(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004788
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】ホットメルト接着剤組成物、自動車内装用プレコート表皮材、自動車内装材、及び接着体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09J 123/00 20060101AFI20240110BHJP
C09J 123/12 20060101ALI20240110BHJP
C09J 123/16 20060101ALI20240110BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20240110BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240110BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20240110BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240110BHJP
B29C 65/40 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
C09J123/00
C09J123/12
C09J123/16
C09J11/08
C09J11/06
C09J11/04
B32B27/00 E
B32B27/00 M
B29C65/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104621
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】305032254
【氏名又は名称】サンスター技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100138885
【弁理士】
【氏名又は名称】福政 充睦
(74)【代理人】
【識別番号】100224605
【弁理士】
【氏名又は名称】畠中 省伍
(72)【発明者】
【氏名】小▲柳▼ 英之
(72)【発明者】
【氏名】張 雁妹
(72)【発明者】
【氏名】桂 誠治
【テーマコード(参考)】
4F100
4F211
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AK03
4F100AK03A
4F100AK64
4F100AK64A
4F100AR00B
4F100BA02
4F100BA07
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4F100GB33
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4J040BA192
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4J040MB03
4J040MB09
4J040NA16
4J040PA30
4J040PA42
(57)【要約】 (修正有)
【課題】樹脂基材、特にポリプロピレンをはじめとするポリオレフィン基材に対する良好な接着性を有し、併せて金型から容易に剥離できる作業性(金型離型性)も有するホットメルト接着剤の提供。
【解決手段】ショアA硬度が80以上である結晶性ポリオレフィン(A)、
非晶性ポリオレフィン(B)及び
ポリプロピレン系ワックス(C)
を含み、
前記結晶性ポリオレフィン(A)と前記非晶性ポリオレフィン(B)との合計量100重量部に対し、前記ポリプロピレン系ワックス(C)の量が60重量部以上300重量部以下である、ホットメルト接着剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ショアA硬度が80以上である結晶性ポリオレフィン(A)、
非晶性ポリオレフィン(B)及び
ポリプロピレン系ワックス(C)
を含み、
前記結晶性ポリオレフィン(A)と前記非晶性ポリオレフィン(B)との合計量100重量部に対し、前記ポリプロピレン系ワックス(C)の量が60重量部以上300重量部以下である、ホットメルト接着剤組成物。
【請求項2】
前記結晶性ポリオレフィン(A)の融点が80℃以上である、請求項1に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項3】
前記結晶性ポリオレフィン(A)が、エチレン-プロピレン共重合体を含む、請求項1に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項4】
前記非晶性ポリオレフィン(B)の軟化点が100℃以上である、請求項1に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項5】
前記非晶性ポリオレフィン(B)がエチレン-プロピレンの二元共重合体及びエチレン-プロピレン-ブテンの三元共重合体からなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項1に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項6】
前記ポリプロピレン系ワックス(C)の軟化点が130℃以上である、請求項1に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項7】
粘着付与剤(D)を含む、請求項1に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項8】
前記粘着付与剤(D)の軟化点が90℃以上である、請求項7に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項9】
前記粘着付与剤(D)が、水添石油樹脂、テルペン樹脂、及びテルペンフェノール樹脂からなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項7に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項10】
酸化防止剤(E)を含む、請求項1に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項11】
無機充填剤(F)を含む、請求項1に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項12】
エラストマー(G)を含む、請求項1に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項13】
180℃における溶融粘度が15,000mPa・s以上100,000mPa・s以下である、請求項1に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項14】
自動車内装材用である、請求項1に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項15】
自動車内装用表皮材、及び、前期自動車内装用表皮材の裏面に請求項1~14のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物から形成されるホットメルト接着剤層を含む、自動車内装用プレコート表皮材。
【請求項16】
自動車内装用成形品、及び、前記ホットメルト接着剤層を介して前記自動車用成形品に接着する請求項15に記載の前記自動車内装用プレコート表皮材を含む、自動車内装材。
【請求項17】
接着体の製造方法であって、
前記接着体は、第一基材、及び、請求項1~14のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物から形成されるホットメルト接着剤層を介して前記第一基材に接着している第二基材を有し、
金型と前記ホットメルト接着剤組成物とが接触する工程を有する、接着体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ホットメルト接着剤組成物、それを用いた自動車内装用プレコート表皮材、および自動車内装材に関する。
【背景技術】
【0002】
ホットメルト接着剤は常温では固体であり、加熱溶融されて基材に塗布され、冷却固化によって基材同士を接着する。ホットメルト接着剤は、溶剤型の接着剤と比較して、VOC低減、乾燥工程の省略による生産性向上といったメリットがあり、各種用途、例えば自動車の製造用途に用いられている。
【0003】
特許文献1においては、炭化水素系環状ポリマー、αオレフィン系ポリマー、及び粘着付与樹脂を含む、ホットメルト接着剤組成物が開示されている。
【0004】
特許文献2においては、マルチサイト触媒を用いて重合されたα-オレフィン共重合体、シングルサイト触媒を用いて重合されたα-オレフィン共重合体、エチレン-極性基含有モノマー共重合体、水添系粘着付与樹脂、及びポリプロピレン系ワックスを特定の比率で含む、ホットメルト接着剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2018/012593
