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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047860
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】油圧ポンプ構造
(51)【国際特許分類】
   F04C 15/00 20060101AFI20240401BHJP
   F04C 15/06 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
F04C15/00 E
F04C15/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153591
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000125853
【氏名又は名称】株式会社 神崎高級工機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】兼述 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】斧田 康佑
【テーマコード(参考)】
3H044
【Fターム(参考)】
3H044AA02
3H044BB03
3H044CC11
3H044CC18
3H044CC19
3H044DD01
3H044DD12
3H044DD13
(57)【要約】
【課題】油圧ポンプ10を高回転で作動させた場合でも、キャビテーションの発生を防止できるとともに、設計目標通りの想定圧や想定量を十分に確保できるようにする。
【解決手段】本願発明の油圧ポンプ構造は、ポンプ入力軸13が回転可能に軸支されたポンプケーシング80と、ポンプ入力軸13のうちポンプケーシング80内の箇所に設けられた油圧ポンプ10とを備える。油圧ポンプ10は、第1ポンプ11と第2ポンプ12とに分離構成される。ポンプケーシング80には、第1ポンプ11及び第2ポンプ12の両方に作動油を分流して吸入させる共通分流油路93と、第1ポンプ11及び第2ポンプ12の両方から吐出した作動油を合流させる共通合流油路94とが形成される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸が回転可能に軸支されたポンプケーシングと、前記回転軸のうち前記ポンプケーシング内の箇所に設けられた油圧ポンプとを備えた油圧ポンプ構造であって、
前記油圧ポンプは、第1ポンプと第2ポンプとに分離構成されており、
前記ポンプケーシングには、前記第1ポンプ及び前記第2ポンプの両方に作動油を分流して吸入させる共通分流油路と、前記第1ポンプ及び前記第2ポンプの両方から吐出した作動油を合流させる共通合流油路とが形成されている、
油圧ポンプ構造。
【請求項2】
前記共通分流油路は、前記ポンプケーシングのうち前記回転軸を挟んだ一方で且つ前記第1ポンプと前記第2ポンプとの間に位置し、
前記共通合流油路は、前記ポンプケーシングのうち前記回転軸を挟んだ他方で且つ前記第1ポンプと前記第2ポンプとの間に位置している、
請求項1に記載した油圧ポンプ構造。
【請求項3】
前記ポンプケーシングは、前記第1ポンプを収容した第1油路板と前記第2ポンプを収容した第2油路板とによって二つ割り状に構成されており、
前記回転軸は、前記第1油路板及び前記第2油路板の重ね合わせ方向に延びて、前記第1油路板及び前記第2油路板を貫通しており、
前記共通分流油路及び前記共通合流油路は、前記第1油路板と前記第2油路板との重ね合わせ面部に形成されている、
請求項2に記載した油圧ポンプ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、油圧ポンプ構造に係り、特にデュアルクラッチ式変速装置における油圧クラッチへの作動油供給に用いられるものに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に開示されるように、ユーティリティビークルや作業車両に備わるデュアルクラッチ式変速装置は公知になっている。
