地を囲んで、前記保護フィルムを前記枠状体で押圧する枠状体押圧工程と、
前記保護フィルムのうち、前記試料液が滴下された領域を弾性体で押圧する弾性体押圧工程、と、
を有する、スプレッディング方法。
【請求項10】
請求項9記載のスプレッディング方法において、
前記枠状体押圧工程及び前記弾性体押圧工程では、同一の駆動機構を介して、前記枠状体及び前記弾性体を、前記押圧方向又は前記押圧方向と反対方向に移動させ、
前記枠状体又は前記弾性体のいずれか一方が前記保護フィルムを押圧した状態から、他方のみを前記押圧方向に移動させる、スプレッディング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスプレッダー装置及びスプレッディング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、医薬品、化粧品における微生物検査において、製品の品質・衛生面を管理するため、各種の試料に対して、微生物の種類に応じた生菌数検査が行われている。
【0003】
また、生菌数検査の効率化のため、培地調製が不要な乾燥培地が広く用いられている。
【0004】
この乾燥培地とは、培地成分をゲル化していない状態で、樹脂シートや容器に予め塗工しておき、試料液を滴下した段階でゲル化が進行して、微生物を培養可能とする培地である。また、乾燥培地やこれを形成するための塗工方法が種々存在する。
【0005】
例えば、特開2015-107060号公報(特許文献1)には、連続気孔を有する多孔質部材により吐出口を構成した多孔質ノズルに、生菌数検査に用いる乾燥培地を形成するための培地液を圧力タンクから供給し、多孔質部材の下面にある気孔から培地液を吐出させ、乾燥培地を形成する基材シートの円形台座内に多孔質部材と同形状の培地液を塗工する培地液の塗工方法が記載されている。
【0006】
また、乾燥培地の一種として、フィルム培地と呼ばれるシート状の乾燥培地が存在する。フィルム培地は、微生物を培養可能とする培地を含むシート状のフィルム培地本体と、フィルム培地本体を覆う保護フィルムと、で構成されている。
【0007】
このフィルム培地を使用する際には、保護フィルムを持ち上げ、フィルム培地本体に試料液を滴下して、保護フィルムを重ね、その上からスプレッダーで押さえて又は保護フィルムの自重や湿潤により押さえることなく、試料液を円形かつ均等に拡げて吸収させる。
【0008】
また、試料液をスプレッディング処理されたフィルム培地は、インキュベータ等に入れて、所定の温度及び時間で培養し、生菌数検査に用いることができる。
【0009】
ここで、フィルム培地において、スプレッディング処理を手作業で行う場合、作業者の熟練度が低いと、試料液が均等に拡がらず、斑が多く発生したり、気泡が混入したり或いは試料液が培地外へと漏洩する等して、正確な生菌数検査が行えない問題があった。
【0010】
そのため、作業者の手技に依存しないように、フィルム培地に対するスプレッディング処理を自動化する技術が提案されている。
【0011】
例えば、特開2022-81903号公報(特許文献2)には、フィルム開閉器、溶液分注機及びスプレッダー機を備える微生物検査用前処理装置が記載されている。
【0012】
また、特許文献2に記載された装置では、スプレッダー機が、鉛直方向に駆動して、保護フィルムの上方から押圧力を付与してスプレッディング処理を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2015-107060号公報
【特許文献2】特開2022-81903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ここで、生菌数検査では、試料液が、粘性や揮発性等が異なる多様な検体に由来することや、培地の種類によって物性の差が大きいことから、特許文献2に記載された装置によりスプレッディング処理を行った際、培地上で試料液を所望の範囲に、均等に拡げることが難しかった。
【0015】
例えば、中央に円形の培地部分を配置し、その外側が培地の無い領域で構成されたフィルム培地本体に対して、一定量の試料液をスプレッディングすると、試料液が円形の培地部分の外縁を超えて拡がり、コロニーの形成に影響が生じ、正確な試験結果が得られない問題があった。
【0016】
従って、フィルム培地に対するスプレッディング処理を自動化する技術では、検体や培地の種類によらず、培地上で試料液を所望の範囲に均等に拡げることができ、再現性の高い、スプレッディング処理を可能とする手段が必要である。
【0017】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0018】
一実施の形態であるスプレッダー装置は、保護フィルムを押圧すると共に、押圧方向から見た形状が枠状に形成され、かつ、フィルム培地本体における枠状の内側は培地のみで構成されるように培地を囲む枠体部と、枠体部から独立して昇降動作を行い、保護フィルムを押圧すると共に、押圧方向から見て枠体部の内側に配置され、弾性体で形成された押圧部と、を備える。
【0019】
また、一実施の形態であるスプレッディング方法は、押圧方向から見た視点において、枠状体の内側が、フィルム培地本体における培地のみで構成されるように枠状体で培地を囲んで、保護フィルムを枠状体で押圧する枠状体押圧工程と、保護フィルムのうち、試料液が滴下された領域を弾性体で押圧する弾性体押圧工程と、を有する。
【発明の効果】
【0020】
一実施の形態によれば、フィルム培地に対するスプレッディング処理を自動で行う際に、検体や培地の種類によらず、培地上で試料液を所望の範囲に均等に拡げることができ、再現性の高いスプレッディング処理を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】(a)は、実施の形態1によるスプレッダー装置の構成を示す概略上方斜視図であり、(b)は、図1に示すスプレッダー装置の概略下方斜視図である。
図2】(a)は、図1に示すスプレッダー装置を側面側から見た概略側面図であり、(b)は、図2(a)における矢印A-A方向から見た概略断面図である。
図3】動作制御の機構に関する各部材の接続関係を示す概念図である。
図4】(a)は、待機状態を示す概略断面図であり、(b)は、押えリング板が保護フィルムを押圧した状態を示す概略断面図であり、(c)は、スポンジ部が保護フィルムを押圧した状態を示す概略断面図である。
図5】(a)~(d)は、押えリング板に先行してスポンジ部が保護フィルムを押圧する態様における一連の押圧の流れを示す概略工程図である。
図6】(a)~(d)は、スポンジ部に先行して押えリング板が保護フィルムを押圧する態様における一連の押圧の流れを示す概略工程図である。
図7】実施の形態2によるスプレッダー装置の構成を示す概略上方斜視図である。
