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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047905
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/487 20070101AFI20240401BHJP
【FI】
H02M7/487
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153669
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】391017540
【氏名又は名称】東芝ITコントロールシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】窓岩 尚史
(72)【発明者】
【氏名】新井 卓郎
(72)【発明者】
【氏名】松本 脩平
(72)【発明者】
【氏名】田中 彰
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770BA11
5H770CA06
5H770DA01
5H770DA10
5H770DA23
5H770DA32
5H770DA41
5H770DA44
5H770EA01
5H770FA03
5H770HA03W
5H770HA03X
5H770JA11W
5H770JA11X
5H770JA13Y
5H770JA17W
5H770JA17Y
5H770JA18W
(57)【要約】      (修正有)
【課題】NPC-MMCが交流側と切り離されている状態において、直流側から単位変換器のセルコンデンサを初期充電する。
【解決手段】電力変換装置1は、直流電源の正側端子に接続され、第1スイッチング素子S1と第2スイッチング素子S2を直列接続して構成される第1スイッチングレグSL1と、直流電源DCの負側端子と第1スイッチングレグSL1との間に設けられ、第3スイッチング素子S3と第4スイッチング素子S4を直列接続して構成される第2スイッチングレグSL2を備える。正側アームA1と負側アームA2は、スイッチングレグSL1,SL2の出力端子と交流電源ACと接続する交流端子との間に直列に接続した複数の単位変換器Cを含む。制御回路20と素子駆動部21は、第1スイッチSW1により交流電源ACと電力変換装置1を切り離した状態で、第1スイッチングレグSL1と第2スイッチングレグSL2を動作させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電力と直流電力とを相互に変換する電力変換装置であって、
直流電源の正側端子に接続され、第1スイッチング素子と第2スイッチング素子を直列接続して構成される第1スイッチングレグと、
前記直流電源の負側端子と前記第1スイッチングレグとの間に設けられ、第3スイッチング素子と第4スイッチング素子を直列接続して構成される第2スイッチングレグと、
前記第1スイッチングレグに並列に接続した第1直流コンデンサと、
前記第2スイッチングレグに並列に接続した第2直流コンデンサと、
前記第1スイッチングレグの出力端子と交流電源と接続する交流端子との間に直列に接続した複数の単位変換器を含む正側アームと、
前記第2スイッチングレグの出力端子と前記交流電源と接続する交流端子との間に直列に接続した複数の単位変換器を含む負側アームと、
前記交流電源と接続する交流端子と前記正側アーム及び前記負側アームとの間に直列に接続した第1スイッチと、
前記第1スイッチングレグと前記第2スイッチングレグのゲート信号を生成する制御回路と、
前記第1スイッチングレグと前記第2スイッチングレグを動作させる素子駆動部と、
を備え、
前記制御回路と前記素子駆動部は、前記第1スイッチにより前記交流電源と電力変換装置を切り離した状態で、前記第1スイッチングレグと前記第2スイッチングレグを動作させ、前記単位変換器内の前記コンデンサを充電させることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記制御回路と前記素子駆動部により、前記第1スイッチングレグの前記スイッチング素子の1つと、前記第2スイッチングレグの前記スイッチング素子の1つをオン状態に切り替えることで、前記単位変換器内の前記コンデンサを充電させること、
