(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047902
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】閉空間監視装置
(51)【国際特許分類】
G08B 17/06 20060101AFI20240401BHJP
【FI】
G08B17/06 J
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153666
(22)【出願日】2022-09-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】519346136
【氏名又は名称】株式会社アガタ
(74)【代理人】
【識別番号】100181928
【弁理士】
【氏名又は名称】日比谷 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100075948
【弁理士】
【氏名又は名称】日比谷 征彦
(72)【発明者】
【氏名】田賀 俊行
【テーマコード(参考)】
5C085
【Fターム(参考)】
5C085AA01
5C085AB01
5C085AC03
5C085BA12
5C085BA22
5C085BA36
5C085CA30
5C085FA16
5C085FA20
(57)【要約】
【課題】監視部の故障が閉空間での火災の原因となることのない閉空間監視装置を提供する。
【解決手段】閉空間監視装置1は、ダクトD等の閉空間を形成する壁面部に設けた挿入孔に固定される保持部2と、この保持部2に移動自在に支持される金属製の案内筒5とを備えている。案内筒5内の前端には監視部7を後方に有する熱遮断部6が配置されている。ダクトD内の監視時には、ダクトD内に進出した監視部7により撮影される画像データ、測温部9により得られた温度データを、処理回路部4dを介して外部装置Pに送信する。非駆動時には、監視部7は熱遮断部6と共に案内筒5内に収納される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央に貫通孔を備え、閉空間を形成する側面の外側から固定した保持部と、前記貫通孔内に、固定される本体部と、該本体部の後端に連結する制御部とから構成される閉空間監視装置であって、
前記本体部は、前記側面に設けた挿入孔と連通し、前記貫通孔内に密着して固定される案内筒と、前後に摺動可能であって、前記案内筒の先端を封止する熱遮断部と、前記案内筒内を前後に摺動可能であって、前記熱遮断部の後方に連続して配置される監視部とを備え、
前記制御部は前記監視部を移動させる駆動部と、該駆動部を制御し、前記監視部からの画像データを取得する処理回路部とを備え、
前記処理回路部による前記駆動部の制御によって、前記熱遮断部が前記案内筒の先端を封止して前記監視部を密閉する第1の状態から、前記監視部が前記案内筒から前記閉空間に進出する第2の状態に移動させることを特徴とする閉空間監視装置。
【請求項2】
前記第1の状態では、前記熱遮断部の先端面が前記側面と面一であることを特徴とする請求項1に記載の閉空間監視装置。
【請求項3】
前記処理回路部は、前記画像データを外部装置に送信することを特徴とする請求項1又は2に記載の閉空間監視装置。
【請求項4】
前記保持部の前記貫通孔と異なる副貫通孔を前記保持部に設け、前記側面の前記挿入孔と異なる副挿入孔を設け、前記副貫通孔及び前記副挿入孔に挿入し、前記閉空間内の温度を測温し、温度データを前記処理回路部に送信する測温部を前記本体部に設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の閉空間監視装置。
【請求項5】
前記処理回路部は、前記第1の状態における前記測温部の前記温度データに基づいて、前記駆動部によって第2の状態に前記監視部を移動させて画像データを取得することを特徴とする請求項4に記載の閉空間監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダクト内等の閉空間内の状態を、離れた個所から映像等により確認する閉空間監視装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、調理場等で発生する油煙等の排気を行うダクト内に、可視光カメラを設置して、外部からこの可視光カメラを介して、ダクト内の異常を監視する火災検知システムが開示されている。
【0003】
このようなダクト内を可視光カメラで監視可能とする監視システムにおいては、オペレータはダクト内に流れる油煙の状況や、ダクトの壁面に付着した油分、或いは可視光カメラの近傍に設置され、流路を閉止する機能を有する防火ダンパに付着した油分を、可視光カメラからの映像を通じて、確認することが可能である。
