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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047870
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】センサーモジュール
(51)【国際特許分類】
   G01P 15/125 20060101AFI20240401BHJP
   G01C 19/5776 20120101ALI20240401BHJP
【FI】
G01P15/125 V
G01C19/5776
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153603
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100148323
【弁理士】
【氏名又は名称】川▲崎▼ 通
(74)【代理人】
【識別番号】100168860
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 充史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 健太
(72)【発明者】
【氏名】轟原 正義
【テーマコード(参考)】
2F105
【Fターム(参考)】
2F105BB15
2F105CD11
(57)【要約】
【課題】物理量センサーが取り付けられる被測定物に発生する高周波電磁振動ノイズの影響を受けにくいセンサーモジュールを提供すること。
【解決手段】物理量センサーから出力される被測定信号及び基準周期信号生成部から出力される基準周期信号の一方に同期して他方の時間イベントの第1~第nのカウント値を生成するカウント部と、前記被測定信号と前記基準周期信号との位相差に基づく第1~第nの時間デジタル値を生成する時間デジタル値生成部と、前記第iの時間デジタル値と前記第iのカウント値とに基づいて第iの合成出力値を生成する合成出力値生成部と、を備え、前記第jの合成出力値の量子化誤差が前記第j+1の合成出力値の生成にフィードバックされ、前記物理量が変化する周波数が最大周波数となるときの前記物理量の変化の周期は、前記第1~第nの合成出力値がそれぞれ生成される平均周期の8倍よりも長い、センサーモジュール。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出した物理量の大きさに応じて周波数が変化する被測定信号を出力する物理量センサーと、
基準周期信号を出力する基準周期信号生成部と、
2以上の整数nに対して、前記被測定信号及び前記基準周期信号の一方に同期して他方の時間イベントをカウントして第1~第nのカウント値を時系列に生成するカウント部と、
前記被測定信号と前記基準周期信号との位相差に基づく第1~第nの時間デジタル値を時系列に生成する時間デジタル値生成部と、
1以上n以下の各整数iに対して、前記第iの時間デジタル値と前記第iのカウント値とに基づいて第iの合成出力値を生成する合成出力値生成部と、
を備え、
1以上n-1以下の各整数jに対して、前記第jの合成出力値の量子化誤差が前記第j+1の合成出力値の生成にフィードバックされ、
前記物理量が変化する周波数が仕様で定められた検出可能な前記物理量の周波数帯域における最大周波数となるときの前記物理量の変化の周期は、前記第1~第nの合成出力値がそれぞれ生成される平均周期の8倍よりも長い、センサーモジュール。
【請求項2】
請求項1において、
前記時間デジタル値生成部は、多相クロック方式、時間/電圧変換方式又はΣATDC方式により、前記第1~第nの時間デジタル値を生成する、センサーモジュール。
【請求項3】
請求項1において、
前記合成出力値生成部は、前記被測定信号の立ち上がり及び立ち下がりの両方のタイミングで前記第1~第nの合成出力値を時系列に生成する、センサーモジュール。
【請求項4】
請求項1において、
前記合成出力値生成部の後段にフィルター部を備える、センサーモジュール。
【請求項5】
請求項4において、
前記フィルター部は、前記第1~第nの合成出力値に対してデシメーション処理を行う、センサーモジュール。
【請求項6】
請求項4において、
前記合成出力値生成部は、前記被測定信号の立ち上がり及び立ち下がりの両方のタイミングで前記第1~第nの合成出力値を時系列に生成し、
前記フィルター部は、前記第1~第nの合成出力値に対して偶数タップの移動平均処理を行う、センサーモジュール。
【請求項7】
請求項1において、
前記合成出力値生成部は、前記第iの時間デジタル値と前記第iのカウント値とを合成して得られた値からオフセット値を減算して前記第iの合成出力値を生成する、センサーモジュール。
【請求項8】
請求項1において、
前記第1~第nの合成出力値のうちの連続するp個の合成出力値を記憶する記憶部を備え、
前記記憶部は、制御信号に基づいて、記憶している前記p個の合成出力値を出力する、センサーモジュール。
【請求項9】
請求項8において、
前記第1~第nの合成出力値の各々はタイムスタンプの差分に基づく値であり、
前記記憶部は、前記p個の合成出力値として前記第k+1~第k+pの合成出力値を記憶している場合、さらに前記第k+1~第k+pのカウント値のいずれかを記憶する、センサーモジュール。
【請求項10】
請求項8において、
前記記憶部は、リングバッファーであり、前記p個の合成出力値として前記第k+1~第k+pの合成出力値を記憶している場合、前記制御信号に基づいて、前記第k+p+1の合成出力値以降の記憶を停止し、前記第k+1~第k+pの合成出力値を出力する、センサーモジュール。
【請求項11】
請求項10において、
前記第1~第nの合成出力値の各々はタイムスタンプの差分に基づく値であり、
前記記憶部は、前記p個の合成出力値として前記第k+1~第k+pの合成出力値を記憶している場合、さらに前記第k+pのカウント値を記憶し、前記制御信号に基づいて、前記第k+1~第k+pの合成出力値と前記第k+pのカウント値とを出力する、センサーモジュール。
【請求項12】
2以上の整数Nに対して、
第1~第Nの物理量センサーと、
第1~第Nのカウント部と、
第1~第Nの時間デジタル値生成部と、
第1~第Nの合成出力値生成部と、
第1~第Nの記憶部と、
基準周期信号を出力する基準周期信号生成部と、
を備え、
1以上N以下の各整数mに対して、
前記第mの物理量センサーは、検出した第mの物理量の大きさに応じて周波数が変化する第mの被測定信号を出力し、
前記第mのカウント部は、2以上の整数nに対して、前記第mの被測定信号及び前記基準周期信号の一方に同期して他方の時間イベントをカウントして第1~第nのカウント値を時系列に生成し、
前記第mの時間デジタル値生成部は、前記第mの被測定信号と前記基準周期信号との位相差に基づく第1~第nの時間デジタル値を時系列に生成し、
前記第mの合成出力値生成部は、1以上n以下の各整数iに対して、前記第mの時間デジタル値生成部が生成した前記第iの時間デジタル値と前記第mのカウント部が生成した前記第iのカウント値とに基づいて第iの合成出力値を生成し、
前記第mの記憶部は、前記第mの合成出力値生成部が生成した前記第1~第nの合成出力値のうちの連続するp個の合成出力値を記憶し、制御信号に基づいて、記憶している当該p個の合成出力値を出力し、
1以上n-1以下の各整数jに対して、前記第mの合成出力値生成部が生成した第jの合成出力値の量子化誤差が前記第j+1の前記合成出力値の生成にフィードバックされ、
前記第mの物理量が変化する周波数が仕様で定められた検出可能な前記第mの物理量の周波数帯域における最大周波数となるときの前記第mの物理量の変化の周期は、前記第mの合成出力値生成部によって前記第1~第nの合成出力値がそれぞれ生成される平均周期の8倍よりも長い、センサーモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサーモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
被測定物に取り付けられた物理量センサーから出力される被測定信号に基づいて、被測定物に加わった物理量の大きさに応じたデータを生成して出力するセンサーモジュールが知られている。このようなセンサーモジュールでは、被測定物の構造や動作に起因して発生する各種の高周波電磁振動ノイズに基づく周波数成分やその高調波成分が、被測定信号に含まれる場合があり、このような高周波電磁振動成分の影響を低減して精度の高いデータを生成することが求められる。
【0003】
特許文献1には、インバータ電源で駆動される回転機械の転がり軸受部に設けた振動センサーから取得した第1振動加速度データをフーリエ変換して生成された周波数スペクトルから、インバータ電源による高調波電磁振動成分を除去する高周波電磁振動成分の除去方法が記載されている。この高周波電磁振動成分の除去方法では、周波数スペクトルから複数のピーク値を検出し、基準ピーク値と検出した複数のピーク値の周波数間隔を全て求め、当該周波数間隔から基準周波数間隔を決定し、当該周波数間隔が基準周波数間隔の整数倍であるピーク値を対象ピーク値として抽出し、周波数スペクトルの対象ピーク値のレベルを所定のレベルまで低減させ、インバータ電源により高周波電磁振動成分を除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-259624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のセンサーモジュールによれば、被測定信号に含まれる高周波電磁振動成分を除去する必要があり、回路規模が大きくなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るセンサーモジュールの一態様は、
検出した物理量の大きさに応じて周波数が変化する被測定信号を出力する物理量センサーと、
基準周期信号を出力する基準周期信号生成部と、
2以上の整数nに対して、前記被測定信号及び前記基準周期信号の一方に同期して他方の時間イベントをカウントして第1~第nのカウント値を時系列に生成するカウント部と、
前記被測定信号と前記基準周期信号との位相差に基づく第1~第nの時間デジタル値を時系列に生成する時間デジタル値生成部と、
1以上n以下の各整数iに対して、前記第iの時間デジタル値と前記第iのカウント値とに基づいて第iの合成出力値を生成する合成出力値生成部と、
を備え、
1以上n-1以下の各整数jに対して、前記第jの合成出力値の量子化誤差が前記第j+1の合成出力値の生成にフィードバックされ、
前記物理量が変化する周波数が仕様で定められた検出可能な前記物理量の周波数帯域における最大周波数となるときの前記物理量の変化の周期は、前記第1~第nの合成出力値
がそれぞれ生成される平均周期の8倍よりも長い。
【0007】
本発明に係るセンサーモジュールの他の一態様は、
2以上の整数Nに対して、
第1~第Nの物理量センサーと、
第1~第Nのカウント部と、
第1~第Nの時間デジタル値生成部と、
第1~第Nの合成出力値生成部と、
第1~第Nの記憶部と、
基準周期信号を出力する基準周期信号生成部と、
を備え、
1以上N以下の各整数mに対して、
前記第mの物理量センサーは、検出した第mの物理量の大きさに応じて周波数が変化する第mの被測定信号を出力し、
前記第mのカウント部は、2以上の整数nに対して、前記第mの被測定信号及び前記基準周期信号の一方に同期して他方の時間イベントをカウントして第1~第nのカウント値を時系列に生成し、
前記第mの時間デジタル値生成部は、前記第mの被測定信号と前記基準周期信号との位相差に基づく第1~第nの時間デジタル値を時系列に生成し、
前記第mの合成出力値生成部は、1以上n以下の各整数iに対して、前記第mの時間デジタル値生成部が生成した前記第iの時間デジタル値と前記第mのカウント部が生成した前記第iのカウント値とに基づいて第iの合成出力値を生成し、
前記第mの記憶部は、前記第mの合成出力値生成部が生成した前記第1~第nの合成出力値のうちの連続するp個の合成出力値を記憶し、制御信号に基づいて、記憶している当該p個の合成出力値を出力し、
1以上n-1以下の各整数jに対して、前記第mの合成出力値生成部が生成した第jの合成出力値の量子化誤差が前記第j+1の前記合成出力値の生成にフィードバックされ、
前記第mの物理量が変化する周波数が仕様で定められた検出可能な前記第mの物理量の周波数帯域における最大周波数となるときの前記第mの物理量の変化の周期は、前記第mの合成出力値生成部によって前記第1~第nの合成出力値がそれぞれ生成される平均周期の8倍よりも長い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態のセンサーモジュールの構成を示すブロック図。
図2】センサーモジュールの動作の一例を説明するためのタイミングチャート図。
図3】第1実施形態におけるカウント部及び合成出力値生成部の構成例を示す図。
図4】第1実施形態における時間デジタル値生成部の構成例を示す図。
図5】発振部の構成例を示す図。
図6】第1実施形態におけるカウント部、時間デジタル値生成部及び合成出力値生成部の動作の一例を示すタイミングチャート図。
図7】第1実施形態におけるカウント部、時間デジタル値生成部及び合成出力値生成部の動作の一例を示すタイミングチャート図。
図8】合成出力データの周波数スペクトラムの一例を示す図。
図9】物理量の変化の最小周期と合成出力値が生成される平均周期との比と物理量の測定精度との関係について考察するための図。
図10】物理量の変化の最小周期と合成出力値が生成される平均周期との比と物理量の測定精度との関係について考察するための図。
図11】第2実施形態におけるカウント部及び合成出力値生成部の構成例を示す図。
図12】第2実施形態における時間デジタル値生成部の構成例を示す図。
図13】時間デジタル値算出部の真理値表の一例を示す図。
図14】第2実施形態におけるカウント部、時間デジタル値生成部及び合成出力値生成部の動作の一例を示すタイミングチャート図。
図15】第3実施形態における時間デジタル値生成部の構成例を示す図。
図16】スイッチが導通してからの経過時間と電圧との関係の一例を示す図。
図17】第3実施形態におけるカウント部、時間デジタル値生成部及び合成出力値生成部の動作の一例を示すタイミングチャート図。
図18】第4実施形態のセンサーモジュールの構成を示すブロック図。
図19】記憶部の動作を説明するための図。
図20】第4実施形態におけるカウント部及び合成出力値生成部の構成例を示す図。
図21】第5実施形態のセンサーモジュールの構成を示すブロック図。
図22】第mの記憶部の動作を説明するための図。
図23】第1~第3の記憶部にそれぞれ記憶される合成出力値及びカウント値の一例を示す図。
図24図23のデータから算出される各タイムスタンプ値をプロットした図。
図25図23のデータから算出される各タイムスタンプ補正値をプロットした図。
図26】センサーモジュールの斜視図。
図27】センサーモジュールの分解斜視図。
図28】加速度を検出するためのセンサー素子の概略構成を説明する斜視図。
図29】加速度を検出するセンサー素子を用いた加速度検出器の概略構成を説明する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0010】
1.第1実施形態
図1は、第1実施形態のセンサーモジュールの構成を示すブロック図である。また、図2は、第1実施形態のセンサーモジュールの動作の一例を説明するためのタイミングチャート図である。図1に示すように、第1実施形態のセンサーモジュール1は、物理量センサー10、基準周期信号生成部20、カウント部30、時間デジタル値生成部40及び合成出力値生成部50を備える。
【0011】
物理量センサー10は、被測定物に取り付けられ、被測定物に加わった所定の物理量を検出し、検出した物理量の大きさに応じて周波数が変化する被測定信号TRGを出力する。具体的には、物理量センサー10は、物理量を検出する不図示の物理量検出素子と、当該物理量検出素子を発振させる不図示の発振回路とを有し、当該発振回路が被測定信号TRGを出力する。例えば、物理量は、加速度、角速度、角加速度、圧力、質量、電圧、磁力、静電容量、温度等であってもよい。
【0012】
基準周期信号生成部20は、基準周期信号CLKを出力する。例えば、基準周期信号生成部20は、水晶振動子やシリコンMEMS振動子を発振させて基準周期信号CLKを出力する発振回路であってもよいし、SAW(Surface Acoustic Wave)共振子を使用した発振回路であってもよいし、基準周期信号CLKを出力するRC発振回路やLC発振回路であってもよい。
【0013】
カウント部30は、物理量センサー10から出力される被測定信号TRG及び基準周期
信号生成部20から出力される基準周期信号CLKの一方に同期して他方の時間イベントをカウントして第1~第nのカウント値DCNT~DCNTを時系列に生成し、第1~第nのカウント値DCNT~DCNTを含むカウントデータDCNTを出力する。nは2以上の整数である。被測定信号TRGの時間イベントとは、被測定信号TRGが変化するタイミングであり、例えば、被測定信号TRGの立ち上がりエッジ又は立ち下がりエッジであってもよいし、被測定信号TRGの立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジであってもよい。同様に、基準周期信号CLKの時間イベントとは、基準周期信号CLKが変化するタイミングであり、例えば、基準周期信号CLKの立ち上がりエッジ又は立ち下がりエッジであってもよいし、基準周期信号CLKの立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジであってもよい。図2の例では、カウント部30は、被測定信号TRGの立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジに同期して、基準周期信号CLKの立ち上がりエッジをカウントして第1~第nのカウント値DCNT~DCNTを時系列に生成している。
【0014】
時間デジタル値生成部40は、被測定信号TRGと基準周期信号CLKとの位相差に基づく第1~第nの時間デジタル値TD~TDを時系列に生成し、第1~第nの時間デジタル値TD~TDを含む時間デジタルデータTDを出力する。
【0015】
合成出力値生成部50は、1以上n以下の各整数iに対して、時間デジタルデータTDに含まれる第iの時間デジタル値TDとカウントデータDCNTに含まれる第iのカウント値DCNTとに基づいて第iの合成出力値DTSを生成し、第1~第nの合成出力値DTS~DTSを含む合成出力データDTSを出力する。例えば、合成出力値生成部50は、被測定信号TRGに同期して第1~第nの合成出力値DTS~DTSを生成してもよい。
【0016】
合成出力値生成部50は、被測定信号TRGの立ち上がり及び立ち下がりのいずれか一方のタイミングで第1~第nの合成出力値DTS~DTSを時系列に生成してもよい。あるいは、図2に示すように、合成出力値生成部50は、被測定信号TRGの立ち上がり及び立ち下がりの両方のタイミングで第1~第nの合成出力値DTS~DTSを時系列に生成してもよい。
【0017】
第1~第nの合成出力値DTS~DTSを含む合成出力データDTSは、物理量センサー10から出力される被測定信号TRGと基準周期信号CLKとの周波数比を示す信号である。
