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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047945
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】エアロゾル形成基材
(51)【国際特許分類】
   A24F 40/465 20200101AFI20240401BHJP
   A24F 40/40 20200101ALI20240401BHJP
   A24F 40/20 20200101ALI20240401BHJP
【FI】
A24F40/465
A24F40/40
A24F40/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153724
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】721008039
【氏名又は名称】Future Technology株式会社
(72)【発明者】
【氏名】劉 凱鵬
【テーマコード(参考)】
4B162
【Fターム(参考)】
4B162AA03
4B162AA22
4B162AB12
4B162AC12
4B162AC22
(57)【要約】
【課題】 誘導加熱部材で発せられた熱を、過剰加熱をすることなく、また、充填物や誘導加熱部材の条件によらずに、効果的に充填物の広い範囲に伝導できるエアロゾル形成基材を提供する。
【解決手段】
エアロゾル吸引カートリッジ10に使用される円柱形状のエアロゾル形成基材1であって、円筒形の包装部材11と、その円筒の内部に収納されたエアロゾル発生源である充填物12と、充填物12の内部に、交番磁界に反応して熱を発生させる誘導加熱部材13とそこで発生した熱を、充填物12に伝導するための、熱伝導部材14とを備えることを特徴とする、エアロゾル形成基材1であり、特に熱伝導部材14は、常磁性体または非磁性体の金属を含む素材からなる場合に効果的である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル吸引カートリッジに使用される円柱形状のエアロゾル形成基材であって、
円筒形の包装部材と、
前記包装部材の円筒の内部に収納されたエアロゾル発生源である充填物と、
前記充填物の内部に、交番磁界に反応して熱を発生させる誘導加熱部材と、前記誘導加熱部材で発生した熱を、前記充填物に伝導するための、熱伝導部材と、
を備えることを特徴とする、エアロゾル形成基材。
【請求項2】
前記熱伝導部材は、粒状、球状、板状、シート状、ひも状、ペースト状または棒状のいずれかの形状である、
ことを特徴とする、請求項1に記載のエアロゾル形成基材。
【請求項3】
前記熱伝導部材は、前記誘導加熱部材の一部または全部を被覆または包摂している、
ことを特徴とする、請求項1または2のいずれか一項に記載のエアロゾル形成基材。
【請求項4】
前記熱伝導部材は、前記充填物の内部に互いに離隔して配置されている、
ことを特徴とする、請求項1または2のいずれか一項に記載のエアロゾル形成基材。
【請求項5】
前記熱伝導部材は、常磁性体または非磁性体の金属を含む素材からなる、
ことを特徴とする、請求項1または2のいずれか一項に記載のエアロゾル形成基材。
【請求項6】
前記熱伝導部材は、前記誘導加熱部材と同等またはそれ以上の熱伝導率を有する素材からなる、
ことを特徴とする、請求項1または2のいずれか一項に記載のエアロゾル形成基材。
【請求項7】
前記熱伝導部材は、グラフェン、グラフェイト、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素のいずれかを含む素材からなる、
ことを特徴とする、請求項1または2のいずれか一項に記載のエアロゾル形成基材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導加熱式向けのエアロゾル吸引カートリッジに使用されるエアロゾル形成基材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、火炎を用いることなく、タバコの成分を含むタバコカートリッジを加熱して、気化したタバコ成分を吸引する方式のタバコ製品が広く知られている。また、嗜好の多様化から、タバコ成分を含まない植物の芳香や味わいを、タバコ同様に火炎を用いずに楽しむためのカートリッジ製品を使用したエアロゾル吸引カートリッジも知られ始めている。
【0003】
このようなエアロゾル吸引カートリッジは、充填物が集積されたエアロゾル形成基材を加熱することで、エアロゾルを発生させる。エアロゾル形成基材の加熱方法として、(1)加熱装置内部に設置された加熱ブレードに、エアロゾル吸引カートリッジを挿入して、加熱ブレードを電気的に加熱することで充填物を加熱する方式(加熱式)(例えば特許文献1参照)の他に、(2)エアロゾル形成基材の内部に予め強磁性体を主成分とした部品である誘導加熱部材を設け、誘導加熱装置で発生させた交番磁界により、誘導加熱部材内部にヒステリシス損及びジュール熱を発生させて加熱(誘導加熱)することで、充填物を加熱する方式(誘導加熱式)が知られている(例えば特許文献2参照)。
【0004】
図7は、従来のエアロゾル形成基材101を使用した誘導加熱式向けのエアロゾル吸引カートリッジ100の概略の側面断面図である。エアロゾル吸引カートリッジ100は、円筒形の包装部材103に、エアロゾル形成基材101と、支持部材105と、フィルタ106が直線的に配列され、外装部材107で巻かれて円柱状に形成されている。
【0005】