を特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記直流電源と前記第1スイッチングレグ又は前記第2スイッチングレグとの間に第2スイッチを接続し、第3スイッチと抵抗を直列に接続した回路を前記第2スイッチと並列に接続したこと、
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記第1スイッチング素子と、前記第4スイッチング素子をオン状態に切り替えた後、前記第3スイッチをオン状態に切り替えることで、前記単位変換器内の前記コンデンサ及び前記第1直流コンデンサ、前記第2直流コンデンサを充電させること、
を特徴とする請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記第1スイッチングレグと前記第2スイッチングレグの前記素子駆動部が主回路の外部から給電されること、
を特徴とする請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記制御回路は、前記直流電源の直流電圧と前記単位変換器のコンデンサ電圧から、充電電流を演算し、前記充電電流が指令値に追従するように前記第1スイッチングレグと、前記第2スイッチングレグのゲート信号を生成すること、
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記制御回路は、外部から入力された充電電流指令値に前記正側アームと前記負側アームのインダクタンス成分を乗算し、設定したスイッチング周期を除し、前記直流電源の直流電圧から前記単位変換器の各コンデンサ電圧の合計値を減算した値を除した値を前記第1スイッチングレグの前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチングレグの前記第4スイッチング素子のオンオフ時比率とし、
前記第1スイッチングレグの前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチングレグの前記第4スイッチング素子が同時にオン状態となるように前記オンオフ時比率のゲート信号を生成すること、
を特徴とする請求項6に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記制御回路は、外部から入力された充電電流指令値に前記正側アームと前記負側アームのインダクタンス成分を乗算し、設定したスイッチング周期を除し、前記第1直流コンデンサ電圧から前記単位変換器の各コンデンサ電圧の合計値を減算した値を除した値を前記第1スイッチングレグの前記第1スイッチング素子のオンオフ時比率に設定し、
前記充電電流指令値に前記インダクタンス成分を乗算し、前記スイッチング周期を除し、前記第2直流コンデンサ電圧から前記単位変換器の各コンデンサ電圧の合計値を減算した値を除した値を前記第2スイッチングレグの前記第4スイッチング素子のオンオフ時比率に設定し、
前記第1スイッチングレグの前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチングレグの前記第4スイッチング素子が同時にオン状態とならないように前記オンオフ時比率のゲート信号を生成すること、
を特徴とする請求項6に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記単位変換器が、複数のスイッチング素子とセルコンデンサを備え、
前記制御回路と前記素子駆動部により、複数の前記単位変換器に設けられた前記スイッチング素子の動作が制御されることを特徴とする請求項2に記載の電力変換装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、交流電力と直流電力とを変換する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
交流電力と直流電力とを相互に変換する電力変換装置として、複数の単位変換器を多段に接続したモジュラー・マルチレベル変換器(MMC)の研究開発が進められている。モジュラー・マルチレベル変換器は、出力電圧を多レベル化することで半導体スイッチのスイッチングに伴う高調波電圧を低減することができ、系統に流出する高調波成分を低減するためのフィルタを小さくすることができる。
