(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047888
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】磁気消去システム
(51)【国際特許分類】
B43L 19/00 20060101AFI20240401BHJP
B43L 1/00 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
B43L19/00 D
B43L1/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153644
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】504462711
【氏名又は名称】Zero Lab株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(72)【発明者】
【氏名】古賀 律生
(57)【要約】
【課題】 磁気消去具の移動を容易にする磁気消去システムを提供する。
【解決手段】 本発明の磁気消去システム100は、磁界を作用させて文字、図形、記号等を描画可能な磁気シート110と、磁気シート110のY方向に延在し、上端部172と下端部174との間に配置された磁石176からの磁界を磁気シート110に印加することで描画された文字、図形、記号等の消去を可能にする磁気消去具170と、磁気消去具170の上端部172と下端部174のX方向の移動が同期するように、磁気消去具170を移動させる移動機構180、190とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁界を作用させて文字、図形、記号等を描画可能な磁気泳動型の磁気シートと、
磁気シートの第1の方向に延在し、一方の端部と当該一方の端部に対向する他方の端部とを含み、前記一方の端部と前記他方の端部との間に配置された磁石からの磁界を磁気シートに印加することで描画された文字等の消去を可能にする磁気消去具と、
前記磁気消去具を前記第1の方向と直交する第2の方向に移動させる移動手段とを含み、
前記移動手段はさらに、前記一方の端部と前記他方の端部の第2の方向の移動を同期化させる同期化手段を含む、磁気消去システム。
【請求項2】
磁気消去システムはさらに、前記移動手段による前記磁気消去具の移動に連動して前記磁石を回転させる回転手段を含む、請求項1に記載の磁気消去システム。
【請求項3】
前記磁気シートは、磁性材料を包含するマイクロカプセルを複数含み、前記磁性粒子は、前記磁気消去具の磁石から磁界に応答してマイクロカプセル内の中心部に凝集して静止する、請求項1に記載の磁気消去システム。
【請求項4】
前記同期化手段は、ラックアンドピニオン機構を含む、請求項1に記載の磁気消去システム。
【請求項5】
前記ラックアンドピニオン機構は、前記一方の端部から前記他方の端部に延在する同期軸と、前記同期軸の第1の端部に取付けられた第の1ピニオンギアと、前記同期軸の第2の端部に取付けられた第2のピニオンギアと、前記磁気シートの上端部に取付けられた第1のラックと、前記磁気シートの下端部に取付けられた第2のラックとを含み、
第1のピニオンギアが第1のラックに係合し、第2のピニオンギアが第2のラックに係合する、請求項4に記載の磁気消去システム。
【請求項6】
前記同期軸には、第1のギアが接続され、前記磁石には、第1のギアと係合する第2のギアが接続され、前記磁石は、前記同期軸によって回転される、請求項5に記載の磁気消去システム。
【請求項7】
前記第1のギアと第2のギアとのギア比によって前記磁石の回転速度が調整される、請求項6に記載の磁気消去システム。
【請求項8】
前記同期軸は、第1のピニオンギアに接続された第1の部分と、当該第1の部分から分離され、第2のピニオンギアに接続された第2の部分とを含み、第1の部分には第1のギアが接続され、第2の部分には前記第1のギアと同一の第2のギアが接続され、
前記磁石の一方の端部には、第1のギアと係合する第3のギアが接続され、他方の端部には、第2のギアと係合する第4のギアが接続され、第3のギアと第4のギアは同一の構成であり、
前記磁石は、第1および第2の部分によって回転される、請求項5に記載の磁気消去システム。
【請求項9】
前記移動手段は、モータと、当該モータの回転を前記同期軸に伝達する伝達部材とを含む、請求項5に記載の磁気消去システム。
【請求項10】
前記移動手段は、前記伝達部材を第1の位置と第2の位置との間で移動させる機構を含み、第1の位置にあるとき、前記伝達部材は前記同期軸に係合し、第2の位置にあるとき、前記伝達部材は同期軸と係合しない、請求項9に記載の磁気消去システム。
【請求項11】
前記同期化手段は、ワイヤ機構を含む、請求項1に記載の磁気消去システム。
【請求項12】
前記ワイヤ機構は、前記磁気シートの上端部に取付けられた第1のワイヤと、前記磁気シートの下端部に取り付けられた第2のワイヤとを含み、前記ワイヤ機構は、第1および第2のワイヤを同一方向に同一速度で移動させ、
前記磁気消去具の一方の端部が第1のワイヤに固定され、他方の端部が第2のワイヤに固定される、請求項11に記載の磁気消去システム。
【請求項13】
前記ワイヤ機構は、前記磁気シートの上部側の各コーナーに設けられた第1のプーリおよび第2のプーリと、下部側の各コーナーに設けられた第3のプーリおよび第4のプーリとを含み、第1のプーリと第2のプーリ間の第1のワイヤの移動が第3のプーリと第4のプーリ間の第2のワイヤの移動に同期するように、第1ないし第4のプーリ間にワイヤが巻回される、請求項12に記載の磁気筆記システム。
