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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047889
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】制御装置、診断方法、蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/00 20060101AFI20240401BHJP
   G01R 31/327 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
G01R31/00
G01R31/327
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153645
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 裕樹
【テーマコード(参考)】
2G036
【Fターム(参考)】
2G036AA28
2G036BB07
2G036CA10
(57)【要約】
【課題】リレーが有するリレーコイルの故障を診断する。
【解決手段】制御装置63は、リレー部30と、リレー部30の通電経路に位置するスイッチ35Aと、リレー部30の通電経路に位置する電流検出部と、を備え、リレー部30は、接点33と、接点33を切り替えるリレーコイル34Aと、を含み、スイッチ35Aの動作により、接点33が作動しないようにリレーコイル34Aに電流を流し、リレーコイル34Aの故障を、リレーコイル34Aに流れる電流値に基づいて診断する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リレー部と、
前記リレー部の通電経路に位置するスイッチと、
前記リレー部の前記通電経路に位置する電流検出部と、を備え、
前記リレー部は、
接点と、
前記接点を切り替えるリレーコイルと、を含み、
前記スイッチの動作により、前記接点が作動しないように前記リレーコイルに電流を流し、前記リレーコイルの故障を、前記リレーコイルに流れる電流値に基づいて診断する、制御装置。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記リレー部の前記通電経路に直列に接続可能な抵抗部を備えた第一回路と、
前記抵抗部より低い抵抗値を備える、或いは地絡可能な第二回路と、を備え、
前記スイッチにより前記第一回路と前記第二回路を切り替える、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記リレー部の前記通電経路に位置する抵抗部と、を更に設ける、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記抵抗部の抵抗値が切り換え可能である、
請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記リレーコイルへの導通時間を制御するタイマー部を更に設ける、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項6】
リレー部と、
前記リレー部の通電経路に位置するチャッタリング部と、
前記リレー部の前記通電経路に位置する電流検出部と、を備え、
前記リレー部は、接点と、前記接点を切り替えるリレーコイルと、を含み、
前記接点が作動しないように前記リレーコイルに電流を流し、前記リレーコイルの故障を、前記リレーコイルに流れる電流値に基づいて診断する、制御装置。
【請求項7】
リレー部の内部に備わるリレーコイルに電流が流れた場合に、
前記リレーコイルによる励磁電流により動作する、前記リレー部の内部に備わる接点が作動しないように、前記リレーコイルに電流を流し、
前記リレーコイルの故障を、前記リレーコイルに流れる電流値に基づいて診断する、診断方法。
【請求項8】
セルと、