【0003】
MMCの単位変換器の数を減らす回路構成として、中性点クランプ形モジュラー・マルチレベル変換器(NPC-MMC)が提案されている(特許文献1)。NPC-MMCは、直流電圧を分圧する2つのコンデンサと、それぞれのコンデンサに並列に接続した半導体スイッチで構成されるスイッチングレグを備え、スイッチングレグの交流出力に単位変換器を多段に接続した回路構成である。これにより、従来のMMCのおよそ半分の単位変換器で同等の電力変換動作が可能になる。
【0004】
NPC-MMCなどのMMCは系統と連系して電力変換動作を行う前に、単位変換器のセルコンデンサを初期充電して系統電圧と同等の電圧を出力する必要がある。セルコンデンサを初期充電する方法として、例えば交流系統から充電抵抗を介して接続する方法がある(特許文献2、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-146692号公報
【特許文献2】WO2012/159668号公報
【特許文献3】WO2012/140008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
NPC-MMCが電力系統などの交流電圧源と接続する場合、交流電圧源と大きく異なる電圧を出力すると過電流が流れてしまうため、起動時に単位変換器のセルコンデンサを初期充電して交流電圧源と同等の電圧を出力する必要がある。しかしながら、高圧チョッパがゲートブロックされている初期状態において、直流側から各単位変換器のセルコンデンサを充電するための電流経路が存在せず、初期充電ができないという問題がある。
【0007】
すなわち、NPC-MMCが交流側と切り離されている状態では、直流側から単位変換器のセルコンデンサを初期充電する必要があるが、単位変換器はスイッチングレグを介して直流部と接続しているため、充電するための電流経路がなく、初期充電ができないという問題があった。
【0008】
本発明の実施形態は、NPC-MMCが交流側と切り離されている状態において、直流側から単位変換器のセルコンデンサを初期充電できる電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の電力変換装置は、交流電力と直流電力とを相互に変換する電力変換装置であって、次のような構成を備える。
(1)直流電源の正側端子に接続され、第1スイッチング素子と第2のスイッチング素子を直列接続して構成される第1スイッチングレグ。
(2)前記直流電源の負側端子と前記第1スイッチングレグとの間に設けられ、第3スイッチング素子と第4スイッチング素子を直列接続して構成される第2スイッチングレグ。
(3)前記第1スイッチングレグに並列に接続した第1直流コンデンサ。
(4)前記第2スイッチングレグに並列に接続した第2直流コンデンサ。
(5)前記第1スイッチングレグの出力端子と交流電源と接続する交流端子との間に直列に接続した複数の単位変換器を含む正側アーム。
(6)前記第2スイッチングレグの出力端子と前記交流電源と接続する交流端子との間に直列に接続した複数の単位変換器を含む負側アーム。
(7)前記交流電源と接続する交流端子と前記正側アーム及び前記負側アームとの間に直列に接続した第1スイッチ。
(8)前記第1スイッチングレグと前記第2スイッチングレグのゲート信号を生成する制御回路。
(9)前記第1スイッチングレグと前記第2スイッチングレグを動作させる素子駆動部。
(10)前記制御回路と前記素子駆動部は、前記第1スイッチにより前記交流電源と電力変換装置を切り離した状態で、前記第1スイッチングレグと前記第2スイッチングレグを動作させ、前記単位変換器内の前記コンデンサを充電させる。
【0010】
実施形態の電力変換装置は、次のような構成を採用することができる。
(1)前記制御回路と前記素子駆動部により、前記第1スイッチングレグの前記スイッチング素子の1つと、前記第2スイッチングレグの前記スイッチング素子の1つをオン状態に切り替えることで、前記単位変換器内の前記コンデンサを充電させる。
【0011】
(2)前記直流電源と前記第1スイッチングレグ又は前記第2スイッチングレグとの間に第2スイッチを接続し、第3スイッチと抵抗を直列に接続した回路を前記第2スイッチと並列に接続する。
