(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047871
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】撥液性添加剤
(51)【国際特許分類】
C08F 8/14 20060101AFI20240401BHJP
C08F 290/14 20060101ALI20240401BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20240401BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20240401BHJP
【FI】
C08F8/14
C08F290/14
C09D201/00
C09D7/65
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153608
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000135265
【氏名又は名称】株式会社ネオス
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市原 豊
【テーマコード(参考)】
4J038
4J100
4J127
【Fターム(参考)】
4J038CG142
4J038CH252
4J038FA071
4J038KA05
4J038MA07
4J038MA09
4J038NA07
4J038PB06
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4J038PC03
4J100AL03R
4J100AL08P
4J100AL08Q
4J100BA02P
4J100BA03Q
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4J127CB372
4J127CC112
4J127FA08
4J127FA56
(57)【要約】
【課題】無機粒子を含む紫外線硬化組成物に対して良好な撥液性を付与できる撥液性添加剤を提供する。
【解決手段】
水酸基含有フッ素系ポリマー(A)と
(メタ)アクリレート基を有するカルボン酸ハロゲン化物、(メタ)アクリレート基を有するカルボン酸無水物、及び(メタ)アクリレート基を有するカルボン酸からなる群から選択される少なくとも一種の(メタ)アクリレート系モノマー(B)とのエステル系反応生成物を含む撥液性添加剤であって、
前記水酸基含有フッ素系ポリマー(A)中の水酸基と前記(メタ)アクリレート系モノマー(B)との反応比がモル比で1:1.0~1:1.5であり、
前記水酸基含有フッ素系ポリマー(A)は、下記(a)~(c)
(a)パーフルオロエーテル部分を含有する少なくとも1種の(メタ)アクリレート系モノマー
(b)少なくとも1種の水酸基含有(メタ)アクリレート系モノマー
(c)少なくとも1種の(メタ)アクリレート系モノマー
のモノマーを共重合して得られるものである、撥液性添加剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基含有フッ素系ポリマー(A)と
(メタ)アクリレート基を有するカルボン酸ハロゲン化物、(メタ)アクリレート基を有するカルボン酸無水物、及び(メタ)アクリレート基を有するカルボン酸からなる群から選択される少なくとも一種の(メタ)アクリレート系モノマー(B)とのエステル系反応生成物を含む撥液性添加剤であって、
前記水酸基含有フッ素系ポリマー(A)中の水酸基と前記(メタ)アクリレート系モノマー(B)との反応比がモル比で1:1.0~1:1.5であり、
前記水酸基含有フッ素系ポリマー(A)は、下記(a)~(c)
(a)パーフルオロエーテル部分を含有する少なくとも1種の(メタ)アクリレート系モノマー
(b)少なくとも1種の水酸基含有(メタ)アクリレート系モノマー
(c)少なくとも1種の(メタ)アクリレート系モノマー
のモノマーを共重合して得られるものである、撥液性添加剤。
【請求項2】
前記モノマー(a)がパーフルオロエーテル部分を1個含有する(メタ)アクリレート系モノマーとパーフルオロエーテル部分を複数個含有する(メタ)アクリレート系モノマーとを含む、請求項1に記載の撥液性添加剤。
【請求項3】
前記パーフルオロエーテル部分を1個含有する(メタ)アクリレート系モノマーが下記式(a1)で表され、前記パーフルオロエーテル部分を複数個含有する(メタ)アクリレート系モノマーが下記式(a2)で表される、請求項2に記載の撥液性添加剤
【化1】
(式中、R
1 は水素原子又はメチル基を示す。
R
2は、炭素原子数1~10の二価の飽和脂肪族炭化水素基(該飽和脂肪族炭化水素基は直鎖型でも分岐型でも良く、所望によりエーテル結合(-O-)、エステル結合(-COO-または-O-CO-)、アミド結合(-CONH-または-NHCO-)を有していても良い)を示す。
R
3は、水素原子又はメチル基を示す。
R
4は、炭素原子数1~10の二価の飽和脂肪族炭化水素基(該飽和脂肪族炭化水素基は直鎖型でも分岐型でも良く、所望によりエーテル結合(-O-)、エステル結合(-COO-または-O-CO-)、アミド結合(-CONH-または-NHCO-)を有していても良い)を示す。
nは、1~10の整数である。)。
【請求項4】
