(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047967
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】ADL能力推定システム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/11 20060101AFI20240401BHJP
G16H 50/30 20180101ALI20240401BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
A61B5/11
G16H50/30
A61B5/00 102A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153758
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】片岡 夏海
【テーマコード(参考)】
4C038
4C117
5L099
【Fターム(参考)】
4C038VA11
4C038VB01
4C038VB35
4C038VC20
4C117XB01
4C117XB02
4C117XC01
4C117XC40
4C117XD16
4C117XE52
4C117XQ11
4C117XR01
5L099AA15
(57)【要約】
【課題】ADL能力を推定することが可能なADL能力推定システムを提供する。
【解決手段】ドアの開閉動作時における転倒リスクと関係する開閉情報を検知するデータ処理部40と、開閉情報を用いて対象者のADL能力を推定する能力推定部60と、を具備し、開閉情報は、依存荷重、開閉動作時のドアの最大開度及びドアの開閉速度をそれぞれ含み、能力推定部60は、データ処理部40により検知された開閉情報を蓄積し、蓄積した開閉情報に基づいて、依存荷重の傾向、最大開度の傾向及び開閉速度の傾向を算出し、当該算出結果に基づいて対象者のADL能力を推定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアの開閉動作時における転倒リスクと関係する開閉情報を検知する検知部と、
前記開閉情報を用いて前記対象者のADL能力を推定する推定部と、
を具備する、
ADL能力推定システム。
【請求項2】
前記開閉情報は、
前記ドアに対する前記対象者の体重のかけ具合、前記開閉動作時の前記ドアの最大開度及び前記ドアの開閉速度の少なくともいずれかを含む、
請求項1に記載のADL能力推定システム。
【請求項3】
前記開閉情報は、
前記体重のかけ具合、前記最大開度及び前記開閉速度をそれぞれ含む、
請求項2に記載のADL能力推定システム。
【請求項4】
前記推定部は、
前記検知部により検知された前記開閉情報を蓄積し、
蓄積した前記開閉情報に基づいて、前記体重のかけ具合の傾向、前記最大開度の傾向及び前記開閉速度の傾向を算出し、当該算出結果に基づいて前記対象者のADL能力を推定する、
請求項3に記載のADL能力推定システム。
【請求項5】
前記ドアは、
開き戸及び引き戸を含み、
前記推定部は、
前記対象者が前記開き戸を押して開閉する第1パターン、前記開き戸を引いて開閉する第2パターン、及び前記引き戸を開閉する第3パターンに分けて前記開閉情報を蓄積し、
前記第1パターンから前記第3パターンの少なくともいずれかのパターンで前記体重のかけ具合が増加傾向にある場合、前記ADL能力が低下したと推定する、
請求項4に記載のADL能力推定システム。
【請求項6】
前記推定部は、
前記ADL能力の低下度合いを段階的に推定する、
請求項5に記載のADL能力推定システム。
【請求項7】
床部に作用する荷重を検知する足元荷重センサをさらに具備し、
前記推定部は、
前記足元荷重センサの検知結果に基づいて、前記開閉情報を蓄積するか否かを判定する、
請求項5又は請求項6に記載のADL能力推定システム。
【請求項8】
前記足元荷重センサの検知結果に基づいて前記対象者の体重を算出する算出部をさらに具備し、
前記推定部は、
前記体重の算出結果が所定の閾値以上である場合、前記開閉情報を蓄積しない、
請求項7に記載のADL能力推定システム。
【請求項9】
前記ドアに作用する荷重を検知するドア荷重センサをさらに具備し、
前記検知部は、
当該ドア荷重センサの検知結果に基づいて前記体重のかけ具合を検知し、
前記ドア荷重センサは、
前記ドアに前記対象者が体重をかけた際に、当該ドアの中で荷重がかかり易い高負荷部分に設けられる、
請求項1に記載のADL能力推定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアの開閉動作を利用して対象者のADL能力を推定するADL能力推定システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドアの開閉動作を利用して対象者の身体能力を推定するシステムの技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1に記載の体力測定システムは、ドアノブに設置された圧力センサを具備する。前記体力測定システムでは、対象者がドアノブを操作する際に当該ドアノブに加わる荷重を圧力センサで検知し、当該検知結果に基づいて対象者の握力を推定する。しかしながら対象者の握力のみでは、日常生活を送るために最低限必要な動作(ADL:Activities of Daily Living)の能力を推定することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、ADL能力を推定することが可能なADL能力推定システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、ドアの開閉動作時における転倒リスクと関係する開閉情報を検知する検知部と、前記開閉情報を用いて前記対象者のADL能力を推定する推定部と、を具備し、前記開閉情報は、前記ドアに対する前記対象者の体重のかけ具合、前記開閉動作時の前記ドアの最大開度及び前記ドアの開閉速度の少なくともいずれかを含むものである。
【0008】
請求項2においては、前記開閉情報は、前記ドアに対する前記対象者の体重のかけ具合、前記開閉動作時の前記ドアの最大開度及び前記ドアの開閉速度の少なくともいずれかを含むものである。
【0009】
請求項3においては、前記開閉情報は、前記体重のかけ具合、前記最大開度及び前記開閉速度をそれぞれ含むものである。
【0010】
請求項4においては、前記推定部は、前記検知部により検知された前記開閉情報を蓄積し、蓄積した前記開閉情報に基づいて、前記体重のかけ具合の傾向、前記最大開度の傾向及び前記開閉速度の傾向を算出し、当該算出結果に基づいて前記対象者のADL能力を推定するものである。
【0011】
請求項5においては、前記ドアは、開き戸及び引き戸を含み、前記推定部は、前記対象者が前記開き戸を押して開閉する第1パターン、前記開き戸を引いて開閉する第2パターン、及び前記引き戸を開閉する第3パターンに分けて前記開閉情報を蓄積し、前記第1パターンから前記第3パターンの少なくともいずれかのパターンで前記体重のかけ具合が増加傾向にある場合、前記ADL能力が低下したと推定するものである。
【0012】
請求項6においては、前記推定部は、前記ADL能力の低下度合いを段階的に推定するものである。
【0013】
請求項7においては、床部に作用する荷重を検知する足元荷重センサをさらに具備し、前記推定部は、前記足元荷重センサの検知結果に基づいて、前記開閉情報を蓄積するか否かを判定するものである。
【0014】
請求項8においては、前記足元荷重センサの検知結果に基づいて前記対象者の体重を算出する算出部をさらに具備し、前記推定部は、前記体重の算出結果が所定の閾値以上である場合、前記開閉情報を蓄積しないものである。
【0015】
請求項9においては、前記ドアに作用する荷重を検知するドア荷重センサをさらに具備し、前記検知部は、当該ドア荷重センサの検知結果に基づいて前記体重のかけ具合を検知し、前記ドア荷重センサは、前記ドアに前記対象者が体重をかけた際に、当該ドアの中で荷重がかかり易い高負荷部分に設けられるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0017】
