(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047933
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】媒体給送装置、記録装置
(51)【国際特許分類】
B65H 3/06 20060101AFI20240401BHJP
【FI】
B65H3/06 340E
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153712
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095452
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 博樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130535
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 明
(74)【代理人】
【識別番号】100183025
【弁理士】
【氏名又は名称】大角 孝一
(72)【発明者】
【氏名】古澤 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】吉野 哲史
【テーマコード(参考)】
3F343
【Fターム(参考)】
3F343FA02
3F343FB01
3F343FC01
3F343GA01
3F343GB01
3F343GC01
3F343GD01
3F343HA14
3F343JA01
3F343JA19
3F343KB04
3F343KB05
3F343LA04
3F343LA15
3F343LA16
3F343LB06
3F343LD24
3F343LD28
3F343MB13
3F343MC11
(57)【要約】
【課題】最小積載枚数即ち1枚の場合から最大積載枚数までの全ての場合において給送ローラーがシート上面に接する力を適切にする。
【解決手段】媒体給送装置は、媒体が載置される載置部と、載置部に載置された媒体を給送する給送ローラーと、駆動軸を中心に揺動可能に設けられるアーム部であって、給送ローラーを支持するアーム部と、駆動軸から給送ローラーへと動力を伝達する動力伝達部と、を備え、動力伝達部は、互いに噛み合い、第1回転軸を中心に回転可能な第1歯車と第2回転軸を中心に回転可能な第2歯車とを有し、第1回転軸の軸径は、第2回転軸の軸径より大きい。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体が載置される載置部と、
前記載置部に載置された媒体を給送する給送ローラーと、
駆動軸を中心に揺動可能に設けられるアーム部であって、前記給送ローラーを支持する前記アーム部と、
前記駆動軸から前記給送ローラーへと動力を伝達する動力伝達部と、
を備え、
前記動力伝達部は、互いに噛み合う、第1回転軸を中心に回転可能な第1歯車と第2回転軸を中心に回転可能な第2歯車とを有し、
前記第1回転軸の軸径は、前記第2回転軸の軸径より大きい、
ことを特徴とする媒体給送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の媒体給送装置において、前記第1回転軸の摩擦係数が、前記第2回転軸の摩擦係数より大きい、
ことを特徴とする媒体給送装置。
【請求項3】
媒体が載置される載置部と、
前記載置部に載置された媒体を給送する給送ローラーと、
駆動軸を中心に揺動可能に設けられるアーム部であって、前記給送ローラーを支持する前記アーム部と、
前記駆動軸から前記給送ローラーへと動力を伝達する動力伝達部と、
を備え、
前記動力伝達部は、互いに噛み合う、第1回転軸を中心に回転可能な第1歯車と第2回転軸を中心に回転可能な第2歯車とを有し、
前記第1回転軸の摩擦係数が、前記第2回転軸の摩擦係数より大きい、
ことを特徴とする媒体給送装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の媒体給送装置において、前記第1回転軸は、樹脂材料で形成され、
前記第2回転軸は、金属材料で形成される、
ことを特徴とする媒体給送装置。
【請求項5】
請求項1または請求項3に記載の媒体給送装置において、前記第1歯車は、前記給送ローラーが前記載置部から媒体を送り出す際の前記給送ローラーの回転方向と反対の方向に回転し、
前記第2歯車は、前記給送ローラーの回転方向に回転する、
ことを特徴とする媒体給送装置。
【請求項6】
請求項1または請求項3に記載の媒体給送装置において、前記第1歯車は、前記給送ローラーが前記載置部から媒体を送り出す際の前記給送ローラーの回転方向に回転し、
前記第2歯車は、前記給送ローラーの回転方向と反対の方向に回転する、
ことを特徴とする媒体給送装置。
【請求項7】
請求項5に記載の媒体給送装置において、前記駆動軸の回転方向は、前記アーム部が媒体に向かう方向である、
ことを特徴とする媒体給送装置。
【請求項8】
請求項1または請求項3に記載の媒体給送装置において、前記第1歯車と前記第2歯車は、同一の材料によって形成される、
ことを特徴とする媒体給送装置。
【請求項9】
請求項1または請求項3に記載の媒体給送装置において、
前記動力伝達部は、
前記第1歯車と噛み合う歯車であって、第3回転軸を中心に回転可能な第3歯車と、
前記第2歯車と噛み合う歯車であって、第4回転軸を中心に回転可能な第4歯車と、
を有し、
前記第3回転軸の軸径は、前記第1回転軸の軸径及び前記第4回転軸の軸径よりも小さく、
前記第4回転軸の軸径は、前記第2回転軸の軸径及び前記第3回転軸の軸径よりも大きい、
ことを特徴とする媒体給送装置。
【請求項10】
請求項1または請求項3に記載の媒体給送装置において、
前記動力伝達部は、
前記第1歯車と噛み合う歯車であって、第3回転軸を中心に回転可能な第3歯車と、
前記第2歯車と噛み合う歯車であって、第4回転軸を中心に回転可能な第4歯車と、
を有し、
前記第3回転軸の摩擦係数は、前記第1回転軸の摩擦係数及び前記第4回転軸の摩擦係数よりも小さく、
前記第4回転軸の摩擦係数は、前記第2回転軸の軸径及び前記第3回転軸の摩擦係数よりも大きい、
ことを特徴とする媒体給送装置。
【請求項11】
請求項1または請求項3に記載の前記媒体給送装置と、
前記給送ローラーによって給送された媒体に記録を行う記録部と、
を備えることを特徴とする記録装置。
【請求項12】
請求項11に記載の記録装置において、
前記記録部を収容し、底部に開口が形成された筐体と、
前記給送ローラーが媒体から退避した状態の前記アーム部の姿勢である退避姿勢を維持するレバー部と、
を更に備え、
前記アーム部は、前記駆動軸に対して着脱可能に構成され、
前記レバー部は、前記開口を介して前記筐体の外側から操作可能な操作部を有し、
前記開口を介して前記筐体の外側から前記レバー部を操作して前記退避姿勢を解除することにより、前記開口を介して前記アーム部を着脱可能である、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項13】
請求項12に記載の記録装置において、
前記筐体に対して変位可能な本体部を更に備え、
前記記録部及び前記媒体給送装置は前記本体部に設けられ、
前記本体部は、
前記筐体に収容された閉位置と、
前記筐体から突出した開位置と、
の間で変位可能であり、
前記アーム部は、前記本体部が前記閉位置にあるときに、前記開口を介して着脱可能である、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項14】
請求項13に記載の記録装置において、
前記載置部は、
前記本体部に対し着脱可能に構成され、
