(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047964
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】試料保持具
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20240401BHJP
H02N 13/00 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H02N13/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153755
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平山 喜基
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131BA19
5F131CA02
5F131CA07
5F131CA09
5F131CA15
5F131CA68
5F131DA33
5F131DA42
5F131EA03
5F131EB11
5F131EB12
5F131EB26
5F131EB54
5F131EB78
5F131EB79
5F131EB81
5F131EB82
(57)【要約】
【課題】試料保持面の変形を低減しつつ高温環境下での使用に耐え得る試料保持具を提供する。
【解決手段】実施形態の一態様による試料保持具は、セラミック体と、耐熱部材と、接合材と、冷却部材とを備える。セラミック体、耐熱部材、接合材および冷却部材は、セラミック体から耐熱部材、接合材および冷却部材の順に位置する。セラミック体は、試料保持面である第1面と第1面と反対に位置する第2面とを有し、且つ、内部に第1電極および第2電極を有する。第1面、第1電極、第2電極および第2面は、第1面から第1電極、第2電極および第2面の順に位置する。耐熱部材は、セラミック体よりも熱伝導率が小さい。耐熱部材と冷却部材とは、接合材によって固定される。耐熱部材は、第2電極によりセラミック体に吸着される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック体と、
耐熱部材と、
接合材と、
冷却部材と、を備え、
前記セラミック体、前記耐熱部材、前記接合材および前記冷却部材は、前記セラミック体から前記耐熱部材、前記接合材および前記冷却部材の順に位置し、
前記セラミック体は、試料保持面である第1面と該第1面と反対に位置する第2面とを有し、且つ、内部に第1電極および第2電極を有し、
前記第1面、前記第1電極、前記第2電極および前記第2面は、前記第1面から前記第1電極、前記第2電極および前記第2面の順に位置し、
前記耐熱部材は、前記セラミック体よりも熱伝導率が小さく、
前記耐熱部材と前記冷却部材とは、前記接合材によって固定され、
前記耐熱部材は、前記第2電極により前記セラミック体に吸着される、試料保持具。
【請求項2】
前記耐熱部材は、絶縁体である、請求項1に記載の試料保持具。
【請求項3】
前記耐熱部材は、少なくとも前記第2面と対向する面に導電性膜を有する、請求項2に記載の試料保持具。
【請求項4】
前記耐熱部材は、少なくとも前記第2面と対向する面に、前記耐熱部材よりも硬度が高い高硬度膜を有する、請求項2に記載の試料保持具。
【請求項5】
前記耐熱部材は、少なくとも前記第2面と対向する面に、前記耐熱部材よりも摩擦係数が小さい低摩擦膜を有する、請求項2に記載の試料保持具。
【請求項6】
前記耐熱部材は、前記第2面と対向する面に、前記第2面と接触する複数の凸部を有する、請求項1~5のいずれか一つに記載の試料保持具。
【請求項7】
前記セラミック体は、前記第2面に、前記耐熱部材と接触する複数の凸部を有する、請求項1~5のいずれか一つに記載の試料保持具。
【請求項8】
前記セラミック体は、内部に第3電極と内部流路とを有し、
前記第1面、前記第1電極、前記第2電極、前記第2面、前記第3電極および前記内部流路は、前記第1面から前記第1電極、前記第3電極、前記内部流路、前記第2電極および前記第2面の順に位置する、請求項1~5のいずれか一つに記載の試料保持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、試料保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマ処理される半導体ウエハなどの試料を保持する試料保持具がある。かかる試料保持具は、試料保持面を有するセラミック体と金属製の冷却部材とを樹脂製接着剤により接合して構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態の一態様は、試料保持面の変形を低減しつつ高温環境下での使用に耐え得る試料保持具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の一態様による試料保持具は、セラミック体と、耐熱部材と、接合材と、冷却部材とを備える。