【請求項14】
移動手段はさらに、ワイヤを駆動するための第1のモータを含む、請求項11に記載の磁気筆記システム。
【請求項15】
前記移動手段はさらに、前記磁石を回転させるための第2のモータを前記磁気筆記具内に含む、請求項14に記載の磁気筆記システム。
【請求項16】
前記移動手段はさらに、第1のプーリと第2のプーリの間か第3のプーリと第4のプーリの間に、ワイヤによって回転される第5のプーリを含み、第5のプーリは、前記磁石の回転軸に接続される、請求項14に記載の磁気筆記システム。
【請求項17】
前記移動手段は、前記モータまたは第1のモータのオン/オフを指示するためのユーザー入力を含む、請求項9または14に記載の磁気消去システム。
【請求項18】
前記移動手段は、磁気消去具の位置を検出する検出手段を含み、前記同手段は、前記検出手段の結果に応答して前記モータを制御する、請求項9に記載の磁気消去システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気シートまたは磁気パネル上に描画した文字、図形、記号等を消去するための磁気消去システムに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気筆記システムに関し、磁気シートに磁界を作用させて移動軌跡に応じた文字、図形、記号等を描画するための磁気ペン(特許文献1)、磁気シートに描画された文字、図形、記号を消去するための磁気消去具(特許文献2)、磁性材料を包含したマイクロカプセルを2次元状に複数配置した磁気シートまたは磁気パネル(特許文献3)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6179788号公報
【特許文献2】特許第6213886号公報
【特許文献3】特許第6986791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
磁気シートのサイズが大きくにつれ、磁気ペンによって描画する範囲が広がり、それに伴い、磁気消去具によって消去する範囲も大きくなりつつある。例えば、
図1に示すように、磁気シート10上で磁気消去具20を水平方向に移動させることで、大きな範囲を比較的容易に消去することができる。磁気シート10には、磁気消去具20の水平方向の移動をガイドするための上部ガイド12と下部ガイド14とが設けられ、磁気消去具20の上端部22と下端部24とが上部ガイド12と下部ガイド14を摺動できるようになっている。
【0005】
ユーザーは、磁気シート10の消去を行うとき、磁気消去具20をF方向に押圧し、磁気消去具20を水平方向に移動させるが、ユーザーが磁気消去具20を操作する位置や操作する方向によって、磁気消去具20が傾き、上端部22や下端部24のコーナーPにカジリが発生し、磁気消去具20の水平移動が困難になってしまう。このことは、同時に、消去範囲のムラや消し残しを生じさせてしまう。
【0006】
その解決策として、磁気消去具20の水平方向の幅Lを十分大きくし、上端部22と下端部24が上部ガイド12と下部ガイド14と摺動する面積を増やすことで、磁気消去具20の傾きを抑制することが可能である。しかしながら、幅Lを大きくすると、磁気消去具20の面積S1が大きくなり、磁気シート20の描画面積S2に対する割合(有効描画範囲比=S1:S2)が大きくなってしまい、事実上、描画可能な面積が制限され、実用上に問題が生じてしまう。さらに、幅Lを大きくすることは、磁気筆記具の小型化、軽量化、低コスト化の障害となり得る。
【0007】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、磁気消去具の移動を容易にし、かつ磁気消去具の小型化、軽量化、低コスト化が可能な磁気消去システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る磁気消去システムは、磁界を作用させて文字、図形、記号等を描画可能な磁気泳動型の磁気シートと、磁気シートの第1の方向に延在し、一方の端部と当該一方の端部に対向する他方の端部とを含み、前記一方の端部と前記他方の端部との間に配置された磁石からの磁界を磁気シートに印加することで描画された文字等の消去を可能にする磁気消去具と、前記磁気消去具を前記第1の方向と直交する第2の方向に移動させる移動手段とを含み、前記移動手段はさらに、前記一方の端部と前記他方の端部の第2の方向の移動を同期化させる同期化手段を含む。
【0009】
ある態様では、磁気消去システムはさらに、前記移動手段による前記磁気消去具の移動に連動して前記磁石を回転させる回転手段を含む。ある態様では、前記磁気シートは、磁性材料を包含するマイクロカプセルを複数含み、前記磁性粒子は、前記磁気消去具の磁石から磁界に応答してマイクロカプセル内の中心部に凝集して静止する。ある態様では、前記同期化手段は、ラックアンドピニオン機構を含む。ある態様では、前記ラックアンドピニオン機構は、前記一方の端部から前記他方の端部に延在する同期軸と、前記同期軸の第1の端部に取付けられた第の1ピニオンギアと、前記同期軸の第2の端部に取付けられた第2のピニオンギアと、前記磁気シートの上端部に取付けられた第1のラックと、前記磁気シートの下端部に取付けられた第2のラックとを含み、第1のピニオンギアが第1のラックに係合し、第2のピニオンギアが第2のラックに係合する。