前記本体部に対し装着された状態において前記開口を覆い、前記筐体から取り外された状態において前記開口を開放する、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項15】
媒体を載置する載置部に載置された媒体を給送する給送ローラーと、
駆動軸を中心に揺動可能に設けられるアーム部であって、前記給送ローラーを支持する前記アーム部と、
前記駆動軸から前記給送ローラーへと動力を伝達する動力伝達部と、
を備え、
前記動力伝達部は、互いに噛み合う、第1回転軸を中心に回転可能な第1歯車と第2回転軸を中心に回転可能な第2歯車とを有し、
前記第1回転軸の軸径は、前記第2回転軸の軸径より大きい、
ことを特徴とする媒体給送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体を給送する媒体給送装置、およびこれを備えた記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シートを給送する給送部の構成として、支軸と、支軸に回動可能に支持されたアームと、アームの回動先端に設けられた給送ローラーとを備える構成が開示されている。給送ローラーは、支軸を中心としたアームの回動によってシートに対して進退する。アームには複数の伝達ギアが設けられ、伝達ギアによって支軸から給送ローラーへとモーターの駆動力が伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シートに対するアームの角度はシートの積載枚数に応じて変化する。シートに対するアームの角度が変化すると、給送ローラーがシート上面に接する力が変化する。給送ローラーがシート上面に接する力とは、給送ローラーがシート上面を押す力である。給送ローラーがシート上面に接する力が強すぎると重送の虞があり、逆に弱すぎると媒体が給送されないノンフィードの虞がある。
装置構成に応じてシートの積載可能枚数は変わる為、最小積載枚数即ち1枚の場合から最大積載枚数までの全ての場合において給送ローラーがシート上面に接する力を適切にすることには困難性が伴う。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する為の、本発明の媒体給送装置は、媒体が載置される載置部と、前記載置部に載置された媒体を給送する給送ローラーと、駆動軸を中心に揺動可能に設けられるアーム部であって、前記給送ローラーを支持する前記アーム部と、前記駆動軸から前記給送ローラーへと動力を伝達する動力伝達部と、を備え、前記動力伝達部は、互いに噛み合う、第1回転軸を中心に回転可能な第1歯車と第2回転軸を中心に回転可能な第2歯車とを有し、前記第1回転軸の軸径は、前記第2回転軸の軸径より大きいことを特徴とする。
【0006】
また本発明の媒体給送装置は、媒体が載置される載置部と、前記載置部に載置された媒体を給送する給送ローラーと、駆動軸を中心に揺動可能に設けられるアーム部であって、前記給送ローラーを支持する前記アーム部と、前記駆動軸から前記給送ローラーへと動力を伝達する動力伝達部と、を備え、前記動力伝達部は、互いに噛み合う、第1回転軸を中心に回転可能な第1歯車と第2回転軸を中心に回転可能な第2歯車とを有し、前記第1回転軸の摩擦係数が、前記第2回転軸の摩擦係数より大きいことを特徴とする。
【0007】
また本発明の媒体給送装置は、媒体を載置する載置部に載置された媒体を給送する給送ローラーと、駆動軸を中心に揺動可能に設けられるアーム部であって、前記給送ローラーを支持する前記アーム部と、前記駆動軸から前記給送ローラーへと動力を伝達する動力伝達部と、を備え、前記動力伝達部は、互いに噛み合う、第1回転軸を中心に回転可能な第1歯車と第2回転軸を中心に回転可能な第2歯車とを有し、前記第1回転軸の軸径は、前記第2回転軸の軸径より大きいことを特徴とする。
【0008】
また本発明の記録装置は、上記いずれかの媒体給送装置と、前記給送ローラーによって給送された媒体に記録を行う記録部とを備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】本体部が第1開位置にあるプリンターの斜視図。
【
図3】本体部が第2開位置にあるプリンターの斜視図。
【
図4】本体部が閉位置にあるプリンターの底部の斜視図。
【
図8】アームが退避姿勢にある場合の開口部内側の斜視図。
【
図9】アームが退避姿勢にある場合の駆動軸及びアームの断面図。
【
図10】アームが着脱可能姿勢にある場合の駆動軸及びアームの断面図。
【
図11】アームが取り外された状態の開口部内側の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を概略的に説明する。
第1の態様に係る媒体給送装置は、媒体が載置される載置部と、前記載置部に載置された媒体を給送する給送ローラーと、駆動軸を中心に揺動可能に設けられるアーム部であって、前記給送ローラーを支持する前記アーム部と、前記駆動軸から前記給送ローラーへと動力を伝達する動力伝達部と、を備え、前記動力伝達部は、互いに噛み合う、第1回転軸を中心に回転可能な第1歯車と第2回転軸を中心に回転可能な第2歯車とを有し、前記第1回転軸の軸径は、前記第2回転軸の軸径より大きいことを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、前記第1回転軸の軸径を前記第2回転軸の軸径より大きくすることで、前記給送ローラーが媒体に接する力を容易に調整することができる。これにより、前記載置部への媒体の最小積載枚数即ち1枚の場合から最大積載枚数までの場合において前記給送ローラーが媒体に接する力をより適切にすることができる。
前記第1回転軸の軸径を前記第2回転軸の軸径より大きくすることで、前記給送ローラーが媒体に接する力を調整できることについては、後に詳しく説明する。
【0012】
第2の態様は、第1の態様において、前記第1回転軸の摩擦係数が、前記第2回転軸の摩擦係数より大きいことを特徴とする。
本態様によれば、前記第1回転軸の摩擦係数を前記第2回転軸の摩擦係数より大きくすることで、前記給送ローラーが媒体に接する力を更に調整することができ、前記給送ローラーが媒体に接する力の調整の自由度が向上する。
前記第1回転軸の摩擦係数を前記第2回転軸の摩擦係数より大きくすることで、前記給送ローラーが媒体に接する力を調整できることについては、後に詳しく説明する。
尚、本明細書において「第1回転軸の摩擦係数」とは、前記第1歯車の回転に際して前記第1回転軸の外周面及び当該外周面との間で摩擦が生じる面の間の摩擦係数を意味し、また「第2回転軸の摩擦係数」とは、前記第2歯車の回転に際して前記第2回転軸の外周面及び当該外周面との間で摩擦が生じる面の間の摩擦係数を意味する。
【0013】
第3の態様に係る媒体給送装置は、媒体が載置される載置部と、前記載置部に載置された媒体を給送する給送ローラーと、駆動軸を中心に揺動可能に設けられるアーム部であって、前記給送ローラーを支持する前記アーム部と、前記駆動軸から前記給送ローラーへと動力を伝達する動力伝達部と、を備え、前記動力伝達部は、互いに噛み合う、第1回転軸を中心に回転可能な第1歯車と第2回転軸を中心に回転可能な第2歯車とを有し、前記第1回転軸の摩擦係数が、前記第2回転軸の摩擦係数より大きいことを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、前記第1回転軸の摩擦係数を前記第2回転軸の摩擦係数より大きくすることで、前記給送ローラーが媒体に接する力を容易に調整することができる。これにより、前記載置部への媒体の最小積載枚数即ち1枚の場合から最大積載枚数までの場合において前記給送ローラーが媒体に接する力をより適切にすることができる。
【0015】
