(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047953
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】制御装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
F24F 11/63 20180101AFI20240401BHJP
【FI】
F24F11/63
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153738
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】峯岸 寛典
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260BA01
3L260CA01
3L260DA11
3L260FA01
3L260HA01
3L260HA06
(57)【要約】
【課題】空調制御の不必要な切り替えを抑制し、即時対応性を維持しつつも、快適性を低下させずに安定した空調制御を行うことができる制御装置および制御方法を提供する。
【解決手段】実施形態に係る制御装置は、判定部と、決定部と、算出部と、制御部とを有する。判定部は、所定エリアに存在する人の着衣量を周期的に判定する。決定部は、判定部によって判定される着衣量の変化に応じて、所定エリアのCLO値を変化させる変化量を決定し、着衣量の増減が反転した場合には、変化量を0にしてCLO値を決定する。算出部は、決定部によって決定されるCLO値に基づいて所定エリアのPMV(Predicted Mean Vote)を算出する。制御部は、算出部によって算出されるPMVに応じて空調機器を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定エリアに存在する人の着衣量を周期的に判定する判定部と、
前記判定部によって判定される前記着衣量の変化に応じて、前記所定エリアのCLO値を変化させる変化量を決定し、前記着衣量の増減が反転した場合には、前記変化量を0にして前記CLO値を決定する決定部と、
前記決定部によって決定される前記CLO値に基づいて前記所定エリアのPMV(Predicted Mean Vote)を算出する算出部と、
前記算出部によって算出される前記PMVに応じて空調機器を制御する制御部と
を有することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記判定部は、
前記所定エリアを撮像するイメージセンサから入力される画像データをAI(Artificial Intelligence)によって画像認識して前記着衣量を判定する
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記決定部は、
前記判定部による前回の判定と今回の判定とにおいて前記着衣量の増減が反転しておらず、且つ、今回の判定において前回の判定から前記着衣量が増加した場合に、前回決定した前記CLO値に所定値を加算した値を今回の前記CLO値として決定する
請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記決定部は、
前記判定部による前回の判定と今回の判定とにおいて前記着衣量の増減が反転しておらず、且つ、今回の判定において前回の判定から前記着衣量が減少した場合に、前回決定した前記CLO値から所定値を減算した値を今回の前記CLO値として決定する
請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記決定部は、
予め定められる上限から下限までの間で前記CLO値を決定する
請求項1に記載の制御装置。
【請求項6】
前記判定部は、
前記所定エリアに存在する人数を判定し、前記所定エリアに複数の人が存在する場合には、全員の着衣状態に基づいて、前記所定エリアにおける前記着衣量を判定する
請求項1に記載の制御装置。
【請求項7】
前記決定部は、
前記判定部によって前記所定エリアに存在する人が認識されなくなった場合には、前回決定した前記CLO値を今回の前記CLO値として決定する
請求項1に記載の制御装置。
【請求項8】
制御装置が実行する制御方法であって、
所定エリアに存在する人の着衣量を周期的に判定する判定工程と、
前記判定工程によって判定される前記着衣量の変化に応じて、前記所定エリアのCLO値を変化させる変化量を決定し、前記着衣量の増減が反転した場合には、前記変化量を0にして前記CLO値を決定する決定工程と、