ある態様では、前記同期軸には、第1のギアが接続され、前記磁石には、第1のギアと係合する第2のギアが接続され、前記磁石は、前記同期軸によって回転される。ある態様では、前記第1のギアと第2のギアとのギア比によって前記磁石の回転速度が調整される。ある態様では、前記同期軸は、第1のピニオンギアに接続された第1の部分と、当該第1の部分から分離され、第2のピニオンギアに接続された第2の部分とを含み、第1の部分には第1のギアが接続され、第2の部分には前記第1のギアと同一の第2のギアが接続され、前記磁石の一方の端部には、第1のギアと係合する第3のギアが接続され、他方の端部には、第2のギアと係合する第4のギアが接続され、第3のギアと第4のギアは同一の構成であり、前記磁石は、第1および第2の部分によって回転される。ある態様では、前記移動手段は、モータと、当該モータの回転を前記同期軸に伝達する伝達部材とを含む。ある態様では、前記移動手段は、前記伝達部材を第1の位置と第2の位置との間で移動させる機構を含み、第1の位置にあるとき、前記伝達部材は前記同期軸に係合し、第2の位置にあるとき、前記伝達部材は同期軸と係合しない。ある態様では、前記同期化手段は、ワイヤ機構を含む。ある態様では、前記ワイヤ機構は、前記磁気シートの上端部に取付けられた第1のワイヤと、前記磁気シートの下端部に取り付けられた第2のワイヤとを含み、前記ワイヤ機構は、第1および第2のワイヤを同一方向に同一速度で移動させ、前記磁気消去具の一方の端部が第1のワイヤに固定され、他方の端部が第2のワイヤに固定される。ある態様では、前記ワイヤ機構は、前記磁気シートの上部側の各コーナーに設けられた第1のプーリおよび第2のプーリと、下部側の各コーナーに設けられた第3のプーリおよび第4のプーリとを含み、第1のプーリと第2のプーリ間の第1のワイヤの移動が第3のプーリと第4のプーリ間の第2のワイヤの移動に同期するように、第1ないし第4のプーリ間にワイヤが巻回される。ある態様では、移動手段はさらに、ワイヤを駆動するための第1のモータを含む。ある態様では、前記移動手段はさらに、前記磁石を回転させるための第2のモータを前記磁気筆記具内に含む。ある態様では、前記移動手段はさらに、第1のプーリと第2のプーリの間か第3のプーリと第4のプーリの間に、ワイヤによって回転される第5のプーリを含み、第5のプーリは、前記磁石の回転軸に接続される。ある態様では、前記移動手段は、前記モータのオン/オフを指示するためのユーザー入力を含む。ある態様では、前記移動手段は、磁気消去具の位置を検出する検出手段を含み、前記同手段は、前記検出手段の結果に応答して前記モータを制御する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、磁気消去具を第2の方向に移動させるとき、一方の端部と他方の端部の第2の方向の移動を同期化させるようにしたので、磁気消去具のカジリないし傾斜が抑制され、磁気消去具を第2の方向に容易に平行移動させることができる。これにより、消去範囲のムラや消し残りのない均一な消去を行うことが可能になる。また、磁気消去具の第2の方向の幅を小さくすることができるため、磁気シートの有効描画範囲比が向上し(磁気シートの描画面積が制限されず)、磁気消去具の小型化、軽量化、低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】従来の磁気消去システムの課題を説明する図である。
【
図2】本発明の第1の実施例に係る磁気消去システムの全体構成を示す斜視図である。
【
図3】
図3(A)は、磁気消去具の内部構成を示すための前面から見たときの透視図、
図3(B)は、磁気消去具の内部構成を示すための側方から見たときの透視図、
図3(C)は、ラックアンドピニオン機構を示す正面図である。
【
図4】本発明の第2の実施例に係る磁気消去システムの内部構成を示す図である。
【
図5】本発明の第3の実施例に係る磁気消去システムの全体構成を示す図である。
【
図6】本発明の第3の実施例に係る磁気消去システムの内部構成を示す図である。
【
図7】本発明の第4の実施例に係る磁気消去システムの全体構成を示す図である。
【
図8】本発明の第5の実施例に係る磁気消去システムの全体構成を示す図である。
【
図9】
図9(A)は、第5の実施例によるワイヤ機構および磁気消去具の詳細を示す図、
図9(B)は、上端支持部の概略拡大断面図、
図9(C)は、下端支持部の概略拡大断面図である。
【
図10】
図10(A)は、本発明の第6の実施例に係る磁気消去システムの構成を示す図、
図10(B)は、上端支持部の概略拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る磁気消去システムは、磁性粒子を包含するマイクロカプセルを2次元状に配置した薄板状の磁気泳動型の磁気シート(または磁気パネル)を含み、この磁気シートの描画面上で磁気筆記具(例えば、特許第6179788号に示すように、先端に磁石を含む磁気ペン)を移動させたとき、磁気筆記具からの磁力線または磁界を磁気シートに作用させ、マイクロカプセル内の磁性粒子を表面近傍に凝集、静止させることで磁気筆記具の移動軌跡に応じた文字、図形、絵等の描画を可能にし、また、磁気消去具(例えば、特許第6213886号に示すように、磁石を回転させることで磁界を変化させる磁気消去具)からの磁力線または磁界を磁気シートの描画面または裏面に作用させ、マイクロカプセル内の磁性粒子を中心部に凝集、静止させることで描画された文字等の消去を可能にする。
【0013】
