(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047859
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】バトン昇降システム、および、制御装置
(51)【国際特許分類】
A63J 1/02 20060101AFI20240401BHJP
B66D 1/12 20060101ALI20240401BHJP
B66D 1/46 20060101ALI20240401BHJP
B66D 1/54 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
A63J1/02
B66D1/12
B66D1/46 Z
B66D1/54 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153590
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003757
【氏名又は名称】東芝ライテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】伊丹 和章
(57)【要約】
【課題】バトン、および、器具と、美術セットとの接触を抑制するバトン昇降システム、および、制御装置を提供する。
【解決手段】実施形態に係るバトン昇降システムは、バトンと、昇降制御部とを具備する。バトンは、昇降可能である。昇降制御部は、美術セットが配置される配置空間に対応する仮想空間における3D仕込み図に基づいて、バトン、および、バトンに吊り下げられる器具が、美術セットに接触しないように、バトンを昇降させる。3D仕込み図は、仮想空間におけるバトンの3Dデータ、仮想空間における器具の3Dデータ、および、仮想空間における美術セットの3Dデータの設計図である。3Dデータは、仮想空間における位置、および、サイズに関する情報を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降可能なバトンと;
美術セットが配置される配置空間に対応する仮想空間における3D仕込み図に基づいて、前記バトン、および、前記バトンに吊り下げられる器具が、前記美術セットに接触しないように、前記バトンを昇降させる昇降制御部と;
を具備し、
前記3D仕込み図は、前記仮想空間における前記バトンの3Dデータ、前記仮想空間における前記器具の3Dデータ、および、前記仮想空間における前記美術セットの3Dデータの設計図であり、
前記3Dデータは、前記仮想空間における位置、および、サイズに関する情報を含む、バトン昇降システム。
【請求項2】
前記昇降制御部は、前記バトンを降下する場合、前記バトンが前記3D仕込み図に基づいて設定される降下限界位置以下になることを規制する、請求項1に記載のバトン昇降システム。
【請求項3】
前記昇降制御部は、前記バトンを降下する場合、前記バトンを前記降下限界位置で停止させる、請求項2に記載のバトン昇降システム。
【請求項4】
前記3D仕込み図に基づいた前記バトンの昇降制御をON、または、OFFに切り替える切替部;
を具備する、請求項1~3のいずれか1つに記載のバトン昇降システム。
【請求項5】
前記バトンの昇降状態を報知させる報知部;
を具備する、請求項1~3のいずれか1つに記載のバトン昇降システム。
【請求項6】
バトンを昇降させる制御装置であって、
美術セットが配置される配置空間に対応する仮想空間における3D仕込み図に基づいて、前記バトン、および、前記バトンに吊り下げられる器具が、前記美術セットに接触しないように、前記バトンを昇降させる昇降制御部;
を具備し、
前記3D仕込み図は、前記仮想空間における前記バトンの3Dデータ、前記仮想空間における前記器具の3Dデータ、および、前記仮想空間における前記美術セットの3Dデータの設計図であり、
前記3Dデータは、前記仮想空間における位置、および、サイズに関する情報を含む、制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、バトン昇降システム、および、制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、照明装置などの器具がバトンによって昇降可能に取り付けられる技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術では、バトンの昇降は、操作盤による作業者の操作によって調整される。作業者は、バトン、および、器具が、スタジオなどに配置される美術セットに接触しないように、目視しつつ、バトンを昇降させる必要がある。
【0005】