水酸基含有フッ素系ポリマー(A)のフッ素含有率が20~35質量%である、請求項1に記載の撥液性添加剤。
【請求項5】
(メタ)アクリレート系モノマー(B)が、(メタ)アクリレート基を有するカルボン酸ハロゲン化物である、請求項1に記載の撥液性添加剤。
【請求項6】
溶剤に溶解されてなる、請求項1に記載の撥液性添加剤。
【請求項7】
UV硬化樹脂に添加して使用される、請求項1に記載の撥液性添加剤。
【請求項8】
UV硬化樹脂と請求項1に記載の撥液性添加剤を含む撥液組成物。
【請求項9】
請求項8に記載の撥液組成物に紫外線を照射してなる撥液性硬化樹脂。
【請求項10】
請求項9に記載の撥液性硬化樹脂を含む物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撥液性添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線硬化塗膜に撥液性を付与する技術としては、含フッ素オリゴマーからなる撥液性添加剤を紫外線硬化塗料に添加する技術が知られている(特許文献1、2)。特許文献1,2に記載の含フッ素オリゴマーは、構造中にUV反応性基を有していることから、紫外線硬化塗膜中に化学的に結合し、塗膜の撥液性能の持続性に優れている。含フッ素オリゴマーの構造中にUV反応性基を導入する手法として、特許文献1,2においては、UV反応性基を有するイソシアネートによるウレタン化反応が用いられている。
【0003】
一方、紫外線硬化塗膜の耐擦傷性付与や低屈折率化を目的に、紫外線硬化塗料中にコロイダルシリカや中空シリカ等の無機粒子を配合する技術が知られている(特許文献3)。
【0004】
しかし、無機粒子を含む紫外線硬化塗料に対し、特許文献1,2に記載されているようなウレタン構造を有する含フッ素オリゴマーからなる撥液性添加剤を用いた場合、含フッ素オリゴマーの構造中のウレタン構造と無機粒子が作用し、無機粒子が凝集してしまうため、無機粒子を含む紫外線硬化塗料への撥液性添加剤の適用が困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5997998号公報
【特許文献2】特開2020-032658号公報
【特許文献3】特開昭61-181809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、無機粒子を含まない紫外線硬化組成物のみならず、無機粒子を含む紫外線硬化組成物に対しても良好な撥液性を付与できる撥液性添加剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、エステル構造を有する含フッ素オリゴマーを用いることで、無機粒子の凝集が抑制されることを見出した。
【0008】
本発明はこれらの知見に基づいて完成されたものであり、以下に示す広い態様の発明を含むものである。
[項1]
水酸基含有フッ素系ポリマー(A)と
(メタ)アクリレート基を有するカルボン酸ハロゲン化物、(メタ)アクリレート基を有するカルボン酸無水物、及び(メタ)アクリレート基を有するカルボン酸からなる群から選択される少なくとも一種の(メタ)アクリレート系モノマー(B)とのエステル系反応生成物を含む撥液性添加剤であって、
前記水酸基含有フッ素系ポリマー(A)中の水酸基と前記(メタ)アクリレート系モノマー(B)との反応比がモル比で1:1.0~1:1.5であり、
前記水酸基含有フッ素系ポリマー(A)は、下記(a)~(c)
(a)パーフルオロエーテル部分を含有する少なくとも1種の(メタ)アクリレート系モノマー
(b)少なくとも1種の水酸基含有(メタ)アクリレート系モノマー
(c)少なくとも1種の(メタ)アクリレート系モノマー
のモノマーを共重合して得られるものである、撥液性添加剤。
[項2]
前記モノマー(a)がパーフルオロエーテル部分を1個含有する(メタ)アクリレート系モノマーとパーフルオロエーテル部分を複数個含有する(メタ)アクリレート系モノマーとを含む、項1に記載の撥液性添加剤。
[項3]
前記パーフルオロエーテル部分を1個含有する(メタ)アクリレート系モノマーが下記式(a1)で表され、前記パーフルオロエーテル部分を複数個含有する(メタ)アクリレート系モノマーが下記式(a2)で表される、項2に記載の撥液性添加剤
【0009】
【0010】
(式中、R1 は水素原子又はメチル基を示す。
R2は、炭素原子数1~10の二価の飽和脂肪族炭化水素基(該飽和脂肪族炭化水素基は直鎖型でも分岐型でも良く、所望によりエーテル結合(-O-)、エステル結合(-COO-または-O-CO-)、アミド結合(-CONH-または-NHCO-)を有していても良い)を示す。
R3は、水素原子又はメチル基を示す。
R4は、炭素原子数1~10の二価の飽和脂肪族炭化水素基(該飽和脂肪族炭化水素基は直鎖型でも分岐型でも良く、所望によりエーテル結合(-O-)、エステル結合(-COO-または-O-CO-)、アミド結合(-CONH-または-NHCO-)を有していても良い)を示す。
nは、1~10の整数である。)。
[項4]
水酸基含有フッ素系ポリマー(A)のフッ素含有率が20~35質量%である、項1~3のいずれか1項に記載の撥液性添加剤。
[項5]
(メタ)アクリレート系モノマー(B)が、(メタ)アクリレート基を有するカルボン酸ハロゲン化物である、項1~4のいずれか1項に記載の撥液性添加剤。
[項6]