請求項1においては、ADL能力を推定することができる。
【0018】
請求項2においては、体重のかけ具合、最大開度及び開閉速度の少なくともいずれかを考慮して、ADL能力を推定することができる。
【0019】
請求項3においては、体重のかけ具合、最大開度及び開閉速度をそれぞれ考慮して、ADL能力を推定することができる。
【0020】
請求項4においては、開閉情報の傾向に基づいて、ADL能力の変化を推定することができる。
【0021】
請求項5においては、開き戸及び引き戸の開閉動作における依存荷重を用いて、ADL能力の低下を推定することができる。
【0022】
請求項6においては、ADL能力の低下度合いを段階的に把握することができる。
【0023】
請求項7においては、適切な開閉情報を蓄積することができる。
【0024】
請求項8においては、ADL能力が必要以上に低く推定されるのを防止することができる。
【0025】
請求項9においては、ドアに作用する荷重を精度よく検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態に係るADL能力推定システムが設けられる居室を示す図。
【
図3】(a)開き戸に設置された各種センサを示す平面図。(b)同じく背面図。
【
図4】(a)引き戸に設置された各種センサを示す平面図。(b)同じく背面図。
【
図5】(a)開き戸の開き角度を検知する様子を示す平面図。(b)引き戸の開き幅を検知する様子を示す平面図。
【
図7】(a)対象者が開き戸を開き始める様子を示す平面図。(b)対象者が開口部を通過した様子を示す平面図。(c)対象者が向きを変える様子を示す平面図。(d)向きを変え終えた対象者を示す平面図。
【
図8】(a)対象者が開き戸を閉め始める様子を示す平面図。(b)対象者が開き戸を閉める最中の様子を示す平面図。(c)対象者が開き戸を閉め終えた様子を示す平面図。
【
図9】(a)対象者が開き戸の前を通過する様子を示す平面図。(b)対象者が開き戸を閉めずに通過する様子を示す平面図。
【
図11】(a)対象者が開き戸を開き始める様子を示す平面図。(b)対象者が開き戸を開く最中の様子を示す平面図。(c)対象者が開き戸を開き終えた様子を示す平面図。(d)対象者が開口部を通過する様子を示す平面図。
【
図12】(a)対象者が向きを変える様子を示す平面図。(b)対象者が開き戸を閉め始める様子を示す平面図。(c)対象者が開き戸を閉める最中の様子を示す平面図。(d)対象者が開き戸を閉め終えた様子を示す平面図。
【
図14】(a)対象者が引き戸を開き始める様子を示す平面図。(b)対象者が引き戸を開く最中の様子を示す平面図。(c)対象者が引き戸を開き終えた様子を示す平面図。
【
図15】(a)対象者が引き戸を閉め始める様子を示す平面図。(b)対象者が引き戸を閉める最中の様子を示す平面図。(c)対象者が引き戸を閉め終える様子を示す平面図。
【
図17】(a)対象者が対象者距離センサを通過する前の様子を示す側面図。(b)対象者が対象者距離センサを通過する最中の様子を示す側面図。(c)対象者が対象者距離センサを通過した後の様子を示す側面図。
【
図18】(a)足元荷重の検知結果の一例を示す図。(b)ドア荷重の検知結果の一例を示す図。
【
図20】推定処理のステップS610~S630を示すフローチャート。
【
図22】推定処理のステップS640~S690を示すフローチャート。
【
図23】同じく、ステップS740~S790を示すフローチャート。
【
図24】同じく、ステップS840~S890を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下の説明においては、対象者Tの進行方向を基準として、上下方向、左右方向及び前後方向をそれぞれ定義する。
【0028】
以下では、本発明の一実施形態に係るADL能力推定システム20について説明する。
【0029】
ADL能力推定システム20は、対象者TのADL能力(日常生活を送るために最低限必要な動作の能力)を推定するためのものである。ADL能力推定システム20は、例えば対象者Tが生活する場所に設けられる。本実施形態では、介護施設の居室1に設けられる。ADL能力推定システム20は、複数の対象者Tが居室1を行き来することを想定し、対象者TごとにADL能力を推定する。以下ではまず、居室1について簡単に説明する。
【0030】
図1に示すように、居室1は寝室2及びトイレ室3を具備する。寝室2にはベッド2a等が設けられる。トイレ室3にはトイレ3aが設置される。寝室2とトイレ室3とは側壁によって区画されており、対象者Tは側壁に形成された開口部4を介して寝室2とトイレ室3との間を行き来することができる。また対象者Tは、出入口5を介して居室1に出入りすることができる。これら開口部4及び出入口5には、それぞれドア10(
図3及び
図4参照)が設けられる。
【0031】
本実施形態では、開口部4及び出入口5に互いに異なる種類のドア10が設けられる。より詳細には、
図3に示す開き戸11及び
図4に示す引き戸12が設けられる。なお以下では、開口部4に引き戸12が設けられると共に出入口5に開き戸11が設けられるものとするが、開口部4及び出入口5に設置されるドア10の種類は特に限定されるものではない。例えばドア10の種類が本実施形態とは逆になっていてもよいし、開口部4及び出入口5にそれぞれ同じ種類のドア10が設けられてもよい。以下、開き戸11及び引き戸12の構成について簡単に説明する。
【0032】
図3に示す開き戸11は、板状の本体部11a、本体部11aと出入口5とを連結する蝶番11b、及び回動操作可能な取っ手11cを具備し、蝶番11bの軸部に対して本体部11aが回動可能に構成される。
図4に示す引き戸12は、板状の本体部12a、本体部12aの下端部に設けられた戸車12b及び本体部12aに固定された取っ手12cを具備する。引き戸12は、戸車12bがレール(不図示)上を転動することで、左右にスライド可能に構成される。
【0033】
ここで、対象者Tは、ドア10を開いて開口部4及び出入口5を通過すると、反対方向に向きを変えてドア10を閉めることとなる(
図7及び
図8参照)。この方向転換等により、対象者Tの重心が比較的大きく移動するため、対象者Tが高齢になる等して身体能力が低下した場合、ドア10の開閉動作時に転倒するリスクが増大する。こうした身体能力の低下は、ドア10の開閉動作に変化としてあらわれると考えられる。例えば、バランス能力の低下に伴って、対象者Tは転倒しないようにドア10の開閉を慎重に行うようになり、ドア10の開閉速度が遅くなると考えられる。また筋力の低下に伴って、対象者Tにとってドア10が重くなり、ドア10を大きく開くことが困難になると考えられる。
【0034】
そこで本実施形態のADL能力推定システム20は、ドア10の開閉動作と身体能力(転倒リスク)との関係を利用して対象者TのADL能力を推定する。これによって対象者Tを介護する介護者等は、例えば、対象者TのADL能力が比較的低いことを把握することができるため、転倒しないように注意を払って対象者Tを介護する等して転倒の発生の防止に努めることができる。以下、ADL能力推定システム20の構成について説明する。なお以下では、ADL能力推定システム20を「推定システム20」と称する。
【0035】
図2に示すように、推定システム20は、センサ部30、データ処理部40、個人特定部50、能力推定部60及び通知部70を具備する。
【0036】
センサ部30は、ドア10の開閉動作により生じる種々の情報を検知するためのものである。センサ部30は、ドア10及びドア10の周辺に設けられた各種センサによって構成される。具体的にはセンサ部30は、ドア荷重センサ31、開閉センサ32、角度センサ33、引き戸距離センサ34、足元荷重センサ35及び対象者距離センサ36によって構成される。
【0037】