【0003】
デュアルクラッチ式変速装置は、奇数速(第1速、第3速等)ギヤ列群と、偶数速(第2速、第4速等)ギヤ列群と、奇数速ギヤ列群への動力伝達を継断する第1クラッチと、偶数速ギヤ列群への動力伝達を継断する第2クラッチとをハウジングに内装して構成されたものである。そして、第1クラッチと第2クラッチとを交互に継断することによって、切れ目なく動力伝達されるなかで第1速から第2速、第2速から第3速というように、円滑なギヤ変速が実現される。
【0004】
デュアルクラッチ式変速装置は、各クラッチ制御や潤滑等の油圧源として、油圧ポンプを備えている。油圧ポンプは、デュアルクラッチ式変速装置の駆動源であるエンジンの動力によって駆動するように構成されている。油圧ポンプから吐出された作動油は、各クラッチの作動用、ギヤシフタに対するアクチュエータの作動用、さらには各部の潤滑用としてそれぞれに供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4941833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
デュアルクラッチ式変速装置に用いられる油圧ポンプは、エンジン回転速度に比例して作動油吐出量が増大するものであり、作動油吐出量の十分な確保が必要なことから、油圧ポンプの高容量化が求められている。
【0007】
しかし、油圧ポンプを単に高容量化しただけでは、油圧ポンプを高回転で作動させた際に油圧ポンプ内部でキャビテーションが発生し、作動油吐出量が頭打ちになって設計目標時の想定圧や想定量を確保できないという懸念があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、上記のような現状を検討して改善を施した油圧ポンプ構造を提供することを技術的課題としている。
【0009】
請求項1の発明は、回転軸が回転可能に軸支されたポンプケーシングと、前記回転軸のうち前記ポンプケーシング内の箇所に設けられた油圧ポンプとを備えた油圧ポンプ構造であって、前記油圧ポンプは、第1ポンプと第2ポンプとに分離構成されており、前記ポンプケーシングには、前記第1ポンプ及び前記第2ポンプの両方に作動油を分流して吸入させる共通分流油路と、前記第1ポンプ及び前記第2ポンプの両方から吐出した作動油を合流させる共通合流油路とが形成されているというものである。
【0010】
本願発明の油圧ポンプ構造において、前記共通分流油路は、前記ポンプケーシングのうち前記回転軸を挟んだ一方で且つ前記第1ポンプと前記第2ポンプとの間に位置し、前記共通合流油路は、前記ポンプケーシングのうち前記回転軸を挟んだ他方で且つ前記第1ポンプと前記第2ポンプとの間に位置するようにしてもよい。
【0011】
本願発明の油圧ポンプ構造において、前記ポンプケーシングは、前記第1ポンプを収容した第1油路板と前記第2ポンプを収容した第2油路板とによって二つ割り状に構成されており、前記回転軸は、前記第1油路板及び前記第2油路板の重ね合わせ方向に延びて、前記第1油路板及び前記第2油路板を貫通しており、前記共通分流油路及び前記共通合流油路は、前記第1油路板と前記第2油路板との重ね合わせ面部に形成されるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本願発明によると、油圧ポンプを分離構成して、ポンプ単独では低容量化し、全体では十分な作動油吐出量が得られるから、油圧ポンプを高回転で作動させた場合でも、キャビテーションの発生を防止できるとともに、設計目標通りの想定圧や想定量を十分に確保できる。また、油路構造の複雑化を回避できるとともに、油圧ポンプ構造のコンパクト化を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】デュアルクラッチ式変速装置の動力伝達系統を示すスケルトン図である。
図2】デュアルクラッチ式変速装置の油圧回路図である。
図3】デュアルクラッチ式変速装置の側面図である。
図4】デュアルクラッチ式変速装置の分離斜視図である。
図5】油圧ポンプ構造を一側方から見た分離斜視図である。