溶剤に溶解されてなる、項1~5のいずれか1項に記載の撥液性添加剤。
[項7]
UV硬化樹脂に添加して使用される、項1~6のいずれか1項に記載の撥液性添加剤。
[項8]
UV硬化樹脂と項1~7のいずれか1項に記載の撥液性添加剤を含む撥液組成物。
[項9]
項8に記載の撥液組成物に紫外線を照射してなる撥液性硬化樹脂。
[項10]
項9に記載の撥液性硬化樹脂を含む物品。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、無機粒子を含む紫外線硬化塗料に対しても良好な撥液性を付与できる撥液性添加剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の撥液性添加剤は、
水酸基含有フッ素系ポリマー(A)と、
(メタ)アクリレート基を有するカルボン酸ハロゲン化物、(メタ)アクリレート基を有するカルボン酸無水物、及び(メタ)アクリレート基を有するカルボン酸からなる群から選択される少なくとも一種の(メタ)アクリレート系モノマー(B)
とのエステル系反応生成物を含む。
【0013】
<水酸基含有フッ素系ポリマー(A)>
水酸基含有フッ素系ポリマー(A)は、下記モノマー(a)~(c)を共重合して得られるポリマーである。
(a)パーフルオロエーテル部分を含有する少なくとも1種の(メタ)アクリレート系モノマー
(b)少なくとも1種の水酸基含有(メタ)アクリレート系モノマー
(c)少なくとも1種の(メタ)アクリレート系モノマー
【0014】
((a)パーフルオロエーテル部分を含有する少なくとも1種の(メタ)アクリレート系モノマー)
モノマー(a)におけるパーフルオロエーテル部分としては、
-O-(パーフルオロアルキル基)、
-O-(パーフルオロアルキレン基)、
(パーフルオロアルキレン基)-O-(パーフルオロアルキル基)、
などが挙げられる。
【0015】
上記パーフルオロアルキル基としては、具体的には、-CF3、-CF2CF3、-CF2CF2CF3、-CF(CF3)2、-CF2CF2CF2CF3、などの直鎖又は分岐を有するC1~C8、好ましくはC1~C4のパーフルオロアルキル基が挙げられる。
【0016】
上記パーフルオロアルキレン基としては、具体的には、-CF2-、-CF2CF2-、-CF(CF3)-、-CF2CF2CF2-、-CF2CF(CF3)-、-CF(CF3)CF2-、-CF2CF2CF2CF3-、などの直鎖又は分岐を有する2価のC2~C8、好ましくはC2~C4のパーフルオロアルキレン基が挙げられる。
【0017】
モノマー(a)は、好ましくは下記式(a1)又は(a2)で表されるモノマーである。
【0018】
【0019】
(式中、R1 は水素原子又はメチル基を示す。
R2は、炭素原子数1~10の二価の飽和脂肪族炭化水素基(該飽和脂肪族炭化水素基は直鎖型でも分岐型でも良く、所望によりエーテル結合(-O-)、エステル結合(-COO-または-O-CO-)、アミド結合(-CONH-または-NHCO-)を有していても良い)を示す。
R3は、水素原子又はメチル基を示す。
R4は、炭素原子数1~10の二価の飽和脂肪族炭化水素基(該飽和脂肪族炭化水素基は直鎖型でも分岐型でも良く、所望によりエーテル結合(-O-)、エステル結合(-COO-または-O-CO-)、アミド結合(-CONH-または-NHCO-)を有していても良い)を示す。
nは、1~10の整数である。)
【0020】
R1 は水素原子又はメチル基を示す。メチル基であることが好ましい。
【0021】
R2は、炭素原子数1~10の二価の飽和脂肪族炭化水素基を示す。該飽和脂肪族炭化水素基は直鎖型でも分岐型でも良く、所望によりエーテル結合(-O-)、エステル結合(-COO-または-O-CO-)、アミド結合(-CONH-または-NHCO-)を有していても良い。
【0022】
炭素原子数1~10の二価の飽和脂肪族炭化水素基としては、-CH2-、-CH2CH2-、-CH(CH3)-、-CH2CH2CH2-、-CH2CH(CH3)-、-CH(CH3)CH2-、-CH2CH2CH2CH3-などのC1~C10、好ましくはC1~C6、より好ましくはC1~C4の二価の飽和脂肪族炭化水素基が挙げられる。
【0023】
エーテル結合を有する炭素原子数1~10の二価の飽和脂肪族炭化水素基としては、-CH2-O-CH2CH2-、-CH2CH2-O-CH2-、-(CH2CH2-O)l-(lは、1~5の整数)などが挙げられる。
【0024】
エステル結合を有する炭素原子数1~10の二価の飽和脂肪族炭化水素基としては、-CH2CH2-COO-、-CH2CH2-OCO-、-CH2CH2CH2-COO-、-CH2CH2CH2-OCO-、-CH2CH2-COO-CH2-、-CH2CH2-OCO-CH2-などが挙げられる。
【0025】
アミド結合を有する炭素原子数1~10の二価の飽和脂肪族炭化水素基としては、-CH2CH2-NHCO-、-CH2CH2-CONH-、-CH2-NHCO-CH2-、-CH2-CONH-CH2-などが挙げられる。
【0026】
R3は、水素原子又はメチル基を示す。メチル基であることが好ましい。
【0027】
R4は、炭素原子数1~10の二価の飽和脂肪族炭化水素基を示す。該飽和脂肪族炭化水素基は直鎖型でも分岐型でも良く、所望によりエーテル結合(-O-)、エステル結合(-COO-または-O-CO-)、アミド結合(-CONH-または-NHCO-)を有していても良い。