ドア荷重センサ31は、対象者Tがドア10に体重をかけた際にドア10に作用する荷重を検知するためのものである。ドア荷重センサ31は、ドア10のうち、対象者Tがドア10に体重をかけた際に比較的荷重がかかり易い部分に設けられる。これによってドア10に作用する荷重を精度よく検知することができる。以下、開き戸11及び引き戸12に分けてドア荷重センサ31の設置場所の一例について説明する。
【0038】
まず開き戸11における設置場所について説明する。対象者Tは、
図3(b)に示す開き戸11に対して、取っ手11cを掴んだ状態で体重をかけると考えられる。この際取っ手11cには、略下方に荷重F11が作用すると考えられる。開き戸11の上部(例えば取っ手11cよりも高い部分)に設けられた蝶番11bは、当該荷重により斜め下に引っ張られることとなる。
【0039】
このように、上部の蝶番11bは、対象者Tが開き戸11に体重をかけた際に比較的荷重がかかり易いと考えられる。このため本実施形態のドア荷重センサ31は、開き戸11の上部の蝶番11bに設けられる。より具体的には、ドア荷重センサ31は、蝶番11bのうち、出入口5に固定される部分に設けられる(
図3(b)に示す符号P参照)。
【0040】
次に、引き戸12におけるドア荷重センサ31の設置場所について説明する。対象者Tは、開き戸11と同様に、
図4(b)に示す取っ手12cを掴んだ状態で引き戸12に体重をかけると考えられる。この取っ手12cの下方に設けられた戸車12bは、対象者Tの体重を受けることとなる(
図4(b)に示す荷重F12参照)。そこでドア荷重センサ31は、上記戸車12bと本体部12aとの間(
図4(b)に符号12dで示す部分)に設けられる。
【0041】
なおドア荷重センサ31の設置場所は、対象者Tがドア10に体重をかけた際にドア10に作用する荷重を検知できる場所であればよく、本実施形態に限定されるものではない。以下では、ドア荷重センサ31で検知された荷重を「ドア荷重」と称する。
【0042】
図2に示す開閉センサ32は、ドア10が開いているか否か、及び、ドア10の開閉方向を検知するためのものである。開閉センサ32は、例えばドア10の本体部11a・12aに設けられた磁石からの磁力を検知することで、ドア10が開いているか否かを検知することができる。また開閉センサ32は、本体部11a・12aの加速度の方向を検知することで、ドア10の開閉方向を検知することができる。なお、
図3以降の図面では、開閉センサ32の記載を省略している。
【0043】
図2及び
図5(a)に示す角度センサ33は、開き戸11の角度(開き角度θ11)を検知するためのものである。角度センサ33は、例えば蝶番11bに設けられる。当該角度センサ33は、蝶番11bの回動量を検知することで、開き角度θ11を検知可能に構成される。なお、
図5以降の図面では、ドア10(開き戸11及び引き戸12)を簡略化して記載している。また
図5以降の図面では、必要に応じてセンサの記載を省略している。
【0044】
図2、
図4及び
図5(b)に示す引き戸距離センサ34は、引き戸12の開き幅D12を検知するためのものである。引き戸距離センサ34は、例えば開口部4に固定された第1固定部34aと、引き戸12の本体部12aに固定された第2固定部34bとの間の距離を測定することによって、開き幅D12を検知することができる。
【0045】
図2から
図4に示す足元荷重センサ35は、ドア10付近において床部6に作用する荷重を検知するためのものである。足元荷重センサ35は、平面視において、開口部4及び出入口5の前方から後方までに亘るように設けられる。これによって足元荷重センサ35は、開口部4及び出入口5を通過する対象者Tの足から床部6に作用する荷重を検知することができる。以下では足元荷重センサ35で検知された荷重(対象者Tからの荷重)を「足元荷重」と称する。
【0046】
図2、
図3(b)及び
図4(b)対象者距離センサ36は、対象者Tまでの上下方向の距離を検知するためのものである。対象者距離センサ36は、開口部4及び出入口5の上端部近傍にそれぞれ設けられる。対象者距離センサ36は、例えば下方に向けて赤外線を照射可能に構成される。対象者距離センサ36は、対象者Tにあたって反射した赤外線を受光することによって、対象者Tまでの距離D36(
図17(b)参照)を検知することができる。なお対象者距離センサ36は赤外線を照射するものに限定されるものではなく、例えば赤外線とは異なるセンサ(超音波センサ等)で構成されてもよい。
【0047】
図2に示すデータ処理部40は、センサ部30で検知された各種データに対して演算処理を行うための部分である。データ処理部40は、センサ部30から検知結果を取得可能に構成される。データ処理部40は、当該検知結果に対して演算処理を行うことにより、種々の情報を算出することができる。例えばデータ処理部40は、ドア10に対する対象者Tの体重のかけ具合(以下、「依存荷重」と称する)、開閉動作時のドア10の最大開度、ドア10の開閉速度、対象者Tの身長及び対象者Tの体重を算出することができる。なお、依存荷重等を算出する処理については後述する。
【0048】
個人特定部50は、データ処理部40で算出された情報に基づいて、個人(対象者T)を特定するためのものである。なお個人特定部50による処理については後述する。
【0049】
能力推定部60は、個人特定部50で特定された対象者TのADL能力を推定するためのものである。能力推定部60は、データ処理部40で算出された依存荷重等を蓄積可能に構成される。より詳細には能力推定部60は、依存荷重等を対象者Tごとに記憶するように構成される。また能力推定部60は、蓄積した依存荷重等に基づいて、ADL能力を推定可能に構成される。なお、開閉情報を蓄積する処理及びADL能力を推定する処理については後述する。
【0050】
通知部70は、能力推定部60で推定されたADL能力を通知するためのものである。通知部70は、例えば外部の機器と通信することによって、ADL能力を通知可能に構成される。例えば通知部70は、介護者の所有する携帯端末(スマートフォン等)にADL能力に関するメッセージを表示させることにより、ADL能力を通知することができる。なお、通知部70による通知の手段は、特に限定されるものではない。
【0051】
以下では、センサ部30により各種情報(ドア荷重等)を検知するための処理について説明する。
【0052】
ここで、ドア10の開閉動作は、ドア10の種類及び開き方によって異なるものとなる。例えば開き戸11と引き戸12では、開閉方向が互いに異なる。また、開き戸11を押して開ける場合、引いて開ける場合よりも近い位置で対象者Tが取っ手11cを操作すると考えられる。
【0053】
本実施形態では、こうしたドア10の種類及び開き方に応じてセンサ部30が制御され、各種情報が検知される。具体的には、対象者Tが開き戸11を押して開閉する場合の第1検知処理と、対象者Tが開き戸11を引いて開閉する場合の第2検知処理と、対象者Tが引き戸12を開閉する場合の第3検知処理とにより、各種情報が検知される。第1検知処理から第3検知処理は、センサ部30を制御可能な所定の機器により実行される。以下ではデータ処理部40がセンサ部30を制御するものとして、第1検知処理から第3検知処理の内容を説明する。
【0054】
まず
図6から
図9を参照し、第1検知処理について説明する。データ処理部40は、対象者Tが開き戸11を押して開閉すると考えられる場合に第1検知処理を開始する。例えば
図7(a)に示す出入口5の後方に設けられた人感センサが人を検知した場合に、データ処理部40は第1検知処理を開始する。
【0055】
対象者Tは、開き戸11を押して開閉する場合に開き戸11間際まで移動して取っ手11cを操作すると考えられる(
図7(a)参照)。このためデータ処理部40は
図6に示すように、第1検知処理を開始するとステップS110へ移行し、足元荷重センサ35が足元荷重を検知した場合にステップS120へ移行する。
【0056】
ステップS120においてデータ処理部40は、開閉センサ32により開き戸11が開いたことが検知されたか否かを判定する。データ処理部40は、開き戸11が開いたことが検知された場合(ステップS120:Yes)、ステップS140へ移行する。一方データ処理部40は、開き戸11が開いたことが検知されない場合(ステップS120:No)、ステップS130へ移行する。