しかしながら、たとえば、美術セットによる死角によって、バトン、および、器具と、美術セットとが接触しないように、バトンを昇降させることが困難な場合がある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、バトン、および、器具と、美術セットとの接触を抑制するバトン昇降システム、および、制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係るバトン昇降システムは、バトンと、昇降制御部とを具備する。バトンは、昇降可能である。昇降制御部は、美術セットが配置される配置空間に対応する仮想空間における3D仕込み図に基づいて、バトン、および、バトンに吊り下げられる器具が、美術セットに接触しないように、バトンを昇降させる。3D仕込み図は、仮想空間におけるバトンの3Dデータ、仮想空間における器具の3Dデータ、および、仮想空間における美術セットの3Dデータの設計図である。3Dデータは、仮想空間における位置、および、サイズに関する情報を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、バトン、および、器具と、美術セットとの接触を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係るバトン昇降システムの構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る制御装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、3D仕込み図の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態におけるバトンの昇降可能範囲を説明する図である。
【
図5】
図5は、器具の下方に美術セットがない場合のバトンの昇降可能範囲を示す図である。
【
図6】
図6は、バトンに器具が吊り下げられていない場合のバトンの昇降可能範囲を示す図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係るバトンの昇降可能範囲の設定処理を説明するフローチャートである。
【
図8】
図8は、実施形態に係るバトンの昇降処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に説明する実施形態に係るバトン昇降システム1は、バトン2と、昇降制御部42とを具備する。バトン2は、昇降可能である。昇降制御部42は、美術セットPが配置される配置空間Sに対応する仮想空間Rおける3D仕込み図に基づいて、バトン2、および、バトン2に吊り下げられる器具が、美術セットPに接触しないように、バトン2を昇降させる。3D仕込み図は、仮想空間Rにおけるバトン2の3Dデータ、仮想空間Rにおける器具の3Dデータ、および、仮想空間Rにおける美術セットPの3Dデータの設計図である。3Dデータは、仮想空間Rにおける位置、および、サイズに関する情報を含む。
【0011】
また、以下に説明する実施形態に係る昇降制御部42は、バトン2を降下する場合、バトン2が3D仕込み図に基づいて設定される降下限界位置以下になることを規制する。
【0012】
また、以下に説明する実施形態に係る昇降制御部42は、バトン2を降下する場合、バトン2を降下限界位置で停止させる。
【0013】
また、以下に説明する実施形態に係るバトン昇降システム1は、切替部43を具備する。切替部43は、3D仕込み図に基づいたバトン2の昇降制御をON、または、OFFに切り替える。
【0014】
また、以下に説明する実施形態に係るバトン昇降システム1は、報知部44を具備する。報知部44は、バトン2の昇降状態を報知させる。
【0015】
また、以下に説明する実施形態に係る制御装置6は、バトン2を昇降させる制御装置である。制御装置6は、昇降制御部42を具備する。昇降制御部42は、美術セットPが配置される配置空間Sに対応する仮想空間Rにおける3D仕込み図に基づいて、バトン2、および、バトン2に吊り下げられる器具が、美術セットPに接触しないように、バトン2を昇降させる。3D仕込み図は、仮想空間Rにおけるバトン2の3Dデータ、仮想空間Rにおける器具の3Dデータ、および、仮想空間Rにおける美術セットPの3Dデータの設計図である。3Dデータは、仮想空間Rにおける位置、および、サイズに関する情報を含む。
【0016】
以下、図面を参照して、実施形態に係るバトン昇降システム1、および、制御装置6を説明する。
【0017】
まず、
図1を用いて、実施形態に係るバトン昇降システム1の概要について説明する。
図1は、実施形態に係るバトン昇降システム1の構成例を示す図である。実施形態に係るバトン昇降システム1は、スタジオや、劇場、および、展示場などの配置空間Sに配置されるバトン2を昇降させるシステムである。配置空間Sには、美術セットPが配置される。配置空間Sは、実際に美術セットPが配置される実空間である。美術セットPは、舞台セット、展示物、および、展示物が載置される台などを含む。
