(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047939
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0662 20160101AFI20240401BHJP
H01M 8/04537 20160101ALI20240401BHJP
H01M 8/0444 20160101ALI20240401BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20240401BHJP
【FI】
H01M8/0662
H01M8/04537
H01M8/0444
H01M8/04 H
H01M8/04 Z
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153718
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】宮島 一嘉
【テーマコード(参考)】
5H127
【Fターム(参考)】
5H127AC02
5H127BA02
5H127BA14
5H127BA22
5H127BA28
5H127BA33
5H127BA57
5H127BB02
5H127BB09
5H127BB10
5H127BB13
5H127BB18
5H127BB37
5H127DB14
5H127DB53
5H127DC11
5H127DC31
5H127DC56
5H127DC57
5H127EE04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】パージされたガス中の酸素と水素との共存を抑制することができ、不活性ガス或いは吸着フィルタを用いることなく、着火源がある場合に燃焼を引き起こす危険性を回避することができる燃料電池システムを提供する。
【解決手段】燃料電池システム10は、燃料電池22と、制御装置28とを有する。制御装置28は、酸素パージ路70に設けられる酸素パージ弁72の開弁期間T2と、水素パージ路80に設けられる水素パージ弁82の開弁期間T1とが重ならないように、酸素パージ弁72および水素パージ弁82の開弁期間を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素ガスと水素ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池と、
前記燃料電池に前記酸素ガスを供給するための酸素ガス供給路と、
前記燃料電池から排出される前記酸素ガスを含む酸素含有ガスを前記酸素ガス供給路に戻すための酸素循環路と、
前記燃料電池に前記水素ガスを供給するための水素ガス供給路と、
前記燃料電池から排出される前記水素ガスを含む水素含有ガスを前記水素ガス供給路に戻すための水素循環路と、
を有する燃料電池システムであって、
前記酸素循環路から前記酸素含有ガスを、前記燃料電池システムの系外にパージするための酸素パージ路と、
前記水素循環路から前記水素含有ガスを、前記燃料電池システムの系外にパージするための水素パージ路と、
前記酸素パージ路に設けられる酸素パージ弁の開弁期間と、前記水素パージ路に設けられる水素パージ弁の開弁期間とが重ならないように、前記酸素パージ弁および前記水素パージ弁を制御する制御装置と、
を備える、燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池システムであって、
前記水素パージ弁の開弁期間は、前記酸素パージ弁の開弁期間よりも前である、燃料電池システム。
【請求項3】
請求項1に記載の燃料電池システムであって、
前記燃料電池に生じる電圧が所定の電圧閾値を下回ると、前記制御装置は、前記水素パージ弁の開弁を開始する、燃料電池システム。
【請求項4】
請求項3に記載の燃料電池システムであって、
前記水素パージ弁の開弁から所定期間経過後の前記電圧が前記電圧閾値以上に回復しない場合、前記制御装置は、前記酸素パージ弁を開弁する、燃料電池システム。
【請求項5】
請求項3に記載の燃料電池システムであって、
前記水素パージ路に設けられる濃度センサによって検出される前記水素含有ガス中の水素濃度が所定の濃度閾値を下回ると、前記制御装置は、前記酸素パージ弁を開弁する、燃料電池システム。
【請求項6】
請求項1に記載の燃料電池システムであって、