第4の態様は、第2のまたは第3の態様において、前記第1回転軸は、樹脂材料で形成され、前記第2回転軸は、金属材料で形成されることを特徴とする。
本態様によれば、前記第1回転軸を樹脂材料で形成し、前記第2回転軸を金属材料で形成することで、前記第1回転軸の摩擦係数を前記第2回転軸の摩擦係数より簡単に大きくすることができる。
【0016】
第5の態様は、第1のまたは第3の態様において、前記第1歯車は、前記給送ローラーが前記載置部から媒体を送り出す際の前記給送ローラーの回転方向と反対の方向に回転し、前記第2歯車は、前記給送ローラーの回転方向に回転することを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、前記給送ローラーが媒体に接する力を小さくでき、媒体の重送を抑制できる。その詳細については、後に詳しく説明する。
尚、本態様は上記第1または第3の態様に限らず、上記第2、第4のいずれかの態様に適用しても良い。
【0018】
第6の態様は、第1のまたは第3の態様において、前記第1歯車は、前記給送ローラーが前記載置部から媒体を送り出す際の前記給送ローラーの回転方向に回転し、前記第2歯車は、前記給送ローラーの回転方向と反対の方向に回転することを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、前記給送ローラーが媒体に接する力を大きくでき、媒体のノンフィードを抑制できる。その詳細については、後に詳しく説明する。
尚、本態様は上記第1または第3の態様に限らず、上記第2、第4のいずれかの態様に適用しても良い。
【0020】
第7の態様は、第5の態様において、前記駆動軸の回転方向は、前記アーム部が媒体に向かう方向であることを特徴とする。
前記駆動軸の回転方向が、前記アーム部が媒体に向かう方向であると、前記給送ローラーが媒体に接する力が大きくなり易く、重送の虞が高くなり易いが、上述した第5の態様の作用効果により、前記給送ローラーが媒体に接する力を抑制でき、重送を抑制できる。
尚、本態様は上記第5の態様に限らず、上記第1~第4、第6のいずれかの態様に適用しても良い。
【0021】
第8の態様は、第1のまたは第3の態様において、前記第1歯車と前記第2歯車は、同一の材料によって形成されることを特徴とする。
前記第1歯車と前記第2歯車とが異なる材料によって形成されると、噛み合い部位においていずれか一方の摩耗が進行してしまう虞があるが、本態様によれば、前記第1歯車と前記第2歯車は同一の材料によって形成されることから、前記第1歯車と前記第2歯車のいずれか一方の摩耗が進行してしまうことを抑制できる。
尚、本態様は上記第1または第3の態様に限らず、上記第2、第4~第7のいずれかの態様に適用しても良い。
【0022】
第9の態様は、第1のまたは第3の態様において、前記動力伝達部は、前記第1歯車と噛み合う歯車であって、第3回転軸を中心に回転可能な第3歯車と、前記第2歯車と噛み合う歯車であって、第4回転軸を中心に回転可能な第4歯車と、を有し、前記第3回転軸の軸径は、前記第1回転軸の軸径及び前記第4回転軸の軸径よりも小さく、前記第4回転軸の軸径は、前記第2回転軸の軸径及び前記第3回転軸の軸径よりも大きいことを特徴とする。
【0023】
本態様によれば、同じ方向に回転する歯車、即ち前記アーム部に同じ方向の外力を付与する歯車に関し、前記給送ローラーが媒体に接する力の調整方向が同じになる様にすることで、前記給送ローラーが媒体に接する力の調整幅を大きくすることができ、前記給送ローラーが媒体に接する力の調整の自由度が向上する。
尚、本態様は上記第1または第3の態様に限らず、上記第2、第4~第8のいずれかの態様に適用しても良い。
【0024】
第10の態様は、第1のまたは第3の態様において、前記動力伝達部は、前記第1歯車と噛み合う歯車であって、第3回転軸を中心に回転可能な第3歯車と、前記第2歯車と噛み合う歯車であって、第4回転軸を中心に回転可能な第4歯車と、を有し、前記第3回転軸の摩擦係数は、前記第1回転軸の摩擦係数及び前記第4回転軸の摩擦係数よりも小さく、前記第4回転軸の摩擦係数は、前記第2回転軸の軸径及び前記第3回転軸の摩擦係数よりも大きいことを特徴とする。
【0025】
本態様によれば、同じ方向に回転する歯車、即ち前記アーム部に同じ方向の外力を付与する歯車に関し、前記給送ローラーが媒体に接する力の調整方向が同じになる様にすることで、前記給送ローラーが媒体に接する力の調整幅を大きくすることができ、前記給送ローラーが媒体に接する力の調整の自由度が向上する。
尚、本明細書において「第3回転軸の摩擦係数」とは、前記第3歯車の回転に際して前記第3回転軸の外周面及び当該外周面との間で摩擦が生じる面の間の摩擦係数を意味し、また「第4回転軸の摩擦係数」とは、前記第4歯車の回転に際して前記第4回転軸の外周面及び当該外周面との間で摩擦が生じる面の間の摩擦係数を意味する。
尚、本態様は上記第1または第3の態様に限らず、上記第2、第4~第9のいずれかの態様に適用しても良い。
【0026】
第11の態様に係る記録装置は、第1のまたは第3の態様に係る前記媒体給送装置と、前記給送ローラーによって給送された媒体に記録を行う記録部と、を備えることを特徴とする。
本態様によれば、媒体に記録を行う記録装置において、上述した第1のまたは第3の態様の作用効果が得られる。
尚、媒体に記録を行う記録装置は、上記第1または第3の態様に係る媒体給送装置に限らず、上記第2、第4~第10のいずれかの態様に係る媒体給送装置を備えても良い。
【0027】
第12の態様は、第11の態様において、前記記録部を収容し、底部に開口が形成された筐体と、前記給送ローラーが媒体から退避した状態の前記アーム部の姿勢である退避姿勢を維持するレバー部と、を更に備え、前記アーム部は、前記駆動軸に対して着脱可能に構成され、前記レバー部は、前記開口を介して前記筐体の外側から操作可能な操作部を有し、前記開口を介して前記筐体の外側から前記レバー部を操作して前記退避姿勢を解除することにより、前記開口を介して前記アーム部を着脱可能であることを特徴とする。
【0028】
本態様によれば、前記開口を介して前記筐体の外側から前記レバー部を操作して前記退避姿勢を解除することにより、前記開口を介して前記アーム部を着脱可能であることから、前記給送ローラーの交換が容易となる。
【0029】
第13の態様は、第12の態様において、前記筐体に対して変位可能な本体部を更に備え、前記記録部及び前記媒体給送装置は前記本体部に設けられ、前記本体部は、前記筐体に収容された閉位置と、前記筐体から突出した開位置と、の間で変位可能であり、前記アーム部は、前記本体部が前記閉位置にあるときに、前記開口を介して着脱可能であることを特徴とする。
【0030】
本態様によれば、前記本体部は、前記筐体に収容された閉位置と、前記筐体から突出した開位置と、の間で変位可能であることから、前記本体部のメンテナンスを容易に行うことができる。また前記アーム部は、前記本体部が前記閉位置にあるときに、前記開口を介して着脱可能であることから、前記本体部のメンテナンスを行う際に前記アーム部が意図せず外れてしまうことを抑制できる。
【0031】
第14の態様は、第13の態様において、前記載置部は、前記本体部に対し着脱可能に構成され、前記本体部に対し装着された状態において前記開口を覆い、前記筐体から取り外された状態において前記開口を開放することを特徴とする。
本態様によれば、前記載置部は、前記筐体に対し着脱可能に構成され、前記筐体に対し装着された状態において前記開口を覆うことから、前記開口を介して装置内部に不用意にアクセスされることを抑制できる。
【0032】