【0012】
(3)前記第1スイッチング素子と、前記第4スイッチング素子をオン状態に切り替えた後、前記第3スイッチをオン状態に切り替えることで、前記単位変換器内の前記コンデンサ及び前記第1直流コンデンサ、前記第2直流コンデンサを充電させる。
【0013】
(4)前記第1スイッチングレグと前記第2スイッチングレグの前記素子駆動部が主回路の外部から給電される。
【0014】
(5)前記制御回路は、前記直流電源の直流電圧と前記単位変換器のコンデンサ電圧から、充電電流を演算し、前記充電電流が指令値に追従するように前記第1スイッチングレグと、前記第2スイッチングレグのゲート信号を生成する。
【0015】
(6)前記制御回路は、外部から入力された充電電流指令値に前記正側アームと前記負側アームのインダクタンス成分を乗算し、設定したスイッチング周期を除し、前記直流電源の直流電圧から前記単位変換器の各コンデンサ電圧の合計値を減算した値を除した値を前記第1スイッチングレグの前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチングレグの前記第4スイッチング素子のオンオフ時比率とし、
前記第1スイッチングレグの前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチングレグの前記第4スイッチング素子が同時にオン状態となるように前記オンオフ時比率のゲート信号を生成する。
【0016】
(7)前記制御回路は、外部から入力された充電電流指令値に前記正側アームと前記負側アームのインダクタンス成分を乗算し、設定したスイッチング周期を除し、前記第1直流コンデンサ電圧から前記単位変換器の各コンデンサ電圧の合計値を減算した値を除した値を前記第1スイッチングレグの前記第1スイッチング素子のオンオフ時比率に設定し、
前記充電電流指令値に前記インダクタンス成分を乗算し、前記スイッチング周期を除し、前記第2直流コンデンサ電圧から前記単位変換器の各コンデンサ電圧の合計値を減算した値を除した値を前記第2スイッチングレグの前記第4スイッチング素子のオンオフ時比率に設定し、
前記第1スイッチングレグの前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチングレグの前記第4スイッチング素子が同時にオン状態とならないように前記オンオフ時比率のゲート信号を生成する。
(8)前記単位変換器が、複数のスイッチング素子とセルコンデンサを備え、
前記制御回路と前記素子駆動部により、複数の前記単位変換器に設けられた前記スイッチング素子の動作が制御される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態による電力変換装置の構成例を示す回路図である。
図2】第1実施形態による充電動作の一例を説明する回路図である。
図3】第1実施形態による充電動作の一例を説明する回路図である。
図4】第1実施形態による充電動作の一例を説明する回路図である。
図5】第1実施形態における単位変換器の一例を示す図である。
図6】第2実施形態の構成を示す回路図である。
図7】第3実施形態の動作の一例を説明するためのグラフである。
図8】第4実施形態の電力変換装置の動作の一例を説明するための回路図である。
図9】第4実施形態の電力変換装置の動作の一例を説明するための回路図である。
図10】実施形態における他の単位変換器の例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1は、本発明の第1実施形態に係る電力変換装置1の構成例を示す回路図である。なお、以下においては、図1に示す電力変換装置1の構成要素と同一又は相当する構成要素には、図1で使用した符号と同一の符号を付して説明する。
【0019】
第1実施形態に係る電力変換装置1は、直流電源DCと交流電源ACとの間に接続される。本実施形態では単相の交流電源ACと接続されているが、交流電源ACの相数と同じ数の電力変換装置1を用意することで、複数相の交流電源ACと直流電源DCとの間で電力変換を行うこともできる。また、電力変換装置1の交流出力端子は交流電源ACの代わりに交流負荷に接続されてもよい。直流電源DCは直流電力を供給できるものであって、例えば蓄電池などを用いて構成される。
【0020】