なお、以下の実施例で参照する図面は、発明を理解し易くするために各部を強調しており、実際の製品の大きさや形状とは必ずしも同一ではないことに留意すべきである。
【実施例0014】
次に、本発明の実施例について図面を参照して説明する。
図2は、本発明の第1の実施例に係る磁気消去システムの全体構成を示す図であり、磁気シートを前面(描画面)から見た図ある。同図に示すように、本実施例の磁気消去システム100は、薄板状の磁気シート110、磁気シート110の裏面側を保持する磁気シート保持板120、磁気シート110の表面側を固定する上部フレーム130、下部フレーム140、側部フレーム150、160、磁気シート110上に描画された文字、図形等を消去するための磁気消去具170、磁気消去具170を水平方向(X方向)に移動させるための移動機構180、190を含んで構成される。移動機構180、190は、後述するように磁気消去具170の上端部172と下端部174の水平移動を同期化させるための同期機構を含む。
【0015】
磁気消去システム100は、磁気シート110上に文字等を描画したり、描画した文字等を保持するための電力を必要としない。また、描画された文字等の消去は磁力によって行われ、必ずしも電力を必要としない。仮に必要としても、それは磁気消去具180を移動させるための僅かな電力である。さらに消去の際に消去カスやごみを発生させることもない。それ故、磁気消去システム100は、電力を必要とする液晶パネルを用いた筆記システムやマーカーにより描画する電子黒板と比較すると、非常に経済的であり、かつ環境にも優れたデバイスである。
【0016】
磁気シート110は、特に限定されないが、例えば矩形状を有し、そのサイズは、例えば、50インチ以上であることができる。このような磁気シート110は、オフィスや家庭における壁掛け用の磁気表示システムまたは磁気消去システムとして使用することができる。
【0017】
磁気シート110は、例えば、特許第6986791号に示すように、透明な非磁性材料(例えば、樹脂製)から構成された上部シートと下部シートとの間に、磁性粒子等を包含した複数のマイクロカプセルを2次元状に配置する。磁気シート110の一方の表面(例えば、上部シート)は、磁気ペン(ここには図示しない)による描画面を提供する。描画面上で磁気ペンを移動させたとき、磁気ペンから生じた磁力線または磁界がマイクロカプセル内の磁性粒子に作用し、マイクロカプセルの表面に磁性粒子が移動し、磁気ペンの軌跡に応じた描画が行われる。
【0018】
磁気シート110の裏面全体は、磁気シート保持版120によって支持される。磁気シート保持版120は、非磁性材料から構成される。磁気シート110の表面側の外縁は、上部フレーム130、下部フレーム140、側部フレーム150、160の4つの枠体によって固定される。
【0019】
磁気消去具170は、磁気シート110の垂直方向(Y方向)に延在する部材であって、上端部172および下端部174を有する。上端部172は、上部フレーム130内に設けられた移動機構180に接続され、下端部174は、下部フレーム140内に設けられた移動機構190に接続され、この移動機構180、190により、磁気消去具170は、磁気シート110上を水平方向に移動することができる。
【0020】
また、磁気消去具170の内部には、磁石が収容されている。磁石は、回転型であってもうよいし、静止型であってもよい。
図2(B)は、磁気消去具170の水平移動に伴い回転可能に取り付けられた磁石176Aを示し、
図2(C)は、磁気消去具170の内部に固定された磁石176Bを示している。磁石176A、176Bの形状、サイズ、配列は特に限定されないが、好ましくは、磁石176Aは、回転軸178の軸方向にN極とS極とが着磁され、磁気消去具170を水平方向に移動させたとき、磁石176AのN極からS極に向かう磁力線が回転しながら水平方向に移動するように磁気シート110に印加される。一方、磁石176Bは、N極とS極とが水平方向に配列され、磁気消去具170を水平方向に移動させたとき、磁石176BのN極からS極に向かう磁力線が水平方向に移動するように磁気シート110に印加され、これにより、磁気シート110に描画された文字等が消去される。
【0021】
次に、本実施例の磁気消去具と移動機構の詳細について説明する。
図3(A)は、磁気消去具と移動機構を前面から見たときの透視図、
図3(B)は、磁気消去具と移動機構の内部構成を示すための側方から見たときの透視図、
図3(C)は、ラックアンドピニオン機構を示す正面図である。なお、各部の構成を分かり易くするため、同一部分に同一のハッチングを示していることに留意すべきである。
【0022】
磁気シート110は、磁気シート保持板120によって保持され、磁気シート保持板120の上端部には、上部フレーム130が取り付けられ、下端部には、下部フレーム140が取り付けられる。
【0023】
上部フレーム130は、X方向に溝が形成された概ねコ字型の断面形状を有する。下部フレーム140は、上部フレーム130と同一に構成される。上部フレーム130の側壁132の内側には、X方向に延在するラック182が形成され、同様に、下部フレーム140の側壁142の内側には、X方向に延在するラック192が形成される。上部フレーム130のラック182は、磁気消去具170の上端部に設けられたピニオンギア184と係合し、下部フレーム140のラック192は、磁気消去具170の下端部に設けられたピニオンギア194と係合する。ピニオンギア184は、ピニオンギア194と同一に構成される。
図3(C)に、ラックアンドピニオンの構成を示す。つまり、移動機構180、190は、ラックアンドピニオン機構により磁気消去具170の水平方向の移動を行う。
