(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047878
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】点検システム
(51)【国際特許分類】
G01N 29/12 20060101AFI20240401BHJP
【FI】
G01N29/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153626
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】519250327
【氏名又は名称】株式会社XMAT
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】面 政也
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA05
2G047AA10
2G047AD11
2G047BA04
2G047BC09
2G047BC10
2G047CA03
2G047GA19
2G047GD02
(57)【要約】
【課題】打音検査により判明した補修対象の箇所が、より容易に特定できるようにする。
【解決手段】測定装置101が、構造体151の検査対象面を打撃することにより発生する打撃音を測定し、判定装置102が、測定装置101が測定した打撃音に基づいて、打撃した箇所における構造体151の内部の状態を判定し、特定装置103が、検査対象面における測定装置101が打撃音を測定している測定位置を特定し、集計装置104が、判定装置102による判定結果と特定装置103が特定した測定位置とを関連付けて集計し、コントローラ105が、集計装置104が集計した集計結果より、関連付けられている測定位置を基に検査対象面に相対的に対応させて、判定結果を拡張現実により表示装置106に表示する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造体の検査対象面を打撃することにより発生する打撃音を測定する測定装置と、
前記測定装置が測定した打撃音に基づいて前記構造体の内部の状態を判定する判定装置と、
設定されている基準位置を基準として、前記検査対象面における前記測定装置が打撃音を測定している測定位置を特定する特定装置と、
前記判定装置による判定結果と前記特定装置が特定した測定位置とを関連付けて集計する集計装置と、
前記集計装置が集計した判定結果を、関連付けられている測定位置を基に前記検査対象面に相対的に対応させて拡張現実により表示装置に表示するコントローラと
を備える点検システム。
【請求項2】
請求項1記載の点検システムにおいて、
前記基準位置は、前記特定装置との位置関係が既知の位置の前記検査対象面に設けられたマーカーの設置位置であることを特徴とする点検システム。
【請求項3】
請求項1記載の点検システムにおいて、
前記特定装置は、レーザー画像検出・測距により、前記基準位置を原点とした座標系に前記測定装置が打撃音を測定している前記検査対象面のマッピングを形成することで、前記測定装置が打撃音を測定している測定位置を特定する
ことを特徴とする点検システム。
【請求項4】
請求項3記載の点検システムにおいて、
前記基準位置は、前記特定装置との位置関係が既知の位置の前記検査対象面に設けられたマーカーの設置位置であり、
前記特定装置は、レーザー画像検出・測距により、前記マーカーを原点とした座標系に前記測定装置が打撃音を測定している前記検査対象面のマッピングを形成することで、前記測定装置が打撃音を測定している測定位置を特定する
ことを特徴とする点検システム。
【請求項5】
請求項1記載の点検システムにおいて、
前記特定装置は、前記検査対象面、および前記測定装置を含む領域の撮像により得られた画像より、前記基準位置を原点とした座標系に前記測定装置が打撃音を測定している前記検査対象面のマッピングを形成することで、前記測定装置が打撃音を測定している測定位置を特定する
ことを特徴とする点検システム。
【請求項6】
請求項5記載の点検システムにおいて、
前記基準位置は、前記特定装置との位置関係が既知の位置の前記検査対象面に設けられたマーカーの設置位置であり、
前記特定装置は、前記マーカー、前記検査対象面、および前記測定装置を含む領域の撮像により得られた画像より、前記マーカーを原点とした座標系に前記測定装置が打撃音を測定している前記検査対象面のマッピングを形成することで、前記測定装置が打撃音を測定している測定位置を特定する
ことを特徴とする点検システム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の点検システムにおいて、
前記判定結果は、異常の有無を示す情報であり、
前記コントローラは、異常の有る結果と異常の無い結果とを各々異なる記号で前記表示装置に表示する