前記決定工程によって決定される前記CLO値に基づいて前記所定エリアのPMV(Predicted Mean Vote)を算出する算出工程と、
前記算出工程によって算出される前記PMVに応じて空調機器を制御する制御工程と
を含む制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、制御装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車室内に設けられる赤外線センサによって乗員の温度を検出し、所定時間内における乗員の温度の変化量が閾値を超えた場合に、乗員の着衣量が変化したと判定し、着衣量の変化に応じて車両の空調機器を制御する空調制御装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、着衣量の変化に応じて空調機器を制御する空調制御は、人位置の移動がほとんどなく、座席数が決まっている車室内の温度調整には適しているが、利用する人数や人位置が変動するオフィスなどの大空間では、人の着衣状態を示す情報が頻繁に変化して制御状態が不安定になるため適さない。
【0005】
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、空調制御の不必要な切り替えを抑制し、即時対応性を維持しつつも、快適性を低下させずに安定した空調制御を行うことができる制御装置および制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の一態様に係る制御装置は、判定部と、決定部と、算出部と、制御部とを有する。判定部は、所定エリアに存在する人の着衣量を周期的に判定する。決定部は、前記判定部によって判定される前記着衣量の変化に応じて、前記所定エリアのCLO値を変化させる変化量を決定し、前記着衣量の増減が反転した場合には、前記変化量を0にして前記CLO値を決定する。算出部は、前記決定部によって決定される前記CLO値に基づいて前記所定エリアのPMV(Predicted Mean Vote)を算出する。制御部は、前記算出部によって算出される前記PMVに応じて空調機器を制御する。
【発明の効果】
【0007】
実施形態の一態様に係る制御装置および制御方法は、空調制御の不必要な切り替えを抑制し、即時対応性を維持しつつも、快適性を低下させずに安定した空調制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る制御システムの構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る制御装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、実施形態に係る制御装置の動作例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、制御装置および制御方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
[1.制御装置および制御方法が属する技術分野]
まず、実施形態に係る制御装置および制御方法が属する技術分野について説明する。一般的に、在室者の着衣状態は空調制御を決定する上で重要なパラメータとなる。例えば、着衣量はCLO(クロー)値としてPMV(Predicted Mean Vote)の構成要素の一つとして扱われており、人の温冷感を推定する上で欠かせない要素である。
【0011】
また、人は、暑ければ上着を脱ぎ、寒ければ上着を着ることから、着衣状態の変化は執務者の温冷感に対する意思表示とみなすこともできる。また、近年のオフィス空調において、デスク回りを個人の好み(PMV等で表現される)に合わせて室温等の環境を制御するタスクアンビエント空調も普及してきている。
【0012】
実施形態に係る制御装置は、上記した近年のオフィス空調制御を鑑みて、例えば、RGBカメラまたは赤外線カメラ等のイメージセンサによって取得されるRGB情報または赤外線情報から在室者の着衣状態を取得し、着衣量をCLO値として扱い、PMVによる空調制御を行う技術分野に属するものである。
【0013】
[2.従来技術の問題点]
次に、従来技術の問題点について説明する。例えば、自動車の車室内空調において、赤外線カメラを使用することで着衣状態の変化を検出し、着衣状態の変化に応じて空調を制御する技術がある。
【0014】