図8】(a)は、図7に示すスプレッダー装置を正面側から見た概略正面図であり、(b)は、図8(a)における矢印A-A方向から見た概略部分断面図である。
図9】(a)は、押えリング板が保護フィルムを押圧した状態を示す概略断面図であり、(b)は、スポンジ部が保護フィルムを押圧した状態を示す概略断面図であり、(c)は、ストッパボルトが押えリング板に当接した状態を示す概略断面図である。
図10】実施の形態3によるスプレッダー装置の構成を示す概略上方斜視図である。
図11】(a)は、図10に示すスプレッダー装置を側面側から見た概略側面図であり、(b)は、図11(a)における矢印A-A方向から見た概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」と称する)を図面に基づいて詳細に説明する。
なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一又は関連する符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0023】
また、複数の類似の部材(部位)が存在する場合には、総称の符号に記号を追加し個別又は特定の部位を示す場合がある。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一又は同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0024】
また、実施の形態で用いる図面においては、断面図であっても図面を見易くするためにハッチングを省略する場合もある。また、平面図であっても図面を見易くするためにハッチングを付す場合もある。
【0025】
また、断面図及び平面図において、各部位の大きさは実デバイスと対応するものではなく、図面を分かりやすくするため、特定の部位を相対的に大きく図示する場合がある。また、断面図と平面図が対応する場合においても、図面を分かりやすくするため、特定の部位を相対的に大きく図示する場合がある。
【0026】
また、以下の説明では、図1(a)を基準として、押えリング板20から見たベース板10の方を、上又は上方と称し、ベース板10から見た押えリング板20の方を、下又は下方と称する。また、上下を結ぶ方向を上下方向又は鉛直方向と称する。また、必要に応じて、上下方向に沿って、下方に向かう方向を押圧方向と称する。
【0027】
また、以下の説明では、図1(a)を基準として、スプレッダー装置Aについて、紙面の左下斜め方向を、前、前方又は正面側と称し、紙面の右上斜め方向を、後ろ、後方又は背面側と称する。また、前後を結ぶ方向を前後方向と称する。
【0028】
また、以下の説明では、図1(a)を基準として、スプレッダー装置Aについて、紙面の右下斜め方向を、右又は右方と称し、紙面の左上斜め方向を、左又は左方と称する。
【0029】
さらに、以下の説明では、左右を結ぶ方向を左右方向と称し、スプレッダー装置Aの右方及び左方を側面側と称することがある。また、前後方向及び左右方向を、水平方向と称することがある。
【0030】
(実施の形態1)
本実施の形態1によるスプレッダー装置について図1図6を用いて説明する。
≪スプレッダー装置の全体構成≫
図1(a)及び図1(b)に示すように、本実施の形態1によるスプレッダー装置Aは、ベースユニット1と、枠体ユニット2と、押圧ユニット3と、を備えている。
【0031】
このスプレッダー装置Aは、試料液が滴下されたフィルム培地に対して、保護フィルムの上から押圧して、試料液を拡げるスプレッディング処理を自動で行う装置である。
【0032】
また、スプレッダー装置Aは、微生物検査における試料の前処理について、一連の作業を自動で行う微生物検査用前処理装置の中で、スプレッディング処理の作業を担う構成装置の一部として設けられている。
【0033】
また、スプレッダー装置Aは、微生物検査用前処理装置の一部を構成する、図示しない保持ユニットに対して、着脱自在に取り付けられる装置である。
【0034】
また、図3に示す駆動モータ5及び上下駆動軸6を介して昇降動作する、図示しない保持ユニットに対して、複数のスプレッダー装置Aが取り付けられ、複数のフィルム培地を同時に処理可能に構成されている。
【0035】
ここで、ベースユニット1は、枠体ユニット2及び押圧ユニット3を取り付ける基台となる構造体である。
【0036】
また、枠体ユニット2は、フィルム培地における、フィルム培地本体と、保護フィルムとの間に試料液を挟んだ状態で、保護フォルムを押圧して、試料液を拡げる予定範囲の外縁を、液漏れしないように押える構造体である。
【0037】
また、押圧ユニット3は、フィルム培地における、フィルム培地本体と、保護フィルムとの間に試料液を挟んだ状態で、保護フォルムを押圧して、試料液を拡げる構造体である。なお、ここでいう押圧ユニット3が、本願請求項における押圧部に相当する。
【0038】
ここで、必ずしも、スプレッダー装置Aは、微生物検査用前処理装置を構成する装置の一部として設けられる必要はない。例えば、スプレッディング処理を自動で行う、単独の装置として使用する態様も採用しうる。
【0039】
また、必ずしも、保持ユニットに複数のスプレッダー装置Aが取り付けられる必要はなく、スプレッダー装置Aを取り付ける数は適宜設定することができる。
【0040】
≪ベースユニット≫
図1(a)及び図1(b)に示すように、ベースユニット1は、ベース板10と、上部取付ガイド板11と、下部取付ガイド板12と、を有している。
【0041】
ここで、ベース板10は、枠体ユニット2及び押圧ユニット3を取り付ける板状の部材である。また、ベース板10は、駆動モータ5の駆動により、枠体ユニット2及び押圧ユニット3と共に上下方向に昇降動作する部材である。
【0042】
また、ベース板10は、後述するストローク機構を介して、枠体ユニット2が保護フィルムを押圧した状態で、押圧ユニット3と共に、更に下降する部材である。なお、ここでいうベース板10が、本願請求項におけるベース部に相当する。
【0043】
また、上部取付ガイド板11及び下部取付ガイド板12は、保持ユニットにスプレッダー装置Aを取り付ける際に、取り付け箇所となる部材である。
【0044】
図2(a)に示すように、鉛直方向における、上部取付ガイド板11と、下部取付ガイド板12との間に、図示しない保持ユニットの構造の一部を挿通させ、保持ユニットがスプレッダー装置Aを保持するように構成されている。
【0045】
また、図1(a)に示すように、ベースユニット1は、4つの支柱部13を有している。支柱部13は、鉛直方向において、ベース板10と、上部取付ガイド板11との間のクリアランスを設けるための柱部材である。
【0046】
また、図1(a)に示すように、ベースユニット1はボルト14を有している。ボルト14は、上部取付ガイド板11を、支柱部13の上端に固定する固定部材である。
