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  • 特開-歯車加工装置 図1
  • 特開-歯車加工装置 図2
  • 特開-歯車加工装置 図3
  • 特開-歯車加工装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047963
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】歯車加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23F 23/06 20060101AFI20240401BHJP
【FI】
B23F23/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153754
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】余湖 健志
【テーマコード(参考)】
3C025
【Fターム(参考)】
3C025HH05
(57)【要約】
【課題】ワークの抜け端面のバリの発生を抑制しつつ、ワークを支持する部材の摩耗を防止し、高い耐久性を確保した歯車加工装置を提供する。
【解決手段】本発明にかかる歯車加工装置100は、工具を移動させることによりワーク102を切削して歯車を加工する歯車加工装置において、ワークにおいて切削工具104の移動方向における切削工具が加工終わりに抜ける側の端面を抜け端面124と称するとき、ワークを保持するチャック106と、ワークの抜け端面のうち切削工具の非切削位置に当接して、抜け端面を支持する受け治具108と、ワークの抜け端面のうち切削工具の切削位置に当接して、抜け端面を支持するとともに切削工具によりワークとともに共削りされる共削り金110とを備え、受け治具と共削り金のワークの抜け端面に対向する第1支持面122と第2支持面128は、共通平面となっていることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具を移動させることによりワークを切削して歯車を加工する歯車加工装置において、
前記ワークにおいて前記工具の移動方向における前記工具が加工終わりに抜ける側の端面を抜け端面と称するとき、
前記ワークを保持するチャックと、
前記ワークの前記抜け端面のうち前記工具の非切削位置に当接して、前記抜け端面を支持する受け治具と、
前記ワークの前記抜け端面のうち前記工具の切削位置に当接して、前記抜け端面を支持するとともに前記工具により前記ワークとともに共削りされる共削り金とを備え、
前記受け治具と前記共削り金の前記ワークの抜け端面に対向する面は、共通平面となっていることを特徴とする歯車加工装置。
【請求項2】
前記ワークの加工面と前記共削り金の共削り面が同一平面にあることを特徴とする請求項1に記載の歯車加工装置。
【請求項3】
前記受け治具は、前記チャックに交換可能に固定されていて、
前記共削り金は、前記受け治具に交換可能に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の歯車加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具を移動させることによりワークを切削して歯車を加工する歯車加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
歯車を切削加工する加工法として、加工対象物であるワークに対して切削工具をワークに相対的に移動させて、ワークを切削して歯車を加工する方法(例えばスカイビング加工やシェーパ加工)が知られている。このような加工法では、ワークのうち歯溝方向(切削工具の移動方向)における加工終わりに切削工具が抜ける側の端面(抜け端面)にバリが発生する。
【0003】
特許文献1には、被加工物と工具とを回転させながら、工具に対して、被加工物の軸方向への送りを与えることにより、被加工物を工具によって歯切りする歯車加工方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6797648号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の歯車加工方法は、上下一対の上治具および下治具によって被加工物を軸方向両側から同軸状に挟み込んで固定し、被加工物における送り方向下流側端面(すなわちワークの抜け端面)を下治具に面接触させている。また下治具は、被加工物の内径と同サイズとなっている。そして歯車加工方法では、被加工物と下治具とを共に工具によって歯切りする(共削りする)ことにより、被加工物の送り方向下流側端面におけるバリの発生を抑制している。
【0006】