前記セルの電流を遮断する請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の制御装置と、を備えた、蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リレーコイルの故障を診断する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリの保護装置の一つに、電流遮断装置がある(下記特許文献1参照)。バッテリの過放電や過充電等の異常を検出した場合、電流遮断装置をオープンし電流を遮断することで、バッテリを保護することができる。電流遮断装置が故障した場合、バッテリの保護や負荷への電力供給ができなくなるため、電流遮断装置の故障を検出するための方法が提案されている(下記特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-5985号公報
【特許文献2】特開2012-100438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リレー部(ラッチングリレー)は、機械式の接点と、リレーコイルとを備えている。リレーコイルの通電を制御することで、接点を開閉することができる。これまでリレーコイルを対象とした故障診断は行われていなかった。
【0005】
本発明の課題は、リレーコイルの故障を診断すること、また故障診断時にリレー部の動作による作動音を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
制御装置は、リレー部と、前記リレー部の通電経路に位置するスイッチと、前記リレー部の前記通電経路に位置する電流検出部と、を備え、前記リレー部は、接点と、前記接点を切り替えるリレーコイルと、を含み、前記スイッチの動作により、前記接点が作動しないように前記リレーコイルに電流を流し、前記リレーコイルの故障を、前記リレーコイルに流れる電流値に基づいて診断する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、リレー部(ラッチングリレー)に備わるリレーコイルの故障を診断することができる。更に、故障診断時にリレーの動作による作動音を抑制し、利用者が耳障りな状態になるだけでなく、故障診断のための動作音が利用者に異常音であると感じさせ、不安感を抱かせることを抑止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】車両の側面図
図2】蓄電装置の分解斜視図
図3図4のA-A断面図
図4】セルの平面図
図5】蓄電装置の電気的構成を示すブロック図
図6】リレー装置の回路構成を示す図(車両走行時)
図7】リレー装置の回路構成を示す図(故障診断時)
図8】リレー装置の回路構成を示す図(故障診断時)
図9】故障診断時におけるリレーコイルの電流値の推移を示すグラフ
図10】リレー装置の回路構成を示す図(他の実施形態(5))
図11】リレー装置の回路構成を示す図(他の実施形態(6))
図12】リレー装置の回路構成を示す図(他の実施形態(7))
図13】リレー装置の回路構成を示す図(他の実施形態(8))
【発明を実施するための形態】
【0009】
(1)本発明の一実施形態にかかる制御装置は、リレー部と、前記リレー部の通電経路に位置するスイッチと、前記リレー部の前記通電経路に位置する電流検出部と、を備え、前記リレー部は、接点と、前記接点を切り替えるリレーコイルと、を含み、前記スイッチの動作により、前記接点が作動しないように前記リレーコイルに電流を流し、前記リレーコイルの故障を、前記リレーコイルに流れる電流値に基づいて診断する。
【0010】
本発明の一実施形態にかかる制御装置によれば、リレー部の故障やリレーコイルの故障を診断することができる。更に、故障診断時にリレーの動作による作動音を抑制し、利用者が耳障りな状態になるだけでなく、故障診断のための動作音が利用者に異常音であると感じさせ、不安感を抱かせることを抑止できる。
【0011】
(2)上記(1)に記載の制御装置は、前記リレー部の前記通電経路に直列に接続可能な抵抗部を備えた第一回路と、前記抵抗部より低い抵抗値を備える、或いは地絡可能な第二回路と、を備え、前記スイッチにより前記第一回路と前記第二回路を切り替える。
【0012】
上記(2)に記載の制御装置によれば、接点の状態を維持しながら、リレー部の故障やリレーコイルの故障(断線)を診断することができる。更に、故障診断時にリレーの動作による作動音を抑制し、利用者が耳障りな状態になるだけでなく、故障診断のための動作音が利用者に異常音であると感じさせ、不安感を抱かせることを抑止できる。