【0018】
また、図1に示すように、第1実施形態のセンサーモジュール1は、合成出力値生成部50の後段にフィルター部60を備えてもよい。フィルター部60は、合成出力データDTSに含まれる第1~第nの合成出力値DTS~DTSに対してデシメーション処理を行って計測データDOを出力してもよい。また、フィルター部60は、合成出力データDTSに含まれる第1~第nの合成出力値DTS~DTSに対して偶数タップの移動平均処理を行って計測データDOを出力してもよい。フィルター部60は、第1~第nの合成出力値DTS~DTSに対して偶数タップの移動平均処理とデシメーション処理の一方を行ってもよいし両方を行ってもよい。図2の例では、フィルター部60は、第1~第nの合成出力値DTS~DTSに対して4タップの移動平均処理とデシメーション処理の両方を行って、第1~第n/4の計測値DO~DOn/4を含む計測データDOを出力している。フィルター部60から出力される計測データDOは、センサーモジュール1から不図示の外部装置に出力される。
【0019】
このように構成されているセンサーモジュール1は、被測定信号TRGと基準周期信号CLKとの周波数比を示す合成出力データDTSに基づく計測データDOを出力する周波数カウンターとして機能する。そして、基準周期信号CLKの周波数は物理量センサー1
0が検出した物理量の大きさによらず一定であるのに対して、被測定信号TRGの周波数は物理量センサー10が検出した物理量の大きさに応じて変化する。したがって、外部装置は、計測データDOに基づいて、物理量センサー10が検出した物理量の大きさを判断し、必要な演算や制御を行うことができる。
【0020】
周知の通り、周波数カウンターのカウント方式には、直接カウント方式とレシプロカルカウント方式とがある。直接カウント方式では、基準周期信号CLKと被測定信号TRGのうち、基準周期信号CLKを動作クロックとして用いる。レシプロカルカウント方式では、直接カウント方式とは逆に、被測定信号TRGを動作クロックとして用いる。また、基準周期信号CLKの周波数と被測定信号TRGの周波数とを比較して、基準周期信号CLKの周波数の方が低い場合は、直接カウント方式を採用し、被測定信号TRGの周波数の方が低い場合は、レシプロカルカウント方式を採用することで、分解能をより高くして計測を行うことができると考えられている。したがって、被測定信号TRGと基準周期信号CLKのうち、周波数が低い方の信号を動作クロックとして用いる方式を採用するのが一般的である。
【0021】
以下では、基準周期信号CLKを被測定信号TRGでカウントするレシプロカルカウント方式を用いたセンサーモジュール1を例に挙げ、カウント部30、時間デジタル値生成部40及び合成出力値生成部50の具体的な構成例について説明する。
【0022】
図3は、カウント部30及び合成出力値生成部50の構成例を示す図である。図3に示すように、カウント部30は、カウンター31及びDフリップフロップ32を含む。また、合成出力値生成部50は、乗算器51、減算器52及びDフリップフロップ53を含む。なお、図3では図示の簡略化のため、Dフリップフロップ32及びDフリップフロップ53はそれぞれ1つのみ図示されているが、実際には、Dフリップフロップ32はM個存在し、Dフリップフロップ53はN個存在する。
【0023】
カウンター31は、基準周期信号CLKのエッジの数をカウントする。本実施形態では、カウンター31は、基準周期信号CLKの立ち上がりエッジの数をカウントし、MビットのカウントデータCNTを出力する。
【0024】
M個のDフリップフロップ32は、被測定信号TRGに同期してMビットのカウントデータCNTを取り込んで保持する。本実施形態では、M個のDフリップフロップ32は、被測定信号TRGの立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジに同期して、MビットのカウントデータCNTを取り込んでMビットのカウントデータDCNTとして保持する。具体的には、M個のDフリップフロップ32は、被測定信号TRGの立ち上がりエッジが到来したときのカウントデータCNTを取り込み、被測定信号TRGの立ち下がりエッジが到来するまでカウントデータDCNTとして保持する。また、M個のDフリップフロップ32は、被測定信号TRGの立ち下がりエッジが到来したときのカウントデータCNTを取り込み、被測定信号TRGの立ち上がりエッジが到来するまでカウントデータDCNTとして保持する。
【0025】
乗算器51は、MビットのカウントデータDCNTと整数Nとの乗算を行う。すなわち、乗算器51は、カウントデータDCNTのN倍であるNビットのデータを出力する。なお、整数Nが2のn乗であれば、乗算器51は、カウントデータDCNTをnビットシフトする簡易な回路として実現することができる。
【0026】
減算器52は、乗算器51から出力されるNビットのデータから、時間デジタル値生成部40から出力されるNビットの時間デジタルデータTDを減算し、NビットのタイムスタンプデータTSを出力する。
【0027】
N個のDフリップフロップ53は、被測定信号TRGに同期してNビットのタイムスタンプデータTSを取り込んで保持する。本実施形態では、N個のDフリップフロップ53は、被測定信号TRGの立ち上がりエッジ又は立ち下がりエッジが到来すると、NビットのタイムスタンプデータTSを取り込んでNビットの合成出力データDTSとして保持する。この合成出力データDTSに含まれる各値は、レシプロカルカウント値であり、被測定信号TRGの立ち上がりエッジから次の立ち下がりエッジまでの時間、あるいは、被測定信号TRGの立ち下がりエッジから次の立ち上がりエッジまでの時間に対応した値である。すなわち、合成出力データDTSに含まれる各値は、被測定信号TRGの連続する2つのエッジの間の時間が長いほど大きな値となり、被測定信号TRGの連続する2つのエッジの間の時間が短いほど小さな値となる。
【0028】
図4は、時間デジタル値生成部40の構成例を示す図である。図4に示すように、時間デジタル値生成部40は、制御部41、発振部42、カウンター43、Dフリップフロップ44、加算器45及びDフリップフロップ46を含む。なお、図4では図示の簡略化のため、Dフリップフロップ44及びDフリップフロップ46はそれぞれ1つのみ図示されているが、実際には、Dフリップフロップ44はK個存在し、Dフリップフロップ46はN個存在する。
【0029】
制御部41は、被測定信号TRGの立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジを検出してイネーブル信号ENをアクティブにして出力する。本実施形態では、イネーブル信号ENはハイレベルがアクティブであるものとする。制御部41は、イネーブル信号ENをハイレベルにした後に、カウンター43から出力されるカウントデータCTに基づいて、発振部42から出力されるクロック信号CKの立ち上がりエッジの数が所定数まで達した場合にイネーブル信号ENをハイレベルからローレベルに切り替える。また、制御部41は、イネーブル信号ENをハイレベルからローレベルに切り替えた後、基準周期信号CLKの立ち上がりエッジが所定回到来するとリセット信号RST1をアクティブにして出力する。本実施形態では、リセット信号RST1はハイレベルがアクティブであるものとする。制御部41は、リセット信号RST1をハイレベルにした後に所定時間が経過した時点で、リセット信号RST1をハイレベルからローレベルに切り替える。また、制御部41は、イネーブル信号ENをハイレベルにした後、基準周期信号CLKの最初の立ち上がりエッジが到来するとリセット信号RST2をアクティブにして出力する。本実施形態では、リセット信号RST2はハイレベルがアクティブであるものとする。制御部41は、リセット信号RST2をハイレベルにした後に所定時間が経過した時点で、リセット信号RST2をハイレベルからローレベルに切り替える。イネーブル信号ENは発振部42に供給され、リセット信号RST1はカウンター43及びK個のDフリップフロップ44に供給され、リセット信号RST2はN個のDフリップフロップ46に供給される。
【0030】
発振部42は、イネーブル信号ENがハイレベルのときに発振し、イネーブル信号ENがローレベルのときに発振を停止する。例えば、図5に示すように、発振部42は、2入力の論理積回路47及び論理反転回路48を含む。論理積回路47は、イネーブル信号ENと論理反転回路48の出力信号とが入力され、イネーブル信号ENと論理反転回路48の出力信号の論理積信号を出力する。論理反転回路48は、論理積回路47の出力信号が入力され、論理積回路47の出力信号の論理反転信号を出力する。
【0031】
カウンター43は、クロック信号CKのエッジの数をカウントする。本実施形態では、カウンター43は、リセット信号RST1がローレベルのとき、クロック信号CKの立ち上がりエッジの数をカウントし、KビットのカウントデータCTを出力する。また、カウンター43は、リセット信号RST1がハイレベルのとき、カウントデータCTをゼロに初期化する。
【0032】
K個のDフリップフロップ44は、基準周期信号CLKに同期してKビットのカウントデータCTを取り込んで保持する。本実施形態では、K個のDフリップフロップ44は、リセット信号RST1がローレベルのとき、基準周期信号CLKの立ち上がりエッジが到来すると、KビットのカウントデータCTを取り込んでKビットのカウントデータDCTとして保持する。また、K個のDフリップフロップ44は、リセット信号RST1がハイレベルのとき、カウントデータDCTをゼロに初期化する。
【0033】
加算器45は、N個のDフリップフロップ46が保持して出力するNビットのデータとK個のDフリップフロップ44が保持するKビットのカウントデータDCTとを加算してNビットの加算データを出力する。
【0034】
N個のDフリップフロップ46は、基準周期信号CLKに同期して加算器45から出力される加算データを取り込んで保持する。本実施形態では、N個のDフリップフロップ46は、リセット信号RST2がローレベルのとき、基準周期信号CLKの立ち上がりエッジが到来すると、加算器45から出力されるNビットの加算データを取り込んでNビットの時間デジタルデータTDとして保持する。また、N個のDフリップフロップ46は、リセット信号RST2がハイレベルのとき、時間デジタルデータTDをゼロに初期化する。
【0035】
このように構成されている時間デジタル値生成部40は、基準周期信号CLKに同期して値が増加するカウントデータDCTを積算するΣATDC方式により、第1~第nの時間デジタル値TD~TDを生成する。ATDCは、Accumulated Time to Digital Convertの略である。
【0036】
次に、図6及び図7を用いて、カウント部30、時間デジタル値生成部40及び合成出力値生成部50の詳細な動作を説明する。図6及び図7は、カウント部30、時間デジタル値生成部40及び合成出力値生成部50の動作の一例を示すタイミングチャート図である。なお、図6及び図7の例では、合成出力値生成部50において乗算器51に入力される整数Nは32である。
【0037】
図6に示すように、基準周期信号CLKの立ち上がりエッジが到来する毎にカウントデータCNTが1ずつ増えていく。そして、時刻t0において、被測定信号TRGがローレベルからハイレベルに遷移すると、この時のカウントデータCNTが10であるので、カウントデータDCNTが0から10に変わり、タイムスタンプデータTSが0から320に変わる。例えば、このカウントデータDCNTの値である10が、前述の第1のカウント値DCNTに相当する。また、被測定信号TRGがローレベルからハイレベルに遷移すると、発振部42の発振が開始し、クロック信号CKの立ち上がりエッジが到来する毎にカウントデータCTが1ずつ増えていく。
【0038】
時刻t0から時間P1が経過した時刻t1において、被測定信号TRGがハイレベルに遷移した後の基準周期信号CLKの最初の立ち上がりエッジが到来し、当該エッジに同期してカウントデータDCTが0から4に変わる。また、当該エッジに同期してリセット信号RST2がローレベルからハイレベルに遷移し、時間デジタルデータTDが0に初期化される。その後、リセット信号RST2がハイレベルからローレベルに遷移し、時間デジタルデータTDの初期化動作が解除される。
【0039】
時刻t2において、基準周期信号CLKの2番目の立ち上がりエッジが到来し、当該エッジに同期してカウントデータDCTが4から12に変わり、時間デジタルデータTDが0から4に変わる。また、当該エッジに同期してタイムスタンプデータTSが320から316に変わる。
【0040】
時刻t3において、基準周期信号CLKの3番目の立ち上がりエッジが到来し、当該エッジに同期して、カウントデータDCTが12から20に変わり、時間デジタルデータTDが4から16に変わる。また、当該エッジに同期してタイムスタンプデータTSが316から304に変わる。
【0041】
時刻t4において、基準周期信号CLKの4番目の立ち上がりエッジが到来し、当該エッジに同期して、カウントデータDCTが20から29に変わり、時間デジタルデータTDが16から36に変わる。また、当該エッジに同期してタイムスタンプデータTSが304から284に変わる。その後、カウントデータCTが32に達すると発振部42の発振が停止し、カウントデータCTは32に保持される。
【0042】
時刻t5において、基準周期信号CLKの5番目の立ち上がりエッジが到来し、当該エッジに同期して、カウントデータDCTが29から32に変わり、時間デジタルデータTDが36から65に変わる。また、当該エッジに同期してタイムスタンプデータTSが284から255に変わる。
【0043】
時刻t6において、基準周期信号CLKの6番目の立ち上がりエッジが到来し、当該エッジに同期して、時間デジタルデータTDが65から97に変わり、タイムスタンプデータTSが255から223に変わる。なお、カウントデータDCTは32のまま変わらない。
【0044】
時刻t7において、基準周期信号CLKの7番目の立ち上がりエッジが到来し、当該エッジに同期して、時間デジタルデータTDが97から129に変わり、タイムスタンプデータTSが223から191に変わる。なお、カウントデータDCTは32のまま変わらない。
【0045】
時刻t8において、基準周期信号CLKの8番目の立ち上がりエッジが到来し、当該エッジに同期して、リセット信号RST1がローレベルからハイレベルに遷移し、カウントデータCT及びカウントデータDCTが0に初期化される。カウントデータCTが32から0に変わったため、時間デジタルデータTDは129のまま変わらず、タイムスタンプデータTSも191のまま変わらない。例えば、この時間デジタルデータTDの値である129が、前述の第1の時間デジタル値TDに相当する。その後、リセット信号RST1がハイレベルからローレベルに遷移し、カウントデータCT及びカウントデータDCTの初期化が解除される。
【0046】
その後、時間が経過し、図7に示すように、時刻t9において、基準周期信号CLKの11番目の立ち上がりエッジが到来し、カウントデータCNTが20から21に変わる。そして、時刻t10において、被測定信号TRGがハイレベルからローレベルに遷移すると、この時のタイムスタンプデータTSが191であるので、合成出力データDTSが0から191に変わる。例えば、この合成出力データDTSの値である191が、前述の第1の合成出力値DTSに相当する。また、被測定信号TRGがハイレベルからローレベルに遷移した時のカウントデータCNTが21であるので、カウントデータDCNTが10から21に変わり、タイムスタンプデータTSが191から543に変わる。例えば、このカウントデータDCNTの値である21が、前述の第2のカウント値DCNTに相当する。また、被測定信号TRGがハイレベルからローレベルに遷移すると、発振部42の発振が開始し、クロック信号CKの立ち上がりエッジが到来する毎にカウントデータCTが1ずつ増えていく。
【0047】
時刻t10から時間P2が経過した時刻t11において、基準周期信号CLKの12番
目の立ち上がりエッジが到来し、当該エッジに同期してカウントデータDCTが0から6に変わる。また、当該エッジに同期してリセット信号RST2がローレベルからハイレベルに遷移し、時間デジタルデータTDが0に初期化され、タイムスタンプデータTSが543から672に変わる。その後、リセット信号RST2がハイレベルからローレベルに遷移し、時間デジタルデータTDの初期化動作が解除される。
【0048】
時刻t12において、基準周期信号CLKの13番目の立ち上がりエッジが到来し、当該エッジに同期して、カウントデータDCTが6から14に変わり、時間デジタルデータTDが0から6に変わる。また、当該エッジに同期してタイムスタンプデータTSが672から666に変わる。
【0049】
時刻t13において、基準周期信号CLKの14番目の立ち上がりエッジが到来し、当該エッジに同期して、カウントデータDCTが14から22に変わり、時間デジタルデータTDが6から20に変わる。また、当該エッジに同期してタイムスタンプデータTSが666から652に変わる。
【0050】
時刻t14において、基準周期信号CLKの15番目の立ち上がりエッジが到来し、当該エッジに同期して、カウントデータDCTが22から31に変わり、時間デジタルデータTDが20から42に変わる。また、当該エッジに同期してタイムスタンプデータTSが652から630に変わる。その後、カウントデータCTが32に達すると発振部42の発振が停止し、カウントデータCTは32に保持される。
【0051】
時刻t15において、基準周期信号CLKの16番目の立ち上がりエッジが到来し、当該エッジに同期して、カウントデータDCTが31から32に変わり、時間デジタルデータTDが42から73に変わる。また、当該エッジに同期してタイムスタンプデータTSが630から599に変わる。
【0052】
時刻t16において、基準周期信号CLKの17番目の立ち上がりエッジが到来し、当該エッジに同期して、時間デジタルデータTDが73から105に変わり、タイムスタンプデータTSが599から567に変わる。なお、カウントデータDCTは32のまま変わらない。
【0053】
時刻t17において、基準周期信号CLKの18番目の立ち上がりエッジが到来し、当該エッジに同期して、時間デジタルデータTDが105から137に変わり、タイムスタンプデータTSが567から535に変わる。なお、カウントデータDCTは32のまま変わらない。
【0054】
時刻t18において、基準周期信号CLKの19番目の立ち上がりエッジが到来し、当該エッジに同期して、リセット信号RST1がローレベルからハイレベルに遷移し、カウントデータCT及びカウントデータDCTが0に初期化される。カウントデータCTが32から0に変わったため、時間デジタルデータTDは137のまま変わらず、タイムスタンプデータTSも535のまま変わらない。例えば、この時間デジタルデータTDの値である137が、前述の第2の時間デジタル値TDに相当する。その後、リセット信号RST1がハイレベルからローレベルに遷移し、カウントデータCT及びカウントデータDCTの初期化が解除される。
【0055】
ここで、図7に示す時刻t10から時刻t11までの時間P2は、図6に示す時刻t0から時刻t1までの時間P1よりも長い。また、時刻t12から時刻t18までの各時刻における時間デジタルデータTDは、時刻t2から時刻t8までの各時刻における時間デジタルデータTDよりも大きい値となるように遷移している。したがって、被測定信号T