また、特許文献1には、ワークを交換しても、下治具はそのままの固定状態(回転位相)を維持しつつ使用され続けると記載されている。しかし特許文献1ではワークを支持する部材が下治具のみである。下治具はワークと同様に切削可能な程度の硬度である。そのためワークを交換して作業しているうちに摩耗してしまい、バリを許容する隙間が生じてしまったり、ワークの位置決め精度が低下したりするおそれがある。仮に受け治具の硬度を上げて摩耗を防止しようとすると、工具の摩耗が早くなったり損傷してしまったりするおそれがある。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑み、ワークの抜け端面のバリの発生を抑制しつつ、ワークを支持する部材の摩耗を防止し、高い耐久性を確保した歯車加工装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明にかかる歯車加工装置の代表的な構成は、工具を移動させることによりワークを切削して歯車を加工する歯車加工装置において、ワークにおいて工具の移動方向における工具が加工終わりに抜ける側の端面を抜け端面と称するとき、ワークを保持するチャックと、ワークの抜け端面のうち工具の非切削位置に当接して、抜け端面を支持する受け治具と、ワークの抜け端面のうち工具の切削位置に当接して、抜け端面を支持するとともに工具によりワークとともに共削りされる共削り金とを備え、受け治具と共削り金のワークの抜け端面に対向する面は、共通平面となっていることを特徴とする。
【0009】
上記のワークの加工面と共削り金の共削り面が同一平面にあるとよい。
【0010】
上記の受け治具は、チャックに交換可能に固定されていて、共削り金は、受け治具に交換可能に固定されているとよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ワークの抜け端面のバリの発生を抑制しつつ、ワークを支持する部材の摩耗を防止し、高い耐久性を確保した歯車加工装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態における歯車加工装置の主要部を、ワークとともに説明する断面図である。
図2図1のワークを切削工具により切削して歯車を加工する様子を示す断面図である。
図3図2に後続してワークを切削し歯車の加工を完了した状態を示す断面図である。
図4図3の歯車の加工が完了したワークを取り外した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態における歯車加工装置100の主要部を、ワーク102とともに説明する断面図である。図中では、加工対象物であるワーク102を歯車加工装置100に取り付ける様子を示している。図2は、図1のワーク102を切削工具104により切削して歯車を加工する様子を示す断面図である。
【0015】
歯車加工装置100は、図2に示すようにワーク102を保持した状態で、ワーク102に対してスカイビングカッタなどの切削工具104をワーク102に対して歯溝を形成する方向(以下、歯溝方向と称す)に相対的に移動させて、本実施の形態においてはワーク102の内周面105に歯溝131を切削して歯車を加工する。
【0016】
歯車加工装置100は、図1に示すようにワーク102を保持するチャック106と、受け治具108と、共削り金110とを備える。チャック106は、土台112と、土台112に取り付けられた2つ以上の爪部114、114とを有する。爪部114、114は、土台112の端面118に対してスライド可能であり、互いに接近したり(図1の矢印A、B参照)、あるいは離間したりすることができる(図4の矢印C、D参照)。
【0017】
受け治具108は、熱処理を施すなどした高硬度の材料を用いることができる部材であって、図1に示すようにチャック106の土台112にボルト120によって交換可能に固定されている。受け治具108のワーク102と対向する側の面を第1支持面122と称する。ここで、ワーク102において切削工具104が加工終わりに抜ける側の端面を「抜け端面124」と称する。
【0018】
受け治具108の第1支持面122は、ワーク102の抜け端面124に当接する面であり、図2に示すように抜け端面124のうち切削工具104で切削されない位置(範囲)すなわち切削工具104の非切削位置に当接して、抜け端面124を支持する。
【0019】
共削り金110は、切削工具104によりワーク102とともに共削りされる部材であり、切削工具104を損傷させないようにワーク102と同程度の硬度あるいは調質材とされる。また共削り金110は、受け治具108にボルト126によって交換可能に固定されている。
【0020】
共削り金110のワーク102と対向する側の面を第2支持面128と称する。第2支持面128は、ワーク102の抜け端面124に当接する面である。第2支持面128は、図2に示すように抜け端面124のうち切削工具104で切削される位置(歯溝131およびその周辺を含む範囲)すなわち切削工具104の切削位置に当接して、抜け端面124を支持するとともに、切削工具104によりワーク102とともに共削りされる。さらに、受け治具108の第1支持面122と共削り金110の第2支持面128とは共通平面になっている。さらに図2に示すように、ワーク102の加工面となる内周面105と、共削り金110の共削り面111とが同一平面になっている。なお共削り面111は、共削り金110の内周面となっている。
【0021】