エアロゾル吸引カートリッジ100は、全体として細長い円柱形状をしており、加熱することでエアロゾルを発生する充填物104が充填された細長い円柱状の充填物104の集積体であるエアロゾル形成基材101と、エアロゾル形成基材101が動いたり、外装部材107が折れ曲がったりすることを防止するための支持部材105と、エアロゾル形成基材101からの気流を通すことのできるフィルタ106と、フィルタ106の反対側の端に配置されるシール部材108とが、長手方向に沿って配列されており、シート状の外装部材107で円柱状に巻かれることで一体的に形成されている。ここで、外装部材107は、紙等の柔軟な素材で形成されており、シール部材108や支持部材105は、紙、プラスチックまたはシリコーン等の素材から形成されている。
【0006】
エアロゾル形成基材101は、中央に開口が形成されている円筒形状の包装部材103の内部に、円柱形状の充填物104が収納されており、さらに充填物104には、誘導加熱に供する誘導加熱部材102が挿入されている。ここで、誘導加熱部材102の長さは、包装部材103の長尺方向の長さ、すなわちエアロゾル形成基材101の長さと略同じであり、支持部材105やシール部材108と物理的に近接している構造となっている。
【0007】
ここで誘導加熱式では、誘導加熱部材102で発せられた熱は、専ら誘導加熱部材102の近傍を加熱するにとどまり、熱が十分に充填剤104に行きわたらないため、加熱効率が悪く、エアロゾルの発生が十分でないといった問題があった。
【0008】
これについて、誘導加熱部材102の体積を増やしたり、表面積を広くしたりして発熱量を増やすことで充填物104の広い範囲を加熱するという方法が考えられるが、単純に発熱量を増やした場合、誘導加熱部材102の近傍が通常より強く加熱されることで(過剰加熱)、使用者が火傷を負いやすくなったり、誘導加熱装置が故障したりする恐れがあり、適正に使用できなくなることが懸念されていた。
【0009】
一方、誘導加熱部材102の素材は鉄に代表される強磁性金属を含むため、錆に弱いという問題があった。また、製造工程や出荷後といった使用前に、何らかの原因で誘導加熱部材102に傷がついたりした場合には、錆が進行して発熱能力を低下させることが懸念されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特表2015-519915号公報
【特許文献2】特開2021-175399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記事情に鑑み、誘導加熱部材で発せられた熱を、過剰加熱を起こすことなく、また、充填物や誘導加熱部材の条件によらずに、効果的に充填物の広い範囲に伝導できるエアロゾル形成基材を提供することを目的とする。
【0012】
また、誘導加熱部材を錆や傷から保護することができるエアロゾル形成基材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、エアロゾル吸引カートリッジに使用される円柱形状のエアロゾル形成基材であって、円筒形の包装部材と、前記包装部材の円筒の内部に収納されたエアロゾル発生源である充填物と、前記充填物の内部に、交番磁界に反応して熱を発生させる誘導加熱部材と、前記誘導加熱部材で発生した熱を、前記充填物に伝導するための、熱伝導部材と、を備えることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のエアロゾル形成基材であって、前記熱伝導部材は、粒状、球状、板状、シート状、ひも状、ペースト状または棒状のいずれかの形状である、ことを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2のいずれか一項に記載のエアロゾル形成基材であって、前記熱伝導部材は、前記誘導加熱部材の一部または全部を被覆または包摂している、ことを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1または2のいずれか一項に記載のエアロゾル形成基材であって、前記熱伝導部材は、前記充填物の内部に互いに離隔して配置されている、ことを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1または2のいずれか一項に記載のエアロゾル形成基材であって、前記熱伝導部材は、常磁性体または非磁性体の金属を含む素材からなる、ことを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1または2のいずれか一項に記載のエアロゾル形成基材であって、前記熱伝導部材は、前記誘導加熱部材と同等またはそれ以上の熱伝導率を有する素材からなる、
ことを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項1または2のいずれか一項に記載のエアロゾル形成基材であって、前記熱伝導部材は、グラフェン、グラフェイト、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素のいずれかを含む素材からなる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、誘導加熱部材で発せられた熱を、熱伝導部材により効果的に充填物の広い範囲に伝導できるので、加熱効率が向上して、エアロゾルの発生を促進することが可能となる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、熱伝導部材は、充填物の種類や密度、形態、さらに誘導加熱部材の形状や材質など、充填物や誘導加熱部材の条件に応じて多彩な形状をとることができ、効果的に充填物の広い範囲に熱を伝導することが可能である。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、熱伝導部材が誘導加熱部材の一部または全部を被覆または包摂することで、誘導加熱部材を錆や傷から保護することが可能である。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、熱伝導部材は、充填物の内部で互いに離隔して配置されているので、より効果的に充填物の広い範囲に熱を伝導することが可能である。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、熱伝導部材は、常磁性体または非磁性体の金属を含む素材からなることで、ヒステリシス損による発熱がないため、過剰加熱をすることがなく、有効に熱伝導をすることが可能である。