RGのエッジと基準周期信号CLKの立ち上がりエッジとの時間間隔が長いほど、時間デジタルデータTDが大きな値となる。そして、時刻t7において変化した後の時間デジタルデータTD、すなわち第1の時間デジタル値TDである129は時間P1に対応し、時刻t17において変化した後の時間デジタルデータTD、すなわち第2の時間デジタル値TDである137は時間P2に対応している。
【0056】
図6及び図7の例では、基準周期信号CLKの1周期の時間をTとすると、被測定信号TRGがハイレベルの時間はT×(21-10)+P1-P2=(T×21-P2)-(T×10-P1)である。ここで、時刻t7において変化した後のタイムスタンプデータTS、すなわち191(=32×10-129)は(T×10-P1)に対応し、第1の合成出力値DTSとなる。また、時刻t17において変化した後のタイムスタンプデータTS、すなわち535(=32×21-137)は(T×21-P2)に対応し、第2の合成出力値DTSとなる。したがって、第2の合成出力値DTSと第1の合成出力値DTSとの差分、すなわち344(=535-191)は被測定信号TRGがハイレベルの時間、すなわち被測定信号TRGの立ち上がりエッジと立ち下がりエッジとの時間間隔に対応する。
【0057】
一般化すると、第iの合成出力値DTSは、被測定信号TRGのi番目のエッジとi+1番目のエッジとの時間間隔に対応する。したがって、外部装置は、第1~第nの合成出力値DTS~DTSを用いて生成された計測データDOに基づいて被測定信号TRGの周波数を算出し、物理量センサー10が検出した物理量を測定することができる。
【0058】
ここで、図6及び図7に示したように、第1~第nの合成出力値DTS~DTSが生成される期間において、基準周期信号CLKが停止することなく、基準周期信号CLKの立ち上がりエッジが到来する毎にカウントデータCNTが1ずつ増えていく。これにより、第1の合成出力値DTSの量子化誤差が第2の合成出力値DTSの生成にフィードバックされることになる。一般化すると、1以上n-1以下の各整数jに対して、第jの合成出力値DTSの量子化誤差が第j+1の合成出力値DTSj+1の生成にフィードバックされる。すなわち、第1~第nの合成出力値DTS~DTSを含む合成出力データDTSはデルタシグマ変調信号の性質を満たすので、ノイズシェーピング効果が得られ、量子化誤差が高周波数帯域にシフトする。図8は、合成出力データDTSの周波数スペクトラムの一例を示す図であり、横軸は周波数であり、縦軸はパワースペクトル密度である。図8の例では、第1~第nの合成出力値DTS~DTSが生成される平均周波数は約266kHzであり、仕様で定められた検出可能な物理量の周波数帯域の上限は1kHzである。図8の例では、量子化誤差が10kHz以上の周波数帯域にシフトしており、物理量の周波数帯域である1kHz以下の帯域のノイズ成分が低下している。したがって、外部装置は、計測データDOに基づいて、物理量を高精度に測定することができる。
【0059】
ところで、サンプリング定理によれば、物理量センサー10に加わる物理量が変化する周波数が仕様で定められた検出可能な物理量の周波数帯域Fにおける最大周波数fmaxとなるときの当該物理量の変化の周期Tmin=1/fmaxは、第1~第nの合成出力値DTS~DTSがそれぞれ生成される周期T~Tの2倍以上であることが要求される。周波数帯域Fは、例えば、物理量センサー10が物理量を検出可能な最大周波数や外部装置への計測データDOの最大転送レート等の制約に基づいて適宜決定される。
【0060】
しかしながら、周期T~Tの平均周期をTavgとして、周期Tminと平均周期Tavgとの比が小さいと、外部装置による物理量の測定精度が低下するおそれがある。そこで、図9及び図10を用いて、周期Tminと平均周期Tavgとの比と物理量の測定精度との関係について考察する。
【0061】
図9のG1,G2,G3は、それぞれ、第1~第nの合成出力値DTS~DTSが生成される平均周波数favgを、図8の例における平均周波数favgである約266kHの1/2,1/4,1/8にした場合の合成出力データDTSの周波数スペクトラムを示す。また、図10のG4,G5,G6は、それぞれ、第1~第nの合成出力値DTS~DTSが生成される平均周波数favgを、図8の例における平均周波数favgである約266kHの1/16,1/32,1/64にした場合の合成出力データDTSの周波数スペクトラムを示す。
【0062】
図9において、G1では、平均周波数favgは約266kHz×1/2であり、破線で示す1/8favg~1/2favgの周波数帯域を図8と比較すると、量子化誤差によるノイズが増加している。また、G2では、平均周波数favgは約266kHz×1/4であり、破線で示す1/8favg~1/2favgの周波数帯域を図8と比較すると、量子化誤差によるノイズが増加するとともに、9kHz付近のピークの右側の裾野に影響が生じている。また、G3では、平均周波数favgは約266kHz×1/8であり、破線で示す1/8favg~1/2favgの周波数帯域を図8と比較すると、9kHz付近のピークの両側の裾野に影響が生じている。これに対して、G1,G2,G3のいずれにおいても、1/8favg以下の周波数帯域を図8と比較すると、両者はほとんど差がない。
【0063】
図10において、G4では、平均周波数favgは約266kHz×1/16であり、破線で示す1/8favg~1/2favgの周波数帯域を図8と比較すると、5kHz付近のピークの右側の裾野に影響が生じている。また、G5では、平均周波数favgは約266kHz×1/32であり、破線で示す1/8favg~1/2favgの周波数帯域を図8と比較すると、3kHzと4kHzの間に帯域外の信号の折り返しによるピークが生じるとともに、当該ピークの裾野の信号レベルが増加している。また、G6では、平均周波数favgは約266kHz×1/64であり、破線で示す1/8favg~1/2favgの周波数帯域を図8と比較すると、500Hzと600Hzの間の信号レベルに影響が生じている。これに対して、G4,G5,G6のいずれにおいても、1/8favg以下の周波数帯域を図8と比較すると、両者はほとんど差がない。
【0064】
以上の考察より、物理量センサー10が検出する物理量の周波数が、第1~第nの合成出力値DTS~DTSが生成される平均周波数favgの1/8よりも低い周波数帯域に含まれる限りにおいて、外部装置が計測データDOに基づいて精度良く測定することができると言える。したがって、本実施形態では、物理量が変化する周波数が仕様で定められた検出可能な物理量の周波数帯域Fにおける最大周波数fmaxとなるときの当該物理量の変化の周期Tmin=1/fmaxは、第1~第nの合成出力値DTS~DTSがそれぞれ生成される平均周期Tavgの8倍よりも長い。ただし、周期Tminと平均周期Tavgとの比が大きいほど、物理量の測定精度が向上するが、センサーモジュール1の回路面積や消費電力は増加するので、この比は8倍以上であって、かつ、測定精度が許容される範囲でなるべく小さいことが好ましい。
【0065】
以上に説明したように、第1実施形態のセンサーモジュール1は、物理量センサー10から出力される被測定信号TRGに対して、アナログ信号処理をすることなくデジタル値である第1~第nのカウント値DCNT~DCNT及び第1~第nの時間デジタル値TD~TDを生成し、第1~第nのカウント値DCNT~DCNT及び第1~第nの時間デジタル値TD~TDに基づいて第1~第nの合成出力値DTS~DTSを生成する。したがって、第1実施形態のセンサーモジュール1によれば、被測定信号TRGに、物理量センサー10が取り付けられる被測定物に生じる高周波電磁振動ノイズに起因する周波数成分およびその高調波成分が含まれていたとしても、高周波ノイズの影
響を受けやすいアナログ回路が不要であるので、高周波電磁振動ノイズの影響を受けにくい。また、第1実施形態のセンサーモジュール1によれば、被測定信号TRGから、高周波電磁振動ノイズに起因する周波数成分およびその高調波成分を除去する必要がないので、回路規模が低減される。
【0066】
また、第1実施形態のセンサーモジュール1では、第jの合成出力値DTSの量子化誤差が第j+1の合成出力値DTSj+1の生成にフィードバックされるので、第1~第nの合成出力値DTS~DTSはデルタシグマ変調信号の性質を満たし、ノイズシェーピング効果が得られ、量子化誤差が高周波数帯域にシフトする。したがって、第1実施形態のセンサーモジュール1によれば、第1~第nの合成出力値DTS~DTSから算出される物理量成分のS/N比が向上し、外部装置による物理量の測定精度が向上する。
【0067】
また、一般に直接カウント方式とレシプロカルカウント方式とでは計測精度に差があるため被測定信号の周波数帯域と基準周期信号の周波数との関係に応じて最適なカウント方式を選択する必要があるが、第1実施形態のセンサーモジュール1によれば、第1~第nの合成出力値DTS~DTSはデルタシグマ変調信号の性質を満たすことで、いずれの方式でも同等の測定精度を得ることができるので、計測精度の制約を考慮せずにカウント方式を選択することができる。例えば、カウント部30において、被測定信号TRG及び基準周期信号CLKのうち、周期が長い方の信号に同期して周期が短い方の信号の時間イベントをカウントする構成とすることで、周期が短い方の信号に同期して周期が長い方の信号の時間イベントをカウントする構成よりも、動作周波数を下げることができるため、測定精度を保ったまま低消費電力化が可能となる。
【0068】
また、第1実施形態のセンサーモジュール1によれば、物理量センサー10に加わる物理量が変化する周波数が物理量の周波数帯域Fにおける最大周波数fmaxとなるときの物理量の変化の周期Tminが、第1~第nの合成出力値DTS~DTSがそれぞれ生成される平均周期Tavgの8倍よりも長いので、スプリアスやエイリアシング等に起因する様々な悪影響を現実的な時間で許容レベル以下に低減することができる。
【0069】
また、第1実施形態のセンサーモジュール1は、被測定信号TRGの立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジのタイミングで第1~第nの合成出力値DTS~DTSを生成する。したがって、第1実施形態のセンサーモジュール1によれば、被測定信号TRGの1周期当たり2つの合成出力値を生成するので、被測定信号TRGの周波数の2倍のレートで第1~第nの合成出力値を生成することができる。
【0070】
また、第1実施形態のセンサーモジュール1によれば、被測定信号TRGのハイレベルの時間に応じたn/2個の合成出力値と被測定信号TRGのローレベルの時間に応じたn/2個の合成出力値が得られるので、外部装置は、第1~第nの合成出力値DTS~DTSに基づいて、被測定信号TRGのデューティー比を算出することができる。したがって、例えば、外部装置は、被測定信号TRGのデューティー比が50:50になるように物理量センサー10に含まれる発振回路を調整することにより、被測定信号TRGの歪を小さくして被測定信号TRGに含まれるノイズ成分を低減させることができる。
【0071】
また、第1実施形態のセンサーモジュール1によれば、フィルター部60において、第1~第nの合成出力値DTS~DTSに対して各種の信号処理を行うことができる。例えば、フィルター部60がデシメーション処理を行うことによりサンプルレートを下げることができるので、フィルター部60の後段の回路の消費電力を低減させることができる。特に、被測定信号TRGに含まれる測定対象の信号成分が低周波帯域に存在する場合は、デシメーション比を大きくすることにより、データ量を効果的に低減させることがで
きる。また、例えば、フィルター部60が偶数タップの移動平均処理を行うことにより被測定信号TRGのハイレベルの時間に応じた合成出力値と被測定信号TRGのローレベルの時間に応じた合成出力値とが平均化されるので、被測定信号TRGに含まれるデューティー比に起因するノイズ成分を低減させることができる。
【0072】
2.第2実施形態
以下、第2実施形態のセンサーモジュール1について、第1実施形態と同様の構成要素には同じ符号を付し、第1実施形態と重複する説明は省略または簡略し、主に第1実施形態と異なる内容について説明する。
【0073】
第2実施形態のセンサーモジュール1の構成は、図1と同様であるため、その図示及び説明を省略する。ただし、第2実施形態では、時間デジタル値生成部40及び合成出力値生成部50の具体的な構成が第1実施形態と異なる。
【0074】
図11は、第2実施形態におけるカウント部30及び合成出力値生成部50の構成例を示す図である。図11に示すように、カウント部30の構成は図3と同じであるため、その説明を省略する。
【0075】
合成出力値生成部50は、乗算器51、加算器54及びN個のDフリップフロップ53を含む。すなわち、図11に示す合成出力値生成部50は、図3に示した合成出力値生成部50に対して、減算器52が加算器54に置き換わっている。加算器54は、乗算器51から出力されるNビットのデータと、時間デジタル値生成部40から出力されるNビットの時間デジタルデータTDとを加算し、NビットのタイムスタンプデータTSを出力する。合成出力値生成部50のその他の構成は図3と同じであるので、その説明を省略する。
【0076】
図12は、第2実施形態における時間デジタル値生成部40の構成例を示す図である。図12に示すように、第2実施形態における時間デジタル値生成部40は、多相クロック生成部81、Dフリップフロップ82,83,84及び時間デジタル値算出部85を含む。
【0077】
多相クロック生成部81は、基準周期信号CLKの位相をそれぞれ90°,180°,270°遅らせた第1クロック信号CLK90、第2クロック信号CLK180及び第3クロック信号CLK270を出力する。
【0078】
Dフリップフロップ82は、被測定信号TRGに同期して第1クロック信号CLK90を取り込んで保持する。本実施形態では、Dフリップフロップ82は、被測定信号TRGの立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジに同期して第1クロック信号CLK90を取り込んで第1データD90として保持する。
【0079】
Dフリップフロップ83は、被測定信号TRGに同期して第2クロック信号CLK180を取り込んで保持する。本実施形態では、Dフリップフロップ83は、被測定信号TRGの立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジに同期して第2クロック信号CLK180を取り込んで第2データD180として保持する。
【0080】
Dフリップフロップ84は、被測定信号TRGに同期して第3クロック信号CLK270を取り込んで保持する。本実施形態では、Dフリップフロップ84は、被測定信号TRGの立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジに同期して第3クロック信号CLK270を取り込んで第3データD270として保持する。
【0081】
時間デジタル値算出部85は、第1データD90、第2データD180及び第3データD270に基づいて、第1~第nの時間デジタル値TD~TDを時系列に算出し、第1~第nの時間デジタル値TD~TDを含む時間デジタルデータTDを出力する。
【0082】
図13は、時間デジタル値算出部85の真理値表の一例を示す図である。図13に示すように、1以上n以下の各整数iに対して、時間デジタル値算出部85は、第1データD90及び第2データD180がともにローレベルであり、かつ、第3データD270がハイレベルである場合は、第iの時間デジタル値TDとして0を算出する。また、時間デジタル値算出部85は、第1データD90がハイレベルであり、かつ、第2データD180及び第3データD270がともにローレベルである場合は、第iの時間デジタル値TDとして1を算出する。また、時間デジタル値算出部85は、第1データD90及び第2データD180がともにハイレベルであり、かつ、第3データD270がローレベルである場合は、第iの時間デジタル値TDとして2を算出する。また、時間デジタル値算出部85は、第1データD90がローレベルであり、かつ、第2データD180及び第3データD270がともにハイレベルである場合は、第iの時間デジタル値TDとして3を算出する。
【0083】
このように構成されている時間デジタル値生成部40は、基準周期信号CLKの位相をずらした複数のクロック信号を用いた多相クロック方式により、第1~第nの時間デジタル値TD~TDを生成する。なお、図12の例では、位相の異なる3つのクロック信号が用いられているが、位相の異なる2つ又は4つ以上のクロック信号が用いられてもよい。また、位相の異なる複数のクロック信号の1つとして基準周期信号CLKが用いられてもよい。
【0084】
図14は、カウント部30、時間デジタル値生成部40及び合成出力値生成部50の動作の一例を示すタイミングチャート図である。なお、図14の例では、合成出力値生成部50において乗算器51に入力される整数Nは4である。
【0085】
図14に示すように、基準周期信号CLKの立ち上がりエッジが到来する毎にカウントデータCNTが1ずつ増えていく。そして、時刻t0において、被測定信号TRGがローレベルからハイレベルに遷移すると、この時のカウントデータCNTが3であるので、カウントデータDCNTが0から3に変わる。例えば、このカウントデータDCNTの値である3が、前述の第1のカウント値DCNTに相当する。また、被測定信号TRGがローレベルからハイレベルに遷移すると、第1クロック信号CLK90がハイレベルであるので第1データD90がローレベルからハイレベルに変わる。また、第2クロック信号CLK180がハイレベルであるので、第2データD180がローレベルからハイレベルに変わる。また、第3クロック信号CLK270がローレベルであるので第3データD270がローレベルを維持する。その結果、時間デジタルデータTDが0から2に変わり、タイムスタンプデータTSが0から14に変わる。例えば、この時間デジタルデータTDの値である2が、前述の第1の時間デジタル値TDに相当する。
【0086】
その後、時刻t1において、被測定信号TRGがハイレベルからローレベルに遷移すると、この時のタイムスタンプデータTSが14であるので、合成出力データDTSが0から14に変わる。例えば、この合成出力データDTSの値である14が、前述の第1の合成出力値DTSに相当する。また、被測定信号TRGがハイレベルからローレベルに遷移した時のカウントデータCNTが7であるので、カウントデータDCNTが3から7に変わる。例えば、このカウントデータDCNTの値である7が、前述の第2のカウント値DCNTに相当する。また、被測定信号TRGがハイレベルからローレベルに遷移すると、第1クロック信号CLK90がハイレベルであるので第1データD90がハイレベルを維持する。また、第2クロック信号CLK180がローレベルであるので、第2データ
D180がハイレベルからローレベルに変わる。また、第3クロック信号CLK270がローレベルであるので第3データD270がローレベルを維持する。その結果、時間デジタルデータTDが2から1に変わり、タイムスタンプデータTSが14から29に変わる。例えば、この時間デジタルデータTDの値である1が、前述の第2の時間デジタル値TDに相当する。