【0024】
磁気消去具170は、例えば、プラスチック等の非磁性材料から構成された概ね矩形状のハウジング200を有する。ハウジング200は、上部フレーム130の溝内に入り込む上端部202と、下部フレーム140の溝内に入り込む下端部204と、上端部202および下端部204に接続された中央部206とを含み、これらの内部に空間が形成される。
【0025】
ハウジング200の内部には、上端部202から下端部204まで延在する同期軸210が収容される。同期軸210は、一方の端部が上端部202の端面に回転可能に取り付けられ、他方の端部が下端部204の端面に回転可能に取り付けられ、Y方向と平行になるように配置される。さらに同期軸210の一方の端部には、ピニオンギア184が接続され、他方の端部には、ピニオンギア194が接続され、ピニオンギア184は、ハウジング200の上端部202の側面に形成された開口を介してラック182と係合し、同様に、ピニオンギア194は、ハウジング200の下端部204の側面に形成された開口を介してラック192と係合する。磁気消去具170に水平方向の操作力を加えたとき、ハウジング200の上端部202と下端部204とは、ラックアンドピニオン機構により水平方向に同期して移動する。
【0026】
さらにハウジング200の中央部206の内部には、磁石220が収容される。磁石220の一方の端部に取り付けられた回転軸222は、中央部206と上端部202とを接続する垂直な隔壁208によって回転可能に支持され、他方の端部に取り付けられた回転軸224は、中央部206と下端部204とを接続する垂直な隔壁209によって回転可能に支持される。回転軸222には、ギア(平歯車)226が取り付けられ、このギア226は、同期軸210に取付けられたギア(平歯車)212と係合する。これにより、同期軸210が回転したとき、ギア212、226を介して磁石220が回転される。磁石220の回転速度は、ギア212とギア226とのギア比によって調整される。磁石220は、例えば、
図2(B)の磁石176Aのように構成される。
【0027】
図3(B)に示すように、ハウジング200の裏面は、磁気シート110から一定の距離に離間され、つまり、磁気シート110に非接触である。磁石220と磁気シート110との間の距離は、磁石220から生じた磁力線または磁界が適切にマイクロカプセル内の磁性材料に作用するように調整される。磁気消去具170は、磁石220の高さを調整するための調整機構を含むようにしてもよい。また、ハウジング200のY方向のガタツキを抑制するため、ハウジング200の下端部204と下部フレーム140との間に摺動性の優れた緩衝材230を取り付けるようにしてもよいし、あるいは緩衝材230に代えて、回転するコロまたはローラを取り付けるようにしてもよい。緩衝材230を使用するとゴミなどが生じるが、コロまたはローラを使用すれば、ゴミなどの発生を抑制することができる。
【0028】
磁気シート110に描画された文字等を消去するとき、ユーザーは、磁気消去具170を操作し、磁気消去具170を水平方向(X方向)に移動させる。このとき、磁気消去具170の上端部と下端部の水平方向の移動は、同期軸210を含むラックアンドピニオン機構によって同期されるため、磁気消去具170を傾斜することなく水平方向に容易に移動させることができる。磁気消去具170の姿勢が維持されることで、水平方向に移動しながら回転する磁力線が均一に磁気シート110に印加され、消去ムラを生じさせることなく文字等をきれいに消去することができる。
【0029】
また、磁気消去具170の移動機構180、190に同期機構を持たせることで、磁気消去具170の水平方向の幅をより小さくすることができる。このことは、磁気シート110の有効な描画面積が減少することを防止し、同時に磁気消去具170の小型化、軽量化、低コスト化を図ることが可能になる。
【0030】
上記実施例では、磁石220を回転させる例を示したが、磁石220は、
図2(C)の磁石176Bに示すように磁気消去具170内で静止または固定されてもよい。この場合、磁石220の回転軸222、224は、隔壁208、209に固定され、かつギア226や同期軸210のギア212は不要である。
【0031】
次に、本発明の第2の実施例について
図4を参照して説明する。
図3と同一構成については、同一参照番号を付してある。先の第1の実施例では、1つの同期軸210によって、ハウジング200の上端部202と下端部204の水平方向の移動を同期させるようにしたが、第2の実施例では、同期軸210を上下で2つに分割し、2つの同期軸を磁石220によって同期させる。
【0032】
同図に示すように、ハウジング200の上端部202には、ピニオンギア184とギア212に接続された第1の同期軸210Aが取り付けられる。同様に、ハウジング200の下端部204には、ピニオンギア194とギア214に接続された第2の同期軸210Bが取り付けられる。第2の同期軸210Bは、第1の同期軸210Aと同様に、ギア214が接続され、磁石220の他方の回転軸214にはギア228が接続され、ギア214は、ギア228と係合する。ギア214は、ギア212と同一構成であり、ギア228は、ギア226と同一構成である。
【0033】
第2の実施例によれば、同期軸210を同期軸210A、210Bに分割することで、ハウジング200の内部空間が広がり、磁石220のサイズやレイアウトの自由度を高めることができる。
【0034】