【0013】
(3)上記(1)に記載の制御装置は、前記リレー部の前記通電経路に位置する抵抗部と、を更に設ける。
【0014】
上記(3)に記載の制御装置によれば、接点の状態を維持しながら、リレー部の故障やリレー内部のコイルの故障(断線)を診断することができる。更に、故障診断時にリレーの動作による作動音を抑制し、利用者が耳障りな状態になるだけでなく、故障診断のための動作音が利用者に異常音であると感じさせ、不安感を抱かせることを抑止できる。
【0015】
(4)上記(3)に記載の制御装置は、前記抵抗部の抵抗値が切り換え可能である。
【0016】
上記(4)に記載の制御装置によれば、接点の状態を維持しながら、リレー部の故障やリレー内部のコイルの故障(断線)を診断することができる。更に、故障診断時にリレーの動作による作動音を抑制し、利用者が耳障りな状態になるだけでなく、故障診断のための動作音が利用者に異常音であると感じさせ、不安感を抱かせることを抑止できる。
【0017】
(5)上記(1)に記載の制御装置は、前記リレーコイルへの導通時間を制御するタイマー部を更に設ける。
【0018】
上記(5)に記載の制御装置によれば、接点の状態を維持しながら、リレー部の故障やリレー内部のコイルの故障(断線)を診断することができる。更に、故障診断時にリレーの動作による作動音を抑制し、利用者が耳障りな状態になるだけでなく、故障診断のための動作音が利用者に異常音であると感じさせ、不安感を抱かせることを抑止できる。
【0019】
(6)本発明の一実施形態にかかる制御装置は、リレー部と、前記リレー部の通電経路に位置するチャッタリング部と、前記リレー部の前記通電経路に位置する電流検出部と、を備え、前記リレー部は、接点と、前記接点を切り替えるリレーコイルと、を含み、前記接点が作動しないように前記リレーコイルに電流を流し、前記リレーコイルの故障を、前記リレーコイルに流れる電流値に基づいて診断する。
【0020】
上記(6)に記載の制御装置によれば、接点の状態を維持しながら、リレー部の故障やリレー内部のコイルの故障(断線)を診断することができる。更に、故障診断時にリレーの動作による作動音を抑制し、利用者が耳障りな状態になるだけでなく、故障診断のための動作音が利用者に異常音であると感じさせ、不安感を抱かせることを抑止できる。
【0021】
(7)本発明の一実施形態にかかる診断方法は、リレー部の内部に備わるリレーコイルに電流が流れた場合に、前記リレーコイルによる励磁電流により動作する、前記リレー部の内部に備わる接点が作動しないように、前記リレーコイルに電流を流し、前記リレーコイルの故障を、前記リレーコイルに流れる電流値に基づいて診断する。
【0022】
上記(7)に記載の診断方法によれば、接点の状態を維持しながら、リレー部の故障やリレー内部のコイルの故障(断線)を診断することができる。更に、故障診断時にリレーの動作による作動音を抑制し、利用者が耳障りな状態になるだけでなく、故障診断のための動作音が利用者に異常音であると感じさせ、不安感を抱かせることを抑止できる。
【0023】
<実施形態>
1.蓄電装置の説明
図1に示すように、車両(この場合は一例として四輪自動車とする)10には、エンジン20と、エンジン20の始動用や補機用等としての蓄電装置50とが搭載されている。車両10には、車両駆動用のモータに電力を供給する蓄電装置や、燃料電池が搭載されていてもよい。
【0024】
図2に示すように、蓄電装置50は、組電池60と、回路基板ユニット65と、収容体71と、を備える。収容体71は、合成樹脂材料からなる本体73と蓋体74とを備える。本体73は有底筒状であり、底面部75と、4つの側面部76と、を備える。4つの側面部76によって、本体73の上端に開口部77が形成されている。
【0025】
収容体71は、組電池60と回路基板ユニット65を収容する。回路基板ユニット65は、回路基板100上に各種部品(電池制御装置(BMU:Battery Management Unit)63等)を搭載した基板ユニットであり、図2に示すように組電池60の、例えば上方に隣接して配置されている。代替的に、回路基板ユニット65は、組電池60の側方に隣接して配置されていてもよい。電池制御装置63は、「制御装置」の一例である。
【0026】