図6】油圧ポンプ構造を他側方から見た分離斜視図である。
図7図3のVII-VII視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本願発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。始めに、ユーティリティビークル1に搭載されたデュアルクラッチ式変速装置2(以下、変速装置2と略す)の動力伝達系統について、図1のスケルトン図を参照しながら説明する。
【0015】
図1に示すように、ユーティリティビークル1に搭載された変速装置2のハウジング3内には、後述する第1クラッチ25及び第2クラッチ26等に作動油を供給する油圧ポンプ10を備えている。実施形態の油圧ポンプ10は、第1ポンプ11と第2ポンプ12とに分離構成されていて、変速装置2の入力軸であるポンプ入力軸13は、第1ポンプ11と第2ポンプ12との両方を貫通している。ポンプ入力軸13の一端側には、ユーティリティビークル1の駆動源であるエンジン4の出力軸5が連動連結されている。
【0016】
従って、油圧ポンプ10(第1ポンプ11及び第2ポンプ12)は、エンジン4の動力に基づくポンプ入力軸13の回転によって駆動する。エンジン4の動力が油圧ポンプ10を駆動させ、油圧ポンプ10から吐出した作動油を受けて、第1クラッチ25及び第2クラッチ26等が作動する。ポンプ入力軸13は、請求項に記載した回転軸に相当するものである。
【0017】
変速装置2は、ハウジング3内に、前述した油圧ポンプ10及びポンプ入力軸13のほか、ポンプ入力軸13と平行状に延びる第1クラッチ軸14、第2クラッチ軸15、変速中継軸16、前後進軸17、並びに、カウンタ軸18等を備えている。
【0018】
ポンプ入力軸13の他端側には入力ギヤ21が固着されている。入力ギヤ21には、アイドルギヤ22を介して、第1クラッチ軸14に固着された第1クラッチギヤ23と、第2クラッチ軸15に固着された第2クラッチギヤ24とが噛み合っている。実施形態において、第1クラッチギヤ23と第2クラッチギヤ24とは両方とも、アイドルギヤ22に噛み合っているが、第1クラッチギヤ23と第2クラッチギヤ24とはお互いに噛み合っていない。
【0019】
第1クラッチ軸14の動力伝達上流側には、ポンプ入力軸13から第1クラッチ軸14への動力伝達を継断する第1クラッチ25が設けられている。第2クラッチ軸15の動力伝達上流側には、ポンプ入力軸13から第2クラッチ軸15への動力伝達を継断する第2クラッチ26が設けられている。
【0020】
なお、第1クラッチ25は、第1クラッチ軸14のうち第1クラッチギヤ23よりも動力伝達下流側に位置しており、第2クラッチ26は、第2クラッチ軸15のうち第2クラッチギヤ24よりも動力伝達下流側に位置している。
【0021】
第1クラッチ軸14において第1クラッチ25よりも動力伝達下流側には、図1の左側から順に、5速ギヤ31、7速ギヤ33、3速ギヤ29及び1速ギヤ27が配置されている。実施形態では、5速ギヤ31、7速ギヤ33及び3速ギヤ29は、第1クラッチ軸14に回転可能に被嵌されている。1速ギヤ27は第1クラッチ軸14に固着されている。
【0022】
第1クラッチ軸14のうち5速ギヤ31と7速ギヤ33との間には、第1クラッチ軸14に対して相対回転不能で且つ軸方向にスライド可能な5速7速シフタ37が被嵌されている。第1クラッチ軸14のうち3速ギヤ29と1速ギヤ27との間には、第1クラッチ軸14に対して相対回転不能で且つ軸方向にスライド可能な3速シフタ35が被嵌されている。5速7速シフタ37は、後述する5速7速シリンダ69の駆動によって、5速ギヤ31と7速ギヤ33とに選択的に係合可能になっている。3速シフタ35は、後述する3速シリンダ67の駆動によって、3速ギヤ29に係脱可能に構成されている。
【0023】
第2クラッチ軸15において第2クラッチ26よりも動力伝達下流側には、図1の左側から順に、6速ギヤ32、4速ギヤ30及び2速ギヤ28が配置されている。実施形態では、6速ギヤ32及び4速ギヤ30は、第1クラッチ軸14に回転可能に被嵌されている。2速ギヤ28は第2クラッチ軸15に固着されている。