次に、本発明の第3の実施例について説明する。第1および第2の実施例では、ユーザーが磁気消去具170をX方向に手動で操作する例を示したが、この場合、ユーザーのX方向の操作速度にばらつきが生じると、消去むらが生じ得る。また、磁気消去具170をユーザー操作することは、煩雑であり、利便性にも欠ける。そこで、第3の実施例では、磁気消去具170を電動によりX方向に一定速度で移動させることを可能にする。
【0035】
図5(A)は、第3の実施例の磁気消去システム100Aの全体構成を示す図、
図5(B)は、磁気消去具170内に搭載される電子部品実装部300の電気的な構成を示す図、
図6(A)、(B)は、磁気消去具170の内部構成を示す図であり、第1の実施例と同一構成については同一参照番号を附してある。
【0036】
図6(A)に示すように、ハウジング200内には、ギアボックス240、モータ250、電子部品実装部260がさらに収容される。ギアボックス240は、出力軸にギア242を含み、ギア242は、同期軸210のギア212と係合する。ギアボックス240は、内部に複数のギアを含み、モータ250の回転を一定のギア比で出力軸のギア242に伝達する。電子部品実装部260は、外部からのユーザー入力および/またはセンサ入力に応じてモータ250の回転を制御する。
【0037】
ギアボックス240およびモータ250は、例えば、スライド機構などを用いてY方向に移動可能に構成され、つまり、
図6(A)に示す位置または
図6(B)に示す位置に位置決めされる。スライド機構は、ユーザー操作であってもよいし、電動によって行われてもよい。
【0038】
図6(A)に示す状態のとき、ギアボックス240のギア242が同期軸210のギア212と噛み合い、このとき、モータ250が回転すると、その回転は、ギア242、ギア212を介して同期軸210に伝達され、同期軸210が回転される。これにより、磁気消去具170は、モータ250によってX方向に移動される。同時に、同期軸210の回転は、ギア212、ギア226を介して磁石220の回転軸222に伝達され、磁石220が回転される。
【0039】
図6(B)に示す状態のとき、ギアボックス240のギア242が同期軸210のギア212から離され、ギア242はギア212と噛み合っていない。このとき、モータ250の回転は、ギア212に伝達されず、磁気消去具170は、モータ250によってX方向に移動されない。
図6(B)の状態のとき、第1の実施例のときと同様に、磁気消去具170は、ユーザー操作によってX方向に移動可能である。
【0040】
次に、電子部品実装部260の構成例を
図5(B)に示す。電子部品実装部260は、ユーザーからの指示を受け取る入力部300と、モータ250を駆動するモータ駆動部310と、磁気消去具170の位置を検出する位置検出センサ320と、コントローラ330とを含んで構成される。これらの電子デバイスは、ハウジング200内に搭載されたバッテリーからの電力で動作する。
【0041】
入力部300は、特に限定されないが、例えば、磁気消去具170による消去を開始させるための移動開始ボタン、磁気消去具120による消去を終了させるための移動終了ボタン、磁気消去具170のX方向の移動速度を選択するボタン(例えば、高速、中速、低速のいずれかを選択)、磁気消去具170の移動方向を選択するボタン(例えば、右方向、左方向の選択)などを含むことができ、入力部300で受け取られた指示は、コントローラ330へ提供される。
【0042】
モータ駆動部310は、コントローラ330からの駆動信号に応じてモータ250を回転させたり(正転または逆転)、モータ250の回転速度を可変したり、あるいはモータ250を起動または停止させる。
【0043】
位置検出センサ320は、磁気消去具170の位置を検出する。検出方法は、特に限定されないが、例えば、
図5(A)に示すように、磁気消去具170(ハウジング)の両側に、機械式のボタンスイッチSW1、SW2を設け、左右の側部フレーム150、160に、ボタンスイッチSW1、SW2と接触可能な突出したストッパーST1、ST2とを設ける。ボタンスイッチSW1がストッパーST1に接触したとき、磁気消去具170の最も左側の位置が検出され、ボタンスイッチSW2がストッパーST2に接触したとき、磁気消去具170の最も右側の位置が検出される。また、別の態様では、発光素子と受光素子とを対にした光学センサや、撮像カメラなどを用いて磁気消去具170の位置を検出するようにしてもよい。位置検出センサ320の検出結果は、コントローラ330に提供される。
【0044】
コントローラ330は、例えば、ROM/RAMを含むマイクロコントローラから構成され、ROM/RAMに格納されたプログラムによる磁気消去具170の移動を制御する。例えば、ユーザーが消去開始ボタンを押下すると、コントローラ330は、モータ250を回転させ、磁気消去具170をX方向に移動させながら磁石220を回転させ、描画された文字等の消去を行う。また、ユーザーが消去終了ボタンを押下したとき、あるいは、位置検出センサ320によって磁気消去具170の決められた位置が検出されたとき、コントローラ330は、モータ250の回転を停止させ、磁気消去具170を停止させる。
【0045】
また、ある態様では、ハウジング200内に収容されたバッテリーBは、充電可能な二次電池であり、磁気消去部170がホームポジションに位置するとき(ボタンスイッチSW1がストッパーST1に接触したとき)、バッテリーBの端子Tが側部フレーム150に取付けられた電源端子152に接続し、バッテリーBが充電されるようにしてもよい(
図5(A)を参照)。
【0046】