【0087】
その後、時刻t2において、被測定信号TRGがローレベルからハイレベルに遷移すると、この時のタイムスタンプデータTSが29であるので、合成出力データDTSが14から29に変わる。例えば、この合成出力データDTSの値である29が、前述の第2の合成出力値DTSに相当する。また、被測定信号TRGがローレベルからハイレベルに遷移した時のカウントデータCNTが11であるので、カウントデータDCNTが7から11に変わる。例えば、このカウントデータDCNTの値である11が、前述の第3のカウント値DCNTに相当する。また、被測定信号TRGがローレベルからハイレベルに遷移すると、第1クロック信号CLK90がローレベルであるので第1データD90がハイレベルからローレベルに変わる。また、第2クロック信号CLK180がローレベルであるので、第2データD180がローレベルを維持する。また、第3クロック信号CLK270がハイレベルであるので第3データD270がローレベルからハイレベルに変わる。その結果、時間デジタルデータTDが1から0に変わり、タイムスタンプデータTSが29から44に変わる。例えば、この時間デジタルデータTDの値である0が、前述の第3の時間デジタル値TDに相当する。
【0088】
ここで、被測定信号TRGがハイレベルからローレベルに遷移した時刻t2から次に基準周期信号CLKの立ち上がりエッジが到来するまでの時間P2は、被測定信号TRGがローレベルからハイレベルに遷移した時刻t1から次に基準周期信号CLKの立ち上がりエッジが到来するまでの時間P1よりも長い。一方、被測定信号TRGのエッジと基準周期信号CLKの立ち上がりエッジとの時間間隔が短いほど、時間デジタルデータTDが大きな値となる。そして、時刻t1において変化した後の時間デジタルデータTD、すなわち第1の時間デジタル値TDである2は時間P1に対応し、時刻t2において変化した後の時間デジタルデータTD、すなわち第2の時間デジタル値TDである1は時間P2に対応している。
【0089】
図14の例では、基準周期信号CLKの1周期の時間をTとすると、被測定信号TRGがハイレベルの時間はT×(7-3)+P1-P2=(T×7-P2)-(T×3-P1)である。ここで、時刻t0において変化した後のタイムスタンプデータTS、すなわち14(=4×3+2)は(T×3-P1)に対応し、第1の合成出力値DTSとなる。また、時刻t1において変化した後のタイムスタンプデータTS、すなわち29(=4×7+1)は(T×7-P2)に対応し、第2の合成出力値DTSとなる。したがって、第2の合成出力値DTSと第1の合成出力値DTSとの差分、すなわち15(=29-14)は被測定信号TRGがハイレベルの時間、すなわち被測定信号TRGの立ち上がりエッジと立ち下がりエッジとの時間間隔に対応する。
【0090】
一般化すると、第iの合成出力値DTSは、被測定信号TRGのi番目のエッジとi+1番目のエッジとの時間間隔に対応する。したがって、外部装置は、第1~第nの合成出力値DTS~DTSを用いて生成された計測データDOに基づいて被測定信号TRGの周波数を算出し、物理量センサー10が検出した物理量を測定することができる。
【0091】
ここで、図14に示したように、第1~第nの合成出力値DTS~DTSが生成される期間において、基準周期信号CLKが停止することなく、基準周期信号CLKの立ち上がりエッジが到来する毎にカウントデータCNTが1ずつ増えていく。これにより、第1の合成出力値DTSの量子化誤差が第2の合成出力値DTSの生成にフィードバッ
クされることになる。一般化すると、1以上n-1以下の各整数jに対して、第jの合成出力値DTSの量子化誤差が第j+1の合成出力値DTSj+1の生成にフィードバックされる。すなわち、第1~第nの合成出力値DTS~DTSを含む合成出力データDTSはデルタシグマ変調信号の性質を満たすので、ノイズシェーピング効果が得られ、量子化誤差が高周波数帯域にシフトする。したがって、外部装置は、計測データDOに基づいて、物理量を高精度に測定することができる。
【0092】
以上に説明した第2実施形態のセンサーモジュール1によれば、第1実施形態のセンサーモジュール1と同様の効果が得られる。
【0093】
3.第3実施形態
以下、第3実施形態のセンサーモジュール1について、第1実施形態又は第2実施形態と同様の構成要素には同じ符号を付し、第1実施形態又は第2実施形態と重複する説明は省略または簡略し、主に第1実施形態及び第2実施形態と異なる内容について説明する。
【0094】
第3実施形態のセンサーモジュール1の構成は、図1と同様であるため、その図示及び説明を省略する。ただし、第3実施形態では、時間デジタル値生成部40の具体的な構成が第1実施形態及び第2実施形態と異なる。第3実施形態におけるカウント部30及び合成出力値生成部50の具体的な構成は、図3と同じであるため、その説明を省略する。
【0095】
図15は、第3実施形態における時間デジタル値生成部40の構成例を示す図である。図15に示すように、第3実施形態における時間デジタル値生成部40は、制御信号生成部91、スイッチ92、抵抗93、キャパシター94、スイッチ95、サンプルホールド回路96及び時間デジタル値換算部97を含む。
【0096】
制御信号生成部91は、基準周期信号CLK及び被測定信号TRGに基づいて、スイッチ制御信号SW、リセット信号RST及びサンプルホールド信号SHを生成して出力する。具体的には、制御信号生成部91は、被測定信号TRGの立ち上がりエッジ又は立ち下がりエッジが到来すると、スイッチ制御信号SWをローレベルからハイレベルに変化させる。また、制御信号生成部91は、スイッチ制御信号SWがハイレベルのときに基準周期信号CLKの立ち上がりエッジが到来すると、スイッチ制御信号SWをハイレベルからローレベルに変化させるとともに、サンプルホールド信号SHをローレベルからハイレベルに変化させる。また、制御信号生成部91は、サンプルホールド信号SHがハイレベルのときに基準周期信号CLKの立ち上がりエッジが到来すると、サンプルホールド信号SHをハイレベルからローレベルに変化させるとともに、リセット信号RSTをローレベルからハイレベルに変化させる。また、制御信号生成部91は、リセット信号RSTがハイレベルのときに基準周期信号CLKの立ち上がりエッジが到来すると、リセット信号RSTをハイレベルからローレベルに変化させる。
【0097】
スイッチ92は、一端に電源電圧が供給され、他端が抵抗93の一端と接続されている。そして、スイッチ92は、スイッチ制御信号SWがハイレベルのときに導通状態となり、スイッチ制御信号SWがローレベルのときに非導通状態となる。
【0098】
抵抗93の他端はキャパシター94の一端と接続され、キャパシター94の他端は接地されている。抵抗93とキャパシター94はRC時定数回路を構成し、スイッチ92が導通状態である期間において、キャパシター94が充電され、抵抗93とキャパシター94との接続ノードの電圧VRCが上昇していく。図16に、スイッチ92が導通してからの経過時間と電圧VRCとの関係の一例を示す。抵抗93とキャパシター94との接続ノードの電圧VRCは、サンプルホールド回路96に入力される。
【0099】
スイッチ95は、一端が抵抗93とキャパシター94との接続ノードと接続され、他端が接地されている。そして、スイッチ95はリセット信号RSTがハイレベルのときに導通状態となり、リセット信号RSTがローレベルのときに非導通状態となる。したがって、スイッチ95が導通状態である期間において、キャパシター94が放電され、抵抗93とキャパシター94との接続ノードの電圧VRCは、グラウンド電圧まで低下していく。
【0100】
サンプルホールド回路96は、サンプルホールド信号SHに基づいて、電圧VRCをサンプリングして保持する。具体的には、サンプルホールド回路96は、サンプルホールド信号SHがローレベルからハイレベルに変化したときの電圧VRCをサンプリングし、サンプリングした電圧VRCをサンプルホールド信号SHがハイレベルの期間において電圧VSHとして保持する。
【0101】
時間デジタル値換算部97は、サンプルホールド回路96が保持する電圧VSHを時間デジタルデータTDに換算して出力する。サンプルホールド回路96が保持する電圧VSHは被測定信号TRGの立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジが到来する毎に変化するので、時間デジタル値換算部97は、各電圧VSHを第1~第nの時間デジタル値TD~TDに換算し、時間デジタル値TD~TDを含む時間デジタルデータTDを出力する。具体的には、時間デジタル値換算部97は、1以上n以下の各整数iに対して、電圧VSHをA/D変換してデジタル化し、図16に示した電圧時間特性に対応するテーブル情報あるいは数式に基づき、デジタル化された電圧VSHに対応する第iの時間デジタル値TDを算出する。この時間デジタル値TDは、i番目の被測定信号TRGのエッジと次の基準周期信号CLKの立ち上がりエッジとの時間間隔に応じた値となる。
【0102】
このように構成されている時間デジタル値生成部40は、被測定信号TRGのエッジと基準周期信号CLKのエッジとの時間差に応じて変化する電圧VRCを利用した時間/電圧変換方式により、第1~第nの時間デジタル値TD~TDを生成する。
【0103】
図17は、カウント部30、時間デジタル値生成部40及び合成出力値生成部50の動作の一例を示すタイミングチャート図である。なお、図17の例では、合成出力値生成部50において乗算器51に入力される整数Nは32である。
【0104】
図17に示すように、基準周期信号CLKの立ち上がりエッジが到来する毎にカウントデータCNTが1ずつ増えていく。そして、時刻t0において、被測定信号TRGがローレベルからハイレベルに遷移すると、この時のカウントデータCNTが10であるので、カウントデータDCNTが0から10に変わり、タイムスタンプデータTSが0から320に変わる。例えば、このカウントデータDCNTの値である10が、前述の第1のカウント値DCNTに相当する。また、被測定信号TRGがローレベルからハイレベルに遷移すると、スイッチ制御信号SWがローレベルからハイレベルに遷移する。
【0105】
時刻t0から時間P1が経過した時刻t1において、被測定信号TRGがハイレベルに遷移した後の基準周期信号CLKの最初の立ち上がりエッジが到来し、当該エッジに同期して、スイッチ制御信号SWがハイレベルからローレベルに遷移し、サンプルホールド信号SHがローレベルからハイレベルに遷移する。
【0106】
時刻t2において、基準周期信号CLKの次の立ち上がりエッジが到来し、当該エッジに同期して、サンプルホールド信号SHがハイレベルからローレベルに遷移し、リセット信号RSTがローレベルからハイレベルに遷移する。また、当該エッジに同期して、時間デジタルデータTDが0から129に変わり、タイムスタンプデータTSが320から191に変わる。
【0107】
時刻t3において、基準周期信号CLKの次の立ち上がりエッジが到来し、リセット信号RSTがハイレベルからローレベルに遷移する。
【0108】
その後、時刻t4において、被測定信号TRGがハイレベルからローレベルに遷移すると、この時のタイムスタンプデータTSが191であるので、合成出力データDTSが0から191に変わる。例えば、この合成出力データDTSの値である191が、前述の第1の合成出力値DTSに相当する。また、被測定信号TRGがハイレベルからローレベルに遷移した時のカウントデータCNTが14であるので、カウントデータDCNTが10から14に変わり、タイムスタンプデータTSが191から319に変わる。例えば、このカウントデータDCNTの値である14が、前述の第2のカウント値DCNTに相当する。また、被測定信号TRGがハイレベルからローレベルに遷移すると、スイッチ制御信号SWがローレベルからハイレベルに遷移する。
【0109】
時刻t4から時間P2が経過した時刻t5において、被測定信号TRGがローレベルに遷移した後の基準周期信号CLKの最初の立ち上がりエッジが到来し、当該エッジに同期して、スイッチ制御信号SWがハイレベルからローレベルに遷移し、サンプルホールド信号SHがローレベルからハイレベルに遷移する。
【0110】
時刻t6において、基準周期信号CLKの次の立ち上がりエッジが到来し、当該エッジに同期して、サンプルホールド信号SHがハイレベルからローレベルに遷移し、リセット信号RSTがローレベルからハイレベルに遷移する。また、当該エッジに同期して、時間デジタルデータTDが129から137に変わり、タイムスタンプデータTSが319から311に変わる。
【0111】
時刻t7において、基準周期信号CLKの次の立ち上がりエッジが到来し、リセット信号RSTがハイレベルからローレベルに遷移する。
【0112】
その後、時刻t8において、被測定信号TRGがローレベルからハイレベルに遷移すると、この時のタイムスタンプデータTSが311であるので、合成出力データDTSが191から311に変わる。例えば、この合成出力データDTSの値である311が、前述の第2の合成出力値DTSに相当する。また、被測定信号TRGがローレベルからハイレベルに遷移した時のカウントデータCNTが18であるので、カウントデータDCNTが14から18に変わり、タイムスタンプデータTSが311から439に変わる。例えば、このカウントデータDCNTの値である18が、前述の第3のカウント値DCNTに相当する。また、被測定信号TRGがローレベルからハイレベルに遷移すると、スイッチ制御信号SWがローレベルからハイレベルに遷移する。
【0113】
ここで、時刻t4から時刻t5までの時間P2は、時刻t0から時刻t1までの時間P1よりも長い。一方、被測定信号TRGのエッジと基準周期信号CLKの立ち上がりエッジとの時間間隔が長いほど、時間デジタルデータTDが大きな値となる。そして、時刻t2において変化した後の時間デジタルデータTD、すなわち第1の時間デジタル値TDである129は時間P1に対応し、時刻t6において変化した後の時間デジタルデータTD、すなわち第2の時間デジタル値TDである137は時間P2に対応している。
【0114】
図17の例では、基準周期信号CLKの1周期の時間をTとすると、被測定信号TRGがハイレベルの時間はT×(14-10)+P1-P2=(T×14-P2)-(T×10-P1)である。ここで、時刻t2において変化した後のタイムスタンプデータTS、すなわち191(=32×10-129)は(T×10-P1)に対応し、第1の合成出力値DTSとなる。また、時刻t6において変化した後のタイムスタンプデータTS、すなわち311(=32×14-137)は(T×14-P2)に対応し、第2の合成出
力値DTSとなる。したがって、第2の合成出力値DTSと第1の合成出力値DTSとの差分、すなわち120(=311-191)は被測定信号TRGがハイレベルの時間、すなわち被測定信号TRGの立ち上がりエッジと立ち下がりエッジとの時間間隔に対応する。
【0115】
一般化すると、第iの合成出力値DTSは、被測定信号TRGのi番目のエッジとi+1番目のエッジとの時間間隔に対応する。したがって、外部装置は、第1~第nの合成出力値DTS~DTSを用いて生成された計測データDOに基づいて被測定信号TRGの周波数を算出し、物理量センサー10が検出した物理量を測定することができる。
【0116】
ここで、図17に示したように、第1~第nの合成出力値DTS~DTSが生成される期間において、基準周期信号CLKが停止することなく、基準周期信号CLKの立ち上がりエッジが到来する毎にカウントデータCNTが1ずつ増えていく。これにより、第1の合成出力値DTSの量子化誤差が第2の合成出力値DTSの生成にフィードバックされることになる。一般化すると、1以上n-1以下の各整数jに対して、第jの合成出力値DTSの量子化誤差が第j+1の合成出力値DTSj+1の生成にフィードバックされる。すなわち、第1~第nの合成出力値DTS~DTSを含む合成出力データDTSはデルタシグマ変調信号の性質を満たすので、ノイズシェーピング効果が得られ、量子化誤差が高周波数帯域にシフトする。したがって、外部装置は、計測データDOに基づいて、物理量を高精度に測定することができる。
【0117】
以上に説明した第3実施形態のセンサーモジュール1によれば、第1実施形態のセンサーモジュール1と同様の効果が得られる。
【0118】
4.第4実施形態
以下、第4実施形態のセンサーモジュール1について、第1実施形態~第3実施形態のいずれかと同様の構成要素には同じ符号を付し、第1実施形態~第3実施形態のいずれかと重複する説明は省略または簡略し、主に第1実施形態~第3実施形態のいずれとも異なる内容について説明する。
【0119】
図18は、第4実施形態のセンサーモジュール1の構成を示すブロック図である。図18に示すように、第4実施形態のセンサーモジュール1は、物理量センサー10、基準周期信号生成部20、カウント部30、時間デジタル値生成部40、合成出力値生成部50及び記憶部70を備える。物理量センサー10、基準周期信号生成部20、カウント部30及び時間デジタル値生成部40の機能は、第1実施形態~第3実施形態のいずれかと同様であるため、その説明を省略する。
【0120】
合成出力値生成部50は、1以上n以下の各整数iに対して、時間デジタルデータTDに含まれる第iの時間デジタル値TDとカウントデータDCNTに含まれる第iのカウント値DCNTとに基づいて第iの合成出力値DTSを生成し、第1~第nの合成出力値DTS~DTSを含む合成出力データDTSを出力する。具体的には、合成出力値生成部50は、第iの時間デジタル値TDと第iのカウント値DCNTとを合成して得られた値からオフセット値OFSTを減算して第iの合成出力値DTSを生成する。オフセット値OFSTは、記憶部70あるいは不図示の他の記憶部にあらかじめ記憶されていてもよいし、外部装置からセンサーモジュール1に入力されてもよい。
【0121】
記憶部70は、合成出力値生成部50から出力される合成出力データDTSに含まれる第1~第nの合成出力値DTS~DTSのうちの連続するp個の合成出力値を記憶し、制御信号MCTLに基づいて、記憶しているp個の合成出力値を出力する。例えば、記憶部70は、p個の合成出力値として第k+1~第k+pの合成出力値DTSk+1~D
TSk+pを記憶している場合、制御信号MCTLに基づいて、第k+p+1の合成出力値DTSk+p+1以降の記憶を停止し、第k+1~第k+pの合成出力値DTSk+1~DTSk+pを出力してもよい。制御信号MCTLは、外部装置からセンサーモジュール1に入力されてもよいし、センサーモジュール1の内部で生成されてもよい。後者の場合、例えば、センサーモジュール1は、不図示のタイマーを備え、当該タイマーが所定の時間が経過する毎に、制御信号MCTLを生成してもよい。
【0122】
記憶部70は、リングバッファーであってもよい。例えば、記憶部70は、RAMであり、図19に示すように、p個のアドレスA~Aがそれぞれ割り当てられたp個の記憶領域によってリングバッファーが構成されてもよい。RAMは、Random Access Memoryの略である。例えば、記憶部70は、第1~第pの合成出力値DTS~DTSをアドレスA~Aの各記憶領域に順番に書き込んだ場合、第p+1~第2pの合成出力値DTSp+1~DTS2pをアドレスA~Aの各記憶領域に順番に上書きする。
【0123】