【0004】
そして、油煙の異常滞留が発生したり、壁面や防火ダンパに油分が大量に付着している場合は、掃除等を含めた点検を行うことで、ダクト内の火災発生を予防できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述のダクト内に設置した監視部である可視光カメラを、調理場等で発生する煙の中で長期に渡って使用していると、油分等の汚れがレンズに付着して、ダクト内の状況を可視し難くなる。
【0007】
また、ダクト内に火災が発生した場合に、高温状態が継続することで熱によって監視部を構成するICチップ、基板等が損傷し、監視を継続することが不可能になることもある。
【0008】
更には、監視部を構成するICチップ、基板等に不具合が生じ、監視部から出火した場合に監視部付近の可燃性を有する汚れに燃え移る災害発生の原因になるという問題もある。
【0009】
本発明の目的は、上述の課題を解消し、監視部のレンズに汚れの付着を防止し、加熱による監視部の損傷を防ぐと共に、監視部の故障が閉空間での火災の原因となることのない閉空間監視装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係る閉空間監視装置は、中央に貫通孔を備え、閉空間を形成する側面の外側から固定した保持部と、前記貫通孔内に、固定される本体部と、該本体部の後端に連結する制御部とから構成される閉空間監視装置であって、前記本体部は、前記側面に設けた挿入孔と連通し、前記貫通孔内に密着して固定される案内筒と、前後に摺動可能であって、前記案内筒の先端を封止する熱遮断部と、前記案内筒内を前後に摺動可能であって、前記熱遮断部の後方に連続して配置される監視部とを備え、前記制御部は前記監視部を移動させる駆動部と、該駆動部を制御し、前記監視部からの画像データを取得する処理回路部とを備え、前記処理回路部による前記駆動部の制御によって、前記熱遮断部が前記案内筒の先端を封止して前記監視部を密閉する第1の状態から、前記監視部が前記案内筒から前記閉空間に進出する第2の状態に移動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る閉空間監視装置によれば、閉空間内を監視する監視部を必要時にのみ閉空間内に進出させることで、監視部のレンズに油分等の汚れが付着することを防ぐことができる。また、監視部に対して熱遮断部を設けることで加熱による監視部の損傷を防ぐと共に、監視部から出火しても、閉空間内の汚れに引火して、閉空間内で火災が発生することはない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例1のダクトに対する閉空間監視装置の構成図である。
【
図2】監視部をダクト内に進出させた状態の構成図である。
【
図4】監視部をダクト内に進出した状態の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例0014】
図1は実施例1のダクト内に対する閉空間監視装置の構成図、
図2は監視部をダクト内に進出した状態の構成図である。
【0015】
閉空間監視装置1を設置するダクトDは閉空間を形成しており、例えば調理場等に設置し、調理により発生する排煙を外部に排気するための排煙筒であり、温度の高い油分等を含む空気を外部に排気する。また、このダクトDは工場等に設置され、粉塵等を含む空気に対して排気を行うものであってもよい。
【0016】
なお、図示しない防火ダンパがダクトD内の区画毎に配置されており、ダクトD内で火災が発生した場合に、火災による熱により防火ダンパの感熱溶断部材が溶融することで、付勢力が解除されて防火ダンパの羽根部が90度回転し、ダクトDの排煙流路が閉止される。このように、防火ダンパによって流路が閉止されることで、防火ダンパの下流側への火災の延焼を防止できるようになっている。
【0017】
図1において、ダクトDは煙の流れに対して直交する形状が断面円形とされているが、円筒形以外の矩形筒等の適宜の断面形状であってもよい。
閉空間監視装置1は、主に、ダクトDの側面D1の外側に固定し、ダクトDの挿入孔D2に挿通する貫通孔2aを中央に備えた保持部2と、貫通孔2a内に取り付けられ外形が円柱状の本体部3と、この本体部3の後端に連結する固定の制御部4とから構成されている。
【0018】
保持部2は、側面D1に対してねじやリベット等によって外側から固着する盤状のフランジ2bと、フランジ2bの中央から外方に延出する短筒部2cとから成り、貫通孔2aはこの短筒部2c内に形成されている。
【0019】