【0047】
また、図2(a)及び図2(b)に示すように、ベースユニット1はボルト15を有している。ボルト15は、下部取付ガイド板12を、上部取付ガイド板11の下部側に固定する固定部材である。
【0048】
≪枠体ユニット≫
図1(a)及び図1(b)に示すように、枠体ユニット2は、押えリング板20と、ガイドシャフト21と、を有している。
【0049】
ここで、押えリング板20は、フィルム培地における、培地本体と、保護フィルムとの間に試料液を挟んだ状態で、保護フォルムを押圧して、試料液を拡げる予定範囲の外縁を、液漏れしないように押える部材である。なお、ここでいう押えリング板20が、本願請求項における枠体部又は枠状体に相当する。
【0050】
また、ここでいう試料液を拡げる予定範囲の外縁とは、例えば、シート状のフィルム培地本体が、中央に円形の培地部分が配置され、その外側が培地の無い領域で構成されたものであれば、円形の培地部分の外縁の部分を意味する。
【0051】
また、例えば、シート状のフィルム培地本体の培地部分が、試料液を拡げる予定範囲以上の面積を有する場合は、試料液を拡げる予定範囲の外縁とは、フィルム培地の種類に応じた、試料液を拡げる好ましい面積範囲の外縁の部分を意味する。
【0052】
また、図1(b)に示すように、押えリング板20の下端面には、下方に突出した凸状部200が形成されている。凸状部200は、上下方向から見て円形に形成されている。
【0053】
この凸状部200の下端が、上方から保護フィルムに当接して、試料液を拡げる予定範囲の外縁を押える部分となる。
【0054】
また、図1(a)及び図1(b)に示すように、押えリング板20には、凸状部200の内周面を外縁とする孔部201が形成されている。孔部201は、後述するスポンジ部30を配置する空間となる。なお、ここでいう押えリング板20の孔部201が形成された形状が、本願請求項における枠状に相当する。
【0055】
また、図1(a)及び図1(b)に示すように、枠体ユニット2には、4つのガイドシャフト21が設けられている。
【0056】
ガイドシャフト21は、押えリング板20と、ベース板10と、を接続する部材である。また、ガイドシャフト21は、後述するストローク機構において、ベース板10の昇降動作をガイドする軸部材となる。なお、ここでいうガイドシャフト21が、本願請求項における第1のシャフトに相当する。
【0057】
また、図1(b)に示すように、枠体ユニット2はボルト22を有している。ボルト22は、ガイドシャフト21の下端を、押えリング板20に固定する固定部材である。
【0058】
また、図1(a)に示すように、ガイドシャフト21の上部側は、ベース板10に形成された図示しない貫通孔に挿通され、ガイドシャフト21の上端部210が、ベース板10の上面よりも、上方に飛び出して配置されている。
【0059】
また、ベース板10は、駆動モータ5の駆動により、ガイドシャフト21の長手方向に沿って、上下方向に移動可能に構成されている。
【0060】
また、図1(a)に示すように、ガイドシャフト21の上部側には、ワッシャ23が取り付けられている。ワッシャ23は、ベース板10の図示しない貫通孔から、ガイドシャフト21の上端部210が下方に抜け落ちないようにするための抜け止め部材である。
【0061】
また、図1(a)及び図1(b)に示すように、ガイドシャフト21には、コイル状のばね24が外嵌めされている。また、図1(b)に示すように、ベース板10の底面におけるガイドシャフト21に対応する位置には、ばね座100が形成されている。
【0062】
ここで、ばね24は、押えリング板20がベース板10と共に押圧方向に移動して、保護フィルムを押圧する力が一定以上になった際に、収縮して、押えリング板20から保護フィルムへの過剰な圧力を吸収する部材である。なお、ここでいうばね24が、本願請求項における第1の規制ばねに相当する。また、ここでいうガイドシャフト21及びばね24が、本願請求項における枠体部圧力調整機構に相当する。
【0063】
また、ばね24は、押えリング板20が保護フィルムを押圧した状態から、さらに、ベース板10及びスポンジ部30の押圧方向への移動を可能にする部材である。
【0064】
即ち、ガイドシャフト21及びばね24の組み合わせでストローク機構を構成する。
【0065】
このストローク機構を設けることで、同一の駆動機構で、押えリング板20及びスポンジ部30を昇降動作させることと、押えリング板20が保護フィルムを押圧した状態から、さらに、スポンジ部30で保護フィルムを押圧して、フィルム培地で試料液を拡げることが実現可能となる。
【0066】
即ち、ストローク機構を設けることで、押えリング板20及びスポンジ部30のそれぞれに、昇降動作のための個別の駆動機構を設ける必要がなくなり、スプレッダー装置Aを、簡易かつ小型化した構造にできる。
【0067】
また、ストローク機構により、別途の圧力センサ等を設けることなく、押えリング板20が、保護フィルムを過剰に押圧することを抑止できる。
【0068】
また、ばね座100は、ばね24の上端部の受けとなる部材である。
【0069】
ここで、必ずしも、押えリング板20の下端面に凸状部200が形成される必要はなく、孔部201を形成した面の構造で、保護フィルムに当接して、試料液を拡げる構造を採用することができる。但し、保護フィルムと接触する面積が小さくなり、より小さな力で、試料液を拡げる予定範囲の外縁を押えることが可能となることから、押えリング板20の下端面に凸状部200が形成されることが好ましい。
【0070】
≪押圧ユニット≫
図1(a)に示すように、押圧ユニット3は、スポンジ部30と、スポンジ取付板31と、を有している。
【0071】
ここで、スポンジ部30は、フィルム培地における、フィルム培地本体と、保護フィルムとの間に試料液を挟んだ状態で、保護フォルムを押圧して、試料液を拡げる部材である。なお、ここでいうスポンジ部30が、本願請求項における弾性体に相当する。
【0072】
また、スポンジ取付板31は、スポンジ部30を貼り付けて固定するための円形の金属板である。
【0073】
また、図1(a)及び図1(b)に示すように、スポンジ部30は、鉛直方向に一定の厚みを有する円板状に形成されている。また、スポンジ部30の外周は、押えリング板20の孔部201よりも小さく形成されている。
【0074】
即ち、図2(b)に示すように、スポンジ部30で保護フィルムを押圧する前の状態では、水平方向において、孔部201の外縁と、スポンジ部30の外周との間には、隙間が形成されている。
【0075】
また、スポンジ部30は、鉛直方向において、スポンジ部30の下端の位置が、押えリング板20の凸状部200の下端の位置よりも上方に位置するように設けられている。
【0076】
即ち、押えリング板20及びスポンジ部30が、保護フィルムに当接する前の待機状態では、凸状部200の下端の方が、スポンジ部30の下端よりも押圧方向に飛び出た位置関係となっている。