【0024】
第2クラッチ軸15のうち6速ギヤ32と4速ギヤ30との間には、第2クラッチ軸15に対して相対回転不能で且つ軸方向にスライド可能な4速6速シフタ36が被嵌されている。4速6速シフタ36は、後述する4速6速シリンダ68の駆動によって、4速ギヤ30と6速ギヤ32とに選択的に係合可能になっている。
【0025】
変速中継軸16には、図1の左側から順に、5速6速中継ギヤ41、変速中継ギヤ43、7速中継ギヤ42、3速4速中継ギヤ40、1速中継ギヤ38及び2速中継ギヤ39が配置されている。実施形態では、5速6速中継ギヤ41、変速中継ギヤ43、7速中継ギヤ42及び3速4速中継ギヤ40は、変速中継軸16に固着されている。1速中継ギヤ38は変速中継軸16に回転可能に被嵌されている。2速中継ギヤ39は、ワンウェイクラッチ44を介して変速中継軸16に被嵌されている。
【0026】
変速中継軸16のうち3速4速中継ギヤ40と1速中継ギヤ38との間には、変速中継軸16に対して相対回転不能で且つ軸方向にスライド可能な1速シフタ34が被嵌されている。1速シフタ34は、後述する1速シリンダ66の駆動によって、1速ギヤ27に係脱可能に構成されている。
【0027】
5速6速中継ギヤ41には、第1クラッチ軸14上の5速ギヤ31と、第2クラッチ軸15上の6速ギヤ32とが常時噛み合っている。7速中継ギヤ42には、第1クラッチ軸14上の7速ギヤ33が常時噛み合っている。3速4速中継ギヤ40には、第1クラッチ軸14上の3速ギヤ29と、第2クラッチ軸15上の4速ギヤ30とが常時噛み合っている。1速中継ギヤ38には、第1クラッチ軸14上の1速ギヤ27が常時噛み合っている。2速中継ギヤ39には、第2クラッチ軸15上の2速ギヤ28が常時噛み合っている。
【0028】
変速中継軸16上の変速中継ギヤ43には、前後進軸17に固着された前後進入力ギヤ45が固着されている。前後進軸17には、図1の左側から順に、前述の前後進入力ギヤ45、前進ギヤ46及び後進ギヤ47が配置されている。前進ギヤ46及び後進ギヤ47は前後進軸17に回転可能に被嵌されている。前後進軸17のうち前進ギヤ46と後進ギヤ47との間には、前後進軸17に対して相対回転不能で且つ軸方向にスライド可能な前後進シフタ48が被嵌されている。前後進シフタ48は、後述する前後進シリンダ62の駆動によって、前進ギヤ46と後進ギヤ47とに選択的に係合可能になっている。
【0029】
前後進軸17上の前進ギヤ46には、カウンタ軸18に固着された後輪カウンタギヤ49が常時噛み合っている。後輪カウンタギヤ49は、後輪差動ギヤ機構19に連動連結されている。前後進軸17上の後進ギヤ47には、逆転ギヤ51を介して、カウンタ軸18に固着された前輪カウンタギヤ50が常時噛み合っている。前輪カウンタギヤ50は、前輪出力機構20を介して前輪差動ギヤ機構(図示省略)に連動連結されている。
【0030】
エンジン4の出力軸5からポンプ入力軸13に伝わった動力は、第1クラッチ軸14又は第2クラッチ軸15と変速中継軸16とにおいて適宜変速され、前後進軸17において前後進方向を変換されてから、カウンタ軸18に伝達される。そして、カウンタ軸18に伝わった変速動力は、前輪出力機構20を介して前輪差動ギヤ機構(図示省略)に伝達されて左右両前輪(図示省略)を駆動させる。また、カウンタ軸18に伝わった変速動力は、後輪差動ギヤ機構19に伝達されて左右両後輪6を駆動させる。
【0031】
次に、図2を参照しながら、変速装置2の油圧回路構造について説明する。変速装置2の油圧回路60は、第1クラッチ25や第2クラッチ26等に作動油を供給する油圧ポンプ10を備えている。実施形態の油圧ポンプ10は前述の通り、第1ポンプ11と第2ポンプ12とに分離構成されていて、エンジン4の動力に基づくポンプ入力軸13の回転によって駆動する。油圧ポンプ10(第1ポンプ11及び第2ポンプ12)は、変速装置2のハウジング3内に収容されている。変速装置2のハウジング3は作動油タンクとしても利用される。ハウジング3内の作動油が油圧ポンプ10(第1ポンプ11及び第2ポンプ12)に供給される。
【0032】