第15の態様に係る媒体給送装置は、媒体を載置する載置部に載置された媒体を給送する給送ローラーと、駆動軸を中心に揺動可能に設けられるアーム部であって、前記給送ローラーを支持する前記アーム部と、前記駆動軸から前記給送ローラーへと動力を伝達する動力伝達部と、を備え、前記動力伝達部は、互いに噛み合う、第1回転軸を中心に回転可能な第1歯車と第2回転軸を中心に回転可能な第2歯車とを有し、前記第1回転軸の軸径は、前記第2回転軸の軸径より大きいことを特徴とする。
【0033】
本態様によれば、前記第1回転軸の軸径を前記第2回転軸の軸径より大きくすることで、前記給送ローラーが媒体に接する力を容易に調整することができる。これにより、前記載置部への媒体の最小積載枚数即ち1枚の場合から最大積載枚数までの場合において前記給送ローラーが媒体に接する力をより適切にすることができる。
前記第1回転軸の軸径を前記第2回転軸の軸径より大きくすることで、前記給送ローラーが媒体に接する力を調整できることについては、後に詳しく説明する。
【0034】
以下、本発明を具体的に説明する。
以下では記録装置の一例としてインクジェットプリンター1について説明する。以下、インクジェットプリンター1を単にプリンター1という。
尚、各図において示すX-Y-Z座標系は、X軸方向が装置幅方向であり、記録が行われる媒体の幅方向となる。プリンター1の操作者から見て+X方向が左側となり、-X方向が右側となる。
Y軸方向は装置奥行方向であり、記録時の媒体搬送方向に沿う方向である。+Y方向は装置背面から前面に向かう方向であり、-Y方向は装置前面から背面に向かう方向である。本実施形態ではプリンター1の周囲を構成する側面のうち、操作パネル5が設けられた側面つまり+Y方向の側面が装置前面となり、-Y方向の側面が装置背面となる。
Z軸方向は鉛直方向に沿う方向であり、装置高さ方向である。+Z方向が鉛直上方向であり、-Z方向が鉛直下方向である。
尚、以下では媒体が送られていく方向を「下流」と称し、その逆方向を「上流」と称する場合がある。
【0035】
図1においてプリンター1は、本体部2と、本体部2を覆う筐体3とを備えている。筐体3は、本体部2の上面及びX軸方向の両側面を覆う上部筐体3Aと、本体部2の底部を覆う底部筐体3B(
図4参照)とを備えている。
本体部2の前面には、各種操作設定を行う為の操作パネル5が設けられている。また本体部2の前面には、インク残量視認部4が設けられている。インク残量視認部4は、インク収容部8(
図2参照)に収容されたインク残量を視認する為の部位である。
【0036】
また本体部2の前面において操作パネル5の下には、開閉可能な前面カバー6が設けられている。この前面カバー6は、後述する媒体カセット20に対して回転軸6b(
図6参照)を中心に回転可能に設けられ、開くことで記録の行われた媒体を排出する排出口11(
図2、
図3参照)を開放する。尚、前面カバー6の内面6a(
図2、
図3参照)は、開いた状態において排出口11から排出される媒体を支持する排出トレイとして機能する。
【0037】
本体部2は、筐体3に対してY軸方向に変位可能に設けられている。本体部2は、筐体3に対して所定位置に保持するように構成される。所定位置は、閉位置と、第1開位置と、第2開位置とを含む。閉位置は、本体部2が筐体3に最も覆われる位置であって、
図1に示す位置であり、本体部2が筐体3から+Y方向に距離D0だけ突出する位置である。但し閉位置は、本体部2が筐体3から突出しない位置、即ち距離D0=0であってもよい。
第1開位置は、
図2に示す様に本体部2が+Y方向に向かって距離D0より長い第1距離D1だけ筐体3から突出する位置である。第2開位置は、
図3に示す様に本体部2が第1開位置から更に+Y方向に向かって第1距離D1よりも長い第2距離D2だけ筐体3から突出する位置である。
本体部2は、不図示の保持手段によって上記の各所定位置で保持される。
【0038】
本体部2が
図2に示す第1開位置にある場合、第1カバー部7が開閉可能となる。
図2は第1カバー部7が開いた状態を示している。第1カバー部7を開くことで、インクを収容するインク収容部8へのアクセスが可能となる。インク収容部8はインク色毎に区画されており、それぞれの収容部にはキャップ9が開閉可能に設けられている。キャップ9を開くことで、インク収容部8へのインクの補充が可能となる。
また本体部2が
図2に示す第1開位置にある場合、廃液収容体10が着脱可能となる。廃液収容体10には、後述する記録ヘッド42から廃液として排出されたインクが、不図示のメンテナンス装置を介して回収される。
【0039】
本体部2が
図3に示す第2開位置にある場合、第2カバー部15が開閉可能となる。
図3は第2カバー部15が開いた状態を示している。第2カバー部15を開くと、後述するキャリッジ41と、キャリッジ41の下側にある媒体搬送領域RAが露呈し、紙ジャムの処理などを行うことができる。
【0040】
次に、
図5に示す媒体カセット20は、給送前の媒体を載置する載置部の一例である。媒体カセット20は、本体部2に対してY軸方向に沿って着脱可能である。媒体カセット20は、給送前の媒体を収容する第1領域20aと、第1領域20aに対し+Y方向に位置する領域であって、記録の行われた媒体を支持する第2領域20bとを備えている。第1領域20aと第2領域20bは、仕切板21によって区画されている。
第1領域20aに収容される給送前の媒体は、底板20cによって支持される。第2領域20bに排出される記録後の媒体は、底板20d及び前面カバー6の内面6aによって支持される。
【0041】
図4に示す様に筐体3を構成する底部筐体3Bには、開口3aが形成される。本体部2が上述した閉位置にあり、且つ媒体カセット20が本体部2から取り外された状態では、開口3aの内側に後述するアーム部25が露呈する。尚、
図4では開口3aの内側領域RBの様子は図示を省略しており、内側領域RBの様子は
図8に詳しく示されている。そしてこの状態において、アーム部25の本体部2に対する着脱が可能となる。アーム部25の本体部2に対する着脱については、後に改めて説明する。
尚、アーム部25は本体部2を構成する為、媒体カセット20が本体部2から取り外された状態であっても、本体部2が上述した第1開位置と第2開位置にある場合は、アーム部25は開口3aに対し+Y方向に位置し、開口3aを介してアーム部25を着脱することができない構成である。
【0042】
続いて
図6を参照してプリンター1における媒体搬送経路について説明する。
図6において媒体搬送経路は破線で示されている。プリンター1は媒体を搬送する媒体搬送経路として、装置底部の媒体カセット20から媒体を給送する際の給送経路T1、記録ヘッド42と対向する位置を通る記録用経路T2、記録の行われた媒体を排出する排出経路T3、記録の行われた媒体を反転ローラー27へ送り込む反転経路T4、及びノズルチェックパターンが記録された媒体が送り込まれる読み取り経路T5を備えている。ノズルチェックパターンは記録ヘッド42によるインクの吐出状態をチェックする為の記録画像の一例である。
【0043】
本実施例において給送経路T1は給送ローラー24から反転ローラー27を経由して搬送ローラー対32に至る経路である。
記録用経路T2は搬送ローラー対32から排出ローラー対35に至る経路である。本実施形態において記録用経路T2はY軸方向即ち装置奥行き方向に沿って延び、即ち水平方向に沿って延びる。
排出経路T3は排出ローラー対35から下流(+Y方向)の経路である。
反転経路T4は搬送ローラー対32から反転ローラー27を経由して再び搬送ローラー対32に至る経路である。
読み取り経路T5は搬送ローラー対32より-Y方向の経路であって読み取り部47と対向する経路である。
【0044】
給送経路T1では、媒体は媒体カセット20から、給送ローラー24によって-Y方向に送り出される。
図6において符号Pは媒体カセット20に収容された媒体を示している。