【0077】
また、図1(a)及び図2(b)に示すように、スポンジ取付板31の外周は、スポンジ部30の外周と同じ大きさに形成されている。
【0078】
また、図2(a)及び図2(b)に示すように、押圧ユニット3は、調整ねじ32と、ナット33と、を有している。
【0079】
ここで、調整ねじ32は、スポンジ取付板31をベース板10に固定するねじ部材である。また、調整ねじ32は、鉛直方向における、スポンジ取付板31及びスポンジ部30の高さ位置を調整して、ベース板10に取り付ける部材である。
【0080】
即ち、スポンジ取付板31及びスポンジ部30は、調整ねじ32を介して、ベース部10に固定されており、駆動モータ5の駆動により、スポンジ取付板31及びスポンジ部30は、ベース部10と一体となって、上下方向に昇降動作する部材となる。
【0081】
また、上述した、凸状部200の下端の方が、スポンジ部30の下端よりも押圧方向に飛び出た位置関係は、調整ねじ32により、スポンジ取付板31及びスポンジ部30の高さ位置を調整したことで設定されている。
【0082】
また、図2(b)に示すように、調整ねじ32は、その下端がスポンジ取付板31の中心部に固定されている。また、調整ねじ32は、ナット33により、ベース板10と、スポンジ取付板31と、のそれぞれに固定されている。
【0083】
ここで、必ずしも、押圧ユニット3がスポンジ部30を有する必要はなく、保護フィルムに押圧した際に弾性変形する部材であれば、押圧部として採用しうる。例えば、ゴム等で形成した押圧部とすることもできる。
【0084】
また、必ずしも、スポンジ部30が、鉛直方向に一定の厚みを有する円板状に形成される必要はなく、水平方向において、スポンジ部30を孔部201の中に配置可能であれば、その形状と大きさは限定されず、適宜設定することができる。但し、フィルム培地において、培地の形状が円形のものを対象とする場合、試料液を円形に拡げやすくなる点から、スポンジ部30が、鉛直方向に一定の厚みを有する円板状に形成されることが好ましい。
【0085】
また、必ずしも、押えリング板20及びスポンジ部30が、保護フィルムに当接する前の待機状態で、凸状部200の下端の方が、スポンジ部30の下端よりも押圧方向に飛び出た位置関係となるように、スポンジ部30の高さ位置が調整される必要はない。例えば、凸状部200の下端よりも、スポンジ部30の下端の方が押圧方向に飛び出た位置関係にすることや、凸状部200の下端の位置と、スポンジ部30の下端の位置と、を合わせた位置関係に設定することもできる。このスポンジ部30の高さ位置は、試料液の検体や培地の種類等に応じて適宜設定することができる。
【0086】
また、必ずしも、押圧ユニット3は、1つの調整ねじ32を有する構造に限定されるものではなく、複数、例えば、4つの調整ねじ32を有する構造とすることができる。押圧ユニット3が、複数の調整ねじ32を有する場合には、スポンジ部30の全面の押圧力を一定の圧力にしやすくなり、より一層、一定の圧力で保護フィルムを押圧することが可能となる。
【0087】
≪動作制御の機構≫
本実施の形態1によるスプレッダー装置Aは、PC制御部を介して、各構成部及び機構の動作が制御されている。
【0088】
図3に示すように、PC制御部4は、PC(personal computer)40と、PLC(programmable logic controller)41と、モータドライバ42と、を有している。なお、図3は、動作制御に関する構成部材を簡易的に示した概念図であり、ここでは保持ユニットの記載は省略されている。
【0089】
また、図3に示すように、ベースユニット1、枠体ユニット2及び押圧ユニット3は、駆動モータ5及び上下駆動軸6を介して、上下方向に駆動可能に構成されている。
【0090】
ここで、PLC41を介した動作制御は、既知の機構及び手法を採用することができるため、詳細な説明は省略する。
【0091】
≪スプレッダー装置によるスプレッディング方法≫
本実施の形態1のスプレッダー装置Aによるスプレッディング方法について、図4(a)~図4(c)を用いて説明する。図4(a)~図4(c)の各図では、スプレッダー装置Aを側面側から見た概略断面を用いて、押圧方向への移動の流れを示している。
【0092】
まず、図4(a)に示すように、スプレッダー装置Aが、フィルム培地7に対するスプレッディング処理を開始する前の待機状態では、押えリング板20及びスポンジ部30は、フィルム培地7から離れた上方に位置している。
【0093】
なお、図4(a)~図4(c)では、フィルム培地7は、保護フィルム70をシート状のフィルム培地本体71に重ねた状態で示している。また、図示しないが、フィルム培地本体71の中央部に試料液が滴下され、保護フィルム70と、フィルム培地本体71との間に、試料液が挟まれた状態となっている。
【0094】
続いて、PC制御部4による動作制御を介して、スプレッディング処理が開始されると、駆動モータ5及び上下駆動軸6が駆動して、図示しない保持ユニットが下降する。
【0095】
また、保持ユニットに保持されたスプレッダー装置Aが下降し、ベース板10と一緒に、押えリング板20及びスポンジ部30が押圧方向に移動する。また、押圧方向への移動により、スプレッダー装置Aの最下部に位置する、押えリング板20の凸状部200の下端が、保護フィルム70の上面に当接する。
【0096】
また、凸状部200の下端が、保護フィルム70の上面に当接した状態から、ベース板10と一緒に、押えリング板20及びスポンジ部30がさらに押圧方向に移動すると、図4(b)に示すように、凸状部200の下端が保護フィルム70を押圧する。
【0097】
この押圧により、凸状部200の下端が、フィルム培地本体71における培地のみで構成された領域に対して、試料液を拡げる予定範囲の外縁を押えた状態となる。
【0098】
また、図4(b)の右側の拡大図に示すように、鉛直方向において、保護フィルム70と、凸状部200との間に隙間がなく、試料液が凸状部200よりも外側に漏れ出ないように、保護フィルム70が上方から押えられている。
【0099】
また、図4(b)の右側の拡大図に示すように、凸状部200の下端が保護フィルム70を押えた初期段階では、スポンジ部30の下端面は、保護フィルム70に当たっておらず、鉛直方向において、図中の符号Yで示した隙間が存在する。
【0100】
次に、凸状部200の下端が保護フィルム70を押圧した状態から、ベース板10がさらに押圧方向に移動すると、凸状部200が保護フィルム70を押圧する力が大きくなる。
【0101】
そして、凸状部200が保護フィルム70を押圧する力が、ばね24の付勢力を上回ると、ストローク機構により、押えリング板20は押圧方向に移動せず、ベース板10と一緒に、スポンジ取付板31及びスポンジ部30だけが、ばね24を下方に縮めながら、ガイドシャフト21に沿って、押圧方向に移動する。