自動車のように限られた空間内で人を正面から計測でき、人位置の移動がほぼ発生せず、座席人数も決まっている状態では、人表面温度の一定時間内での変化が閾値を超えたら着衣状態が変化したと判断し、空調制御を切り替えるという方法は有効である。
【0015】
しかし、例えば、オフィスなどの大空間では、自動車内の空間とは異なり、計測器の設置にあたって物理的な制約が発生する。そのため、計測対象人物を正面から計測できるとは限らず、さらに障害物の影響で計測できないこともある。
【0016】
また、オフィスなどの大空間では、人物の移動が頻繁に発生するため、計測対象範囲内の人数が固定されない。このような空間的特徴から、人の着衣状態を表す情報が比較的頻繁に振動した値を取ることがある。そのため、着衣状態の変化情報をそのまま空調制御に用いると、制御状態が不安定になるという問題が発生する。
【0017】
一方、近年広く普及しているディープラーニングによる画像認識技術を用いることで、人物の着衣状態を推定することは可能である。しかし、画像認識技術を用いる場合、オフィスなどの大空間を対象とすると前述の空間的特徴により、着衣状態を表す情報が頻繁に変化することがある。
【0018】
さらに、画像認識精度が100%になることはないため、一定の割合で誤認識(検出漏れも含む)が発生する。このような状況で各認識結果から検出した着衣状態をそのままCLO値に変換し、PMV制御を実施しようとすると、制御が不安定になりやすい。そのため、着衣状態の変化に対して、できるだけ即時応答性を維持しつつも、不必要な制御の切り替えが発生しないように、画像認識結果を制御パラメータに変換する際には工夫が必要となる。
【0019】
[3.制御方法の概要]
次に、実施形態に係る制御方法の概要について説明する。実施形態に係る制御装置は、例えば、カメラによって撮像される画像から認識した人物の着衣状態の変化に応じてCLO値(制御パラメータ)を直接決定するのではなく、認識した着衣状態の変化に応じてCLO値の変化量(制御パラメータの変化量)を決定する。
【0020】
そして、制御装置は、CLO値の変化量が、プラスの状態(CLO値を増加させる状態)からマイナスの状態(CLO値を減少させる状態)に変わる際、必ず変化量として「0」を経由させることで、着衣状態の変化に対するCLO値の増減を緩やかにする。
【0021】
制御装置は、CLO値の変化量が、マイナスの状態(CLO値を減少させる状態)からプラスの状態(CLO値を増加させる状態)に変わる際にも、同様に、必ず変化量として「0」を経由することで、着衣状態の変化に対するCLO値の増減を緩やかにする。
【0022】
つまり、制御装置は、認識した着衣量の変化に応じて、所定エリアのCLO値を変化させる変化量を決定し、着衣量の増減が反転した場合には、CLO値の変化量を「0」にしてCLO値を決定する。そして、制御装置は、決定したCLO値に基づいて所定エリアのPMVを算出し、算出したPMVに応じて空調機器を制御する。
【0023】
これにより、制御装置は、所定エリアにいる人物の数、人物の位置、および人物の着衣量が頻繁に変化しても、空調制御の不必要な切り替えを抑制し、即時対応性を維持しつつも、快適性を低下させずに安定した空調制御を行うことができる。さらに、制御装置は、空調制御の不必要な切り替えを抑制することによって、省エネにも貢献できる。
【0024】
[4.制御システムの構成例]
次に、
図1を参照して、実施形態に係る制御システム100の構成例について説明する。
図1は、実施形態に係る制御システム100の構成例を示すブロック図である。
【0025】
図1に示すように、実施形態に係る制御システム100は、カメラ10と、空調機器20と、制御装置1とを含む。カメラ10は、例えば、オフィスなどの所定エリアに存在する人のRGB画像または赤外線画像を撮像するイメージセンサである。カメラ10は、撮像したRGB画像または赤外線画像の画像データを制御装置1に入力する。
【0026】
空調機器20は、例えば、オフィスなどの所定エリア内の温度を調整する冷暖房装置である。空調機器20は、制御装置1から入力される制御信号にしたがって、所定エリア内の温度を調整する。
【0027】
制御装置1は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを有するマイクロコンピュータや各種の回路を含む。制御装置1は、CPUがROMに記憶されたプログラムを、RAMを作業領域として使用して実行することにより機能する判定部11と、決定部12と、算出部13と、制御部14とを備える。
【0028】