ことを特徴とする点検システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点検システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばトンネル、橋、堤防、建築物などのコンクリートからなる構造物(構造体)においては、劣化状況を把握して構造体の健全性を維持する様々な点検業務が必須である。この種の点検に用いられる検査として、打音検査がある。打音検査では、構造体の検査対象面を打撃することにより発生する打撃音に基づいて構造体の内部の状態を検査する。
【0003】
例えば、構造体の内部に何らかの原因で空洞や剥離などの異常が生じている場合、他の正常な箇所とは異なる打撃音となる。この打撃音をマイクロフォンなどの音響センサにより測定して解析することで、打撃箇所の健全性を判別することができる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、構造体の点検業務では、上述したように打音検査するとともに、異常が把握された箇所の補修作業をすることが重要となる。一般には、打音検査により異常が把握された箇所にチョークなどで目印をつけ、つけた目印を目安に補修作業が実施される。しかしながら、構造体の多くは、多くの人目につく場所にあり、このような目印は、景観上好ましくない場合があり、また、第三者に不安を与える場合があった。また、打音検査の実施時期と補修作業の実施時期とが離れている場合が多く、風雨などにより目印の判別が困難になる場合があった。
【0006】
また、打音検査により異常が把握された箇所を電子データとしてマッピングする技術があるが、現状では、補修すべき箇所をマッピングデータと図面と参照することで特定しており、チョークなどによる目印に比較して、手間がかかるという問題があった。
【0007】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、打音検査により判明した補修対象の箇所が、より容易に特定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る点検システムは、構造体の検査対象面を打撃することにより発生する打撃音を測定する測定装置と、測定装置が測定した打撃音に基づいて構造体の内部の状態を判定する判定装置と、設定されている基準位置を基準として、検査対象面における測定装置が打撃音を測定している測定位置を特定する特定装置と、判定装置による判定結果と特定装置が特定した測定位置とを関連付けて集計する集計装置と、集計装置が集計した判定結果を、関連付けられている測定位置を基に検査対象面に相対的に対応させて拡張現実により表示装置に表示するコントローラとを備える。
【0009】
上記点検システムの一構成例において、基準位置は、特定装置との位置関係が既知の位置の検査対象面に設けられたマーカーの設置位置である。
【0010】
上記点検システムの一構成例において、特定装置は、レーザー画像検出・測距により、基準位置を原点とした座標系に測定装置が打撃音を測定している検査対象面のマッピングを形成することで、測定装置が打撃音を測定している測定位置を特定する。
【0011】
上記点検システムの一構成例において、基準位置は、特定装置との位置関係が既知の位置の検査対象面に設けられたマーカーの設置位置であり、特定装置は、レーザー画像検出・測距により、マーカーを原点とした座標系に測定装置が打撃音を測定している検査対象面のマッピングを形成することで、測定装置が打撃音を測定している測定位置を特定する。
【0012】
上記点検システムの一構成例において、特定装置は、検査対象面、および測定装置を含む領域の撮像により得られた画像より、基準位置を原点とした座標系に測定装置が打撃音を測定している検査対象面のマッピングを形成することで、測定装置が打撃音を測定している測定位置を特定する。
【0013】
上記点検システムの一構成例において、基準位置は、特定装置との位置関係が既知の位置の検査対象面に設けられたマーカーの設置位置であり、特定装置は、マーカー、検査対象面、および測定装置を含む領域の撮像により得られた画像より、マーカーを原点とした座標系に測定装置が打撃音を測定している検査対象面のマッピングを形成することで、測定装置が打撃音を測定している測定位置を特定する。
【0014】
上記点検システムの一構成例において、判定結果は、異常の有無を示す情報であり、コントローラは、異常の有る結果と異常の無い結果とを各々異なる記号で表示装置に表示する。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、測定装置が打撃音を測定している測定位置と、判定装置による判定結果とを関連付けて集計し、集計した判定結果を、関連付けられている測定位置を基に検査対象面に相対的に対応させて拡張現実により表示するので、打音検査により判明した補修対象の箇所が、より容易に特定できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る点検システムの構成を示す構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施の形態に係る点検システムのハードウエア構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態に係る点検システムについて