【0102】
また、ベース板10と一緒に押圧方向に移動するスポンジ部30が、保護フィルム70に当接して、ベース板10及びスポンジ部30がさらに下降することで、図4(c)に示すように、スポンジ部30が保護フィルム70を上方から押圧する。
【0103】
このスポンジ部30による押圧により、保護フィルム70と、フィルム培地本体71との間に挟まれた試料液が、フィルム培地本体71の中央部から外側に向けて拡がっていく。
【0104】
また、図示しないが、スポンジ部30は、ベース板10と一緒にさらに下降することで、保護フィルム70に押し付けられ、スポンジ部30がつぶれるように弾性変形する。この状態では、スポンジ部30の保護フィルム70に対する密着度が高まり、より一層、試料液を拡げることができる。
【0105】
また、上述したように、フィルム培地本体71における培地のみで構成された領域において、試料液を拡げる予定範囲の外縁が、押えリング板20の凸状部200で押えられているため、試料液が凸状部200よりも外側に漏れ出ることを抑止できる。
【0106】
また、押えリング板20の凸状部200で囲んだ範囲は、培地のみで構成された領域であることから、培地に試料液を吸収させることができ、フィルム培地7を培養した際に、試料液に検査対象となる微生物が含まれていれば、良好な培養を担保することができる。
【0107】
さらに、スポンジ部30が保護フィルム70に密着して押圧することで、拡がっていく試料液の中に、外部から空気が入りにくくなり、拡がった試料液に気泡が混入することを抑止できる。
【0108】
以上のような流れで、スプレッダー装置Aにより、フィルム培地7に対して、試料液を自動的にスプレッディング処理することができる。また、スプレッダー装置Aによれば、検体や培地の種類によらず、培地上で試料液を所望の範囲に均等に拡げることができる。
【0109】
また、スプレッダー装置Aによれば、複数回、スプレッディング処理を行う場合でも、再現性高く、正確なスプレッディング処理を行うことができる。
【0110】
本実施の形態1によるスプレッダー装置Aのスプレッディング方法では、先行して、押えリング板20で保護フィルム70を押圧した後に、スポンジ部30を押圧方向に移動させ、スポンジ部30で保護フィルム70を押圧する流れとなっている。
【0111】
また、本実施の形態1の変形例として、上記の流れとは逆に、先行して、スポンジ部で保護フィルムを押圧した後に、押えリング板を押圧方向に移動させ、押えリング板で保護フィルムを押圧して、スプレッディング処理を行うことも可能である。この点について、図5を用いて説明する。
【0112】
なお、図5(a)~図5(d)及び図6(a)~図6(d)では、押圧のタイミングの違いについてポイントを絞って図示しているため、スプレッダー装置の各構成部分は模式的に示している。
【0113】
図5(a)に示すスプレッダー装置では、スプレッディング処理を開始する前の待機状態で、鉛直方向において、スポンジ部30aの下端が、押えリング板20aの凸状部200aの下端よりも下方に位置している。
【0114】
即ち、スポンジ部30aの下端の方が、凸状部200aの下端よりも押圧方向に飛び出た位置関係となっている。
【0115】
また、このスポンジ30aの高さ位置は、調整ねじ32により、スポンジ部30aの高さ位置を調整したことで設定することができる。なお、図5(a)のスプレッダー装置のその他の構成は、上述したスプレッダー装置Aと同様である。
【0116】
そして、PC制御部4を介して、スプレッディング処理が開始されると、図5(b)に示すように、スポンジ部30a及び押えリング板20aが押圧方向に移動する。
【0117】
また、図5(c)に示すように、押圧方向への移動により、スプレッダー装置の最下部に位置するスポンジ部30aの下端が、保護フィルム70の上面に当たり、その状態から、スポンジ部30a及び押えリング板20aがさらに押圧方向に移動すると、スポンジ部30aの下端が保護フィルム70を押圧する。
【0118】
また、スポンジ部30aの下端が保護フィルム70を押圧することで、保護フィルム70と、フィルム培地本体71との間に挟まれた試料液が、フィルム培地本体71の中央部から外側に向けて拡がっていく。
【0119】
また、図5(c)に示すように、スポンジ部30aの下端が保護フィルム70を押えたばかりの初期段階では、凸状部200aの下端面は、保護フィルム70に当たっていない。
【0120】
次に、スポンジ部30aの下端が保護フィルム70を押圧した状態から、ベース板10がさらに押圧方向に移動すると、スポンジ部30aが保護フィルム70を押圧する力が大きくなる。
【0121】
そして、スポンジ部30aが保護フィルム70を押圧する力が、ばね24の付勢力を上回ると、ストローク機構により、スポンジ部30aは押圧方向に移動せず、ベース板10及び押えリング板20aだけが、ばね24を縮めながら、ガイドシャフト21に沿って、押圧方向に移動する。
【0122】
また、図5(d)に示すように、ベース板10と共に押圧方向に移動する凸状部200aが、保護フィルム70に当接して、ベース板10及び凸状部200aがさらに下降することで、凸状部200aが保護フィルム70を上方から押圧する。
【0123】
この押圧により、凸状部200aの下端が、フィルム培地本体71における培地のみで構成された領域に対して、試料液を拡げる予定範囲の外縁を押えた状態となる。
【0124】
この図5(a)~図5(d)に示すスプレッダー装置では、先行して、スポンジ部30aで保護フィルム70を押圧した後に、押えリング板20aを押圧方向に移動させ、押えリング板20aで保護フィルム70を押圧して、スプレッディング処理を行うことができる。
【0125】
この態様では、スポンジ部30aの押圧により試料液を拡げながら、フィルム培地本体71上の試料液を拡げる予定範囲に試料液が到達する前のタイミングで、凸状部200aの下端が、試料液を拡げる予定範囲の外縁を押えるスプレッディング方法となる。
【0126】
このように、本実施の形態1の変形例では、先行して、スポンジ部30aで保護フィルム70を押圧する構造とすることができる。なお、図6(a)~図6(d)は、上述したスプレッダー装置Aによるフィルム培地の押圧の流れを示し、図5(a)~図5(d)との比較のために提示している。
【0127】
さらに、図示しないが、本実施の形態1の更なる変形例としては、スポンジ部の高さ位置を調整して、スプレッディング処理を開始する前の待機状態で、鉛直方向において、スポンジ部の下端が、押えリング板の凸状部の下端と同じ位置にある構造とすることもできる。
【0128】
また、この更なる変形例としては、駆動モータ5及び上下駆動軸6以外に、スポンジ部のみを押圧方向に移動させる別途の駆動機構を設けておくこともできる。
【0129】
