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特開2024-47965締結用部品、該締結用部品を用いた締結用部品取付け装置および該締結用部品取付け装置を用いた締結用部品取付け方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047965
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】締結用部品、該締結用部品を用いた締結用部品取付け装置および該締結用部品取付け装置を用いた締結用部品取付け方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/20 20060101AFI20240401BHJP
   B25J 13/00 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
B23K9/20 F
B25J13/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153756
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】坂本 登
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS06
3C707AS11
3C707LV05
3C707NS07
(57)【要約】
【課題】締結用部品の取付け作業に支障を生じさせることなく締結用部品を被取付け部材に取り付けることが可能な締結用部品、締結用部品取付け装置および締結用部品取付け方法を提供する。
【解決手段】締結用部品取付け装置によって被取付け部材40に溶接取付けされる締結用部品であって、分断可能な脆弱部16を介して複数の締結用部品が同方向に連結されて形成された締結用部品の棒状連結体10と、この締結用部品を用いた締結用部品取付け装置20と、この締結用部品取付け装置20を用いた締結用部品取付け方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
締結用部品取付け装置によって被取付け部材に溶接取付けされる締結用部品において、
分断可能な脆弱部を介して複数の締結用部品が同方向に連結されて形成された締結用部品の棒状連結体として構成されたことを特徴とする締結用部品。
【請求項2】
ロボットのマニピュレータの作動端部に固定され、請求項1に記載の棒状連結体として構成された締結用部品を被取付け部材に通電による溶接によって取付け作業を行う締結用部品取付け装置において、
先端部に設けられ、前記締結用部品である前記棒状連結体を収容保持する棒状連結体保持部と、
該棒状連結体保持部の先端部に形成され、前記収容保持された棒状連結体を周囲から挟持する挟持部と、
を備えたことを特徴とする締結用部品取付け装置。
【請求項3】
前記締結用部品である棒状連結体を前記棒状連結体保持部にて保持させる棒状連結体保持工程と、
前記保持された棒状連結体の一つを前記棒状連結体保持部の先端部で、前記挟持部にて挟持する棒状連結体挟持工程と、
前記挟持された棒状連結体の最先端の前記締結用部品の先端を露出させた状態とする頭出し工程と、
前記最先端の締結用部品を被取付け部材に通電による溶接によって取り付ける溶接工程と、
前記最先端の締結用部品を取り付けた状態で、少なくとも前記脆弱部が露出した状態とする脆弱部露出工程と、
前記マニピュレータの動作により、前記露出した脆弱部にて前記棒状連結体を分断する分断工程と、
を有することを特徴とする、請求項2に記載の締結用部品取付け装置を用いた締結用部品取付け方法。
【請求項4】
前記分断工程は、前記締結用部品取付け装置が固定されたロボットのマニピュレータの動作によって、前記露出された脆弱部に力を加えることで該脆弱部を切断することにより行われることを特徴とする、請求項3に記載の締結用部品取付け方法。
【請求項5】
前記分断工程は、前記取り付けられた最先端の締結用部品と前記棒状連結体を挟持している前記挟持部との間に通電させることで、前記露出した脆弱部を溶断することにより行われることを特徴とする、請求項3に記載の締結用部品取付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、ロボットのマニピュレータのようなアーム部に設けられた取付け手段によって被取付け部材に取り付けられる締結用部品、該締結用部品を用いた締結用部品取付け装置、および該締結用部品取付け装置を用いた締結用部品取付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば下記特許文献1に記載されているように、締結用部品であるスタッドボルトを鋼製部材などの被取付け部材にアーク溶接によって取り付ける取付け装置としてスタッド溶接装置が量産車両の車体製造に用いられている。この特許文献1に記載されたスタッド溶接装置は、溶接ガンと呼ばれ、この溶接ガンの先端部に設けられたコレットと呼ばれる把持部に把持されたスタッドボルトを手動で被取付け部材に溶接するものである。このような手動の溶接ガンでは、スタッドボルトを1つずつ把持部に把持させてから溶接が行われる。