セラミック体、耐熱部材、接合材および冷却部材は、セラミック体から耐熱部材、接合材および冷却部材の順に位置する。セラミック体は、試料保持面である第1面と第1面と反対に位置する第2面とを有し、且つ、内部に第1電極および第2電極を有する。第1面、第1電極、第2電極および第2面は、第1面から第1電極、第2電極および第2面の順に位置する。耐熱部材は、セラミック体よりも熱伝導率が小さい。耐熱部材と冷却部材とは、接合材によって固定される。耐熱部材は、第2電極によりセラミック体に吸着される。
【発明の効果】
【0006】
実施形態の一態様によれば、試料保持面の変形を低減しつつ高温環境下での使用に耐え得る試料保持具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る試料保持具の構成を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る試料保持具の構成を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る第1電極の構成の一例を示す模式的な断面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る第2電極の構成の一例を示す模式的な断面図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態に係る試料保持具の構成を模式的に示す断面図である。
【
図6】
図6は、第3実施形態に係る試料保持具の構成を模式的に示す断面図である。
【
図7】
図7は、第4実施形態に係る試料保持具の構成を模式的に示す断面図である。
【
図8】
図8は、第5実施形態に係る試料保持具の構成を模式的に示す断面図である。
【
図9】
図9は、第6実施形態に係る試料保持具の構成を模式的に示す断面図である。
【
図10】
図10は、第6実施形態に係る耐熱部材の構成を模式的に示す平面図である。
【
図12】
図12は、第6実施形態に係る凸部の構成の一例を示す模式的な斜視図である。
【
図13】
図13は、第6実施形態に係る凸部の構成の他の一例を示す模式的な斜視図である。
【
図14】
図14は、第7実施形態に係る試料保持具の構成を模式的に示す断面図である。
【
図15】
図15は、第7実施形態に係るセラミック体の構成を模式的に示す底面図である。
【
図16】
図16は、第8実施形態に係る試料保持具の構成を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する試料保持具の実施形態について説明する。なお、以下に示す実施形態により本開示が限定されるものではない。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。さらに、図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0009】
また、以下に示す実施形態では、「一定」、「直交」、「垂直」あるいは「平行」といった表現が用いられる場合があるが、これらの表現は、厳密に「一定」、「直交」、「垂直」あるいは「平行」であることを要しない。すなわち、上記した各表現は、たとえば製造精度、設置精度などのずれを許容するものとする。
【0010】
近年、試料保持具の使用温度は高くなる傾向にあり、耐熱温度が比較的低い樹脂製接着剤の使用が困難となりつつある。そこで、樹脂製接着剤を使用しない構造が提案されている。たとえば、特開2013-232642号公報には、セラミック体と冷却部材とを外周部において機械的に固定した試料保持具が開示されている。また、特開平9-162272号公報には、セラミック体の内部に電極を設けて、セラミック体と冷却部材とを静電吸着により固定した試料保持具が開示されている。
【0011】
しかしながら、セラミック体の外周部を機械的に固定する方式では、セラミック体が熱変形した際にセラミック体の中央部が冷却部材から浮くおそれがある。この場合、試料保持面の面内における温度均一性が低下するおそれがある。また、試料保持面の平坦度が低下することで試料が試料保持面から剥がれやすくなったり、試料の加工精度が低下したりするおそれがある。また、セラミック体と冷却部材とを静電吸着により固定する方式では、セラミック体と冷却部材とが直接接していることから、これらを樹脂製接着剤で接合する方式と比較して、セラミック体の熱が冷却部材に伝わりやすい。このため、冷却部材が熱変形しやすく、冷却部材の変形に伴ってセラミック体も変形することで、セラミック体の平坦度が低下するおそれがある。その結果、上述したように試料が試料保持面から剥がれやすくなったり、試料の加工精度が低下したりするおそれがある。