【0028】
炭素原子数1~10の二価の飽和脂肪族炭化水素基としては、-CH2-、-CH2CH2-、-CH(CH3)-、-CH2CH2CH2-、-CH2CH(CH3)-、-CH(CH3)CH2-、-CH2CH2CH2CH3-などのC1~C10、好ましくはC1~C6、より好ましくはC1~C4の二価の飽和脂肪族炭化水素基が挙げられる。
【0029】
エーテル結合を有する炭素原子数1~10の二価の飽和脂肪族炭化水素基としては、-CH2-O-CH2CH2-、-CH2CH2-O-CH2-、-(CH2CH2-O)l-(lは、1~5の整数)などが挙げられる。
【0030】
エステル結合を有する炭素原子数1~10の二価の飽和脂肪族炭化水素基としては、-CH2CH2-COO-、-CH2CH2-OCO-、-CH2CH2CH2-COO-、-CH2CH2CH2-OCO-、-CH2CH2-COO-CH2-、-CH2CH2-OCO-CH2-などが挙げられる。
【0031】
アミド結合を有する炭素原子数1~10の二価の飽和脂肪族炭化水素基としては、-CH2CH2-NHCO-、-CH2CH2-CONH-、-CH2-NHCO-CH2-、-CH2-CONH-CH2-などが挙げられる。
【0032】
nは、1~10の整数であり、好ましくは2~10、より好ましくは3~9、さらに好ましくは4~8、特に好ましくは5~7である。
【0033】
モノマー(a)は、市販品として入手することができ、また公知の方法により製造することもできる。市販品としては例えば、AC-500、AC-600、AC-1000(いずれもシノケム社製)等が挙げられる。
【0034】
モノマー(a)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
((b)少なくとも1種の水酸基含有(メタ)アクリレート系モノマー)
モノマー(b)における水酸基数は1個又は2個であり、好ましくは1個である。
モノマー(b)は好ましくは下記式(b1)で表されるモノマーである。
【0036】
【0037】
(式中、R5は、Hまたはメチル基を示す。
R6は、直鎖又は分岐を有するアルキレン基を示す。
mは、1~20の整数を示す。)
【0038】
R5は、Hまたはメチル基を示す。メチル基であることが好ましい。
【0039】
R6は、直鎖又は分岐を有するアルキレン基を示す。炭素数1~6の直鎖又は分岐を有するアルキレン基であることが好ましく、炭素数1~4の直鎖又は分岐を有するアルキレン基であることがより好ましい。
【0040】
直鎖又は分岐を有するアルキレン基としては、-CH2-、-CH2CH2-、-CH(CH3)-、-CH2CH2CH2-、-CH2CH(CH3)-、-CH(CH3)CH2-、-CH2CH2CH2CH3-などのC1~C4アルキレン基が挙げられる。
【0041】
mは1~20の整数であり、1~10が好ましく、1~4がより好ましい。
【0042】
モノマー(b)は、市販品として入手することができ、また公知の方法により製造することもできる。市販品としては例えば、ブレンマーE、ブレンマーPE-90、ブレンマーPE-200、ブレンマーPE-350、ブレンマーP、ブレンマーPP-1000、ブレンマーPP-500、ブレンマーPP-800(以上、日油株式会社製)、ライトエステルHO-250(N)、ライトエステルHOP(N)、ライトエステルHOA(N)、ライトエステルHOP-A(N)、ライトエステルHOB(N)(以上、共栄社化学株式会社製)等が挙げられる。
【0043】
モノマー(b)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
((c)少なくとも1種の(メタ)アクリレート系モノマー)
(メタ)アクリレート系モノマーとしては、メチルアクリレート(MA)、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、s-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、メチルメタクリレート(MMA)、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレートが挙げられ、これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
(水酸基含有フッ素系ポリマー(A)の製造方法)
水酸基含有フッ素系ポリマーは、上記モノマー(a)、モノマー(b)、モノマー(c)を共重合させることにより得ることができる。共重合反応は、ラジカル開始剤の存在下に70~90℃で、4~12時間反応させることにより有利に進行する。
【0046】