歯車加工装置100では、共通平面になっている受け治具108の第1支持面122と共削り金110の第2支持面128に向かって、ワーク102を図1の矢印E、Fに示すように接近させ、さらに図2に示すようにワーク102の抜け端面124を第1支持面122および第2支持面128に当接させる。これにより、ワーク102の抜け端面124が受け治具108と共削り金110によって支持される。
【0022】
そして、チャック106の爪部114、114を図1の矢印A、Bに示すように互いに接近させて、図2に示すようにワーク102の外周面130を保持させる。このようにして、歯車加工装置100にワーク102を取り付けることができる。
【0023】
図3は、図2に後続してワーク102を切削し歯車の加工を完了した状態を示す断面図である。歯車加工装置100は、図2に示すように切削工具104によってワーク102の内周面105を切削し、さらに図3に示すようにワーク102の歯溝131とともに共削り金110の一部に切り込み132を切削することにより、歯車の加工を完了する。
【0024】
さらに歯車加工装置100では、上述したように、ワーク102の抜け端面124に対向する面である受け治具108の第1支持面122と共削り金110の第2支持面128が共通平面になっていて、図2および図3に示すようにワーク102の抜け端面124が第1支持面122と第2支持面128の両方に接触している。
【0025】
このため歯車加工装置100では、ワーク102を切削して歯車を加工するとき、ワーク102の抜け端面124と、これに対向する受け治具108および共削り金110との間に隙間が生じないため、ワーク102の抜け端面124にバリが発生することを抑制することができる。
【0026】
ここで、歯車加工装置100では、図2および図3に示すようにワーク102を支持する部材が受け治具108と共削り金110になる。共削り金110は切削工具104を損傷させないようにワーク102と同程度の硬度あるいは調質材とされるが、受け治具108は熱処理を施すなどした高硬度の材料を用いることができる。これにより、歯車加工装置100では、ワーク102を切削して歯車を加工するときに切削工具104から受ける荷重を、受け治具108で受けることができるため、共削り金110の摩耗を低減することができる。
【0027】
したがって歯車加工装置100によれば、ワーク102の抜け端面124のバリの発生を抑制しつつ、ワーク102を支持する部材の摩耗を防止し切削工具104の損傷を防止し、高い耐久性を確保することができる。
【0028】
また歯車加工装置100では、図2に示すように、ワーク102の加工面となる内周面105と、共削り金110の共削り面111とが同一平面になっている。このため、共削り金110では、第2支持面128が、ワーク102の抜け端面124のうち切削工具104で切削される切削位置に確実に当接して、抜け端面124を支持し、さらに第2支持面128と共削り面111が、切削工具104によりワーク102とともに確実に共削りされる。
【0029】
図4は、図3の歯車の加工が完了したワーク102を取り外した状態を示す断面図である。歯車加工装置100では、チャック106の爪部114、114を矢印C、Dに示すように互いに離間させることで、歯車の加工が完了したワーク102を取り外すことができる。
【0030】
また、新たなワークを切削して歯車を加工する場合(二回目以降の加工の場合)、ワーク102を交換しても切削工具104を交換しなければ、既に切り込み132が切削された共削り金110の位相と切削工具104の位相が一致している。
【0031】
そのため、二回目以降の加工で歯溝131を切削するとき、切削工具104の刃は既に形成された切り込み132を通るため、共削り金110は切削されない。しかし共削り金110の切削されていない部分が、新たなワークの歯形の裏当てとなる。このため歯車加工装置100では、二回目以降の加工においても、ワーク102の抜け端面124にバリが発生することを継続して抑制することができる。
【0032】
また歯車加工装置100では、受け治具108がチャック106に交換可能に固定されていて、共削り金110が受け治具108に交換可能に固定されている。このため歯車加工装置100では、さらに多数のワーク102を切削して歯車を加工して受け治具108や共削り金110が摩耗した場合であっても、これらを個別に交換することができる。
【0033】
なお上記歯車加工装置100は、ワーク102の内周面105に歯溝131を切削して歯車を加工するようにしたが、これに限定されず、ワーク102の外周面に歯溝を切削して外歯を加工するように適用してもよい。
【0034】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、工具を移動させることによりワークを切削して歯車を加工する歯車加工装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0036】
100…歯車加工装置、102…ワーク、104…切削工具、105…ワークの内周面、106…チャック、108…受け治具、110…共削り金、111…共削り面、112…土台、114…爪部、118…土台の端面、120、126…ボルト、122…受け治具の第1支持面、124…ワークの抜け端面、128…共削り金の第2支持面、130…ワークの外周面、131…歯溝、132…共削り金の切り込み
図1
図2
図3
図4