電力変換装置1は、第1直流コンデンサC1と、第2直流コンデンサC2と、第1スイッチングレグSL1と、第2スイッチングレグSL2と、正側アームA1と、負側アームA2と、第1リアクトルLAと、第2リアクトルLBと、第1スイッチSW1と、制御回路20と、素子駆動部21と、を備えている。
【0021】
第1直流コンデンサC1と第1スイッチングレグSL1は並列に接続され、第2直流コンデンサC2と第2スイッチングレグSL2は並列に接続される。第1直流コンデンサC1と第2直流コンデンサC2は、直流電源DCの正負の直流端子の間に直列に接続される。第1直流コンデンサC1と第2直流コンデンサC2の接続点は中性点Pとなる。
【0022】
第1スイッチングレグSL1は、第1スイッチング素子S1と、第2スイッチング素子S2と、を備えている。第1スイッチング素子S1と第2スイッチング素子S2は、直流電源DCの正側端子と中性点Pとの間で直列に接続されている。第2スイッチングレグSL2は、第3スイッチング素子S3と、第4スイッチング素子S4と、を備えている。第3スイッチング素子S3と第4スイッチング素子S4は、中性点Pと直流電源DCの負側端子との間で直列に接続されている。
【0023】
第1スイッチング素子S1と、第2スイッチング素子S2と、第3スイッチング素子S3と、第4スイッチング素子S4とは、例えば、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの自己消孤型素子である。
【0024】
正側アームA1は、第1スイッチング素子S1と第2スイッチング素子S2の接続点と、第1リアクトルLAとの間に直列に接続される。正側アームA1は、直列に接続された複数の単位変換器Cを備えている。負側アームA2は、第3スイッチング素子S3と第4スイッチング素子S4の接続点と、第2リアクトルLBとの間に直列接続される。負側アームA2は、直列に接続された複数の単位変換器Cを備えている。
【0025】
第1リアクトルLAと第2リアクトルLBは直列に接続され、接続点は第1スイッチSW1を介して交流電源ACと接続される。第1スイッチSW1は、例えばリレーなどの機械的スイッチで構成されてもよいし、MOSFETやIGBTなどの半導体スイッチで構成されてもよい。
【0026】
図5は、単位変換器Cの一構成例を示す図である。単位変換器Cは第1チョッパセルスイッチング素子S1Hと、第2チョッパセルスイッチング素子S2Hと、チョッパセルコンデンサCHと、コンデンサ電圧検出回路VSHと、素子駆動部21と、を備えている。
【0027】
第1チョッパセルスイッチング素子S1Hと第2チョッパセルスイッチング素子S2Hとは直列に接続されている。第1チョッパセルスイッチング素子S1Hと第2チョッパセルスイッチング素子S2Hとは、例えば、MOSFETやIGBTなどの自己消孤型素子である。チョッパセルコンデンサCHは、第1チョッパセルスイッチング素子S1Hと第2チョッパセルスイッチング素子S2Hと、並列に接続されている。コンデンサ電圧検出回路VSHは、チョッパセルコンデンサCHの電圧を検出し、電圧値を制御回路20へ出力する。
【0028】
なお、単位変換器Cの構成は図5に示したものに限定されるものではなく、スイッチング素子とコンデンサで構成され、出力電圧を切り替えられるものであれば他の構成でも構わない。例えば、図10に示すような4つのスイッチング素子とコンデンサとを備えたフルブリッジ回路の構成であってもよい。
【0029】
制御回路20は、電力変換装置1の起動時に初期充電するために、素子駆動部21にゲート信号を与え、第1スイッチング素子S1と、第2スイッチング素子S2と、第3スイッチング素子S3と、第4スイッチング素子S4と、の動作を制御する。電力変換装置1の運転時には、第1スイッチング素子S1と、第2スイッチング素子S2と、第3スイッチング素子S3と、第4スイッチング素子S4と、単位変換器Cのスイッチング素子と、第1スイッチSW1と、の動作を制御する。すなわち、制御回路20と素子駆動部21は、第1スイッチSW1により交流電源ACと電力変換装置1を切り離した状態で、第1スイッチングレグSL1と第2スイッチングレグSL2を動作させる制御を行う。
【0030】
[1-2.作用]
次に、本実施形態の電力変換装置1の初期充電動作の一例について説明する。
【0031】