【0019】
請求項6、7に記載の発明によれば、熱伝導部材が高い熱伝導性を有するため、効果的に充填物の広い範囲に熱を伝導することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施の形態1に係るエアロゾル形成基材の概略の側面断面図(a)と正面断面図(b)である。
図2】本発明の実施の形態1に係るエアロゾル形成基材を使用したエアロゾル吸引カートリッジの概略の側面断面図である。
図3】本発明の実施の形態2に係るエアロゾル形成基材の概略の側面断面図(a)と正面断面図(b)である。
図4】本発明の実施の形態3に係るエアロゾル形成基材の概略の側面断面図(a)と正面断面図(b)である。
図5】本発明の実施の形態3に係る誘導加熱部材と熱伝導部材の概略の斜視図である。
図6】本発明の他の実施の形態に係るエアロゾル形成基材の概略の正面断面図である。
図7】従来のエアロゾル形成基材を使用したエアロゾル吸引カートリッジの概略の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態について、添付の図面を参照しながら説明する。なお、図面において、図面中の各部の構成の大きさ、間隔、数、その他詳細は、視認と理解の助けのために 、実際の物に比べて大幅に簡略化して表現している。
【0022】
実施の形態1
図2は、本発明の実施の形態1に係るエアロゾル形成基材1を使用したエアロゾル吸引カートリッジ10の概略の側面断面図である。エアロゾル吸引カートリッジ10は、エアロゾル形成基材1と、支持部材15と、フィルタ16と、フィルタ16の反対側の端に配置されるシール部材18とが、直線的に配列され、外装部材17で巻かれて全体として細長い円柱形状に形成されている。
【0023】
エアロゾル吸引カートリッジ10は、全体として細長い円柱形状をしており、加熱することでエアロゾルを発生する充填物12の集積体である細長い円柱形状のエアロゾル形成基材1と、エアロゾル形成基材1が動いたり、外装部材17が折れ曲がったりすることを防止するための支持部材15と、エアロゾル形成基材1からの気流を通すことのできるフィルタ16とが、長手方向に沿って配列されており、シート状の外装部材17で円柱形状に巻かれることで一体的に形成されている。外装部材17は、紙等の柔軟な素材で形成されている。ここで、本発明において「細長い」とは、立体形状において、一方向が他の方向より長いことを意味する。すなわち、本実施の形態1において「細長い円柱形状(円筒形状)」とは、円柱(円筒)の底面である円の直径より、円柱(円筒)の高さ(すなわち底面に垂直な成分)の方が長いという意味である。以降の実施の形態においても同様である。
【0024】
本実施の形態1におけるエアロゾル吸引カートリッジ10は、直径が4.0mm~7.5mm、より好ましくは5.0mm~7.0mm、長さが40mm~80mmに形成される。エアロゾル吸引カートリッジ10の直径を6.5~7.5mmの範囲に設定すれば、誘導加熱装置に設けられたエアロゾル吸引カートリッジ10を差し込む挿入口と適度な力で嵌合するため、エアロゾル吸引カートリッジ10を誘導加熱装置に好適に保持させることを可能にしつつ、エアロゾル吸引カートリッジ10の着脱を容易にすることができる。エアロゾル吸引カートリッジ10の長さを40mm以上に設定すれば、誘導加熱装置に設けられたエアロゾル吸引カートリッジ10を受け入れる挿入口の長さよりも長くなるので、エアロゾル吸引カートリッジ10を誘導加熱装置に差し込んでも、吸口を誘導加熱装置から露出させることができ、使用者がエアロゾルを吸引するのに必要な長さを確保可能となる。
【0025】
エアロゾル形成基材1は、図1に示すように、中央に開口が形成されている円筒形状の包装部材11の内部に、円柱形状の充填物12が収納されており、さらに充填物12の内部には、交番磁界に反応して熱を発生させるための誘導加熱部材13と、誘導加熱部材13で発生した熱を、充填物12に伝導するための、熱伝導部材14が配置されている。誘導加熱部材13の長さは15~30mmに設定されている。
【0026】
エアロゾル形成基材1の直径は、フィルタ16の直径と略等しく、また、中心軸に沿って概ね一定の値となっている。この直径の大きさは、例えば4.0mm~7.5mmの範囲が好ましく、さらに好ましくは5.0mm~7.0mmの範囲である。
【0027】
包装部材11は紙などの柔軟かつ燃焼可能な素材でできた、円筒形状の部材であり、円筒の外側の直径が4.0mm~7.5mm、より好ましくは5.0mm~7.0mm、長さが10mm~25mmに設定されている。
【0028】
<充填物12について>
充填物12は、乾燥・粉砕されたタバコ植物または非タバコ植物に、エアロゾルを発生させるエアロゾルフォーマや、微結晶セルロース、風味を追加する添加剤、保存料、粘着剤または増粘剤等を混合し、シート状に成形した上で、所定の幅及び長さを有するように切断されることで形成される。なお、充填物12は多様な形状を有してもよい。例えば、短冊状やペースト状に形成されてもよいし、顆粒状に形成されてもよい。
【0029】
なお、充填物12を短冊状で構成した場合、中心軸に直交する断面は略長方形状であり、その断面の長辺と短辺の比は、例えば、1:1~30:1の範囲であることが好ましい。長辺の長さは、0.1mm~7.5mmの範囲が好ましく、さらに好ましくは、0.1mm~3.0mmの範囲である。短辺の長さは、0.1mm~1.0mmの範囲が好ましく、さらに好ましくは0.1mm~0.5mmの範囲である。充填物12の長さは10mm~25mmの範囲が好ましく、さらに好ましくは10mm~20mmの範囲である。このような充填物12の寸法の一例を挙げると、長辺が1.5mm、短辺が0.3mm、長さが12mmである。