図1を参照して説明する。この点検システムは、測定装置101、判定装置102、特定装置103、集計装置104、コントローラ105を備える。
【0018】
測定装置101は、構造体151の検査対象面を打撃することにより発生する打撃音を測定する。測定装置101は、例えば、よく知られたハンディタイプの打音検査装置を構成する打音装置であり、マイクロフォンなどの音響センサ、および打撃部を備える。測定装置101は、例えば、作業者による打撃トリガーの操作で打撃部が起動して、検査対象面の選択した検査位置を打撃する。打撃により生じた打撃音は、マイクロフォンにより時間波形データとして取得される。
【0019】
構造体151の検査対象面は、壁面、床面、天井面、および柱の側面とすることができる。また、構造体151は、コンクリートからなるものに限らず、レンガなどの他材料による構造物、鉄橋、道路、機械装置、飛行機、自動車など打音検査の対象となるものとすることができる。
【0020】
判定装置102は、測定装置101が測定した打撃音(打撃音の時間波形データ)に基づいて、打撃した箇所における構造体151の内部の状態を判定する。測定装置101で打撃音が測定されると、直ちに測定結果が判定装置102に送信され、判定装置102が、測定され打撃音に基づいて構造体151の内部の状態を判定する。
【0021】
例えば、測定装置101は、測定した結果(打撃音の時間波形データ)を判定装置102に無線送信する機能を備える。例えば、測定装置101の無線機能は、打撃音の測定がされると、直ちに測定結果を判定装置102に無線送信することができる。また、判定装置102は、測定装置101より無線送信された測定結果を受信する無線受信する機能を備え、無線送信された測定結果が受信されると、直ちに判定を開始する。
【0022】
また、測定装置101および判定装置102は、一体に構成することができ、例えば、可搬型自動打音検査システム(株式会社アイ・ティ・エンジニアリング製)などの、ハンディタイプの打音検査装置とすることができる。
【0023】
特定装置103は、設定されている基準位置を基準として、検査対象面における測定装置101が打撃音を測定している測定位置(打撃した箇所)を特定する。基準位置は、特定装置103を配置した位置とすることができる。また、基準位置は、特定装置103との位置関係が既知の位置の検査対象面に設けられたマーカー107の設置位置とすることができる。例えば、特定装置103は、検査対象面に設けられたマーカー107を基準位置として、検査対象面における測定装置101が打撃音を測定している測定位置を特定することができる。例えば、特定装置103は、測定装置101より無線送信された測定結果を受信する無線受信する機能を備え、無線送信された測定結果が受信されると、直ちに打撃音を測定している測定位置の特定を開始する。
【0024】
マーカー107は、例えば、構造体151の検査対象面の法線方向に立っている3本のバーと、各バーの先端に形成されて各々異なる色の球体とから構成することができる。このように、マーカー107を検査対象面より突出している構造とすることで、例えば、構造体151の検査対象面に設置された特定装置103が、マーカー107の位置を正確に検出することができる。また、上記構造に2次元コードを組み合わせてマーカー107とすることができる。
【0025】
特定装置103は、レーザー画像検出・測距により、基準位置を原点とした座標系に測定装置101が打撃音を測定している検査対象面のマッピングを形成することで、測定装置101が打撃音を測定している測定位置を特定する。特定装置103は、測定装置101に設けられた2次元コードを認識した座標を、測定位置とすることができる。
【0026】
基準位置として特定装置103との位置関係が既知の位置の検査対象面に設けられたマーカー107の設置位置を用いる場合、特定装置103は、例えば、レーザー画像検出・測距により、マーカー107を原点とした座標系に測定装置101が打撃音を測定している検査対象面のマッピングを形成することで、測定装置101が打撃音を測定している測定位置を特定する。
【0027】
また、特定装置103は、検査対象面、および測定装置を含む領域の撮像により得られた画像より、基準位置を原点とした座標系に測定装置101が打撃音を測定している検査対象面のマッピングを形成することで、測定装置101が打撃音を測定している測定位置を特定する。この場合においても、特定装置103は、測定装置101に設けられた2次元コードを認識した座標を、測定位置とすることができる。
【0028】