電力変換装置1は初期状態において、全てのスイッチング素子と第1スイッチSW1はオフ状態である。このとき、例えば、第1スイッチング素子S1と第4スイッチング素子S4をオンすると、図2に示すように、直流電源DCから第1スイッチング素子S1、正側アームA1、第1リアクトルLA、第2リアクトルLB、負側アームA2、第4スイッチング素子S4に電流が流れ、正側アームA1と負側アームA2を構成する単位変換器CのチョッパセルコンデンサCHを充電する。
【0032】
この充電電流は単位変換器Cの中では、第1チョッパセルスイッチング素子S1Hを通してチョッパセルコンデンサCHに流れる。この動作例では、中性点Pに電流が流れないため、中性点電位を変動させることなく初期充電を行うことができる。
【0033】
一方で、第1スイッチング素子S1をオンすることでも、単位変換器CのチョッパセルコンデンサCHを初期充電することができる。このとき、第1スイッチング素子S1に加えて、第3スイッチング素子S3をオンしてもよい。この場合、初期充電電流は、図3に示すように、第1直流コンデンサC1から第1スイッチング素子S1、正側アームA1、第1リアクトルLA、第2リアクトルLB、負側アームA2、第3スイッチング素子S3に流れる。しかし、この動作例では、中性点Pに電流が流れるため、中性点電位が変動する。
【0034】
また、第4スイッチング素子S4をオンすることでも、単位変換器CのチョッパセルコンデンサCHを初期充電することができる。このとき、第4スイッチング素子S4に加えて、第2スイッチング素子S2をオンしてもよい。この場合、初期充電電流は、図4に示すように、第2直流コンデンサC2から第2スイッチング素子S2、正側アームA1、第1リアクトルLA、第2リアクトルLB、負側アームA2、第4スイッチング素子S4に流れる。しかし、この動作例では、中性点Pに電流が流れるため、中性点電位が変動する。
[1-3.効果]
本実施形態によれば、NPC-MMCが交流側と切り離されている状態において、直流側から単位変換器CのチョッパセルコンデンサCHを初期充電できる。
【0035】
[2.第2実施形態]
[2-1.構成]
次に、第2実施形態の電力変換装置1について説明する。なお、以下の説明では第1実施形態の電力変換装置1と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0036】
図6は、本発明の第2実施形態に係る電力変換装置1の構成例を示す回路図である。第2実施形態は第1実施形態の電力変換装置1の変形例であって、第2スイッチSW2と、第3スイッチSW3と、充電抵抗R1と、を更に備えている。制御回路20は、第2スイッチSW2と、第3スイッチSW3と、を制御する構成を更に備えている。第2スイッチSW2と第3スイッチSW3とは、例えばリレーなどの機械的スイッチで構成されてもよいし、MOSFETやIGBTなどの半導体スイッチで構成されてもよい。
【0037】
[2-2.作用]
次に、本実施形態の電力変換装置1の初期充電動作の一例について説明する。
電力変換装置1は初期状態において、全てのスイッチング素子とスイッチSW1、SW2、SW3はオフ状態である。
【0038】
このとき、第1スイッチング素子S1と第4スイッチング素子S4をオン状態にする。その後、第3スイッチSW3をオン状態にすることで、直流電源DCから充電抵抗R1を介して単位変換器C内のチョッパセルコンデンサCH及び第1直流コンデンサC1、第2直流コンデンサC2を初期充電することができる。初期充電電流は充電抵抗R1により電流制限されるため、過電流を防止して初期充電を行うことができる。
【0039】
[2-3.効果]
本実施形態では、第1スイッチングレグSL1と第2スイッチングレグSL2の素子駆動部21を主回路の外部から電源供給することで、第1スイッチング素子S1及び第4スイッチング素子S4を駆動することができる。
【0040】
[3.第3実施形態]
[3-1.構成]
次に、第3実施形態の電力変換装置1について以下に説明する。本実施形態において、電力変換装置1の主回路構成は上記第1実施形態の図1で示したものと同様であるが、制御回路20の機能が異なる。
【0041】
本実施形態において、制御回路20は、直流電源DCの直流電圧と単位変換器CのチョッパセルコンデンサCHのコンデンサ電圧から、充電電流を演算し、充電電流が指令値に追従するように第1スイッチングレグSL1と、第2スイッチングレグSL2のゲート信号を生成する制御を行う。