【0018】
バトン昇降システム1は、バトン2と、巻上機3と、高さ検知部4と、報知装置5と、制御装置6とを備える。
【0019】
バトン2は、複数設けられる。バトン2は、1つであってもよい。バトン2には、複数の器具Qが取り付け可能である。器具Qは、バトン2に吊り下げられる。器具Qは、照明装置、幕類、および、舞台セットなどを含む。バトン2は、ワイヤロープ10によって天井に吊り下げられる。たとえば、バトン2は、グリッド天井11からワイヤロープ10によって吊り下げられる。
【0020】
巻上機3は、たとえば、グリッド天井11に設けられる。巻上機3は、ワイヤロープ10を介してバトン2を昇降する。巻上機3は、たとえば、モータによってドラム3Aを回転させて、バトン2を昇降する。ドラム3Aには、ワイヤロープ10が取り付けられる。巻上機3は、ドラム3Aの回転方向を切り替えることで、ワイヤロープ10の繰り出し、および、ワイヤロープ10の巻き上げを切り替えて、バトン2を昇降する。巻上機3は、制御装置6から送信される制御信号に基づいて、ドラム3Aを回転させる。ワイヤロープ10は、滑車12に巻き掛けられる。
【0021】
高さ検知部4は、バトン2の高さを検知する。高さ検知部4は、たとえば、巻上機3に取り付けられるエンコーダを含む。高さ検知部4は、エンコーダによってドラム3Aの回転を計測することで、バトン2の高さを検知する。なお、高さ検知部4は、バトン2の高さを検知可能なカメラ装置などであってもよい。
【0022】
報知装置5は、バトン2の昇降状態を報知する。報知装置5は、表示灯、および、音声装置の少なくとも1つを含む。報知装置5は、複数設けられてもよい。報知装置5は、たとえば、バトン2に取り付けられる。報知装置5は、制御装置6に設けられてもよい。報知装置5は、壁などに設けられてもよい。報知装置5は、作業者などが有する端末装置であってもよい。
【0023】
報知装置5は、制御装置6から送信される信号に基づいて、バトン2の昇降状態を報知する。たとえば、報知装置5は、バトン2が上昇している場合と、バトン2が降下している場合とで、表示灯を異なる表示色で点灯し、バトン2の昇降状態を報知する。
【0024】
次に、制御装置6について、
図2を参照し説明する。
図2は、実施形態に係る制御装置6の機能構成の一例を示すブロック図である。制御装置6は、巻上機3を制御することで、バトン2の昇降を制御する。制御装置6は、通信部20と、操作部21と、記憶部22と、制御部23とを備える。
【0025】
通信部20は、たとえば、所定の通信回路等によって実現される。たとえば、通信部20は、イーサネット(登録商標)、および、LANなどのネットワークを介して、高さ検知部4、報知装置5、および、巻上機3との間の通信を中継する。
【0026】
操作部21は、バトン2の昇降操作などを受け付ける。操作部21は、たとえば、ボタン、および、レバーを含む。なお、操作部21は、制御装置6とは別に設けられてもよい。この場合、制御装置6は、通信部20を介して操作部21によるバトン2の昇降操作に関する情報を取得する。すなわち、バトン2の昇降操作は、制御装置6とは異なるリモートコントローラによって行われてもよい。
【0027】
記憶部22は、制御部23による制御を実現するためのプログラム等を記憶する。記憶部22は、たとえば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現される。
【0028】
記憶部22は、3D仕込み
図DB30と、昇降可能範囲DB31とを備える。3D仕込み
図DB30は、配置空間Sに対応する仮想空間Rにおける3D仕込み図を記憶する。仮想空間Rは、配置空間Sの大きさ、および、配置空間Sの形状に合わせて設けられるデータ上の空間である。3D仕込み図は、
図3に示すように、仮想空間Rにおけるバトン2の3Dデータ、仮想空間Rにおける器具Qの3Dデータ、および、仮想空間Rにおける美術セットPの3Dデータの設計図である。
図3は、3D仕込み図の一例を示す図である。
【0029】
3Dデータは、仮想空間Rにおける位置、および、サイズに関する情報を含む。仮想空間Rにおけるバトン2の3Dデータは、仮想空間Rにおけるバトン2の位置、および、サイズに関する情報を含む。仮想空間Rにおける器具Qの3Dデータは、仮想空間Rにおける器具Qの位置、および、サイズに関する情報を含む。仮想空間Rにおける美術セットPの3Dデータは、仮想空間Rにおける美術セットPの位置、および、サイズに関する情報を含む。3Dデータは、仮想空間Rにおけるバトン2などの配置情報である。
【0030】