油圧ポンプ10(第1ポンプ11及び第2ポンプ12)は、前後進シリンダ62の切換作動を制御する前後進切換弁61に接続されている。前後進シリンダ62は、前後進シフタ48を前進ギヤ46と後進ギヤ47とに選択的に係合させるものである。前後進切換弁61は、前後進シリンダ62を介して、第1クラッチ25を作動させる第1クラッチ比例電磁弁63及びクラッチ選択弁65に接続されている。前後進切換弁61は、第2クラッチ26を作動させる第2クラッチ比例電磁弁64にも接続されている。
【0033】
また、油圧ポンプ10(第1ポンプ11及び第2ポンプ12)は、1速シリンダ66と3速シリンダ67との切換作動を制御する1速3速切換電磁弁70と、5速7速シリンダ69の切換作動を制御する5速7速切換電磁弁72と、4速6速シリンダ68の切換作動を制御する4速6速切換電磁弁71とに接続されている。
【0034】
1速シリンダ66は、1速シフタ34を1速ギヤ27に係脱させ、3速シリンダ67は、3速シフタ35を3速ギヤ29に係脱させるものである。4速6速シリンダ68は、4速6速シフタ36を4速ギヤ30と6速ギヤ32とに選択的に係合させるものである。5速7速シリンダ69は、5速7速シフタ37を5速ギヤ31と7速ギヤ33とに選択的に係合させるものである。
【0035】
なお、油圧ポンプ10(第1ポンプ11及び第2ポンプ12)には、潤滑油圧調整弁73(リリーフ弁)を介して、各クラッチ25,26に注油する潤滑ノズル74,75も接続されている。油圧回路60は、アキュムレータやフィルタ等も備えている。
【0036】
次に、図3図7を参照しながら、実施形態に採用された油圧ポンプ構造について説明する。実施形態の油圧ポンプ構造は、回転軸としてのポンプ入力軸13が回転可能に軸支されたポンプケーシング80と、ポンプ入力軸13のうちポンプケーシング80内の箇所に設けられた油圧ポンプ10とを備えている。
【0037】
油圧ポンプ10が内装されたポンプケーシング80は、変速装置2のハウジング3内に配置されている。実施形態のハウジング3は、少なくとも本体部7と、当該本体部7の開口を塞ぐ蓋部8とを有していて、本体部7の開口内にポンプケーシング80が収まっている。ポンプケーシング80等を収容した状態で、本体部7と蓋部8とがボルト締結されている。
【0038】
前述の通り、実施形態では、油圧ポンプ10が第1ポンプ11と第2ポンプ12とに分離構成されている。ポンプケーシング80は、第1ポンプ11を収容した第1油路板81と第2ポンプ12を収容した第2油路板82とによって二つ割り状に構成されている。この場合、ポンプ入力軸13は、第1油路板81及び第2油路板82の重ね合わせ方向に延びて、第1油路板81及び第2油路板82を貫通している。第1油路板81と第2油路板82とは、互いに重なり合った状態で第2油路板側が先に本体部7の開口内に入るようにして、本体部7に対してボルト締結されている。第1油路板81と第2油路板82と本体部7とは、複数のボルトによって共締めされている。
【0039】
ポンプ入力軸13のうち第1油路板81から外向きに突出した突端側には、入力ギヤ21が固着されている。第1油路板81には、アイドルギヤ22の回転軸部が回動可能に軸支されている。言うまでもないが、入力ギヤ21とアイドルギヤ22とは常時噛み合っている。ポンプ入力軸13のうち第2油路板82から外向きに突出した突端側は、本体部7を貫通して、エンジン4の出力軸5に連動連結されている。
【0040】
第1油路板81には、後述する共通分流油路93に連通する吸入油路84が形成されている。第1油路板81の吸入油路84には、ハウジング3内の作動油を取り込む作動油吸入管85の吐出側が接続されている。作動油吸入管85の吸入側は、ハウジング3の内底部に向けて開口している。作動油吸入管85の長手中途部には、筒状のフィルタ86が介設されている。
【0041】
実施形態の第1ポンプ11及び第2ポンプ12は、従来からよく知られるトロコイドポンプである。第1ポンプ11は、第1油路板81内に回転可能に設けられた第1アウターロータ87と、当該第1アウターロータ87内に噛み合うように設けられた第1インナーロータ88とを有している。第2ポンプ12は、第2油路板82内に回転可能に設けられた第2アウターロータ89と、当該第2アウターロータ89内に噛み合うように設けられた第2インナーロータ90とを有している。