蓋体74は、本体73の開口部77を閉鎖する。蓋体74の周囲には外周壁78が設けられている。蓋体74は、平面視略T字形の突出部79を有する。蓋体74の前部のうち、一方の隅部に正極の外部端子51Pが固定され、他方の隅部に負極の外部端子51Nが固定されている。回路基板ユニット65は、収容体71の本体73に代えて、蓋体74内に(例えば突出部79内に)収容されていてもよい。
【0027】
組電池60は、複数のセル62から構成されている。図3に示すように、セル62は、直方体形状(プリズマティック)のケース82内に、電極体83を電解質を含有した電解液と共に収容する。セル62は、例えばリチウムイオン二次電池セルである。ケース82は、ケース本体84と、その上方の開口部を閉鎖する蓋85とを有している。
【0028】
電極体83は、詳細は図示しないが、銅箔からなる基材に活物質を塗布した負極板と、アルミニウム箔からなる基材に活物質を塗布した正極板との間に、多孔性の樹脂フィルムからなるセパレータを配置する。これらはいずれも帯状をなしており、セパレータに対して負極板と正極板とを短手方向でそれぞれ位置を反対にずらした状態で、扁平状に巻回されている。電極体83は、巻回タイプのものに代えて、積層タイプのものであってもよい。
【0029】
正極板には正極集電体86を介して正極端子87が、負極板には負極集電体88を介して負極端子89が、それぞれ接続されている。正極集電体86及び負極集電体88は、平板状の台座部90と、この台座部90から延びる脚部とを有する。台座部90には貫通孔が形成されている。
【0030】
正極端子87及び負極端子89は、端子本体部92と、その下面中心部分から下方に突出する軸部93とからなる。正極端子87の端子本体部92と軸部93とは、アルミニウム(単一材料)によって一体成形されている。負極端子89においては、端子本体部92がアルミニウム製で、軸部93が銅製であり、これらが組み付けられている。正極端子87及び負極端子89の端子本体部92は、蓋85の両端部に絶縁材料からなるガスケット94を介して配置され、図4に示すように、このガスケット94から外方へ露出されている。
【0031】
蓋85は、圧力開放弁95を有している。圧力開放弁95は、正極端子87と負極端子89の間に位置している。圧力開放弁95は、安全弁である。圧力開放弁95は、ケース82の内圧が制限を超えた場合に、開放してケース82の内圧を下げる。
【0032】
図5に示すように、蓄電装置50は、組電池60、電池制御装置63を備える。組電池60は、例えば、12個のセル62が3並列で4直列に接続されている。図5では並列に接続された3つのセル62を1つの電池記号で表している。
【0033】
電池制御装置63は、電流センサ55、電圧検出回路54、温度センサ58、管理装置150などを備えている。電圧検出回路54及び管理装置150は回路基板ユニット65(図2参照)に実装されている。
【0034】
リレー部30、組電池60及び電流センサ55はパワーライン57P、57N上で直列に接続されている。パワーライン57Pは正極の外部端子51Pと組電池60の正極とを接続する。パワーライン57Nは負極の外部端子51Nと組電池60の負極とを接続する。本実施例では、リレー部30は組電池60の正極側に位置し、正極側のパワーライン57P上に設けられているが、負極側であっても良い。電流センサ55は組電池60の負極側に位置し、負極のパワーライン57Nに設けられているが、正極側であっても良い。
【0035】
電流センサ55は組電池60の充放電電流[A]を計測して管理装置150に信号を出力する。電圧検出回路54は信号線によって各セル62の両端にそれぞれ接続されている。電圧検出回路54は各セル62の電池電圧[V]を計測し、A/D変換機(図示せず)を経由して管理装置150に出力する。組電池60の総電圧[V]は直列に接続されたセル62の合計電圧である。
【0036】
温度センサ58は接触式あるいは非接触式であり、セル62の温度[℃]を計測して管理装置150に出力する。
【0037】
管理装置150はCPU26、ROM27、RAM28を備える。ROM27には各種のプログラムやデータが記憶されている。CPU26はROM27に記憶されているプログラムを実行することによって蓄電装置50全体を制御する。RAM28は、計測した電池電圧やセル62の温度等を記憶する。
【0038】
2.リレー部、およびリレー部周辺の構成の説明