【特許文献2】WO2018/100672
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ホットメルト接着剤を用いる場合、接着方法の種類によっては、ホットメルト接着剤を金型から剥離する工程が必要になる(例えば、真空成型工法)。特許文献1や特許文献2にはホットメルト接着剤を金型から剥離する工程について検討されていない。従来のホットメルト接着剤は、溶融状態から固化するまでに時間がかかるため、その間、ホットメルト接着剤を金型から容易に剥離できないため、作業性に劣り得る。また、従来のホットメルト接着剤を用いた場合、金型からの剥離後においてホットメルト接着剤が残存し、手作業による剥離や洗浄等が必要となるという点からも、作業性の観点から問題となり得る。
【0007】
そこで、本開示は、樹脂基材、特にポリプロピレンをはじめとするポリオレフィン基材に対する良好な接着性を有し、併せて金型から容易に剥離できる作業性(金型離型性)も有するホットメルト接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本開示には、以下のものが含まれる。
[項1]
ショアA硬度が80以上である結晶性ポリオレフィン(A)、
非晶性ポリオレフィン(B)及び
ポリプロピレン系ワックス(C)
を含み、
前記結晶性ポリオレフィン(A)と前記非晶性ポリオレフィン(B)との合計量100重量部に対し、前記ポリプロピレン系ワックス(C)の量が60重量部以上300重量部以下である、ホットメルト接着剤組成物。
[項2]
前記結晶性ポリオレフィン(A)の融点が80℃以上である、項1に記載のホットメルト接着剤組成物。
[項3]
前記結晶性ポリオレフィン(A)が、エチレン-プロピレン共重合体を含む、項1又は2に記載のホットメルト接着剤組成物。
[項4]
前記非晶性ポリオレフィン(B)の軟化点が100℃以上である、項1~3のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物。
[項5]
前記非晶性ポリオレフィン(B)がエチレン-プロピレンの二元共重合体及びエチレン-プロピレン-ブテンの三元共重合体からなる群から選択される少なくとも一種を含む、項1~4のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物。
[項6]
前記ポリプロピレン系ワックス(C)の軟化点が130℃以上である、項1~5のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物。
[項7]
粘着付与剤(D)を含む、項1~6のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物。
[項8]
前記粘着付与剤(D)の軟化点が90℃以上である、項7に記載のホットメルト接着剤組成物。
[項9]
前記粘着付与剤(D)が、水添石油樹脂、テルペン樹脂、及びテルペンフェノール樹脂からなる群から選択される少なくとも一種を含む、項7に記載のホットメルト接着剤組成物。
[項10]
酸化防止剤(E)を含む、項1~9のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物。
[項11]
無機充填剤(F)を含む、項1~10のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物。
[項12]
エラストマー(G)を含む、項1~11のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物。
[項13]
180℃における溶融粘度が15,000mPa・s以上100,000mPa・s以下である、項1~12のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物。
[項14]
自動車内装材用である、項1~13のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物。
[項15]
自動車内装用表皮材、及び、前期自動車内装用表皮材の裏面に項1~14のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物から形成されるホットメルト接着剤層を含む、自動車内装用プレコート表皮材。
[項16]
自動車内装用成形品、及び、前記ホットメルト接着剤層を介して前記自動車用成形品に接着する項15に記載の前記自動車内装用プレコート表皮材を含む、自動車内装材。
[項17]
接着体の製造方法であって、
前記接着体は、第一基材、及び、項1~14のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物から形成されるホットメルト接着剤層を介して前記第一基材に接着している第二基材を有し、
金型と前記ホットメルト接着剤組成物とが接触する工程を有する、接着体の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本開示のホットメルト接着剤は、特にポリプロピレンをはじめとするポリオレフィン基材に対する良好な接着性を有し、併せて良好な金型離型性も有し、作業性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<ホットメルト接着剤組成物>
本開示のホットメルト接着剤組成物は、結晶性ポリオレフィン(A)、非晶性ポリオレフィン(B)、およびポリプロピレン系ワックス(C)を含む。本開示のホットメルト接着剤組成物は、(A)~(C)に加えて、必要に応じて、粘着付与剤(D)、酸化防止剤(E)、無機充填剤(F)、エラストマー(G)、可塑剤(H)、その他添加剤等から選択された一以上をさらに含むことができる。
【0011】
[(A)結晶性ポリオレフィン]
本開示のホットメルト接着剤組成物は結晶性ポリオレフィン(A)を含む。結晶性ポリオレフィン(A)は高い結晶性を有するポリオレフィンである。結晶性ポリオレフィン(A)は、結晶化度、ショアA硬度、及び/又は分子量等の観点から本明細書にて説明される他の成分とは区別されるものである。典型的には結晶性ポリオレフィン(A)の結晶化度は20%以上である。典型的には結晶性ポリオレフィン(A)のショアA硬度は80以上である。典型的には結晶性ポリオレフィン(A)は重量平均分子量40,000以上である。
【0012】
結晶性ポリオレフィン(A)の結晶化度は20%以上、25%以上、30%以上、又は35%以上であってよい。結晶性ポリオレフィン(A)の結晶化度は100%以下、98%以下、95%以下、90%以下、又は85%以下であってよい。結晶化度が上記下限値以上であることが本開示の効果をより良好に奏する観点から好適である。結晶化度は、例えば、示差走査熱量測定、ポリマーのX線回折等により測定することができる。なお、本開示における「結晶性」とは、示差走査熱量測定において、結晶部分に由来する明確な吸熱ピークが認められる性質を意味してもよく、一方、「非晶性」とは示差走査熱量測定において、結晶部分に由来する明確な吸熱ピークが認められない性質を意味してもよい。
【0013】
結晶性ポリオレフィン(A)のショアA硬度は80以上、85以上、90以上、95以上であってよく、好ましくは85以上、より好ましくは90以上である。結晶性ポリオレフィン(A)のショアA硬度は100以下、99以下、98以下、又は97以下であってよい。ショアA硬度は樹脂の凝集力の指標として用いることができ、室温および熱間での接着性の指標の一つとなり得る。上記範囲にあることが本開示の効果をより良好に奏する観点から好適である。
【0014】
結晶性ポリオレフィン(A)の融点は60℃以上、70℃以上、80℃以上、90℃以上、100℃以上、又は110℃以上であってよく、好ましくは80℃以上である。結晶性ポリオレフィン(A)の融点は150℃以下、140℃以下、130℃以下、120℃以下、110℃以下、100℃以下、又は90℃以下であってよく、好ましくは120℃以下、例えば110℃以下、又は100℃以下である。上記範囲にあることが本開示の効果をより良好に奏する観点から好適である。
【0015】
結晶性ポリオレフィン(A)のガラス転移温度は-150℃以上、-125℃以上、-100℃以上、-75℃以上、-50℃以上、又は-25℃以上であってよい。結晶性ポリオレフィン(A)のガラス転移温度は20℃以下、10℃以下、0℃以下、-10℃以下、又は-20℃以下であってよく、好ましくは0℃以下、より好ましくは-10℃以下である。ガラス転移温度が上記上限以下であることが低温接着性の観点からも好ましい。
【0016】
結晶性ポリオレフィン(A)は典型的には熱可塑性である。結晶性ポリオレフィン(A)のMFRは3g/10分以上、5g/10分以上、7g/10分以上、10g/10分以上、12g/10分以上、又は15g/10分以上であってよく、好ましくは5g/10分以上、より好ましくは7g/10分以上である。結晶性ポリオレフィン(A)のMFRは40g/10分以下、30g/10分以下、20g/10分以下、15g/10分以下、又は10g/10分以下であってよい。MFRが上記の下限以上の範囲にあることが、溶融粘度が低くなり塗布安定性の観点からも好ましい。MFRはJIS K7210に基づき測定することができる。
【0017】