給送ローラー24は駆動軸26を中心に回転可能なアーム部25の-Y方向先端部に支持されている。アーム部25は駆動軸26を中心に揺動可能であり、揺動することで給送ローラー24を媒体カセット20に収容された媒体に対して進退させる。
給送ローラー24は、不図示のモーターの動力を受けて
図6の反時計回り方向に回転することで、媒体カセット20から媒体を送り出す。
アーム部25には、駆動軸26の動力を給送ローラー24へ伝達する動力伝達部48(
図12参照)が設けられているが、これについては後に詳しく説明する。
尚、媒体カセット20、アーム部25、駆動軸26、動力伝達部48、及び給送ローラー24のこれらは、媒体を給送する媒体給送装置100を構成する。但し、媒体を給送する媒体給送装置100が、アーム部25、動力伝達部48、及び給送ローラー24によって構成されても良い。
【0045】
給送ローラー24によって-Y方向に送り出された媒体は、反転ローラー27によって湾曲反転させられ、搬送ローラー対32に向けて送られる。
反転ローラー27は不図示のモーターの動力を受けて
図6の反時計回り方向に回転する。反転ローラー27の周囲には第1従動ローラー28、第2従動ローラー29、第3従動ローラー30、及び第4従動ローラー31が設けられている。給送ローラー24によって媒体カセット20から送り出された媒体は、反転ローラー27と、第1従動ローラー28、第2従動ローラー29、及び第3従動ローラー30とでニップされて下流に送られる。
【0046】
記録用経路T2に設けられた搬送ローラー対32は、搬送駆動ローラー33と、搬送従動ローラー34とを備えて成る。搬送駆動ローラー33は、不図示のモーターの動力を受けて正転及び逆転する。搬送従動ローラー34は、搬送駆動ローラー33との間で媒体をニップして従動回転する。
【0047】
記録用経路T2において搬送ローラー対32の下流には、記録部の一例である記録ヘッド42と、支持部材45とが対向配置されている。記録ヘッド42は、本実施形態ではインクを吐出するインクジェット記録ヘッドとして構成されている。記録ヘッド42には、上述したインク収容部8からインクチューブ44を介してインクが供給される。
支持部材45は、媒体を支持することにより、記録ヘッド42と媒体との間のギャップを規定する。
記録ヘッド42が設けられたキャリッジ41は、不図示のモーターの動力によってX軸方向即ち媒体幅方向に移動する様に設けられている。
【0048】
記録用経路T2において記録ヘッド42の下流には、排出ローラー対35が設けられている。排出ローラー対35は、不図示のモーターにより駆動される排出駆動ローラー36と、従動回転可能な排出従動ローラー37とを備える。記録の行われた媒体は、排出ローラー対35によってニップされて+Y方向に排出される。
【0049】
媒体の第1面に対し反対の第2面に記録を行う場合、記録の行われた媒体は-Y方向に搬送され、反転経路T4へ送り込まれる。そして媒体は反転ローラー27と第4従動ローラー31とでニップされ、そして反転ローラー27と、第1従動ローラー28、第2従動ローラー29、及び第3従動ローラー30とでニップされて下流に送られる。反転経路T4を搬送される媒体は、反転ローラー27によって第2面が記録ヘッド42と対向する様に反転させられ、記録用経路T2へと送られ、第2面への記録が行われる。
【0050】
尚、搬送ローラー対32と反転ローラー27との間には切り替えフラップ46が設けられている。媒体を反転経路T4へ送り込む場合、また給送経路T1を記録用経路T2に接続する場合、切り替えフラップ46は
図6の実線で示す下降した姿勢をとる。
記録ヘッド42によってノズルチェックパターン(不図示)が記録された媒体を読み取り経路T5へ送り込む場合、切り替えフラップ46は不図示の動力源によって
図6の二点鎖線及び符号46-1で示す第1状態とされる。
読み取り経路T5には、読み取り部47が設けられており、読み取り経路T5に送り込まれた媒体、即ちノズルチェックパターン(不図示)が記録された媒体が読み取り部47と対向する位置を搬送され、ノズルチェックパターン(不図示)が読み取られ、ノズルの状態が判定される。
【0051】
続いて給送ローラー24を支持するアーム部25について詳述する。
図7に示す様にアーム部25は、第1支持部位25Aと第2支持部位25Bとを有している。第1支持部位25Aと第2支持部位25Bとの間には、駆動軸26から給送ローラー24へ動力を伝達する動力伝達部48が設けられている。動力伝達部48の構成については、後に改めて説明する。
【0052】
第1支持部位25Aと第2支持部位25Bは、ともに給送ローラー24を一つ支持する。第1支持部位25Aと第2支持部位25Bは、ともに駆動軸26を受け入れる軸受部25cを有している。軸受部25cには、開口部25dが形成されており、開口部25dを介して軸受部25cに駆動軸26を受け入れることができる。軸受部25cの一部は、壁部25eによって形成されている。
【0053】
図8~
図11において、符号16は駆動軸26を支持するフレームである。フレーム16には、規制部16aがアーム部25の壁部25eに対応する位置に形成されている。
またフレーム16には、レバー部17が回転軸17aを中心に回転可能に設けられている。レバー部17は、下降規制部17bと操作部17cとを備えている。下降規制部17bは、アーム部25に形成された被規制部25fと係合可能である。
図9に示す様に下降規制部17bが被規制部25fと係合することで、レバー部17がアーム部25を退避姿勢、即ち給送ローラー24が媒体から退避する際の姿勢を保持する様に構成されている。
【0054】
尚、レバー部17には、不図示のばねによって
図9の時計回り方向の押圧力が付与されている。従ってレバー部17に外力が付与されない限り、アーム部25は退避姿勢が維持される。
レバー部17は、不図示のスライド部材と係合可能に構成されている。このスライド部材は、媒体カセット20が本体部2に装着されるとレバー部17を
図9の反時計回り方向に回転させる。これによりアーム部25は退避姿勢を解除し、下降して給送ローラー24が媒体カセット20に収容された媒体に当接する。尚、媒体カセット20が本体部2から取り外されると上記スライド部材によるレバー部17の拘束は解除される。これによりレバー部17は
図9の時計回り方向に回転し、アーム部25は退避姿勢に切り換わる。
尚、
図9において符号19は、媒体カセット20における媒体積載枚数が多い場合に後述するくさび効果が減少し、給送ローラー24が媒体に当接する力が減少する為、これを補う為にアーム部25を下方向に押圧するばねである。
【0055】
図9に示す様にアーム部25の壁部25eは、外側が円弧状に形成されており、また壁部25eと対向するフレーム16の規制部16aも、壁部25eの円弧を受け入れる様に壁部25eと対向する面が円弧状に形成されている。
図8、
図9に示す様にアーム部25が駆動軸26に装着された状態では、アーム部25の壁部25eが、フレーム16の規制部16aと駆動軸26とで挟まれた状態となり、アーム部25が駆動軸26から脱落しない様に規制される。
【0056】
この状態からユーザーがレバー部17の操作部17cを操作してレバー部17を
図9の反時計回り方向に回転させると、
図10において二点鎖線及び符号17b-1で示す様に下降規制部17bがアーム部25の被規制部25fから外れ、アーム部25は
図10に示す様にほぼ垂直になるまで回転することができる。これにより、アーム部25の壁部25eがフレーム16の規制部16aから外れ、アーム部25を下方向に引き抜くことができ、また引き抜いたアーム部25を駆動軸26に装着することができる。この状態をアーム部25の着脱可能姿勢とする。
【0057】