図20は、第4実施形態におけるカウント部30及び合成出力値生成部50の構成例を示す図である。図20に示すように、カウント部30の構成は図3と同じであるため、その説明を省略する。
【0124】
合成出力値生成部50は、乗算器51、減算器52、N個のDフリップフロップ53、減算器55及び減算器56を含む。すなわち、図20に示す合成出力値生成部50は、図3に示した合成出力値生成部50に対して、減算器55及び減算器56が追加されている。
【0125】
減算器55は、減算器52から出力されるNビットのデータから、N個のDフリップフロップ53から出力されるNビットのデータを減算し、Nビットのタイムスタンプ差分データΔTSを出力する。減算器56は、減算器55から出力されるNビットのデータから、Nビットのオフセット値OFSTを減算し、Nビットの合成出力データDTSを出力する。
【0126】
この合成出力データDTSに含まれる第1~第nの合成出力値DTS~DTSの各々はタイムスタンプの差分に基づく値である。具体的には、1以上n以下の各整数iに対して、タイムスタンプ差分データΔTSに含まれるタイムスタンプ差分値ΔTSは、タイムスタンプデータTSに含まれる第iのタイムスタンプ値TSと第i-1のタイムスタンプ値TSi-1との差分値である。ただし、第0のタイムスタンプ値TSは、あらかじめ決められた所定値であり、例えば0である。したがって、合成出力データDTSに含まれる第iの合成出力値DTSは、第i+1のタイムスタンプ値TSi+1と第iのタイムスタンプ値TSとの差分値からオフセット値OFSTが減算された値であり、タイムスタンプの差分に基づく値である。
【0127】
合成出力値生成部50のその他の構成は図3と同じであるので、その説明を省略する。
【0128】
このように構成されている第4実施形態のセンサーモジュール1において、外部装置は、記憶部70に記憶されている第k+1~第k+pの合成出力値DTSk+1~DTSk+pを取得して被測定信号TRGの周波数を測定することができる。具体的には、まず、外部装置は、第k+iの合成出力値DTSk+iに対して、式(1)により、第k+iのタイムスタンプ差分値ΔTSk+iを算出する。iは1以上p以下の各整数である。
【0129】
【数1】
【0130】
次に、外部装置は、第k+iのタイムスタンプ差分値ΔTSk+iに対して、式(2)により、第k+iのパルス数換算値ΔPk+iを算出する。第k+iのパルス数換算値ΔPk+iは、被測定信号TRGのk+i-1番目のエッジとk+i番目のエッジとの間に存在する基準周期信号CLKのパルス数である。式(2)において、Nは、合成出力値生成部50の乗算器51に入力される整数である。
【0131】
【数2】
【0132】
最後に、外部装置は、第k+iのパルス数換算値ΔPk+iに対して、式(3)により、第k+iの周波数fk+iを算出する。第k+iの周波数fk+iは、被測定信号TRGのk+i-1番目のエッジとk+i番目のエッジとの時間間隔を半周期としたときの被測定信号TRGの周波数である。式(3)において、fCLKは、基準周期信号CLKの周波数である。
【0133】
【数3】
【0134】
以上に説明した第4実施形態のセンサーモジュール1によれば、第1実施形態~第3実施形態と同様の効果が得られる。
【0135】
さらに、第4実施形態のセンサーモジュール1では、第1~第nの合成出力値DTS~DTSの各々はタイムスタンプの差分に基づく値、具体的には、タイムスタンプの差分からオフセット値を減算した値であるので、第1~第nの合成出力値DTS~DTSの絶対値が小さくなる。したがって、第4実施形態のセンサーモジュール1によれば、第1~第nの合成出力値DTS~DTSのビット数が低減され、連続するp個の合成出力値を記憶する記憶部70のサイズや外部装置との通信量を低減させることができる。
【0136】
また、第4実施形態のセンサーモジュール1によれば、リアルタイムで物理量を測定可能な周波数帯域の上限は外部装置との通信レートによって制限されるが、被測定信号TRGの周波数が通信レートよりも高い場合であっても、外部装置は、記憶部70に記憶されているp個の合成出力値をオフラインで取得してリアルタイムで測定可能な周波数帯域よりも高い周波数帯域の信号成分を測定することができる。
【0137】
また、第4実施形態のセンサーモジュール1によれば、外部装置は、記憶部70に記憶されているp個の合成出力値をオフラインで取得すればよいので、外部装置との通信をSPI,I2C,UART等の一般的なプロトコルで行うことができる。SPIは、Serial
Peripheral Interfaceの略であり、I2CはInter Integrated Circuitの略であり、UARTはUniversal Asynchronous Receiver Transmitterの略である。したがって、例えば、センサーモジュール1の検査工程において、検査装置に合成出力値を読み出すための専用のソフトウェアを組み込む必要がなく、検査システムを容易に構築することが可能となる。
【0138】
また、第4実施形態のセンサーモジュール1によれば、記憶部70は、リングバッファーであるので、合成出力値が生成される毎に最も古い合成出力値に上書きすることにより
、記憶部70の容量を最大限に活用して最新のp個の合成出力値を容易に記憶することができる。
【0139】
また、第4実施形態のセンサーモジュール1によれば、記憶部70は制御信号MCTLに基づいて合成出力値の記憶を停止するので、外部装置は、制御信号MCTLに基づく所定のタイミングで速やかに記憶部70からp個の合成出力値を取得することができる。
【0140】
5.第5実施形態
以下、第5実施形態のセンサーモジュール1について、第1実施形態~第4実施形態のいずれかと同様の構成要素には同じ符号を付し、第1実施形態~第4実施形態のいずれかと重複する説明は省略または簡略し、主に第1実施形態~第4実施形態のいずれとも異なる内容について説明する。
【0141】
図21は、第5実施形態のセンサーモジュール1の構成を示すブロック図である。図21に示すように、第5実施形態のセンサーモジュール1は、第1~第Nの物理量センサー10-1~10-N、基準周期信号生成部20、第1~第Nのカウント部30-1~30-N、第1~第Nの時間デジタル値生成部40-1~40-N、第1~第Nの合成出力値生成部50-1~50-N及び第1~第Nの記憶部70-1~70-Nを備える。Nは2以上の整数である。
【0142】
第1~第4実施形態と同様、基準周期信号生成部20は、基準周期信号CLKを出力する。
【0143】
第1~第Nの物理量センサー10-1~10-Nは、例えば、被測定物のN箇所に取り付けられてもよいし、一部が第1の被測定物に取り付けられ、他の一部が第1の被測定物とは異なる第2の被測定物に取り付けられてもよい。
【0144】
1以上N以下の各整数mに対して、第mの物理量センサー10-mは、検出した所定の第mの物理量の大きさに応じて周波数が変化する第mの被測定信号TRGmを出力する。具体的には、第mの物理量センサー10-mは、第mの物理量を検出する不図示の物理量検出素子と、当該物理量検出素子を発振させる不図示の発振回路とを有し、当該発振回路が第mの被測定信号TRGmを出力する。例えば、第1~第Nの物理量は、加速度、角速度、角加速度、圧力、質量、電圧、磁力、静電容量、温度等であってもよく、すべてが同じ種類の物理量であってもよいし、一部が異なる種類の物理量であってもよい。
【0145】
1以上N以下の各整数mに対して、第mのカウント部30-mは、第mの被測定信号TRGm及び基準周期信号CLKの一方に同期して他方の時間イベントをカウントして第1~第nのカウント値DCNT~DCNTを時系列に生成し、第1~第nのカウント値DCNT~DCNTを含む第mのカウントデータDCNTmを出力する。nは2以上の整数である。第mの被測定信号TRGmの時間イベントとは、第mの被測定信号TRGmが変化するタイミングであり、例えば、第mの被測定信号TRGmの立ち上がりエッジ又は立ち下がりエッジであってもよいし、第mの被測定信号TRGmの立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジであってもよい。同様に、基準周期信号CLKの時間イベントとは、基準周期信号CLKが変化するタイミングであり、例えば、基準周期信号CLKの立ち上がりエッジ又は立ち下がりエッジであってもよいし、基準周期信号CLKの立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジであってもよい。
【0146】
1以上N以下の各整数mに対して、第mの時間デジタル値生成部40-mは、第mの被測定信号TRGmと基準周期信号CLKとの位相差に基づく第1~第nの時間デジタル値TD~TDを時系列に生成し、第1~第nの時間デジタル値TD~TDを含む第
mの時間デジタルデータTDmを出力する。
【0147】
1以上N以下の各整数mに対して、第mの合成出力値生成部50-mは、1以上n以下の各整数iに対して、第mの時間デジタル値生成部40-mが生成した第iの時間デジタル値TDと第mのカウント部30-mが生成した第iのカウント値DCNTとに基づいて第iの合成出力値DTSを生成し、第1~第nの合成出力値DTS~DTSを含む第mの合成出力データDTSmを出力する。例えば、第mの合成出力値生成部50-mは、第mの被測定信号TRGmに同期して第1~第nの合成出力値DTS~DTSを生成してもよい。
【0148】
第mの合成出力値生成部50-mは、第mの被測定信号TRGmの立ち上がり及び立ち下がりのいずれか一方のタイミングで第1~第nの合成出力値DTS~DTSを時系列に生成してもよい。あるいは、第mの合成出力値生成部50-mは、第mの被測定信号TRGmの立ち上がり及び立ち下がりの両方のタイミングで第1~第nの合成出力値DTS~DTSを時系列に生成してもよい。
【0149】
第1~第nの合成出力値DTS~DTSを含む第mの合成出力データDTSmは、第mの物理量センサー10-mから出力される第mの被測定信号TRGmと基準周期信号CLKとの周波数比を示す信号である。
【0150】
第5実施形態でも、第1実施形態~第4実施形態と同様、第mの合成出力値生成部50-mでは、第1~第nの合成出力値DTS~DTSが生成される期間において、基準周期信号CLKが停止することなく、基準周期信号CLKの立ち上がりエッジが到来する毎にカウントデータCNTが1ずつ増えていく。これにより、1以上n-1以下の各整数jに対して、第mの合成出力値生成部50-mが生成した第jの合成出力値DTSの量子化誤差が第j+1の合成出力値DTSj+1の生成にフィードバックされる。すなわち、第mの合成出力値生成部50-mが生成する第1~第nの合成出力値DTS~DTSを含む第mの合成出力データDTSmはデルタシグマ変調信号の性質を満たすので、ノイズシェーピング効果が得られ、量子化誤差が高周波数帯域にシフトする。
【0151】
また、第5実施形態でも、第1実施形態~第4実施形態と同様、第mの物理量が変化する周波数が仕様で定められた検出可能な物理量の周波数帯域Fにおける最大周波数fmaxとなるときの当該第mの物理量の変化の周期Tmin=1/fmaxは、第mの合成出力値生成部50-mによって第1~第nの合成出力値DTS~DTSがそれぞれ生成される平均周期Tavgの8倍よりも長い。
【0152】
1以上N以下の各整数mに対して、第mの記憶部70-mは、第mの合成出力値生成部50が生成した前記第1~第nの合成出力値DTS~DTSのうちの連続するp個の合成出力値を記憶し、制御信号MCTLに基づいて、記憶している当該p個の合成出力値を出力する。例えば、第mの記憶部70-mは、p個の合成出力値として第k+1~第k+pの合成出力値DTSk+1~DTSk+pを記憶している場合、制御信号MCTLに基づいて、第k+p+1の合成出力値DTSk+p+1以降の記憶を停止し、第k+1~第k+pの合成出力値DTSk+1~DTSk+pを出力してもよい。制御信号MCTLは、外部装置からセンサーモジュール1に入力されてもよいし、センサーモジュール1の内部で生成されてもよい。後者の場合、例えば、センサーモジュール1は、不図示のタイマーを備え、当該タイマーが所定の時間が経過する毎に、制御信号MCTLを生成してもよい。
【0153】
第mの記憶部70-mは、p個の合成出力値として第k+1~第k+pの合成出力値DTSk+1~DTSk+pを記憶している場合、さらに第k+1~第k+pのカウント値
DCNTk+1~DCNTk+pのいずれかを記憶してもよい。そして、第mの記憶部70-mは、制御信号MCTLに基づいて、第k+1~第k+pの合成出力値DTSk+1~DTSk+pと第k+1~第k+pのカウント値DCNTk+1~DCNTk+pのいずれかとを出力してもよい。例えば、第mの記憶部70-mは、p個の合成出力値として第k+1~第k+pの合成出力値DTSk+1~DTSk+pを記憶している場合、さらに第k+pのカウント値DCNTk+pを記憶し、制御信号MCTLに基づいて、第k+1~第k+pの合成出力値DTSk+1~DTSk+pと第k+pのカウント値DCNTk+pとを出力してもよい。
【0154】
第mの記憶部70-mは、リングバッファーであってもよい。例えば、第mの記憶部70-mは、RAMであり、図22に示すように、p+1個のアドレスA~Ap+1がそれぞれ割り当てられたp+1個の記憶領域によってリングバッファーが構成されてもよい。例えば、jを0以上の各整数とし、iを1以上p以下の各整数としたとき、第mの記憶部70-mは、各整数q=j×p+iに対して、第mの合成出力値生成部50-mによって第qの合成出力値DTSが生成される毎に、第qの合成出力値DTSをアドレスAの記憶領域に書き込み、第mのカウント部30-mによって生成された第qのカウント値DCNTをアドレスAp+1の記憶領域に書き込む。例えば、第mの記憶部70-mは、第1~第pの合成出力値DTS~DTSをアドレスA~Aの各記憶領域に順番に書き込むとともに、第1~第pのカウント値DCNT~DCNTをアドレスAp+1の記憶領域に順番に書き込んだ場合、第p+1~第2pの合成出力値DTSp+1~DTS2pをアドレスA~Aの各記憶領域に順番に上書きするとともに、第p+1~第2pのカウント値DCNTp+1~DCNT2pをアドレスAp+1の記憶領域に順番に上書きする。
【0155】
なお、第mのカウント部30-m、第mの時間デジタル値生成部40-m及び第mの合成出力値生成部50-mの具体的な構成は、第1実施形態~第4実施形態のいずれかのカウント部30、時間デジタル値生成部40及び合成出力値生成部50とそれぞれ同様であるので、その図示及び説明を省略する。
【0156】
このように構成されている第5実施形態のセンサーモジュール1において、外部装置は、1以上N以下の各整数mに対して、第mの記憶部70-mに記憶されている第k+1~第k+pの合成出力値DTSk+1~DTSk+pを取得し、前出の式(1)~式(3)により、第mの被測定信号TRGmの周波数を算出することができる。ただし、第1~第Nの被測定信号TRG1~TRGNは非同期であるため、これらの周波数を算出しただけでは、第1~第Nの被測定信号TRG1~TRGNの位相差はわからない。そこで、外部装置は、1以上N以下の各整数mに対して、第mの記憶部70-mに記憶されている第k+1~第k+pの合成出力値DTSk+1~DTSk+pに対して、前出の式(1)により、第k+1~第k+pのタイムスタンプ差分値ΔTSk+1~ΔTSk+pを算出してこれらを積分することにより、第k+1~第k+pのタイムスタンプ値TSk+1~TSk+pを算出し、これらを第1~第Nの記憶部70-1~70-Nに記憶されているN個のカウント値を用いて補正する。
【0157】
例えば、センサーモジュール1が、検出軸をx軸とする第1の物理量センサー10-1と、検出軸をy軸とする第2の物理量センサー10-2と、検出軸をz軸とする第3の物理量センサー10-3とを備える3軸センサーモジュールであるものとする。また、第1の記憶部70-1には、p個の合成出力値DTSxk+1~DTSxk+p及びカウント値DCNTxk+pが記憶され、第2の記憶部70-2には、p個の合成出力値DTSyk+1~DTSyk+p及びカウント値DCNTyk+pが記憶され、第3の記憶部70-3には、p個の合成出力値DTSzk+1~DTSzk+p及びカウント値DCNTzk+pが記憶されているものとする。この場合、まず、外部装置は、p個の合成出力値D
TSxk+1~DTSxk+pに対して、前出の式(1)と同様の式により、p個のタイムスタンプ差分値ΔTSxk+1~ΔTSxk+pを算出する。同様に、外部装置は、p個の合成出力値DTSyk+1~DTSyk+pに対して、前出の式(1)と同様の式により、p個のタイムスタンプ差分値ΔTSyk+1~ΔTSyk+pを算出する。同様に、外部装置は、p個の合成出力値DTSzk+1~DTSzk+pに対して、前出の式(1)と同様の式により、p個のタイムスタンプ差分値ΔTSzk+1~ΔTSzk+pを算出する。
【0158】
次に、外部装置は、各タイムスタンプ差分値ΔTSxk+iに対して、式(4)により、タイムスタンプ値TSxk+iを算出する。iは1以上p以下の各整数である。
【0159】
【数4】
【0160】
同様に、外部装置は、各タイムスタンプ差分値ΔTSyk+iに対して、式(5)により、タイムスタンプ値TSyk+iを算出する。
【0161】
【数5】
【0162】
同様に、外部装置は、各タイムスタンプ差分値ΔTSzk+iに対して、式(6)により、タイムスタンプ値TSzk+iを算出する。
【0163】
【数6】
【0164】
次に、外部装置は、各タイムスタンプ値TSxk+iに対して、式(7)により、タイムスタンプ補正値TSx’k+iを算出する。
【0165】
【数7】
【0166】
また、外部装置は、各タイムスタンプ値TSyk+iに対して、式(8)により、タイムスタンプ補正値TSy’k+iを算出する。
【0167】
【数8】
【0168】
最後に、外部装置は、各タイムスタンプ値TSzk+iに対して、式(9)により、タ
イムスタンプ補正値TSz’k+iを算出する。
【0169】
【数9】
【0170】
例えば、第1の記憶部70-1に7個の合成出力値DTSxk+1~DTSxk+7及びカウント値DCNTxk+7が記憶され、第2の記憶部70-2に7個の合成出力値DTSyk+1~DTSyk+7及びカウント値DCNTyk+7が記憶され、第3の記憶部70-3に7個の合成出力値DTSzk+1~DTSzk+7及びカウント値DCNTzk+7が記憶されているものとし、これらが図23に示す値を有するものとする。この場合、式(4)により算出される7個のタイムスタンプ値TSxk+1~TSxk+7、式(5)により算出される7個のタイムスタンプ値TSyk+1~TSyk+7及び式(6)により算出される7個のタイムスタンプ値TSzk+1~TSzk+7をプロットすると図24のようになる。図24には、第1~第3の被測定信号TRG1~TRG3にそれぞれ相当する被測定信号TRGx,TRGy,TRGzも図示されている。図24に示すように、タイムスタンプ値TSxk+1~TSxk+7は被測定信号TRGxの各エッジのタイミングを示し、タイムスタンプ値TSyk+1~TSyk+7は被測定信号TRGyの各エッジのタイミングを示し、タイムスタンプ値TSzk+1~TSzk+7は被測定信号TRGzの各エッジのタイミングを示している。タイムスタンプ値TSxk+1~TSxk+7,TSyk+1~TSyk+7,TSzk+1~TSzk+7には、被測定信号TRGx,TRGy,TRGzの位相差の情報が欠落しているので、図24に示すように、被測定信号TRGx,TRGy,TRGzの初期位相が同じである。