結晶性ポリオレフィン(A)の重量平均分子量は40,000以上、50,000以上、75,000以上、100,000以上、200,000以上、300,000以上、又は500,000以上であってよく、100,000以上が好ましい。結晶性ポリオレフィン(A)の重量平均分子量は5,000,000以下、2,000,000以下、1,500,000以下、1,200,000以下、1,000,000以下、800,000以下、600,000以下、400,000以下、又は200,000以下であってよく、1,000,000以下、例えば600,000以下が好ましい。重量平均分子量が上記範囲にあることが本開示の効果をより良好に奏する観点から好適である。
【0018】
結晶性ポリオレフィン(A)はオレフィンから誘導された繰り返し単位を有するポリマーである。結晶性ポリオレフィン(A)はα-オレフィンから誘導された繰り返し単位を有するα-オレフィン系ポリマー、特にα-オレフィン系共重合体であることが好ましい。結晶性ポリオレフィン(A)は単独重合体、共重合体又はこれらの混合物であってもよい。共重合体の形態は、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等のいずれであってもよい。
【0019】
結晶性ポリオレフィン(A)が含む繰り返し単位の例としては、例えばエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-へプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、及び1-エイコセン等から誘導された繰り返し単位が挙げられ、これらを単独でまたは二種以上を含んでいてもよい。
【0020】
結晶性ポリオレフィン(A)は、上述した繰り返し単位の中でもプロピレンから誘導された繰り返し単位を含んでいることが好ましく、例えばプロピレンから誘導された繰り返し単位とその他αオレフィン(例えばエチレン)から誘導された繰り返し単位及びの両方を含んでいてもよい。結晶性ポリオレフィン(A)を構成する繰り返し単位のうち、プロピレンに由来する繰り返し単位が、20モル%以上、30モル%以上、40モル%以上、50モル%以上、60モル%以上、又は70モル%以上であってよく、好ましくは30モル%以上である。
【0021】
結晶性ポリオレフィン(A)の具体例としては、エチレンホモポリマー、プロピレンホモポリマー、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-1-オクテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-プロピレン-1-ブテン共重合体等のオレフィン同士の共重合体等が挙げられ、好ましい例としてはエチレン-プロピレン共重合体が挙げられる。これらは単独でまたは二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
結晶性ポリオレフィン(A)の代表的市販品の例としては、三井化学社製の商品名「タフマーXM-7090」、「タフマーXM-7080」、「タフマーXM-7070」、「タフマーXM-5090」、「タフマーXM-5080」、「タフマーXM-5070」、「タフマーBL-2491M」、「タフマーDF110」等のタフマーシリーズ;ダウケミカル社製の商品名「VERSIFY3000」、「VERSIFY4200」等のVERSIFYシリーズ、エクソンモービル社製の商品名「Vistamaxx8880」「Vistamaxx3000」「Vistamaxx3980FL」等のVistamaxxシリーズ、出光興産社製の「L-MODU S901」、「L-MODU S600」、「L-MODU S400」等が挙げられる。なお、結晶性ポリオレフィン(A)は、単独で用いても、二種以上を併用してもよい。
【0023】
[(B)非晶性ポリオレフィン]
本開示のホットメルト接着剤組成物は非晶性ポリオレフィン(B)を含む。非晶性ポリオレフィン(B)は結晶性を有しない、又は少量の結晶性を有するポリオレフィンであり、柔軟性を付与することができる。非晶性ポリオレフィン(B)は、結晶化度、及び/又は分子量等の観点から本明細書にて説明される他の成分とは区別されるものである。典型的には非晶性ポリオレフィン(B)の結晶化度は20%未満である。典型的には非晶性ポリオレフィン(B)は重量平均分子量40,000以上である。
【0024】
非晶性ポリオレフィン(B)の結晶化度は0%以上、3%以上、又は5%以上であってよい。非晶性ポリオレフィン(B)の結晶化度は20%未満、15%以下、10%以下、5%以下、3%以下、又は1%以下であってよい。結晶化度が上記上限値以下であることが本開示の効果をより良好に奏する観点から好適である。結晶化度は、例えば、示差走査熱量測定、ポリマーのX線回折等により測定することができる。
【0025】
非晶性ポリオレフィン(B)の軟化点は70℃以上、80℃以上、90℃以上、100℃以上、110℃以上、120℃以上、又は130℃以上であってよく、好ましくは80℃以上、例えば100℃以上である。非晶性ポリオレフィン(B)の軟化点は180℃以下、170℃以下、160℃以下、150℃以下、140℃以下、130℃以下、120℃以下、又は110℃以下であってよく、好ましくは160℃以下、例えば140℃以下である。上記範囲にあることが本開示の効果をより良好に奏する観点から好適である。軟化点は環球法により測定することができる。
【0026】
非晶性ポリオレフィン(B)のガラス転移温度は-150℃以上、-125℃以上、-100℃以上、-75℃以上、-50℃以上、又は-25℃以上であってよい。結晶性ポリオレフィン(A)のガラス転移温度は20℃以下、10℃以下、0℃以下、-10℃以下、又は-20℃以下であってよく、好ましくは0℃以下、より好ましくは-10℃以下である。ガラス転移温度が上記上限以下であることが低温接着性の観点からも好ましい。
【0027】
非晶性ポリオレフィン(B)は典型的には熱可塑性である。非晶性ポリオレフィン(B)のMFRは3g/10分以上、5g/10分以上、7g/10分以上、10g/10分以上、12g/10分以上、又は15g/10分以上であってよく、好ましくは5g/10分以上、より好ましくは7g/10分以上である。非晶性ポリオレフィン(B)のMFRは40g/10分以下、30g/10分以下、20g/10分以下、15g/10分以下、又は10g/10分以下であってよい。MFRが上記の下限以上の範囲にあることが、溶融粘度が低くなり塗布安定性の観点からも好ましい。MFRはJIS K7210に基づき測定することができる。
【0028】
非晶性ポリオレフィン(B)の重量平均分子量は40,000以上、50,000以上、75,000以上、100,000以上、200,000以上、300,000以上、又は500,000以上であってよく、100,000以上が好ましい。非晶性ポリオレフィン(B)は5,000,000以下、2,000,000以下、1,500,000以下、1,200,000以下、1,000,000以下、800,000以下、600,000以下、400,000以下、又は200,000以下であってよく、1,000,000以下、例えば600,000以下が好ましい。重量平均分子量が上記範囲にあることが本開示の効果をより良好に奏する観点から好適である。
【0029】
非晶性ポリオレフィン(B)はオレフィンから誘導された繰り返し単位を有するポリマーである。非晶性ポリオレフィン(B)はα-オレフィンから誘導された繰り返し単位を有するα-オレフィン系ポリマー、特にα-オレフィン系共重合体であることが好ましい。非晶性ポリオレフィン(B)は単独重合体、共重合体又はこれらの混合物であってもよい。共重合体の形態は、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等のいずれであってもよい。
【0030】
非晶性ポリオレフィン(B)が含む繰り返し単位の例としては、例えばエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-へプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、及び1-エイコセン等から誘導された繰り返し単位が挙げられ、これらを単独でまたは二種以上を含んでいてもよい。
【0031】
非晶性ポリオレフィン(B)は、上述した繰り返し単位の中でもプロピレンから誘導された繰り返し単位を含んでいることが好ましく、例えばプロピレンから誘導された繰り返し単位とその他αオレフィン(例えばエチレン)から誘導された繰り返し単位及びの両方を含んでいてもよい。非晶性ポリオレフィン(B)を構成する繰り返し単位のうち、プロピレンに由来する繰り返し単位が、20モル%以上、30モル%以上、40モル%以上、50モル%以上、60モル%以上、又は70モル%以上であってよく、好ましくは30モル%以上である。
【0032】
非晶性ポリオレフィン(B)の具体例としては、エチレンホモポリマー、プロピレンホモポリマー、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-1-オクテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-プロピレン-1-ブテン共重合体等のオレフィン同士の共重合体等が挙げられ、好ましい例としてはエチレン-プロピレンの二元共重合体及び/又はエチレン-プロピレン-ブテンの三元共重合体が挙げられる。これらは単独でまたは二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