【0012】
そこで、試料保持面の変形を低減しつつ高温環境下での使用に耐え得る試料保持具の提供が期待されている。
【0013】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る試料保持具の構成を模式的に示す斜視図である。
図2は、第1実施形態に係る試料保持具の構成を模式的に示す断面図である。
【0014】
図1及び
図2に示すように、試料保持具100は、セラミック体10と、冷却部材20と、耐熱部材30と、接合材50とを備える。セラミック体10、耐熱部材30、接合材50および冷却部材20は、セラミック体10から耐熱部材30、接合材50および冷却部材20の順に位置している。
【0015】
セラミック体10は、セラミックを含有する原料を略円板状に成形して焼成した部材である。セラミック体10は、静電力を利用して例えば半導体ウエハなどの試料を吸着及び保持する。セラミック体10は、例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)や窒化アルミニウム(AlN)、イットリア(Y2O3)などを主成分として含んでいる。
【0016】
セラミック体10は、第1面10a及び当該第1面10aとは反対側に位置する第2面10bを有する。半導体ウエハなどの試料は、第1面10aに保持される。すなわち、第1面10aは、試料を保持する試料保持面となる。
【0017】
セラミック体10の内部には、静電吸着用電極である2つの第1電極11,11が位置している。
図3は、第1実施形態に係る第1電極11,11の構成の一例を示す模式的な断面図である。
図3に示すように、第1電極11は、平面視において半円形状を有する。ここでは、セラミック体10が所謂双極タイプの静電チャックである場合の例を示しているが、セラミック体10は単極タイプの静電チャックであってもよい。この場合、セラミック体10は、1つの第1電極11を有していればよい。
【0018】
第1電極11,11は、第1面10aに載置された試料の吸着保持に用いられる。具体的には、第1電極11,11は、一方の第1電極11に正の電圧が印加され、他方の第1電極11に負の電圧が印加されることにより、導体または半導体との間にクーロン力またはジョンソン・ラーベック力を発生させる。これにより、第1電極11,11は、導体または半導体である試料を吸着保持することができる。
【0019】
また、セラミック体10の内部には、静電吸着用電極である2つの第2電極12,12が位置している。
図4は、第1実施形態に係る第2電極12,12の構成の一例を示す模式的な断面図である。
図4に示すように、第2電極12,12は、例えば、一方の第2電極12と他方の第2電極12とが交互に細かく配置された櫛歯状の電極である。かかる形状を有する第2電極12,12は、一方の第2電極12に正の電圧が印加され、他方の第2電極12に負の電圧が印加されることにより生じるグラディエント力により、導体および半導体だけでなく、絶縁体も吸着保持することができる。第2電極12,12は、後述する耐熱部材30の吸着保持に用いられる。
【0020】
セラミック体10において、第1面10a、第1電極11,11、第2電極12,12および第2面10bは、第1面10aから第1電極11,11、第2電極12,12および第2面10bの順に位置している。
【0021】
冷却部材20は、セラミック体10の第2面10b側に位置する。言い換えれば、冷却部材20は、耐熱部材30を挟んでセラミック体10とは反対側に位置している。冷却部材20は、例えば略円柱状の部材である。冷却部材20の材料は、例えば、アルミニウムやチタン、ステンレス鋼などの金属または炭化ケイ素等のセラミックスとアルミニウム等の金属との複合材であってもよい。冷却部材20が金属およびセラミックスと金属との複合材である場合、冷却部材20は、例えば、高周波電極を兼ねてもよい。
【0022】
冷却部材20は、例えば、試料に対するプラズマ処理によって加熱されたセラミック体10を冷却する冷却部材として機能する。冷却部材20は、例えば、熱交換器であってもよい。かかる場合、冷却部材20は、液体または気体の熱交換媒体を流す流路を有してもよい。
【0023】
耐熱部材30は、耐熱性を有し、セラミック体10よりも熱伝導率が小さい。かかる耐熱部材30は、例えば、コージライト、石英、多孔質AlN、窒化珪素、導電ガラス、多孔質SiCまたは炭化ホウ素であってもよい。これらのうち、コージライト、石英、多孔質AlNおよび窒化珪素は、絶縁体である。また、導電ガラス、多孔質SiCおよび炭化ホウ素は、導体または半導体である。
【0024】
耐熱部材30は、セラミック体10に対して接合されていない状態で位置している。耐熱部材30は、セラミック体10に内蔵された第2電極12,12によってセラミック体10に対して静電吸着される。