【0171】
これに対して、式(7)により算出される7個のタイムスタンプ補正値TSx’k+1~TSx’k+7、式(8)により算出される7個のタイムスタンプ補正値TSy’k+1~TSy’k+7及び式(9)により算出される7個のタイムスタンプ補正値TSz’k+1~TSz’k+7をプロットすると図25のようになる。タイムスタンプ補正値TSx’k+1~TSx’k+7,TSy’k+1~TSy’k+7,TSz’k+1~TSz’k+7には、カウント値DCNTxk+7,DCNTyk+7,DCNTzk+7に基づく被測定信号TRGx,TRGy,TRGzの位相差の情報が含まれているので、図25に示すように、被測定信号TRGx,TRGy,TRGzの各エッジのタイミングが正確に再現されている。
【0172】
次に、第5実施形態のセンサーモジュール1として3軸加速度センサーモジュールを例に挙げ、図26図29を用いてセンサーモジュール1の構造について説明する。
【0173】
図26は、センサーモジュール1が固定される被装着面側から見た場合のセンサーモジュール1の構成を示す斜視図である。以下の説明において、平面視で長方形をなすセンサーモジュール1の長辺に沿った方向をX軸方向、平面視でX軸方向と直交する方向をY軸方向、センサーモジュール1の厚さ方向をZ軸方向として説明する。
【0174】
センサーモジュール1は、平面形状が長方形の直方体であり、例えば、X軸方向に沿った長辺の長さが約50mm、X軸方向と直交するY軸方向に沿った短辺の長さが約24mm、厚さが約16mmのサイズである。一方の長辺のそれぞれの端部近傍の2箇所及び他方の長辺の中央部の1箇所には、ネジ穴103が形成されている。この3箇所のネジ穴103のそれぞれに、固定ネジを通して、例えば橋梁や掲示板などの構造物の被装着体の被装着面に、固定した状態で使用される。
【0175】
図26に示すように、センサーモジュール1の被装着面側からみた表面には、開口部1
21が設けられている。開口部121の内部には、プラグ型のコネクター116が配置されている。コネクター116は、2列に配置された複数のピンを有しており、それぞれの列において、複数のピンがY軸方向に配列されている。コネクター116には、被装着体から不図示のソケット型のコネクターが接続され、センサーモジュール1の駆動電圧や、検出データ等の電気信号の送受信が行われる。
【0176】
図27は、センサーモジュール1の分解斜視図である。図27に示すように、センサーモジュール1は、容器101、蓋部102、シール部材141及び回路基板115などから構成されている。詳述すれば、センサーモジュール1は、容器101の内部に、固定部材130を介在させて、回路基板115を取り付け、容器101の開口を、緩衝性を有するシール部材141を介した蓋部102によって覆った構成となっている。
【0177】
容器101は、例えばアルミニウムを用い、内部空間を有する箱状に成形された回路基板115の収容容器である。容器101は、アルミニウムを削り出したり、もしくはダイキャスト法を用いたりして形成することができる。なお、容器101の材質は、アルミニウムに限定するものではなく、亜鉛やステンレスなど他の金属や、樹脂、又は金属と樹脂の複合材などを用いても良い。容器101の外形は、前述したセンサーモジュール1の全体形状と同様に、平面形状が略長方形の直方体であり、一方の長辺の両端部近傍の2箇所、及び他方の長辺の中央部の1箇所に、固定突起部104が設けられている。この固定突起部104のそれぞれには、ネジ穴103が形成されている。ここで、一方の長辺の両端部近傍の2箇所に設けられている固定突起部104は、短辺と長辺との交差部を含み、平面視で略三角形状をなしている。また、他方の長辺の中央部の1箇所に設けられている固定突起部104は、平面視で容器101の内部空間側に向いた略台形形状をなしている。
【0178】
容器101は、外形が直方体で一方に開口した箱状である。容器101の内部は、底壁112と側壁111とで囲まれた内部空間となっている。換言すれば、容器101は、底壁112と対向する一面を開口面123とする箱状であり、回路基板115の外縁が側壁111の内面122に沿うように配置され、開口を覆うように蓋部102が固定される。ここで、底壁112と対向する開口面123とは、蓋部102が載置される面である。開口面123には、容器101の一方の長辺の両端部近傍の2箇所及び他方の長辺の中央部の1箇所において、固定突起部104が立設されている。そして、固定突起部104の上面、すなわち-Z方向に露出する面が、容器101の上面と同一面となる。
【0179】
また、容器101の内部空間には、他方の長辺の中央部に設けられた固定突起部104と対向する一方の長辺の中央部であって、底壁112から開口面123にかけて側壁111から内部空間側に突出する突起部129が設けられている。突起部129の上面には、雌ネジ174が設けられている。蓋部102は、貫通孔176に挿通されるネジ172と雌ネジ174とによって、容器101にシール部材141を介して固定される。ここで、他方の長辺の中央部に設けられた固定突起部104は、突起部129と同様に、底壁112から開口面123にかけて側壁111から内部空間側に突出する構成としても良い。なお、突起部129及び固定突起部104は、後述する回路基板115の括れ部133,134に対向する位置に設けられる。
【0180】
容器101の内部空間には、底壁112から開口面123側に向かって一段高い段状に突出する第1の台座127及び第2の台座125が設けられている。第1の台座127は、回路基板115に取り付けられたプラグ型のコネクター116の配置領域と対向する位置に設けられており、図26に示すように、プラグ型のコネクター116が挿入される開口部121が設けられている。第1の台座127は、回路基板115を容器101に固定するための台座として機能する。なお、開口部121は、容器101の内部と外部とを貫通している。
【0181】
第2の台座125は、長辺の中央部に位置する固定突起部104及び突起部129に対して第1の台座127と反対側に位置し、固定突起部104及び突起部129の近傍に設けられている。なお、第2の台座125は、固定突起部104及び突起部129のいずれかと連結されていても良い。第2の台座125は、固定突起部104及び突起部129に対して第1の台座127と反対側において、回路基板115を容器101に固定するための台座として機能する。
【0182】
なお、容器101の外形は、平面形状が略長方形の直方体で蓋のない箱状であるとして説明したが、これに限らず、容器101の外形の平面形状が、正方形、六角形、八角形などであっても良い。また、容器101の外形の平面形状において、多角形の頂点部分の角が面取りされていてもよく、さらに、各辺のいずれかが曲線からなる平面形状であっても良い。また、容器101の内部の平面形状も、上述した形状に限らず、他の形状であっても良い。さらに、容器101の外形と内部との平面形状は、相似形であっても良いし、相似形でなくても良い。
【0183】
回路基板115は、複数のスルーホールなどが形成された多層基板であり、ガラスエポキシ基板を用いている。なお、回路基板115は、ガラスエポキシ基板に限定されるものではなく、複数の物理量センサーや、電子部品、コネクターなどを搭載可能なリジット基板であればよく、例えば、コンポジット基板や、セラミック基板を用いても良い。
【0184】
回路基板115は、底壁112側の第2面115rと、第2面115rと表裏の関係である第1面115fとを有する。回路基板115の第1面115fには、IC181,182と、FPGA183と、加速度センサー118x,118y,118zとが搭載されている。FPGAは、Field Programmable Gate Arrayの略であり、ICは、Integrated Circuitの略である。加速度センサー118xは、第1の物理量センサー10-1が有するセンサー素子を備えている。加速度センサー118yは、第2の物理量センサー10-2が有するセンサー素子を備えている。加速度センサー118zは、第3の物理量センサー10-3が有するセンサー素子を備えている。IC181は、加速度センサー118x,118y,118zをそれぞれ発振させる3つの発振回路を備えている。IC182は、基準周期信号生成部20を備えている。FPGA183は、第1のカウント部30-1、第1の時間デジタル値生成部40-1、第1の合成出力値生成部50-1及び第1の記憶部70-1を備えている。また、FPGA183は、第2のカウント部30-2、第2の時間デジタル値生成部40-2、第2の合成出力値生成部50-2及び第2の記憶部70-2を備えている。また、FPGA183は、第3のカウント部30-3、第3の時間デジタル値生成部40-3、第3の合成出力値生成部50-3及び第3の記憶部70-3を備えている。
【0185】
回路基板115の第2面115rには、コネクター116が搭載されている。なお、図示及びその説明は省略するが、回路基板115には、その他の配線や端子電極などが設けられていてもよい。
【0186】
回路基板115は、平面視で、容器101の長辺に沿ったX軸方向の中央部に、回路基板115の外縁が括れている括れ部133,134を備える。括れ部133,134は、平面視で、回路基板115のY軸方向の両側に設けられ、回路基板115の外縁から中央に向かって括れておいる。また、括れ部133,134は、容器101の突起部129及び固定突起部104に対向して設けられている。
【0187】
回路基板115は、第2面115rを第1の台座127、及び第2の台座125に向けて容器101の内部空間に挿入される。そして、回路基板115は、第1の台座127と
、第2の台座125とによって、容器101に支持されている。
【0188】
加速度センサー118x,118y,118zは、それぞれ1軸方向の加速度を検出する。具体的には、加速度センサー118xは、X軸方向にパッケージの表裏面が向くように、且つ回路基板115の第1面115fに側面を対向させて立設される。そして、加速度センサー118xは、X軸方向に加わる加速度を検出する。加速度センサー118yは、Y軸方向にパッケージの表裏面が向くように、且つ回路基板115の第1面115fに側面を対向させて立設される。そして、加速度センサー118yは、Y軸方向に加わる加速度を検出する。加速度センサー118zは、Z軸方向にパッケージの表裏面が向くように、即ちパッケージの表裏面が回路基板115の第1面115fと正対するように設けられる。そして、加速度センサー118zは、Z軸方向に加わる加速度を検出する。
【0189】
IC181は、図示しない配線を介して加速度センサー118x,118y,118zと電気的に接続されている。また、IC182は、図示しない配線を介してIC181と電気的に接続されている。また、FPGA183は、図示しない配線を介してIC182と電気的に接続されている。なお、図示を省略するが、回路基板115には、その他複数の電子部品等が搭載されていてもよい。
【0190】
ここで、加速度センサー118x,118y,118zの構成について、図28及び図29を用いて説明する。
【0191】
図28は、加速度を検出するためのセンサー素子の概略構成を説明する斜視図である。図29は、加速度を検出するセンサー素子を用いた加速度検出器の概略構成を説明する断面図である。
【0192】
なお、図28では、互いに直交する3つの軸として、x軸、y’軸、z’軸を図示している。各軸は、加速度センサーの基材として用いる圧電体材料である水晶の電気軸としてのx軸、機械軸としてのy軸、光学軸としてのz軸からなる直交座標系において、x軸を回転軸として、z軸をy軸の-y方向へ+z側が回転するように回転角度φだけ傾けた軸をz’軸、y軸をz軸の+z方向へ+y側が回転するように回転角度φだけ傾けた軸をy’軸としたとき、x軸及びy’軸で規定される平面に沿って切り出されて平板状に加工され、当該平面と直交するz’軸方向に所定の厚さtを有した所謂水晶z板であるz’板を基材として用いた例を説明する。回転角度φは、好ましくは、-5°≦φ≦15°である。なお、z’軸は、加速度センサー118x,118y,118zにおいて、重力が作用する方向に沿っている軸としている。
【0193】
まず、図28を用いて、加速度を検出するセンサー素子200の構成について説明する。センサー素子200は、基部210などを含む基板構造体201と、基板構造体201に接続され、物理量を検出する加速度検出素子270と、質量部280,282とを有する。
【0194】
センサー素子200の基板構造体201は、基部210、基部210に継手部212を介して連結している可動部214、連結部240、及び基部210に連結して設けられている第1支持部220、第2支持部230、第3支持部250及び第4支持部260を備える。ここで、第3支持部250と第4支持部260とは、連結部240の配置されている側で連結されている。
【0195】
基板構造体201は、圧電材料である水晶の原石などから上述のように所定の角度で切り出された水晶z板であるz’板の水晶基板を用いている。当該水晶基板をパターニングすることにより、基板構造体201としてこれらが一体に形成されている。また、パター
ニングは、例えば、フォトリソグラフィー技術、及びウェットエッチング技術を用いることができる。
【0196】
基部210は、継手部212を介して可動部214と接続され、可動部214を支持する。基部210は、継手部212を介した可動部214と、可動部の継手部212の位置する側とは反対側に位置する連結部240と、第1支持部220及び第2支持部230と、連結部240側で連結されている第3支持部250及び第4支持部260と、に接続されている。
【0197】
継手部212は、基部210と可動部214との間に設けられ、基部210及び可動部214と接続されている。継手部212の厚さは、基部210の厚さ、及び可動部214の厚さと比して薄く設けられており、x軸方向からの断面視で、くびれ状に形成されている。継手部212は、例えば、継手部212を含む基板構造体201を、所謂ハーフエッチングすることで、厚みの薄い薄肉部として形成されている。継手部212は、可動部214が基部210に対して変位する際に、支点としてx軸方向に沿った回転軸としての機能を有している。
【0198】
可動部214は、基部210に継手部212を介して接続されている。可動部214は、その形状が板状であり、z’軸方向に沿って互いに対向し表裏の関係である主面214a,214bを有する。可動部214は、主面214a,214bと交差する方向、すなわちz’軸方向に加わる物理量である加速度に応じて、継手部212を支点として主面214a,214bと交差する方向、すなわちz’軸方向に変位する。
【0199】
連結部240は、後述する第3支持部250が設けられている+x方向側の基部210からx軸方向に沿って可動部214を囲む様に延在し、後述する第4支持部260が設けられている-x方向側の基部210に接続して設けられている。
【0200】
第1支持部220及び第2支持部230は、加速度検出素子270を中心にして対称に設けられている。また、第3支持部250及び第4支持部260は、加速度検出素子270を中心に対称に設けられている。そして、第1支持部220、第2支持部230、第3支持部250及び第4支持部260において、基板構造体201が被固定部に支持される。
【0201】
加速度検出素子270は、基部210と可動部214とに接続されている。換言すると、加速度検出素子270は、基部210と可動部214とに跨がるように設けられている。加速度検出素子270は、振動部としての振動梁部271a,271bと、第1の基部272aと第2の基部272bと、を有する。第1の基部272aと第2の基部272bが基部210に接続されている加速度検出素子270では、例えば、可動部214が物理量に応じて変位することで、振動梁部271a,271bに応力が生じ、振動梁部271a,271bに発生する物理量検出情報が変化する。換言すると、振動梁部271a,271bの振動周波数が変化する。なお、本実施形態における加速度検出素子270は、2本の振動梁部271a,271b、第1の基部272a及び第2の基部272bを有する双音叉型振動素子である。ここで、振動部としての振動梁部271a,271bは、振動腕、振動ビーム、又は柱状ビーム等と称されることもある。
【0202】
加速度検出素子270には、圧電材料である水晶の原石などから、上述した基板構造体201と同様に、所定の角度で切り出された水晶z板であるz’板の水晶基板が用いられる。加速度検出素子270は、当該水晶基板を、フォトリソグラフィー技術、及びエッチング技術によってパターニングすることで形成されている。これにより、振動梁部271a,271b、第1の基部272a及び第2の基部272bを、一体に形成することがで
きる。
【0203】
なお、加速度検出素子270の材質は、前述の水晶基板に限定されるものではない。加速度検出素子270の材質としては、例えば、タンタル酸リチウム(LiTaO)、四ホウ酸リチウム(Li)、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、酸化亜鉛(ZnO)、窒化アルミニウム(AlN)等の圧電材料、また、酸化亜鉛(ZnO)、窒化アルミニウム(AlN)などの圧電体皮膜を備えたシリコンなどの半導体材料を用いることができる。この場合、基板構造体201と加速度検出素子270とは、同様の材料が用いられることが好ましい。
【0204】
なお、図示及び説明を省略するが、加速度検出素子270には、引き出し電極や励振電極が設けられていてもよい。
【0205】
質量部280,282は、可動部214の主面214aと、主面214aと表裏の関係で裏面となる主面214bと、に設けられている。詳細には、質量部280,282は、不図示の質量接合材を介して主面214a及び主面214bに設けられている。質量部280,282の材質としては、例えば、銅(Cu)、金(Au)などの金属が挙げられる。
【0206】
また、本実施形態では、加速度検出素子270は、振動部を振動梁部271a,271bの2つの柱状ビームにより構成した双音叉型振動素子により構成したが、これを1つの柱状ビームにより構成することもできる。
【0207】
次に、図29を用いて、上述した加速度を検出するセンサー素子200を用いた加速度検出器300の構成について説明する。
【0208】
加速度検出器300には、図29に示すように、上述したセンサー素子200が搭載されている。加速度検出器300は、センサー素子200及びパッケージ310を有する。また、パッケージ310は、パッケージベース320及びリッド330を有する。そして、加速度検出器300のパッケージ310に、センサー素子200が収容される。具体的には、パッケージベース320と、リッド330とが接続されて設けられた空間311に、センサー素子200が収容されている。
【0209】
パッケージベース320には、凹部321を有し、当該凹部321内にセンサー素子200が設けられている。パッケージベース320の形状は、凹部321内にセンサー素子200を収容することができればよく、特に限定されない。本実施形態におけるパッケージベース320としては、例えば、セラミックス、水晶、ガラス、シリコンなどの材料を用いることができる。
【0210】