このようなスプレッダー装置では、スポンジ部及び押えリング板が一緒に押圧方向に移動して、両部材が保護フィルムを同時に押圧する。また、この状態から、別途の駆動機構で、スポンジ部のみをさらに、押圧方向に移動させる。
【0130】
この更なる変形例のスプレッダー装置のように、鉛直方向において、スポンジ部の下端の位置と、押えリング板の凸状部の下端の位置と、を揃えて、保護フィルムを同時に押圧しながら、さらにスポンジ部を保護フィルムに押し付けて、フィルム培地に試料液を拡げるスプレッディング処理を行うことも可能である。
【0131】
(実施の形態2)
続いて、本実施の形態2によるスプレッダー装置について、図7図8(a)及び図8(b)を用いて説明する。
【0132】
ここで、上述した本実施の形態1と、本実施の形態2の構造における違いは、本実施の形態2がストッパボルト16を備えている点にある。なお、ここでいうストッパボルト16が、本願請求項におけるストッパー部に相当する。
【0133】
図7に示すように、本実施の形態2によるスプレッダー装置Bは、ストッパボルト16を有している。
【0134】
ここで、ストッパボルト16は、スポンジ部30がベース板10と共に押圧方向に移動して、保護フィルムを押圧する時に、ベース板10が一定位置まで下がった所で、ストッパボルト16の下端が、押えリング板20の上面に当たって、ベース板10及びスポンジ部30が、それ以上押圧方向に移動しないようにするためのストッパーとなる部材である。
【0135】
即ち、ストッパボルト16により、スポンジ部30の押圧方向への移動を規制することで、スポンジ部30が保護フィルムを押圧する際、スポンジ部30から保護フィルムに過剰な圧力が付与されないようにすることができる。
【0136】
図7に示すように、ストッパボルト16は、その上端がナット17を介してベース板10に固定されている。また、ベース板10には、各一辺に1つずつ、合計4つのストッパボルトが設けられている。なお、ここでいうストッパボルト16及びナット17が、本願請求項における押圧部圧力調整機構に相当する。
【0137】
また、図7及び図8(a)に示すように、スプレッディング処理を開始する前の待機状態で、鉛直方向において、ストッパボルト16の下端160は、押えリング板20の上面202から、一定の距離、離れて配置されている。なお、図8(b)には、図8(a)の図中の矢印A-A方向から見た概略部分断面図を示している。
【0138】
このストッパボルト16の下端160と、押えリング板20の上面202との間の距離を変えることで、スポンジ部30が保護フィルムを押圧する際の圧力を調整することができる。
【0139】
続いて、本実施の形態2のスプレッダー装置Bによるスプレッディング方法について、ストッパボルト16の動きを中心に、図9(a)~図9(c)を用いて説明する。図9(a)~図9(c)の各図では、スプレッダー装置Bを側面側から見た概略断面を用いて、押圧方向への移動の流れを示している。
【0140】
まず、スプレッダー装置Bが、フィルム培地7に対するスプレッディング処理を開始する前の待機状態では、ストッパボルト16は、押えリング板20の上面202から離れている。
【0141】
また、図9(a)に示すように、押えリング板20及びスポンジ部30が押圧方向に移動し、押えリング板20の凸状部200の下端が保護フィルム70を押圧する。この状態でも、ストッパボルト16の下端160は、押えリング板20の上面202から離れている。
【0142】
次に、図9(b)に示すように、ストローク機構により、押えリング板20は押圧方向に移動せず、スポンジ部30だけが押圧方向に移動し、スポンジ部30が保護フィルム70を上方から押圧する。
【0143】
この図9(b)に示す状態では、ベース板10及びスポンジ部30が一緒に下降するため、ストッパボルト16も下降する。しかし、スポンジ部30が保護フィルム70を押圧する初期段階では、ストッパボルト16の下端160は、押えリング板20の上面202に当たらない。
【0144】
続けて、図9(c)に示すように、スポンジ部30が、ベース板10と一緒にさらに下降することで、保護フィルム70に押し付けられ、スポンジ部30がつぶれるように弾性変形する。
【0145】
このスポンジ部30がさらに下降する動きで、ストッパボルト16も一緒に下降し、図9(c)に示すように、ストッパボルト16の下端160が、押えリング板20の上面202に当接する。
【0146】
このように、ストッパボルト16の下端160が、押えリング板20の上面202に当接すると、ベース板10及びスポンジ部30は、それ以上押圧方向に進めなくなり、下方への移動が規制される。
【0147】
このスプレッダー装置Bによれば、フィルム培地7に対して、検体や培地の種類によらず、培地上で試料液を所望の範囲に均等に拡げることができ、さらに、スポンジ部30が保護フィルム70へと、過剰な圧力を付与することを抑止できる。
【0148】
(実施の形態3)
続いて、本実施の形態3によるスプレッダー装置について、図10図11(a)及び図11(b)を用いて説明する。
【0149】
ここで、上述した本実施の形態1と、本実施の形態3の構造における違いは、本実施の形態1における調整ねじ32に代えて、スライド軸34と、ばね35と、を取り付けた点にある。なお、ここでいうスライド軸34が、本願請求項における第2のシャフトに相当する。また、ここでいうばね35が、本願請求項における第2の規制ばねに相当する。また、ここでいうスライド軸34及びばね35が、本願請求項における押圧部圧力調整機構に相当する。
【0150】
図11(a)に示すように、本実施の形態3によるスプレッダー装置Cは、スライド軸34と、ばね35と、を有している。なお、図10には、スプレッダー装置Cの全体構造の概略斜視図を示すが、同図では、スライド軸34及びばね35は表れていない。
【0151】
ここで、スライド軸34は、スポンジ取付板31及びスポンジ部30と、ベース板10と、を接続する部材である。また、スライド軸34は、ベース板10の昇降動作をガイドする軸部材となる。
【0152】
このスライド軸34は、その下端がスポンジ取付板31に固定されている。また、スライド軸34の上部側は、ベース板10に形成された図示しない貫通孔に挿通され、スライド軸の上端部が、ベース板10の上面よりも、上方に飛び出して配置されている。
【0153】
また、ベース板10は、駆動モータ5の駆動により、スライド軸34の長手方向に沿って、上下方向に移動可能に構成されている。
【0154】
また、図11(a)及び図11(b)に示すように、スライド軸34の上部側には、ワッシャ36が取り付けられている。ワッシャ36は、ベース板10の図示しない貫通孔から、スライド軸34の上端部が下方に抜け落ちないようにするための抜け止め部材である。
【0155】
また、図11(a)及び図11(b)に示すように、スライド軸34には、コイル状のばね35が外嵌めされている。