なお、制御装置1が備える判定部11、決定部12、算出部13、および制御部14は、一部または全部がASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成されてもよい。
【0029】
さらに、制御装置1は、記憶部2を備える。記憶部2は、例えば、データフラッシュ等の情報記憶デバイスであり、CLO値21、CLO値変化量22と、着衣値23とを記憶する。
【0030】
CLO値21は、着衣値23の計測対象範囲(所定エリア)の空調制御パラメータとなる値であり、PMVに影響する値である。本実施形態では、制御装置1は、個別空調の各単位エリア(所定エリア)ごとに1つのCLO値21を持つものとする。
【0031】
ここでは、CLO値21の初期値を「0.8」とする。CLO値21の初期値は、空調制御の対象となるオフィスにおいて最も一般的な服装に対応するCLO値21に設定されることが望ましい。
【0032】
ここでは、CLO値21の上限値を「0.8」とする。CLO値21の上限値は、例えば、人が長袖、長ズボンを着用している状態を想定して設定される。また、ここでは、CLO値21の下限値を「0.5」とする。CLO値21の下限値は、例えば、人が半袖、長ズボンを着用している状態を想定して設定される。
【0033】
制御装置1は、例えば、一時的な退席や画像認識のミスで人不在の判定になった際、CLO値21を初期化すると制御状態が急激に変化してしまうため、所定エリアから人がいなくなってもCLO値21を前回値のまま保持する。そして、制御装置1は、再び人が検出されたら、保持しているCLO値21からCLO値21を変化させる制御を開始する。
【0034】
CLO値変化量22は、制御装置1によって増減されるCLO値21の変化量である。制御装置1は、着衣値23の計測対象範囲(所定エリア)ごとにCLO値21に対し、1つのCLO値変化量22を持つ。ここでは、CLO値変化量22の初期値を「0」とする。CLO値変化量22の上限を「0.1」とする。CLO値変化量22の下限は「-0.1」とする。
【0035】
制御装置1は、着衣値23の計測周期ごとにCLO値変化量22分、所定エリアのCLO値21を変化させる。制御装置1は、所定エリアから人がいなくなるとCLO値変化量22を初期値である「0」にリセットする。
【0036】
着衣値23は、計測周期(撮像画像の各フレーム)ごとに、撮像画像からAI(Artificial Intelligence)によって認識される人の着衣状態に対応する数値である。本実施形態では、着衣値23の計測周期を「30秒」とする。なお、計測周期は、「30秒」に限定されるものではなく、1分間に数回計測できれば、「30秒」以外の周期であってもよい。制御装置1は、着衣値23の計測対象範囲(所定エリア)ごとのCLO値変化量22に対し、1つの着衣値23を持つ。
【0037】
判定部11は、所定エリアに存在する人の着衣量を周期的に判定する。例えば、判定部11は、所定エリアに人が存在する場合、カメラ10から順次入力される画像データを計測周期ごとにAI(画像認識モデル)によって画像認識し、着衣状態に応じた着衣量となる着衣値23を得る。ここで使用する画像認識モデルは、人物の着衣状態を長袖と半袖の2種類に分類するものとする。
【0038】
判定部11は、長袖の着衣値23を「0.1」とし、半袖の着衣値23を「-0.1」とする。また、判定部11は、画像認識モデルの出力値が一定値に満たなかった場合は、中間(長袖か半袖か不明)と判断し、この時の着衣値23を「0」とする。判定部11は、エリア内に複数の人物が存在する場合、全員の着衣値23の合計を所定エリアの着衣値23とする。
【0039】
決定部12は、判定部11によって判定される着衣値23の変化に応じて、所定エリアのCLO値21を変化させるCLO値変化量22を決定し、着衣値23の増減が反転した場合には、CLO値変化量22を0にしてCLO値21を決定する。
【0040】
例えば、決定部12は、所定エリアの着衣値23が「0」より大きい場合、CLO値変化量22に「0.1」を加算する。決定部12は、所定エリアの着衣値23が「0」より小さい場合、CLO値変化量22から「0.1」を減算する。決定部12は、所定エリアの着衣値23が「0」の場合、CLO値変化量22を「0」にする。
【0041】
算出部13は、決定部12によって決定されるCLO値21に基づいて所定エリアのPMVを算出する。制御部14は、算出部13によって算出されるPMVに応じて空調機器20を制御する。例えば、制御部14は、PMVが「-0.5」から「+0.5」までの範囲内になるように空調機器20を制御する。
【0042】
制御装置1の具体的な動作例については、