【0030】
次に、充填物12として用いられる原料の具体例について説明する。充填物12は、以下に示す原料のうち任意の1つまたは複数の組み合わせで構成される。
【0031】
充填物12は、タバコ植物または非タバコ植物を原料とする。タバコ植物としては、タバコ葉、タバコ茎、膨張タバコ、均質化タバコ等が挙げられる。非タバコ植物としては、タバコ植物以外の植物が挙げられる。非タバコ植物の好ましい部位としては、葉、果肉、種子、根(鱗根、塊根等)、茎、塊茎、皮(茎皮、樹皮等)、花(花弁、雄蕊、雌蕊等)、幹、枝等が挙げられる。
【0032】
なお、本明細書でいう「植物」とは動物に対する一群を意味し、草および木等のように、根があって場所が固定されて生きているような生物以外に、微細藻類および海藻等のような藻類、キノコ等の菌類等をも含む。
【0033】
充填物12は、例えば、乾燥・粉砕された非タバコ植物に、エアロゾルを発生させるエアロゾルフォーマ、微結晶セルロース、風味を追加する風味添加剤、保存料、結着剤または増粘剤等を適宜混合し、粉砕若しくは分級して粉末状または粒状にしたり、ペースト状に成形される。また、充填物12は、シート状に成形した上で、所定の幅および長さを有するように切断して短冊状または棒状とされる。
【0034】
例えば、非タバコ植物が原材料である場合は、茶葉を使用できる。茶葉は茶になる植物が異なるだけでなく、同じ植物であっても加工法によって異なる茶葉になる。具体的には、たとえば、日本茶、紅茶、ウーロン茶等が挙げられる。
【0035】
エアロゾルフォーマは、例えばグリセリン、プロピレングリコール等が好ましく使用される。
【0036】
次に、微結晶セルロースとは、例えば、繊維性植物のパルプから得られたα-セルロースを酸で部分的に解重合したものとして得られるものであり、セルロースから可溶性部分を取り除き、適宜、不溶性部分を結晶化したものである。
【0037】
微結晶セルロースは、粉体のままでも良いし、水などの溶媒に分散させて懸燭液でも良い。この場合、溶媒ヘの分散は、高速攪拌機や高圧ホモジナイザーなどが使用できる。
【0038】
さらに、必要に応じ充填物12の原料として風味を追加する風味添加剤も用いられる。風味添加剤としては、はっか、ココア、コーヒー、紅茶のエキス、茶抽出物のカテキンの粉末等が挙げられる。保存料としては食品に使用されるものが好ましく、例えば、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、安息香酸、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。
【0039】
結着剤または増粘剤としては、グアーガム等のゴム、ヒドロキシプロピルセルレロースなどのセルロース結合剤、デンプンなどの有機酸の共役塩基塩などの多糖類、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0040】
<誘導加熱部材13について>
誘導加熱部材13は、図1のように平板状の素材を加工したものである。この平板は、厚さが0.05~0.5mm、好ましくは厚さが0.1~0.3mmである。長さはエアロゾル形成基材1の高さ方向の長さに比べて略同じであるが、エアロゾルの形成を阻害しない程度、例えばエアロゾル形成基材1の長さより±1~3mm程度異なっていてもよい。
【0041】
誘導加熱部材13の素材は、強磁性体を含む金属材料で形成される。強磁性体は、外部磁界を加えると外部磁界と同じ方向の磁性を強く帯び、特に磁石に吸着する性質を持つ素材であり、例えば、強磁性体の材料である鉄、フェライト鉄、フェライト粉末、フェライト粒子、フェライト系ステンレス(例えばSUS430)、ニッケル、ニッケル鉄合金(例えば42アロイ、36インバー)、あるいはコバルト等が挙げられる。強磁性体の比透磁率は、1よりも極めて大きく、例えば、鉄であれば5000程度であり、ニッケルであれば600程度であり、コバルトであれば250程度であり、フェライト系ステンレスであれば1000~1800程度である。
【0042】
磁性体のうち常磁性体は、外部磁界を加えると外部磁界と同じ方向の磁気を弱く帯び、外部磁界をゼロにすると磁気を帯びなくなる材料であり、例えば、アルミニウム、白金およびマンガン等が挙げられる。常磁性体の比透磁率は1よりもわずかに大きく、例えば、アルミニウムであれば1.000021程度であり、白金であれば1.000265程度であり、マンガンであれば1.000830程度である。
【0043】
また、磁性体のうち反磁性体は、外部磁界を加えると外部磁界と反対方向の磁気を帯び、外部磁界をゼロにすると磁気を帯びなくなる材料であり、例えば銅、グラファイト、ビスマス等が挙げられる。反磁性体の比透磁率は、1よりもわずかに小さく、例えば、銅であれば0.999990程度であり、グラファイトであれば0.99980程度であり、ビスマスであれば0.999834程度である。
【0044】
強磁性体は、向きや大きさが時間と共に変化する磁界(交番磁界)内部に置いたとき、電磁誘導により流れる渦電流によるジュール熱が発生するだけでなく、強磁性体内部の磁化の向きが変化するときに発生するエネルギー損失(ヒステリシス損)に起因する熱が発生するため、常磁性体や反磁性体に比べて容易に誘導加熱ができ、エアロゾル吸引カートリッジ10を十分に加熱できる。
【0045】
また、強磁性体がその磁気秩序を失い、常磁性体に転移する温度であるキュリー温度は、例えば、ニッケルであれば358℃程度である。そのため、エアロゾル吸引カートリッジを例えば200℃の高温で加熱する際にも、加熱温度がキュリー温度に達することはなく、強磁性体としての性質を維持でき、エアロゾル吸引カートリッジ10を安定して加熱できる。
【0046】
誘導加熱部材13の素材は、強磁性体の材料である、鉄、フェライト鉄、フェライト粉末、フェライト粒子、フェライト系ステンレス、強磁性鋼、ステンレス鋼、ニッケル、コバルト、またはこれらを組み合わせた金属材料を採用してもよい。例えば、フェライト系ステンレスとニッケルを組み合わせたもの等が挙げられ、より好ましくは、鉄、クロム、アルミを組合せた合金(鉄クロムアルミ合金)である。