以上の様にアーム部25は、駆動軸26に対して着脱可能に構成されている。給送ローラー24が媒体から退避した状態のアーム部25の姿勢である退避姿勢を維持するレバー部17は、底部の開口3aを介して筐体3の外側から操作可能な操作部17cを有している。そして開口3aを介して筐体3の外側からレバー部17を操作してアーム部25の退避姿勢を解除することにより、開口3aを介してアーム部25を着脱可能である為、給送ローラー24の交換等のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0058】
また媒体給送装置100を備える本体部2は、筐体3に収容された閉位置と、筐体から突出した開位置(第1開位置、第2開位置)と、の間で変位可能であることから、本体部2のメンテナンスを容易に行うことができる。またアーム部25は、本体が閉位置にあるときに、開口3aを介して着脱可能であることから、本体部2のメンテナンスを行う際にアーム部25が意図せず外れてしまうことを抑制できる。
【0059】
また媒体カセット20は、本体部2に対して着脱可能に構成され、本体部2に対し装着された状態において開口3aを覆い、本体部2から取り外された状態において開口3aを開放する。このことにより、開口3aを介して装置内部に不用意にアクセスされることを抑制できる。
【0060】
続いて
図12を参照して駆動軸26から給送ローラー24へ動力を伝達する動力伝達部48の構成について説明する。
動力伝達部48は、歯車51、歯車52、歯車53、歯車54、歯車55、歯車56、及び歯車57を備える。歯車51は、駆動軸26に固定された駆動軸歯車50と噛み合い、駆動軸歯車50から動力を受ける。歯車51は、歯車52と噛み合い、歯車52へ動力を伝達する。歯車52は、歯車53と噛み合い、歯車53へ動力を伝達する。歯車53は、歯車54と噛み合い、歯車54へ動力を伝達する。歯車54は、歯車55と噛み合い、歯車55へ動力を伝達する。歯車55は、歯車56と噛み合い、歯車56へ動力を伝達する。歯車56は、歯車57と噛み合い、歯車57へ動力を伝達する。歯車57は、給送ローラー24の回転軸24aに固定され、回転軸24aを回転させ、即ち給送ローラー24を回転させる。
【0061】
駆動軸歯車50が固定された駆動軸26は、回転に際してアーム部25に形成された軸受(不図示)との間で摩擦を生じさせる。
歯車51は、回転軸61を中心に回転する。回転軸61はアーム部25に固定されており、歯車51の回転に際して歯車51の軸穴51aと回転軸61との間で摩擦が生じる。以下、軸穴51aと回転軸61との間の摩擦係数をμs1とする。
歯車52は、回転軸62を中心に回転する。回転軸62はアーム部25に固定されており、歯車52の回転に際して歯車52の軸穴52aと回転軸62との間で摩擦が生じる。以下、軸穴52aと回転軸62との間の摩擦係数をμs2とする。
歯車53は、回転軸63を中心に回転する。回転軸63はアーム部25に固定されており、歯車53の回転に際して歯車53の軸穴53aと回転軸63との間で摩擦が生じる。以下、軸穴53aと回転軸63との間の摩擦係数をμs3とする。
歯車54は、回転軸64を中心に回転する。回転軸64はアーム部25に固定されており、歯車54の回転に際して歯車54の軸穴54aと回転軸64との間で摩擦が生じる。以下、軸穴54aと回転軸64との間の摩擦係数をμs4とする。
歯車55は、回転軸65を中心に回転する。回転軸65はアーム部25に固定されており、歯車55の回転に際して歯車55の軸穴55aと回転軸65との間で摩擦が生じる。以下、軸穴55aと回転軸65との間の摩擦係数をμs5とする。
歯車56は、回転軸66を中心に回転する。回転軸66はアーム部25に固定されており、歯車56の回転に際して歯車56の軸穴56aと回転軸61との間で摩擦が生じる。以下、軸穴56aと回転軸66との間の摩擦係数をμs6とする。
歯車57が固定された回転軸24aは、歯車57の回転に際してアーム部25に形成された軸受(不図示)と回転軸24aとの間で摩擦が生じる。
【0062】
以下、
図12における時計回り方向の回転を方向Kaの回転と称し、反時計回り方向の回転を方向Kbの回転と称する。また
図12において各歯車と給送ローラー24に付した矢印は、媒体を-Y方向に送り出す場合の各歯車と給送ローラー24の回転方向を示している。
図示する様に、媒体給送時において駆動軸歯車50、歯車52、歯車54、歯車56は方向Kaに回転し、また歯車51、歯車53、歯車55、歯車57は方向Kbに回転する。
【0063】
また
図12において符号Pで示す媒体を給送ローラー24が押す力を符号Fpで示しており、更に符号fpは力Fpの垂直方向分力であって、以下ではこれを「当接力fp」と称する。当接力fpが大きくなると、媒体Pの重送に作用し、逆に当接力fpが小さくなると媒体Pが給送されないノンフィードに作用する。
当接力fpは、アーム部25の自重が増えたり、アーム部25に支持された歯車及び回転軸の数が増えたりすると増加する。アーム部25の自重や、アーム部25に支持された歯車及び軸の数は、アーム部25の長さ、換言すれば駆動軸26から給送ローラー24までの距離が長くなると増加する。勿論、当接力fpはアーム部25に支持された歯車や回転軸の自重が増えると増加する。
【0064】
また符号Laで示す直線は、駆動軸26の軸中心位置即ちアーム部25の回転中心Caと、給送ローラー24が媒体Pに接する位置とを結ぶ直線である。そして角度βは直線Laと媒体Pとの成す角度であり、以下ではこれを「当接角β」と称する。当接角βが大きくなると、くさび効果の増大によって当接力fpが大きくなり、当接角βが小さくなると、くさび効果の減少によって当接力fpが小さくなる。
尚、ここでのくさび効果とは以下の通りである。給送ローラー24は-Y方向の送り出し力を媒体Pに対して付与する為、給送ローラー24は+Y方向の反力を媒体Pから受ける。この反力は、給送ローラー24を支持するアーム部25に対し回転中心Caまわりのモーメントを生じさせ、そしてこのモーメントは、給送ローラー24を媒体Pに対して押し付ける方向のモーメントとなる。このモーメントは、当接角βが大きくなるほど大きくなり、これがくさび効果となる。
従って、媒体カセット20への媒体Pの積載可能枚数を増やすと、アーム部25の長さが長くなり、歯車と回転軸の数が増え、しかも積載枚数が少ない場合にくさび効果が増大して、積載枚数が少ない場合に重送が生じ易くなる。
【0065】
以下、媒体カセット20の媒体積載枚数が少ない場合における重送を抑制する為の手段について説明する。
図12において、符号F1、F2、F3、F4、F5、F6、F7で示す力は、各歯車がアーム部25に対し回転中心Caまわりのモーメントを生じさせる向きの力である。力F1は歯車51が回転軸61を介してアーム部25に付与する力である。また力F2は歯車52が回転軸62を介してアーム部25に付与する力である。また力F3は歯車53が回転軸63を介してアーム部25に付与する力である。また力F4は歯車54が回転軸64を介してアーム部25に付与する力である。また力F5は歯車55が回転軸65を介してアーム部25に付与する力である。また力F6は歯車56が回転軸66を介してアーム部25に付与する力である。また力F7は歯車57が回転軸24aを介してアーム部25に付与する力である。
【0066】
力F1~F7の向きは、各歯車が隣接する歯車から受ける力によって決まる。力F1、F3、F5、F7は下向きの力であって、当接力fpを増大させる方向に作用する。従って力F1、F3、F5、F7のうち少なくともいずれかを小さくできれば、当接力fpを抑制できる。
力F2、F4、F6は上向きの力であって、当接力fpを減少させる方向に作用する。従って力F2、F4、F6のうち少なくともいずれかを大きくできれば、当接力fpを抑制できる。
