IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社カネカの特許一覧

<>
  • 特開-インフレーション成形体 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047854
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】インフレーション成形体
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20240401BHJP
   C08L 67/04 20060101ALI20240401BHJP
   C08K 5/10 20060101ALI20240401BHJP
   B65D 30/02 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
C08J5/18 CFD
C08L67/04 ZBP
C08K5/10
B65D30/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153583
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】苗 偉
【テーマコード(参考)】
3E064
4F071
4J002
【Fターム(参考)】
3E064AA01
3E064BA54
3E064BC18
3E064BC20
3E064EA04
3E064HJ01
4F071AA43
4F071AC10
4F071AC12
4F071AE04
4F071AH01
4F071AH04
4F071AH05
4F071AH07
4F071AH19
4F071BB06
4F071BB09
4F071BC01
4F071BC12
4J002CF181
4J002CH032
4J002EH036
4J002EH046
4J002EH056
4J002EH096
4J002FD022
4J002FD026
4J002GG02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂を含有し、穴空きの発生を抑制しつつ、良好な生産性で製造でき、良好な耐ブロッキング性及びヒートシール性を有し、実使用が可能な強度を有するインフレーション成形体の提供。
【解決手段】ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分、及び可塑剤を含むインフレーション成形体。前記樹脂成分は、3-ヒドロキシブチレート単位と他のヒドロキシアルカノエート単位との共重合体として、他のヒドロキシアルカノエート単位の含有割合が1モル%以上5モル未満%である共重合体(A)、同割合が24モル%以上である共重合体(B)、同割合が5モル%以上24モル%未満である共重合体(C)を含む。共重合体(A)、(B)及び(C)の合計に対する(C)の割合は15~45重量%、前記可塑剤の含有量は前記樹脂成分の総量100重量部に対して3重量部以上10重量部未満である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分、及び、可塑剤を含有する、インフレーション成形体であって、
前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分が、
他のヒドロキシアルカノエート単位の含有割合が1モル%以上5モル未満%である、3-ヒドロキシブチレート単位と他のヒドロキシアルカノエート単位との共重合体(A)、
他のヒドロキシアルカノエート単位の含有割合が24モル%以上である、3-ヒドロキシブチレート単位と他のヒドロキシアルカノエート単位との共重合体(B)、及び
他のヒドロキシアルカノエート単位の含有割合が5モル%以上24モル%未満である、3-ヒドロキシブチレート単位と他のヒドロキシアルカノエート単位との共重合体(C)を含み、
前記共重合体(A)、前記共重合体(B)及び前記共重合体(C)の合計に対する前記共重合体(C)の割合が、15~45重量%であり、
前記可塑剤の含有量は、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分の総量100重量部に対して3重量部以上10重量部未満である、インフレーション成形体。
【請求項2】
ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂と有機過酸化物との溶融混錬物を実質的に含有しない、請求項1に記載のインフレーション成形体。
【請求項3】
前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分を構成する全モノマー単位に占める前記他のヒドロキシアルカノエート単位の平均含有割合が、10~18モル%である、請求項1又は2に記載のインフレーション成形体。
【請求項4】
前記他のヒドロキシアルカノエート単位が、3-ヒドロキシヘキサノエート単位である、請求項1又は2に記載のインフレーション成形体。
【請求項5】
前記可塑剤が、変性グリセリン系化合物である、請求項1又は2に記載のインフレーション成形体。
【請求項6】
前記変性グリセリン系化合物が、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリンジアセトモノオレート、グリセリンジアセトモノステアレート、グリセリンジアセトモノカプリレート、及び、グリセリンジアセトモノデカノエートからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項5に記載のインフレーション成形体。
【請求項7】
前記インフレーション成形体が、ヒートシールによって融着した部位を含む、請求項1又は2に記載のインフレーション成形体。
【請求項8】
前記インフレーション成形体が袋である、請求項7に記載のインフレーション成形体。
【請求項9】
前記インフレーション成形体の膜厚が10~100μmである、請求項1又は2に記載のインフレーション成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分を含有するインフレーション成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
石油由来プラスチックは毎年大量に廃棄されており、これらの大量廃棄物による環境汚染が深刻な問題として取り上げられている。また近年、マイクロプラスチックが、海洋環境において大きな問題になっている。
【0003】
ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂は優れた海水分解性を有しており、廃棄されたプラスチックが引き起こす環境問題を解決しうる材料である。例えば、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂の1種であるポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)は3-ヒドロキシヘキサノエートの組成比率を変化させることにより、機械特性を柔軟にコントロールできる。
【0004】
しかし、3-ヒドロキシヘキサノエートの組成比率を上昇させると、結晶性が低下することにより、その成形体の強度は向上するものの、成形体の生産性が低下する傾向がある。成形体に要求される機械特性を実現するためには、工業的な生産が極めて困難なレベルになるまで3-ヒドロキシヘキサノエートの組成比率を上昇させる必要があった。そのため、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂を用いて良好な生産性および強度の双方を満足する成形体を得ることは難しかった。