非晶性ポリオレフィン(B)の代表的市販品の例としては、エボニック社製の商品名「ベストプラスト308」、「ベストプラスト508」、「ベストプラスト520」、「ベストプラスト608」、「ベストプラストEP V2103」、「ベストプラストEP V2094」、「ベストプラスト708」、「ベストプラスト750」、「ベストプラスト751」、「ベストプラスト792」、「ベストプラスト828」、「ベストプラスト888」、「ベストプラスト891」、「ベストプラストEP 807」等のベストプラストシリーズ;REXtac社製の商品名「RT2280」、「RT2385」、「RT2585」、「RT2780」等のRTシリーズ等が挙げられる。
【0034】
[(C)ポリプロピレン系ワックス]
本開示のホットメルト接着剤組成物はポリプロピレン系ワックス(C)を含む。ポリプロピレン系ワックス(C)は、プロピレンから誘導された繰り返し単位を有するワックスのことである。ポリプロピレン系ワックス(C)は一般に低分子量(40,000未満)であり、ホットメルト接着剤を低粘度化することで塗布性や被着体への濡れ性を付与することができる。また、ポリプロピレン系ワックス(C)は結晶性ポリオレフィン(A)の結晶化および固化を促進し、ホットメルト接着剤の固化速度を向上させ、金型剥離性を向上し得る。
【0035】
ポリプロピレン系ワックス(C)の軟化点は90℃以上、100℃以上、110℃以上、120℃以上、130℃以上、140℃以上、又は150℃以上、好ましくは110℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは130℃以上である。ポリプロピレン系ワックス(C)の軟化点は220℃以下、210℃以下、190℃以下、180℃以下、170℃以下、160℃以下、又は150℃以下であってよく、好ましくは190℃以下、例えば160℃以下である。上記範囲にあることが本開示の効果をより良好に奏する観点から好適である。軟化点は環球法により測定することができる。ポリプロピレン系ワックス(C)の軟化点が上記上限以下にあることが、溶融温度を低く設定でき、作業時間が短縮の観点からも好ましい。
【0036】
ポリプロピレン系ワックス(C)の重量平均分子量は3,000以上、5,000以上、又は7,000以上であってよく、3,000以上が好ましい。ポリプロピレン系ワックス(C)の重量平均分子量は40,000未満、35,000以下、30,000以下、20,000以下、又は10,000以下であってよく、20,000以下が好ましい。重量平均分子量が上記範囲にあることが本開示の効果をより良好に奏する観点から好適である。
【0037】
ポリプロピレン系ワックス(C)はプロピレンから誘導された繰り返し単位以外の繰り返し単位、例えばα-オレフィンから誘導された繰り返し単位を有してもよい。ポリプロピレン系ワックス(C)は低分子量ポリオレフィン、特に低分子量α-オレフィン系ポリマーであってもよい。ポリプロピレン系ワックス(C)は単独重合体、共重合体又はこれらの混合物であってもよい。共重合体の形態は、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等のいずれであってもよい。
【0038】
ポリプロピレン系ワックス(C)がプロピレンから誘導された繰り返し単位以外に含む繰り返し単位の例としては、例えばエチレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-へプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、及び1-エイコセン等から誘導された繰り返し単位が挙げられ、これらを単独でまたは二種以上を含んでいてもよい。
【0039】
ポリプロピレン系ワックス(C)を構成する繰り返し単位のうち、プロピレンに由来する繰り返し単位が、20モル%以上、30モル%以上、40モル%以上、50モル%以上、60モル%以上、又は70モル%以上であってよく、好ましくは30モル%以上である。
【0040】
ポリプロピレン系ワックス(C)の代表的市販品の例としては、三洋化成工業社製の商品名「ビスコール660-P」、「ビスコール550-P」、「ビスコール440-P」、「ビスコール330-P」等のビスコールシリーズ;三井化学社製の商品名「ハイワックス100P」、「ハイワックス200P」、「ハイワックス400P」、「ハイワックス800P」、「ハイワックス410P」、「ハイワックス420P」等のハイワックスシリーズ;クライアントケミカルズ社製の商品名「リコセンPP6102」、「リコセンPP6502」、「リコセンPP7502」等のリコセンシリーズ等が挙げられる。なお、ポリプロピレン系ワックス(C)は、単独で用いても、二種以上を併用してもよい。さらに、目的とする諸物性を損なわない範囲でポリプロピレン系ワックス(C)以外のワックスをブレンドしてもよい。
【0041】
[(D)粘着付与剤]
本開示のホットメルト接着剤組成物は粘着付与剤(D)を含んでもよい。粘着付与剤(D)は、溶融時タック性を向上し得る。
【0042】
粘着付与剤(D)の軟化点は90℃以上、100℃以上、110℃以上、120℃以上、130℃以上、140℃以上、又は150℃以上、好ましくは110℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは130℃以上である。粘着付与剤(D)の軟化点は220℃以下、210℃以下、190℃以下、180℃以下、170℃以下、160℃以下、又は150℃以下であってよく、好ましくは190℃以下、例えば160℃以下である。上記範囲にあることが本開示の効果をより良好に奏する観点から好適である。軟化点は環球法により測定することができる。粘着付与剤(D)の軟化点が上記上限以下にあることが、溶融温度を低く設定でき、作業時間が短縮の観点からも好ましい。
【0043】
粘着付与剤(D)の例としては、ロジン樹脂、ロジンエステル、不均化ロジンエステル、水添ロジンエステル、重合ロジン、脂肪族系炭化水素樹脂、脂肪族芳香族共重合樹脂、芳香族系石油樹脂、水添石油樹脂、テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、変性テルペン樹脂、変性テルペン樹脂の水添物、テルペン性フェノール樹脂、水添テルペンフェノール樹脂、スチレン系樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂等が挙げられ、中でもポリオレフィンとの相溶性の観点から、好ましい例としては、水添石油樹脂、テルペン樹脂、又はテルペンフェノール樹脂が挙げられる。なお、粘着付与剤(D)は、分子内二重結合の有無、分子内極性基、分子内炭化水素基等の有無の観点からポリオレフィン等の他成分とは区別されるものである。
【0044】
粘着付与剤(D)の代表的市販品の例としては、荒川化学社製の商品名「アルコンP-90」、「アルコンP-100」、「アルコンP-115」、「アルコンP-140」、「アルコンM-90」、「アルコンM-100」、「アルコンM-115」、「アルコンM-135」等のアルコンシリーズ;出光興産社製の商品名「アイマーブS-100」、「アイマーブS-110」、「アイマーブP-100」、「アイマーブP-125」、「アイマーブP-140」等の「アイマーブ」シリーズ;ENEOS社製の「T-REZ HA125」、「T-REZ HB125」、「T-REZ OP501」等のT-REZシリーズや、ヤスハラケミカル社製の「YSレジンPX1250」、「YSレジンPX1150」、「YSレジンPX1000」、「YSレジンPX1150N」、「YSレジンTO125」、「YSレジンTO115」、「YSレジンTO105」、「YSポリスターT160」、「YSポリスターT145」、「YSポリスターT130」、「YSポリスターT115」、「YSポリスターT100」、「YSポリスターUH115」等のYSレジンシリーズ又はYSポリスターシリーズ;三井化学社製の「FTR6100」、「FTR6110」、「FTR6125」等のFTRシリーズ等が挙げられる。なお、粘着付与剤(D)は、単独で用いても、二種以上を併用してもよい。さらに、目的とする諸物性を損なわない範囲で軟化点90℃未満の粘着付与剤をブレンドすることができる。
【0045】
[(E)酸化防止剤]
本開示のホットメルト接着剤組成物は酸化防止剤(E)を含んでもよい。酸化防止剤(E)を含むことにより、熱安定性が向上し、本開示の効果を良好に奏する観点から好適となり得る。
【0046】
酸化防止剤(E)の例としては、例えば、ヒンダードフェノール類、ポリフェノール類、ビスフェノール類、ホスフェイト類、チオエーテル類、ハイドロサルタイト類、ベンゾイミダゾール類、芳香族2級アミン類等が挙げられる。
【0047】