基準位置として特定装置103との位置関係が既知の位置の検査対象面に設けられたマーカー107の設置位置を用いる場合、マーカー107、検査対象面、および測定装置101を含む領域の撮像により得られた画像より、マーカー107を原点とした座標系に測定装置101が打撃音を測定している検査対象面のマッピングを形成することで、測定装置101が打撃音を測定している測定位置を特定する。
【0029】
集計装置104は、判定装置102による判定結果と特定装置103が特定した測定位置とを関連付けて集計する。例えば、判定装置102は、判定結果を集計装置104に無線送信する機能を備えることができる。また、特定装置103は、特定した測定位置を集計装置104に無線送信する機能を備えることができる。集計装置104は、無線送信された判定結果および測定位置を無線受信する機能を備え、受信した判定結果と測定位置とを関連付けて集計する。例えば、打撃音が測定されると、直ちに判定および測定位置の特定がなされるので、設定された時間(例えば10秒)の中で受け付けられた判定結果と測定位置とは、同じ打撃音の測定によるものとすることができ、これらを関連付けることができる。また、集計装置104は、メモリを備え、集計した判定結果と測定結果との組を記憶する。
【0030】
コントローラ105は、集計装置104が集計した集計結果より、関連付けられている測定位置を基に検査対象面に相対的に対応させて、判定結果を拡張現実により表示装置106に表示する。表示装置106は、例えば、ヘッドマウントディスプレイから構成することができる。例えば、表示装置106には、自装置の前面を撮像するカメラを備え、コントローラ105は、カメラが撮像した映像の中よりマーカー107を検出し、検出したマーカー107の位置を基準位置とする。例えば、コントローラ105は、マーカー107を構成する2次元コードを検出し、検出した2次元コードの位置を基準位置とすることができる。
【0031】
特定装置103が、予め設定されている基準位置を用いて測定位置を特定した場合、測定の後で、この基準位置にマーカー107を配置する。コントローラ105は、マーカー107による基準位置を基準とし、測定位置を検査対象面に相対的に対応させて、この測定位置に関連付けられている判定結果を表示装置106に表示する。例えば、判定結果は、異常の有無を示す情報であり、コントローラ105は、異常の有る結果と異常の無い結果とを各々異なる記号で表示装置106に表示することができる。なお、予め設定されている基準位置を用いて測定位置を特定した場合、この基準位置とは異なる箇所にマーカー107を設置することもできる。この場合、基準位置とマーカー107の設置位置との相対的な位置関係を補正値として保持し、検出したマーカー107の位置に補正値を加えて基準位置を認識することができる。
【0032】
表示装置106を視認する作業者は、構造体151の検査対象面における実際に打撃された位置の判定結果をリアルタイムで確認することができる。測定位置(測定座標)と判定結果との1つの組とした集計結果(集計データ)は、例えば、マーカー107により得られる検査エリア番号とともに、データベースに格納することができる。点検作業が終了した後、例えば、点検作業日より数日後の補修作業時に、マーカー107を点検時と同じ位置に設置することで、表示装置106に、複数の判定結果が対応する測定位置に拡張現実により表示されるので、補修作業者はどの位置を補修すべきかを容易に破談・特定することができる。なお、測定位置と判定結果とが1つの組として集計されて電子データ化されていることから、検査報告書などを自動作成することも可能である。
【0033】
上述した実施の形態に係る点検システムの判定装置、特定装置の一部、集計装置、コントローラは、
図2に示すように、CPU(Central Processing Unit;中央演算処理装置)301と主記憶装置302と外部記憶装置303とネットワーク接続装置304となどを備えたコンピュータ機器とし、主記憶装置302に展開されたプログラムによりCPU301が動作する(プログラムを実行する)ことで、上述した各機能が実現されるようにすることができる。ネットワーク接続装置304は、ネットワーク305に接続する。また、各機能(回路)は、複数のコンピュータ機器に分散させることもできる。
【0034】
以上に説明したように、本発明によれば、測定装置が打撃音を測定している測定位置と、判定装置による判定結果とを関連付けて集計し、集計した判定結果を、関連付けられている測定位置を基に検査対象面に相対的に対応させて拡張現実により表示するので、打音検査により判明した補修対象の箇所が、より容易に特定できるようになる。
【0035】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。
【符号の説明】
【0036】
101…測定装置、102…判定装置、103…特定装置、104…集計装置、105…コントローラ、106…表示装置、107…マーカー、151…構造体。