【0042】
一例として、制御回路20は、外部から入力された充電電流指令値に正側アームA1と負側アームA2のインダクタンス成分を乗算し、設定したスイッチング周期Tsを除し、直流電源DCの直流電圧から単位変換器CのチョッパセルコンデンサCHの各コンデンサ電圧の合計値を減算した値を除した値を第1スイッチングレグSL1の第1スイッチング素子S1と第2スイッチングレグSL2の第4スイッチング素子S4のオンオフ時比率Dとする。そして、制御回路20は、第1スイッチングレグSL1の第1スイッチング素子S1と、第2スイッチングレグSL2の第4スイッチング素子S4とが同時にオン状態となるように、オンオフ時比率Dのゲート信号を生成する制御を行う。
【0043】
他の例として、制御回路20は、外部から入力された充電電流指令値に正側アームA1と負側アームA2のインダクタンス成分を乗算し、設定したスイッチング周期Tsを除し、第1直流コンデンサ電圧から単位変換器CのチョッパセルコンデンサCHのコンデンサ電圧の合計値を減算した値を除した値を第1スイッチングレグSL1の第1スイッチング素子S1のオンオフ時比率Dに設定してもよい。その場合、制御回路20は、充電電流指令値にインダクタンス成分を乗算し、スイッチング周期Tsを除し、第2直流コンデンサ電圧から単位変換器Cの各コンデンサ電圧の合計値を減算した値を除した値を第2スイッチングレグSL2の第4スイッチング素子S4のオンオフ時比率Dに設定する。この場合、制御回路20は、第1スイッチングレグSL1の第1スイッチング素子S1と第2スイッチングレグSL2の第4スイッチング素子S4が同時にオン状態とならないように、オンオフ時比率Dのゲート信号を生成する制御を行う必要がある。
【0044】
[3-2.作用]
本実施形態において、制御回路20は、第1スイッチングレグSL1と第2スイッチングレグSL2のオンオフ時比率Dを制御する。例えば、第1スイッチング素子S1と第4スイッチング素子S4を同じオンオフ時比率Dで制御するとき、直流電源DCの直流電圧をVdc、正側アームA1に含まれる単位変換器CのチョッパセルコンデンサCHの電圧の合計値をVcp、負側アームA2に含まれる単位変換器CのチョッパセルコンデンサCHの電圧の合計値をVcn、第1リアクトルLAと第2リアクトルLBの合計値をL、スイッチング周期Tsとすると、充電電流のピーク値をIcにするには、下記式の通りにオンオフ時比率Dを設定すればよい。
【0045】
【数1】
【0046】
これは、オンオフ時比率Dを設定する一例であり、充電電流指令値を設定して、その値に追従するようにオンオフ時比率Dを適宜調整してもよい。
【0047】
[3-3.効果]
図7はオンオフ時比率Dを制御して初期充電を行った際の各部電圧・電流波形を示した図である。このようにオンオフ時比率Dを制御することで、過電流を防止して適切な電流値で初期充電を行うことができる。また、この動作例では中性点Pに電流が流れないため、中性点電位を変動させずに初期充電を行うことができる。
【0048】
[3-4.変形例]
第3実施形態の変形例としては、下記のものが採用できる。
(1)第1スイッチング素子S1のオンオフ時比率Dのみを制御してもよい。このとき、第3スイッチング素子S3を同じゲート信号で動作させても構わない。この動作例では、中性点Pに電流が流れるため、中性点電位が変動する。
【0049】
(2)第4スイッチング素子S4のオンオフ時比率Dのみを制御してもよい。このとき、第2スイッチング素子S2を同じゲート信号で動作させても構わない。この動作例においても、中性点Pに電流が流れるため、中性点電位が変動する。
【0050】
(3)本実施形態では、第1スイッチングレグSL1及び第2スイッチングレグSL2の素子駆動部21は、それぞれ第1直流コンデンサC1、第2直流コンデンサC2から電源供給されてもよいし、主回路の外部から電源供給されてもよい。
【0051】
[4.第4実施形態]
第1実施形態及び第2実施形態、第3実施形態で説明した電力変換装置1では、単位変換器C内のチョッパセルコンデンサCHを一定電圧以上に充電することができないという課題がある。更に、チョッパセルコンデンサCHの特性のばらつきによって、充電電圧が単位変換器Cごとに異なるという課題がある。これを解決する第4実施形態の電力変換装置1について以下に説明する。