詳しくは後述するが、歯車の回転軸の軸径及び軸損のうち少なくともいずれかを大きくするほど、当該歯車がアーム部25に付与する力を大きくすることができ、また歯車の回転軸の軸径及び軸損のうち少なくともいずれかを小さくするほど、当該歯車がアーム部25に付与する力を小さくことができる。
【0067】
以下、歯車55による力F5を一例として説明する。歯車55は、歯車54から駆動力を受ける際に下向きの力ff45を受ける。力gg45は力ff45の分力であって、アーム部25に対し回転中心Caまわりのモーメントを生じさせる力である。力gg45は、gg45=ff45×cosαで表すことができる。ここで角度αは、歯車の圧力角である。
また歯車55は、歯車56に駆動力を伝達する際に下向きの反力である力f56を受ける。力g56は力f56の分力であって、アーム部25に対し回転中心Caまわりのモーメントを生じさせる力であり、力g56は、g56=f56×cosαで表すことができる。
そして力F5は、力ff45と力f56との合力のうち、アーム部25に対し回転中心Caまわりのモーメントを生じさせる成分となる。
【0068】
ここで歯車55の軸穴55aと回転軸65との間には、軸損Hs5が生じ、この軸損Hs5によって回転軸65まわりにHs5×rg5のモーメントが生じる。rg5は、回転軸65の半径である。このモーメントの向きは、方向Kaとなる。
また回転軸65まわりには力gg45によって方向Kbのモーメントが生じ、力g56によって方向Kaのモーメントが生じるから、歯車55の半径をrh5とすると、歯車55が回転しようとする場合のモーメントの釣り合いによって以下の式(1)が得られる。
gg45×rh5=g56×rh5+Hs5×rg5・・・(1)
【0069】
上記式(1)から、軸損Hs5と回転軸65の半径rg5の少なくともいずれかを小さくすれば、力gg45を小さくすることができ、ひいては力F5を小さくすることができる。そして軸損Hs5を小さくするには、歯車55の軸穴55aと回転軸65との間の摩擦係数μ5を小さくすれば良い。
尚、上記式(1)は、力g56の観点で変形することはできない。反力の計算は給送ローラー24が媒体Pから受ける反力をもとにして、給送ローラー24から駆動軸26に向かって計算する必要があり、力g56の算出式に力gg45を含めることができないからである。
以上では、歯車55による力F5を一例として説明したが、歯車55に限られず、歯車55と同様にアーム部25に対し下向きの力を付与する歯車51、53についても同様である。
【0070】
次に、歯車54による力F4を一例として説明する。歯車54は、歯車53から駆動力を受ける際に上向きの力f34を受ける。力g34は力f34の分力であって、アーム部25に対し回転中心Caまわりのモーメントを生じさせる力である。力g34は、g34=f34×cosαで表すことができる。
また歯車54は、歯車55に駆動力を伝達する際に上向きの反力である力f45を受ける。力f45は、力ff45の反力である。すなわち、力f45は、力ff45と方向が反対で大きさが等しい力である。力g45は力f45の分力であって、アーム部25に対し回転中心Caまわりのモーメントを生じさせる力であり、力g45は、g45=f45×cosαで表すことができる。
そして力F4は、力f34と力f45との合力のうち、アーム部25に対し回転中心Caまわりのモーメントを生じさせる成分となる。
【0071】
ここで歯車54の軸穴54aと回転軸64との間には、軸損Hs4が生じ、この軸損Hs4によって回転軸64まわりにHs4×rg4のモーメントが生じる。rg4は、回転軸64の半径である。このモーメントの向きは、方向Kbとなる。
また回転軸64まわりには力g34によって方向Kaのモーメントが生じ、力g45によって方向Kbのモーメントが生じるから、歯車54の半径をrh4とすると、歯車54が回転しようとする場合のモーメントの釣り合いによって以下の式(2)が得られる。
g34×rh4=g45×rh4+Hs4×rg4・・・(2)
【0072】
上記式(2)から、軸損Hs4と回転軸64の半径rg4の少なくともいずれかを大きくすれば、力g34を大きくすることができ、ひいては力F4を大きくすることができる。そして軸損Hs4を大きくするには、歯車54の軸穴54aと回転軸64との間の摩擦係数μ4を大きくすれば良い。
尚、上記式(2)は、力g45の観点で変形することはできない。上述した様に反力の計算は給送ローラー24が媒体Pから受ける反力をもとにして、給送ローラー24から駆動軸26に向かって計算する必要があり、力g45の算出式に力g34を含めることができない為である。
以上では、歯車54による力F4を一例として説明したが、歯車54に限られず、歯車54と同様にアーム部25に対し上向きの力を付与する歯車52、56についても同様である。
【0073】
以上のことから、本実施形態において、歯車の回転軸の径と回転軸の摩擦係数を、以下の様にする。
以下において、歯車52、54、56を第1歯車とし、歯車51、53、55を第2歯車とする。また第1歯車の回転軸である回転軸62、64、66を第1回転軸とし、第2歯車の回転軸である回転軸61、63、65を第2回転軸とする。
第1回転軸の摩擦係数、即ち第1歯車の軸穴と第1回転軸との間の摩擦係数は、上述した摩擦係数μs2、μs4、μs6となる。また第2回転軸の摩擦係数、即ち第2歯車の軸穴と第2回転軸との間の摩擦係数は、上述した摩擦係数μs1、μs3、μs5となる。
【0074】
本実施形態において第1回転軸の軸径は、第2回転軸の軸径より大きい。
この様に第1回転軸の軸径を第2回転軸の軸径より大きくすることで、給送ローラー24が媒体に接する当接力fpを容易に調整することができる。これにより、媒体カセット20への媒体の最小積載枚数即ち1枚の場合から最大積載枚数までの場合において当接力fpをより適切にすることができる。
本実施形態では、アーム部25に上向きの力を付与する第1回転軸の軸径が、第2回転軸の軸径より大きい為、当接力fpを抑制することができる。
【0075】
また本実施形態において第1回転軸の摩擦係数が、第2回転軸の摩擦係数より大きい。本実施形態において第1回転軸はプラスチック材料により形成され、第2回転軸は金属材料により形成されており、これにより第1回転軸の摩擦係数が、第2回転軸の摩擦係数より大きくなる様に構成されている。
この様に第1回転軸の摩擦係数を第2回転軸の摩擦係数より大きくすることで、当接力fpを更に調整することができ、当接力fpの調整の自由度が向上する。
本実施形態では、アーム部25に上向きの力を付与する第1回転軸の摩擦係数が、第2回転軸の摩擦係数より大きい為、当接力fpを抑制することができる。
【0076】
本実施形態では、第1回転軸の軸径を第2回転軸の軸径より大きくするとともに、第1回転軸の摩擦係数を第2回転軸の摩擦係数より大きくしたが、軸径と摩擦係数のいずれか一方のみの設定を採用しても良い。
また本実施形態では回転軸62、64、66を第1回転軸としたが、回転軸62、64、66のうち少なくともいずれかを第1回転軸とし、それと隣接する回転軸、即ち回転軸61、63、65のいずれかの回転軸を第2回転軸としても良い。
また本実施形態では当接力fpを抑制する為に回転軸62、64、66を第1回転軸とし、回転軸61、63、65を第2回転軸としたが、当接力fpを増大させる為に回転軸61、63、65を第1回転軸とし、回転軸62、64、66を第2回転軸としても良い。勿論この場合も、第1回転軸と第2回転軸は任意の一対の回転軸としても良い。
【0077】
また本実施形態では第1回転軸は樹脂材料で形成され、第2回転軸は金属材料で形成され、これにより第1回転軸の摩擦係数を第2回転軸の摩擦係数より大きくしていることから、第1回転軸の摩擦係数を簡単に第2回転軸の摩擦係数より大きくすることができる。
尚、第1回転軸と第2回転軸の材料が同一であっても、軸表面の処理によって第1回転軸の摩擦係数と第2回転軸の摩擦係数とを異ならせることができることは勿論である。