【0057】
ステップS130においてデータ処理部40は、一定時間以上ドア10が開いたことが検知されていないかを確認する。例えばデータ処理部40は、ステップS110からステップS120へ移行してから経過した時間(経過時間)が一定時間未満である場合(ステップS130:No)、ステップS120へ移行する。一方データ処理部40は、経過時間が一定時間以上である場合(ステップS130:Yes)、第1検知処理を終了する。これによって、
図9(a)に示すように、対象者Tが側壁に沿って開き戸11の傍を通過した場合に、誤って角度センサ33及びドア荷重センサ31の検知が開始されるのを防止することができる。
【0058】
図6に示すように、ステップS140においてデータ処理部40は、開き戸11の開き角度θ11及びドア荷重の検知を開始するように、角度センサ33及びドア荷重センサ31を制御する。こうしてデータ処理部40は、対象者Tが開き戸11を押して開ける場合の開き角度θ11及びドア荷重の検知結果の記憶を開始する。データ処理部40は、ステップS140の処理が終了すると、ステップS150へ移行する。
【0059】
ステップS150においてデータ処理部40は、開閉センサ32により閉める方向の操作が検知されたか否かを判定する。データ処理部40は、閉める方向の操作が検知された場合(ステップS150:Yes)、ステップS180へ移行する。一方データ処理部40は、閉める方向の操作が検知されない場合(ステップS150:No)、ステップS160へ移行する。
【0060】
ステップS160においてデータ処理部40は、一定時間以上閉める方向の操作が検知されていないかを判定する。例えばデータ処理部40は、ステップS140からステップS150へ移行してから経過した時間(経過時間)が一定時間未満である場合(ステップS160:No)、ステップS150へ移行する。一方データ処理部40は、経過時間が一定時間以上である場合(ステップS160:Yes)、ステップS170へ移行する。
【0061】
ステップS170においてデータ処理部40は、ステップS160と同様の処理により、ステップS120以降において一定時間以上足元荷重が検知されていないかを判定する。データ処理部40は、一定時間以上足元荷重が検知されていないと判定した場合(ステップS170:Yes)、開き角度θ11及びドア荷重の検知を終了するように角度センサ33及びドア荷重センサ31を制御する。こうしてデータ処理部40は、対象者Tが開き戸11を押して開ける場合の開き角度θ11等の検知結果の記憶を終了し、第1検知処理を終了する。一方データ処理部40は、それ以外の場合に(ステップS170:No)、再びステップS170へ移行する。
【0062】
ステップS160・S170の処理によってデータ処理部40は、
図9(b)に示すように、対象者Tが開き戸11を開けたまま出入口5を通過した場合でも、開き角度θ11等の検知を適切に終了することができる。
【0063】
図6に示すように、開き戸11を閉める操作が検知された場合に移行するステップS180においてデータ処理部40は、対象者Tが開き戸11を押して開ける場合の開き角度θ11等の検知結果の記憶を完了する。その後データ処理部40は、対象者Tが開き戸11を押して閉じる場合の開き角度θ11等の検知結果の記憶を開始する。データ処理部40は、ステップS180の処理が終了すると、ステップS190へ移行する。
【0064】
ステップS190においてデータ処理部40は、開閉センサ32による閉める方向の操作の検知が終了した場合にステップS200へ移行する。
【0065】
ステップS200においてデータ処理部40は、足元荷重センサ35で足元荷重が検知されなくなった場合に、開き角度θ11等の検知を終了するように角度センサ33等を制御する。こうしてデータ処理部40は、対象者Tが開き戸11を押して閉じる場合の開き角度θ11等の検知結果の記憶を完了し、第1検知処理を終了する。
【0066】
以下では、第1検知処理の具体例を説明する。
【0067】
図7(a)に示すように、対象者Tは開き戸11を押して開閉する場合、まず開き戸11の間際まで移動する。足元荷重センサ35は、当該対象者Tからの足元荷重を検知する(
図6に示すステップS110:Yes)。
【0068】
図7(a)に示す対象者Tが開き戸11を開き始めることにより(
図6に示すステップS120:Yes)、開き角度θ11及びドア荷重の検知が開始される(ステップS140)。
図7(b)に示すように、開き戸11を開いた対象者Tは、出入口5を通過する。そして対象者Tは、
図7(c)、
図7(d)及び
図8(a)に示すように、開き戸11を閉めるために方向転換する。
【0069】
図8(a)に示す対象者Tが開き戸11を閉め始めた場合(
図6に示すステップS150:Yes)、開き戸11を開く場合の開き角度θ11等の検知結果の記憶が完了し、開き戸11を閉める場合の開き角度θ11等の検知結果の記憶が開始される(ステップS180)。
【0070】
図8(b)及び
図8(c)に示すように、対象者Tが開き戸11を閉め終えて(
図6に示すステップS190:Yes)、開き戸11から離れると(ステップS200:Yes)、開き戸11を閉める場合の開き角度θ11等の検知結果の記憶が完了する。
【0071】
このように、データ処理部40が第1検知処理を実行することによって、対象者Tが開き戸11を押して開ける場合と閉める場合とに分けて、開き角度θ11及びドア荷重を検知することができる。また開閉センサ32の検知結果に基づいて(ステップS120・S150・S190)、開き戸11を開く場合及び閉める場合でタイミングよく開き角度θ11等を検知することができる。
【0072】
また対象者Tにセンサを装着することなく、ADL能力の推定に必要な情報を検知することができる。これによって対象者Tへの負担が増加するのを防止することができる。
【0073】
以下では
図10から
図12を参照し、対象者Tが開き戸11を引いて開閉する場合に開き角度θ11及びドア荷重を検知する第2検知処理について説明する。データ処理部40は、第1検知処理と同様に、対象者Tが開き戸11を引いて開閉すると考えられる場合に第2検知処理を開始する。
【0074】
ここで、
図6に示す第1検知処理では、開閉センサ32、足元荷重センサ35の順に判定処理(ステップS110・S120)を行うものとしたが、
図10に示す第2検知処理では、この判定処理の順番が逆になっている。すなわち第2検知処理では、足元荷重センサ35、開閉センサ32の順に判定処理(ステップS210・S230)を行う。その後の処理については第1検知処理と同様であるため、以下では第1検知処理と共通する処理(ステップ)については第1検知処理と同一の符号を付して説明を省略する。
【0075】
対象者Tは、開き戸11を引いて開閉する場合に開き戸11に対して比較的距離を取った状態で取っ手11cを操作すると考えられる(
図11(a)参照)。このためデータ処理部40は、
図10に示すように、第2検知処理を開始するとステップS210へ移行し、開閉センサ32により開き戸11が開いたことが検知された場合にステップS220へ移行する。
【0076】
ステップS220においてデータ処理部40は、開き戸11の開き角度θ11及びドア荷重の検知を開始するように、角度センサ33及びドア荷重センサ31を制御する。データ処理部40は、ステップS220の処理が終了すると、ステップS230へ移行する。
【0077】
ステップS230においてデータ処理部40は、足元荷重センサ35により足元荷重が検知されたか否かを判定する。データ処理部40は、足元荷重が検知された場合(ステップS230:Yes)、ステップS240へ移行する。
【0078】
一方データ処理部40は、足元荷重が検知されない場合(ステップS230:No)、開き角度θ11等の検知を終了するように角度センサ33等を制御し、第2検知処理を終了する。またデータ処理部40は、当該検知結果を破棄する。これによってデータ処理部40は、風等で開き戸11が勝手に開いた場合に、誤って開き角度θ11等の検知結果が蓄積されるのを防止することができる。