パッケージベース320は、パッケージベース320の凹部の内側の底面である内底面322から、リッド330側に突出した段差部323を有する。段差部323は、例えば、凹部321の内壁に沿って設けられている。段差部323には、複数の内部端子340bが設けられている。
【0211】
内部端子340bは、センサー素子200の第1支持部220、第2支持部230、第3支持部250、及び第4支持部260の各固定部に設けられた固定部接続端子379bと平面視において重なる位置に対向して設けられている。内部端子340bは、例えば、金属フィラーなどの導電性物質を含むシリコーン樹脂系の導電性接着剤343を用いて、固定部接続端子379bと電気的に接続されている。このように、センサー素子200は、パッケージベース320に実装され、パッケージ310内に収容される。
【0212】
パッケージベース320において、内底面322の反対側の面である外底面324には、外部の部材に実装される際に用いられる外部端子344が設けられている。外部端子344は、図示しない内部配線を介して内部端子340bと電気的に接続されている。
【0213】
内部端子340b、及び外部端子344は、例えば、タングステン(W)等のメタライズ層に、ニッケル(Ni)、金(Au)などの皮膜をメッキなどの方法により積層した金属膜で構成されている。
【0214】
パッケージベース320には、凹部321の底部にパッケージ310の内部を封止する封止部350が設けられている。封止部350は、パッケージベース320に形成された貫通孔325内に設けられている。貫通孔325は、外底面324から内底面322まで貫通している。図29に示す例では、貫通孔325は、外底面324側の孔径が内底面322側の孔径より大きい段付きの形状を有している。封止部350は、貫通孔325に、例えば、金(Au)とゲルマニウム(Ge)合金、ハンダ等からなる封止材を配置し、加熱溶融後、固化させることで形成される。封止部350は、パッケージ310の内部を気密に封止するために設けるものである。
【0215】
リッド330は、パッケージベース320の凹部321を覆って設けられている。リッド330の形状は、例えば、板状である。リッド330としては、例えば、パッケージベース320と同じ材料や、鉄(Fe)とニッケル(Ni)との合金、ステンレス鋼などの金属を用いることができる。リッド330は、リッド接合部材332を介して、パッケージベース320に接合されている。リッド接合部材332としては、例えば、シームリング、低融点ガラス、無機系接着剤等を用いることができる。
【0216】
リッド330をパッケージベース320に接合した後、パッケージ310の内部が減圧された状態、すなわち真空度の高い状態で、貫通孔325内に封止材を配置し、加熱溶融後、固化させて封止部350を設けることによって、パッケージ310内を気密に封止することができる。パッケージ310の内部は、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスが充填されていても良い。
【0217】
加速度検出器300において、外部端子344、内部端子340b、固定部接続端子379bなどを経由して、センサー素子200の励振電極に、IC181に搭載された発振回路から駆動信号が与えられると、センサー素子200の振動梁部271a,271bは、所定の周波数で振動する。そして、加速度検出器300は、印加される加速度に応じて変化するセンサー素子200の共振周波数を出力信号として出力する。加速度検出器300を、図27に示した加速度センサー118x,118y,118zとして用いることができ、加速度センサー118x,118y,118zは、それぞれ、印加される加速度に応じた周波数の被測定信号TRG1,TRG2,TRG3を出力する。
【0218】
図26図29では、第1の物理量センサー10-1、第2の物理量センサー10-2及び第3の物理量センサー10-3として加速度センサー118x,118y,118zを備えたセンサーモジュール1を例に説明したが、センサーモジュール1は、質量、角速度、角加速度、圧力、電圧、磁力、静電容量及び温度の少なくともいずれかを物理量として検出する複数の物理量センサーを備えたセンサーモジュールであってもよい。
【0219】
物理量として質量を検出する質量センサーには、微小質量変化を計測する手法として、水晶振動子マイクロバランス法が知られている。このような質量センサーでは、水晶振動子電極面への付着物質量が増えると水晶振動子の発振周波数が減少し、付着物質量が減少すると発振周波数が増加することを利用している。以上のような質量センサーの検出感度
は、Sauerbreyの式で算出することができ、例えば、27MHzの基本振動数を持つATカット水晶振動子の場合、1Hzの振動数の減少が電極表面上における0.62ng/cm2の質量増加に対応する。
【0220】
また、物理量として角速度又は角加速度を検出する角速度センサーは、角速度Ωで回っている観測点から、一定の角速度ωで回っている物体を観測した場合に、その物体の角速度がω-Ωに見えることを利用して、角速度を検出する。このような角速度センサーでは、電極を用いて円盤状の質量を静電駆動することで固有振動数を持つ波を周回させた状態でセンサー素子が角加速度を受けると、電極から観測される見かけの共振周波数が変化することが利用される。以上のような角速度センサーでは、原理的にバンド幅の制限がなく、例えば、周波数計測に係る技術や非線形性補正に係る技術の高精度化が、検出感度の高感度化に直結する。
【0221】
また、物理量として静電容量を検出する静電容量センサーでは、基準抵抗と被測定静電容量を用いてRC発振させ、発振周波数を計測することで被測定静電容量の計測を行うことができる。そして、被測定静電容量が変化すると、RCで与えられる時定数が変化し、発振周波数がシフトすることを利用する。また、静電容量センサーにおいて、被測定静電容量とは別に基準静電容量を用意し、基準抵抗と基準静電容量を用いてRC発振させ、これを基準発振周波数とし、先の発振周波数との差分を検出する機構とすることで、各種の誤差要因を排除することができる。
【0222】
また、物理量として温度を検出する温度センサーでは、サーミスタと基準静電容量を用いてRC発振させ、発振周波数を計測することで温度計測を行うことができる。そして、サーミスタの抵抗値が温度により変化すると、RCで与えられる時定数が変化し、発振周波数がシフトすることを利用する。また、温度センサーにおいて、サーミスタとは別に基準抵抗を用意し、基準抵抗と基準静電容量を用いてRC発振させ、これを基準発振周波数とし、先の発振周波数との差分を検出する機構とすることで、各種の誤差要因を排除することができる。
【0223】
以上に説明したように、第5実施形態のセンサーモジュール1は、第mの物理量センサー10-mから出力される第mの被測定信号TRGmに対して、アナログ信号処理をすることなくデジタル値である第1~第nのカウント値DCNT~DCNT及び第1~第nの時間デジタル値TD~TDを生成し、第1~第nのカウント値DCNT~DCNT及び第1~第nの時間デジタル値TD~TDに基づいて第1~第nの合成出力値DTS~DTSを生成する。したがって、第5実施形態のセンサーモジュール1によれば、第mの被測定信号TRGmに、第mの物理量センサー10-mが取り付けられる被測定物に生じる高周波電磁振動ノイズに起因する周波数成分およびその高調波成分が含まれていたとしても、高周波ノイズの影響を受けやすいアナログ回路が不要であるので、高周波電磁振動ノイズの影響を受けにくい。また、第5実施形態のセンサーモジュール1によれば、第mの被測定信号TRGmから、高周波電磁振動ノイズに起因する周波数成分およびその高調波成分を除去する必要がないので、回路規模が低減される。
【0224】
また、第5実施形態のセンサーモジュール1では、第mの合成出力値生成部50-mにおいて、第jの合成出力値DTSの量子化誤差が第j+1の合成出力値DTSj+1の生成にフィードバックされるので、第1~第nの合成出力値DTS~DTSはデルタシグマ変調信号の性質を満たし、ノイズシェーピング効果が得られ、量子化誤差が高周波数帯域にシフトする。したがって、第5実施形態のセンサーモジュール1によれば、第mの合成出力値生成部50-mが生成する第1~第nの合成出力値DTS~DTSから算出される物理量成分のS/N比が向上し、外部装置による第mの物理量の測定精度が向上する。
【0225】
また、一般に直接カウント方式とレシプロカルカウント方式とでは計測精度に差があるため被測定信号の周波数帯域と基準周期信号の周波数との関係に応じて最適なカウント方式を選択する必要があるが、第5実施形態のセンサーモジュール1によれば、第mの合成出力値生成部50-mにおいて、第1~第nの合成出力値DTS~DTSはデルタシグマ変調信号の性質を満たすことで、いずれの方式でも同等の測定精度を得ることができるので、計測精度の制約を考慮せずにカウント方式を選択することができる。例えば、第mのカウント部30-mにおいて、第mの被測定信号TRGm及び基準周期信号CLKのうち、周期が長い方の信号に同期して周期が短い方の信号の時間イベントをカウントする構成とすることで、周期が短い方の信号に同期して周期が長い方の信号の時間イベントをカウントする構成よりも、動作周波数を下げることができるため、測定精度を保ったまま低消費電力化が可能となる。
【0226】
また、第5実施形態のセンサーモジュール1によれば、第mの物理量センサー10-mに加わる第mの物理量が変化する周波数が第mの物理量の周波数帯域Fにおける最大周波数fmaxとなるときの第mの物理量の変化の周期Tminが、第mの合成出力値生成部50-mによって第1~第nの合成出力値DTS~DTSがそれぞれ生成される平均周期Tavgの8倍よりも長いので、スプリアスやエイリアシング等に起因する様々な悪影響を現実的な時間で許容レベル以下に低減することができる。
【0227】
また、第5実施形態のセンサーモジュール1によれば、リアルタイムで第mの物理量を測定可能な周波数帯域の上限は外部装置との通信レートによって制限されるが、第mの被測定信号TRGmの周波数が通信レートよりも高い場合であっても、外部装置は、第mの記憶部70-mに記憶されているp個の合成出力値をオフラインで取得してリアルタイムで測定可能な周波数帯域よりも高い周波数帯域の信号成分を測定することができる。
【0228】
また、第5実施形態のセンサーモジュール1によれば、外部装置は、第mの記憶部70-mに記憶されているp個の合成出力値をオフラインで取得すればよいので、外部装置との通信をSPI,I2C,UART等の一般的なプロトコルで行うことができる。したがって、例えば、センサーモジュール1の検査工程において、検査装置に合成出力値を読み出すための専用のソフトウェアを組み込む必要がなく、検査システムを容易に構築することが可能となる。
【0229】
また、第5実施形態のセンサーモジュール1によれば、第1~第Nの合成出力値生成部50-1~50-Nがそれぞれ生成した合成出力値は同一の記憶部に共通に記憶されるのではなく、第1~第Nの記憶部70-1~70-Nにそれぞれ記憶されるので、第1~第Nの記憶部70-1~70-Nのタイミング設計が容易となる。
【0230】
また、第5実施形態のセンサーモジュール1によれば、第mの記憶部70-mが、連続するp個の合成出力値とこれらのいずれかに対応するカウント値を同時に記憶するので、外部装置は、第mの記憶部70-mに記憶されているp個の合成出力値とカウント値を取得し、カウント値に基づいて当該p個の合成出力値が生成されたタイミングを把握することができる。したがって、外部装置は、第1~第Nの物理量センサー10-1~10-Nがそれぞれ非同期に検出した第1~第Nの物理量を同期させて測定することができる。特に、第1~第Nの記憶部70-1~70-Nがそれぞれp個の合成出力値とともに当該p個の合成出力値のうちの最新の合成出力値に対応するカウント値を記憶することにより、外部装置は、第1~第Nの物理量を容易に同期させて測定することができる。
【0231】
その他、第5実施形態のセンサーモジュール1によれば、第1実施形態~第4実施形態のセンサーモジュール1と同様の効果が得られる。
【0232】
6.変形例
上記の各実施形態では、合成出力値生成部50は、被測定信号TRGの立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジの両方に同期して第1~第nの合成出力値DTS~DTSを生成している。この場合、第j+1の合成出力値DTSj+1と第jの合成出力値DTSとの差分は、被測定信号TRGの半周期の時間に対応する。これに対して、合成出力値生成部50は、被測定信号TRGの立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジの一方のみに同期して第1~第nの合成出力値DTS~DTSを生成してもよい。この場合、第j+1の合成出力値DTSj+1と第jの合成出力値DTSとの差分は、被測定信号TRGの1周期の時間に対応する。
【0233】
また、上記の第1実施形態、第2実施形態又は第3実施形態のセンサーモジュール1は、フィルター部60を備えなくてもよい。また、上記の第4実施形態又は第5実施形態のセンサーモジュール1は、合成出力値生成部50の後段であって、記憶部70の前段または後段にフィルター部60を備えてもよい。
【0234】
また、上記の第1実施形態、第2実施形態又は第3実施形態のセンサーモジュール1と上記の第4実施形態又は第5実施形態のセンサーモジュール1とを組み合わせてもよい。すなわち、センサーモジュール1は、第1実施形態、第2実施形態又は第3実施形態のようにリアルタイムに合成出力値を生成して出力するモードと、第4実施形態又は第5実施形態のように一時的に記憶された合成出力値をオフラインで出力するモードとを有してもよい。
【0235】
また、上記の各実施形態では基準周期信号CLKの周波数よりも被測定信号TRGの周波数が低いことからレシプロカルカウント方式を採用しているが、本発明はレシプロカルカウント方式に限定されるものではなく、被測定信号を図1のCLKとして、基準周期信号を図1のTRGとしてそれぞれ入力して動作させても同様の効果が得られる。ゆえに、本発明は、周波数の大小に関わらず「レシプロカルカウント方式」ではなく「直接カウント方式」を採用しても良い。
【0236】
以上、実施形態及び変形例について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。例えば、上記の実施形態を適宜組み合わせることも可能である。
【0237】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成、例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0238】
上述した実施形態および変形例から以下の内容が導き出される。
【0239】
前記センサーモジュールの一態様は、
検出した物理量の大きさに応じて周波数が変化する被測定信号を出力する物理量センサーと、
基準周期信号を出力する基準周期信号生成部と、
2以上の整数nに対して、前記被測定信号及び前記基準周期信号の一方に同期して他方の時間イベントをカウントして第1~第nのカウント値を時系列に生成するカウント部と、
前記被測定信号と前記基準周期信号との位相差に基づく第1~第nの時間デジタル値を時系列に生成する時間デジタル値生成部と、
1以上n以下の各整数iに対して、前記第iの時間デジタル値と前記第iのカウント値とに基づいて第iの合成出力値を生成する合成出力値生成部と、
を備え、
1以上n-1以下の各整数jに対して、前記第jの合成出力値の量子化誤差が前記第j+1の合成出力値の生成にフィードバックされ、
前記物理量が変化する周波数が仕様で定められた検出可能な前記物理量の周波数帯域における最大周波数となるときの前記物理量の変化の周期は、前記第1~第nの合成出力値がそれぞれ生成される平均周期の8倍よりも長い。
【0240】
このセンサーモジュールは、物理量センサーから出力される被測定信号に対して、アナログ信号処理をすることなくデジタル値である第1~第nのカウント値及び第1~第nの時間デジタル値を生成し、第1~第nのカウント値及び第1~第nの時間デジタル値に基づいて第1~第nの合成出力値を生成する。したがって、このセンサーモジュールによれば、被測定信号に、物理量センサーが取り付けられる被測定物に生じる高周波電磁振動ノイズに起因する周波数成分およびその高調波成分が含まれていたとしても、高周波ノイズの影響を受けやすいアナログ回路が不要であるので、高周波電磁振動ノイズの影響を受けにくい。また、このセンサーモジュールによれば、被測定信号から、高周波電磁振動ノイズに起因する周波数成分およびその高調波成分を除去する必要がないので、回路規模が低減される。
【0241】
また、このセンサーモジュールでは、第jの合成出力値の量子化誤差が第j+1の合成出力値の生成にフィードバックされるので、第1~第nの合成出力値はデルタシグマ変調信号の性質を満たし、ノイズシェーピング効果が得られ、量子化誤差が高周波数帯域にシフトする。したがって、このセンサーモジュールによれば、第1~第nの合成出力値から算出される物理量成分のS/N比が向上する。
【0242】
また、一般に直接カウント方式とレシプロカルカウント方式とでは計測精度に差があるため被測定信号の周波数帯域と基準周期信号の周波数との関係に応じて最適なカウント方式を選択する必要があるが、このセンサーモジュールによれば、第1~第nの合成出力値はデルタシグマ変調信号の性質を満たすことで、いずれの方式でも同等の測定精度を得ることができるので、計測精度の制約を考慮せずにカウント方式を選択することができる。例えば、カウント部において、被測定信号及び基準周期信号のうち、周期が長い方の信号に同期して周期が短い方の信号の時間イベントをカウントする構成とすることで、周期が短い方の信号に同期して周期が長い方の信号の時間イベントをカウントする構成よりも、動作周波数を下げることができるため、測定精度を保ったまま低消費電力化が可能となる。
【0243】
また、このセンサーモジュールによれば、物理量が変化する周波数が物理量の周波数帯域における最大周波数となるときの物理量の変化の周期が、第1~第nの合成出力値がそれぞれ生成される平均周期の8倍よりも長いので、スプリアスやエイリアシング等に起因する様々な悪影響を現実的な時間で許容レベル以下に低減することができる。
【0244】
前記センサーモジュールの一態様において、
前記時間デジタル値生成部は、多相クロック方式、時間/電圧変換方式又はΣATDC方式により、前記第1~第nの時間デジタル値を生成してもよい。
【0245】
前記センサーモジュールの一態様において、
前記合成出力値生成部は、前記被測定信号の立ち上がり及び立ち下がりの両方のタイミ
ングで前記第1~第nの合成出力値を時系列に生成してもよい。
【0246】
このセンサーモジュールによれば、被測定信号の1周期当たり2つの合成出力値を生成するので、被測定信号の周波数の2倍のレートで第1~第nの合成出力値を生成することができる。
【0247】
また、このセンサーモジュールによれば、被測定信号のハイレベルの時間に応じたn/2個の合成出力値と被測定信号のローレベルの時間に応じたn/2個の合成出力値が得られるので、外部装置は、第1~第nの合成出力値に基づいて、被測定信号のデューティー比を算出することができる。したがって、例えば、外部装置は、被測定信号のデューティー比が50:50になるように物理量センサーに含まれる発振回路を調整することにより、被測定信号の歪を小さくして被測定信号に含まれるノイズ成分を低減させることができる。