図6に、リレー部30、およびリレー部30周辺の詳細な構成を示す。図6の例では、リレー部30の周辺には、第1スイッチ35A、第2スイッチ35B、および管理装置150などが配されている。第1スイッチ35Aおよび第2スイッチ35Bは、それぞれ「スイッチ」の一例である。
【0039】
リレー部30は、接点33と、第1リレーコイル34Aと、第2リレーコイル34Bと、を有している。第1リレーコイル34Aおよび第2リレーコイル34Bは、それぞれ「リレーコイル」の一例である。接点33は、パワーライン57Pに設けられた機械式のスイッチである。
【0040】
第1リレーコイル34Aは、接点33のクローズ用であり、電流の供給により励磁され、発生した磁力で接点33を引き寄せて、接点33をオープンからクローズに切り換える。第1リレーコイル34Aの一端は、組電池60の正極に接続され、他端は第1スイッチ35Aに接続されている。
【0041】
第2リレーコイル34Bは、接点33のオープン用であり、電流の供給により励磁され、発生した磁力で接点33を引き寄せて、接点33をクローズからオープンに切り換える。第2リレーコイル34Bの一端は、組電池60の正極に接続され、他端は第2スイッチ35Bに接続されている。
【0042】
第1リレーコイル34Aは、抵抗成分RAとインダクタンス成分LAを直列に接続した等価回路で表される。第2リレーコイル34Bも同様に、抵抗成分RBとインダクタンス成分LBとで表される。2つのリレーコイル34A、34Bは同じ特性のコイルであり、RA=RB、LA=LBである。
【0043】
リレー部30はラッチ式のリレー(ラッチングリレー)であり、リレーコイル34A、34Bに電流が流れていない間でも、接点33の状態が維持される。例えば、第1リレーコイル34Aに電流を供給して接点33がクローズした後、第1リレーコイル34Aの電流を遮断しても、接点33はクローズに維持される(ラッチ)。接点33のクローズ状態は、第2リレーコイル34Bに電流を供給して、第2リレーコイル34Bが接点33を引き寄せてオープンに切り換わるまで維持される。接点33のラッチ動作は、クローズに限らず、オープンも同様である。
【0044】
第1スイッチ35Aの一端は、第1リレーコイル34Aと接続し、他端は第1グランド線A1(「第1回路」の一例)または第2グランド線A2(「第2回路」の一例)に接続可能である。第1グランド線A1は電流制限抵抗(「抵抗部」の一例)36Aを備えている。リレー部30の通電経路とは、リレー部30のリレーコイル34A、34Bから、接地電位までを接続する経路である。管理装置150からの信号により、第1スイッチ35Aを操作することで、第1グランド線A1に導通、第2グランド線A2に導通、あるいはどちらにも非導通の、少なくとも3パターンに切り替えることができる。
【0045】
第1グランド線A1と第2グランド線A2を第1スイッチ35Aにより切り換えることで、通電経路の抵抗値(電流の流れやすさ)を変えることができる。第2グランド線A2へ接続した場合、第1グランド線A1に接続した場合よりも通電経路の抵抗値が小さくなる。
【0046】
第1スイッチ35Aを切り替えて、通電経路の抵抗値が小さくなるように、第2グランド線A2に接続することで、第1リレーコイル34Aには、電流I1が流れる。また、全体の抵抗値が大きくなるように、第1グランド線A1に接続することで、第1リレーコイル34Aには、電流I1よりも小さな電流I2が流れる。第1リレーコイル34Aが故障しておらず正常な状態の場合、電流I1は、接点33の切り換えに必要な電流値I0よりも大きく、電流I2は、接点33の切り替えに必要な電流値I0よりも小さい。電流I1および電流I2は、第1リレーコイル34Aに流れる電流の大きさを表している(後述する第2リレーコイル34Bに流れる電流I3、I4も同様である)。第1リレーコイル34A、第2リレーコイル34Bに流れる電流は、それぞれ通電経路に位置する電流検出部32A、32Bによって検出され、検出結果が管理装置150に送信される。
【0047】
なお、この実施形態では、2つのグランド線A1、A2が異なる抵抗値となるように、第1グランド線A1に電流制限抵抗36Aを挿入しているが、これに限らず、線の太さや長さ、材質を変えることにより、グランド線A1、A2の抵抗値を変えることもできる。また、第1グランド線A1だけでなく、第2グランド線A2にも電流制限抵抗を挿入し、それらの抵抗値の大小関係から、グランド線A1、A2に流れる電流の大きさを調整してもよい。