前記酸素パージ路からパージされる前記酸素含有ガスのパージ方向と、前記水素パージ路からパージされる前記水素含有ガスのパージ方向とは異なる、燃料電池システム。
【請求項7】
請求項1に記載の燃料電池システムであって、
前記酸素パージ路の排出口は、前記燃料電池システムが搭載される移動体の第1面から離れて配置され、前記水素パージ路の排出口は、前記第1面とは反対側の前記移動体の第2面から離れて配置される、燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能かつ先進的なエネルギーへのアクセスを確保するため、エネルギーの効率化に貢献する燃料電池に関する研究開発が行われている。また、環境に与える負荷を軽減するため、内燃機関を有する自動車等の移動体の排気ガス規制が一段と進んでいる。したがって、移動体において、内燃機関に代替して燃料電池を搭載することが試みられている。燃料電池が搭載された移動体では、CO2、SOXおよびNOX等が排出されないため、環境に与える負荷が軽減される。
【0003】
燃料電池は、酸素ガスと水素ガスとの電気化学反応により発電する。を含む燃料電池システムとして、例えば特許文献1が開示されている。特許文献1の燃料電池システムでは、燃料電池と、酸素循環経路と、水素循環経路とが備えられる。燃料電池は、酸素ガスと水素ガスとの電気化学反応により発電する。酸素循環経路は、燃料電池で未反応の酸素ガスを燃料電池に戻す。一方、水素循環経路は、燃料電池で未反応の水素ガスを燃料電池に戻す。
【0004】
特許文献1の燃料電池システムでは、ガスの継続的な供給によって燃料電池内に水分等の不純物が蓄積されて発電効率が低下することを抑制するために、水素ガス不純物を除く水素側不純物吸着フィルタと、酸素ガス不純物を除く酸素側不純物吸着フィルタとが備えられている。不純物が吸着フィルタに吸着すると、圧損が高くなり発電性能に影響を及ぼす。したがって、定期的に吸着フィルタの交換が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、循環経路を有する燃料電池システムの閉鎖空間での使用が検討されている。閉鎖空間で燃料電池システムが用いられる場合は、吸着フィルタの交換が困難である場合がある。そのため、水素ガスと酸素ガスとを直接パージするが、パージした水素ガスと酸素ガスが共存し、かつ着火源があると燃焼を引き起こすことが懸念される。また、水素ガスを希釈するために不活性ガスを用意することも考えられるが、燃料電池システムが大型化するため現実的ではない。したがって、燃料電池の発電に用いられるガス以外のガス(例えば不活性ガス)、或いは、吸着フィルタを用いなくても燃焼の危険性を回避することが要請される。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様は、酸素ガスと水素ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池と、前記燃料電池に前記酸素ガスを供給するための酸素ガス供給路と、前記燃料電池から排出される前記酸素ガスを含む酸素含有ガスを前記酸素ガス供給路に戻すための酸素循環路と、前記燃料電池に前記水素ガスを供給するための水素ガス供給路と、前記燃料電池から排出される前記水素ガスを含む水素含有ガスを前記水素ガス供給路に戻すための水素循環路とを有する燃料電池システムであって、前記酸素循環路から前記酸素含有ガスを、前記燃料電池システムの系外にパージするための酸素パージ路と、前記水素循環路から前記水素含有ガスを、前記燃料電池システムの系外にパージするための水素パージ路と、前記酸素パージ路に設けられる酸素パージ弁の開弁期間と、前記水素パージ路に設けられる水素パージ弁の開弁期間とが重ならないように、前記酸素パージ弁および前記水素パージ弁を制御する制御装置と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
上記の態様によれば、パージされたガス中の酸素と水素との共存を抑制することができる。その結果、不活性ガス或いは吸着フィルタを用いることなく、着火源がある場合に燃焼を引き起こす危険性を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態による燃料電池システムを示す概略図である。
【
図2】
図2は、酸素パージ路の排出口および水素パージ路の排出口の配置例を示す図である。