【0005】
特許文献1では、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂を含有するインフレーション成形体において、高い強度と良好な生産性を両立するため、構成モノマーの種類及び/又はその含有割合が互いに異なる少なくとも2種類のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂を使用することが開示されている。
【0006】
また、特許文献2では、良好な機械特性と生産性に加え、耐ブロッキング性を有するインフレーション成形を提供するため、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂を特定量の有機過酸化物と共に溶融混錬して得られた反応物を使用することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2022-37396号公報
【特許文献2】国際公開第2022/044836号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載のインフレーション成形体では、高い強度と良好な生産性を達成できるものの、耐ブロッキング性が低く、例えば袋に加工した時の口開き性が悪かったり、また、ヒートシールによって袋の形状に加工した時の強度が不十分で、実使用に耐えないという問題があった。
【0009】
また、特許文献2に記載のインフレーション成形体では、耐ブロッキング性は改善されるものの、インフレーション成形体(特に膜厚の薄いフィルム)に穴空き等の欠陥が生じやすいという問題があった。
【0010】
本発明は、上記現状に鑑み、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂を含有するインフレーション成形体であって、穴空きの発生を抑制しつつ、良好な生産性で製造でき、良好な耐ブロッキング性及びヒートシール性を有し、実使用が可能な強度を有するインフレーション成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂成分を特定のモノマー比率を有する3種類の共重合体の組合せから構成し、かつ、特定量の可塑剤を配合することで、穴空きの発生を抑制しつつ、良好な生産性で製造でき、良好な耐ブロッキング性及びヒートシール性を有し、実使用が可能な強度を有するインフレーション成形体を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分、及び、可塑剤を含有する、インフレーション成形体であって、
前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分が、
他のヒドロキシアルカノエート単位の含有割合が1モル%以上5モル未満%である、3-ヒドロキシブチレート単位と他のヒドロキシアルカノエート単位との共重合体(A)、
他のヒドロキシアルカノエート単位の含有割合が24モル%以上である、3-ヒドロキシブチレート単位と他のヒドロキシアルカノエート単位との共重合体(B)、及び
他のヒドロキシアルカノエート単位の含有割合が5モル%以上24モル%未満である、3-ヒドロキシブチレート単位と他のヒドロキシアルカノエート単位との共重合体(C)を含み、
前記共重合体(A)、前記共重合体(B)及び前記共重合体(C)の合計に対する前記共重合体(C)の割合が、15~45重量%であり、
前記可塑剤の含有量は、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分の総量100重量部に対して3重量部以上10重量部未満である、インフレーション成形体に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂を含有するインフレーション成形体であって、穴空きの発生を抑制しつつ、良好な生産性で製造でき、良好な耐ブロッキング性及びヒートシール性を有し、実使用が可能な強度を有するインフレーション成形体を提供することができる。
【0014】
本発明に係るインフレーション成形体は、ヒートシールによって一部を融着させることで袋や、手袋、シャワーキャップ、エプロン、ストロー包装用袋等の袋容器、機器類の袋状の保護資材、取扱説明書などの各種書類の保管用袋等の物品に加工することができ、得られた物品は、実使用に適した強度を示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例及び比較例で作製した袋の外観を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施形態について説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0017】
本実施形態は、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分、及び、可塑剤を含有するインフレーション成形体に関する。
【0018】
(ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分)
ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)樹脂成分は、構成モノマーの含有割合が互いに異なる少なくとも3種類のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂を含む。各ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂は、3-ヒドロキシブチレート(以下、3HBと称する場合がある)単位と他のヒドロキシアルカノエート単位との共重合体である。
【0019】
前記他のヒドロキシアルカノエート単位は、3HB単位以外の3-ヒドロキシアルカノエート単位であってよいし、3-ヒドロキシアルカノエート単位以外のヒドロキシアルカノエート単位(例えば、4-ヒドロキシアルカノエート単位)であってもよい。前記他のヒドロキシアルカノエート単位は、1種のみが含まれてもよいし、2種以上が含まれてもよい。
【0020】
前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂としては、特に微生物から産生されるポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂が好ましい。微生物から産生されるポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂においては、3-ヒドロキシアルカノエート単位が、全て(R)-3-ヒドロキシアルカノエート単位として含有される。
【0021】
ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂の具体例としては、例えば、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシプロピオネート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート)(略称:P3HB3HV)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(略称:P3HB3HH)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘプタノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシオクタノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシノナノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシデカノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシウンデカノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)(略称:P3HB4HB)等が挙げられる。特に、インフレーション成形体の生産性および機械特性等の観点から、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、又は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)が好ましく、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)が特に好ましい。
【0022】
前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分は、少なくとも、以下のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂を含有する。
他のヒドロキシアルカノエート単位の含有割合が1モル%以上5モル未満%である、3-ヒドロキシブチレート単位と他のヒドロキシアルカノエート単位との共重合体(A)、
他のヒドロキシアルカノエート単位の含有割合が24モル%以上である、3-ヒドロキシブチレート単位と他のヒドロキシアルカノエート単位との共重合体(B)、
他のヒドロキシアルカノエート単位の含有割合が5モル%以上24モル%未満である、3-ヒドロキシブチレート単位と他のヒドロキシアルカノエート単位との共重合体(C)
【0023】
共重合体(A)は、高結晶性のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂であるのに対し、共重合体(B)は、低結晶性のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂である。共重合体(C)は、結晶性が共重合体(A)と共重合体(B)の中間にある中結晶性のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂である。
【0024】
一般に、高結晶性のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂は生産性に優れるが機械特性が乏しい性質を有し、低結晶性のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂は生産性に劣るが優れた機械特性を有する。上述した3種類の樹脂を組み合わせて使用することで、穴空きの発生を抑制しつつ、良好な生産性で製造でき、良好な耐ブロッキング性及びヒートシール性を有し、実使用が可能な強度を有するインフレーション成形体を提供することが可能になる。
【0025】
共重合体(A)における他のヒドロキシアルカノエート単位の含有割合は、1モル%以上5モル%未満である。インフレーション成形性の観点から、前記割合の下限は2モル%以上であることが好ましく、上限は4モル%以下であることが好ましい。
【0026】
共重合体(A)としては、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、又は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)が好ましく、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)がより好ましい。
【0027】
共重合体(B)における他のヒドロキシアルカノエート単位の含有割合は、24モル%以上である。インフレーション成形体の強度の観点から、前記割合の下限は26モル%以上であることが好ましく、28モル%以上がより好ましい。また、共重合体(B)の生産性の観点から、前記割合の上限は99モル%以下であることが好ましく、50モル%以下がより好ましく、40モル%以下がより更に好ましく、30モル%以下が特に好ましい。
【0028】
共重合体(B)としては、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、又は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)が好ましく、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)がより好ましい。
【0029】
共重合体(A)と共重合体(B)の合計に対する各共重合体の使用割合は特に限定されないが、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂の生産性の観点から、共重合体(A)と共重合体(B)の合計に対する共重合体(B)の割合は40重量%以上であることが好ましく、50重量%以上がより好ましい。また、インフレーション成形性、袋等に加工した時の実用性などの観点から、80重量%以下であることが好ましく、70重量%以下がより好ましい。
【0030】
共重合体(C)における他のヒドロキシアルカノエート単位の含有割合は、5モル%以上24モル%未満である。インフレーション成形性の観点から、前記割合の上限は、20モル%以下であることが好ましく、15モル%以下がより好ましく、10モル%以下がさらに好ましい。
【0031】
共重合体(C)としては、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、又は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)が好ましく、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)がより好ましい。
【0032】
本実施形態に係るインフレーション成形体において、共重合体(A)、共重合体(B)及び共重合体(C)の合計に対する共重合体(C)の割合は、15~45重量%である。共重合体(C)の割合を15重量%以上とすることによって、耐ブロッキング性を改善することができ、また、穴空きの発生を抑制しつつ、インフレーション成形の生産性を良好にすることができる。また、当該割合を45重量%以下とすることによって、インフレーション成形体を割れにくいものとし、実使用が可能な強度を付与することができる。前記割合は、20重量%以上40重量%以下であることが好ましい。
【0033】
インフレーション成形体に含まれるポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分を構成する全モノマー単位に占める3-ヒドロキシブチレート単位および他のヒドロキシアルカノエート単位の平均含有比率は、インフレーション成形体の強度と生産性を両立する観点から、3-ヒドロキシブチレート単位/他のヒドロキシアルカノエート=93/7~80/20(モル%/モル%)が好ましく、92/8~81/19(モル%/モル%)がより好ましく、90/10~82/18(モル%/モル%)がさらに好ましく、88/12~82/18(モル%/モル%)がより更に好ましい。
【0034】
ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分を構成する全モノマー単位に占める各モノマー単位の平均含有比率は、当業者に公知の方法、例えば国際公開2013/147139号の段落[0047]に記載の方法により求めることができる。平均含有比率とは、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分を構成する全モノマー単位に占める各モノマー単位のモル比を意味し、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分が3種のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂の混合物である場合、該混合物全体に含まれる各モノマー単位のモル比を意味する。
【0035】
ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分の重量平均分子量は、特に限定されないが、インフレーション成形体の強度と生産性を両立する観点から、20万~200万が好ましく、25万~150万がより好ましく、30万~100万が更に好ましい。
【0036】
また、共重合体(A)、共重合体(B)及び共重合体(C)それぞれの重量平均分子量は、特に限定されない。しかし、共重合体(A)の重量平均分子量は、インフレーション成形体の強度と生産性を両立する観点から、20万~100万が好ましく、22万~80万がより好ましく、25万~70万が更に好ましい。一方、共重合体(B)の重量平均分子量は、インフレーション成形体の強度と生産性を両立する観点から、20万~250万が好ましく、25万~230万がより好ましく、30万~200万が更に好ましい。また、共重合体(C)の重量平均分子量は、インフレーション成形体の強度と生産性を両立する観点から、20万~250万が好ましく、25万~230万がより好ましく、30万~200万が更に好ましい。
【0037】
なお、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分、共重合体(A)、共重合体(B)又は共重合体(C)の重量平均分子量は、クロロホルム溶液を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(島津製作所社製HPLC GPC system)を用い、ポリスチレン換算により測定することができる。該ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおけるカラムとしては、重量平均分子量を測定するのに適切なカラムを使用すればよい。
【0038】
ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂の製造方法は特に限定されず、化学合成による製造方法であってもよいし、微生物による製造方法であってもよい。中でも、微生物による製造方法が好ましい。微生物による製造方法については、公知の方法を適用できる。例えば、3-ヒドロキシブチレートと、その他のヒドロキシアルカノエートとのコポリマー生産菌としては、P3HB3HVおよびP3HB3HH生産菌であるアエロモナス・キヤビエ(Aeromonas caviae)、P3HB4HB生産菌であるアルカリゲネス・ユートロファス(Alcaligenes eutrophus)等が知られている。特に、P3HB3HHに関し、P3HB3HHの生産性を上げるために、P3HA合成酵素群の遺伝子を導入したアルカリゲネス・ユートロファス AC32株(Alcaligenes eutrophus AC32,FERM BP-6038)(T.Fukui,Y.Doi,J.Bateriol.,179,p4821-4830(1997))等がより好ましく、これらの微生物を適切な条件で培養して菌体内にP3HB3HHを蓄積させた微生物菌体が用いられる。また前記以外にも、生産したいポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂に合わせて、各種ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂合成関連遺伝子を導入した遺伝子組み換え微生物を用いても良いし、基質の種類を含む培養条件の最適化をすればよい。
【0039】
本実施形態に係るインフレーション成形体は、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分を含有するものであるが、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂と有機過酸化物との溶融混錬物を実質的に含有しないものであることが好ましい。インフレーション成形体に前記有機過酸化物との溶融混錬物が含まれていると、耐ブロッキング性は改善できるものの、インフレーション成形時に穴空きが生じる原因になりやすく、これによって、インフレーション成形の安定性が低下したり、インフレーション成形体の欠陥につながり得るためである。
【0040】
ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂と有機過酸化物との溶融混錬物は、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂に有機過酸化物が反応することで、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂が架橋した構造を有するものである。詳細は特許文献2を参照することができる。
【0041】
前記溶融混錬物の作製時に架橋反応が不均一に進行することによって、異物が生じやすい。これが、インフレーション成形時に穴空きが生じる原因になる可能性がある。
【0042】
ここで、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂と有機過酸化物との溶融混錬物を実質的に含有しないとは、インフレーション成形体に含まれるポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分の全体中、前記溶融混錬物が占める割合が10重量%以下であることを指す。前記割合は5重量%以下であることが好ましく、1重量%以下がより好ましい。前記割合の下限は、0重量%であってよい。
【0043】
但し、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂と有機過酸化物との反応物であっても、架橋反応が均一に進行している反応物は、穴空きの発生を回避できると推測される。
【0044】
前記有機過酸化物としては特に限定されないが、例えば、ジイソブチルパーオキサイド、クミルパーオキシネオデカノエート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ビス(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、ジ(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パ-オキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジコハク酸パーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ(4-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキシルカーボネート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、1,6-ビス(t-ブチルパーオキシカルボニロキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-アミルパーオキシ,3,5,5-トリメチルヘキサノエート、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシ)プロパン、2,2-ジ-t-ブチルパーオキシブタン等が挙げられる。有機過酸化物としては1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0045】