【0248】
前記センサーモジュールの一態様は、
前記合成出力値生成部の後段にフィルター部を備えてもよい。
【0249】
このセンサーモジュールによれば、フィルター部において、第1~第nの合成出力値に対して各種の信号処理を行うことができる。
【0250】
前記センサーモジュールの一態様において、
前記フィルター部は、前記第1~第nの合成出力値に対してデシメーション処理を行ってもよい。
【0251】
このセンサーモジュールによれば、フィルター部においてサンプルレートを下げることができるので、フィルター部の後段の回路の消費電力を低減させることができる。また、このセンサーモジュールによれば、例えば、被測定信号に含まれる測定対象の信号成分が低周波帯域に存在する場合は、デシメーション比を大きくすることにより、データ量を効果的に低減させることができる。
【0252】
前記センサーモジュールの一態様において、
前記合成出力値生成部は、前記被測定信号の立ち上がり及び立ち下がりの両方のタイミングで前記第1~第nの合成出力値を時系列に生成し、
前記フィルター部は、前記第1~第nの合成出力値に対して偶数タップの移動平均処理を行ってもよい。
【0253】
このセンサーモジュールによれば、被測定信号のハイレベルの時間に応じた合成出力値と被測定信号のローレベルの時間に応じた合成出力値とが平均化されるので、被測定信号に含まれるデューティー比に起因するノイズ成分を低減させることができる。
【0254】
前記センサーモジュールの一態様において、
前記合成出力値生成部は、前記第iの時間デジタル値と前記第iのカウント値とを合成して得られた値からオフセット値を減算して前記第iの合成出力値を生成してもよい。
【0255】
このセンサーモジュールによれば、第1~第nの合成出力値の絶対値が小さくなるので、第1~第nの合成出力値のビット数を低減させることができる。したがって、例えば、第1~第nの合成出力値の一部又は全部を記憶部に記憶させて適当なタイミングで外部に出力する場合には、当該記憶部のサイズや通信量を低減させることができる。
【0256】
前記センサーモジュールの一態様は、
前記第1~第nの合成出力値のうちの連続するp個の合成出力値を記憶する記憶部を備え、
前記記憶部は、制御信号に基づいて、記憶している前記p個の合成出力値を出力してもよい。
【0257】
このセンサーモジュールによれば、リアルタイムで物理量を測定可能な周波数帯域の上限は外部装置との通信レートによって制限されるが、被測定信号の周波数が通信レートよりも高い場合であっても、外部装置は、記憶部に記憶されているp個の合成出力値をオフラインで取得してリアルタイムで測定可能な周波数帯域よりも高い周波数帯域の信号成分を測定することができる。
【0258】
また、このセンサーモジュールによれば、外部装置は、記憶部に記憶されているp個の合成出力値をオフラインで取得すればよいので、外部装置との通信をSPI,I2C,UART等の一般的なプロトコルで行うことができる。したがって、例えば、センサーモジュールの検査工程において、検査装置に合成出力値を読み出すための専用のソフトウェアを組み込む必要がなく、検査システムを容易に構築することが可能となる。
【0259】
前記センサーモジュールの一態様において、
前記第1~第nの合成出力値の各々はタイムスタンプの差分に基づく値であり、
前記記憶部は、前記p個の合成出力値として前記第k+1~第k+pの合成出力値を記憶している場合、さらに前記第k+1~第k+pのカウント値のいずれかを記憶してもよい。
【0260】
このセンサーモジュールによれば、第1~第nの合成出力値の各々はタイムスタンプの差分に基づく値であるので、第1~第nの合成出力値の各々がタイムスタンプである場合と比較して、第1~第nの合成出力値の絶対値が小さくなるので、第1~第nの合成出力値のビット数を低減させることができる。したがって、第1~第nの合成出力値のうちの連続するp個の合成出力値を記憶する記憶部のサイズや外部装置との通信量を低減させることができる。
【0261】
また、このセンサーモジュールによれば、記憶部が、連続するp個の合成出力値とこれらのいずれかに対応するカウント値を同時に記憶するので、外部装置は、記憶部に記憶されているp個の合成出力値とカウント値を取得し、カウント値に基づいて当該p個の合成出力値が生成されたタイミングを把握することができる。したがって、例えば、このセンサーモジュールが複数の物理量センサーを備えている場合や、このセンサーモジュールを含む複数のセンサーモジュールを備えたシステムにおいて、外部装置は、複数の物理量センサーがそれぞれ非同期に検出した複数の物理量を同期させて測定することができる。
【0262】
前記センサーモジュールの一態様において、
前記記憶部は、リングバッファーであり、前記p個の合成出力値として前記第k+1~第k+pの合成出力値を記憶している場合、前記制御信号に基づいて、前記第k+p+1の合成出力値以降の記憶を停止し、前記第k+1~第k+pの合成出力値を出力してもよい。
【0263】
このセンサーモジュールによれば、記憶部は、リングバッファーであるので、合成出力値が生成される毎に最も古い合成出力値に上書きすることにより、記憶部の容量を最大限に活用して最新のp個の合成出力値を容易に記憶することができる。
【0264】
また、このセンサーモジュールによれば、記憶部は制御信号に基づいて合成出力値の記憶を停止するので、外部装置は、制御信号に基づく所定のタイミングで速やかに記憶部か
らp個の合成出力値を取得することができる。
【0265】
前記センサーモジュールの一態様において、
前記第1~第nの合成出力値の各々はタイムスタンプの差分に基づく値であり、
前記記憶部は、前記p個の合成出力値として前記第k+1~第k+pの合成出力値を記憶している場合、さらに前記第k+pのカウント値を記憶し、前記制御信号に基づいて、前記第k+1~第k+pの合成出力値と前記第k+pのカウント値とを出力してもよい。
【0266】
このセンサーモジュールによれば、第1~第nの合成出力値の各々はタイムスタンプの差分に基づく値であるので、第1~第nの合成出力値の各々がタイムスタンプである場合と比較して、第1~第nの合成出力値の絶対値が小さくなるので、第1~第nの合成出力値のビット数を低減させることができる。したがって、第1~第nの合成出力値のうちの連続するp個の合成出力値を記憶する記憶部のサイズや外部装置との通信量を低減させることができる。
【0267】
また、このセンサーモジュールによれば、記憶部が、連続するp個の合成出力値とこのうちの最新の合成出力値に対応するカウント値を同時に記憶するので、外部装置は、記憶部に記憶されているp個の合成出力値とカウント値を取得し、カウント値に基づいて当該p個の合成出力値が生成されたタイミングを把握することができる。したがって、例えば、このセンサーモジュールが複数の物理量センサーを備えている場合や、このセンサーモジュールを含む複数のセンサーモジュールを備えたシステムにおいて、外部装置は、複数の物理量センサーがそれぞれ非同期に検出した複数の物理量を同期させて測定することができる。
【0268】
センサーモジュールの他の一態様は、
2以上の整数Nに対して、
第1~第Nの物理量センサーと、
第1~第Nのカウント部と、
第1~第Nの時間デジタル値生成部と、
第1~第Nの合成出力値生成部と、
第1~第Nの記憶部と、
基準周期信号を出力する基準周期信号生成部と、
を備え、
1以上N以下の各整数mに対して、
前記第mの物理量センサーは、検出した第mの物理量の大きさに応じて周波数が変化する第mの被測定信号を出力し、
前記第mのカウント部は、2以上の整数nに対して、前記第mの被測定信号及び前記基準周期信号の一方に同期して他方の時間イベントをカウントして第1~第nのカウント値を時系列に生成し、
前記第mの時間デジタル値生成部は、前記第mの被測定信号と前記基準周期信号との位相差に基づく第1~第nの時間デジタル値を時系列に生成し、
前記第mの合成出力値生成部は、1以上n以下の各整数iに対して、前記第mの時間デジタル値生成部が生成した前記第iの時間デジタル値と前記第mのカウント部が生成した前記第iのカウント値とに基づいて第iの合成出力値を生成し、
前記第mの記憶部は、前記第mの合成出力値生成部が生成した前記第1~第nの合成出力値のうちの連続するp個の合成出力値を記憶し、制御信号に基づいて、記憶している当該p個の合成出力値を出力し、
1以上n-1以下の各整数jに対して、前記第mの合成出力値生成部が生成した第jの合成出力値の量子化誤差が前記第j+1の前記合成出力値の生成にフィードバックされ、
前記第mの物理量が変化する周波数が仕様で定められた検出可能な前記第mの物理量の
周波数帯域における最大周波数となるときの前記第mの物理量の変化の周期は、前記第mの合成出力値生成部によって前記第1~第nの合成出力値がそれぞれ生成される平均周期の8倍よりも長い。
【0269】
このセンサーモジュールは、第mの物理量センサーから出力される第mの被測定信号に対して、アナログ信号処理をすることなくデジタル値である第1~第nのカウント値及び第1~第nの時間デジタル値を生成し、第1~第nのカウント値及び第1~第nの時間デジタル値に基づいて第1~第nの合成出力値を生成する。したがって、このセンサーモジュールによれば、第mの被測定信号に、第mの物理量センサーが取り付けられる被測定物に生じる高周波電磁振動ノイズに起因する周波数成分およびその高調波成分が含まれていたとしても、高周波ノイズの影響を受けやすいアナログ回路が不要であるので、高周波電磁振動ノイズの影響を受けにくい。また、このセンサーモジュールによれば、第mの被測定信号から、高周波電磁振動ノイズに起因する周波数成分およびその高調波成分を除去する必要がないので、回路規模が低減される。
【0270】
また、このセンサーモジュールでは、第mの合成出力値生成部において、第jの合成出力値の量子化誤差が第j+1の合成出力値の生成にフィードバックされるので、第1~第nの合成出力値はデルタシグマ変調信号の性質を満たし、ノイズシェーピング効果が得られ、量子化誤差が高周波数帯域にシフトする。したがって、このセンサーモジュールによれば、第mの合成出力値生成部が生成する第1~第nの合成出力値から算出される第mの物理量成分のS/N比が向上する。
【0271】
また、一般に直接カウント方式とレシプロカルカウント方式とでは計測精度に差があるため第mの被測定信号の周波数帯域と基準周期信号の周波数との関係に応じて最適なカウント方式を選択する必要があるが、このセンサーモジュールによれば、第mの合成出力値生成部において、第1~第nの合成出力値はデルタシグマ変調信号の性質を満たすことで、いずれの方式でも同等の測定精度を得ることができるので、計測精度の制約を考慮せずにカウント方式を選択することができる。例えば、第mのカウント部において、第mの被測定信号及び基準周期信号のうち、周期が長い方の信号に同期して周期が短い方の信号の時間イベントをカウントする構成とすることで、周期が短い方の信号に同期して周期が長い方の信号の時間イベントをカウントする構成よりも、動作周波数を下げることができるため、測定精度を保ったまま低消費電力化が可能となる。
【0272】
また、このセンサーモジュールによれば、第mの物理量が変化する周波数が第mの物理量の周波数帯域における最大周波数となるときの第mの物理量の変化の周期が、第mの合成出力値生成部によって第1~第nの合成出力値がそれぞれ生成される平均周期の8倍よりも長いので、スプリアスやエイリアシング等に起因する様々な悪影響を現実的な時間で許容レベル以下に低減することができる。
【0273】
また、このセンサーモジュールによれば、リアルタイムで第mの物理量を測定可能な周波数帯域の上限は外部装置との通信レートによって制限されるが、第mの被測定信号の周波数が通信レートよりも高い場合であっても、外部装置は、第mの記憶部に記憶されているp個の合成出力値をオフラインで取得してリアルタイムで測定可能な周波数帯域よりも高い周波数帯域の信号成分を測定することができる。
【0274】
また、このセンサーモジュールによれば、外部装置は、第mの記憶部に記憶されているp個の合成出力値をオフラインで取得すればよいので、外部装置との通信をSPI,I2C,UART等の一般的なプロトコルで行うことができる。したがって、例えば、センサーモジュールの検査工程において、検査装置に合成出力値を読み出すための専用のソフトウェアを組み込む必要がなく、検査システムを容易に構築することが可能となる。
【0275】
また、このセンサーモジュールによれば、第1~第Nの合成出力値生成部がそれぞれ生成した合成出力値は同一の記憶部に共通に記憶されるのではなく、第1~第Nの記憶部にそれぞれ記憶されるので、第1~第Nの記憶部のタイミング設計が容易となる。
【符号の説明】
【0276】
1…センサーモジュール、10…物理量センサー、10-1~10-N…第1~第Nの物理量センサー、20…基準周期信号生成部、30…カウント部、30-1~30-N…第1~第Nのカウント部、31…カウンター、32…Dフリップフロップ、40…時間デジタル値生成部、40-1~40-N…第1~第Nの時間デジタル値生成部、41…制御部、42…発振部、43…カウンター、44…Dフリップフロップ、45…加算器、46…Dフリップフロップ、47…論理積回路、48…論理反転回路、50…合成出力値生成部、50-1~50-N…第1~第Nの合成出力値生成部、51…乗算器、52…減算器、53…Dフリップフロップ、54…加算器、55…減算器、56…減算器、60…フィルター部、70…記憶部、70-1~70-N…第1~第Nの記憶部、81…多相クロック生成部、82…Dフリップフロップ、83…Dフリップフロップ、84…Dフリップフロップ、85…時間デジタル値算出部、91…制御信号生成部、92…スイッチ、93…抵抗、94…キャパシター、95…スイッチ、96…サンプルホールド回路、97…時間デジタル値換算部、101…容器、102…蓋部、103…ネジ穴、104…固定突起部、111…側壁、112…底壁、115…回路基板、115f…第1面、115r…第2面、116…コネクター、118x,118y,118z…加速度センサー、121…開口部、122…内面、123…開口面、125…第2の台座、127…第1の台座、129…突起部、130…固定部材、133,134…括れ部、141…シール部材、172…ネジ、174…雌ネジ、176…貫通孔、181…IC、182…IC、183…FPGA、200…センサー素子、201…基板構造体、210…基部、212…継手部、214…可動部、214a,214b…主面、220…第1支持部、230…第2支持部、240…連結部、250…第3支持部、260…第4支持部、270…加速度検出素子、271a,271b…振動梁部、272a…第1の基部、272b…第2の基部、280,282…質量部、300…加速度検出器、310…パッケージ、311…空間、320…パッケージベース、321…凹部、322…内底面、323…段差部、324…外底面、325…貫通孔、330…リッド、332…リッド接合部材、340b…内部端子、343…導電性接着剤、344…外部端子、350…封止部、379b…固定部接続端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
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図24
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図26
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図28
図29
【手続補正書】
【提出日】2023-08-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0061
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0061】
図9のG1,G2,G3は、それぞれ、第1~第nの合成出力値DTS~DTSが生成される平均周波数favgを、図8の例における平均周波数favgである約266kHの1/2,1/4,1/8にした場合の合成出力データDTSの周波数スペクトラムを示す。また、図10のG4,G5,G6は、それぞれ、第1~第nの合成出力値DTS~DTSが生成される平均周波数favgを、図8の例における平均周波数favgである約266kHの1/16,1/32,1/64にした場合の合成出力データDTSの周波数スペクトラムを示す。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0088
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0088】
ここで、被測定信号TRGがハイレベルからローレベルに遷移した時刻tから次に基準周期信号CLKの立ち上がりエッジが到来するまでの時間P2は、被測定信号TRGがローレベルからハイレベルに遷移した時刻tから次に基準周期信号CLKの立ち上がりエッジが到来するまでの時間P1よりも長い。一方、被測定信号TRGのエッジと基準周期信号CLKの立ち上がりエッジとの時間間隔が短いほど、時間デジタルデータTDが大きな値となる。そして、時刻tにおいて変化した後の時間デジタルデータTD、すなわち第1の時間デジタル値TDである2は時間P1に対応し、時刻tにおいて変化した後の時間デジタルデータTD、すなわち第2の時間デジタル値TDである1は時間P2に対応している。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0152
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0152】
1以上N以下の各整数mに対して、第mの記憶部70-mは、第mの合成出力値生成部
50-mが生成した前記第1~第nの合成出力値DTS~DTSのうちの連続するp個の合成出力値を記憶し、制御信号MCTLに基づいて、記憶している当該p個の合成出力値を出力する。例えば、第mの記憶部70-mは、p個の合成出力値として第k+1~第k+pの合成出力値DTSk+1~DTSk+pを記憶している場合、制御信号MCTLに基づいて、第k+p+1の合成出力値DTSk+p+1以降の記憶を停止し、第k+1~第k+pの合成出力値DTSk+1~DTSk+pを出力してもよい。制御信号MCTLは、外部装置からセンサーモジュール1に入力されてもよいし、センサーモジュール1の内部で生成されてもよい。後者の場合、例えば、センサーモジュール1は、不図示のタイマーを備え、当該タイマーが所定の時間が経過する毎に、制御信号MCTLを生成してもよい。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0196
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0196】
基部210は、継手部212を介して可動部214と接続され、可動部214を支持する。基部210は、継手部212を介した可動部214と、可動部214の継手部212の位置する側とは反対側に位置する連結部240と、第1支持部220及び第2支持部230と、連結部240側で連結されている第3支持部250及び第4支持部260と、に接続されている。