【0079】
ステップS240においてデータ処理部40は、開き角度θ11及びドア荷重の検知を継続させ、その後ステップS150へ移行する。
【0080】
以下では、第2検知処理の具体例を説明する。
【0081】
図11(a)に示すように、対象者Tは開き戸11に対して比較的距離を取った状態で、開き戸11を開き始める(
図10に示すステップS210:Yes)。これによって開き角度θ11及びドア荷重の検知が開始される(ステップS220)。
【0082】
図11(b)から
図11(d)に示すように、開き戸11を開いた対象者Tは、出入口5付近へ移動する。足元荷重センサ35は、当該対象者Tからの足元荷重を検知する(
図10に示すステップS230)。
【0083】
図12(a)及び
図12(b)に示すように、出入口5付近まで移動した対象者Tは、開き戸11を閉めるために方向転換する。
図12(b)に示す対象者Tが開き戸11を閉め始めた場合(
図10に示すステップS150:Yes)、開き戸11を開く場合の開き角度θ11等の検知結果の記憶が完了し、開き戸11を閉める場合の開き角度θ11等の検知結果の記憶が開始される(ステップS180)。
【0084】
図12(c)及び
図12(d)に示すように、対象者Tが開き戸11を閉め終えて(
図10に示すステップS190:Yes)、開き戸11から離れると(ステップS200:No)、開き戸11を閉める場合の開き角度θ11等の検知が完了する。
【0085】
このように、データ処理部40は第2検知処理を実行することによって、対象者Tが開き戸11を引いて開ける場合と閉める場合とに分けて、開き角度θ11及びドア荷重をタイミングよく検知することができる。
【0086】
以下では
図13から
図15を参照し、対象者Tが引き戸12を開閉する場合に開き角度θ11及びドア荷重を検知する第3検知処理について説明する。データ処理部40は、第1検知処理と同様に、対象者Tが引き戸12を開閉すると考えられる場合に第3検知処理を開始する。
【0087】
なお
図13に示す第3検知処理は、
図6に示す第1検知処理と概ね同様のフローとなっている。より詳細には第3検知処理は、開き戸11の開き角度θ11の検知を、引き戸12の開き幅D12の検知に置き換えた処理となっている。
図13では、この検知対象が異なる処理にのみ、第1検知対象とは異なる符号(ステップS340・S380)を付している。その他の処理については第1検知処理と同様であるため、第3検知処理の説明は省略する。
【0088】
以下では、第3検知処理の具体例を説明する。
【0089】
図14(a)に示すように、対象者Tは引き戸12を開閉する場合、まず引き戸12の間際まで移動する。足元荷重センサ35は、当該対象者Tからの足元荷重を検知する(
図13に示すステップS110:Yes)。
【0090】
図14(a)に示す対象者Tが引き戸12を開き始めることにより(
図13に示すステップS120:Yes)、ステップS340において開き幅D12及びドア荷重の検知が開始される(ステップS340)。
図14(b)及び
図14(c)に示すように、引き戸12を開いた対象者Tは、開口部4を通過する。そして対象者Tは、
図14(c)及び
図15(a)に示すように、開き戸11を閉めるために方向転換する。
【0091】
図15(a)に示す対象者Tが引き戸12を閉め始めた場合(
図13に示すステップS150:Yes)、引き戸12を開く場合の開き幅D12等の検知結果の記憶が完了し、引き戸12を閉める場合の開き幅D12等の検知結果の記憶が開始される(ステップS380)。
【0092】
図15(b)及び
図15(c)に示すように、対象者Tが引き戸12を閉め終えて(
図13に示すステップS190:Yes)、引き戸12から離れると(ステップS200:Yes)、引き戸12を閉める場合の開き幅D12等の検知が完了する。
【0093】
このように、データ処理部40は第3検知処理を実行することによって、対象者Tが引き戸12を開ける場合と閉める場合とに分けて、開き幅D12及びドア荷重をタイミングよく検知することができる。
【0094】
以下では、
図16から
図19を参照し、第1検知処理から第3検知処理で検知された開き角度θ11等を蓄積するための蓄積処理について説明する。
【0095】
なお
図16に示す蓄積処理は、第1検知処理から第3検知処理と並行して実行される。蓄積処理が開始されると、データ処理部40はステップS410へ移行し、足元荷重により足元荷重が検知される場合にステップS420へ移行する。
【0096】
ステップS420においてデータ処理部40は、対象者Tの体重を検知するために、一定期間足元荷重を取得(記憶)する。これによってデータ処理部40は、例えば
図18(a)に示すような時間と足元荷重との関係を取得することができる。
図16に示すように、ステップS420の処理が終了すると、データ処理部40はステップS430へ移行する。
【0097】
ステップS430においてデータ処理部40は、対象者Tが対象者距離センサ36の下方を通過したか否かを判定する。以下、判定の一例について説明する。上述の如く対象者距離センサ36は、下方に向けて照射した赤外線に基づいて距離を検知する。よって対象者距離センサ36の検知結果は、
図17に示す対象者Tが対象者距離センサ36の下方を通過する際に一時的に小さくなる。データ処理部40はこうした検知結果の変化があったか否かを判定することで、対象者Tが対象者距離センサ36の下方を通過したか否かを判定することができる。
【0098】
図16に示すように、ステップS430においてデータ処理部40は、対象者Tが対象者距離センサ36の下方を通過したと判定する場合(ステップS430:Yes)、ステップS440へ移行する。一方、データ処理部40は、対象者Tが対象者距離センサ36の下方を通過したと判定しない場合(ステップS430:No)、再びステップS430へ移行する。
【0099】
ステップS440においてデータ処理部40は、対象者距離センサ36の検知結果に基づいて対象者Tの身長を特定する。例えばデータ処理部40は、
図17(b)に示すドア10の高さH10に対して、対象者距離センサ36から対象者Tの頭部までの距離D36を減算することで、対象者Tの身長を特定する。なお前記距離D36は、例えば対象者Tが対象者距離センサ36の下方を通過する際の、当該対象者距離センサ36の検知結果に基づいて算出可能である。
図16に示すように、ステップS440の処理が終了すると、データ処理部40はステップS450へ移行する。
【0100】
ステップS450においてデータ処理部40は、ドア10の開閉動作が終了したか否かを判定する。例えばデータ処理部40は、蓄積処理と並行して実行される第1検知処理から第3検知処理が終了した場合にドア10の開閉動作が終了したと判定し(ステップS450:Yes)、ステップS460へ移行する。一方データ処理部40は、ドア10の開閉動作が終了していないと判定する場合(ステップS450:No)、ステップSS450へ再び移行する。
【0101】
図16及び
図18(a)に示すように、ステップS460においてデータ処理部40は、対象者Tの体重を特定する。より詳細には、対象者Tがドア10に体重をかけると、足元荷重が減少すると考えられる。そこで、データ処理部40は、ステップS420で取得された足元荷重の最大値Mを算出することで、対象者Tの体重を特定する。これによってデータ処理部40は、ドア10に体重をかけていない対象者Tからの足元荷重に基づいて、対象者Tの体重を取得することができる。またデータ処理部40は、荷物を含む対象者Tの体重を取得することができる。ステップS460の処理が終了すると、データ処理部40はステップS470へ移行する。
【0102】
ステップS470においてデータ処理部40は、第1検知処理から第3検知処理で検知された開き角度θ11及び開き幅D12に基づいて、ドア10の最大開度を算出する。
【0103】