3Dデータは、たとえば、仮想空間Rが3次元の直交座標系で表される。直交座標系では、たとえば、鉛直上向きを正方向とするZ軸、Z軸に直交するY軸、および、Y軸、および、Z軸に直交するX軸が定義される。3Dデータは、X軸、Y軸、および、Z軸において、バトン2などの座標を示す数値データである。たとえば、バトン2の3Dデータは、仮想空間Rにおいて、バトン2の外形の座標を示す数値データを含む。
【0031】
3D仕込み図は、たとえば、GDTF(General Device Type Format)データとして作成され、3D仕込み
図DB30に記憶される。3D仕込み図は、GDTFデータに限られず、他のデータ形式であってもよい。
【0032】
3D仕込み図は、たとえば、通信部20を介して、外部装置から取得されて、3D仕込み
図DB30に記憶される。外部装置は、たとえば、PC(Personal Computer)、および、調光操作卓を含む。3D仕込み図は、持ち運び可能な半導体メモリ素子などに記憶され、半導体メモリ素子などから取得されてもよい。
【0033】
昇降可能範囲DB31は、後述する解析部41によって設定されるバトン2の昇降可能範囲を記憶する。なお、バトン2の昇降可能範囲は、3D仕込み図に紐付けて記憶されてもよい。たとえば、記憶部22は、複数の3D仕込み図と、各3D仕込み図における各バトン2の昇降可能範囲とを紐付けて記憶してもよい。これにより、たとえば、操作部21の操作によって、3D仕込み図が選択された場合、選択された3D仕込み図に対応するバトン2の昇降可能範囲が昇降可能範囲DB31から読み出され、後述する昇降制御部42におけるバトン2の昇降制御が容易に実行される。
【0034】
制御部23は、各種の情報処理を実行する演算装置であり、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)等の電子回路や、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路を採用できる。制御部23は、各種の処理手順を規定したプログラムや制御データを格納するための内部メモリを有し、これらによって種々の処理を実行する。制御部23は、各種のプログラムが動作することにより各種の処理部として機能する。
【0035】
制御部23は、取得部40と、解析部41と、昇降制御部42と、切替部43と、報知部44とを備える。
【0036】
取得部40は、通信部20を介して、高さ検知部4からバトン2の高さ情報を取得する。取得部40は、高さ検知部4から得られる情報に基づいて、バトン2の高さを検出してもよい。取得部40は、通信部20を介して、3D仕込み図を取得する。取得部40は、取得した3D仕込み図を3D仕込み
図DB30に記憶させる。
【0037】
解析部41は、3D仕込み図に基づいて、バトン2の昇降可能範囲を設定する。解析部41は、バトン2毎に、昇降可能範囲を設定する。昇降可能範囲は、バトン2、および、器具Qが、美術セットPに接触せずに、昇降する範囲である。
【0038】
解析部41は、3D仕込み図において、バトン2、または、バトン2に吊り下げられた器具Qの下方に、美術セットPが存在する箇所において、バトン2、または、器具Qと、美術セットPとの鉛直方向に沿った方向(Z軸)における最短距離を算出する。なお、この場合、バトン2の位置は、予め設定された上昇限界位置である。
【0039】
解析部41は、算出した最短距離から、予め設定された距離マージンを減算し、バトン2の昇降可能範囲を設定する。上昇限界位置から昇降可能範囲の分、低い位置となるバトン2の位置は、バトン2、および、器具Qが、美術セットPに接触しない最下点となる降下限界位置である。
【0040】
たとえば、
図4に示すように、バトン2に3つの器具Q1~Q3が吊り下げられ、かつ、3つの器具Q1~Q3の下方に美術セットPが配置される場合、上昇限界位置において最下点が最も低い器具Q2と、美術セットPとの最短距離Lから、距離マージンαを減算した値(L-α)がバトン2の昇降可能範囲Mである。
図4は、実施形態におけるバトン2の昇降可能範囲Mを説明する図である。
【0041】
バトン2が、上昇限界位置から、昇降可能範囲Mの距離を降下し、バトン2が降下限界位置となった場合でも、器具Q2と美術セットPとの間には、距離マージンαの隙間ができるため、器具Q2と美術セットPとは接触しない。
【0042】
なお、たとえば、
図5に示すように、バトン2に吊り下げられた器具Qの下方に美術セットPがない場合、バトン2と美術セットPとの鉛直方向に沿った方向(Z軸)における最短距離Lが算出され、昇降可能範囲Mが設定される。また、
図6に示すように、バトン2に器具Qが吊り下げられていない場合、バトン2と美術セットPとの鉛直方向に沿った方向(Z軸)における最短距離Lを算出され、昇降可能範囲Mが設定される。
図5は、器具Qの下方に美術セットPがない場合のバトン2の昇降可能範囲Mを示す図である。