【0047】
ここで、鉄及びクロムの温度と磁性の関係性について説明する。鉄は、キュリー温度が約770℃、クロムは、反強磁性体から常磁性体に変わる温度であるネール温度が約35℃である。
【0048】
また、誘導加熱部材13は、強磁性体を主成分として含む金属材料によって構成されてもよく、例えば強磁性体を、好ましくは60%以上、さらに好ましくは80%以上含む合金である強磁性合金を採用してもよい。例えば、ニッケル合金あるいはニッケル鉄合金等が挙げられる。この場合でも、強磁性体が誘導加熱されることで、エアロゾル吸引カートリッジ10を十分に加熱できる。なお、強磁性体の代わりに、常磁性体および反磁性体を含む金属材料を用いてもよい。この場合でも誘導加熱自体は可能である。ただし、加熱時間の短縮化や消費電力の低減の観点から強磁性体を含む金属材料を用いる方が好ましい。
【0049】
<熱伝導部材14について>
熱伝導部材14は、誘導加熱部材13で発生した熱を、充填物12に有効に伝導するための部材である。本実施の形態1では、粒状または球状の形状をして、充填物12の内部に1個以上内包されている。
【0050】
熱伝導部材14は、必ずしもそれ自体が発熱する必要はないので、強磁性体である必要はない。さらに、過剰加熱を防止する、という意味では、ヒステリシス損が発生しない常磁性体または非磁性体の金属を含む素材で形成されていることが好ましく、全てが常磁性体または非磁性体の金属からなることがさらに好ましい。また、熱伝導性については誘導加熱部材13の素材と同等またはそれ以上の熱伝導率を有する素材であることが好ましい。本実施の形態1では、アルミニウムを素材とした。アルミニウムは常磁性体であるため、前述のとおりヒステリシス損が発生しないので過剰加熱になりにくい。さらに、熱伝導性に優れるとともに、比較的錆にも強く、価格も比較的安価であるので、熱伝導部材として理想的な素材である。
【0051】
本実施の形態1における、熱伝導部材14の形状は、前述のとおり、粒状または球状の形状をしている。ここで、粒状とは、球状の様な等方的な形状ではなく、さらにシート状や棒状の様な、特定の形状を有さず、ランダムな形状を有するものと考える。また、粒または球の大きさは、小さすぎると充填物12の内部で移動しやすくなり位置が不安定となり、大きすぎると1個のエアロゾル形成基材1が有する充填物12の量が少なくなり過ぎてしまうので、適正な範囲に設定する。本実施の形態1では、球の直径または粒の最大寸法が0.01~2.0mmの範囲に設定されている。
【0052】
充填物12の内部に含まれる熱伝導部材14の数は、本実施の形態1の様に粒状または球状の場合には、複数個をできるだけ均一な密度で互いに離隔して配置させることが、熱伝導を均一行うためには好ましい。
【0053】
支持部材15は、エアロゾル形成基材1の支持部材15側への移動や外装部材17の折れ曲がりを抑制するとともに、エアロゾル形成基材1で発生したエアロゾルを含む気流をフィルタ16側に流通させる。支持部材15は、例えば高さ方向に貫通孔が形成された円柱状に形成され、その高さ方向の軸がエアロゾル吸引カートリッジ10の中心軸に沿うようにエアロゾル形成基材1とフィルタ16との間に配置される。支持部材15は、例えば、直径が4.0mm~7.5mm、中心軸に沿った長さが50mm以下に形成される。なお、支持部材15は、適宜機能および構成に応じて上記とは異なる寸法や形状を有していてもよい。本実施の形態1では、樹脂材で形成された支持部材本体に、空気の流路となる挿通孔が形成された形態である。支持部材15を形成する素材としては、例えば、ポリプロピレン、ポリ乳酸、シリコーンのようなものが挙げられる。
【0054】
フィルタ16は、円柱状に形成されており、中心軸に沿った長さは、10~50mmに設定されている。フィルタ16の素材は、例えば紙等を用いて形成される。また、例えば紙からなるシート状の部材を巻いて円柱状に設けられてもよいし、微粒子を取り除くセルロースアセテートフィルタ等を含んでいてもよい。また、シリコーンを含む多孔質材料で形成されてもよい。フィルタ16は、エアロゾル形成基材1で生成された水蒸気やエアロゾル中の微粒子の一部を濾過する機能を有する白色のフィルタである。なお、充填物12が非タバコ植物を原料としている場合、フィルタ16は必ずしも必要ではない。
【0055】
次に、シール部材18は、円管状に形成され、例えば直径が4.0mm~7.5mm、中心軸に沿った長さが30~70mm以下に形成される。シール部材18は、フィルタ16と同様に、例えば紙からなるシート状の部材を巻いて円管状に設けられてもよい。シール部材18は、カートリッジの外部からエアロゾル形成基材1に向かって空気を通過させる機能を有する。また、シール部材18は、エアロゾル形成基材1で生成された水蒸気やエアロゾルのうち、エアロゾル形成基材1に留まって液化した残留液を吸収することができる。このシール部材18は、フィルタ16とは異なる色(例えば黒)にすることで、エアロゾル吸引用カートリッジ10の上流側と下流側を簡単に判断可能にすることができる。また、通気性を向上させるために、エアロゾルを通路となる貫通孔を設けても良い。
【0056】
次に、本実施の形態1に係る、充填物12の製造工程について説明をする。
充填物12の製造工程は、さらに内部工程として、その主原料となるタバコ植物または非タバコ植物を乾燥・粉砕し、秤量等を行う乾燥・粉砕工程と、その他の原料の前処理、秤量等を行う準備工程と、原料を混合して組成物とする混合工程と、組成物を成形する充填物成形工程と、を有する。
【0057】