【0003】
一方、量産車体製造では、このようなスタッド溶接装置を産業用ロボットのマニピュレータ(アームともいう。)に取り付け、被取付け部材である車体用部材に次々とスタッドボルトを溶接する。具体的には、スタッド溶接装置内の把持部(規定位置)に把持されている規定姿勢のスタッドボルトを被取付け部材側に押し出して溶接が行われる。したがって、量産車体製造に用いられるスタッド溶接装置では、締結用部品である個々のスタッドボルトをスタッド溶接装置の規定位置に所定の姿勢で次々と送給する必要がある。
【0004】
量産車体製造に用いられるスタッド溶接装置では、締結用部品を装置の規定位置に規定姿勢で送給するために加圧空気が用いられている。この締結用部品送給装置は、例えば締結用部品をパーツフィーダで1つずつ送出し、それを、スタッド溶接装置まで接続されたホースなどの管状体内に所定の姿勢で送給する。この管状体には加圧空気が供給されており、この加圧空気によって送出された所定の姿勢の締結用部品がスタッド溶接装置まで圧送され、スタッド溶接装置内に設けられた把持部(コレット)で把持されるようになっている。そして、把持部で把持された締結用部品をスタッド溶接装置内に設けられた電極ロッドが被取付け部材側に押し出し、この電極ロッドは対向する固定電極(被取付け部材)と締結用部品とを挟んで接触させ、両電極間に通電させながら締結用部品を持ち上げてアークを発生させる。アークによって溶融した箇所に締結用部品の把持部が締結用部品を再度押し付けることで、締結用部品は被取付け部材に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-89903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、量産車体製造などでは産業用ロボットのマニピュレータにスタッド溶接装置が取り付けられており、一般に締結用部品送給装置から伸びた管状体もスタッド溶接装置に接続されている。したがって、締結用部品を供給する管状体は、マニピュレータの移動に伴って各所に引き回される。その際、管状体に折れやねじれが生じて締結用部品が詰まるなどの送給不良が生じる。また、管状体の内部にスタッドボルトなどの締結用部品から剥がれたメッキ材が堆積したり、多数箇所を溶接する状況において、溶接箇所によってロボットのマニピュレータが異なる姿勢を取った場合、引き回される管状体も異なる形態となり、管状体内における締結用部品の送給時の摩擦抵抗もその都度変化してしまう。これにより、締結用部品の送給不良を招くこととなり、さらには、引き回される管状体が邪魔になって、ロボットのマニピュレータ、すなわちスタッド溶接装置を所望の位置に移動したり所望の姿勢にしたりすることができないこともある。こうしたことが生じるとスタッド溶接作業を逐一中断しなければならず、従来のスタッド溶接設備は稼働率の面で問題があった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、締結用部品の取付け作業に支障を生じさせることなく締結用部品を被取付け部材に取り付けることが可能な締結用部品、締結用部品取付け方法および締結用部品取付け装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一実施形態は、締結用部品取付け装置によって被取付け部材に溶接取付けされる締結用部品において、分断可能な脆弱部を介して複数の締結用部品が同方向に連結されて形成された締結用部品の棒状連結体として構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、締結用部品の取付け作業に支障を生じさせることなく締結用部品を被取付け部材に取り付けることが可能な締結用部品、締結用部品取付け方法および締結用部品取付け装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施の形態による、締結用部品を棒状に連結した棒状連結体の平面図である。
図2】本発明の一実施の形態による締結部品取付け装置(溶接ガン)の側面図である。
図3A】本発明の一実施の形態による、締結部品取付け装置に装填する棒状連結体を供給する装置の平面図である。