図6は、バトン2に器具Qが吊り下げられていない場合のバトン2の昇降可能範囲Mを示す図である。
【0043】
昇降制御部42は、巻上機3を制御し、バトン2の昇降を制御する。昇降制御部42は、操作部21における操作に基づいて、巻上機3のモータを制御するための制御信号を生成する。生成された制御信号は、通信部20を介して巻上機3に送信される。
【0044】
昇降制御部42は、3D仕込み図に基づいて、バトン2、および、器具Qが、美術セットPに接触しないように、バトン2を昇降させる。具体的には、昇降制御部42は、3D仕込み図に基づいたバトン2の昇降制御(以下、「規制昇降制御」と称する。)が「ON」になっているか否かを判定する。規制昇降制御が「ON」になっている場合、昇降制御部42は、昇降可能範囲内において、バトン2を昇降させる。すなわち、規制昇降制御が「ON」になっている場合、昇降制御部42は、バトン2、および、器具Qが美術セットPに接触しないように、バトン2を昇降させる。
【0045】
規制昇降制御が「ON」になっている場合、昇降制御部42は、バトン2が降下限界位置よりも下方に降下しないように、高さ検知部4によって検知されるバトン2の高さに基づいて、バトン2を制御する。すなわち、規制昇降制御が「ON」になっており、バトン2が降下される場合、昇降制御部42は、バトン2が3D仕込み図に基づいて設定される降下限界位置以下になることを規制する。
【0046】
規制昇降制御が「ON」になっており、操作部21の操作に応じてバトン2を降下させる場合、操作部21ではバトン2を降下させる操作が継続されても、昇降制御部42は、バトン2を降下限界位置で停止させる。規制昇降制御が「ON」になっている場合、昇降制御部42は、バトン2が降下限界位置に近づくにつれて降下速度を遅くしてもよい。
【0047】
なお、規制昇降制御が「OFF」になっており、操作部21の操作に応じてバトン2を降下させる場合、昇降制御部42は、バトン2を降下限界位置よりも下方まで降下させることができる。
【0048】
切替部43は、操作部21における操作に基づいて、規制昇降制御を「ON」、または、「OFF」に切り替える。切替部43は、規制昇降制御の「ON」、および、「OFF」を、各バトン2に対してそれぞれ設定する。切替部43は、規制昇降制御の「ON」、および、「OFF」を、各バトン2に対して一括して設定してもよい。
【0049】
報知部44は、バトン2の昇降状態を報知させる。報知部44は、バトン2の昇降状態に応じた制御信号を生成し、生成した制御信号を、通信部20を介して、報知装置5に送信する。これにより、報知装置5によって、バトン2の昇降状態に応じた報知が実行される。
【0050】
次に、実施形態に係るバトン2の昇降可能範囲の設定処理について、
図7のフローチャートを参照し説明する。
図7は、実施形態に係るバトン2の昇降可能範囲の設定処理を説明するフローチャートである。
【0051】
制御部23は、3D仕込み図を取得し(S100)、取得した3D仕込み図を3D仕込み
図DB30に記憶させる(S101)。
【0052】
制御部23は、3D仕込み図に基づいてバトン2の昇降可能範囲を設定し(S102)、設定した昇降可能範囲を昇降可能範囲DB31に記憶させる(S103)。
【0053】
次に、実施形態に係るバトン2の昇降処理について
図8のフローチャートを参照し説明する。
図8は、実施形態に係るバトン2の昇降処理を説明するフローチャートである。
【0054】
制御部23は、規制昇降制御が「ON」であるか否かを判定する(S200)。制御部23は、規制昇降制御が「ON」である場合(S200:Yes)、バトン2の昇降可能範囲を読み出す(S201)。制御部23は、昇降可能範囲DB31から昇降可能範囲を読み出す。制御部23は、バトン2毎に設定された昇降可能範囲を読み出す。
【0055】
制御部23は、読み出した昇降可能範囲に基づいて、バトン2の降下位置を降下限界位置に規制する(S202)。制御部23は、操作部21の操作に応じてバトン2を降下させる場合、バトン2が降下限界位置以下にならないように、バトン2を降下させる。
【0056】
制御部23は、規制昇降制御が「OFF」である場合(S200:No)、バトン2の降下位置を降下限界位置に規制しない(S203)。制御部23は、操作部21の操作に応じてバトン2を昇降させる。
【0057】
バトン昇降システム1は、バトン2と、昇降制御部42とを備える。バトン2は、昇降可能である。昇降制御部42は、美術セットPが配置される配置空間Sに対応する仮想空間Rにおける3D仕込み図に基づいて、バトン2、および、バトン2に吊り下げられる器具Qが、美術セットPに接触しないように、バトン2を昇降させる。3D仕込み図は、仮想空間Rにおけるバトン2の3Dデータ、仮想空間Rにおける器具Qの3Dデータ、および、仮想空間Rにおける美術セットPの3Dデータの設計図である。3Dデータは、仮想空間Rにおける位置、および、サイズに関する情報を含む。