乾燥・粉砕工程では、主原料となるタバコ植物または非タバコ植物の使用部位(例えば、葉、種子、乾燥果実、茎、樹皮、根など)を組成物とするため、所定の粉砕物に加工する。その際、後に添加するエアロゾルフォーマ、水その他の成分を吸収あるいは担持するのに都合の良い水分量に調整することが好ましい。乾燥において、温度は60℃以上80℃以下が好ましい。この範囲とすることで、必要とする香味成分の散逸を避けながら、所望の水分量に到達させやすい。さらに、乾燥・粉砕工程には、粉砕物を篩分けする篩工程を設けることもでき、所望の粒度に調整して混合工程に投入することができる。
【0058】
準備工程においては、充填物12を作製するにあたり必要な原料を準備することができる。前述の微結晶セルロースは、準備工程において秤量され、混合工程に投入される。
【0059】
混合工程においては、通常の混合機を使用することができる。例えば、混合槽中の原料を撹拌羽根にて、剪断力を加えつつ混合するような形態が好ましく用いられる。
【0060】
充填物成形工程では、短冊状または棒状とする場合には、各種原料が混合された組成物を複数本のロールミルで薄いシート状に成形してから、切断することで充填物12が成形される。複数本のロールミルを用いると、狭いロール間に押し込まれることによる圧縮と、ロール速度差による剪断により、混練、分散などを行いながら、ドクターブレードにより所望の厚さのシートとすることが可能であり、好ましい。また、プレスローラあるいはプレス機を用いて作製することもできる。
【0061】
この場合、シートの厚さは、0.1mm~1.0mmの範囲が好ましく、さらに好ましくは0.1mm~0.5mmの範囲である。得られたシートは、カッター、回転刃方式のロータリーカッター等により、所定の幅に切断される。
【0062】
また、粉末状または粒状の充填物12とする場合には、上記組成物について、適宜粉砕若しくは分級を行うことが好ましい。粉末状または粒状の充填物12における平均粒子径は、例えば0.1~3.0mmであることが好ましく、0.5mm以下であることがより好ましい。当該平均粒子径は、例えばJIS K 0069:1992に記載された篩分け法によって求められる。つまり、この平均粒子径は、複数の篩による試験結果について、目開きの大きいほうからの質量の積算を行い、その質量50%に相当する径をいう。また、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径を平均粒子径としても良い。また、粉末状または粒状の組成物に増粘剤や水などを適量添加して混錬することで、充填物12を、流動性を有するペースト状に形成してもよい。
【0063】
充填物成形工程では、組成物を加圧によりオリフィスを通過させて成形するなど、他の手段を用いても良い。また、充填物成形工程では、必要に応じて、非タバコ植物、エアロゾルフォーマ、結着剤または増粘剤等、風味添加剤、保存料をさらに添加しても良いし、水などを添加しても良い。
【0064】
ここで、充填物12の表面に粘着性を付与する場合は、粘着性を付与できる手段であれば特に限定されないが、既述の結着剤を少なくとも一部に付着させれば良い。粘着性を付与することで、短冊状または棒状の充填物12と粉末状、粒状またはペースト状の充填物12と組み合わせる場合に、短冊状または棒状の充填物12の表面に粉末状、粒状またはペースト状の充填物12を安定して保持することができる。
【0065】
<エアロゾル形成基材の形成工程>
次に、エアロゾル形成基材1の製造工程では、充填物12と誘導加熱部材13と熱伝導部材14を包装部材11で円柱状に包摂し、エアロゾル形成基材1の直径に合わせて収束させ、所定の長さ間隔(80~200mm)で切断する。
【0066】
<組立工程>
次に、組立工程について説明をする。組立工程は、エアロゾル形成基材1と、支持部材15とフィルタ16を、この順番で一列に配列し、外装部材17で包むことで、エアロゾル吸引カートリッジ10が完成する。
【0067】
この発明によれば、誘導加熱部材13で発せられた熱を、熱伝導部材14により効果的に充填物12の広い範囲に伝導できるので、加熱効率が向上して、エアロゾルの発生を促進することが可能となる。
【0068】
また、熱伝導部材14は、充填物12の種類や密度、形態、さらに誘導加熱部材13の形状や材質など、充填物12や誘導加熱部材13の条件に応じて多彩な形状をとることができ、効果的に充填物12の広い範囲に熱を伝導することが可能である。
【0069】
また、熱伝導部材14が常磁性体を金属とすることで、交番磁界を作用させたときでもヒステリシス損による発熱がないため、過剰加熱をすることがなく、有効に熱伝導をすることが可能である。
【0070】
また、熱伝導部材14が高い熱伝導性を有するため、効果的に充填物12の広い範囲に熱を伝導することが可能である。
【0071】
実施の形態2
次に、図3に基づいて、本実施の形態2に係るエアロゾル形成基材2について説明をする。ここで、実施の形態1と共通の構成や工程については、図示や説明を適宜省略する。
【0072】
本実施の形態2において、熱伝導部材24は、板状の形状をしており、誘導加熱部材23の表面を被覆している。
【0073】
熱伝導部材24は、誘導加熱部材23の表面に密着して、一体的に形成された板状の部材であり、実施の形態1と同様にアルミニウムを素材とする。
【0074】
なお、本実施の形態2において、熱伝導部材24は、誘導加熱部材23の表面に対するアルミニウム蒸着により形成されており、厚さは0.01mm~0.1mmである。また、熱伝導部材24が形成されるのは、誘導加熱部材23の面の、板厚方向の面(側面)を除く一部の面、すなわち長さ方向と幅方向から構成される面(表面)である。なお、側面は表面に比べて極めて面積が小さいので、このような場合でも、熱伝導効果は十分に確保可能である。
【0075】
この発明によれば、誘導加熱部材24で発せられた熱を、熱伝導部材23により効果的に充填物22の広い範囲に伝導できるので、加熱効率が向上して、エアロゾルの発生を促進することが可能となる。
【0076】
また、熱伝導部材24が誘導加熱部材23の一部または全部を被覆することで、誘導加熱部材23を錆や傷から保護することが可能である。
【0077】