【
図3】
図3は、弁制御処理の手順を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、弁制御処理中のタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、燃料電池システム10を示す概略図である。燃料電池システム10は、閉鎖空間で用いられる。燃料電池システム10は、水電解装置12と、第1気液分離器14と、酸素タンク16と、水素昇圧装置18と、水素タンク20と、燃料電池22と、第2気液分離器24と、第3気液分離器26と、制御装置28とを備える。
【0012】
水電解装置12は、水素ガスと、水素ガスの圧力よりも高圧の酸素ガスとを水電解により生成する差圧式水電解装置である。水電解するための水は、第1気液分離器14から水供給路30を介して水電解装置12に供給される。水供給路30は、第1気液分離器14と水電解装置12とを連通する。水供給路30には、ポンプ31が設けられる。ポンプ31のオンオフは制御装置28によって制御される。ポンプ31は、オンにされると、第1気液分離器14に貯留される水に流動力を付与し、第1気液分離器14から水電解装置12に水を供給する。
【0013】
水電解装置12は、1以上の単位セルを有する。単位セルは、電解質膜がアノード電極とカソード電極とで挟持される膜電極接合体(MEA)を含む。水電解装置12は、第1気液分離器14から供給される水を単位セルのカソード電極に供給する。単位セルは、アノード電極とカソード電極とに印加される電圧に基づいて水電解する。この場合、アノード電極では昇圧された高圧の酸素ガスが生成され、カソード電極では未昇圧の水素ガスが生成される。
【0014】
水電解装置12の単位セルで生成される高圧の酸素ガスは、酸素排出路32を介して酸素タンク16に貯留される。酸素排出路32は、水電解装置12から酸素タンク16に酸素ガスを排出するための管路であり、水電解装置12と酸素タンク16とを連通する。
【0015】
水電解装置12の単位セルで生成される水素ガスと未反応水とを含む排出流体は、水排出路34を介して第1気液分離器14に供給される。水排出路34は、水電解装置12から第1気液分離器14に排出流体を排出するための管路であり、水電解装置12と第1気液分離器14とを連通する。
【0016】
第1気液分離器14は、水電解装置12から排出される排出流体を気体成分(水素ガス)と、液体成分(液水)とに分離する。第1気液分離器14によって分離された気体成分は、水素供給路36を介して水素昇圧装置18に供給される。水素供給路36は、第1気液分離器14と水素昇圧装置18とを連通する。水素供給路36には、ポンプ37が設けられる。ポンプ37のオンオフは制御装置28によって制御される。ポンプ37は、オンにされると、第1気液分離器14に貯留される水素ガスに流動力を付与し、第1気液分離器14から水素昇圧装置18に水素ガスを供給する。
【0017】
第1気液分離器14によって分離された液体成分(液水)は、第1気液分離器14に一時的に貯留され、水供給路30を介して水電解装置12に供給される。第1気液分離器14に貯留される水は、給水路38を介して供給される水を含む。給水路38は、第2気液分離器24および第3気液分離器26から第1気液分離器14に水を供給するための管路である。給水路38は、第1給水路38_1と第2給水路38_2とを含む。
【0018】
第1給水路38_1は、第2気液分離器24と第1気液分離器14とを連通する。第2給水路38_2は、第3気液分離器26と第1気液分離器14とを連通する。本実施形態では、第1給水路38_1の下流端部と第2給水路38_2の下流端部とは1つの合流路38_3として形成される。第1給水路38_1には第1給水弁39が設けられ、第2給水路38_2には第2給水弁40が設けられる。第1給水弁39および第2給水弁40の開閉は制御装置28によって制御される。合流路38_3には、ポンプ41が設けられる。ポンプ41のオンオフは制御装置28によって制御される。ポンプ41は、オンにされると、第2気液分離器24または第3気液分離器26に貯留される水に流動力を付与し、第2気液分離器24または第3気液分離器26から第1気液分離器14に水を供給する。
【0019】