このように本実施例によれば、磁気消去具170を電動で移動させることによりユーザーの利便性を向上させることができる。また、磁気消去具170を一定の速度でX方向に移動しながら磁石220を一定の速度で回転させるため、磁気シート110に均一の磁力線または磁界を作用させることができ、これにより均一な消去を行うことができる。
【0047】
次に、本発明の第4の実施例について
図7を参照して説明する。第4の実施例に係る磁気消去システム100Bは、磁気シートの着脱機能を備える。同図に示すように、磁気シート100の描画面は、磁気シート110Aを追加することで簡単にサイズを拡張することができる。反対に磁気シート110Aを取り外すことで簡単にサイズを縮小することができる。
【0048】
拡張された磁気シート110Aは、磁気シート100とY方向に同じ長さを有し、その上端部に上部フレーム130A、下端部に下部フレーム140Aが取り付けられ、右側部に側部フレーム160が取り付けられる。この側部フレーム160は、磁気シート110の右側部から取り外されたものである。
【0049】
磁気シート110の右端116と、拡張された磁気シート110Aの左端118とが、接着剤やその他の機械的な手段によって結合され、磁気シート110に磁気シート110Aが結合される。また、上部フレーム130Aおよび下部フレーム140Aには、ラック182、192が延長されるように拡張されたラックが取り付けられる。これにより、移動機構180、190は、拡張された磁気シート110Aまで延長され、磁気消去具170は、移動機構180、190により拡張された磁気シート110A上を水平方向に移動することができる。
【0050】
また、ある態様では、追加した磁気シート110Aを折り畳めるように構成してもよい。磁気シート110Aは、例えば、蝶番などによって磁気シート110に回転可能に取り付けられ、磁気消去システムを持ち運ぶとき、磁気シート110Aを概ね180度回転されることで磁気シートのサイズを縮小し、可搬性を良くすることができる。
【0051】
なお、上記実施例では、1つの磁気シート110Aを拡張する例を示したが、これに限らず、複数の磁気シートをX方向に拡張させることも可能である。この場合にも、拡張された磁気シートの上部フレームと下部フレームには、拡張されたラックがそれぞれ取り付けされる。
【0052】
さらに1つまたは複数の磁気シートを拡張したとき、描画面が拡張され、それに伴い消去範囲も拡張する。これに対応するため、磁気消去具を追加し、複数の磁気消去具を搭載するようにしてもよい。これにより、消去時間を短縮することができ、また、複数の磁気消去具のいずれか1つを使用することで、部分的な消去も容易に行うことができる。
【0053】
本実施例によれば、磁気シートを拡張した場合でも、ラックアンドピニオン機構を用いて、磁気消去具170の上端部172と下端部174の水平方向の移動を同期させることができる。
【0054】
次に、本発明の第5の実施例について説明する。
図8は、第5の実施例に係る磁気消去システムの全体構成を示す図である。磁気消去システム100Cは、概ね矩形状の磁気シート400と、磁気シート400上をX方向に移動可能な磁気消去具410と、磁気シート400を支持する脚部420とを有する。
【0055】
磁気シート400は、中央に矩形状の描画面402を有し、磁気シート400の周囲に枠体404が取り付けられる。枠体404のコーナーには、ワイヤWを巻回する4つのプーリP1、P2、P3、P4が取り付けられる。プーリP1とプーリP2との間のワイヤWは、磁気消去具410の上端部412に固定され、プーリP3とプーリP4との間のワイヤWは、磁気消去具410の下端部414に固定される。
【0056】
プーリP1とプーリP3との中間には円筒状の駆動用のローラRが配置され、ローラRは、プーリP1、P2からのワイヤWと、プーリP3、P4からのワイヤWとをそれぞれ巻回する。ローラRの回転軸には、モータM1が接続され、モータM1によってローラRが回転(正転または逆転)されると、プーリP1、P2間のワイヤWと、プーリP3、P4間のワイヤWが、ローラRの回転角度に応じた距離だけ同方向に同一速度で移動する。これにより、磁気消去具410の上端部412と下端部414のX方向(水平方向)の移動が同期される。
【0057】
枠体404には、ユーザーからの指示を受け取るための操作ボタンBが取り付けられる。ユーザーは、操作ボタンBを介して、モータM1の起動(正転または逆転)または停止を指示することができる。操作ボタンBで受け取られた指示は、図示しないマイクロコントローラに提供され、マイクロコントローラはモータM1の駆動を制御する。
【0058】
また、枠体404の左右には、磁気消去具410の位置を検出するためのスイッチSW1、SW2が設けられる。スイッチSW1、SW2は、磁気消去具410が接触したことを検出すると、この検出結果をマイクロコントローラに提供する。
【0059】
マイクロコントローラは、操作ボタンBからのユーザー入力および/またはスイッチSW1、SW2の検出結果に基づきモータM1を駆動し、プーリP1、P2間のワイヤWと、プーリP3、P4間のワイヤWとをX方向に移動させ、これにより、磁気消去具410は、描画面402に描画された文字、図形等を消去する。
【0060】
第5の実施例では、ワイヤ機構を用いて磁気消去具410をX方向に移動するものであり、その詳細を
図9を参照して説明する。同図に示すように、ここでは、1本のワイヤWが、ローラRからプーリP1、プーリP2を経由してプーリP1に戻り、そこからローラRで巻回された後、プーリP3、プーリP4を経由してプーリP3に戻り、そこからローラRに戻りそこで巻回されるように、構成される。