また、熱伝導部材24は、常磁性体または非磁性体の金属を含む素材からなることで、ヒステリシス損による発熱がないため、過剰加熱をすることがなく、有効に熱伝導をすることが可能である。
【0078】
また、熱伝導部材24が高い熱伝導性を有するため、効果的に充填物22の広い範囲に熱を伝導することが可能である。
【0079】
実施の形態3
次に、図4図5に基づいて、本実施の形態3に係るエアロゾル形成基材3について説明をする。ここで、実施の形態1と共通の構成や工程については、図示や説明を適宜省略する。
【0080】
本実施の形態3において、熱伝導部材34は、シート状の形状をしており、誘導加熱部材33に接触しながら、その全部を包み込む状態で包摂しており、誘導加熱部材33の幅方向(図4(b)において、エアロゾル形成基材を構成する円柱の直径方向)に、充填物32の内部で表面積を広げるような形状をしている。
【0081】
また、熱伝導部材34の素材は、加工性に優れた金属箔を使用した。本実施の形態3では、実施の形態1と同様に、状磁性体のアルミニウム箔を素材としており、その厚さは0.05mm~0.02mmである。
【0082】
この発明によれば、誘導加熱部材33で発せられた熱を、熱伝導部材34により効果的に充填物の広い範囲に伝導できるので、加熱効率が向上して、エアロゾルの発生を促進することが可能となる。
【0083】
また、熱伝導部材34は、充填物32の種類や密度、形態、さらに誘導加熱部材33の形状や材質など、充填物32や誘導加熱部材33の条件に応じて多彩な形状をとることができ、効果的に充填物32の広い範囲に熱を伝導することが可能である。
【0084】
また、熱伝導部材34が誘導加熱部材33の一部または全部を包摂することで、誘導加熱部材33を錆や傷から保護することが可能である。
【0085】
また、熱伝導部材34は、常磁性体を素材とすることで、ヒステリシス損による発熱がないため、過剰加熱をすることがなく、有効に熱伝導をすることが可能である。
【0086】
また、熱伝導部材34が高い熱伝導性を有するため、効果的に充填物32の広い範囲に熱を伝導することが可能である。
【0087】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本願発明の範囲は以上の実施の形態に限られるものではなく、これと同視しうる他の形態に対しても及ぶ。
【0088】
実施の形態1(2、3)では、熱伝導部材14(24、34)は、常磁性体のアルミニウムを素材としたが、これに限られず、非磁性体である銅や、オーステナイト系ステンレス(SUS304、SUS303、SUS316)等も使用可能である。特に、銅やステンレスは錆に強いため、誘導加熱部材13(23、33)の保護にも好適である。
【0089】
また、全部が常磁性体または非磁性体の金属である必要は必ずしもなく、熱伝導部材14(24、34)自体の発熱が誘導加熱部材13(23、33)に比べて微小なために過剰加熱に至らず、さらに熱伝導性が確保される場合には、一部にそれらが含まれる場合でも良い。また、強磁性体であっても、誘導加熱部材13(23、33)の素材に比べて透磁率が低く、そのためそれ自体の発熱が弱く、過剰加熱に至らないようなものである場合も、使用が可能である。さらに、粒状、球状といった、熱伝導部材14(24、34)が複数存在する場合には、全てが同じ素材から形成される必要もなく、一部が常磁性体または非磁性体の金属以外の素材から形成されており、その他は多種の素材から形成されてもよい。
【0090】
さらに、誘導加熱部材13(23、33)の素材と同等またはそれ以上の熱伝導率を有することで、熱伝導性を確保することができれば、金属以外の物質を使用することも可能である。例えば、グラフェン、グラファイトのような炭素からなる物質や、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などのセラミックスのような、高い熱伝導性を有する物質も、熱伝導部材14(24、34)として使用できる。なお、熱伝導部材14(24、34)の熱伝導率が、誘導加熱部材13(23、33)のそれより低かったとしても、必ずしも本発明の効果を奏しないというものではなく、本発明の範囲に含まれる。
【0091】
また、本実施の形態において、被覆または包摂とは必ずしも熱伝導部材14(24、34)が誘導加熱部材13(23、33)に接触する必要はなく、一部または全部が非接触であってもよい。
【0092】
誘導加熱部材13(23、33)の形状は、平板状に限られず、円柱状、円筒状、角柱状、角筒状、ひも状、棒状、線状、球状、粒状など、多様な形状をとることが可能である。
【0093】
同様に、熱伝導部材14(24、34)も、粒状、球状、板状、シート状の他、円柱状、円筒状、角柱状、角筒状、ひも状、線状、棒状など、多様な形状をとることが可能である。
【0094】
例えば、ひも状の熱伝導部材14(24、34)により、誘導加熱部材13(23、33)を巻くことで包摂してもよい。さらにこの場合、熱伝導部材14(24、34)は誘導加熱部材13(23、33)に接触または非接触のいずれでもよい。また、熱伝導部材14(24、34)同士が密着して隙間なく包摂してもよいし、ある程度の隙間を設けていわゆる螺旋状に誘導加熱部材13(23、33)の周囲を周回する形態でもよい。
【0095】
実施の形態2において、熱伝導部材24は、誘導加熱部材23の表面にアルミニウムを蒸着したが、これに限られず、熱伝導部材24の素材を、誘導加熱部材23に貼付してもよい。また、側面は被覆されていなかったが、側面を含む全部を被覆してもよい。
【0096】
また、実施の形態1において、熱伝導部材14を構成する球の直径または粒の最大寸法は全てのもので同一である必要はなく、球又は粒によって異なる直径や最大寸法を有していても良い。熱伝導部材14が他の形状をとる場合でも同様である。
【0097】