酸素タンク16は、水電解装置12の水電解により生成される高圧の酸素ガスを貯留する。酸素タンク16に貯留された高圧の酸素ガスは、酸素ガス供給路42を介して燃料電池22に供給される。酸素ガス供給路42は、酸素タンク16に貯留された高圧の酸素ガスを燃料電池22に供給するための管路であり、酸素タンク16と燃料電池22とを連通する。酸素ガス供給路42には、酸素放出弁44と減圧弁46とが設けられる。酸素放出弁44は、酸素タンク16の出口近傍に配置される。酸素放出弁44の開閉は制御装置28によって制御される。減圧弁46は、酸素タンク16に貯留された高圧の酸素ガスを減圧する。減圧弁46によって減圧された酸素ガスの圧力は、基準圧よりも大きい。基準圧は、例えば、第1気液分離器14の内部の圧力である。
【0020】
水素昇圧装置18は、電気化学的に水素ガスを圧縮する電気化学式水素圧縮機(EHC:Electrochemical Hydrogen Compressor)である。水素昇圧装置18は、第1気液分離器14から供給される水素ガスを昇圧し、高圧の水素ガスを生成する。第1気液分離器14から供給される水素ガスは、水電解装置12によって生成される水素ガスである。
【0021】
水素昇圧装置18は、1以上の単位セルを有する。単位セルは、電解質膜がアノード電極とカソード電極とで挟持される膜電極接合体(MEA)を含む。水素昇圧装置18は、第1気液分離器14から供給される水素ガスを単位セルのアノード電極に供給する。単位セルは、アノード電極とカソード電極とに印加される電圧に基づいて水素ガスをイオン化する。水素ガスのイオン化により得られるプロトンは、電解質膜を介してカソード電極に到達することで昇圧された水素ガスが生成される。
【0022】
水素昇圧装置18の単位セルで生成される高圧の水素ガスは、水素排出路48を介して水素タンク20に貯留される。水素排出路48は、水素昇圧装置18から水素タンク20に酸素ガスを排出するための管路であり、水素昇圧装置18と水素タンク20とを連通する。
【0023】
水素タンク20は、水素昇圧装置18により昇圧される高圧の水素ガスを貯留する。水素タンク20に貯留された高圧の水素ガスは、水素ガス供給路52を介して燃料電池22に供給される。水素ガス供給路52は、水素タンク20に貯留された高圧の水素ガスを燃料電池22に供給するための管路であり、水素タンク20と燃料電池22とを連通する。水素ガス供給路52には、水素放出弁54と減圧弁56とが設けられる。水素放出弁54は、水素タンク20の出口近傍に配置される。水素放出弁54の開閉は制御装置28によって制御される。減圧弁56は、水素タンク20に貯留された高圧の水素ガスを減圧する。減圧弁56によって減圧された水素ガスの圧力は、基準圧よりも大きい。
【0024】
燃料電池22は、複数の単位セルを有する。各単位セルは、電解質膜がアノード電極とカソード電極とで挟持される膜電極接合体(MEA)を含む。燃料電池22は、酸素タンク16から減圧弁46を介して供給される基準圧よりも高圧の酸素ガスを、各単位セルのカソード電極に供給する。燃料電池22は、水素タンク20から減圧弁56を介して供給される基準圧よりも高圧の水素ガスを、各単位セルのアノード電極に供給する。各単位セルは、酸素ガスと水素ガスとの電気化学反応により発電する。
【0025】
燃料電池22の各単位セルで未反応の酸素ガスを含む酸素含有ガスは、酸素循環路58を介して酸素ガス供給路42に供給される。酸素循環路58は、燃料電池22から排出される酸素含有ガスを酸素ガス供給路42に戻すための管路である。酸素循環路58は、上流部58_1と下流部58_2とを含む。上流部58_1は、燃料電池22と第2気液分離器24とを連通する。下流部58_2は、第2気液分離器24と酸素ガス供給路42を連通する。酸素循環路58には、ポンプ59が設けられる。ポンプ59のオンオフは制御装置28によって制御される。ポンプ59は、オンにされると、燃料電池22から排出される酸素含有ガスに流動力を付与し、酸素含有ガスを循環させる。
【0026】
燃料電池22の各単位セルで未反応の水素ガスを含む水素含有ガスは、水素循環路60を介して水素ガス供給路52に供給される。水素循環路60は、燃料電池22から排出される水素含有ガスを水素ガス供給路52に戻すための管路である。水素循環路60は、上流部60_1と下流部60_2とを含む。上流部60_1は、燃料電池22と第3気液分離器26とを連通する。下流部60_2は、第3気液分離器26と水素ガス供給路52を連通する。水素循環路60には、ポンプ61が設けられる。ポンプ61のオンオフは制御装置28によって制御される。ポンプ61は、オンにされると、燃料電池22から排出される水素含有ガスに流動力を付与し、水素含有ガスを循環させる。