図3B】本発明の一実施の形態による、棒状連結体を締結部品取付け装置に装填する機構を示した概略構成図である。
図3C図3Bの部分拡大図である。
図4】本発明の他の実施の形態による、棒状連結体を締結部品取付け装置に装填する機構を示した断面図である。
図5A】本発明の一実施の形態による、棒状連結体を順次送り出す送出し機構を示した概略構成図である。
図5B】送り装置の拡大図である。
図6】本発明の一実施の形態による、次段の締結用部品を挟持部(コレット)から露出させる方法を示した概略構成図である。
図7】本発明の一実施の形態による、棒状連結体を溶接した後に締結用部品を切断させる方法を示した概略構成図である。
図8】本発明の他の実施の形態による、棒状連結体を溶接した後に締結用部品を溶断させる方法を示した概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る締結用部品である棒状連結体の構成を示しており、図示のように、締結用部品12が例えば10~20個程度連結されて棒状連結体10が形成されている。すなわち、この実施の形態による棒状連結体10は、個々に一体物として構成されている締結用部品とは異なり、複数の締結用部品12が脆弱部16を介して連結された棒状体として構成されている。
【0012】
この脆弱部16において、溶接にて被取付け部材に溶着された棒状連結体10の最先端の締結用部品12と、棒状連結体10の残りの部分との分断が行われるようになっている。本実施の形態では、脆弱部16は縮径部(くびれ)として形成したが、この脆弱部16に分断方向の何らかの力が加わった時に締結用部品12を構成する部分よりも分断されやすい構造であれば足りる。例えば、外周面にV字溝を形成したり、脆弱部16の材料を強度が締結用部品よりも脆弱な素材で形成することで構成することも可能である。また、締結用部品12と同一の素材を用いてポーラス状とすることで、脆弱部16の部分を切断しやすくすることもできる。さらに、後述するように通電によって脆弱部16を溶断する場合にも、ポーラス状の箇所は低密度のため強度が弱くなるのと同時に電気抵抗が高くなり、通電による発熱で容易に溶断され得る構成となる。
【0013】
この棒状連結体10を後述する締結用部品取付け装置に収容または装填して用いることにより、複数の締結用部品12が締結用部品取付け装置内に既に準備されている状態を確保することができる。したがって、溶接による締結用部品12の取付け作業は連結されている締結用部品12の数だけ、連続した作業として行われる。すなわち、締結用部品12を締結用部品取付け装置まで送給する作業を行わずに連続した取付け作業が可能となっている。また、個々の締結用部品12は同じ向きで連結されているので、この棒状連結体10が締結用部品取付け装置に装填または収容されれば、締結用部品12は取付け作業を行うことのできる方向での姿勢が保たれた状態になる。
【0014】
次に、本発明に係る棒状連結体10を用いる締結用部品取付け装置の構造について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0015】
図2は、本発明の一実施の形態である締結用部品取付け装置20を側面視にて示したものである。本実施の形態では締結用部品取付け装置として、溶接ガンを用いた例を示す。溶接ガン20は、図示していないロボットのマニピュレータの作動端部にロボットマニピュレータ取付け部29を介して固定されている。溶接ガン20の先端部には、締結用部品である棒状連結体10を収容保持する棒状連結体保持部21が設けられており、その先端部には、棒状連結体10を挟持するための挟持部(コレット)22が設けられている。挟持部22は内部に棒状連結体10が挿通される挿通孔を備えている。
【0016】
さらに、本実施の形態においては、溶接ガン20は棒状連結体保持部21と挟持部22との間に設けられた棒状連結体10を送り出す送り装置24および送り装置シフト機構28を備えている。
【0017】
上記構成による溶接ガン20によれば、棒状連結体保持部21において締結用部品12を複数連ねた棒状連結体10を保持し、且つ挟持部22にてそれを挟持した状態とすることができ、複数の締結用部品12が常に溶接による取付け作業のために準備された状態を作り出すことが可能となっている。
【0018】
次に、図に基づいて、本発明に係る締結用部品取付け装置(溶接ガン)20を用いた締結用部品12の溶接による取付け方法を詳細に説明する。
【0019】