【0061】
ローラRは、モータM1によって正転または逆転され、例えば、モータM1が正転されたとき、プーリP1とプーリP2との間のワイヤ部分W1と、プーリP3とプーリP4との間のワイヤ部分W2がXa方向に移動し、モータM1が逆転されたとき、プーリP1とプーリP2との間のワイヤ部分W1と、プーリP3とプーリP4との間のワイヤ部分W2とがXb方向に移動する。
【0062】
磁気消去具410は、ここには図示しないハウジング内に、Y方向に延在する磁石430と、磁石430の上端部を回転可能に支持する上端支持部440と、磁石430の下端部を回転可能に支持する下端支持部450と、磁石430を回転させるための回転機構とを含む。
【0063】
上端支持部440は、
図9(B)に示すように、例えば、断面L字型の部材であり、その垂直部442には、磁石430の一方の回転軸432を回転可能に支持するための開口442Aが形成される。また、水平部444には、ワイヤ部分W1を固定するための固定具446が取り付けられる。
【0064】
下端支持部450は、
図9(C)に示すように、上端支持部440と同様に構成された断面L字型の垂直部452と水平部454とを含み、垂直部452には、磁石430の他方の回転軸434を回転可能に支持するための開口452Aが形成される。また、水平部454には、ワイヤ部分W2を固定するための固定具456が取り付けられる。
【0065】
さらに、回転軸434には、ギア460が取り付けられ、ギア460は、モータM2の回転軸に噛合される。磁気消去具410は、第3の実施例のときと同様に、モータM2の駆動を制御するための電子部品実装部260(
図5(B)を参照)を搭載することができ、これらの部品は、バッテリーからの電力によって動作される。
【0066】
ある態様では、ワイヤWに一定のテンションを与えるため、プーリP2の軸を水平方向に弾性的に引っ張るようなバネ機構470が接続される。同様に他のプーリ(例えば、プーリP4)にもそのようなバネ機構が接続されるようにしてもよい。さらにある態様では、ワイヤWに一定のテンションを与えるため、1つまたは複数のテンション用プーリ472を設けるようにしてもよい。テンション用プーリ472は、バネ機構470と一緒に設けるようにしてもよい。
【0067】
ここで留意すべきは、上端支持部440および下端支持部450は、磁石430の上下のX方向の位置が等しくなるようにワイヤ部分W1とワイヤ部分W2を固定する。これにより、磁気消去具410がX方向に移動するとき、上端部412と下端部414のX方向の位置が同期する。こうして、磁気シート400には、磁気消去具410によってX方向に移動しながら回転する磁力線または磁界が均一に印加される。
【0068】
次に、本発明の第6の実施例について説明する。第5の実施例では、磁気消去具410の磁石430を回転させるための動力源としてモータM2を用いたが、第6の実施例は、磁石430を回転させるための動力源にワイヤの移動を利用する。
【0069】
図10は、第6の実施例の磁気消去システム100Dのワイヤ機構の構成を示し、
図9と同一構成については同一参照番号を附している。同図に示すように、磁石430は、モータによって回転されるのではなく、プーリP1とプーリP2との間に配置されたプーリP5によって回転される。プーリP5の回転軸は、磁石430の回転軸432に接続され、プーリP5には、プーリP1とプーリP2との間のワイヤ部分W3が巻回される。ワイヤ部分W3がX方向に移動するとき、プーリP5が回転し、同時に磁石430が回転する。
【0070】
好ましくは、プーリP5は、ワイヤ部分W3が1回転巻回され、ワイヤ部分W3の移動がプーリP5に正確に伝えられる。また、プーリP5は、ワイヤ部分W3に一定のテンションを与えるような大きさであることができる。また、
図10に示す構成の場合、プーリP5と磁石430の回転数は同じであるが、プーリP5と、磁石430の回転軸432との間に1つまたは複数の歯車を介在させて、磁石430の回転数および回転方向をプーリP5の回転数および回転方向と異ならせてもよい。さらに、プーリP5と同じサイズの別のプーリを、プーリP3とプーリP4との間に設け、当該別のプーリと磁石430の他方の回転軸434とを接続することで、磁石430の両端側を回転駆動するようにしてもよい。
【0071】
本実施例によれば、磁石430を回転するためのモータを必要としないので、磁気消去具410の構成をより簡易にし、省電力化を図ることができる。
【0072】
上記した本発明の第1ないし第6の実施例では、磁気消去具が1つの円柱状の磁石を用いる例を示したが、本発明は、これに限定されるものではない。磁石は、他の形状、例えば、S極とN極が軸方向に着磁された角柱状であってもよい。また、磁気消去具は、複数の磁石を含むものであってもよく、例えば、3つの円柱状の磁石を回転軸が一致するように直列に接続するものであってもよい。
【0073】
さらに上記実施例では、磁石のY方向の長さは、描画面のY方向の長さに等しいかそれよりも大きく構成されたが、これに限定されず、磁石のY方向の長さは、描画面のY方向の長さよりも小さくてもよい。
【0074】
さらに上記実施例では、磁気消去具を磁気シートの描画面(表面)に配置させたが、磁気消去具を磁気シートの裏面側に配置させ、裏面側から消去するようにしてもよい。
【0075】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。