酸化防止剤(E)の代表的市販品の例としては、BASF社製の商品名「イルガノックス1010」、「イルガノックス1035」、「イルガノックス1076」、「イルガノックス1098」、「イルガノックス1330」、「イルガノックス245」、「イルガノックス259」、「イルガノックス3114」、「イルガノックス565」、「イルガフォス168」等のイルガノックスシリーズ;ADEKA社製の商品名「アデカスタブAO-20」、「アデカスタブAO-30」、「アデカスタブAO-40」、「アデカスタブAO-50」、「アデカスタブAO-60」、「アデカスタブAO-80」、「アデカスタブAO-330」、「アデカスタブPEP-8」、「アデカスタブPEP-36」、「アデカスタブHP-10」、「アデカスタブ2112」、「アデカスタブAO-412S」等の「アデカスタブ」シリーズ等が挙げられる。なお、酸化防止剤(E)は、単独で用いても、二種以上を併用してもよい。
【0048】
[(F)無機充填剤]
本開示のホットメルト接着剤組成物は無機充填剤(F)を含んでもよい。無機充填剤(F)の添加により、接着性、たれ性、及び比重等の調整が可能である。
【0049】
無機充填剤(F)の例としては、炭酸カルシウム(重質炭酸カルシウム、表面未処理炭酸カルシウム、表面処理炭酸カルシウム(例えば脂肪酸処理炭酸カルシウム等)、針状結晶性炭酸カルシウム)、シリカ(ヒュームシリカ、疎水性シリカ、沈降性シリカ等)、タルク、マイカ(雲母)、クレー、クリソタイル、ワラストナイト、カーボンブラック、グラファイト、バルーン類(シラスバルーン、ガラスバルーン、シリカバルーン等)、無機繊維(ガラス繊維、金属繊維等)、酸化チタン、酸化アルミニウム、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、チタン酸カリウム、ホウ酸マグネシウム、二ホウ化チタン、アルミフレーク、アルミ粉、鉄粉等が挙げられる。なお、無機充填剤(F)は、単独で用いても、二種以上を併用してもよい。
【0050】
[(G)エラストマー]
本開示のホットメルト接着剤組成物はエラストマー(G)を含んでもよい。エラストマー(G)は弾性を示す高分子である。エラストマー(G)は熱硬化性又は熱可塑性であってよく、好ましくは熱可塑性である。エラストマー(G)は、結晶化度、ショアA硬度、及び/又は分子量等の観点から本明細書にて説明される他の成分とは区別されるものである。典型的にはエラストマー(G)は非晶性ではない。典型的にはエラストマー(G)はショアA硬度80未満である。典型的にはエラストマー(G)は重量平均分子量40,000以上である。
【0051】
エラストマー(G)のショアA硬度は20以上、30以上、40以上、50以上、60以上、又は70以上であってよく、好ましくは40以上である。エラストマー(G)のショアA硬度は80未満、75以下、70以下、65以下、又は60以下であってよい。エラストマー(G)のショアA硬度が上記範囲にあることが本開示の効果をより良好に奏する観点から好適である。
【0052】
エラストマー(G)のMFRは3g/10分以上、5g/10分以上、7g/10分以上、10g/10分以上、12g/10分以上、又は15g/10分以上であってよく、好ましくは5g/10分以上、より好ましくは7g/10分以上である。エラストマー(G)のMFRは40g/10分以下、30g/10分以下、20g/10分以下、15g/10分以下、又は10g/10分以下であってよい。MFRが上記の下限以上の範囲にあることが、溶融粘度が低くなり塗布安定性の観点からも好ましい。MFRはJIS K7210に基づき測定することができる。
【0053】
エラストマー(G)の重量平均分子量は40,000以上、50,000以上、75,000以上、100,000以上、200,000以上、300,000以上、又は500,000以上であってよく、100,000以上が好ましい。エラストマー(G)の重量平均分子量は5,000,000以下、2,000,000以下、1,500,000以下、1,200,000以下、1,000,000以下、800,000以下、600,000以下、400,000以下、又は200,000以下であってよく、1,000,000以下、例えば600,000以下が好ましい。重量平均分子量が上記範囲にあることが本開示の効果をより良好に奏する観点から好適である。
【0054】
エラストマー(G)としては、例えば、ゴム系エラストマー、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー(例えば、水添又は非水添スチレン系エラストマー)、塩化ビニル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、エステル系エラストマー、アミド系エラストマー等が挙げられる。相溶性の観点から、オレフィン系エラストマーが好ましい。オレフィン系エラストマーはプロピレンから誘導された繰り返し単位を有するオレフィン系エラストマーであってよい。
【0055】
エラストマー(G)の代表的市販品の例としては、三井化学社製の商品名「タフマーPN-2070」、「タフマーPN-3560」、等のタフマーPNシリーズ;ダウケミカル社製の商品名「INFUSE9807」、「INFUSE9817」、「INFUSE9990」等のINFUSEシリーズ、エクソンモービル社製の商品名「Vistamaxx6502」、「Vistamaxx6202」等のVistamaxxシリーズが挙げられる。なお、エラストマー(G)は、単独で用いても、二種以上を併用してもよい。
【0056】
[(H)可塑剤]
本開示のホットメルト接着剤組成物は可塑剤(H)を含んでもよい。可塑剤(H)は鎖状アルキル基含有低分子化合物やオレフィンオリゴマー等のオイル状物質である。可塑剤(H)はホットメルト接着剤を低粘度化することで塗布性や被着体への濡れ性を向上し得る。
【0057】
可塑剤(H)の重量平均分子量は100以上、300以上、又は500以上であってよい。可塑剤(H)の重量平均分子量は3000未満、2500以下、20000以下、1500以下、又は1000以下であってよく、2000以下が好ましい。重量平均分子量が上記範囲にあることが本開示の効果をより良好に奏する観点から好適である。
【0058】
可塑剤(H)の例としては、例えば、流動パラフィン、プロセスオイル、フタル酸系可塑剤、ブテンオリゴマー、ブタジエンオリゴマー、液状エチレン・プロピレンオリゴマー、液状ゴム等が挙げられるが、相溶性の観点から、ブテンオリゴマー又は液状エチレン・プロピレンオリゴマーが好ましい。
【0059】
可塑剤(H)の代表的市販品の例としては、日油社製の「日油ポリブテン0N」、「日油ポリブテン015N」、「日油ポリブテン3N」、「日油ポリブテン10N」、「日油ポリブテン30N」、「日油ポリブテン200N」等のポリブテンシリーズ;三井化学社製の「ルーカントLX004」、「ルーカントLX010」、「ルーカントLX020」、「ルーカントLX100」、「ルーカントLX200」、「ルーカントLX400」、「ルーカントLX900Z」等のルーカントシリーズ等挙げられる。なお、可塑剤(H)は、単独で用いても、二種以上を併用してもよい
【0060】
[(I)その他成分]
本開示のホットメルト接着剤組成物は上記以外に、必要に応じて、その他成分(I)を含んでもよい。その他成分(I)の例としては、着色剤(例えばベンガラ、酸化チタン、他の着色顔料、染料等);有機溶剤(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、リグロイン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、n-ヘキサン、ヘプタンや、イソパラフィン系高沸点溶剤等);密着剤(ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アミノシラン、メルカプトシラン、エポキシシラン等のシランカップリング剤、ポリオキシアルキレン骨格を有するグリシジルエーテル等のエポキシ化合物等);加硫促進剤(グアニジン類、アルデヒド-アミン類、アルデヒド-アンモニア類、チアゾール類、スルフェンアミド類、チオ尿素類、チウラム類、ジチオカルバメート類、ザンテート類等);加硫助剤(ステアリン酸、オレイン酸、およびパルミチン酸等の炭素数12以上の長鎖脂肪酸、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、および酸化鉛等の金属酸化物);老化防止剤(ヒンダードフェノール類、メルカプタン類、スルフィド類、ジチオカルボン酸塩類、チオウレア類、チオホスフェイト類、チオアルデヒド類等);紫外線吸収剤・光安定剤(ベンゾトリアゾール類、ヒンダードアミン類等);揺変剤(コロイダルシリカ、有機ベントナイト、脂肪酸アマイド、水添ひまし油等);上記以外の樹脂・ポリマー成分(熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等)が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、又は二種類以上を併用してもよい。
【0061】
本開示のホットメルト接着剤組成物は無溶剤型であってよく、溶剤は含んでいなくてもよい。
【0062】
本開示のホットメルト接着剤組成物は非反応型であってよく、反応性の添加剤を含んでいなくてもよい。
【0063】
[組成]