より詳細には第1検知処理では、開き戸11を押して開ける場合と閉める場合とに分けて開き角度θ11が記憶される。ステップS470においてデータ処理部40は、この2つの場合のうち、開き戸11を開ける場合における開き角度θ11の最大値を抽出する。またデータ処理部40は、開き戸11を引いて開閉する場合(第2検知処理)も同様に、開き戸11を引いて開ける場合における開き角度θ11の最大値を抽出する。またデータ検知部は、引き戸12を開閉する場合(第3検知処理)も同様に、引き戸12を開ける場合における開き幅D12の最大値を抽出する。
【0104】
なお対象者Tは、必ずしも開いたドア10を完全に閉じるとは限らないため、ステップS470においてデータ処理部40は、ドア10の閉じ幅も算出する。例えばデータ処理部40は、開き戸11を押して閉じる場合における開き角度θ11の最大値から最小値を減算することで、閉じ幅を算出する。データ処理部40は、その他の場合(開き戸11を引いて閉じる場合、及び引き戸12を閉じる場合)についても同様に、閉じ幅を算出する。
【0105】
またステップS470においてデータ処理部40は、ドア10の開閉速度及び依存荷重も算出する。この際データ処理部40は、最大開度を算出する場合と同様に、ドア10の種類及び開き方に応じて(開き戸11を押して開ける場合と閉める場合等に分けて)開閉速度及び依存荷重をそれぞれ算出する。以下、開閉速度及び依存荷重の算出手順の一例について説明する。
【0106】
データ処理部40は、開き角度θ11の最大値を用いた以下の数1により、開き戸11を開閉する場合の開閉速度を算出する。
(ドア幅W11×2×π×開き角度θ11の最大値/360°)/所要時間・・・数1
【0107】
なお上記数1におけるドア幅W11は、開き戸11の左右幅である(
図3(b)参照)。また上記数1における所要時間は、開き戸11を開くのにかかった時間、又は、閉めるのにかかった時間である。データ処理部40は上記数1を用いることにより、開き戸11を開く場合の開閉速度(平均速度)と、開き戸11を閉める際の開閉速度とをそれぞれ算出する。
【0108】
またデータ処理部40は、引き戸12の開き幅D12の最大値を、引き戸12を開くのにかかった時間で除算することで、引き戸12を開く場合の開閉速度を算出する。またデータ処理部40は、引き戸12を閉じる場合の開閉速度を、開く場合と同様の処理によって算出する。
【0109】
またデータ処理部40は、ドア荷重センサ31の検知結果(ドア荷重)に基づいて依存荷重を算出する。以下、
図18(b)に示すドア荷重の検知結果の一例を用いて説明する。ドア荷重センサ31は、対象者Tがドア10に体重をかけていなくても、ドア10の重量に応じた荷重K10を検知する(
図18(b)に示す範囲R1参照)。また、対象者Tがドア10に体重をかけた場合、ドア荷重センサ31は、上記荷重K10に加えて、対象者Tの体重(荷重)も検知する(
図18(b)に示す範囲R2参照)。そこでデータ処理部40は、ドア荷重が前記荷重K10を超えた範囲Rの面積(積分値)を求めることで、依存荷重を算出する。
図16に示すように、ステップS470の処理が終了すると、個人特定部50によりステップS480の処理が行われる。
【0110】
ステップS480において個人特定部50は、ステップS440・S460・S470で得られた対象者Tの身長、対象者Tの体重及び最大開度に基づいて個人を特定する。以下、その一例について説明する。
【0111】
個人特定部50は、対象者Tの特徴を予め記憶している。例えば個人特定部50は、身長、体重及び最大開度の傾向を予め記憶している。なお最大開度の傾向は、対象者Tがドア10を開閉する際に、毎回どの程度までドア10を開いているのかを判断可能なものである。
図19には最大開度の傾向の一例が示される。
図19に示す最大開度の傾向は、ある対象者Tの最大開度の過去の算出結果が時系列に並べられたグラフとなっている。
【0112】
ステップS480において個人特定部50は、例えば身長及び体重を中心に個人を特定することができる。より詳細には個人特定部50は、ステップS430・S460で算出された身長及び体重で個人の絞り込みを行い、その中から最大開度の傾向が近い1の個人を抽出することで、個人を特定する。こうして最大開度の傾向を補足的に用いることで、個人を精度よく特定することができる。なお、個人特定部50で個人を特定するための手順は、本実施形態に限定されるものではない。
図16に示すステップS480の処理が終了すると、能力推定部60によりステップS490の処理が行われる。
【0113】
ステップS490において能力推定部60は、ステップS460で特定された対象者Tの体重が、予め記憶される対象者Tの体重よりも所定以上増加しているか否かを判定する。本実施形態では能力推定部60は、対象者Tの体重が1kg以上増加しているか否かを判定する。能力推定部60は、対象者Tの体重が増加していると判定した場合にステップS500へ移行し、各種データ(第1検知処理から第3検知処理で検知された開き角度θ11等の検知結果等)を消去する。
【0114】
一方能力推定部60は、ステップS490において対象者Tの体重が増加していないと判定した場合にステップS510へ移行し、ステップS470で算出した最大開度等のデータを蓄積する。この際能力推定部60は、ステップS480で特定した個人ごとにデータを蓄積する。また能力推定部60は、ドア10の種類等に分けて(開き戸11を押して開ける場合と閉める場合等に分けて)データを蓄積する。
【0115】
能力推定部60は、ステップS490において対象者Tの体重を確認することで、後述するADL能力の推定を精度よく行うことができる。具体的には、対象者Tが重い荷物を持った状態でドア10を開閉する場合、通常よりもドア10の開き角度θ11が小さくなったり、開閉速度が低下したりすると考えられる。また荷物を持っていなくても、対象者TのADL能力が低下すると、開き角度θ11が小さくなったり、開閉速度が低下したりすると考えられる。
【0116】
このように、開き角度θ11や開閉速度が変化する要因には、ADL能力の変化によるものと、それ以外の要因によるものとが含まれる。そこで能力推定部60は、ステップS460で荷物を含む対象者Tの体重を特定し、ステップS490でその体重を確認することで、荷物の影響(ADL能力の変化以外の要因)で開き角度θ11等が低下した可能性がある検知結果を除外する。これによってADL能力が必要以上に低く推定されるのを防止することができるため、ADL能力の推定を精度よく行うことができる。
【0117】
なお、本実施形態では、荷物の影響を受けた可能性がある検知結果を除外するものとしたが、検知結果を除外する除外条件は、荷物に関する条件に限定されるものではない。除外条件は、ADL能力の変化以外の要因で開き角度θ11等の検知結果に影響を与える種々の条件を含むことができる。例えば、対象者Tの身長が所定以上変化した(例えば低かった)場合等に、検知結果を消去(除外)してもよい。
【0118】
本実施形態では、
図16に示す蓄積処理が常時実行される。能力推定部60は、蓄積処理によりある程度(例えば1か月)データが蓄積された場合に、当該データを用いてADL能力を推定する。
【0119】
以下では
図20から
図24を参照し、ADL能力を推定する推定処理の一例について説明する。能力推定部60は、推定処理を開始すると、
図20に示すステップS610へ移行する。
【0120】
ステップS610において能力推定部60は、依存荷重が増加傾向にあるか否かを判定する。より詳細には、対象者Tは、ドア10に依存した状態(体重をかけた状態)で転倒する傾向があると考えられる。また対象者Tの身体能力が低下した場合、ドア10の開閉時に対象者Tがドア10に寄りかかり易くなり、依存荷重が増加すると考えられる。
【0121】
このように、依存荷重は、
図16に示す蓄積処理で蓄積した最大開度、開閉速度及び依存荷重の中で、比較的身体能力の低下(転倒リスク)と関連性が高いと考えられる。そこで能力推定部60は推定処理において、依存荷重についての判定を最大開度及び開閉速度よりも優先して実行する。以下、
図21を用いて判定処理の一例を説明する。
【0122】
図21には、依存荷重の傾向の一例が示される。
図21に示す依存荷重の傾向は、ある対象者Tについての依存荷重(蓄積されたデータ)を、横軸が測定期間(時間)、縦軸が依存荷重の座標上にプロットしたものである。能力推定部60は、例えば