【0027】
第2気液分離器24は、燃料電池22から排出される酸素含有ガスを気体成分(酸素ガス)と、液体成分(液水)とに分離する。第2気液分離器24によって分離される気体成分は、酸素循環路58の下流部58_2を介して酸素ガス供給路42に供給される。第2気液分離器24によって分離される液体成分(液水)は、燃料電池22での酸素と水素との酸化還元反応により生成される。この液体成分(液水)は、第2気液分離器24に一時的に貯留され、第1気液分離器14に供給される。
【0028】
第3気液分離器26は、燃料電池22から排出される水素含有ガスを気体成分(水素ガス)と、液体成分(液水)とに分離する。第3気液分離器26によって分離される気体成分は、水素循環路60の下流部60_2を介して水素ガス供給路52に供給される。第3気液分離器26によって分離される液体成分(液水)は、燃料電池22での酸素と水素との酸化還元反応により生成される。この液体成分(液水)は、第3気液分離器26に一時的に貯留され、第1気液分離器14に供給される。
【0029】
制御装置28は、燃料電池システム10を制御するコンピュータである。制御装置28は、1以上のプロセッサと、記憶媒体とを含む。記憶媒体は、揮発性メモリと不揮発性メモリとによって構成され得る。プロセッサとしては、CPU、MCU等が挙げられる。揮発性メモリとしては、例えばRAM等が挙げられる。不揮発性メモリとしては、例えばROM、フラッシュメモリ等が挙げられる。
【0030】
制御装置28は、水電解装置12の電源をオンにして単位セルのアノード電極およびカソード電極に電圧を印加する。これに加えて、制御装置28は、ポンプ31をオンにして第1気液分離器14から水電解装置12に水を供給する。この場合、水電解装置12は運転状態であり、水の電気分解(水電解)が行われる。制御装置28が単位セルへの電圧の印加および水電解装置12への水の供給を停止すると、水電解装置12は非運転状態になる。
【0031】
制御装置28は、水素昇圧装置18の電源をオンにして単位セルのアノード電極およびカソード電極に電圧を印加する。これに加えて、制御装置28は、ポンプ37をオンにして第1気液分離器14から水素昇圧装置18に水素ガスを供給する。この場合、水素昇圧装置18は運転状態であり、水素ガスの昇圧が行われる。制御装置28が単位セルへの電圧の印加および水素昇圧装置18への水素ガスの供給を停止すると、水素昇圧装置18は非運転状態になる。
【0032】
水電解装置12の運転と水素昇圧装置18の運転とはセットで実施される。すなわち、制御装置28は、水電解装置12が運転状態になると、水素昇圧装置18も運転状態になる。一方、制御装置28は、水電解装置12が非運転状態になると、水素昇圧装置18も非運転状態になる。
【0033】
水電解装置12および水素昇圧装置18の運転中、制御装置28は、酸素放出弁44および水素放出弁54を閉弁する。この場合、水電解装置12の水電解により生成される高圧の酸素ガスは酸素タンク16に貯留され、水素昇圧装置18により昇圧される高圧の水素ガスは水素タンク20に貯留される。また、燃料電池22には、酸素タンク16に貯留される高圧の酸素ガスと、水素タンク20に貯留される高圧の水素ガスとは供給されない。そのため、燃料電池22は非運転状態にあり、発電が行われない。
【0034】
一方、水電解装置12および水素昇圧装置18の非運転中、制御装置28は、酸素放出弁44および水素放出弁54を開弁し、燃料電池22を運転状態にする。この場合、酸素タンク16に貯留された高圧の酸素ガスは、減圧弁46により減圧された後に燃料電池22に供給される。また、水素タンク20に貯留された高圧の水素ガスは、減圧弁56により減圧された後に燃料電池22に供給される。燃料電池22では発電が行われる。燃料電池22の運転中、制御装置28は、ポンプ59をオンにして、燃料電池22から排出される酸素含有ガスを、燃料電池22に供給する。また、制御装置28は、ポンプ61をオンにして、燃料電池22から排出される水素含有ガスを、燃料電池22に供給する。
【0035】
水電解装置12および水素昇圧装置18の運転と、燃料電池22の運転とは交互に実施されてもよい。
【0036】