結晶性ポリオレフィン(A)の量は、ホットメルト接着剤組成物において、2.5重量%以上、5重量%以上、7.5重量%以上、10重量%以上、12.5重量%以上、15重量%以上、17.5重量%以上、20重量%以上、22.5重量%以上、又は25重量%以上であってよく、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上である。結晶性ポリオレフィン(A)の量は、ホットメルト接着剤組成物において、40重量%以下、35重量%以下、30重量%以下、25重量%以下、20重量%以下、又は15重量%以下であってよく、好ましくは30重量%以下である。
【0064】
非晶性ポリオレフィン(B)の量は、ホットメルト接着剤組成物において、2.5重量%以上、5重量%以上、7.5重量%以上、10重量%以上、12.5重量%以上、15重量%以上、17.5重量%以上、20重量%以上、22.5重量%以上、又は25重量%以上であってよく、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上である。非晶性ポリオレフィン(B)の量は、ホットメルト接着剤組成物において、40重量%以下、35重量%以下、30重量%以下、25重量%以下、20重量%以下、又は15重量%以下であってよく、好ましくは30重量%以下である。
【0065】
ポリプロピレン系ワックス(C)の量は、ホットメルト接着剤組成物において、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、30重量%以上、35重量%以上、40重量%以上、45重量%以上、又は50重量%以上であってよく、好ましくは20重量%以上、より好ましくは30重量%以上である。ポリプロピレン系ワックス(C)の量は、ホットメルト接着剤組成物において、75重量%以下、70重量%以下、65重量%以下、60重量%以下、55重量%以下、50重量%以下、又は45重量%以下であってよく、好ましくは65重量%以下、より好ましくは50重量%以下である。
【0066】
粘着付与剤(D)の量は、ホットメルト接着剤組成物において、2.5重量%以上、5重量%以上、7.5重量%以上、10重量%以上、12.5重量%以上、15重量%以上、17.5重量%以上、20重量%以上、22.5重量%以上、又は25重量%以上であってよく、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上である。粘着付与剤(D)の量は、ホットメルト接着剤組成物において、40重量%以下、35重量%以下、30重量%以下、25重量%以下、20重量%以下、又は15重量%以下であってよく、好ましくは30重量%以下である。
【0067】
酸化防止剤(E)の量は、ホットメルト接着剤組成物において、0.01重量%以上、0.05重量%以上、0.1重量%以上、0.3重量%以上、0.5重量%以上、0.75重量%以上、又は1重量%以上であってよく、好ましくは0.1重量%以上である。酸化防止剤(E)の量は、ホットメルト接着剤組成物において、5重量%以下、4重量%以下、3重量%以下、2重量%以下、又は1重量%以下であってよく、好ましくは3重量%以下である。
【0068】
無機充填剤(F)の量は、ホットメルト接着剤組成物において、1重量%以上、2.5重量%以上、5重量%以上、7.5重量%以上、10重量%以上、12.5重量%以上、又は15重量%以上であってよく、好ましくは2.5重量%以上、より好ましくは5重量%以上である。無機充填剤(F)の量は、ホットメルト接着剤組成物において、30重量%以下、25重量%以下、20重量%以下、15重量%以下、10重量%以下、又は5重量%以下であってよい。
【0069】
エラストマー(G)の量は、ホットメルト接着剤組成物において、0.5重量%以上、1重量%以上、2重量%以上、3重量%以上、4重量%以上、5重量%以上、6重量%以上、7重量%以上、8重量%以上、9重量%以上、又は10重量%以上であってよく、好ましくは1重量%以上、より好ましくは3重量%以上である。エラストマー(G)の量は、ホットメルト接着剤組成物において、25重量%以下、20重量%以下、15重量%以下、10重量%以下、7.5重量%以下、5重量%以下、又は2.5重量%以下であってよく、好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。
【0070】
本開示のホットメルト接着剤組成物におけるその他成分(I)の量は、各成分に応じて適宜選択されればよい。その他成分(I)の総量は、ホットメルト接着剤組成物において、0.1重量%以上、0.2重量%以上、0.5重量%以上、1重量%以上、2.5重量%以上、又は5重量%以上であってよい。その他成分(I)の総量は、ホットメルト接着剤組成物において、30重量%以下、25重量%以下、20重量%以下、15重量%以下、10重量%以下、7.5重量%以下、又は5重量%以下、2.5重量%以下、又は1重量%以下であってよく、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。その他成分(I)の各量は、ホットメルト接着剤組成物において、0.01重量%以上、0.05重量%以上、0.1重量%以上、0.3重量%以上、0.5重量%以上、0.75重量%以上、1重量%以上、又は2.5重量%以上であってよい。また、その他成分(I)の各量は、ホットメルト接着剤組成物において、10重量%以下、7.5重量%以下、5重量%以下、2.5重量%以下、又は1重量%以下であってよい。可塑剤(H)の量はその他成分(I)の量に準じてもよい。
【0071】
結晶性ポリオレフィン(A)と非晶性ポリオレフィン(B)との合計量は、ホットメルト接着剤組成物において、5重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、30重量%以上、35重量%以上、40重量%以上、45重量%以上、又は50重量%以上であってよく、好ましくは20重量%以上、より好ましくは30重量%以上である。結晶性ポリオレフィン(A)と非晶性ポリオレフィン(B)との合計量は、ホットメルト接着剤組成物において、80重量%以下、70重量%以下、60重量%以下、50重量%以下、40重量%以下、又は30重量%以下であってよく、好ましくは60重量%以下である。上記範囲にあることが、本開示の効果を良好に奏する観点から好適である。
【0072】
結晶性ポリオレフィン(A)の量は、非晶性ポリオレフィン(B)の量100重量部に対して、15重量部以上、25重量部以上、50重量部超、75重量部以上、100重量部以上、125重量部以上、150重量部以上であってよく、好ましくは25重量部以上であり、より好ましくは60重量部以上であり、さらに好ましくは75重量部以上である。結晶性ポリオレフィン(A)の量は、非晶性ポリオレフィン(B)の量100重量部に対して、500重量部以下、450重量部以下、400重量部以下、350重量部以下、300重量部以下、200重量部以下、150重量部以下、100重量部以下、75重量部以下、又は50重量部以下であってよく、好ましくは400重量部以下、より好ましくは300重量部以下、さらに好ましくは200重量部以下である。上記範囲にあることが、本開示の効果を良好に奏する観点から好適である。
【0073】
ポリプロピレン系ワックス(C)の量は、結晶性ポリオレフィン(A)と非晶性ポリオレフィン(B)との合計量100重量部に対して、50重量部超、60重量部以上、70重量部以上、80重量部以上、90重量部以上、100重量部以上、110重量部以上、又は120重量部以上であってよく、好ましくは60重量部以上、より好ましくは80重量部以上であり、さらに好ましくは90重量部以上である。ポリプロピレン系ワックス(C)の量は、結晶性ポリオレフィン(A)と非晶性ポリオレフィン(B)との合計量100重量部に対して、350重量部以下、300重量部以下、250重量部以下、200重量部以下、150重量部以下、又は100重量部以下であってよく、好ましくは300重量部以下、より好ましくは250重量部以下、さらに好ましくは200重量部以下である。上記範囲にあることが、本開示の効果を良好に奏する観点から好適である。上記下限以上であることにより、結晶化促進効果が向上し、金型離形性が良好となり得る。上記上限以下であることにより、接着性が向上し得る。
【0074】
粘着付与剤(D)の量は、結晶性ポリオレフィン(A)と非晶性ポリオレフィン(B)との合計量100重量部に対して、10重量部以上、20重量部以上、30重量部以上、40重量部以上、50重量部以上、又は60重量部以上であってよく、好ましくは20重量部以上であり、より好ましくは40重量部以上である。粘着付与剤(D)の量は、結晶性ポリオレフィン(A)と非晶性ポリオレフィン(B)との合計量100重量部に対して、150重量部以下、125重量部以下、100重量部以下、75重量部以下、50重量部以下、30重量部以下であってよく、好ましくは100重量部以下、より好ましくは75重量部以下である。上記範囲にあることが、本開示の効果を良好に奏する観点から好適である。
【0075】