図21にプロットされた依存荷重が右肩上がりにあると判定した場合に、依存荷重が増加傾向にあると判定する。
【0123】
また、
図20に示すステップS610において能力推定部60は、開き戸11の種類及び開け方に応じて蓄積された依存荷重のそれぞれで、上述したような依存荷重の判定を行う。具体的には能力推定部60は、開き戸11を押して開ける場合、開き戸11を押して閉める場合、開き戸11を引いて開ける場合、開き戸11を引いて閉める場合、引き戸12を開ける場合及び引き戸12を閉める場合のそれぞれで、依存荷重の判定を行う。
【0124】
そして能力推定部60は、少なくとも1つのパターンで依存荷重が増加傾向にあると判定した場合(
図20に示すステップS610:Yes)、ステップS630へ移行する。一方能力推定部60は、全てのパターンで依存荷重が増加傾向にないと判定した場合(ステップS610:No)、ステップS620へ移行する。
【0125】
図20に示すステップS620において能力推定部60は、対象者Tの依存荷重が増加傾向にないため、ADL能力が少なくとも低下していることはないと推定する。本実施形態では能力推定部60は、ADL能力が維持されていると推定し、通知部70による通知を行うことなく推定処理を終了する。
【0126】
ステップS630において能力推定部60は、依存荷重が増加傾向にあるのがどのパターンであるのかを判定する。能力推定部60は、開き戸11を押して開ける場合又は閉める場合の依存荷重が増加傾向にあると判定した場合、
図22に示すステップS640へ移行する。能力推定部60は、開き戸11を引いて開ける場合又は閉める場合の依存荷重が増加傾向にあると判定した場合、
図23に示すステップS740へ移行する。能力推定部60は、引き戸12を開ける場合又は閉める場合の依存荷重が増加傾向にあると判定した場合、
図24に示すステップS840へ移行する。
【0127】
なお能力推定部60は、複数のパターンで依存荷重が増加傾向にあると判定した場合、該当するパターンに応じた処理を適宜実行することができる。例えば能力推定部60は、開き戸11を押して開ける場合、及び開き戸11を引いて開ける場合の依存荷重がそれぞれ増加傾向にあると判定した場合、
図22に示す処理と、
図23に示す処理とを並列して実行してもよい。また能力推定部60は、並列処理を行うのではなく、依存荷重が増加傾向にある複数のパターンの中で、最も顕著に依存荷重が増加した1つのパターンに応じた処理を実行してもよい。
【0128】
能力推定部60は、開き戸11を押して開閉する場合の依存荷重が増加傾向にある場合に移行する
図22のステップS640~S690において、筋力の低下レベルを推定する。より詳細には、開き戸11を押して開閉するためには、ある程度筋力が必要になると考えられる。よって筋力が低下した場合、対象者Tにとってドア10が重くなり、バランスを崩して転倒するリスクが増大する。
【0129】
こうした筋力の低下は、開き戸11を押して開閉する場合の開閉速度の低下、及び開き角度θ11の減少にあらわれると考えられる。そこで能力推定部60は、開き戸11を押して開閉する場合の依存荷重が増加傾向にある場合、ステップS640~S690の処理によって開閉速度等を評価し、筋力の低下レベルを段階的に推定する。以下処理内容を説明する。
【0130】
図22に示すステップS640において能力推定部60は、開き戸11を押して開閉する場合の開き角度θ11の最大値が減少傾向にあるか否かを判定する。また能力推定部60は、ステップS640から移行するステップS650・S660において、開き戸11を押して開閉する場合の開閉速度が低下傾向にあるか否かを判定する。
【0131】
能力推定部60は、ステップS640~S660において、開き角度θ11の最大値及び開閉速度がそれぞれ低下傾向にないと判定した場合、ステップS670へ移行する。ステップS670において能力推定部60は、筋力の低下レベルが1であると推定する。なお本実施形態では、低下レベルの数字が大きいほど、ALD能力(ステップS670~S690では筋力)の低下度合いが大きいことを示している。すなわち能力推定部60はステップS670において、依存荷重が増加傾向にあるものの、その他の数値(開き角度θ11の最大値等)に懸念すべき点がないため、筋力の低下が軽微であると推定する。ステップS670において能力推定部60は、こうして推定した低下レベルを通知するように通知部70を制御し、推定処理を終了する。
【0132】
能力推定部60はステップS640~S660において、開き角度θ11の最大値及び開閉速度のいずれか一方が低下傾向にあると判定した場合、ステップS680へ移行する。ステップS680において能力推定部60は、筋力の低下レベルが2であると推定する。ステップS680において能力推定部60は、推定した低下レベルを通知するように通知部70を制御し、推定処理を終了する。
【0133】
能力推定部60はステップS640~S660において、開き角度θ11の最大値及び開閉速度がそれぞれ低下傾向にあると判定した場合、ステップS690へ移行する。ステップS690において能力推定部60は、筋力の低下レベルが3であると推定する。ステップS690において能力推定部60は、推定した低下レベルを通知するように通知部70を制御し、推定処理を終了する。
【0134】
能力推定部60は、上記ステップS640~S690の処理を実行することで、筋力の低下と関係性があると考えられる複数の情報(開き戸11を押して開閉する場合の依存荷重、開き角度θ11の最大値及び開閉速度)に基づいて、筋力の低下を精度よく推定することができる。
【0135】
能力推定部60は、開き戸11を引いて開閉する場合の依存荷重が増加傾向にある場合に移行する
図23のステップS740~S790において、バランス能力の低下レベルを推定する。より詳細には、開き戸11を引いて開閉する場合、比較的重心が大きく移動するため、対象者Tの体幹(バランス能力)が低下した場合、バランスを崩して転倒するリスクが増大すると考えられる。
【0136】
こうしたバランス能力の低下は、開閉速度の低下、及び開き角度θ11の減少にあらわれると考えられる。そこで能力推定部60は、開き戸11を引いて開閉する場合の依存荷重が増加傾向にある場合、ステップS740~S790の処理によって開閉速度等を評価し、バランス能力の低下レベルを段階的に推定する。
【0137】
なお、ステップS740~S790の処理は、
図22に示す筋力の低下レベルを、バランス能力の低下レベルに置き換えた処理であるため、処理内容の説明は省略する。
【0138】
能力推定部60は、上記ステップS740~S790の処理を実行することで、バランス能力の低下と関係性があると考えられる複数の情報(開き戸11を引いて開閉する場合の依存荷重、開き角度θ11の最大値及び開閉速度)に基づいて、バランス能力の低下を精度よく推定することができる。
【0139】
能力推定部60は、引き戸12を開閉する場合の依存荷重が増加傾向にある場合に移行する
図24のステップS840~S890において、バランスの低下レベルを推定する。より詳細には、引き戸12を開閉する場合、開き戸11を引く場合と同様に、比較的重心が大きく移動すると考えられる。よって引き戸12の開閉動作は、バランス能力の低下と関係性が高いと考えられる。そこで能力推定部60は、引き戸12を開閉する場合の依存荷重が増加傾向にある場合、ステップS840~S890の処理によってバランス能力の低下レベルを段階的に推定する。
【0140】
なお、ステップS840~S890の処理は、開き戸11を引いて開閉する場合の処理(
図23のステップS740~S790)と概ね同様の処理となっている。より詳細には、開き角度θ11の判定を、開き幅D12に置き換えた処理となっている。このためステップS840~S890の処理内容の説明は省略する。
【0141】
能力推定部60は、ステップS840~S890の処理を実行することで、バランス能力の低下と関係性があると考えられる複数の情報(引き戸12を開閉する場合の依存荷重、開き幅D12の最大値及び開閉速度)に基づいて、バランス能力の低下を精度よく推定することができる。
【0142】