【0042】
実施形態では、第2油路板82のうちポンプ入力軸13の軸心(各インナーロータ88,90の回転中心といってもよい)から両側に偏心した箇所に、共通吸入室91及び共通吐出室92が各インナーロータ88,90の外周の一部を囲うように形成されている(図5及び図6参照)。共通吸入室91及び共通吐出室92は、第1ポンプ11と第2ポンプ12との間に位置している。
【0043】
なお、実施形態の共通吸入室91及び共通吐出室92は、第2油路板82側(後述する重ね合わせ面82a側)に形成されているが、第1油路板81側(後述する重ね合わせ面81a側)に形成してもよいし、共通吸入室91を一方の油路板81(82)に、共通吐出室92を他方の油路板82(81)に形成することも可能である。共通吸入室91及び共通吐出室92を両方の油路板81,82(後述する重ね合わせ面81a,82a)に跨るように形成してもよい。
【0044】
第1及び第2インナーロータ88,90がポンプ入力軸13によって回転すると、これらと噛み合う第1及び第2アウターロータ87,89が第1並びに第2インナーロータ88,90と同一方向に回転する。そうすると、第1インナーロータ88と第1アウターロータ87、並びに第2インナーロータ90と第2アウターロータ89との間に形成される複数のロータ室がその容積を変化させながら移動し、各ロータ室の容積が徐々に増加する範囲に形成された共通吸入室91から作動油を吸入し、各ロータ室の容積が徐々に減少する範囲に形成された共通吐出室92から作動油を吐出する。そして、変速装置2における各種の作動部分に作動油が供給される。
【0045】
図5及び図7に示すように、ポンプケーシング80には、第1ポンプ11及び第2ポンプ12の両方に作動油を分流して吸入させる共通分流油路93と、第1ポンプ11及び第2ポンプ12の両方から吐出した作動油を合流させる共通合流油路94とが形成されている。共通分流油路93は、ポンプケーシング80のうちポンプ入力軸13を挟んだ一方で且つ第1ポンプ11と第2ポンプ12との間に位置している。そして、共通合流油路94は、ポンプケーシング80のうちポンプ入力軸13を挟んだ他方で且つ第1ポンプ11と第2ポンプ12との間に位置している。
【0046】
実施形態の共通分流油路93及び共通合流油路94は、第1油路板81と第2油路板82との重ね合わせ面部83に形成されている。第1油路板81と第2油路板82との重ね合わせ面部83とは、第1油路板81の重ね合わせ面81aと第2油路板82の重ね合わせ面82aとの両方を含む概念として記載している。この場合、第2油路板82の重ね合わせ面82aに、共通分流油路93及び共通合流油路94が形成されている。なお、共通吸入室91及び共通吐出室92も、第2油路板82の重ね合わせ面82aに形成されている。
【0047】
もちろん、共通分流油路93及び共通合流油路94を第1油路板81の重ね合わせ面81aに形成してもよいし、共通分流油路93を一方の油路板81(82)の重ね合わせ面81a(82a)に、共通合流油路94を他方の油路板82(81)の重ね合わせ面82a(81a)に形成することも可能である。共通分流油路93及び共通合流油路94を両方の重ね合わせ面81a,82aに跨るように形成してもよい。これら形成位置の総称として、第1油路板81と第2油路板82との重ね合わせ面部83という文言を使用している。
【0048】
前述の通り、第1油路板81の吸入油路84の上流側には、作動油吸入管85の吐出側が接続されている。吸入油路84の下流側は、共通分流油路93の上流側に接続されている。共通分流油路93の下流側は共通吸入室91に連通している。共通吸入室91が両ポンプ11,12において容積が徐々に増加する範囲の各ロータ室に連通している。それから、両ポンプ11,12において容積が徐々に減少する範囲の各ロータ室が共通吐出室92に連通している。共通吐出室92が共通合流油路94の上流側に連通している。なお、第2油路板82の外面(重ね合わせ面82aの反対側の面)には、油圧ポンプ10(第1及び第2ポンプ11,12)に供給された作動油の余剰分をハウジング3内に戻す戻し油路95が形成されている。