図3を参照して後述する。なお、制御装置1の内部構成は、
図1に示した構成に限られず、後述する情報処理を行う構成であれば他の構成であってもよい。
【0043】
[5.制御装置が実行する処理]
次に、
図2を参照して、実施形態に係る制御装置1が実行する処理について説明する。
図2は、実施形態に係る制御装置1が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【0044】
図2に示すように、制御装置1は、計測を開始すると、まず、CLO値21を初期値の「0」に設定し、CLO値変化量22を初期値の「0」に設定する(ステップS101)。続いて、制御装置1は、カメラ10から入力される画像データを画像認識することによって、エリア内人検出を行う(ステップS102)。
【0045】
そして、制御装置1は、人有無判定を行い(ステップS103)、人無と判定した場合、CLO値21を保持し、CLO値変化量22を「0」に保持して(ステップS105)、処理をステップS102へ移す。また、制御装置1は、人有と判定した場合、エリア着衣値を0に設定する(ステップS104)。
【0046】
続いて、制御装置1は、ステップS103において人有と判定した人の着衣状態判定を行う(ステップS106)。制御装置1は、着衣状態を半袖と判定した場合、着衣値23を「-0.1」とする(ステップS107)。制御装置1は、着衣状態を中間または不明と判定した場合、着衣値23を「0」とする(ステップS108)。制御装置1は、着衣状態を長袖と判定した場合、着衣値23を「0.1」とする(ステップS109)。
【0047】
そして、制御装置1は、所定エリアで検出した人数分ステップS106~S109の処理をループして繰り返し、検出人数分の着衣値23を加算することによってエリア着衣値を取得する(ステップS110)。
【0048】
その後、制御装置1は、エリア着衣値判定を行う(ステップS111)。制御装置1は、エリア着衣値を0より小さいと判定した場合、CLO値変化量22を「-0.1」に決定する(ステップS112)。このとき、制御装置1は、CLO値変化量22を「-0.05」に決定してもよい。
【0049】
制御装置1は、エリア着衣値を0と判定した場合、CLO値変化量22を0に決定する(ステップS113)。制御装置1は、エリア着衣値を「0」より大きいと判定した場合、CLO値変化量22を「+1.0」と決定する(ステップS114)。このとき、制御装置1は、CLO値変化量22を「+0.05」に決定してもよい。
【0050】
そして、制御装置1は、CLO値21にステップS112~S114において決定したCLO値変化量22を加算して、CLO値21を決定する(ステップS115)。このとき、制御装置1は、上限「0.8」、下限「0.5」としてCLO値21を決定する。そして、制御装置1は、決定したCLO値21に基づいてPMV演算を行う(ステップS116)。
【0051】
続いて、制御装置1は、算出したPMVに応じた制御信号を空調機器20へ出力して空調制御を行う(ステップS117)。また、制御装置1は、ステップS115の処理を実行した後、30秒が経過すると、処理をステップS102へ移す。
【0052】
[6.制御装置の動作例]
次に、
図3を参照して、実施形態に係る制御装置1の動作例について説明する。
図3は、実施形態に係る制御装置1の動作例の説明図である。
【0053】
図3に示す検出着衣状態の列には、計測周期ごとに所定エリア内で検出された人の有無、人数、および服装が時系列に示されている。例えば、「不在」は、所定エリア内に人がいないことを示している。「長」は、所定エリア内に長袖の服装をした人が1人いることを示している。
【0054】
「半長」は、所定エリア内に2人の人がおり、一人の服装が半袖であり、もう1人の服装が長袖であることを示している。「半長長」は、所定エリア内に3人の人がおり、一人の服装が半袖であり、もう1人の服装が長袖であり、残る1人の人の服装が長袖であることを示している。また、検出着衣状態の列には、合わせて着衣値23が計測された時刻t1~t28が時系列に示されている。
【0055】
着衣値23の列には、計測周期ごとに所定エリアで検出された全員の着衣値23の合計値が時系列に示されている。CLO値変化量22の列には、計測周期ごとにCLO値21を変化させる値の量が時系列に示されている。CLO値21の列には、計測周期ごとに所定エリアに対応するCLO値21が時系列に示されている。
【0056】