【0058】
これにより、バトン昇降システム1は、美術セットPに、バトン2、および、器具Qが接触することを抑制することができる。
【0059】
比較例に係るバトン昇降システムは、たとえば、カメラ装置や、LiDAR(Light Detection And Ranging)などの障害物検知装置を用いることで、バトン、および、器具と美術セットPとの接触を抑制することができる。
【0060】
しかしながら、比較例に係るバトン昇降システムは、障害物検知装置を設置しなければならず、コストが高くなる。また、比較例に係るバトン昇降システムは、美術セットなどの配置に応じて障害物検知装置を設置しなければならず、設置作業が複雑になる。
【0061】
これに対し、実施形態に係るバトン昇降システム1は、障害物検知装置を設置することなく、バトン2、および、器具Qと、美術セットPとの接触を抑制することができる。そのため、バトン昇降システム1は、コストを抑制しつつ、バトン2、および、器具Qと、美術セットPとの接触を抑制することができる。また、バトン昇降システム1は、作業工程の増加を抑制しつつ、バトン2、および、器具Qと、美術セットPとの接触を抑制することができる。
【0062】
また、バトン、および、器具が美術セットに接触しないように、たとえば、複数の人員を配置し、バトンを昇降させる方法が考えられる。しかしながら、この場合、多くの人員を配置する必要がある。
【0063】
これに対し、実施形態に係るバトン昇降システム1は、少ない人員で、バトン2、および、器具Qと、美術セットPとの接触を抑制することができる。
【0064】
昇降制御部42は、バトン2を降下する場合、バトン2が3D仕込み図に基づいて設定される降下限界位置以下になることを規制する。
【0065】
これにより、バトン昇降システム1は、バトン2が降下する場合に、バトン2、および、器具Qが美術セットPに接触することを抑制することができる。
【0066】
昇降制御部42は、バトン2を降下する場合、バトン2を降下限界位置で停止させる。
【0067】
これにより、バトン昇降システム1は、バトン2が降下する場合に、バトン2、および、器具Qが美術セットPに接触することをさらに抑制することができる。
【0068】
バトン昇降システム1は、切替部43を備える。切替部43は、規制昇降制御をON、または、OFFに切り替える。
【0069】
これにより、バトン昇降システム1は、規制昇降制御が「ON」の場合、3D仕込み図に基づいたバトン2の昇降によって、バトン2、および、器具Qが美術セットPに接触することを抑制することができる。さらに、バトン昇降システム1は、規制昇降制御が「OFF」の場合、たとえば、作業者の操作に応じて、バトン2を降下限界位置よりも下方まで降下させることができる。
【0070】
バトン昇降システム1は、報知部44を備える。報知部44は、バトン2の昇降状態を報知させる。
【0071】
これにより、バトン昇降システム1は、バトン2の昇降状態を周囲の人に報知することで、周囲の人の注意力を喚起することができる。そのため、バトン昇降システム1は、安全性を向上させることができる。また、バトン昇降システム1は、バトン2、および、器具Qが美術セットPに接触するおそれがある場合に、周囲の人に、バトン2、および、器具Qと、美術セットPとの接触のおそれを気付かせることができる。
【0072】
変形例に係るバトン昇降システム1は、器具Qが使用される状態の3Dデータを3D仕込み図として記憶してもよい。たとえば、バトン昇降システム1は、器具Qが照明装置であり、照明装置がパンドアを有する場合、パンドアが開いた状態の3Dデータを3D仕込み図として記憶する。
【0073】
これにより、バトン昇降システム1は、規制昇降制御が「ON」である場合、器具Qと、美術セットPとの接触をさらに抑制することができる。
【0074】
変形例に係るバトン昇降システム1では、バトン2の昇降可能範囲が、外部装置によって設定されて、外部装置からバトン2の昇降可能範囲を取得し、記憶してもよい。
【0075】
これにより、変形例に係るバトン昇降システム1は、バトン2を昇降させる制御装置6の処理負荷を低減することができる。
【0076】
変形例に係るバトン昇降システム1は、3D仕込み図として、渡しバトン、および、延長パイプに3Dデータを含んでもよい。
【0077】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0078】
1 バトン昇降システム
2 バトン
3 巻上機
4 高さ検知部
5 報知装置
6 制御装置
22 記憶部
23 制御部
40 取得部
41 解析部
42 昇降制御部
43 切替部
44 報知部
P 美術セット
R 仮想空間
S 配置空間
Q 器具