【0049】
ポンプ入力軸13によって両ポンプ11,12のインナーロータ88,90が回転すると、これらと噛み合う第1及び第2アウターロータ87,89が第1並びに第2インナーロータ88,90と同一方向に回転し、第1インナーロータ88と第1アウターロータ87、並びに第2インナーロータ90と第2アウターロータ89との間に形成される複数のロータ室がその容積を変化させながら移動する。
【0050】
そうすると、ハウジング3内の作動油は、作動油吸入管85の吸入側から吸い上げられ、第1油路板の吸入油路84及び共通分流油路93を経て、共通吸入室91に送られる。そして、両ポンプ11,12において容積が徐々に増加した各ロータ室に作動油が吸入され、両ポンプ11,12において容積が徐々に減少した各ロータ室から共通吐出室92から作動油が共通合流油路94に吐出される。そして、変速装置2における各種の作動部分に作動油が供給されるのである。
【0051】
上記の記載並びに図5図7から明らかなように、ポンプ入力軸13が回転可能に軸支されたポンプケーシング80と、ポンプ入力軸13のうちポンプケーシング80内の箇所に設けられた油圧ポンプ10とを備えた油圧ポンプ構造であって、油圧ポンプ10は、第1ポンプ11と第2ポンプ12とに分離構成されており、ポンプケーシング80には、第1ポンプ11及び第2ポンプ12の両方に作動油を分流して吸入させる共通分流油路93と、第1ポンプ11及び第2ポンプ12の両方から吐出した作動油を合流させる共通合流油路94とが形成されているから、油圧ポンプ10を第1ポンプ11と第2ポンプ12とに分離構成して、ポンプ11,12単独では低容量化し、全体では十分な作動油吐出量を得ることが可能になる。このため、油圧ポンプ10を高回転で作動させた場合でも、キャビテーションの発生を防止できるとともに、設計目標通りの想定圧や想定量を十分に確保できる。また、共通分流油路93から両方のポンプ11,12に作動油を供給でき、両方のポンプ11,12からの作動油を共通合流油路に集約して吐出できるから、油路構造の複雑化を回避できるとともに、油圧ポンプ構造のコンパクト化を図れる。
【0052】
特に実施形態において、共通分流油路93は、ポンプケーシング80のうちポンプ入力軸13を挟んだ一方で且つ第1ポンプ11と第2ポンプ12との間に位置し、共通合流油路94は、ポンプケーシング80のうちポンプ入力軸13を挟んだ他方で且つ第1ポンプ11と第2ポンプ12との間に位置しているから、共通分流油路93及び共通合流油路94を両方のポンプ11,12に連通させる構成が簡素なものですみ、製造コスト低減に貢献できる。
【0053】
さらに、ポンプケーシング80は、第1ポンプ11を収容した第1油路板81と第2ポンプ12を収容した第2油路板82とによって二つ割り状に構成されており、ポンプ入力軸13は、第1油路板81及び第2油路板82の重ね合わせ方向に延びて、第1油路板81及び第2油路板82を貫通しており、共通分流油路93及び共通合流油路94は、第1油路板81と第2油路板82との重ね合わせ面部83に形成されているから、共通分流油路93及び共通合流油路94の形成を容易に行えるという利点がある。
【0054】
なお、本願発明における各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
【符号の説明】
【0055】
2 デュアルクラッチ式変速装置
3 ハウジング
4 エンジン
5 出力軸
10 油圧ポンプ
11 第1ポンプ
12 第2ポンプ
13 ポンプ入力軸
21 入力ギヤ
22 アイドルギヤ
60 油圧回路
80 ポンプケーシング
81 第1油路板
81a 重ね合わせ面
82 第2油路板
82a 重ね合わせ面
83 重ね合わせ面部
84 吸入油路
87 第1アウターロータ
88 第1インナーロータ
89 第2アウターロータ
90 第2インナーロータ
91 共通吸入室
92 共通吐出室
93 共通分流油路
94 共通合流油路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7