燃料電池22の運転中、制御装置28は、酸素パージ路70に設けられる酸素パージ弁72と、水素パージ路80に設けられる水素パージ弁82とを制御する。
【0037】
酸素パージ路70は、酸素循環路58から酸素含有ガスを、燃料電池システム10の系外にパージするための管路である。酸素パージ弁72が開弁される場合、酸素含有ガスは、酸素循環路58から酸素パージ路70に流入し、酸素パージ路70の排出口70Tから燃料電池システム10の系外にパージされる。
【0038】
水素パージ路80は、水素循環路60から水素含有ガスを、燃料電池システム10の系外にパージするための管路である。水素パージ弁82が開弁される場合、水素含有ガスは、水素循環路60から水素パージ路80に流入し、水素パージ路80の排出口80Tから燃料電池システム10の系外にパージされる。
【0039】
図2は、酸素パージ路70の排出口70Tおよび水素パージ路80の排出口80Tの配置例を示す図である。酸素パージ路70の排出口70Tは、燃料電池システム10が搭載される移動体100の第1面F1から離れて配置される。水素パージ路80の排出口80Tは、移動体100の第1面F1とは反対側の第2面F2から離れて配置される。また、酸素パージ路70からパージされる酸素含有ガスのパージ方向AR1と、水素パージ路80からパージされる水素含有ガスのパージ方向AR2とは異なる。これにより、パージされたガス中の水素と酸素との共存を低減することができる。
【0040】
図3は、弁制御処理の手順を示すフローチャートである。
図4は、弁制御処理中のタイムチャートである。弁制御処理は、酸素パージ弁72および水素パージ弁82を制御する処理である。弁制御処理は、酸素放出弁44および水素放出弁54が開弁された状態を検知して、ステップS1に移行する。
【0041】
ステップS1において、制御装置28は、所定量の水素ガスおよび酸素ガスを供給した際に燃料電池22に得られる電圧(電池電圧)を監視する。この場合、制御装置28は、燃料電池22に設けられる電圧センサ90(
図1)によって検出される電圧(電池電圧)を記憶媒体に時系列で記憶する。電池電圧は、直列に接続された複数の単位セルの両端の電圧であってもよいし、各単位セルの電圧であってもよい。電圧の監視が開始されると、弁制御処理は、ステップS2に移行する。
【0042】
本実施形態では、燃料電池22で未反応の酸素ガスおよび水素ガスは、燃料電池22から排出された後、再び燃料電池22に供給される。つまり、燃料電池22で用いられる酸素ガスおよび水素ガスは、燃料電池22を循環する。この場合、燃料電池22に蓄積される不純物の割合が徐々に多くなる傾向にある。燃料電池22に不純物が蓄積されると、燃料電池22の発電効率が低下し、電池電圧が低下する。
【0043】
ステップS2において、制御装置28は、記憶媒体に記憶された電池電圧を所定の電圧閾値と比較する。電池電圧が電圧閾値以上である場合、弁制御処理は、ステップS2に留まる。一方、電池電圧が電圧閾値を下回ると、弁制御処理は、ステップS3に移行する。
【0044】
ステップS3において、制御装置28は、水素パージ弁82を開弁し、燃料電池22から排出される水素含有ガスを、燃料電池システム10の系外にパージする。なお、制御装置28は、ポンプ61を制御して水素含有ガスに付与される流動力を現在の流動力よりも大きくした後、水素パージ弁82を開弁してもよい。
【0045】
制御装置28は、水素パージ弁82を開弁すると、水素パージ路80の排出口80Tの水素濃度の監視を開始する。この場合、制御装置28は、排出口80Tの近傍の水素パージ路80に設けられる濃度センサ92(
図1、
図2)によって検出される水素濃度を記憶媒体に時系列で記憶する。水素パージ弁82が開弁され、水素濃度の監視が開始されると、弁制御処理は、ステップS4に移行する。
【0046】
ステップS4において、制御装置28は、水素パージ弁82の開弁から所定の開弁期間T1(
図4)が経過すると、水素パージ弁82を閉弁する。水素パージ弁82が閉弁されると、弁制御処理は、ステップS5に移行する。
【0047】
ステップS5において、制御装置28は、電池電圧の回復を確認するために、電池電圧を電圧閾値と再び比較する。電池電圧が電圧閾値以上である場合、弁制御処理は、ステップS2に戻る。一方、電池電圧が電圧閾値を未だ下回っている場合、弁制御処理は、ステップS6に移行する。
【0048】