判定部11は、カメラ10から入力される画像からAIによって所定エリアにいる人の数および各人の着衣を画像認識し、認識結果に基づいて着衣値23を判定する。決定部12は、判定部11によって決定される着衣値23に基づいて、そのときのCLO値変化量22を決定し、決定したCLO値変化量22の分だけ、CLO値21を変化させて所定エリアのCLO値21を決定する。なお、このとき決定されるCLO値21は、前述したように、上限として「0.8」、下限として「0.5」が予め定められている。
【0057】
図3に示すように、制御装置1は、計測を開始すると、まず、CLO値変化量22を初期値の「0」に設定し、計測対象範囲となる所定エリアのCLO値21を初期値の「0.8」に設定する。
【0058】
その後、判定部11は、時刻t1において所定エリアに人が不在の場合、着衣値23を「null」とする。決定部12は、CLO値変化量22を「0」とし、これにより、CLO値21を「0.8」と決定する。
【0059】
時刻t2において、判定部11は、所定エリアに長袖の人が1人いる場合、着衣値23を「0.1」と決定する。決定部12は、着衣値23が「0」より大きいため、CLO値変化量22を「0.1」とするが、CLO値21が上限「0.8」に達しているため、CLO値21を「0.8」に保持する。
【0060】
時刻t3において、判定部11は、所定エリアに長袖の人が1人いる場合、着衣値23を「0.1」と決定する。決定部12は、着衣値23が「0」より大きいため、CLO値変化量22を「0.1」とするが、CLO値21が上限「0.8」に達しているため、CLO値21を「0.8」に保持する。このように、制御装置1は、CLO値21に上限を設けることによって、過度な空調制御を抑制できる。
【0061】
時刻t4において、判定部11は、所定エリアに半袖の人が1人いる場合、着衣値23を「-0.1」と決定する。決定部12は、着衣値23が「0」より小さいが、前回の計測から着衣値23の増減が反転しているため、CLO値変化量22を「-0.1」とはせずに一旦「0」とし、CLO値21を「0.8」に保持する。
【0062】
このように、制御装置1は、例えば、所定エリアにいる1人が長袖の服を脱ぎ、半袖になっても、一度はCLO値変化量22を「0」とすることにより、すぐにはCLO値21を変化させない。これにより、制御装置1は、空調制御の頻繁な切り替えを抑制して、快適性を低下させずに安定した空調制御を行うことができる。
【0063】
時刻t5において、判定部11は、所定エリアに半袖の人が1人いる場合、着衣値23を「-0.1」と決定する。決定部12は、着衣値23が「0」より小さく、前回の計測から着衣値23の増減が反転していないため、CLO値変化量22を「-0.1」とし、CLO値21を「0.8」から「0.1」を減算して「0.7」と決定する。
【0064】
時刻t6において、判定部11は、所定エリアに長袖か半袖か不明の人(中)がいる場合、着衣値23を「0」と決定する。決定部12は、着衣値23が「0」であるため、CLO値変化量22を「0」とし、CLO値21を「0.7」に保持する。
【0065】
時刻t7において、判定部11は、所定エリアに半袖の人が1人いる場合、着衣値23を「-0.1」と決定する。決定部12は、着衣値23が「0」より小さく、前回の計測から着衣値23の増減が反転していないため、CLO値変化量22を「-0.1」とし、CLO値21を「0.7」から「0.1」を減算して「0.6」と決定する。このように、制御装置1は、着衣値23の増減が反転はしていないが、「0」以下の着衣値23が連続する場合には、CLO値21を減少させるので、空調の即時対応性を維持することができる。
【0066】
時刻t8において、判定部11は、所定エリアに半袖の人が1人いる場合、着衣値23を「-0.1」と決定する。決定部12は、着衣値23が「0」より小さく、前回の計測から着衣値23の増減が反転していないため、CLO値変化量22を「-0.1」とし、CLO値21を「0.6」から「0.1」を減算して「0.5」と決定する。このように、制御装置1は、「0」より小さい着衣値23が連続する場合には、CLO値21を減少させるので、空調の即時対応性を維持することができる。
【0067】
時刻t9において、判定部11は、所定エリアに半袖の人が1人いる場合、着衣値23を「-0.1」と決定する。決定部12は、着衣値23が「0」より小さく、前回の計測から着衣値23の増減が反転していないが、CLO値21が下限「0.5」に達しているため、CLO値21を「0.5」に保持する。このように、制御装置1は、CLO値21に下限を設けることによって、過度な空調制御を抑制できる。
【0068】