ラジカル開始剤としては、ラジカル重合開始剤の存在下で重合を行うことが好ましい。本発明の製造方法に用いることのできるラジカル重合開始剤としては、例えばt-ブチルヒドロパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジヒドロパーオキシド、ジクミルパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチル-α-クミルパーオキシド、ジ-α-クミルパーオキシド、α,α’-ビス(t-ブチルペルオキシ)-p-ジイソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)-ヘキシン-3アセチルパーオキシド、コハク酸パーオキシド、ジイソブチリルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、ジ-イソブチルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、メチルエチルケトンパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル=2,2’-アゾビスイソブチレート、アゾビスイソ酪酸ジメチル(富士フィルム和光純薬株式会社製、V-601)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(イソブチルアミジン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]およびその二硫酸塩、2,2’-アゾビス(2-メチルアミドオキシム)二塩酸塩等のアゾ系化合物;過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、t-ブチルヒドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイドなどが挙げられる。これらのラジカル重合開始剤は、1種類を単独で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。 共重合反応は、ラウリルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、2-メルカプトエタノール、チオグリコール酸オクチル、3-メルカプトプロピオン酸、チオグリセリン等の連鎖移動剤を使用して分子量を調整してもよい。
【0047】
水酸基含有フッ素系ポリマーを得るために使用されるモノマー(a)、モノマー(b)、モノマー(c)の割合は、これらの合計を100質量%として、
モノマー(a):好ましくは40~70質量%、より好ましくは50~60質量%、
モノマー(b):好ましくは10~40質量%、より好ましくは20~30質量%、
モノマー(c):好ましくは10~40質量%、より好ましくは20~30質量%、
である。
【0048】
水酸基含有フッ素系ポリマー(A)を得るために用いるモノマー(a)において、式(a1)で表されるモノマーと式(a2)で表されるモノマーの好ましい質量比は、モノマー(a1):モノマー(a2)=1:0~1:0.4である。モノマー(a1)に対するモノマー(a2)の量が0.4以下であると、液に濁りが生じ難く、外観不良が生じ難いため、好ましい。
【0049】
水酸基含有フッ素系ポリマー(A)のフッ素含有率は、好ましくは15~40質量%、より好ましくは20~35質量%、さらに好ましくは22~32質量%である。フッ素の含有率が15質量%以上であると、撥液性が良好となるため好ましい。フッ素の含有率が40質量%以下であると、UV硬化樹脂と混合し、硬化して得られた硬化樹脂の表面にハジキが生じ難いため、好ましい。
【0050】
水酸基含有フッ素系ポリマー(A)の重量平均分子量は、好ましくは3000~100000、より好ましくは20000~40000である。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により標準ポリスチレンの分子量に換算した値として算出することができる。
【0051】
<(メタ)アクリレート系モノマー(B)>
(メタ)アクリレート系モノマー(B)は、(メタ)アクリレート基を有するカルボン酸ハロゲン化物、(メタ)アクリレート基を有するカルボン酸無水物、及び(メタ)アクリレート基を有するカルボン酸からなる群から選択される少なくとも一種の(メタ)アクリレート系モノマーである。
【0052】
(メタ)アクリレート基を有するカルボン酸ハロゲン化物のハロゲンとしては、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物が挙げられる。(メタ)アクリレート基を有するカルボン酸ハロゲン化物としては、例えば、塩化アクリロイル、塩化メタクリロイル、臭化アクリロイル、臭化メタクリロイル、ヨウ化アクリロイル、ヨウ化メタクリロイル、フッ化アクリロイル、フッ化メタクリロイル等が挙げられる。
【0053】
(メタ)アクリレート基を有するカルボン酸無水物としては、例えば、アクリル酸無水物、メタクリル酸無水物等が挙げられる。
【0054】
(メタ)アクリレート基を有するカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。
【0055】
この中でも、水酸基含有フッ素系ポリマー(A)と(メタ)アクリレート系モノマー(B)のエステル化反応後の精製の容易さの観点から、(メタ)アクリレート系モノマー(B)として(メタ)アクリレート基を有するカルボン酸ハロゲン化物を用いることが好ましい。
【0056】
(メタ)アクリレート系モノマー(B)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0057】
<エステル系反応生成物>