電池電圧の回復を確認するための電池電圧と電圧閾値との比較は、水素パージ弁82の閉弁後に限定されず、水素パージ弁82の開弁中であってもよい。この場合、弁制御処理では、ステップS4の前にステップS5が実行される。要するに、電池電圧の回復を確認するための電池電圧と電圧閾値との比較は、水素パージ弁82の開弁から所定期間経過後に実施される。
【0049】
ステップS6において、制御装置28は、記憶媒体に記憶した水素濃度を所定の濃度閾値と比較する。水素濃度が濃度閾値以上である場合、弁制御処理は、ステップS6に留まる。一方、水素濃度が濃度閾値を下回ると、弁制御処理は、ステップS7に移行する。
【0050】
ステップS7において、制御装置28は、酸素パージ弁72を開弁し、燃料電池22から排出される酸素含有ガスを、燃料電池システム10の系外にパージする。制御装置28は、酸素パージ弁72の開弁から所定の開弁期間T2(
図4)が経過すると、酸素パージ弁72を閉弁する。なお、制御装置28は、ポンプ59を制御して酸素含有ガスに付与される流動力を現在の流動力よりも大きくした後、酸素パージ弁72を開弁してもよい。酸素パージ弁72が閉弁されると、弁制御処理は、ステップS8に移行する。
【0051】
ステップS8において、制御装置28は、酸素パージ弁72の開弁から所定の開弁期間T2(
図4)が経過すると、酸素パージ弁72を閉弁する。酸素パージ弁72が閉弁されると、弁制御処理は、ステップS9に移行する。
【0052】
ステップS9において、制御装置28は、電池電圧の回復を確認するために、電池電圧を電圧閾値と再び比較する。電池電圧が電圧閾値以上である場合、弁制御処理は、ステップS2に戻る。一方、電池電圧が電圧閾値を未だ下回っている場合、弁制御処理は、ステップS10に移行する。
【0053】
ステップS10において、制御装置28は、酸素放出弁44および水素放出弁54を閉弁し、燃料電池22の発電を停止する。この場合、弁制御処理は、終了する。
【0054】
このように本実施形態では、制御装置28は、水素パージ弁82の開弁期間T1と酸素パージ弁72の開弁期間T2とが重ならないように、酸素パージ弁72および水素パージ弁82を制御する。これにより、パージされたガス中の酸素と水素との共存を実質的に抑制することができ、その結果、着火源がある場合に燃焼を引き起こす危険性を回避することができる。
【0055】
また、本実施形態では、水素パージ弁82の開弁期間T1は、酸素パージ弁72の開弁期間T2よりも前に実施される。水素分子は酸素分子より小さく拡散性が高いため、水素パージの後、すばやく酸素パージに移行できる。これにより、酸素パージ弁72の開弁期間T2が水素パージ弁82の開弁期間T1よりも前である場合に比べて、パージに要する期間を短縮することができる。
【0056】
また、本実施形態では、燃料電池22に生じる電圧が所定の電圧閾値を下回った場合に、水素パージ弁82の開弁が開始される。これにより、燃料電池22内に不純物の蓄積が多くなった場合にパージを開始することができ、その結果、不要なガスのパージを低減することができる。
【0057】
また、本実施形態では、水素パージ弁82の開弁から所定期間経過後の電圧が電圧閾値以上に回復しない場合に、酸素パージ弁72が開弁される。これにより、不要なガスのパージを低減することができる。
【0058】
また、本実施形態では、濃度センサ92によって検出される水素含有ガス中の水素濃度が所定の濃度閾値を下回った場合に、酸素パージ弁72が開弁される。これにより、パージされた水素ガス中の水素濃度が多い状況で酸素ガスをパージすることを確実に抑制することができる。
【0059】
本実施形態は、上記に限定されない。例えば、酸素含有ガスおよび水素含有ガスのパージは、燃料電池22の停止後に実施されてもよい。この場合、制御装置28は、酸素放出弁44および水素放出弁54を閉弁した後、電池電圧を監視することなく、水素パージ弁82を開弁する。水素パージ弁82の開弁期間T1が経過すると、制御装置28は、水素パージ弁82を閉弁する。その後、濃度センサ92によって検出される水素濃度が濃度閾値を下回ると、制御装置28は、酸素パージ弁72を開弁する。酸素パージ弁72の開弁期間T2が経過すると、制御装置28は、酸素パージ弁72を閉弁する。
【0060】
以上の記載から把握し得る発明および効果について以下に記載する。
【0061】