有機過酸化物の使用量は、特に限定されないが、例えば、有機過酸化物と反応させるポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂100重量部に対して0.01~0.5重量部程度であってよい。
【0046】
本実施形態に係るインフレーション成形体は、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分に加えて、可塑剤を含有する。可塑剤を配合することによって、インフレーション成形の生産性を良好なものとし、耐ブロッキング性を改善すると共に、実使用が可能な強度をインフレーション成形体に付与することができる。
【0047】
前記可塑剤としては特に限定されないが、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分との相溶性の観点から、分子内にエステル結合を有するエステル化合物を使用することが好ましい。
【0048】
可塑剤として使用可能なエステル化合物としては、例えば、変性グリセリン系化合物、二塩基酸エステル系化合物、アジピン酸エステル系化合物、ポリエーテルエステル系化合物、安息香酸エステル系化合物、クエン酸エステル系化合物、イソソルバイドエステル系化合物、ポリカプロラクトン系化合物等が挙げられる。なかでも、変性グリセリン系化合物、二塩基酸エステル系化合物、アジピン酸エステル系化合物、ポリエーテルエステル系化合物、又は、イソソルバイドエステル系化合物が好ましく、変性グリセリン系化合物が特に好ましい。また、前記エステル化合物としては、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。2種以上を組み合わせて使用する場合、それらエステル化合物の混合比率を適宜調整することができる。
【0049】
変性グリセリン系化合物としては、グリセリンエステル系化合物が好ましい。グリセリンエステル系化合物としては、グリセリンのモノエステル、ジエステル、又はトリエステルのいずれも使用することができるが、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分との相溶性の観点から、グリセリンのトリエステルが好ましい。グリセリンのトリエステルのなかでも、グリセリンジアセトモノエステルが特に好ましい。グリセリンジアセトモノエステルの具体例としては、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリンジアセトモノオレート、グリセリンジアセトモノステアレート、グリセリンジアセトモノカプリレート、グリセリンジアセトモノデカノエート等を挙げることができる。前記変性グリセリン系化合物としては、理研ビタミン株式会社の「リケマール」PLシリーズや、「BIOCIZER」などが例示される。
【0050】
二塩基酸エステル系化合物の具体例としては、ジブチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ビス(2-エチルヘキシル)アジペート、ジイソノニルアジペート、ジイソデシルアジペート、ビス[2-(2-ブトキシエトキシ)エチル]アジペート、ビス[2-(2-ブトキシエトキシ)エチル]アジペート、ビス(2-エチルヘキシル)アゼレート、ジブチルセバケート、ビス(2-エチルヘキシル)セバケート、ジエチルサクシネート、混基二塩基酸エステル化合物などが挙げられる。
【0051】
アジピン酸エステル系化合物としては、ジエチルヘキシルアジペート、ジオクチルアジペート、ジイソノニルアジペートなどが挙げられる。
【0052】
ポリエーテルエステル系化合物としては、ポリエチレングリコールジベンゾエート、ポリエチレングリコールジカプリレート、ポリエチレングリコールジイソステアレートなどが挙げられる。
【0053】
前記エステル化合物としては、コスト、汎用性に優れているのに加え、バイオマス度が高い点から、変性グリセリン系化合物が好ましく、特に食品接触の観点から、グリセリントリエステルがより好ましく、グリセリンジアセトモノエステルがさらに好ましく、グリセリンジアセトモノラウレートが特に好ましい。
【0054】
可塑剤の配合量は、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分の総量100重量部に対して、3重量部以上10重量部未満である。可塑剤の配合量を3重量部以上とすることで、インフレーション成形の生産性を良好なものとし、耐ブロッキング性を改善すると共に、実使用が可能な強度をインフレーション成形体に付与することができる。また、前記配合量を10重量部未満とすることで、インフレーション成形の生産性、及び、ヒートシール性を良好にすることができる。
【0055】
前記可塑剤の配合量の下限は、3.5重量部以上であることが好ましい。4重量部以上であってもよい。上限は、9重量部以下であることが好ましく、8重量部以下がより好ましく、7.5重量部以下がさらに好ましい。6重量部以下であってもよい。
【0056】
(他の樹脂)
本実施形態に係るインフレーション成形体は、発明の効果を損なわない範囲で、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂以外の他の樹脂を含んでもよい。そのような他の樹脂としては、例えば、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンサクシネート、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸などの脂肪族ポリエステル系樹脂や、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンセバケートテレフタレート、ポリブチレンアゼレートテレフタレートなどの脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂等が挙げられる。他の樹脂としては1種のみが含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。
【0057】
前記他の樹脂の含有量は、特に限定されないが、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分の総量100重量部に対して、30重量部以下が好ましく、20重量部以下がより好ましく、10重量部以下がさらに好ましい。他の樹脂の含有量の下限は特に限定されず、0重量部であってもよい。
【0058】
(シリカ)
本実施形態に係るインフレーション成形体は、機械特性について改良効果を得ることを目的に、更にシリカを含有しても良い。
【0059】
前記シリカとしては、特にその種類は限定されないが、汎用性の観点から、乾式法または湿式法で製造される合成非晶質シリカが好ましい。また、疎水処理または非疎水処理を施したいずれのものも使用可能であり、一種を単独で使用することもできるし、二種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0060】
前記シリカとしては、吸着水分量が0.5重量%以上7重量%以下のシリカが好ましい。吸着水分量は、例えば研精工業株式会社製電磁式はかりMX-50を用いて160℃における揮発分を吸着水分量として測定することができる。吸着水分量が7重量%より大きい場合、シリカ表面や粒子間に吸着した水分の凝集力で分散しにくくなってインフレーション成形時にフィッシュアイとなって外観不良を起こす場合がある。また逆に0.5重量%未満の場合には、この僅かに粒子間の残った水分が架橋液膜を形成して表面張力で大きな結合力を生み、分離・分散が極端に難しくなる傾向がある。