エステル系反応生成物は、水酸基含有フッ素系ポリマー(A)と(メタ)アクリレート系モノマー(B)を、水酸基含有フッ素系ポリマー(A)中の水酸基と前記(メタ)アクリレート系モノマー(B)との反応比がモル比で1:1.0~1:1.5、好ましくは1:1.0~1:1.2となるよう反応させて得ることができる。必要に応じて塩基の存在下に反応させる。塩基としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、ジアザビシクロノネン、ジアザビシクロウンデセン等の有機塩基、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等の無機塩基、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムtert-ブトキシド等のアルカリ金属アルコキシド、メチルリチウム、ブチルリチウム等の有機リチウム等が挙げられる。また、必要に応じて縮合剤や触媒等を用いて反応を行っても良い。
【0058】
水酸基含有フッ素系ポリマー(A)の水酸基1当量に対し、(メタ)アクリレート系モノマー(B)を1.0~1.5当量、好ましくは1.0~1.2当量使用し、25~80℃で1~48時間反応させる。水酸基含有フッ素系ポリマー(A)中の水酸基の95%以上(より好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上、最も好ましくは100%)が(メタ)アクリレート系モノマー(B)と反応し、エステル化していることが好ましい。水酸基は無機粒子に吸着する作用を有することから、水酸基の95%以上がエステル化していると、無機粒子の凝集が抑制されるため、好ましい。
【0059】
エステル系反応生成物の重量平均分子量は、好ましくは3000~100000、より好ましくは20000~40000である。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により標準ポリスチレンの分子量に換算した値として算出することができる。
【0060】
<撥液性添加剤、撥液組成物、撥液性硬化樹脂、物品>
本発明の撥液性添加剤は、エステル系反応生成物を含み、さらに溶剤を含む液状の撥液性添加剤が好ましい。溶剤としては、エステル系反応生成物を溶解可能な溶媒であれば特に限定されないが、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、1,1,1-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、テトラクロロジフルオロエタン、トリクロロトリフルオロエタン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、1,4-ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2-トリフルオロエタノール、2,2,3,3-ヘキサフルオロ-1-プロパノール、1,3-ジフルオロ-2-プロパノール、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-メチル-2-プロパノール、ニトロエタン、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート、トリプロピレングリコール、3-メトキシブチルアセテート(MBA)、1,3-ブチレングリコールジアセテート、シクロヘキサノールアセテート、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール、カルビトールアセテート、乳酸エチル、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、アニソール、テトラリン、シクロヘキシルベンゼン、メシチレン、石油エーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサンなどが挙げられる。
【0061】
本発明の撥液性添加剤は、本発明の目的を阻害しない範囲内において、防錆剤、触媒、抗菌剤、難燃剤、消泡剤、増粘剤、粘度調節剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、防腐剤、凍結防止剤、湿潤剤、pH調整剤、安定剤、防黴剤、耐光安定剤、耐候安定剤、中和剤、艶消し剤、乾燥促進剤、発泡剤、非粘着剤、劣化防止剤等を適宜配合してもよい。
【0062】
本発明の撥液性添加剤は、UV硬化樹脂に添加することで撥液組成物とすることができる。UV硬化樹脂および撥液組成物は液状のものが好ましい。この撥液組成物を硬化することで、硬化樹脂に撥液性を付与することができる。本発明のエステル系反応生成物は、UV硬化樹脂に添加することでその硬化物に撥液性を付与することができるので、UV硬化樹脂用の撥液性添加剤として有用である。
【0063】
本発明の撥液性添加剤は、無機粒子を含有するUV硬化樹脂に対しても、用いることができる。本発明の撥液性添加剤は、無機粒子への吸着性が高い官能基であるウレタン構造や水酸基を有さず、無機粒子への吸着性が低いため、無機粒子を含有するUV硬化樹脂に添加したとしても、無機粒子の凝集が抑制され、無機粒子のUV硬化樹脂における分散性を損なわない。
【0064】
無機粒子としては、例えば、平均一時粒子が5nm以上100nm以下の無機粒子を用いることができる。
【0065】
無機粒子としては、例えば、シリカ(コロイダルシリカ、中空シリカ、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ等)、アルミナ、ジルコニア、チタニア、酸化亜鉛等の金属酸化物粒子が好ましく挙げられる。