【0048】
図6に示すように、第2リレーコイル34Bから基準電位までの通電経路は、第1リレーコイル34Aから基準電位までの通電経路に対し、接点33を挟んで対称である。第1スイッチ35A、第1グランド線A1、第2グランド線A2、および電流制限抵抗36Aは、第2スイッチ35B、第1グランド線B1、第2グランド線B2、および電流制限抵抗36Bに、それぞれ対応している。第2スイッチ35B、第1グランド線B1、第2グランド線B2、電流制限抵抗36Bは、それぞれ、「スイッチ」、「第1回路」、「第2回路」、「抵抗部」の一例である。
【0049】
第2スイッチ35Bを切り替えて、全体の抵抗値が小さくなるように、第2グランド線B2に接続することで、第2リレーコイル34Bには、電流I3が流れる。また、全体の抵抗値が大きくなるように、第1グランド線B1に接続することで、第2リレーコイル34Bには、電流I3よりも小さな電流I4が流れる。
【0050】
3.リレーコイルの故障診断
車両10に搭載される蓄電装置50のリレー部30は、車両10の負荷に電力を供給する必要があることから、異常発生時を除き、接点33は常にクローズに維持される(ノーマリクローズ)。
【0051】
この実施形態では、車両10の走行中に、接点33の状態をクローズに維持しながら、第1リレーコイル34Aと、第2リレーコイル34Bの故障診断を続けて行う方法について、開示する。
【0052】
図6は、故障診断を開始する前の電池制御装置63の状態を示している。接点33はクローズであり、第1スイッチ35Aおよび第2スイッチ35Bは、ともにオープンである。この場合、第1リレーコイル34Aおよび第2リレーコイル34Bに電流は流れていない。
【0053】
故障の診断において、まず、図7に示すように、第1スイッチ35Aを第2グランド線A2に接続し、クローズ用の第1リレーコイル34Aに電流I1を流す。第1リレーコイル34Aは接点33をクローズ側に引き寄せるためのコイルなので、接点33はクローズを維持する。そして、第1リレーコイル34Aの電流値を検出し、検出結果を正常時の電流値と比較することにより、第1リレーコイル34Aの故障を診断する。
【0054】
具体的には、第1リレーコイル34Aの故障モードは、短絡によるショート故障、または断線によるオープン故障である。第1リレーコイル34Aがショート故障している場合には、正常時よりも大きな電流が検出される。第1リレーコイル34Aがオープン故障している場合には、正常時よりも小さな電流が検出される。従って、検出結果を正常時の電流値と比較することにより、接点33をクローズに維持したまま、第1リレーコイル34Aの故障を診断できる。
【0055】
引き続き、第2リレーコイル34Bの故障診断を説明する。図8に示すように、第1リレーコイル34Aに電流I1を流している間に、第2スイッチ35Bを第1グランド線B1に接続し、オープン用の第2リレーコイル34Bに対して電流I1よりも小さな電流I4を流す。
【0056】
そして、第2リレーコイル34Bの電流を検出し、検出結果を正常時の電流値と比較することにより、第2リレーコイル34Bの故障を診断する。
【0057】
第2リレーコイル34Bに流れる電流I4は、第1リレーコイル34Aに既に流れている電流I1よりも小さいため、第2リレーコイル34Bに発生する磁力の大きさは、第1リレーコイル34Aに既に発生している磁力よりも小さい。そのため、第2リレーコイル34Bに電流I4が流れても、接点33は第2リレーコイル34Bに引き寄せられることはない。これにより、接点33をクローズに維持したまま、第1リレーコイル34Aの故障診断に加え、第2リレーコイル34Bの故障診断を行うことができる。
【0058】
4.故障診断時におけるスイッチの動作タイミング
以下、図9を参照して、故障診断時における第1スイッチ35Aと第2スイッチ35Bの動作タイミングを説明する。図9は、診断開始からの経過時間Tを横軸に、リレーコイル34A、34Bに流れる電流Iを縦軸にプロットしたグラフである。時間T=0において、図6に示すように、第1スイッチ35Aはオープン、第2スイッチ35Bはオープン、接点33はクローズであるとする。
【0059】
時間T=T1において、オープン状態の第1スイッチ35Aを第2グランド線A2に接続する。これにより、組電池60から第1リレーコイル34Aに電流I1が供給される(図7参照)。