【0025】
接合材50は、例えば接着剤である。接合材50は、冷却部材20と耐熱部材30との間に位置しており、冷却部材20と耐熱部材30とを接合する。なお、接合材50としては、例えば、シリコン樹脂系の接着剤を用いることができる。
【0026】
このように、第1実施形態に係る試料保持具100において、セラミック体10と耐熱部材30とは第2電極12,12を用いた静電吸着によって固定され、耐熱部材30と冷却部材20とは接合材50によって固定される。
【0027】
耐熱部材30はセラミック体10よりも熱伝導率が小さいため、セラミック体10と冷却部材20とを接合材で固定する場合と比較して、セラミック体10からの熱が接合材50に伝わりにくい。このため、セラミック体10と冷却部材20とを接合材50で固定する場合と比較して、高温環境下においても接合材50を使用することができる。また、セラミック体10は耐熱部材30に対して中央部を含めて全面的に吸着されるため、セラミック体10の外周部を機械的に固定する場合と比較して、試料保持面である第1面10aの変形が生じにくい。このため、セラミック体10の外周部を機械的に固定する場合と比較して、試料保持面の面内における温度均一性の低下が生じにくい。また、セラミック体10の外周部を機械的に固定する場合と比較して、試料保持面からの試料の剥がれや試料の加工精度の低下も生じにくい。このように、第1実施形態に係る試料保持具100によれば、試料保持面の変形を低減しつつ高温環境下での使用に耐えることができる。
【0028】
また、第1実施形態に係る試料保持具100において、セラミック体10は、第2電極12,12として、グラディエント力を発生させることができる電極(櫛歯電極)を有する。この場合、耐熱部材30は、絶縁体であってもよい。
【0029】
例えば半導体ウエハをプラズマエッチングする場合、半導体ウエハを保持する静電チャックの周囲にアーク放電が発生するおそれがある。これに対し、第1実施形態に係る試料保持具100は、セラミック体10に接する耐熱部材30を絶縁体とすることで、上記アーク放電を生じさせにくくすることができる。
【0030】
なお、耐熱部材30は、必ずしも絶縁体であることを要しない。耐熱部材30が絶縁体でない場合、セラミック体10は、必ずしも櫛歯形状の第2電極12,12を有することを要しない。すなわち、セラミック体10は、第2電極12,12として、例えば、第1電極11,11のように半円形状の電極であってもよい。また、第1電極11,11は、必ずしも半円形状の電極であることを要しない。例えば、第1電極11,11は、櫛歯形状の電極であってもよい。
【0031】
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態に係る試料保持具の構成を模式的に示す断面図である。
図5に示すように、耐熱部材30は、少なくともセラミック体10の第2面10bと対向する面に、導電性膜31を有していてもよい。導電性膜31としては、たとえば、DLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン)、SiC(炭化珪素)、TiN(窒化チタン)またはB
4C(炭化ホウ素)を用いることができる。
【0032】
種々の静電吸着力のうち絶縁体を吸着させる際に用いられるグラディエント力は、例えばクーロン力またはジョンソン・ラーベック力と比較して高い電圧が必要となる。また、グラディエント力は、クーロン力またはジョンソン・ラーベック力と比較して、吸着力が弱い。これに対し、耐熱部材30に導電性膜31を設けた場合には、耐熱部材30が絶縁体であっても、グラディエント力に代えてクーロン力またはジョンソン・ラーベック力を用いた吸着保持が可能となる。すなわち、絶縁体である耐熱部材30に対して比較的低い電圧で高い吸着力を発揮することができる。
【0033】
ここでは、耐熱部材30の表面のうちセラミック体10の第2面10bと対向する面にのみ導電性膜31が位置する場合の例を示しているが、耐熱部材30は、たとえば表面全体が導電性膜31によって覆われてもよい。
【0034】
(第3実施形態)
図6は、第3実施形態に係る試料保持具の構成を模式的に示す断面図である。
図6に示すように、耐熱部材30は、少なくともセラミック体10の第2面10bと対向する面に、耐熱部材30よりも硬度が高い高硬度膜32を有していてもよい。高硬度膜32としては、たとえば、DLC、SiC、TiNまたはB
4Cを用いることができる。
【0035】