【0156】
ここで、ばね35は、スポンジ部30がベース板10と共に押圧方向に移動して、保護フィルムを押圧する力が一定以上になった際に、収縮して、スポンジ部30から保護フィルムへの過剰な圧力を吸収する部材である。
【0157】
このように、スプレッダー装置Cでは、スライド軸34及びばね35を設けることで、スポンジ部30が保護フィルムに過剰な圧力を付与することを抑止できる。
【0158】
ここで、必ずしも、スプレッダー装置Cは、1つのスライド軸34を有する構造に限定されるものではなく、複数、例えば、4つのスライド軸34を有する構造とすることができる。スプレッダー装置Cが、複数のスライド軸34を有する場合には、スポンジ部30の全面の押圧力を一定の圧力にしやすくなり、より一層、一定の圧力で保護フィルムを押圧することが可能となる。
【0159】
また、スプレッダー装置Cでは、押えリング板20に設けられたガイドシャフト21及びばね24と、スポンジ取付板31に設けられたスライド軸34及びばね35との、それぞれのばね機構を介して、押えリング板20及びスポンジ部30の押圧力を調整可能な構造となっている。
【0160】
即ち、ばね24と、ばね35との、それぞれ2つのばねの付勢力を調整することで、保護フィルムに対する押えリング板20による押圧力と、スポンジ部30による押圧力とを、任意の押圧力に調整することができる。これにより、スプレッダー装置Cでのフィルム培地に対する押圧の程度を、任意の条件で設定することができる。
【0161】
ここで、任意の押圧力に設定する一例として、保護フィルムに対して、試料液が拡がる予定範囲の外縁は強く抑えたいが、その外縁の内側の範囲は弱く押さえたいケースが想定される。
【0162】
もし、スプレッダー装置Cにおいて、ばね24及びばね25がない構造であれば、押えリング板20及びスポンジ部30は、駆動モータ5を介して同一の駆動源で押圧方向に移動するため、押えリング板20が、試料液が拡がる予定範囲の外縁を強く押さえた際に、その外縁の内側の範囲が、スポンジ部30から受ける加圧力も大きくなる。
【0163】
その結果、フィルム培地では、不要な加圧力がかかることで、その中心部側の試料液が薄くなってしまい、適切な培養が担保できなくなる。
【0164】
一方、スプレッダー装置Cでは、ばね24及びばね35により、押えリング板20による押圧力と、スポンジ部30による押圧力を、任意の押圧力に調整することができるため、フィルム培地において、試料液が拡がる予定範囲の外縁は強く抑え、その外縁の内側の範囲は弱く押さえることが可能となる。
【0165】
また、スプレッダー装置Cは、図5に示すような、先行して、スポンジ部で保護フィルムを押圧した後に、押えリング板を押圧方向に移動させ、押えリング板で保護フィルムを押圧して、スプレッディング処理を行う装置としても適用可能である。
【0166】
この際、スプレッダー装置Cでは、スライド軸34及びワッシャ36を介して、鉛直方向において、スポンジ部30の下端の位置が、押圧方向に最も飛び出た位置となるように、スポンジ部30の位置を調整することができる。
【0167】
また、図5に示すように、先行して、スポンジ部で保護フィルムを押圧する方法においても、スプレッダー装置Cが、ばね24及びばね35を有するため、先行して、押えリング板で保護フィルムを押圧する方法と同様に、フィルム培地において、試料液が拡がる予定範囲の外縁は強く抑え、その外縁の内側の範囲は弱く押さえることができる。
【0168】
なお、本実施の形態3の変形例として、本実施の形態1における調整ねじ32に代えて、ばね35が外嵌めされていないスライド軸34を取り付けてもよい。この変形例では、スポンジ部30及びスポンジ取付板31の自重加圧のみによって、保護フィルムを押圧することにより、スポンジ部30の全面の押圧力が一定となり、保護フィルムを一定の圧力で押圧することができる。なお、この場合、ここでいうスライド軸34が、本願請求項における押圧部圧力調整機構に相当する。
【0169】
以上で説明した実施の形態1、実施の形態2及び実施の形態3を含む、本発明の主な作用について説明する。
【0170】
ここで、一実施の形態であるスプレッダー装置では、枠体部が、保護フィルムを押圧すると共に、押圧方向から見た形状が枠状に形成され、かつ、フィルム培地本体における枠状の内側は培地のみで構成されるように培地を囲むことによって、フィルム培地本体の培地のみで構成される領域に対して、試料液を拡げる予定範囲の外縁を枠体部で押えることができる。このことによれば、試料液を拡げる際に、枠体部より外側に試料液が漏れ出ることを抑止でき、所望の範囲内に収まるように、試料液を拡げることが可能となる。また、枠状の内側が培地のみで構成されることから、より確実に、培地に試料液を吸収させることができ、良好な培養を担保することができる。
【0171】
また、押圧部が、保護フィルムを押圧すると共に、押圧方向から見て枠体部の内側に配置され、弾性体で形成されたことによって、枠体部に向かって、試料液を均等に拡げることができる。また、弾性体を変形させながら保護フィルムに押し付けることができ、気泡の混入を抑止しながら、試料液を拡げることが可能となる。
【0172】
また、押圧部が、枠体部から独立して昇降動作を行い、保護フィルムを押圧することによって、枠体部が保護フィルムを押圧するタイミングと、押圧部が保護フィルムを押圧するタイミングと、を異ならせることができる。即ち、枠体部による押圧と、押圧部による押圧とを、任意の条件で行い易くなり、試料液の検体や培地の種類等に応じて、幅広い条件でのスプレッディング処理を施すことができる。
なお、ここでいう枠体部から独立して昇降動作を行うとは、必要なタイミングにおいて、押圧部が枠体部から独立した昇降動作が可能であることを意味し、押圧部が常に、枠体部から独立した昇降動作を行うことを必要とするものではない。
【0173】
また、枠体部による保護フィルムに対する押圧を規制する枠体部圧力調整機構をさらに備える場合には、枠体部自体に負荷がかかり、枠体部が損傷することや、枠体部からの過剰な圧力により、フィルム培地が破損することを抑止できる。
【0174】
また、押圧部及び枠体部の押圧方向と反対方向に配置されると共に、押圧部と一体的に昇降動作するベース部をさらに備え、第1のシャフトが、ベース部と、枠体部との間に配置され、一端が枠体部に固定された場合には、ベース部の昇降動作に伴い、押圧部及び枠体部を昇降動作させることができる。
【0175】