【0060】
時間T=T2において、オープン状態の第2スイッチ35Bを第1グランド線B1に接続する。これにより、組電池60から第2リレーコイル34Bに電流I4が供給される(図8参照)。
【0061】
時間T=T3において、第2スイッチ35Bをオープンに切り替える。これにより、第2リレーコイル34Bの電流I4は遮断される。
【0062】
時間T=T4において、第1スイッチ35Aをオープンに切り替える。これにより、第1リレーコイル34Aの電流I1は遮断される。
【0063】
この実施形態によれば、電流I4の供給期間(T2-T3)は、電流I1の供給期間(T1-T4)に対して必ず重なる。そのため、故障診断中、接点33がオープンになることを抑制し、クローズを維持したまま診断が可能である。診断の開始から終了までの時間(T1-T4)は、数[msec]程度である。
【0064】
上記したように、電流I1は、接点33の切り換えが可能な電流値である。電流I4は、電流I1よりも小さく、接点33の切り換えができない大きさの電流である。本実施形態では一例として、図8に示すように、電流I4の大きさは電流I1の概ね半分としている。故障診断中に第2リレーコイル34Bに電流I4が流れても、接点33はオープンに切り換わらず、クローズを維持する。接点33のクローズが維持されるため、故障診断は、車両10の停車中や駐車中だけでなく、走行中も、実行可能である。
【0065】
4.効果説明
この実施形態によれば、車両10の状態(走行中、停車中、駐車中など)を問わず、接点33をクローズに維持しながら、リレーコイル34A、34Bを故障診断することができる。また、一度の診断でクローズ用の第1リレーコイル34Aと、オープン用の第2リレーコイル34Bの、2つのリレーコイルの故障を診断できる。故障診断する際に接点33が切り換わらないため、接点33の動作による作動音や振動を抑制し、利用者が耳障りな状態になるだけでなく、故障診断のための動作音が利用者に異常音であると感じられ、不安感を抱かせることを抑止できる。
【0066】
故障診断のためにリレーコイルに電流を流す時間は数[msec]程度と短い。故障診断を行う際の消費電力は、蓄電装置50の容量と比較して無視できる程度に小さいため、故障診断の頻度や回数を増やすことができる。
【0067】
<他の実施形態>
(1)上記実施形態では、第1リレーコイル34Aおよび第2リレーコイル34Bを動作させるための電源を、組電池60とした。リレーコイルの電源は、組電池60以外であってもよい。
【0068】
(2)上記実施形態では、蓄電装置50を、車載用としたが、蓄電装置50の用途は、車載用に限らない。鉄道、船舶、航空・宇宙といった移動体向けの他、定置用など別の用途でもよい。
【0069】
(3)本発明に係る制御装置は、蓄電装置50の電池制御装置(BMU)に限らず、あらゆる用途、あらゆる種類の電気機器に適用可能である。
【0070】
(4)上記の実施形態では、接点33のクローズを維持しながら、リレーコイル34A、34Bの故障を診断する例を説明した。接点33がオープンの場合は、上記実施形態で説明した第1スイッチ35Aと第2スイッチ35Bの動作順序を入れ替えることで、接点33のオープンを維持しながら、2つのリレーコイル34A、34Bの故障を診断することができる。例えば、蓄電装置50が非常用電源のように通常時は使用せず非常時のみ使用する機器に用いられている場合には、通常時において、接点33のオープンを維持しながら故障診断をすることができる。電池制御装置63を用いることで、接点33がクローズであっても、オープンであっても、接点33の状態を維持した状態で、2つのリレーコイル34A、34Bの故障を診断できる。
【0071】
(5)上記の実施形態では、電池制御装置63は、第1リレーコイル34Aと接地電位との間に、第1回路(第1グランド線A1)、第2回路(第2グランド線A2)の両方を備えているが、必ずしも両方を備えていなくてもよい。例えば、図10に示すように、電池制御装置163は、第1リレーコイル34Aと接地電位との間に第2グランド線A12のみを備える構成であってもよい。この構成では、接点33がクローズした状態で、第1スイッチ135Aを第2グランド線A12に接続することにより、接点33のクローズを維持したまま、第1リレーコイル34Aの故障診断ができる。また、第2スイッチ35Bを第1グランド線B1に接続することにより、接点33のクローズを維持したまま、第2リレーコイル34Bの故障診断を行うことができる。