セラミック体10と耐熱部材30とは接合されていないため、セラミック体10および耐熱部材30間で、例えば熱膨張差等による摩擦が生じるおそれがある。セラミック体10および耐熱部材30間で摩擦が生じると、耐熱部材30が削れることによってパーティクルが発生するおそれがある。これに対し、耐熱部材30に高硬度膜32を設けた場合には、セラミック体10および耐熱部材30間で摩擦が生じた場合であっても、耐熱部材30が削られにくくなる。したがって、パーティクルの発生を低減することができる。なお、熱膨張差による摩擦を低減する観点から、耐熱部材30の熱膨張率は小さいことが望ましい。
【0036】
ここでは、耐熱部材30の表面のうちセラミック体10の第2面10bと対向する面にのみ高硬度膜32が位置する場合の例を示しているが、耐熱部材30は、たとえば表面全体が高硬度膜32によって覆われてもよい。
【0037】
(第4実施形態)
図7は、第4実施形態に係る試料保持具の構成を模式的に示す断面図である。
図7に示すように、耐熱部材30は、少なくともセラミック体10の第2面10bと対向する面に、耐熱部材30よりも摩擦係数が小さい低摩擦膜33を有していてもよい。低摩擦膜33としては、たとえば、DLCまたはTiNを用いることができる。
【0038】
このように、耐熱部材30に低摩擦膜33を設けることで、セラミック体10および耐熱部材30間で摩擦が生じた場合であっても、耐熱部材30が削られにくくなる。したがって、パーティクルの発生を低減することができる。
【0039】
ここでは、耐熱部材30の表面のうちセラミック体10の第2面10bと対向する面にのみ低摩擦膜33が位置する場合の例を示しているが、耐熱部材30は、たとえば表面全体が低摩擦膜33によって覆われてもよい。
【0040】
(第5実施形態)
図8は、第5実施形態に係る試料保持具の構成を模式的に示す断面図である。
図8に示すように、耐熱部材30は、少なくともセラミック体10の第2面10bと対向する面に、複数の種類の膜が積層された積層膜35を有していてもよい。例えば、
図8に示す例において、積層膜35は、導電性膜31の上に低摩擦膜33が積層された構成を有する。これに限らず、積層膜35は、例えば、導電性膜31の上に高硬度膜32が積層された構成を有していてもよい。また、ここでは、積層膜35は、3種類以上の膜が積層された構成を有していてもよい。例えば、積層膜35は、導電性膜31の上に高硬度膜32および低摩擦膜33が積層された構成を有していてもよい。また、積層膜35の構成は、同じ材料の組み合わせであってもよいし、異なる材料の組み合わせであってもよい。
【0041】
かかる構成とすることにより、絶縁体である耐熱部材30に対して比較的低い電圧で高い吸着力を発揮しつつ、パーティクルの発生を低減することができる。
【0042】
ここでは、耐熱部材30の表面のうちセラミック体10の第2面10bと対向する面にのみ積層膜35が位置する場合の例を示しているが、耐熱部材30は、たとえば表面全体が積層膜35によって覆われてもよい。
【0043】
(第6実施形態)
図9は、第6実施形態に係る試料保持具の構成を模式的に示す断面図である。
図10は、第6実施形態に係る耐熱部材30の構成を模式的に示す平面図である。
図9に示すように、耐熱部材30は、セラミック体10の第2面10bと対向する面に、セラミック体10の第2面10bと接触する複数の第1凸部301と、第1周壁部302とを有していてもよい。第1凸部301および第1周壁部302は、例えば、耐熱部材30におけるセラミック体10の第2面10bと対向する面にブラスト加工を施すことにより形成することができる。
【0044】
図10に示すように、複数の第1凸部301は、例えば平面視円形状を有しており、互いに間隔を空けて配置されている。また、第1周壁部302は、例えば平面視円環形状を有している。第1周壁部302は、複数の第1凸部301の外方に位置し、複数の第1凸部301を取り囲んでいる。複数の第1凸部301の突出高さと第1周壁部302の突出高さとは同一である。このため、セラミック体10と耐熱部材30との間には、閉じられた空間303が形成される。
【0045】
このように、耐熱部材30が複数の第1凸部301及び空間303を有することにより、耐熱部材30とセラミック体10との間の接触面積を小さくすることができる。これにより、耐熱部材30に対してセラミック体10が滑りやすくなり、熱サイクルに伴う耐熱部材30及びセラミック体10の膨張・収縮差により発生する応力を緩和することができる。
【0046】
空間303は、伝熱ガスの流路であってもよい。例えば、空間303には、ガス導入孔304を介して不図示のガス供給源から伝熱ガスが導入されてもよい。また、空間303に導入された伝熱ガスは、ガス排出孔305を介して試料保持具100の外部に排出されてもよい。ガス導入孔304およびガス排出孔305は、冷却部材20、接合材50、耐熱部材30を貫通し、空間303に連通している。空間303に伝熱ガスが導入されることにより、セラミック体10の第2面10bに伝熱ガスを送り込むことができ、空間303を介した耐熱部材30とセラミック体10との間の熱伝達性が向上する。伝熱ガスとしては、例えば、ヘリウムガス等を用いることができる。