時刻t10において、判定部11は、所定エリアに着衣値23が「-0.1」の半袖の人が1人、着衣値23が「0.1」の長袖の人が1人いる場合、2人の着衣値23の合計である「0」を着衣値23として判定する。決定部12は、着衣値23が「0」であるため、CLO値変化量22を「0」とし、CLO値21を「0.5」に保持する。
【0069】
時刻t11において、検出着衣状態がt10と同一であるため、着衣値23を「0」と判定する。決定部12は、着衣値23が「0」であるため、CLO値変化量22を「0」とし、CLO値21を「0.5」に保持する。
【0070】
時刻t12において、判定部11は、所定エリアに着衣値23が「-0.1」の半袖の人が1人、着衣値23が「0.1」の長袖の人が2人いる場合、3人の着衣値23の合計である「0.1」を着衣値23として判定する。決定部12は、着衣値23が「0」より大きく、前回の計測から着衣値23の増減が反転していないため、CLO値変化量22を「0.1」とし、CLO値21を「0.5」に「0.1」を加算して「0.6」と決定する。このように、制御装置1は、「0」以上の着衣値23が連続する場合には、CLO値21を増加させるので、空調の即時対応性を維持することができる。
【0071】
時刻t13において、検出着衣状態がt12と同一であるため、着衣値23を「0.1」と判定する。決定部12は、着衣値23が「0」より大きく、前回の計測から着衣値23の増減が反転していないため、CLO値変化量22を「0.1」とし、CLO値21を「0.6」に「0.1」を加算して「0.7」と決定する。このように、制御装置1は、「0」より大きい着衣値23が連続する場合には、CLO値21を増加させるので、空調の即時対応性を維持することができる。
【0072】
時刻t14において、判定部11は、検出着衣状態がt13と同一であるため、着衣値23を「0.1」と判定する。決定部12は、着衣値23が「0」より大きく、前回の計測から着衣値23の増減が反転していないため、CLO値変化量22を「0.1」とし、CLO値21を「0.7」に「0.1」を加算して「0.8」と決定する。このように、制御装置1は、「0」より大きい着衣値23が連続する場合には、CLO値21を増加させるので、空調の即時対応性を維持することができる。
【0073】
時刻t15において、判定部11は、検出着衣状態がt13と同一であるため、着衣値23を「0.1」と判定する。決定部12は、着衣値23が「0」より大きく、前回の計測から着衣値23の増減が反転していないため、CLO値変化量22を「0.1」とするが、CLO値21が上限「0.8」に達しているため、CLO値21を「0.8」に保持する。
【0074】
時刻t16において、判定部11は、所定エリアに着衣値23が「-0.1」の半袖の人が2人、着衣値23が「0.1」の長袖の人が1人いる場合、3人の着衣値23の合計である「-0.1」を着衣値23として判定する。決定部12は、着衣値23が「0」より小さく、前回の計測から着衣値23の増減が反転しているため、CLO値変化量22を「0」とし、CLO値21を「0.8」に保持する。
【0075】
時刻t17において、判定部11は、所定エリアに着衣値23が「-0.1」の半袖の人が1人、長袖か半袖か不明の人(中)が1人、着衣値23が「0.1」の長袖の人が1人いる場合、3人の着衣値23の合計である「0」を着衣値23として判定する。決定部12は、着衣値23が「0」であるため、CLO値変化量22を「0」とし、CLO値21を「0.8」に保持する。
【0076】
時刻t18において、判定部11は、所定エリアに着衣値23が「-0.1」の半袖の人が2人、着衣値23が「0.1」の長袖の人が1人いる場合、3人の着衣値23の合計である「-0.1」を着衣値23として判定する。決定部12は、着衣値23が「0」より小さく、前回の計測から着衣値23の増減が反転していないため、CLO値変化量22を「-0.1」とし、CLO値21を「0.8」から「0.1」を減算して「0.7」と決定する。
【0077】
時刻t19において、判定部11は、所定エリアに着衣値23が「-0.1」の半袖の人が3人いる場合、3人の着衣値23の合計である「-0.3」を着衣値23として判定する。決定部12は、着衣値23が「0」より小さく、前回の計測から着衣値23の増減が反転していないため、CLO値変化量22を「-0.1」とし、CLO値21を「0.7」から「0.1」を減算して「0.6」と決定する。
【0078】