図3Aは、締結用部品である棒状連結体10を棒状連結体保持部21に保持させる棒状連結体保持工程において用いられる、棒状連結体10の供給装置30を平面視にて示したものである。この供給装置30は、回転可能に形成された平面略円形状のターンテーブル32とその面上中央に直径方向に伸長する様に立設された安全柵34とから構成されている。安全柵34はロボットのマニピュレータが動作して溶接作業を行う作業領域とその他の領域とを画するために設けられるものであり、この安全柵34を挟んで左右両側に、棒状連結体10の先端部を収容可能な複数の孔36が安全柵34と略平行にそれぞれ5個ずつ一列に設けられている。これら孔36の各々に、棒状連結体10をあらかじめ差し込んで置くことにより収容しておくことができる。後述するように、このターンテーブル32に収容された棒状連結体10は棒状連結体保持部21や挟持部22に順次装填して使用されていくものであり、溶接ガン20の設置場所側の棒状連結体10が溶接作業にて全て使用されたときに、作業者がこの供給装置30のターンテーブル32を180°回転させることで、新たな棒状連結体10を溶接ガン20側に供給できるような構成となっている。そして、作業者は安全サイドで空になったターンテーブル32の孔36に次の棒状連結体10を差し込むことができる。
【0020】
図3Bは、ターンテーブル32に収容されている棒状連結体10を溶接ガン20によって保持するための動作を示しており、図中、安全柵34を挟んで右側が作業者のいる安全側、左側がロボットの設置されている溶接作業側となっている。溶接ガン20は、ロボットのマニピュレータによって自動制御され、ターンテーブル32に設けられた孔36にあらかじめ収容された棒状連結体10を挟持部(コレット)22の先端開口部から挿入するように動作し、棒状連結体10は、棒状連結体保持部21に保持され、同時に挟持部22に挟持された状態となる。ここで、挟持部22の挿通孔の内径は、棒状連結体10の外径よりやや大きい程度に形成されており、挟持部22に挿入された棒状連結体10は安定して挟持部22にて挟持される。
【0021】
図3Cは、図3Bにおける、棒状連結体10がターンテーブル32の孔36に収容されている箇所の概略拡大図である。ターンテーブル32に穿設された孔36は、ターンテーブル32の安全柵34の反対側に向かってθ<90°の角度で傾斜して設けられており、この角度θはロボットのマニピュレータおよびそれに取り付けられた溶接ガン20の姿勢を考慮して最適化されうる。また、孔36の内径は棒状連結体10の外径よりもやや大きく形成されている。孔36の深さは、本実施の形態においては棒状連結体10の個々の締結用部品12の1個以上2個未満程度の深さに設定している。
【0022】
図示のように、孔36内に収容された棒状連結体10は、孔36のターンテーブル32の中心側とターンテーブル32の外側の2箇所に接触して支持されるように収容されている。棒状連結体10の孔36への収容をこのように同方向の同角度での傾斜にて行うことで、孔36に収容された棒状連結体10の溶接ガン20による棒状連結体10の保持動作の容易化が図られている。
【0023】
上記図3A~3Cに示した構成のターンテーブル32を用いた場合、溶接ガン20の挟持部(コレット)22の先端部のサイズによっては孔36の内部まで進入できないので、挟持部(コレット)22に挿入されて挟持される棒状連結体10の先端は締結用部品12が複数個分突出している状態となる場合がある。したがって、最先端の締結用部品12を的確に溶接するために、締結用部品12の先端の突出長さを調整するのが好適である。本実施の形態に係る装置では、溶接ガン20は棒状連結体10が挟持部22の先端から挿入された後、例えば突出している棒状連結体10の先端部分を被取付け部材40に一度押し付けること等により、棒状連結体10の先端部分の突出長さが、図2図4で示されているように、締結用部品12の1個分以下となるように調整される。
【0024】
上記のように最初の締結用部品12を適切な長さだけ露出させる棒状連結体頭出し工程は、図2および図3に示した構成および動作にて棒状連結体10の保持や挟持を行う場合、ロボットのマニピュレータの動作によって行われる。なお、安全性を確保した上で作業者が手動で棒状連結体頭出し工程を行うことも可能である。
【0025】
図4は、本発明の他の実施の形態に係る溶接ガン20の構成を示しており、本図に示した溶接ガン20の棒状連結体保持部21は、複数の棒状連結体10を同時に収容できるように棒状連結体収容室23が設けられている。棒状連結体収容室23の底部は中心に向かって低くなるようにすり鉢状の傾斜が付けられており、先の棒状連結体10が使用された時に、次の棒状連結体10が挟持部22側に円滑に滑り込んでいく構成となっている。本構成の溶接ガン20の場合、棒状連結体収容室23の上方に図示しない棒状連結体装填口が設けられており、この棒状連結体装填口から棒状連結体10を複数投入して棒状連結体収容室23内に収容させておくことができる。