【0047】
図11は、
図10に示すXI-XI線矢視における模式的な断面図である。
図12は、第6実施形態に係る凸部の構成の一例を示す模式的な斜視図である。
図13は、第6実施形態に係る凸部の構成の他の一例を示す模式的な斜視図である。
【0048】
図11および
図12に示すように、第1凸部301の側面は、セラミック体10に向かうに連れて幅が狭くなるテーパ状であってもよい。言い換えると、第1凸部301は、第1凸部301の頂部に近づくほど幅が狭くなるテーパ状に形成されてもよい。第1凸部301がテーパ状に形成されることにより、第1凸部301におけるセラミック体10との接触面311の表面積を小さくすることができる。すなわち、耐熱部材30とセラミック体10との間の接触面積を小さくすることができる。これにより、耐熱部材30に対してセラミック体10がより滑りやすくなり、熱サイクルに伴う耐熱部材30及びセラミック体10の膨張・収縮差により発生する応力をより緩和することができる。
【0049】
第1凸部301における接触面311の表面粗さRaは、空間303の底面306の表面粗さRaよりも小さくてもよい。これにより、第1凸部301の接触面311とセラミック体10とを面内方向に均一に接触させることができ、セラミック体10から複数の第1凸部301への熱伝達を均等化することができる。また、第1凸部301の接触面311の表面粗さRaが小さいと、耐熱部材30に対してセラミック体10がより滑りやすくなり、熱サイクルに伴う耐熱部材30及びセラミック体10の膨張・収縮差により発生する応力をより緩和することができる。また、空間303の底面306の表面粗さRaが大きいと、空間303の底面306の表面積を大きくすることができる。これにより、例えば、空間303に伝熱ガスが導入される場合、伝熱ガスと耐熱部材30との間の熱交換を促進することができる。
【0050】
図13に示すように、第1凸部301の側面は、少なくとも1つの溝312を有していてもよい。
図13では、第1凸部301が複数の溝312を有する場合の例を示しているが、第1凸部301は、1つの溝312を有する構成であってもよい。
【0051】
このように、第1凸部301の側面に溝312が位置する場合、空間303に導入される伝熱ガスの流れが溝312によって乱されることで、伝熱ガスと耐熱部材30との間の熱交換を促進することができる。
【0052】
溝312は、第1凸部301の側面において第1凸部301の接触面311から空間303の底面306へ向かう方向に延在してもよい。これにより、空間303に導入される伝熱ガスの流れ方向と溝312の延在方向とが交差することから、伝熱ガスの流れを効率的に乱すことができ、伝熱ガスと耐熱部材30との間の熱交換をより促進することができる。
【0053】
なお、溝312が延びる方向は、
図13に示す方向に限定されない。溝312は、第1凸部301の側面において、任意の方向に延在してもよい。
【0054】
また、
図13では、第1凸部301の側面に溝312を設ける場合の例を示したが、溝312に代えて突起を第1凸部301の側面に設けてもよい。また、第1凸部301の側面に溝312及び突起の両方を設けてもよい。
【0055】
第6実施形態において、複数の第1凸部301の接触面311には、上述した導電性膜31、高硬度膜32、低摩擦膜33および積層膜35の何れかのコーティング膜が位置していてもよい。この場合、コーティング膜は、第1凸部301の接触面311のみを被覆するように位置してもよい。これにより、例えば、空間303に伝熱ガスが導入される場合に、伝熱ガスの流路となる空間303の流路断面積が小さくなることを抑制することができる。
【0056】
また、コーティング膜は、第1凸部301の側面に位置していてもよいし、空間303の底面306に位置していてもよい。これにより、例えば、セラミック体10の第1面10a、すなわち、試料保持面に残留する電荷をコーティング膜に逃がしやすくすることができる。
【0057】
(第7実施形態)
図14は、第7実施形態に係る試料保持具の構成を模式的に示す断面図である。
図15は、第7実施形態に係るセラミック体10の構成を模式的に示す底面図である。
図14に示すように、セラミック体10は、第2面10bに、耐熱部材30と接触する複数の第2凸部101および第2周壁部102を有していてもよい。第2凸部101および第2周壁部102は、例えば、セラミック体10の第2面10bにブラスト加工を施すことで形成することができる。
【0058】
図15に示すように、複数の第2凸部101は、例えば平面視円形状を有しており、互いに間隔を空けて配置されている。第2凸部101は、上述した第1凸部301と同様のテーパ形状を有していてもよい。また、第2凸部101の側面には、上述した第1凸部301の溝312と同様の溝部が位置していてもよい。