一方、本体部3は、挿入孔D2と連通し、貫通孔2a内に固定される筒状で金属製の案内筒5と、案内筒5内を前後に摺動可能であって、案内筒5の先端を封止する熱遮断部6と、同様に案内筒5内を前後に摺動可能であって、熱遮断部6の後方に連続して配置される監視部7とを備えている。熱遮断部6は熱伝導率が小さなセラミック等の素材が用いられ、監視部7はダクト内を撮影可能なカメラから構成されている。
【0020】
熱遮断部6は、貫通孔2aのダクトD側に嵌合する円板状の頭部6aと、この頭部6aから後方に延在され、外径が頭部6aよりも小径で、案内筒5に対して摺動可能な棒体部6bとから成り、棒体部6bの後部に監視部7が連結され、監視部7の外径は棒体部6bの外形と略一致している。なお、監視部7からの信号線は案内筒5内を経て制御部4に接続されている。
【0021】
また、監視部7のレンズは、ダクトD内に設けた前述の防火ダンパ等を撮影できるように、ダクトDの中心線方向に向けて配置されている。監視部7は広角範囲を撮影可能な魚眼レンズを採用してもよく、或いは外部からの操作によるズーム機能を有するものであってもよい。更には、赤外線カメラを用いたり、監視部7の近傍に発光部を設け、監視部7の撮影と同期して、発光部を点灯させることもできる。
【0022】
監視部7の後端部7aには、長手方向に沿って移動可能な可動筒8が回転不能に接続されており、この可動筒8内に、後述する制御部4のウォームギア4aが挿入されている。可動筒8内には、ウォームギア4aに設けられた螺旋状の歯部に噛合する噛合部が形成されている。
【0023】
制御部4は、前述の棒状の金属体に歯部が刻設されたウォームギア4aと、このウォームギア4aを回転させる電動モータ等から成る駆動部4bと、配線4cを介して駆動部4bを制御し、更には監視部7からの画像データを信号線により取得する処理回路部4dとを有している。
【0024】
また、商用電源等の外部電源Sの電力が、駆動部4bに、及びコンバータ部4eを介して処理回路部4dに、電力線4fを介して供給されている。処理回路部4dは、入力された画像データ、温度データから成る観測データを無線によって外部装置Pに送信するアンテナ4gを備えている。
【0025】
外部装置Pは、例えばタブレットPCやパソコン等を用いることができ、複数の閉空間監視装置1を管理することが可能である。そして、外部装置Pに対するオペレータの操作によって、処理回路部4dを介して駆動部4bの制御等を行うことで、ダクトD内での観測データを取得することが可能である。
【0026】
また閉空間監視装置1には、ダクトD内の温度を測定するための測温部9を必要に応じて本体部3に設けることも可能である。この測温部9は感温素子として熱電対やサーミスタ等が使用され、その先端は保護管9aにより覆われ、更にその先端には非絶縁材料から成り、熱伝導率が大きい封止部材9bが取り付けられている。
【0027】
保護管9a、封止部材9bは、保持部2のフランジ2bに設けられた貫通孔2aとは別の副貫通孔内、及びダクトDの側面部D1に設けられた副挿入孔D3内に挿入されている。そして、感温素子の出力は例えば補償導線等の信号線を介して、制御部4の処理回路部4dに接続されている。
【0028】
この測温部9は閉空間監視装置1において、必ずしも必要不可欠なものではないが、測温部9による信号線を介して送信される温度データにより、制御部4の処理回路部4dはダクトD内の温度を検知でき、測温部9の温度データと監視部7の画像データとを併せて観測データとして取得すれば、ダクトD内の状況をより正確に把握することができる。
【0029】
図1に示す状態は、オペレータが外部装置Pを操作していない閉空間監視装置1の非駆動時であり、熱遮断部6の頭部6aによって案内筒5の先端が封止され、密閉した状態とされている。なお、熱遮断部6は熱伝導がし難い材料から成り、しかも棒体部6bが長いので、ダクトD内の温度が監視部7まで伝達する虞れは少なく、監視部7が過熱により損傷することはない。
【0030】
このように、熱遮断部6が案内筒5の先端を封止して密閉する第1の状態に対して、ダクトD内の状況を監視するには、外部装置Pからの操作等により、
図2に示すように監視部7を案内筒5からダクトD内に進出する第2の状態に至るように移動させる。
【0031】
図1に示す第1の状態から
図2に示す第2の状態に移行させるためには、外部装置Pからの操作等により、処理回路部4dを介して、駆動部4bを駆動させて、ウォームギア4aを回転させる。ウォームギア4aが回転を開始すると、歯部係合した噛合部を含む可動筒8は、ウォームギア4aの移動に追従して前方に移動する。また、可動筒8の回転を抑止するために、可動筒8には案内筒5等に対して係合する溝部又は突条部等が設けられているので、監視部7は回転することなく前後方向に移動する。