【0026】
上記棒状連結体収容室23を用いた棒状連結体保持工程や棒状連結体挟持工程によれば、棒状連結体収容室23内に複数本の棒状連結体10を収容しておくことができ、より長期的、連続的な取付け作業が可能となる。
【0027】
次に、図4に示した様な棒状連結体収容室23に棒状連結体10を保持する形態を用いる場合の棒状連結体頭出し工程について説明する。
【0028】
溶接ガン20には、内部に装填または収容された棒状連結体10を挟持部22の先端方向へと送り出す機構が設けられており、送出しの動作について図を参照しながら詳細に説明する。
【0029】
図5Aおよび図5Bに示したように、本実施の形態による溶接ガン20には、棒状連結体10を挟持部22の先端へと送り出すための送り装置24および送り装置シフト機構28とが備えられている。
【0030】
本実施の形態による棒状連結体10の送り装置24は、棒状連結体10の脆弱部(縮径部)16に係止させる係止爪25を有し、係止爪25は係止爪ピン27を軸として回動可能に設けられている。また、係止爪25の外側には係止爪25の先端を脆弱部16に押し付ける方向に付勢する係止爪押付け用のスプリングとして弾性Oリング26が設けられている。上記構成の送り装置24は、送り装置シフト機構28によって挟持部22の先端方向と後端方向の双方へ移動される。送り装置シフト機構28は、ロボットのマニピュレータに送り装置24を移動可能に設けられており、直線アーム部28aとこれに固定された曲線アーム部28b、さらに曲線アーム部28bと送り装置24とを連結する連結部材28cを有している。この構成により、送り装置シフト機構28が送り装置24を前進、後進(図5Aにおいて右方向、左方向に移動)させることが可能となっている。
【0031】
係止爪25は、前進されるときにのみ棒状連結体10の脆弱部16に係止して棒状連結体10を溶接ガン20の先端側へ押し出すことができ、送り装置24が送り装置シフト機構28によって後進されるときには、係止爪25は回動しつつ棒状連結体10の脆弱部16に係止されることなく移動する。
【0032】
図5Aの左図においては、棒状連結体10は棒状連結体収容室23から挟持部22の方向に下りてきてはいるが、先端部は、挟持部(コレット)22の先端から突出していない状態にある。したがって、この状態から締結用部品12の取り付け作業を始めることのできる状態にする、すなわち棒状連結体頭出し工程を行う必要がある。ここで、図5Aの右図のように、棒状連結体10の脆弱部16に係止爪25を係止させた状態で、送り装置24を送り装置シフト機構28により、溶接ガン20の先端部方向へと移動(シフト)させることで、すなわち、必要な回数だけ係止前進と解除後進を繰り返すことで棒状連結体10の頭出しを行うことができる。
【0033】
なお、この送り装置シフト機構28による頭出しの動作は、図2に示した構成の棒状連結体収容室23の存在しない溶接ガン20の場合でも、棒状連結体10が中途で折損して留まっている場合など、状況によっては内部に収容された棒状連結体10を挟持部22の先端へと送り出す必要のある状況でも応用可能である。
【0034】
次に、溶接工程は、ロボットのマニピュレータがこれに固定された溶接ガン20の挟持部の先端に露出している棒状連結体10の最先端の締結用部品を被取付け部材40に近づけて、又は被取付け部材40が別のロボットに把持された状態で溶接ガン20の挟持部22に挟持された棒状連結体10の先端に近づいて、通電による溶接が行われる。例えば、(1)溶接ガン20の先端に露出している棒状連結体10の最先端の締結用部品12と被取付け部材40とを接触させる。(2)溶接ガン20(のコレット)と被取付け部材40とを通電状態とする。(3)溶接ガン20の最先端の締結用部品12を被取付け部材40からわずかに持ち上げる(離間させる)と、両者間に超高温のアークが発生し、被取付け部材40と締結用部品12とをそれぞれ部分的に溶融させる(溶融池の生成)。(4)通電を止め、被取付け部材40の溶融した箇所に溶接ガン20の最先端の締結用部品12を押し付け、溶融池が室温により冷え固まるまで保持し、両者が固定されて溶接が完了する。
【0035】
図6は溶接工程後の脆弱部露出工程を示しており、ロボットのマニピュレータの動作により、溶接ガン20を後退させている。すなわち、棒状連結体10が溶接ポイント42で溶接されている状態で、破線で示された溶接時の溶接ガン20の挟持部22の先端の位置から実線で示された位置まで溶接ガン20を矢印100方向に移動させるものである。これによって被取付け部材40に溶着された棒状連結体10の最先端の締結用部品12の直後に位置している次段の締結用部品12の先端が挟持部22の先端から露出され、すなわち、棒状連結体の最先端の締結用部品12と次段の締結用部品12との間の脆弱部16が挟持部22から露出される。