【0059】
第2周壁部102は、例えば平面視円環形状を有している。第2周壁部102は、複数の第2凸部101の外方に位置し、複数の第2凸部101を取り囲んでいる。複数の第2凸部101の突出高さと第2周壁部102の突出高さとは同一である。このため、セラミック体10と耐熱部材30との間には、閉じられた空間103が形成される。
【0060】
このように、セラミック体10が複数の第2凸部101及び空間103を有することにより、耐熱部材30とセラミック体10との間の接触面積を小さくすることができる。これにより、耐熱部材30に対してセラミック体10が滑りやすくなり、熱サイクルに伴う耐熱部材30及びセラミック体10の膨張・収縮差により発生する応力を緩和することができる。
【0061】
空間103は、伝熱ガスの流路であってもよい。例えば、空間103には、ガス導入孔304を介して不図示のガス供給源から伝熱ガスが導入されてもよい。また、空間103に導入された伝熱ガスは、ガス排出孔305を介して試料保持具100の外部に排出されてもよい。ガス導入孔304およびガス排出孔305は、冷却部材20、接合材50、耐熱部材30を貫通し、空間103に連通している。空間103に伝熱ガスが導入されることにより、セラミック体10の第2面10bに伝熱ガスを送り込むことができ、空間103を介した耐熱部材30とセラミック体10との間の熱伝達性が向上する。伝熱ガスとしては、例えば、ヘリウムガス等を用いることができる。
【0062】
第2凸部101における耐熱部材30との接触面の表面粗さRaは、空間103の底面(すなわち、第2面10b)の表面粗さRaよりも小さくてもよい。これにより、第2凸部101における耐熱部材30との接触面と耐熱部材30とを面内方向に均一に接触させることができ、セラミック体10から耐熱部材30への熱伝達を均等化することができる。また、第2凸部101における耐熱部材30との接触面の表面粗さRaが小さいと、耐熱部材30に対してセラミック体10がより滑りやすくなる。これにより、熱サイクルに伴う耐熱部材30及びセラミック体10の膨張・収縮差により発生する応力をより緩和することができる。また、第2面10bの表面粗さRaが大きいと、空間103の底面の表面積を大きくすることができる。これにより、例えば、空間103に伝熱ガスが導入される場合、伝熱ガスと耐熱部材30との間の熱交換を促進することができる。
【0063】
第7実施形態において、複数の第2凸部101における耐熱部材30との接触面には、上述した導電性膜31、高硬度膜32、低摩擦膜33および積層膜35の何れかのコーティング膜が位置していてもよい。この場合、コーティング膜は、第2凸部101における耐熱部材30の接触面のみを被覆するように位置してもよい。これにより、例えば、空間103に伝熱ガスが導入される場合に、伝熱ガスの流路となる空間103の流路断面積が小さくなることを抑制することができる。
【0064】
また、コーティング膜は、第2凸部101の側面に位置していてもよいし、空間103の底面(すなわち、第2面10b)に位置していてもよい。これにより、例えば、セラミック体10の第1面10a、すなわち、試料保持面に残留する電荷をコーティング膜に逃がしやすくすることができる。
【0065】
(第8実施形態)
図16は、第8実施形態に係る試料保持具の構成を模式的に示す断面図である。
図16に示すように、セラミック体10は、内部に第3電極13と内部流路14とをさらに有していてもよい。
【0066】
第3電極13は、例えば、セラミック体10を加熱するためのヒータ電極である。第3電極13の電極の材料としては、例えば、白金やタングステン、モリブデンなどの金属を使用することができる。
【0067】
内部流路14は、冷却用の流体が流れる流路である。内部流路14は、セラミック体10の主面(第1面10aおよび第2面10b)に沿って延びている。内部流路14には、図示しない導入路および排出路が接続されており、冷却用の流体は、導入路から内部流路14に導入された後、内部流路14を流通して排出路から排出される。冷却用の流体としては、例えば、空気、窒素ガスまたはヘリウムガス等の気体が用いられてもよいし、水等の液体が用いられてもよい。
【0068】
このように、セラミック体10は、第3電極13および内部流路14を有していてもよい。かかる構成とした場合、第3電極13による加熱および内部流路14による冷却を制御することで、セラミック体10を精度よく調整することができる。また、内部流路14に冷却用の流体を流すことにより、接合材50に熱を伝えにくくすることができる。
【0069】
セラミック体10の第1面10a、第1電極11,11、第2電極12,12、第2面10b、第3電極13および内部流路14は、第1面10aから第1電極11,11、第3電極13、内部流路14、第2電極12,12および第2面10bの順に位置している。かかる配置とすることで、セラミック体10に載置された試料を効率よく加熱することができる。