【0066】
UV硬化樹脂中の無機粒子の含有量は特に限定されるものではなく、例えば、1~20質量%、好ましくは2~15質量%とすることができる。
【0067】
UV硬化樹脂としては、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂などが使用できる。UV硬化樹脂は、耐熱性、耐熱水性、耐薬品性などの物性を満足させるため、2官能以上の硬化樹脂であってもよい。UV硬化樹脂は、低分子量、非晶性を示すものが、低粘度、液状の撥液組成物を得るために好ましい。
【0068】
本発明の撥液組成物は、全固形分を100質量%として、UV硬化樹脂(固形分)を20~40質量%、撥液性添加剤の固形分を0.05~2.0質量%含むことが好ましく、UV硬化樹脂(固形分)を25~35質量%、撥液性添加剤の固形分を0.2~0.7質量%含むことがより好ましい。
【0069】
本発明の撥液組成物をUV(紫外線)照射により硬化することで撥液性硬化樹脂を得ることができる。硬化は、UV硬化樹脂の硬化条件で実施することができる。好ましい1つの実施形態において、液状の本発明の撥液組成物を基板に塗布し、UV硬化することにより、硬化樹脂としての硬化膜を有する物品を得ることができる。この硬化膜は撥液性表面を有する。基板としては、シリコンウエハ、合成樹脂、ガラス、金属、セラミックなどが挙げられる。
【0070】
合成樹脂は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれでもよい。ガラスとしては、例えば、ケイ酸ガラス、ケイ酸アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、カリ石灰ガラス、鉛ガラス、バリウムガラス、ホウケイ酸ガラス等が挙げられる。 金属としては、金、銀、銅、鉄、ニッケル、アルミニウム、白金等が挙げられる。セラミックとしては、酸化物(例えば、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ケイ素、ジルコニア、チタン酸バリウム)、窒化物(例えば、窒化ケイ素、窒化ホウ素)、硫化物(例えば、硫化カドミウム)、炭化物(例えば、炭化ケイ素)等が挙げられる。
【0071】
撥液組成物の基板への塗布は、例えば、ロールコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、フローコート法、バーコート法、スプレーコート法、ダイコート法、スピンコート法、ディップコート法などが採用でき、基材の種類、形状、生産性、膜厚の制御性などを考慮して選択できる。
【実施例0072】
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0073】
<使用材料>
・AC-600:
Poly[oxy[trifluoro(trifluoromethyl)-1,2-ethanediyl]], α-(1,1,2,2,3,3,3-heptafluoropropyl)-ω-[1,2,2,2-tetrafluoro-1-[[2-[(2-methyl-1-oxo-2-propen-1-yl)oxy]ethoxy]carbonyl]ethoxy]-
【0074】
【0075】
(n=1(平均))
・MMA:メチルメタクリレート
・PE-90:
Poly(oxy-1,2-ethanediyl), α-(2-methyl-1-oxo-2-propen-1-yl)-ω-hydroxy-
【0076】
【0077】
(m=2(平均))
・Acryl-Cl:塩化アクリロイル
・AOI:2-イソシアナトエチルアクリレート、カレンズAOI(昭和電工株式会社製)
・フタージェント601ADH2:ウレタン構造及び水酸基を有する撥液剤(株式会社ネオス製)
・TMPT:トリメチロールプロパントリアクリレート
・DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
・IPA-ST:IPA分散シリカ(30wt%)(日産化学株式会社製)
・MEK-ST-40:MEK分散シリカ(40wt%)(日産化学株式会社製)
・Irg184:イルガキュア184(BASFジャパン株式会社製)
【0078】
(1H-NMR分析)
装置:日本電子株式会社製JNM-ECZ400S
周波数:400MHz
重溶媒:重メタノール
基準ピーク:テトラメチルシランを0.00ppmとした。
【0079】
(GPC)
重量平均分子量(Mw)はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて下記の条件でクロマトグラムを測定し、標準ポリスチレンの分子量に換算した値を算出した。
GPC装置:株式会社島津製作所製HPLC Prominence
検出器:示差屈折率検出器
カラム:東ソー株式会社社製TSKgel ALPHA-3000
溶離剤 :テトラヒドロフラン
溶離剤流量:0.6ml/分
カラム温度:40℃
検量線 :標準ポリスチレン8点のデータを用いて作成
【0080】
(FT-IR)
装置:サーモフィッシャーサイエンティフィック社製Nicolet iS50
測定方法:ATR法
【0081】
(ガラスへの吸着性)