【0036】
図7は、脆弱部露出工程に続く分断工程を示しており、図示のように、本実施の形態では、同じくロボットのマニピュレータをプログラム制御などにより左右上下などいずれかの方向に傾斜させることにより、棒状連結体10最先端の締結用部品12と次段の締結用部品12との間に位置する脆弱部16に力を加えて動的に切断させている。
【0037】
また、図8はさらに他の分断工程の例を示しており、図示の様に、電源60により挟持部22と被取付け部材40との間に電圧を印加する構成となっている。なお、この構成は特別に付加する必要はなく、最先端の締結用部品12の溶接取付けに用いられる回路構成を用いることが可能である。そして、棒状連結体10最先端の締結用部品12の被取付け部材40に対する上記溶接工程に引き続き、挟持部22と被取付け部材40との間に所定の電圧を印加することにより、分断対象ポイントである棒状連結体10の最先端の締結用部品12と次段の締結用部品12との間に位置する脆弱部16を分断するものである。すなわち、露出している脆弱部16が他の通電部分に対してその断面積が小さくなっていることから、必要な電圧を印加することにより、この脆弱部16を発熱させ、熱的に溶断することで分断するものである。
【0038】
これら2つの種類の分断工程は、作業者が、仕上がり要求精度、作業環境、所要時間、コスト等を総合判断して、いずれか一方を実施するようあらかじめロボットに動作プログラムを入力して決定しておく。
【0039】
上記実施の形態に係る分断工程によれば、ロボットのマニピュレータの動作により、溶接取付けされた棒状連結体10最先端の締結用部品12の切り離しを特別な付加的な部材を用いて行う必要がなく、締結用部品12同士は脆弱部16において動的または熱的に切断される。これにより、分断工程の円滑化および迅速性が図られている。以上の各工程を、溶接ガン20を搭載したロボットが1つの被取付け部材40に対して必要回数だけ繰り返すことで、締結用部品12の取付け作業を終了することができる。
【0040】
そして上記の実施の形態に係る締結用部品取付け方法によれば、本発明の実施の形態に係る締結用部品取付け装置20を用い、本発明の一実施の形態による締結用部品の棒状連結体10を活用した、締結用部品の取付け作業が達成される。すなわち、複数の締結用部品12が棒状連結体10の最先端の締結用部品12から順に溶接取付けをスムーズに行うことができる。
【0041】
これにより、締結用部品12を締結用部品送給装置から締結用部品取付け装置20に個別に送給するためのホースが不要となり、ホースの存在が溶接作業の邪魔になったり、ホースの折れやねじれ等による締結用部品12の詰まりに起因する送給不良の発生が解消される。また、ホースによる送給に付随する作業も不要となる。
【0042】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は、上記の実施の形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲および明細書と図面に記載された技術的思想、すなわち本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0043】
例えば、棒状連結体10の送り機構として、チャッキング機構を用いることも可能である。具体的には、棒状連結体10を送り出す際にはチャッキングによって棒状連結体10の任意の箇所をクランプして押し出し、送り機構を戻す際にはチャックを拡げてクランプを解放して戻す、というピストン動作で行うことが可能である。この構成によれば、棒状連結体10の送り出しに際して係止爪25を用いる必要がなく、棒状連結体10の脆弱部16を縮径部として構成しない場合に好適な構成となる。
【0044】
なお、溶接ガン20に棒状連結体10の送り機構を設けることなく、溶接作業の姿勢(溶接ガン20や被取付け部材40の相対位置や相対角度)を工夫すること等により、挟持部22の先端への棒状連結体10の送り出しを実現することも可能である。
【符号の説明】
【0045】
10 棒状連結体
12 締結用部品
16 脆弱部
20 締結用部品取付け装置(溶接ガン)
21 棒状連結体保持部
22 挟持部(コレット)
23 棒状連結体収容室
24 送り装置
25 係止爪
26 弾性Oリング
27 係止爪ピン
28 送り装置シフト機構
29 ロボットマニピュレータ取付け部
30 棒状連結体供給装置
32 ターンテーブル
34 安全柵
36 孔
40 被取付け部材
42 溶接ポイント
60 電源
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8