【0052】
[4-1.構成]
本実施形態において、電力変換装置1の主回路構成は上記第1実施形態の図1で示したものと同様である。制御回路20は、電力変換装置1の起動時に初期充電するために、素子駆動部21にゲート信号を与え、第1スイッチング素子S1と、第2スイッチング素子S2と、第3スイッチング素子S3と、第4スイッチング素子S4と、複数の単位変換器C内の第1チョッパセルスイッチング素子S1Hと、第2チョッパセルスイッチング素子S2H、第1スイッチSW1と、の動作を制御する。
【0053】
[4-2.作用]
次に、本実施形態の電力変換装置1の初期充電動作の一例について説明する。正側アームA1と負側アームA2を構成する複数の単位変換器Cのうち一つ以上の単位変換器C内の第2チョッパセルスイッチング素子S2Hをオン状態にする。このとき、第1リアクトルLAと第2リアクトルLBに印加される電圧は第2チョッパセルスイッチング素子S2Hをオン状態にした単位変換器Cの分だけ増加する。
【0054】
これにより、例えば、第1スイッチング素子S1と第4スイッチング素子S4をオン状態にすることで、第2チョッパセルスイッチング素子S2Hをオン状態にしていない単位変換器C内のチョッパセルコンデンサCHにより大きな充電電流を流すことができ、単位変換器Cをスイッチングしない場合よりも高い電圧まで充電することができる。
【0055】
図8は、第1スイッチング素子S1と第4スイッチング素子S4をオン状態にした初期充電動作と各部の電圧を示したものであり、Vdcは直流電源DCの電圧、Vcは単位変換器Cの出力電圧、VLは第1リアクトルLAと第2リアクトルLBの逆起電力の総和である。このとき、VL=Vdc―6×Vcである。
【0056】
図9は、本実施形態の初期充電動作を行い、正側アームA1を構成する単位変換器Cのうち一つの単位変換器C内の第2チョッパセルスイッチング素子S2Hをオン状態とした直後の各部の電圧を示したものである。このとき、VLはVL=Vdc―5×Vcとなり、第1リアクトルLAと第2リアクトルLBの逆起電力が大きくなっている。
【0057】
[4-3.効果]
本実施形態によれば、初期充電動作を実施する前よりも大きな充電電流を流すことができ、第2チョッパセルスイッチング素子S2Hをオン状態にしていない単位変換器C内のチョッパセルコンデンサCHをより高い電圧まで充電することができる。
【0058】
また、単位変換器C内の第1チョッパセルスイッチング素子S1Hと第2チョッパセルスイッチング素子S2Hのオンオフ時比率Dを制御して、充電電流を制御することにより、所望の電圧までチョッパセルコンデンサCHを充電することができる。
【0059】
[4-4.変形例]
本実施形態の充電動作は、第1実施形態又は、第2実施形態、第3実施形態により、一定の電圧までチョッパセルコンデンサCHを充電した後、実施してもよい。本実施形態では、第1チョッパセルスイッチング素子S1Hと、第2チョッパセルスイッチング素子S2Hの素子駆動部21は、チョッパセルコンデンサCHから電源供給されてもよいし、主回路の外部から電源供給されてもよい。また、前記のように各実施形態における単位変換器の構成はチョッパセルに限定されるものではなく、4つのスイッチング素子でフルブリッジ回路を構成したブリッジセルでも充電が可能である。
【0060】
[5.他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1…電力変換装置
20…制御回路
21…素子駆動部
A1…正側アーム
A2…負側アーム
P…中性点
AC…交流電源
C…単位変換器
C1…第1直流コンデンサ
C2…第2直流コンデンサ
CH…チョッパセルコンデンサ
DC…直流電源
LA…第1リアクトル
LB…第2リアクトル
R1…充電抵抗
S1…第1スイッチング素子
S2…第2スイッチング素子
S3…第3スイッチング素子
S4…第4スイッチング素子
S1H…第1チョッパセルスイッチング素子
S2H…第2チョッパセルスイッチング素子
SL1…第1スイッチングレグ
SL2…第2スイッチングレグ
SW1…第1スイッチ
SW2…第2スイッチ
SW3…第3スイッチ
VSH…コンデンサ電圧検出回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10