【0070】
上述してきたように、一実施形態において、(1)試料保持具(一例として、試料保持具100)は、セラミック体(一例として、セラミック体10)と、耐熱部材(一例として、耐熱部材30)と、接合材(一例として、接合材50)と、冷却部材(一例として、冷却部材20)とを備える。セラミック体、耐熱部材、接合材および冷却部材は、セラミック体から耐熱部材、接合材および冷却部材の順に位置する。セラミック体は、試料保持面である第1面(一例として、第1面10a)と第1面と反対に位置する第2面(一例として、第2面10b)とを有し、且つ、内部に第1電極(一例として、第1電極11,11)および第2電極(第2電極12,12)を有する。第1面、第1電極、第2電極および第2面は、第1面から第1電極、第2電極および第2面の順に位置する。耐熱部材は、セラミック体よりも熱伝導率が小さい。耐熱部材と冷却部材とは、接合材によって固定される。耐熱部材は、第2電極によりセラミック体に吸着される。
【0071】
上記試料保持具によれば、試料保持面の変形を低減しつつ高温環境下での使用に耐えることができる。
【0072】
(2)上記(1)の試料保持具において、耐熱部材は、絶縁体であってもよい。かかる構成によれば、セラミック板に接する耐熱部材を絶縁体とすることで、アーク放電を生じさせにくくすることができる。
【0073】
(3)上記(1)または(2)の試料保持具において、耐熱部材は、少なくとも第2面と対向する面に導電性膜(一例として、導電性膜31)を有していてもよい。かかる構成によれば、絶縁体である耐熱部材に導電性膜を設けない場合と比較して、低い電圧で高い吸着力を発揮することができる。
【0074】
(4)上記(1)~(3)のいずれかの試料保持具において、耐熱部材は、少なくとも第2面と対向する面に、耐熱部材よりも硬度が高い高硬度膜(一例として、高硬度膜32)を有していてもよい。かかる構成によれば、パーティクルの発生を低減することができる。
【0075】
(5)上記(1)~(4)のいずれかの試料保持具において、耐熱部材は、少なくとも第2面と対向する面に、耐熱部材よりも摩擦係数が小さい低摩擦膜(一例として、低摩擦膜33)を有していてもよい。かかる構成によれば、パーティクルの発生を低減できる。
【0076】
(6)上記(1)~(5)のいずれかの試料保持具において、耐熱部材は、第2面と対向する面に、第2面と接触する複数の凸部(一例として、複数の第1凸部301)を有していてもよい。かかる構成によれば、耐熱部材とセラミック体との間の接触面積が小さくなることで、耐熱部材に対してセラミック体が滑りやすくなる。その結果、熱サイクルに伴う耐熱部材及びセラミック体の膨張・収縮差により発生する応力を緩和することができる。
【0077】
(7)上記(1)~(5)のいずれかの試料保持具において、セラミック体は、第2面に、耐熱部材と接触する複数の凸部(一例として、複数の第2凸部101)を有していてもよい。かかる構成によれば、耐熱部材とセラミック体との間の接触面積が小さくなることで、耐熱部材に対してセラミック体が滑りやすくなる。その結果、熱サイクルに伴う耐熱部材及びセラミック体の膨張・収縮差により発生する応力を緩和することができる。
【0078】
(8)上記(1)~(7)のいずれかの試料保持具において、セラミック体は、内部に第3電極(一例として、第3電極13)と内部流路(一例として、内部流路14)とを有していてもよい。この場合、第1面、第1電極、第2電極、第2面、第3電極および内部流路は、第1面から第1電極、第3電極、内部流路、第2電極および第2面の順に位置していてもよい。かかる構成によれば、試料の温度を精度良く調整することができる。また、内部流路に冷却用の流体を流すことで、接合材に熱を伝えにくくすることができる。
【0079】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表し、且つ、記述した特定の詳細及び代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲及びその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神又は範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0080】
10 セラミック体
11 第1電極
12 第2電極
13 第3電極
14 内部流路
20 冷却部材
30 耐熱部材
31 導電性膜
32 高硬度膜
33 低摩擦膜
35 積層膜
50 接合材
100 試料保持具
101 第2凸部
102 第2周壁部
103 空間
301 第1凸部
302 第1周壁部
303 空間
304 ガス導入孔
305 ガス排出孔
306 底面
311 接触面