下記合成例1~5にて合成した反応性含フッ素オリゴマーの1wt%酢酸エチル溶液を作製した。ガラスを当該溶液に浸漬し、ガラスを引き上げることでガラスに添加剤膜を作製した。その後、各ガラスサンプルを酢酸エチル溶媒に浸漬し、取り出して乾燥させた。その後、乾燥したガラスサンプルの水接触角を測定した。接触角が40°以下であれば、当該化合物のガラスへの吸着が少ないと判断できる。
【0082】
(液外観)
各コーティング液の外観を目視で観察した。
評価基準
〇:シリカの凝集がみられず、均一分散している。
×:シリカの凝集がみられる。
【0083】
(塗膜外観)
各フィルムサンプルの塗膜を目視で観察した。
評価基準
〇:塗膜に濁りがみられず、透明である。
×:塗膜に濁りがみられる。
【0084】
(水接触角測定)
作成したフィルムサンプルの接触角をDMo-702(共和界面科学社製)で測定した。接触角は100°以上であることが好ましい。
【0085】
<合成例1>
冷却管を備えた三つ口フラスコ(500ml)内に、AC-600 50質量部、PE-90 20質量部、MMA 30質量部、酢酸ブチル 200質量部、ラウリルメルカプタン 0.22質量部、V-601(油溶性アゾ重合開始剤、富士フィルム和光純薬株式会社製)0.25質量部を入れた。反応溶液中に窒素ガスを導入し、反応容器内を窒素置換した。窒素置換後、反応溶液を撹拌しながら反応溶液を80℃まで加熱し反応を開始した。その後80℃で撹拌を8時間続行した。反応の終了を1H-NMRの、それぞれのアクリレート特有のピークの消失で確認した。合成した含フッ素オリゴマーのPE-90に対して100mol%の炭酸カリウム及び100mol%のアクリル酸クロライドを入れ、50℃で反応溶液の攪拌を8時間続行した。反応の終了を1H-NMRを用いて確認した。反応溶液をろ過し、無機化合物を除去することで反応性含フッ素オリゴマー1が得られた。GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は30,000であった。また、反応性含フッ素オリゴマー1のガラスへの吸着性試験を行った(表2)。
【0086】
<合成例2>
合成例1と同様の操作を表1に記載のモノマー重量に変更して反応性含フッ素オリゴマー2を合成した。GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は30,000であった。また、反応性含フッ素オリゴマー2のガラスへの吸着性試験を行った(表2)。
【0087】
<合成例3>
冷却管を備えた三つ口フラスコ(500ml)内に、AC-600 50質量部、PE-90 20質量部、MMA 30質量部、酢酸ブチル 200質量部、ラウリルメルカプタン 0.22質量部、V-601(油溶性アゾ重合開始剤、富士フィルム和光純薬株式会社製)0.25質量部を入れた。反応溶液中に窒素ガスを導入し、反応容器内を窒素置換した。窒素置換後、反応溶液を撹拌しながら反応溶液を80℃まで加熱し反応を開始した。その後80℃で撹拌を8時間続行した。反応の終了を1H-NMRの、それぞれのアクリレート特有のピークの消失で確認した。合成した含フッ素オリゴマーのPE-90に対して50mol%のAOI及び1mol%のトリエチリルアミンを入れ、50℃で反応溶液の攪拌を8時間続行した。反応の終了をFT-IRを用いて-N=C=O吸収の消失により確認した。目的の反応性含フッ素オリゴマー3が得られた。GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は30,000であった。また、反応性含フッ素オリゴマー3のガラスへの吸着性試験を行った(表2)。
【0088】
<合成例4,5>
合成例1と同様の操作を表1に記載のモノマー重量に変更して反応性含フッ素オリゴマー4,5を合成した。GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は30,000であった。また、反応性含フッ素オリゴマー4,5のガラスへの吸着性試験を行った(表2)。
【0089】
【0090】
【0091】
<UV硬化液の調製>
表3に記載の配合でUV硬化液を調製した。
【0092】
【0093】
<実施例1>
UV硬化液に対して、有効成分濃度0.3wt%になる様に合成例1で合成した反応性含フッ素オリゴマー1を添加し、コーティング液を調製した。PETフィルムにバーコーターNo.8を用いてコーティング液を塗工した。塗工したフィルムを100℃で1分間乾燥した。乾燥後のフィルムをUV硬化しフィルムサンプルを作製した。その後、コーティング液の液外観評価、フィルムサンプルの塗膜外観評価及び水接触角を測定した。結果を表4に示す。
【0094】
<実施例2~4、比較例1~8>
表2に記載の組成に変更した以外は、実施例1と同様にコーティング液を調製し、フィルムサンプルを作製した。その後、コーティング液の液外観評価、フィルムサンプルの塗膜外観評価及び水接触角を測定した。結果を表4、5に示す。
【0095】
【0096】
【0097】
実施例1~4の含フッ素オリゴマーにおいては、水酸基及びウレタン構造を有しないことから、シリカに対する吸着性が低く、シリカ粒子の凝集を抑制することができた。また、実施例1~4に用いられている含フッ素オリゴマーは、ガラスへの吸着性も低い結果となった。
【0098】
一方、比較例1~8においては、水酸基及び/又はウレタン構造を有する化合物を用いているため、シリカ粒子が凝集した。また、当該化合物は、ガラスへの吸着性も高かった。