(1)本発明は、酸素ガスと水素ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池(22)と、前記燃料電池(22)に前記酸素ガスを供給するための酸素ガス供給路(42)と、前記燃料電池(22)から排出される前記酸素ガスを含む酸素含有ガスを前記酸素ガス供給路(42)に戻すための酸素循環路(58)と、前記燃料電池(22)に前記水素ガスを供給するための水素ガス供給路(52)と、前記燃料電池(22)から排出される前記水素ガスを含む水素含有ガスを前記水素ガス供給路(52)に戻すための水素循環路(60)と、を有する燃料電池システム(10)である。この燃料電池システム(10)は、前記酸素循環路(58)から前記酸素含有ガスを、前記燃料電池システム(10)の系外にパージするための酸素パージ路(70)と、前記水素循環路(60)から前記水素含有ガスを、前記燃料電池システム(10)の系外にパージするための水素パージ路(80)と、前記酸素パージ路(70)に設けられる酸素パージ弁(72)の開弁期間(T2)と、前記水素パージ路(80)に設けられる水素パージ弁(82)の開弁期間(T1)とが重ならないように、前記酸素パージ弁(72)および前記水素パージ弁(82)を制御する制御装置(28)と、を備える。
【0062】
これにより、パージされたガス中の酸素と水素との共存を実質的に抑制することができ、その結果、着火源がある場合に燃焼を引き起こす危険性を回避することができる。
【0063】
(2)本発明は、燃料電池システム(10)であって、前記水素パージ弁(82)の開弁期間(T1)は、前記酸素パージ弁(72)の開弁期間(T2)よりも前であってもよい。これにより、酸素パージ弁の開弁期間が水素パージ弁の開弁期間よりも前である場合に比べて、パージに要する期間を短縮することができる。
【0064】
(3)本発明は、燃料電池システム(10)であって、前記燃料電池(22)に生じる電圧が所定の電圧閾値を下回ると、前記制御装置(28)は、前記水素パージ弁(82)の開弁を開始してもよい。これにより、燃料電池内に不純物の蓄積が多くなった場合にパージを開始することができ、その結果、不要なガスのパージを低減することができる。
【0065】
(4)本発明は、本発明は、燃料電池システム(10)であって、前記水素パージ弁(82)の開弁から所定期間経過後の前記電圧が前記電圧閾値以上に回復しない場合、前記制御装置(28)は、前記酸素パージ弁(72)を開弁してもよい。これにより、不要なガスのパージを低減することができる。
【0066】
(5)本発明は、燃料電池システム(10)であって、前記水素パージ路(80)に設けられる濃度センサ(92)によって検出される前記水素含有ガス中の水素濃度が所定の濃度閾値を下回ると、前記制御装置(28)は、前記酸素パージ弁(72)を開弁してもよい。これにより、パージされた水素ガス中の水素濃度が多い状況で酸素ガスをパージすることを確実に抑制することができる。
【0067】
(6)本発明は、燃料電池システム(10)であって、前記酸素パージ路(70)からパージされる前記酸素含有ガスのパージ方向(AR1)と、前記水素パージ路(80)からパージされる前記水素含有ガスのパージ方向(AR2)とは異なってもよい。これにより、パージされたガス中の酸素と水素との共存を抑制する効果を高めることができる。
【0068】
(7)本発明は、燃料電池システム(10)であって、前記酸素パージ路(70)の排出口(70T)は、前記燃料電池システム(10)が搭載される移動体(100)の第1面(F1)から離れて配置され、前記水素パージ路(80)の排出口(80T)は、前記第1面(F1)とは反対側の前記移動体(100)の第2面(F2)から離れて配置されてもよい。これにより、パージされたガス中の酸素と水素との共存を抑制する効果を高めることができる。
【0069】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0070】
10…燃料電池システム 12…水電解装置
14…第1気液分離器 16…酸素タンク
18…水素昇圧装置 20…水素タンク
22…燃料電池 24…第2気液分離器
26…第3気液分離器 28…制御装置
42…酸素ガス供給路 44…酸素放出弁
52…水素ガス供給路 54…水素放出弁
58…酸素循環路 60…水素循環路
70…酸素パージ路 72…酸素パージ弁
80…水素パージ路 82…水素パージ弁
90…電圧センサ 92…濃度センサ