【0061】
前記シリカの平均一次粒子径は、インフレーション成形体の機械特性を向上させることができ、フィッシュアイ等の外観上の欠陥を生じにくく、透明性を大きく損なうことがなければ特に限定されないが、機械特性の向上効果が得られやすく、透明性に優れている点で、0.001~0.1μmであることが好ましく、0.005~0.05μmであることが特に好ましい。なお、平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察した任意の50個以上の一次粒子の径を算術平均することにより求められる。
【0062】
前記シリカの配合量は、特に限定されないが、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分の総量100重量部に対して、1~12重量部であることが好ましい。1重量部以上であると、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分と複合化した際に機械特性について前記シリカの配合による十分な改良効果を発現することができる。また、12重量部以下であると、シリカを良好に分散させることができる。前記シリカの配合量は、2重量部以上がより好ましく、4重量部以上がさらに好ましい。また、11重量部以下がより好ましく、10重量部以下がさらに好ましい。
【0063】
前記シリカの分散性を向上させることを目的に、前記シリカと、分散助剤を併用することが好ましい。
【0064】
前記分散助剤としては、例えば、グリセリンエステル系化合物、アジピン酸エステル系化合物、ポリエーテルエステル系化合物、フタル酸エステル系化合物、イソソルバイドエステル系化合物、ポリカプロラクトン系化合物などが例示される。これらのうち、樹脂成分への親和性に優れブリードしにくいことから、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリンジアセトモノカプリレート、グリセリンジアセトモノデカノエートなどの変性グリセリン系化合物;ジエチルヘキシルアジペート、ジオクチルアジペート、ジイソノニルアジペートなどのアジピン酸エステル系化合物;ポリエチレングリコールジベンゾエート、ポリエチレングリコールジカプリレート、ポリエチレングリコールジイソステアレートなどのポリエーテルエステル系化合物が好ましく、更には、バイオマス由来成分を多く含むものが、組成物全体のバイオマス度を高めることができることから特に好ましい。このような分散助剤としては、理研ビタミン株式会社のアセチル化モノグリセライドBIOCIZERやPLシリーズ、ROQUETTE社のPolysorbシリーズなどが例示される。分散助剤は一種を単独で使用することもできるし、二種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0065】
前記分散助剤の配合量は、特に限定されないが、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分の総量100重量部に対して0.1~20重量部であることが好ましい。0.1重量部以上であると、シリカの分散助剤としての機能を十分に発揮させることができ、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分と複合化した際に機械特性について前記シリカの配合による十分な改良効果を発現することができる。また、20重量部以下であると、ブリードアウトを抑制することができる。前記分散助剤の配合量は、0.3重量部以上がより好ましく、0.5重量部以上がさらに好ましい。また、10重量部以下がより好ましく、5重量部以下がさらに好ましい。
【0066】
(添加剤)
本実施形態に係るインフレーション成形体は、発明の効果を阻害しない範囲において、添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、結晶化核剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、導電剤、断熱剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、無機充填剤、有機充填剤、加水分解抑制剤等を目的に応じて使用できる。特に生分解性を有する添加剤が好ましい。
【0067】
結晶化核剤としては、例えば、ペンタエリスリトール、オロチン酸、アスパルテーム、シアヌル酸、グリシン、フェニルホスホン酸亜鉛、窒化ホウ素等が挙げられる。中でも、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分の結晶化を促進する効果が特に優れている点で、ペンタエリスリトールが好ましい。結晶化核剤の使用量は、特に限定されないが、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分の総量100重量部に対して、0.1~5重量部が好ましく、0.5~3重量部がより好ましく、0.7~1.5重量部がさらに好ましい。また、結晶化核剤は、1種を使用してよいし、2種以上使用してもよく、目的に応じて、使用比率を適宜調整することができる。
【0068】
滑剤としては、例えば、ベヘン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、N-ステアリルベヘン酸アミド、N-ステアリルエルカ酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスラウリル酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、p-フェニレンビスステアリン酸アミド、エチレンジアミンとステアリン酸とセバシン酸の重縮合物等が挙げられる。中でも、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分への滑剤効果が特に優れている点で、ベヘン酸アミドとエルカ酸アミドが好ましい。滑剤の使用量は、特に限定されないが、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分の総量100重量部に対して、0.01~5重量部が好ましく、0.05~3重量部がより好ましく、0.1~1.5重量部がさらに好ましい。また、滑剤は、1種を使用してもよいし、2種以上使用してもよく、目的に応じて、使用比率を適宜調整することができる。
【0069】
(インフレーション成形体の厚み)
インフレーション成形体の厚みは特に限定されないが、10μm以上100μm以下であることが好ましく、10μm以上80μm以下がより好ましく、15μm以上60μm以下がさらに好ましい。
【0070】
(インフレーション成形体の製造方法)
共重合体(A)、共重合体(B)及び共重合体(C)のブレンド物を得る方法は特に限定されず、微生物産生によりブレンド物を得る方法であってよいし、化学合成によりブレンド物を得る方法であってもよい。また、押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、ロール等を用いて2種以上の樹脂を溶融混練してブレンド物を得てもよいし、2種以上の樹脂を溶媒に溶解して混合・乾燥してブレンド物を得ても良い。また、以上に述べた各方法を複数組み合わせて実施してもよい。
【0071】
本実施形態に係るインフレーション成形体は、必要に応じて樹脂成分や各種添加剤などを溶融混錬した後、インフレーション成形を実施することによって製造できる。