【0032】
なお、案内筒5自体を貫通孔2aに対して回動可能とする構造を採用することもでき、このような回動構造を採用して、処理回路部4dからの制御により、ダクトD内で監視部7により周方向を撮影することも可能である。
【0033】
また、ウォームギア4aの歯部4bの先端位置を、撮影に適した監視部7の進出位置に調整しておくことで、監視部7は
図2に示す第2の状態の所定位置で停止する。
【0034】
この状態で、監視部7によりダクトD内を撮影し、併せて測温部9によってダクトD内の温度を測定する。そして、処理回路部4dに取得した画像データ、温度データを蓄積したり、アンテナ4gを介して外部装置Pに送信することができる。
【0035】
監視部7による観測が終了すると、処理回路部4dを介して、駆動部4bを逆回転駆動させることで、監視部7は後方に移動する。そして、熱遮断部6は案内筒5内に収納され、熱遮断部6の頭部6aが貫通孔2aの先端を封止することで、第1の状態に戻ることになる。なお、この際に頭部6aが案内筒5の先端に係止されることで、これ以上に監視部7が案内筒5内で後方に移動することはない。
【0036】
このように、制御部4の駆動部4bの制御によって、熱遮断部6により案内筒5の先端を密閉する第1の状態から、監視部7が案内筒5からダクトDに進出する第2の状態に、又は第2の状態から第1の状態に、熱遮断部6と共に監視部7を移動させることができる。
【0037】
なお、第1の状態である非駆動時においても、測温部9によってダクトD内の温度測定は可能であり、処理回路部4dに取得した温度データを蓄積したり、定期的に外部装置Pに送信することもできる。
【0038】
或いは、第1の状態で処理回路部4dがダクトD内の温度データが異常値を示した場合に、外部装置Pに警報を出力したり、自動的に第2の状態に移行して、監視部7により画像データを取得することもできる。
【0039】
第1の状態においては、特に測温部9による温度データが異常値でない限り、第2の状態に移行する必要はないが、定期的に監視するようにしてもよい。例えば週1回程度、オペレータが第1の状態から第2の状態に操作し、ダクトD内の状態を観測してもよい。
【0040】
第2の状態においても、画像データ、温度データに異常がなければ、そのまま第1の状態に戻り運用を継続する。もし異常があった場合、例えば撮像データからダクトD内の付着した油分や排煙が多量であったり、温度データからダクトDの温度が通常よりも極端に高かった場合には、ダクトD内の清掃や内部点検を行うことになる。
【0041】
また、第1の状態では、監視部7のレンズは案内筒5内に収納され、ダクトD内を流れる排煙と接することはない。従って、監視部7のレンズがダクトD内に流れる排煙と接する第2の状態以外では、監視部7のレンズに油分等の汚れが付着する虞れはない。たとえ、第2の状態で監視部7のレンズに汚れが付着したとしても、監視部7を案内筒5内に収納する際に、レンズの汚れが案内筒5の先端によって き取られて除去される。
【0042】
また、第1の状態では、監視部7は不燃性である金属製の案内筒5内に収納されているため、監視部7を構成するICチップに不具合が生じ、短絡による火花が発生したり基板が燃焼しても、ダクトD内の側面D1等に付着している油分を含む汚れに引火して、ダクトD内で火災が発生することはない。
【0043】
更に、
図1に示すように、熱遮断部6の棒体部6bの長さを監視部7の直径の複数倍とすることで、閉空間監視装置1の火災発生の原因となる監視部7から、ダクトD内の汚れ等の引火性を有する個所まで十分に離れているので、出火した監視部7からダクトD内の汚れに延焼することはなく、より一層の安全性を確保することができる。
これに対して、実施例2では第1の状態の非駆動時において、案内筒5’は、ダクトD内に突出した状態、つまり監視部7がダクトD内に、ダクトDの内径の1/3程度の位置に配置された状態とされている。
また、実施例2においては、案内筒5’は熱遮断部6、6’と同じ材料で構成されており、熱遮断部6、6’同様に、熱が監視部7に伝導することを遮断している。また、案内筒5’の厚さを適宜に大きくすることで、より熱を遮断することが可能である。
実施例2における閉空間監視装置1’の操作、運用方法は、実施例1の閉空間監視装置1とほぼ同様である。実施例2の閉空間監視装置1’においても、第1の状態では監視部7は案内筒5’内に収納されているため、監視部7のレンズに油分等の汚れが付着することはない。
更に、実施例1、2の閉空間監視装置1、1’において、監視部7に対して熱遮断部6、6’を設けることで、火災発生時等の加熱による監視部7の損傷を防ぐと共に、監視部7から出火しても、ダクトD内の汚れに引火して、ダクトD内で火災が発生することはない。