実施の形態3において、熱伝導部材34は、誘導加熱部材33の幅方向に、充填物32の内部で表面積を広げるような形状をしていたが、これに限られず、図6のように、幅方向の他に表面と垂直方向(a)にも広げたり、片側の表面に垂直かつ同じ方向に2か所広げたり(b)、これを両側の表面で行ったり(c)と、熱伝導部材34の表面積を広げ、熱伝導性を向上させ得るような形状であれば、多様な形状をとることが可能である。
【0098】
また、実施の形態2において、熱伝導部材24は、誘導加熱部材23の一部を被覆していたが、これに限られず全部を被覆しても良く、この場合さらに熱伝導部材24を錆や傷から保護することが可能となる。一方で、実施の形態3において、熱伝導部材34は、誘導加熱部材33の全部を包摂していたが、これに限られず一部を包摂しても良い。
【0099】
また、支持部材15は、エアロゾル形成基材1(2、3)が支持部材15側へ移動したり、外装部材17が折れ曲がったりしない場合には、必ずしも設置する必要はない。例えば、フィルタ16をエアロゾル形成基材1(2、3)と隣接させたり、支持部材15のあった場所を空間としたりしてもよい。これにより、部品点数の削減ができるので、コスト削減に有効である。特に空間を設ける場合は、通気性の向上に有効である。
【0100】
さらに、外装部材17は、必ずしも一体的ではなく、2つ以上の外装要素を接合して用いても良い。例えば、エアロゾル形成基材1(2、3)と支持部材15を筒状の外装要素に収納し、ここにフィルタ16をシート状の外装要素で巻いて円柱状に形成する形態でもよい。なお、この場合、筒状の外装要素とシート状の外装要素をもって、外装部材17となる。一方で、別に外装部材17を使う必要は必ずしもなく、包装部材11を、エアロゾル吸引カートリッジ10と同程度に長く形成して、包装部材11の円筒の内部に支持部材15やフィルタ16を収納することで、エアロゾル吸引カートリッジ10を形成することが可能であり、これによりさらなる製造工程の簡略化と製造コストの低減を図ることが可能である。なお、この場合、支持部材15やフィルタ16を包装部材11に入れてから充填物12を充填し、誘導加熱部材13(23、33)を挿入してもよいし、充填物12(22、32)を充填後に支持部材15やフィルタ16を入れても良い。
【0101】
また、熱伝導部材14(24、34)はペースト状の様な不定形なものとして、充填物成形工程の混合工程で充填物12(22、32)と混合させてもよいし、エアロゾル形成基材の形成工程において、充填物12(22、32)と共に包装部材11(21、31)に包摂されてもよい。
【0102】
なお、充填物12(22、32)の原材料である茶葉は、実施の形態に挙げたもの以外に、一般に使用されている全ての茶葉を使用できる。また、これら茶葉については飲用後の茶殻を使用しても良い。茶殻などを使用すれば高価な茶葉などを再利用して有効活用できる。
【0103】
また、上記に例示した非タバコ植物の抽出物、所謂エキスや加工品も使用することができる。抽出物の形態としては、液体、水あめ状、粉末、顆粒、溶液等が挙げられる。
【0104】
また、充填物12(22、32)の原料としてのエアロゾルフォーマは、実施の形態に挙げたもの以外に、ソルビトール、トリエチレングリコール、乳酸、ジアセチン(グリセリンジアセタート)、トリアセチン(グリセリントリアセタート)、トリエチレングリコールジアセタート、クエン酸トリエチル、ミリスチン酸イソプロピル、ステアリン酸メチル、ドデカンジオン酸ジメチル、テトラデカンサンジオン酸ジメチルなども使用できる。
【0105】
また、風味添加剤として、メントールおよび非水溶性架橋ポリマー(好ましくはポリビニルポリピロリドン)を含有させても良い。メントールに非水溶性架橋ポリマーを組み合わせることで、メントールの昇華を効果的に抑制でき、メントールの風味を長期間保つことができる。ここで、メントールとは、天然物から得られたものに限られず、合成物でも良い。また、はっか、ミント、ハッカ油、その他のメントールを含むものを使用しても良い。
【0106】
また、風味添加剤は、例えば、フィルタ16の壁部に含浸させることによってフィルタ16に設けられている。風味添加剤がフィルタ16に設けられている態様は、このような態様に限られず、例えば、当該風味添加剤が封入されているカプセルをフィルタ16の壁部に埋設することによって、フィルタ16に風味添加剤が設けられているようにしても良い。または、フィルタ16とエアロゾル吸引カートリッジ10との間に風味添加剤が封入されたカプセルが配置されるようにしても良い。風味添加剤がカプセルに封入されている場合、使用者は、カプセルを指で押圧することにより、カプセルを破壊することができ、所望のタイミングで風味添加剤の芳香成分を揮発させることが可能となる。
【0107】
また、風味添加剤は、例えば、マイクロカプセルに封入されている場合、封入されているマイクロカプセルをエアロゾル吸引カートリッジ10に設けても良い。勿論、当該マイクロカプセルを支持部材15に設けても良い。
【0108】
また、充填物12(22、32)の原料としての結着剤または増粘剤としては、実施の形態に挙げたものの他、キサンタンガム、アラビアゴムおよびローカストビーンガムなどのゴム、例えばカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロースおよびエチルセルロースなどのセルロース結合剤、または、アルギン酸などの有機酸、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラナギン、寒天およびペクチンなどの多糖類、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【符号の説明】
【0109】
1、2、3 エアロゾル形成基材
10 エアロゾル吸引カートリッジ
11、21、31 包装部材
12、22、32 充填物
13、23、33 誘導加熱部材
14、24、34 熱伝導部材
15 支持部材
16 フィルタ
17 外装部材
18 シール部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7