無機充填剤(F)の量は、結晶性ポリオレフィン(A)と非晶性ポリオレフィン(B)との合計量100重量部に対して、5重量部以上、10重量部以上、15重量部以上、20重量部以上、25重量部以上、又は30重量部以上であってよく、好ましくは10重量部以上、より好ましくは20重量部以上である。無機充填剤(F)の量は、結晶性ポリオレフィン(A)と非晶性ポリオレフィン(B)との合計量100重量部に対して、75重量部以下、60重量部以下、50重量部以下、40重量部以下、30重量部以下、20重量部以下であってよく、好ましくは60重量部以下、より好ましくは40重量部以下である。上記範囲にあることが、本開示の効果を良好に奏する観点から好適である。
【0076】
エラストマー(G)の量は、結晶性ポリオレフィン(A)と非晶性ポリオレフィン(B)との合計量100重量部に対して、0.5重量部以上、1重量部以上、3重量部以上、5重量部以上、7重量部以上、10重量部以上、12重量部以上、又は15重量部以上であってよく、好ましくは3重量部以上、より好ましくは10重量部以上である。エラストマー(G)の量は、結晶性ポリオレフィン(A)と非晶性ポリオレフィン(B)との合計量100重量部に対して、60重量部以下、50重量部以下、40重量部以下、30重量部以下、20重量部以下、15重量部以下、又は10重量部以下であってよく、好ましくは40重量部以下、より好ましくは20重量部以下である。上記範囲にあることが、本開示の効果を良好に奏する観点から好適である。
【0077】
[物性]
本開示のホットメルト接着剤組成物は、ホットメルト接着剤の一般的な塗工温度である180℃における溶融粘度が5,000mPa・s以上、7,500mPa・s以上、10,000mPa・s以上、12,000mPa・s以上、15,000mPa・s以上、20,000mPa・s以上、又は25,000mPa・s以上であってよく、好ましくは10,000mPa・s以上、より好ましくは15,000mPa以上である。本開示のホットメルト接着剤組成物は、ホットメルト接着剤の一般的な塗工温度である180℃における溶融粘度が200,000mPa・s以下、150,000mPa・s以下、100,000mPa・s以下、50,000mPa・s以下、30,000mPa・s以下、又は20,000mPa・s以下であってよく、好ましくは150,000mPa・s以下、より好ましくは100,000mPa・s以下である。溶融粘度が上記範囲内であれば、被着体に塗布する際に液垂れや塗りムラ等が生じることがないため好ましい。上記溶融粘度は、パラレルプレート型のレオメーターを用いて、せん断速度4.3sec-1の条件で測定した値である。
【0078】
本開示のホットメルト接着剤組成物を160℃から33℃毎分で急冷した際の粘弾性挙動において、60℃における貯蔵弾性率が1×104Pa以上、5×104Pa以上、1×105Pa以上、5×105Pa以上、1×106Pa以上、2×106Pa以上、又は3×106Pa以上であってよく、好ましくは1×105Pa以上、より好ましくは1×106Pa以上である。本開示のホットメルト接着剤組成物を160℃から33℃毎分で急冷した際の粘弾性挙動において、60℃における貯蔵弾性率が1×108Pa以下、5×107Pa以下、1×107Pa以下、5×106Pa以下、3×106Pa以下、又は1×106Pa以下であってよい。上記貯蔵弾性率は、パラレルプレート型のレオメーターを用いて、せん断速度4.3sec-1の条件で測定した値である。
【0079】
本開示のホットメルト接着剤組成物を160℃から33℃毎分で急冷した際の粘弾性挙動において、tanδが1以下になる温度が30℃以上、40℃以上、50℃以上、60℃以上、又は70℃以上であってよく、好ましくは40℃以上、より好ましくは60℃以上である。本開示のホットメルト接着剤組成物を60℃から33℃毎分で急冷した際の粘弾性挙動において、tanδが1以下になる温度が100℃以下、90℃以下、80℃以下、又は70℃以下であってよく、好ましくは80℃以下である。なお、tanδは損失正接であり、貯蔵剪断弾性率(G’)と損失剪断弾性率(G”)の比、G”/G’である。tanδは、パラレルプレート型のレオメーターを用いて、せん断速度4.3sec-1の条件で測定した値である。
【0080】
<ホットメルト接着剤組成物の製造方法>
本開示のホットメルト接着剤組成物は、(A)~(C)を混合することにより製造することができる。例えば、ホットメルト接着剤組成物は、(A)~(C)を必要に応じてその他成分と共に、加熱混合撹拌機を用いて一括混合することにより製造することができる。
【0081】
<接着体及びその製造方法>
本開示の接着体は、第一基材、及び、ホットメルト接着剤組成物から形成されるホットメルト接着剤層を介して前記第一基材に接着している第二基材を有する。
【0082】
開示のホットメルト接着剤組成物を第一基材の一面に塗布して、ホットメルト接着剤層を形成する工程、塗布工程;前記ホットメルト接着剤層を介して第一基材と第二基材とを接着させる、接着工程;を含む。さらに、ホットメルト接着剤層を結晶化させるための養生工程、を含んでよい。
【0083】
[基材]
第一基材及び第二基材として使用される基材には、特に制限はなく、例えば、木質材;ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエステル、エポキシ樹脂等のプラスチック材;前記プラスチック材の発泡体;天然ゴム、合成ゴム等のゴム材;アルミニウム、鉄、ステンレス鋼等の金属材;セラミックス等の無機質材等を材質とするものが挙げられる。各基材の形状も特に制限はなく、例えば、シート状、箔状、板状又は成形体等でもよい。また、各基材は、一種の材質のみからなるものであってもよいし、二種以上から構成されるものであってもよい。基材の接着剤層が設けられる表面の材質は非金属であることが好ましく、より好ましくは上述したような樹脂であり、さらに好ましくは特にポリプロピレンをはじめとするポリオレフィンである。
【0084】
[塗布工程]
塗布工程における、基材への塗布方法としては、各種ホットメルトアプリケーターを用いることができ、例えば、スプレーガン、コンマコーター、ダイコーター、ロールコーター等を用いる方法が挙げられる。基材への塗布の際は、通常、140℃~200℃の温度で加熱して溶融させ、溶融状態で塗布することができる。離型フィルムや離型紙に塗布した後、別の基材へ熱転写して使用しても構わない。塗布後、冷却することにより、基材にホットメルト接着剤層を固化させてもよい。塗布工程後に得られるプレコート基材(接着剤層含有基材)は、そのまま、次の成形工程に供してもよく、あるいは保管してから次の工程に供することもできる。
【0085】
[接着工程]
接着工程においては、必要により、ホットメルト接着剤層を加熱活性化して再度溶融させてもよい。加熱活性化の手段としては、例えば、加熱、超音波、高周波、マイクロ波による方法等があるが、特に制限はない。再活性化は、プレコート基材と第二基材との圧着直前に行うことが好ましい。プレコート基材と第二基材との圧着は、ホットメルト接着剤組成物層面が固化する前に行う。圧着方法としては特に制限はなく、例えば、プレス圧着工法、真空成形工法等が挙げられる。第二基材は、加熱されていてもよいし、加熱されていなくてもよい。また、ホットメルト接着剤組成物層が再活性化された状態であれば、圧着時には加熱しなくてもよいが、必要に応じて加圧と同時に加熱してもよい。
【0086】
加熱活性化の温度はホットメルト接着層の表面温度で100~200℃、例えば100~180℃が好ましく、120℃~160℃がより好ましい。第一基材と第二基材との接着に係る圧着時の圧力は0.01~0.5MPaであってよく、0.01~0.20MPaが好ましく、0.01~0.10MPaがより好ましい。圧着時の時間は例えば1~300秒であってよく、1~60秒が好ましく、10~30秒がより好ましい。
【0087】
[金型との接触・剥離工程]
本開示の接着体の製造方法は、金型とホットメルト接着剤組成物とが接触する工程を有することが好ましい。本開示のホットメルト接着剤組成物は、塗布工程又は接着工程において金型とホットメルト接着剤組成物とが接触していてよい。例えば、本開示の接着体の製造方法は金型とホットメルト接着剤組成物とが接触する工程を含む真空成型工法に好適に用いることができる。
【0088】
金型の素材としては、限定されないが、金属製、セラミック製等が挙げられ、好適には金属製(例えばアルミ、鉄、ステンレス等の各種合金等)である。
【0089】
本開示の接着体の製造方法はさらにホットメルト接着剤組成物から形成されるホットメルト接着剤層を金型から剥離する工程を有してよい。金型からホットメルト接着剤層は冷却後において剥離されてよい。
【0090】
<自動車内装材及びその製造方法>
[自動車内装材]
本開示の自動車内装材は、自動車内装用成形品、及び、本開示のホットメルト接着剤組成物から形成されるホットメルト接着剤層を介して前記自動車内装用成形品に接着されている自動車内装用表皮材(以下、「表皮材」ともいう。)を含む。表皮材はホットメルト接着剤層含有表皮材(プレコート表皮材)由来の表皮材であってよい。自動車内装材の例としては、ドアトリム、インストルメントパネル、天井材、リアトレイ、ピラー等が挙げられる。
【0091】