前記インフレーション成形とは、先端に円筒ダイが取り付けられた押出機から溶融樹脂組成物をチューブ状に押し出し、直後に、該チューブのなかに気体を吹き込んでバルーン状にふくらませることでチューブ状の単層または多層フィルムを成形する成形方法のことをいう。当該インフレーション成形の方法は、特に限定されないが、例えば、熱可塑性樹脂をフィルム成形する際に用いられる一般的なインフレーション成形機を用いて実施することが可能である。一般的なインフレーション成形機とは、単層フィルムの成形の場合、1台の単軸押出機に1台の円筒ダイが取り付けられているものをいう。多層フィルムの成形の場合は、使用する樹脂の種類に合わせて複数の押出機から1台の円筒ダイに溶融樹脂を流し込み、ダイス内で各樹脂を積層できるものをいう。上記単軸押出機は、投入された原料樹脂を溶融混練し、所望の温度に保ちながら一定の吐出を得るものであればよい。単軸押出機のスクリュー形状等も特に限定されないが、ミキシングエレメントを備えるものが、混練性の観点から好ましい。また、円筒ダイの構造も単層、積層フィルムに合わせて適宜設計されるものであり特に限定されないが、中でも、ウエルドの発生が少なく、厚みの均一性も得やすいため、スパイラルマンドレルダイが好ましい。
【0072】
インフレーション成形における成形温度としては、樹脂が適切に溶融できる温度であれば特に限定されるものではないが、例えば135~200℃が好ましい。ここでいう成形温度とは、押出機以降からダイから吐出するまでの間の樹脂温度のことを指す。樹脂温度は、一般的には例えばアダプターに設置された温度計により測定することができる。
【0073】
インフレーション成形における引取速度としては、成形体の膜厚、幅、樹脂吐出量により決定されるが、バルーン安定性を維持できる範囲で調整可能である。一般的に1~50m/分が好ましい。
【0074】
インフレーション成形においては、バルーンの外側から吹き付けるエアリングを、吐出した溶融樹脂を固化させてバルーンを安定させるために用いることができる。好適に用いられるエアリングの吹き付け構造としては、エアの吹き出す環状のスリットが複数設けられ、各スリット間にあるチャンバーによりバルーンの安定化が促進されるスリットタイプのものである。
【0075】
インフレーション成形の後、チューブ状の成形フィルムをピンチロールで折り重ねた状態で巻き取りロールまで引き取る工程や、巻き取り後に折り重ねた成形フィルムを容易に剥離させるため、ピンチロールで折り重なったフィルムの界面にエアを吹き込む工程、引き取りの途中で、用途に合わせてフィルムをカットする工程などを行ってもよい。カット方式としては、折り重ねられたチューブ状成形フィルムの幅方向の両端をカットして2枚のフィルムを形成する方式や、チューブ状成形フィルムを幅方向にホットカットすると共に、ヒートシールによって融着を行うことで袋形状のフィルムを形成する方式などがある。また、カットしやすいように、カット直前で折り重なったフィルムの界面にエアを吹き込む工程を含んでもよい。また、折り重ねられた状態のチューブ状フィルムの両端を内側に折り込む、いわゆるガゼット折りをする工程を行ってもよい。また、ピンチロールで折り重ねた後、巻き取り前までにフィルム表面に印刷する工程を行ってもよく、さらに印刷密着性を向上させるために、印刷前にフィルム表面にコロナ処理を行ってもよい。印刷方法としては、特に限定されるものではないが、グラビア印刷やフレキソ印刷が挙げられる。
【0076】
本実施形態に係るインフレーション成形体は優れた生分解性を有しているため、農業、漁業、林業、園芸、医学、衛生品、食品産業、衣料、非衣料、包装、自動車、建材、その他の分野に好適に用いることができる。例えば、ゴミ袋、レジ袋、野菜・果物の包装袋、ピロー包装、宅配用袋、手袋、シャワーキャップ、エプロン、ストロー包装用袋等の袋容器、機器類の袋状の保護資材、取扱説明書などの各種書類の保管用袋、農業用マルチフィルム、林業用燻蒸シート、フラットヤーン等を含む結束テープ、植木の根巻フィルム、おむつのバックシート、包装用シート、ショッピングバック、水切り袋、その他コンポストバック等の用途に用いられる。
【0077】
特に、本実施形態に係るインフレーション成形体は、ヒートシール性が良好であることから、ヒートシールによって融着した部位を含む形態のものとして好適に使用することができる。このような形態としては特に限定されないが、本実施形態に係るインフレーション成形体は、良好なヒートシール性に加え、良好な耐ブロッキング性(口開き性)と、実使用が可能な強度を有することから、各種の袋や、手袋、シャワーキャップ、エプロン、ストロー包装用袋等の袋容器、機器類の袋状の保護資材、取扱説明書などの各種書類の保管用袋等として、特に好適に使用することができる。
【0078】
前記ヒートシールとは、インフレーション成形体を加熱下で圧着させる加工方法を指す。ヒートシールによってインフレーション成形体の一部を融着させることで、インフレーション成形体を袋や、手袋、シャワーキャップ、エプロン、ストロー包装用袋等の袋容器、機器類の袋状の保護資材、取扱説明書などの各種書類の保管用袋の形状に二次加工することができる。ヒートシール温度は特に限定されず、当業者が適宜設定することができるが、例えば、120~250℃程度であってもよい。また、ヒートシール圧力についても特に限定されず、当業者が適宜設定することができるが、例えば、0.1MPa以上であって良い。
【0079】
以下の各項目では、本開示における好ましい態様を列挙するが、本発明は以下の項目に限定されるものではない。
[項目1]
ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分、及び、可塑剤を含有する、インフレーション成形体であって、
前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分が、
他のヒドロキシアルカノエート単位の含有割合が1モル%以上5モル未満%である、3-ヒドロキシブチレート単位と他のヒドロキシアルカノエート単位との共重合体(A)、
他のヒドロキシアルカノエート単位の含有割合が24モル%以上である、3-ヒドロキシブチレート単位と他のヒドロキシアルカノエート単位との共重合体(B)、及び
他のヒドロキシアルカノエート単位の含有割合が5モル%以上24モル%未満である、3-ヒドロキシブチレート単位と他のヒドロキシアルカノエート単位との共重合体(C)を含み、
前記共重合体(A)、前記共重合体(B)及び前記共重合体(C)の合計に対する前記共重合体(C)の割合が、15~45重量%であり、
前記可塑剤の含有量は、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分の総量100重量部に対して3重量部以上10重量部未満である、インフレーション成形体。
[項目2]
ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂と有機過酸化物との溶融混錬物を実質的に含有しない、項目1に記載のインフレーション成形体。
[項目3]
前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分を構成する全モノマー単位に占める前記他のヒドロキシアルカノエート単位の平均含有割合が、10~18モル%である、項目1又は2に記載のインフレーション成形体。
[項目4]
前記他のヒドロキシアルカノエート単位が、3-ヒドロキシヘキサノエート単位である、項目1~3のいずれかに記載のインフレーション成形体。
[項目5]
前記可塑剤が、変性グリセリン系化合物である、項目1~4のいずれかに記載のインフレーション成形体。