時刻t20において、判定部11は、所定エリアに着衣値23が「-0.1」の半袖の人が2人、長袖か半袖か不明の人(中)が1人いる場合、3人の着衣値23の合計である「-0.2」を着衣値23として判定する。決定部12は、着衣値23が「0」より小さく、前回の計測から着衣値23の増減が反転していないため、CLO値変化量22を「-0.1」とし、CLO値21を「0.6」から「0.1」を減算して「0.5」と決定する。
【0079】
時刻t21において、判定部11は、所定エリアに着衣値23が「0.1」の長袖の人が3人いる場合、3人の着衣値23の合計である「0.3」を着衣値23として判定する。決定部12は、着衣値23が「0」より大きいが、前回の計測から着衣値23の増減が反転しているため、CLO値変化量22を「0」とし、CLO値21を「0.5」に保持する。
【0080】
時刻t22において、判定部11は、検出着衣状態がt21と同一であるため、着衣値23を「0.3」と判定する。決定部12は、着衣値23が「0」より大きく、前回の計測から着衣値23の増減が反転していないため、CLO値変化量22を「0.1」とし、CLO値21を「0.5」に「0.1」を加算して「0.6」と決定する。
【0081】
時刻t23において、判定部11は、検出着衣状態がt22と同一であるため、着衣値23を「0.3」と判定する。決定部12は、着衣値23が「0」より大きく、前回の計測から着衣値23の増減が反転していないため、CLO値変化量22を「0.1」とし、CLO値21を「0.6」に「0.1」を加算して「0.7」と決定する。
【0082】
時刻t24~t26において、所定エリアから退出して人が不在になった場合、着衣値23を「null」とする。そして、決定部12は、CLO値変化量22を「0」とし、これにより、CLO値21を「0.7」保持する。
【0083】
時刻t27において、判定部11は、所定エリアに半袖の人が1人いる場合、着衣値23を「-0.1」と決定する。決定部12は、着衣値23が「0」より小さく、前回の計測から着衣値23の増減が反転していないため、CLO値変化量22を「-0.1」とし、CLO値21を「0.7」から「0.1」を減算して「0.6」と決定する。
【0084】
時刻t28において、判定部11は、所定エリアに半袖の人が1人いる場合、着衣値23を「-0.1」と決定する。決定部12は、着衣値23が「0」より小さく、前回の計測から着衣値23の増減が反転していないため、CLO値変化量22を「-0.1」とし、CLO値21を「0.6」から「0.1」を減算して「0.5」と決定する。
【0085】
算出部13は、時刻t1~t28の各時刻においてCLO値21決定されるごとに、CLO値21に基づいて、所定エリアのPMVを算出する。そして、制御部14は、算出部13によってPMVが算出されるごとに、PMVに応じて空調機器20を制御する。
【0086】
上述したように、実施形態に係る制御装置1は、所定エリアにおける人の着衣値23の状態を認識し、連続して同じ状態の変化を検出しない限り、または、中間状態を経由しない限りは、空調制御に影響を与えるパラメータ(例えば、CLO値21)を変更しない。
【0087】
そして、制御装置1は、所定エリアからの一時的な退席や画像認識漏れが発生することを想定して、計測対象エリアの制御パラメータを所定エリアから人がいなくなっても保持し、所定エリアに人が復帰したら保持したパラメータで制御を開始する。
【0088】
制御装置1によれば、例えば、オフィスなどの大空間のように、計測対象人物を正面から計測できるとは限らない状況や、さらに障害物の影響で計測できない、もしくは、部分的な計測になる状況において、計測対象が安定した状態にない場合であっても計測結果が空調制御に影響を与えにくくなる。
【0089】
また、制御装置1は、一つのタスク空調エリアには複数人が存在することを前提としており、全員の着衣状態の合計から対象エリアの空調制御を決定する。制御装置1によれば、例えば、オフィスなどの大空間のように、物の移動が頻繁に発生する状況、計測対象範囲内の人数が固定されない状況において、計測範囲内に複数人が集まることがあっても、全員の着衣状態を考慮した上で、適切な空調制御を実施できる。
【0090】
また、制御装置1は、基本的にタスク空調は各個人の好みや状態に合わせた空調が提供できることを特徴としているため、例外的な状況で不安定な制御になることを防ぐ効果が期待できる。
【0091】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0092】
1 制御装置
10 カメラ
11 判定部
12 決定部
13 算出部
14 制御部
2 記憶部
20 空調機器
21 CLO値
22 CLO値変化量
23 着衣値
100 制御システム