また、枠体部圧力調整機構が、ベース部と、枠体部との間に配置され、一端が枠体部に固定され、他端がベース部に抜け止めされて挿通された第1のシャフトと、コイル状のばね部材であり、第1のシャフトに外嵌めされた第1の規制ばねと、を有する場合には、押圧部と枠体部を共通する1つの駆動源で昇降させる構造としつつ、枠体部から過剰な圧力が保護フィルムにかかることを抑止できる。即ち、枠体部が保護フィルムを押圧する際には、一定の位置までは、枠体部と、ベース部及び押圧部と、が押圧方向に一緒に移動する。そして、枠体部が保護フィルムを押圧する力が一定以上になった際、第1の規制ばねの付勢力を上回る。その結果、枠体部が、それ以上押圧方向に移動せず、第1のシャフトに沿って、ベース部及び押圧部のみが、第1の規制ばねを縮めながら押圧方向に移動する。つまり、枠体部から保護フィルムにかかる圧力を、第1の規制ばねの収縮により吸収することができる。また、このことによれば、枠体部で保護フィルムを押圧しながら、押圧部でさらに保護フィルムを押圧することが可能となる。
【0176】
また、押圧部による保護フィルムに対する押圧を規制する押圧部圧力調整機構をさらに備える場合には、押圧部自体に負荷がかかり、押圧部が損傷することや、押圧部からの過剰な圧力により、フィルム培地が破損することを抑止できる。
【0177】
また、押圧部及び枠体部の押圧方向と反対方向に配置されると共に、押圧部と一体的に昇降動作するベース部をさらに備え、ストッパー部が、ベース部と、枠体部との間に配置されると共に、他端がベース部に固定された場合には、ベース部の昇降動作に伴い、押圧部及びストッパー部を昇降動作させることができる。
【0178】
また、押圧部圧力調整機構が、ベース部と、枠体部との間に配置されると共に、他端がベース部に固定され、一端が枠体部に向けて延び出して形成され、一端が枠体部に当接することで、押圧部の押圧方向への移動を停止するストッパー部を有する場合には、押圧部が保護フィルムを押圧する際に、ストッパー部も押圧方向に移動し、その一端が枠体部に当接することで、押圧部がそれ以上押圧方向に移動しないように止めることができる。
【0179】
また、押圧部及び枠体部の押圧方向と反対方向に配置されると共に、昇降動作するベース部をさらに備え、第2のシャフトが、ベース部と、押圧部との間に配置され、一端が押圧部に固定され、他端がベース部に抜け止めされて挿通された場合には、ベース部の昇降動作に伴い、押圧部を昇降動作させることができる。
【0180】
また、押圧部圧力調整機構が、ベース部と、押圧部との間に配置され、一端が押圧部に固定され、他端がベース部に抜け止めされて挿通された第2のシャフトと、コイル状のばね部材であり、第2のシャフトに外嵌めされた第2の規制ばねと、を有する場合には、第2の規制ばねにより、押圧部から過剰な圧力が保護フィルムにかかることを抑止できる。即ち、押圧部が保護フィルムを押圧する際には、一定の位置までは、押圧部及びベース部が押圧方向に一緒に移動する。そして、押圧部が保護フィルムを押圧する力が一定以上になった際、第2の規制ばねの付勢力を上回る。その結果、押圧部が、それ以上押圧方向に移動せず、第2のシャフトに沿って、ベース部のみが、第2の規制ばねを縮めながら押圧方向に移動する。つまり、押圧部から保護フィルムにかかる圧力を、第2の規制ばねの収縮により吸収することができる。
【0181】
また、枠体部が、弾性体よりも変形量が少ない部材で構成された場合には、枠体部及び押圧部のそれぞれで保護フィルムを押圧した際に、枠体部で、試料液を拡げる予定範囲の外縁をしっかり押えつつ、押圧部を弾性変形させながら、保護フィルムに押し付けて、より一層確実に、試料液を枠体部で押圧した位置まで拡げることができる。
【0182】
また、弾性体はスポンジである場合には、比較的簡易かつ安価な部材で、押圧部を構築することができる。
【0183】
また、一実施の形態であるスプレッディング方法では、枠状体押圧工程で、押圧方向から見た視点において、枠状体の内側が、フィルム培地本体における培地のみで構成されるように枠状体で培地を囲んで、保護フィルムを枠状体で押圧することによって、培地のみで構成される領域に対して、試料液を拡げる予定範囲の外縁を枠状体で押えることができる。このことによれば、試料液を拡げる際に、枠状体より外側に試料液が漏れ出ることを抑止して、所望の範囲内に収まるように、試料液を拡げることが可能となる。また、枠状体の内側が培地のみで構成されることから、より確実に、培地に試料液を吸収させることができ、良好な培養を担保することができる。
【0184】
また、弾性体押圧工程で、保護フィルムのうち、試料液が滴下された領域を弾性体で押圧することによって、試料液を均等に拡げることができる。また、弾性体を変形させながら保護フィルムに押し付けることで、気泡の混入を抑止しながら、試料液を拡げることが可能となる。
【0185】
また、枠状体押圧工程及び弾性体押圧工程では、同一の駆動機構を介して、枠状体及び弾性体を、押圧方向又は押圧方向と反対方向に移動させ、枠状体又は弾性体のいずれか一方が保護フィルムを押圧した状態から、他方のみを押圧方向に移動させる場合には、1つの駆動機構の駆動のみで、枠状体で試料液を拡げる予定範囲の外縁を押える動作と、弾性体を押し付けて試料液を均等に拡げる動作と、の両方を行うことができる。また、枠状体による押圧と、弾性体による押圧と、を任意の条件で行い易くなり、試料液の検体や培地の種類等に応じて、幅広い条件でのスプレッディング処理を施すことができる。
【0186】
以上のように、本発明のスプレッダー装置は、フィルム培地に対するスプレッディング処理を自動で行う際に、検体や培地の種類によらず、培地上で試料液を所望の範囲に均等に拡げることができ、再現性の高いスプレッディング処理が可能なものとなっている。
また、本発明のスプレッディング方法は、フィルム培地に対するスプレッディング処理を自動で行う際に、検体や培地の種類によらず、培地上で試料液を所望の範囲に均等に拡げることができ、再現性の高いスプレッディング処理が可能なものとなっている。
【0187】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0188】
A スプレッダー装置
1 ベースユニット
10 ベース板
100 ばね座
11 上部取付ガイド板
12 下部取付ガイド板
13 支柱部
14 ボルト
15 ボルト
2 枠体ユニット
20 押えリング板
20a 押えリング板
200 凸状部
200a 凸状部
201 孔部
21 ガイドシャフト
210 上端部
22 ボルト
23 ワッシャ
24 ばね
3 押圧ユニット
30 スポンジ部
30a スポンジ部
31 スポンジ取付板
32 調整ねじ
33 ナット
4 PC制御部
40 PC
41 PLC
42 モータドライバ
5 駆動モータ
6 上下駆動軸
7 フィルム培地
70 保護フィルム
71 フィルム培地本体

B スプレッダー装置
16 ストッパボルト
160 下端
17 ナット
202 上面

C スプレッダー装置
34 スライド軸
35 ばね
36 ワッシャ
図1
図2
図3
図4
図5
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図10
図11