[項目6]
前記変性グリセリン系化合物が、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリンジアセトモノオレート、グリセリンジアセトモノステアレート、グリセリンジアセトモノカプリレート、及び、グリセリンジアセトモノデカノエートからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、項目5に記載のインフレーション成形体。
[項目7]
前記インフレーション成形体が、ヒートシールによって融着した部位を含む、項目1~6のいずれかに記載のインフレーション成形体。
[項目8]
前記インフレーション成形体が袋である、項目7に記載のインフレーション成形体。
[項目9]
前記インフレーション成形体の膜厚が10~100μmである、項目1~8のいずれかに記載のインフレーション成形体。
【実施例0080】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によりその技術的範囲を限定されるものではない。
【0081】
実施例及び比較例では以下の原料を使用した。
P3HB3HH-1:P3HB3HH(平均含有比率3HB/3HH=97.2/2.8(モル%/モル%)、重量平均分子量は62万g/mol)
P3HB3HH-2:P3HB3HH(平均含有比率3HB/3HH=71.8/28.2(モル%/モル%)、重量平均分子量は62万g/mol)
P3HB3HH-3:P3HB3HH(平均含有比率3HB/3HH=94/6(モル%/モル%)、重量平均分子量は40万g/mol)
【0082】
(有機過酸化物)
日油社製パーブチルI(t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、1分間半減期温度:159℃)
【0083】
(可塑剤)
グリセリンジアセトモノラウレート(理研ビタミン株式会社製、Biocizer)
【0084】
(結晶核剤)
ペンタエリスリトール(三菱化学社製、ノイライザーP)
【0085】
(滑剤)
エルカ酸アミド、ベヘン酸アミド
【0086】
各実施例及び比較例では以下の評価を実施した。
(インフレ成形性)
インフレーションフィルムの折幅400mm、平均厚み30μmを保って、バルーンが安定してインフレーション成形を実施できる最大引取速度を測定した。
また、折幅不問で、10m/min以上の引取速度を維持し、フィルム平均厚み25μmにてインフレーション成形を実施し、得られたインフレーションフィルムの穴空きの有無を評価した。
【0087】
<生産性>
○:最大引取速度は10m/min以上、かつ、得られたフィルムの長さ20mの中で折り幅の変動が20mm未満
×:上記以外
前記折り幅とは、ダイから押し出されたバルーン状の成形フィルムを冷却ロールに通すことで折り畳んで二重のフィルムとした時に、該二重フィルムの幅のことをいう。なお、折り幅の変動が大きくなるとそれだけ厚みの変動が大きくなり、円筒形状の維持が困難となる(つまり、安定にバルーンを形成することが困難となる)。
【0088】
<穴空き>
〇:フィルムに穴空きが発生した
×:フィルムに穴空きが発生しなかった
穴空きが発生すると、チューブ内部のエアが抜けて幅が変動するため、インフレーション成形の安定性を維持することが困難となる。また、製造されたフィルムにおいて穴は欠陥となり、品質不良と評価される。
【0089】
(袋加工性)
インフレーション成形で得られたチューブ状のフィルム原反の底部分の一方又は両方に熱溶着(ヒートシール)加工し、場合によっては打ち抜きして取っ手を作製し、実使用に供される袋、手袋、シャワーキャップ、エプロン、ストロー包装用袋等の袋容器、機器類の袋状の保護資材、取扱説明書などの各種書類の保管用袋などの形状に加工する。これらの加工品では容易に口開きすることが求められる。また、加工品内部に中身を保持するためのヒートシール強度を、効率良く実現することが求められる。以上の観点から口開き性とヒートシール性を評価した。
【0090】
<口開き性>
巻き取ったチューブ状のインフレーションフィルムから、長尺状サンプルとして幅5cm×長さ15cmの二重フィルムを切り出し、この二重フィルムを親指と人差し指で擦って、口を開けるか否かで評価した。
〇:開ける
×:開けない
【0091】
<ヒートシール性>
平均厚み50μmのインフレーションフィルムを用いて製袋加工を実施し、JIS Z 1711で規定されているヒートシール強度の評価方法に準じて評価した。
〇:25袋/分以上の速度で製袋でき、かつ8N/15mm以上のシール強度が実現できる
△:20袋/分以上の速度で製袋でき、かつ8N/15mm以上のシール強度が実現できる
×:上記いずれも満足しない
【0092】
(袋実用性評価)
袋実用性評価は、インフレーション成形の生産性と、口開き性の双方で〇と評価された実施例及び比較例について実施した。
各実施例及び比較例の樹脂処方を用いて、インフレーション成形にて、折幅450mm、平均厚み50μmのフィルム原反を作製した。得られたインフレーションフィルムを、図1で示す仕様の袋に加工した。
得られた袋を、振動試験機にて、3kgの重りを入れて徒歩1時間相当の振動負荷(100回/min、縦振幅±5cm)を与え、袋破壊しないかを確認した。
合格:振動試験によって袋が破壊されなかった
不合格:振動試験によって袋が破壊された
【0093】
実施例1(樹脂フィルムの製造方法)
P3HB3HH-1、P3HB3HH-2、P3HB3HH-3、及び、各添加剤を表1に示す配合比で、同方向噛合型二軸押出機(東芝機械社製:TEM26ss)を用いて、設定温度120℃以上、170℃以下、スクリュー回転数150rpmで溶融混錬し、ストランドカットすることで溶融混錬物を得た後、L/D=32の単軸スクリューを有する押出機に直径100mmの円筒状ダイスリップを装着したダイが接続されたインフレーション成形機(北進産業株式会社製)を用いてインフレーションフィルムを作製した。
インフレーション成形性、袋加工性、及び、袋実用性の各評価を行い、その結果を表1に示す。
【0094】
実施例2~4
樹脂又は各添加剤の配合量を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして溶融混錬物を製造し、次いで、同様にインフレーションフィルムを作製し、各評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0095】
比較例1~5
樹脂又は各添加剤の配合量を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして溶融混錬物を製造し、次いで、同様にインフレーションフィルムを作製し、各評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0096】
比較例6
有機過酸化物を表1に示す配合比で添加したこと以外は、比較例1と同様にして溶融混錬物を製造し、次いで、同様にインフレーションフィルムを作製し、各評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0097】
【表1】
【0098】
表1より以下のことが分かる。実施例1~4では、インフレーション成形の生産性及び穴空き、袋加工性の口開き及びヒートシール性、袋実用性の各評価すべてで良好な結果が得られた。一方、比較例1~6では、いずれかの評価で良好な結果が得られなかった。比較例1及び6は、共重合体(C)に相当するP3HB3HH-3の配合量が少なく、比較例2~5は、可塑剤が配合されていないか、又は可塑剤の配合量が少ない、若しくは多いものである。
【符号の説明】
【0099】
10 袋
11 打抜き取っ手
図1