自動車内装用成形品の材質としては、自動車内装材に用いられるものであれば特に制限はなく、例えば、紙、木等の木質材;ポリオレフィン(ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン・プロピレン共重合体等)、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエステル、エポキシ樹脂、ナイロン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、アクリル、ABS、PCABS等のプラスチック材;天然ゴム、合成ゴム等のゴム材;アルミニウム、鉄、ステンレス鋼等の金属材;セラミックス等の無機質材などが挙げられる。自動車内装用成形品は、一種の材質のみからなるものであってもよいし、二種以上から構成されるものであってもよい。自動車内装用成形品の接着剤層が設けられる表面の材質は、好ましくは非金属である上述した自動車内装用成形品材料であり、より好ましくは樹脂製である上述した自動車内装用成形品材料であり、さらに好ましくはポリプロピレンをはじめとするポリオレフィンである。
【0092】
表皮材は、自動車内装材に用いられる材質のものであれば特に制限はなく、例えば、ポリオレフィン、軟質ポリ塩化ビニル、ポリウレタン等のプラスチックシート;前記プラスチックの発泡体;天然ゴム、合成ゴム等のゴムシート;織布、不織布等のファブリック材;アルミニウム等の金属箔などが挙げられる。表皮材は、一層のみからなるものであってもよく、同種の材質又は異なる材質の二種以上の層を含むものであってもよい。二種以上の層を含む表皮材としては、例えば、前記のプラスチックシート、ゴムシート、ファブリック材、金属箔等の一種又は二種以上の層に、前記のプラスチック発泡体の一種又は二種以上の層をラミネートしたシート材などが挙げられる。このようなラミネートシート材としては、例えば、ポリオレフィン発泡体付きの軟質ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン発泡体付きのオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン発泡体付きのファブリックなどが挙げられる。表皮材の接着剤層が設けられる表面の材質は、好ましくは非金属である上述した表皮材材料であり、より好ましくは樹脂製である上述した表皮材材料であり、さらに好ましくはポリプロピレンをはじめとするポリオレフィンである。
【0093】
[自動車内装材の製造方法]
本開示の自動車内装材の製造方法は、上記の接着体の製造方法において、接着体が自動車内装材であって、第一基材が表皮材であって、かつ、第二基材が自動車内装用成形品であってよい。逆に、接着体が自動車内装材であって、第一基材が自動車内装用成形品であって、かつ、第二基材が表皮材である場合であってよい。
【0094】
自動車内装材の製造方法の一例は、本開示のホットメルト接着剤組成物を表皮材の裏面(例えば、表皮材の発泡層面)に塗布し、ホットメルト接着剤層含有表皮材(プレコート表皮材)を得る工程;得られたプレコート表皮材を遠赤外線ヒーター等で再活性化し、ホットメルト接着剤層を溶融させた後、ホットメルト接着剤層を介して表皮材と自動車内装用成形品とを圧着させる工程を含んでよい。さらに、ホットメルト接着層を結晶化させるための養生工程、を含んでよい。なお、基材と圧着させる工程で加熱圧着が可能な場合、遠赤外線ヒーター等による再活性化が不要な場合もある。なお、表皮材の裏面とは、表皮材と自動車内装用成形品とを接着する際に自動車内装用成形品と対向する面を意味する。
【実施例0095】
以下、実施例および比較例を挙げて本開示をより具体的に説明するが、本開示はこれによって何ら限定されるものではない。
【0096】
<実施例1~13および比較例1~5>
以下の表1に示す組成にて、下記に示す各成分を、混合撹拌機(森山製作所製双腕式ニーダーSV-1-1)を用いて、180℃で混合することにより、ホットメルト接着剤組成物を得た。
【0097】
【0098】
[成分A]
・A-1:ダウケミカル社製VERSIFY4200(融点84℃、ショアA硬度94、プロピレン・エチレン共重合体)
・A-2:ダウケミカル社製VERSIFY3000(融点108℃、ショアA硬度96、プロピレン・エチレン共重合体)
[成分B]
・B-1:エボニック社製VESTOPLAST792(軟化点108℃、プロピレン・エチレン・ブテン共重合体)
・B-2:REXTAC社製RT2585(軟化点132℃、プロピレン・エチレン共重合体)
[成分C]
・C-1:三洋化成工業社製ビスコール660-P(軟化点145℃、重量平均分子量8000、ポリプロピレンワックス)
・C-2:三洋化成工業社製サンワックス171-P(軟化点107℃、重量平均分子量9500、ポリエチレンワックス)
[成分D]
・D-1:荒川化学社製アルコンP140(軟化点140℃、水添石油系)
・D-2:荒川化学社製アルコンP90(軟化点90℃、水添石油系)
・D-3:ヤスハラケミカル社製YSレジンPN1150(軟化点115℃、テルペン系)
・D-4:ヤスハラケミカル社製YSポリスターT145(軟化点145℃、テルペンフェノール系)
[成分E]
・E-1:BASF社製イルガノックス1010(融点110℃、ヒンダードフェノール系)
・E-2:BASF社製イルガフォス168(融点183℃、リン系)
[成分F]
・F-1:白石カルシウム社製炭酸カルシウム300メッシュ品
[成分G]
・G-1:三井化学社製タフマーPN-2070(融点140℃、ショアA硬度75、プロピレン系エラストマー)
・G-2:エクソンモービル社製VISTAMAXX6202(ビカット軟化点48℃、ショアA硬度61、プロピレン系エラストマー)
【0099】
実施例1~13および比較例1~4で得られたホットメルト接着剤組成物を用いて、次のとおり溶融粘度測定、降温粘弾性の測定を行った。また、次のとおり接着試験用試料を作製し、金型剥離性、初期クリープ、接着強度、耐熱クリープの評価を行った。
【0100】
[溶融粘度]
パラレルプレート型のレオメーターを用いて、温度180℃、せん断速度4.3sec-1の条件で測定した。結果を表1に示す。
【0101】
[急冷時の貯蔵弾性率及びtanδが1以下になる温度]
パラレルプレート型のレオメーターを用いて、160℃から33℃毎分で急冷した際の粘弾性挙動をせん断速度4.3sec-1の条件で測定した。60℃における貯蔵弾性率を記録した。また、tanδが1以下になる温度を記録した。結果を表1に示す。tanδが1以下になる温度は金型離型性の指標として用いることができる。測定初期において、ホットメルト接着剤は溶融状態にあるため、弾性より粘性が優位に働くため、tanδは1以上を示すが、急冷することでホットメルト接着剤が固化するため、粘性より弾性が優位に働くようになる。tanδが1以下になる温度はホットメルト接着剤が固化する温度と考えることができる。
【0102】
[接着試験用試料1の作製]
上記接着剤を180℃にて、表皮材(TPO/PPF、総厚4mm)の表面に、ロールコーターを用いて、接着層が100g/平米になるように塗布した。次に、接着剤塗布後1日以内に本表皮材を160℃以上になるまで遠赤外線ヒーターで加熱した直後、アルミ板(厚み1mm)に重ね合わせ、0.1MPa、15秒の条件で圧締し、積層体(接着試験用試料1)を得た。
【0103】
[金型剥離性]
積層体(接着試験用試料1)を得てから一分以内に、プッシュプルゲージを用いて、90度剥離での剥離強度(N/25mm)を測定した。
〇:10N/25mm以上
×:10N/25mm未満
【0104】
[接着試験用試料2の作製]
上記接着剤を180℃にて、表皮材(TPO/PPF、総厚4mm)の表面に、ロールコーターを用いて、接着層が100g/平米になるように塗布した。次に、接着剤塗布後1日以内に本表皮材を160℃以上になるまで遠赤外線ヒーターで加熱した直後、PPボード(厚み2mm)に重ね合わせ、0.1MPa、15秒の条件で圧締し、積層体(接着試験用試料2)を得た。
【0105】
[初期クリープ]
積層体(接着試験用試料2)を得た後、60℃雰囲気中において200g/25mmの荷重を90度角方向に加え、5分後の剥離長さ(mm)を測定した。結果を表1に示す。
BA:基材側での界面破壊
FB:表皮材の材料破壊
CF:接着剤の凝集破壊
破壊状態の後の数字は破壊状態の割合を示す。
【0106】
[接着強度]
積層体(接着試験用試料2)を25℃24時間養生後、180度剥離での剥離強度(N/25mm)を測定した。PPボードを治具で固定し、表皮材を引っ張る形で剥離した。剥離速度は200mm毎分で測定した。結果を表1に示す。
【0107】
[耐熱クリープ]
積層体(接着試験用試料2)を25℃24時間養生後、80℃雰囲気中において100g又は200g/25mmの荷重を90度角方向に加え、24時間後の剥離長さ(mm)を測定した。結果を表1に示す。
【0108】
[結果]
実施例1~13の試料では、良好な金型離型性、接着特性が得られた。比較例1では、結晶性ポリオレフィン(A)が配合されていないため、金型離型性および耐熱クリープが低下した。比較例2および3では、ポリプロピレン系ワックスの配合量が本開示の範囲外であるため、金型離型性が低下した。比較例4では、ポリエチレン系ワックスを使用したため、金型離型性および耐熱クリープが低下した。
本開示のホットメルト接着剤組成物は、例えばVOC排出のない無溶剤型接着剤として利用可能であり、樹脂基材、特にオレフィン基材に対して優れた接着性および耐熱性を有する。また、金型から容易に剥離できる作業性が得られるため(例えば、真空成型工法で接着した際に)、自動車内装用接着剤として好適に使用することができる。