【0072】
(6)上記の実施形態では、リレーコイルに一定時間以上(T1~T4、T2~T3)電流を流して故障診断する場合について説明した。本発明の目的はリレー内の接点状態を変更することなく、リレーコイルの故障診断を行うことである。その目的を達成する次の手段も本発明の範疇である。図11に示すように、電池制御装置263は、グランド線A21、或いはB21の少なくとも一方に位置する抵抗が、抵抗値を切り換え可能な可変抵抗器であってもよい。この可変抵抗器により抵抗値を切り換えることで、接点33が動作しないように制御することができ、リレーコイルの故障診断が可能である。
【0073】
例えば、接点33がオープンの場合、可変抵抗器236Aの抵抗値を、可変抵抗器236Bの抵抗値よりも小さい値に設定する。このようにすると、第1スイッチ235Aを第1グランド線A21に接続したときに第1リレーコイル34Aに流れる電流は、第2スイッチ235Bを第1グランド線B21に接続したときに第2リレーコイル34Bに流れる電流よりも大きくなる。これにより、接点33のオープンを維持したまま、リレーコイル34A、34Bに電流を流して故障診断ができる。
【0074】
可変抵抗器236A、236Bの抵抗値の大小関係を逆にすることで、接点33のクローズを維持したまま、故障診断を行うこともできる。
【0075】
(7)また、接点33がクローズしている場合、第2リレーコイル34Bに電流値I0以上の電流を流すとすぐに接点33がオープンするわけではなく、所定時間(数10[msec])は接点33の状態が維持され、その後接点33がクローズからオープンに切り換わる。そのため、リレーコイル34A、34Bの導通時間が所定時間を超える前に、リレーコイル34A、34Bに流す電流を遮断することで、接点33の状態を維持したままで故障診断が可能である。
【0076】
具体的な構成としては、例えば、図12に示すように、電池制御装置363は、タイマー部251を有していてもよい。タイマー部251は、スイッチ335A、335Bが、クローズ(第2グランド線A32、B32に接続)すると計時を開始し、リレーコイル34A、34Bの導通時間を測定する。タイマー部251は、導通時間が所定時間に達する前(例えば所定時間の50%を超えた時点)に、スイッチ335A、335Bをオープンにする信号を発する。
【0077】
このようにすると、接点33が切り換わる前にリレーコイル34A、34Bの電流を遮断できるため、接点33の状態を維持できる。そして、導通時にリレーコイル34A、34Bに流れる電流値に基づいて、故障診断が可能である。タイマー部251は、CPU26のクロックを利用したタイマーであってもよい。
【0078】
(8)また、図13に示すように、電池制御装置463は、リレー部30の通電経路にチャッタリング部435A、435Bを備えていてもよい。チャッタリング部435A、435Bの内部では、可動接点が高速で振動しており、リレーコイル34A、34Bには、瞬間的に(周期的に)電流が流れる。瞬間的に電流が流れる時間は、上述した「所定時間」よりも短い時間である。チャッタリング部435A、435Bは、可動接点の振動を止めて、リレーコイル34A、34Bに長時間(「所定時間」よりも長い時間)電流を流すこともできる。リレーコイル34A、34Bに瞬間的に電流が流れても、リレー部30の接点33は切り換わらず、オープン又はクローズを維持する。リレーコイル34A、34Bに瞬間的に流れる電流値に基づいて、リレーコイル34A、34Bの故障診断が可能である。
【符号の説明】
【0079】
30 リレー部
32A、32B 電流検出部
33 接点
34A 第1リレーコイル(「リレーコイル」の一例)
34B 第2リレーコイル(「リレーコイル」の一例)
35A 第1スイッチ(「スイッチ」の一例)
35B 第2スイッチ(「スイッチ」の一例)
63 電池制御装置(「制御装置」の一例)
図1
図2
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図4
図5
図6
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図11
図12
図13