このように、ドア10の開閉動作時における転倒リスクと身体能力(筋力及びバランス能力)とは関係性があると考えられる。本実施形態では
図16に示す蓄積処理により、この転倒リスクと関係があると考えられる開閉動作の情報(開閉情報、具体的には依存荷重、最大開度及び開閉速度)を蓄積する。こうして蓄積された情報を
図20、
図22から
図24に示す推定処理で評価することにより、能力推定部60は、転倒リスクと身体能力との関係性を利用して、ADL能力を推定することができる。
【0143】
また依存荷重等はドア10が開閉されるたびに検知されるため、対象者Tに小さな異変(筋力の低下等)があったとしても、その異変をADL能力の低下として推定することができる。これによって対象者Tの小さな異変に介護者等が気付き易くなる。また、介護者等は転倒のリスクを早期に発見することができる。
【0144】
また能力推定部60は、依存荷重、最大開度及び開閉速度のうち、ADL能力の低下と比較的関連性が高い依存荷重を優先して(
図20に示す推定処理の最初に)評価することで、ADL能力の低下を精度よく推定することができる。
【0145】
また本実施形態では、カメラ等の撮像手段を用いないため、対象者Tのプライバシーに配慮して、ADL能力を推定することができる。
【0146】
なお、上述した推定処理は、ADL能力を推定する処理の一例であり、ドア10の開閉動作と転倒の傾向の関係に応じて適宜変更可能である。例えば
図25に示す変形例のように、開き角度θ11の最大値の減少傾向に応じて低下レベルが1であるか否かを推定し、その後に開閉速度の低下傾向に応じて低下レベルが2又は3のいずれであるのかを推定してもよい。また
図16に示すステップS460で算出した閉じ幅について、
図22から
図24に示す処理で低下傾向にあるかをさらに判定し、その結果に基づいて筋力やバランス能力の低下レベルをさらに細かく推定することも可能である。
【0147】
以上の如く、本実施形態に係るADL能力推定システム20は、ドア10の開閉動作時における転倒リスクと関係する開閉情報を検知するデータ処理部40(検知部)と、前記開閉情報を用いて前記対象者TのADL能力を推定する能力推定部60(推定部)と、を具備するものである。
【0148】
このように構成することにより、ドア10の開閉動作時における転倒リスクを考慮してADL能力を推定することができる。
【0149】
また、前記開閉情報は、依存荷重(前記ドア10に対する前記対象者Tの体重のかけ具合)、前記開閉動作時の前記ドア10の最大開度及び前記ドア10の開閉速度の少なくともいずれかを含むものである。
【0150】
このように構成することにより、依存荷重、最大開度及び開閉速度の少なくともいずれかを考慮して、ADL能力を推定することができる。
【0151】
また、前記開閉情報は、前記依存荷重、前記最大開度及び前記開閉速度をそれぞれ含むものである。
【0152】
このように構成することにより、依存荷重、最大開度及び開閉速度をそれぞれ考慮して、ADL能力を精度よく推定することができる。
【0153】
また、前記能力推定部60は、前記データ処理部40により検知された前記開閉情報を蓄積し(
図16に示すステップS510)、蓄積した前記開閉情報に基づいて、前記依存荷重の傾向、前記最大開度の傾向及び前記開閉速度の傾向を算出し、当該算出結果に基づいて前記対象者TのADL能力を推定するものである(
図20に示す推定処理参照)。
【0154】
このように構成することにより、開閉情報の傾向に基づいて、ADL能力の変化を推定することができる。
【0155】
また、前記ドア10は、開き戸11及び引き戸12を含み、前記能力推定部60は、前記対象者Tが前記開き戸11を押して開閉する第1パターン、前記開き戸11を引いて開閉する第2パターン、及び前記引き戸12を開閉する第3パターンに分けて前記開閉情報を蓄積し(
図16に示すステップS510)、前記第1パターンから前記第3パターンの少なくともいずれかのパターンで前記依存荷重が増加傾向にある場合(
図20に示すステップS610:Yes)、前記ADL能力が低下したと推定するものである。
【0156】
このように構成することにより、開き戸11及び引き戸12の開閉動作における依存荷重を用いて、ADL能力の低下を推定することができる。
【0157】
また、前記能力推定部60は、前記ADL能力の低下度合いを段階的に推定するものである(
図22に示すステップS640~S690、
図23に示すステップS740~S790、
図24に示すステップS840~S890)。
【0158】
このように構成することにより、ADL能力の低下度合いを段階的に把握することができる。
【0159】
また、床部6に作用する荷重を検知する足元荷重センサ35をさらに具備し、前記能力推定部60は、前記足元荷重センサ35の検知結果に基づいて、前記開閉情報を蓄積するか否かを判定するものである(
図16に示すステップS490)。
【0160】
このように構成することにより、適切な開閉情報を蓄積することができる。例えば足元荷重(足元荷重センサ35の検知結果)が想定の範囲内にある開閉情報を蓄積することができる。
【0161】
また、前記足元荷重センサ35の検知結果に基づいて前記対象者Tの体重を算出する算出部(データ処理部40)をさらに具備し、前記能力推定部60は、前記体重の算出結果が所定の閾値以上である場合、前記開閉情報を蓄積しないものである(
図16に示すステップS490)。
【0162】
このように構成することにより、重い荷物を持った状態でドア10が開閉された場合の開閉情報を除外して、ADL能力が必要以上に低く推定されるのを防止することができる。
【0163】
また、前記ドア10に作用する荷重を検知するドア荷重センサ31をさらに具備し、前記データ処理部40は、当該ドア荷重センサ31の検知結果に基づいて前記依存荷重を検知し、前記ドア荷重センサ31は、前記ドア10に前記対象者Tが体重をかけた際に、当該ドア10の中で荷重がかかり易い高負荷部分(
図3(b)に示す符号P及び
図4(b)に示す符号12d)に設けられるものである。
【0164】
このように構成することにより、ドア10に作用する荷重を精度よく検知することができる。
【0165】
なお、本実施形態に係るデータ処理部40は、本発明に係る検知部及び算出部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る能力推定部60は、本発明に係る推定部の実施の一形態である。
【0166】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0167】
例えば、推定システム20は居室1に設置されるものとしたが、これに限定されるものではなく、ADL能力の推定が望まれる適宜の場所に設置可能である。例えば、介護施設ではなく、住宅に推定システム20が設置されてもよい。なお推定システム20は季節を問わずドア10が開閉される場所(浴室、玄関等)に設置されることが望ましい。これによって季節に関係なく開閉情報を取得することができる。
【0168】
また能力推定部60は、ADL能力と関係がある複数の情報(依存荷重、最大開度及び開閉速度)を用いてADL能力を推定するものとしたが、ADL能力を推定するのに用いられる情報の数は必ずしも複数である必要はない。例えば能力推定部60は、依存荷重、最大開度及び開閉速度のうち、いずれか1つの情報のみを用いてADL能力を推定することも可能である。
【0169】
また能力推定部60は、ADL能力の低下レベルを推定するものとしたが、これに加えてADL能力の増加レベルを推定することも可能である。例えば能力推定部60は、依存荷重が増加傾向にあるか否かを判定することで、増加レベルを推定することができる。
【0170】
また本実施形態では
図16に示す蓄積処理(ステップS480)において個人を特定するものとしたが、個人の特定が必要ない場合には、蓄積処理において個人を特定する処理をスキップ可能である。
【符号の説明】
【0171】
10 ドア
20 推定システム
31 ドア荷重センサ
33 角度センサ
34 引き戸距離センサ
40 データ処理部
60 能力推定部
T 対象者