【0078】
尚、本実施形態において歯車の回転に際し歯車の軸穴と回転軸との間で摩擦が生じる構成であるが、これに限らず、歯車の回転に際し回転軸と当該回転軸を支持する軸受との間で摩擦が生じる構成であっても良い。
【0079】
また本実施形態において第1歯車は、給送ローラー24が媒体を送り出す際の給送ローラー24の回転方向と反対の方向(方向Ka)に回転して上向きの力をアーム部25に付与する。また第2歯車は、給送ローラー24の回転方向(方向Kb)に回転して下向きの力をアーム部25に付与する。
この様な構成において第1回転軸の軸径を第2回転軸の軸径より大きくし、或いは第1回転軸の摩擦係数を第2回転軸の摩擦係数より大きくし、或いは第1回転軸の軸径を第2回転軸の軸径より大きくするとともに第1回転軸の摩擦係数を第2回転軸の摩擦係数より大きくすることで、当接力fpを小さくでき、媒体の重送を抑制できる。
【0080】
但し第1歯車が、給送ローラー24が媒体を送り出す際の給送ローラー24の回転方向方向(方向Kb)に回転して下向きの力をアーム部25に付与し、また第2歯車が、給送ローラー24の回転方向と反対の方向(方向Ka)に回転して上向きの力をアーム部25に付与する構成であっても良い。
この様な構成において第1回転軸の軸径を第2回転軸の軸径より大きくし、或いは第1回転軸の摩擦係数を第2回転軸の摩擦係数より大きくし、或いは第1回転軸の軸径を第2回転軸の軸径より大きくするとともに第1回転軸の摩擦係数を第2回転軸の摩擦係数より大きくすることで、当接力fpを大きくでき、媒体のノンフィードを抑制できる。
【0081】
また本実施形態において駆動軸26の回転方向は、アーム部25が媒体に向かう方向(方向Ka)である為、当接力fpが大きくなり易く、重送の虞が高くなり易い。しかしながら上述した様に第1回転軸及び第2回転軸の軸径と摩擦係数の少なくともいずれかが当接力fpを抑制する様に設定されている為、結果として当接力fpを抑制でき、重送を抑制できる。
但し、駆動軸26の回転方向が、アーム部25が媒体に向かう方向(方向Ka)である構成において、第1回転軸及び第2回転軸の軸径と摩擦係数の少なくともいずれかが当接力fpを増大する様に設定されていても良い。
また駆動軸26の回転方向が、アーム部25が媒体に向かう方向とは反対の方向(方向Kb)である構成において、第1回転軸及び第2回転軸の軸径と摩擦係数の少なくともいずれかが当接力fpを抑制する様に設定されていても良いし、或いは第1回転軸及び第2回転軸の軸径と摩擦係数の少なくともいずれかが当接力fpを増大する様に設定されていても良い。
【0082】
また本実施形態において第1歯車と第2歯車は、同一の材料によって形成される。仮に第1歯車と第2歯車とが異なる材料によって形成されると、噛み合い部位においていずれか一方の摩耗が進行してしまう虞があるが、本実施形態の様に第1歯車と第2歯車は同一の材料によって形成されることから、第1歯車と第2歯車のいずれか一方の摩耗が進行してしまうことを抑制できる。
尚、本実施形態において第1歯車と第2歯車は樹脂材料により形成される。
そして本実施形態において歯車51、53、55は同一の平歯車であり、部品の共用が可能である。同様に歯車52、54、56は同一の平歯車であり、部品の共用が可能である。
【0083】
また例えば、歯車54を第1歯車、歯車53を第2歯車とした上で、歯車55を第3歯車とし、回転軸65を第3回転軸とし、歯車52を第4歯車とし、回転軸62を第4回転軸とすると、第3回転軸(回転軸65)の軸径は、第1回転軸(回転軸64)の軸径及び第4回転軸(回転軸62)の軸径よりも小さく、また第4回転軸(回転軸62)の軸径は、第2回転軸(回転軸63)の軸径及び第3回転軸(回転軸65)の軸径よりも大きい。
この様に同じ方向に回転する歯車、即ちアーム部25に対し同じ方向の力を付与する歯車に関し、当接力fpの調整方向が同じになる様にすることで、当接力fpの調整幅を大きくすることができ、当接力fpの調整の自由度が向上する。
尚、上記第1歯車の回転軸と上記第2歯車の回転軸とに関し、軸径は同じとしつつ摩擦係数を異なる様にし、また上記第3歯車の回転軸と上記第4歯車の回転軸とに関し、軸径が異なる様にしつつ摩擦係数は同じとしても良い。
また上記第1歯車の回転軸と上記第4歯車の回転軸とに関して軸径を同じとしても良く、上記第2歯車と上記第3歯車とに関して軸径を同じとしても良い。
尚、四つ以上の歯車を備える場合においていずれを第1歯車、第2歯車、第3歯車、第4歯車とするかに関し、上記は一例であって上記に限られないことは勿論である。
【0084】
また同様に歯車54を第1歯車、歯車53を第2歯車とした上で、歯車55を第3歯車とし、回転軸65を第3回転軸とし、歯車52を第4歯車とし、回転軸62を第4回転軸として、第3回転軸(回転軸65)の摩擦係数(μs3)は、第1回転軸(回転軸64)の摩擦係数(μs1)及び第4回転軸(回転軸62)の摩擦係数(μs4)よりも小さく、第4回転軸(回転軸62)の摩擦係数(μs4)は、第2回転軸(回転軸63)の摩擦係数(μs2)及び第3回転軸(回転軸65)の摩擦係数(μs3)よりも大きい。
尚、上記第1歯車の回転軸と上記第2歯車の回転軸とに関し、摩擦係数は同じとしつつ軸径が異なる様にし、また上記第3歯車の回転軸と上記第4歯車の回転軸とに関し、摩擦係数が異なる様にしつつ軸径が同じとなる様にしても良い。
また上記第1歯車の回転軸と上記第4歯車の回転軸とに関して摩擦係数を同じとしても良く、上記第2歯車と上記第3歯車とに関して摩擦係数を同じとしても良い。
尚、四つ以上の歯車を備える場合においていずれを第1歯車、第2歯車、第3歯車、第4歯車とするかに関し、上記は一例であって上記に限られないことは勿論である。
【0085】
尚、本実施形態の様にアーム部25にモーメントを生じさせる歯車を三つ以上備える構成において、任意の二つの回転軸に関して軸径と摩擦係数の大小関係は種々の組み合わせを採用可能であり、例えば全ての回転軸の軸径と摩擦係数が同じである構成に比べて、当接力fpの調整方向が目的とする方向に調整されるものであれば、どのような形態であっても良い。
【0086】
本発明は上記において説明した実施形態や変形例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0087】
1…インクジェットプリンター、2…本体部、3…筐体、3A…上部筐体、3B…底部筐体、3a…開口、4…インク残量視認部、5…操作パネル、6…前面カバー、6a…内面、6b…回転軸、7…第1カバー部、8…インク収容部、9…キャップ、10…廃液収容体、11…排出口、15…第2カバー部、16…フレーム、16a…規制部、17…レバー部、17a…回転軸、17b…下降規制部、17c…操作部、19…ばね、20…媒体カセット、20a…第1領域、20b…第2領域、20c、20d…底板、21…仕切板、24…給送ローラー、25…アーム部、25A…第1支持部位、25B…第2支持部位、25c…軸受部、25d…開口部、25e…壁部、25f…被規制部、26…駆動軸、27…反転ローラー、28…第1従動ローラー、29…第2従動ローラー、30…第3従動ローラー、31…第4従動ローラー、32…搬送ローラー対、33…搬送駆動ローラー、34…搬送従動ローラー、35…排出ローラー対、36…排出駆動ローラー、37…排出従動ローラー、41…キャリッジ、42…記録ヘッド、44…インクチューブ、45…支持部材、46…切り替えフラップ、47…読み取り部、48…動力伝達部、50…駆動軸歯車、51、52、53、54、55、56、57…歯車、61、62、63、64、65、66、67…回転軸、100…媒体給送装置、
T1…給送経路、T2…記録用経路、T3…排出経路、T4…反転経路、T5…読み取り経路