IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士紡ホールディングス株式会社の特許一覧

特開2024-47977研磨パッド、研磨パッドの製造方法、及び光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法
<>
  • 特開-研磨パッド、研磨パッドの製造方法、及び光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法 図1
  • 特開-研磨パッド、研磨パッドの製造方法、及び光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法 図2
  • 特開-研磨パッド、研磨パッドの製造方法、及び光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法 図3
  • 特開-研磨パッド、研磨パッドの製造方法、及び光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法 図4
  • 特開-研磨パッド、研磨パッドの製造方法、及び光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法 図5
  • 特開-研磨パッド、研磨パッドの製造方法、及び光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法 図6
  • 特開-研磨パッド、研磨パッドの製造方法、及び光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法 図7
  • 特開-研磨パッド、研磨パッドの製造方法、及び光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047977
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】研磨パッド、研磨パッドの製造方法、及び光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/24 20120101AFI20240401BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
B24B37/24 C
H01L21/304 622F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153772
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005359
【氏名又は名称】富士紡ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196597
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】立野 哲平
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼見沢 大和
(72)【発明者】
【氏名】越智 恵介
(72)【発明者】
【氏名】川崎 哲明
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158AC04
3C158BA02
3C158BA04
3C158BA05
3C158CB01
3C158CB03
3C158CB10
3C158DA17
3C158EA11
3C158EB01
3C158EB10
3C158EB12
3C158EB19
3C158EB20
3C158EB28
3C158EB29
5F057AA09
5F057AA24
5F057BA15
5F057BB03
5F057BB16
5F057BB22
5F057CA12
5F057DA03
5F057EB03
5F057EB06
5F057EB07
5F057EB08
5F057EB09
5F057EB13
5F057EB27
5F057EB30
5F057FA39
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高い研磨レートを示し、かつトポグラフィー性能に優れる研磨パッドを提供することを目的とする。
【解決手段】研磨層を有する研磨パッドであって、前記研磨層は、ポリウレタン樹脂及び多孔質微粒子を含み、略涙形状の気泡を有する、前記研磨パッド。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨層を有する研磨パッドであって、
前記研磨層は、ポリウレタン樹脂及び多孔質微粒子を含み、略涙形状の気泡を有する、前記研磨パッド。
【請求項2】
前記多孔質微粒子の比表面積が1~1000m/gである、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項3】
前記多孔質微粒子の平均粒径が1~20μmである、請求項1又は2に記載の研磨パッド。
【請求項4】
前記多孔質微粒子の細孔径が2~1000nmである、請求項1又は2に記載の研磨パッド。
【請求項5】
前記多孔質微粒子が、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、及びこれらの混合物からなる群から選択されるポリマーの粒子を含む、請求項1又は2に記載の研磨パッド。
【請求項6】
前記研磨層全体に対する前記多孔質微粒子の含有量が1~30質量%である、請求項1又は2に記載の研磨パッド。
【請求項7】
前記研磨層における気泡の平均空隙径が10~70μmである、請求項1又は2に記載の研磨パッド。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の研磨パッドの製造方法であって、湿式成膜法を使用する工程を含む、前記方法。
【請求項9】
光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法であって、請求項1又は2に記載の研磨パッドを使用する工程を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨パッド、研磨パッドの製造方法、及び光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法に関する。本発明の研磨パッドは、光学材料、半導体デバイス、ハードディスク用のガラス基板等の研磨に用いられ、特に半導体ウエハの上に酸化物層、金属層等が形成されたデバイスを研磨するのに好適に用いられる。
【背景技術】
【0002】
研磨層がポリウレタン樹脂からなる研磨パッドには、当該研磨層が硬質ポリウレタン樹脂からなる研磨パッド(硬質ポリウレタン研磨パッド)と、当該研磨層が軟質ポリウレタン樹脂からなる研磨パッド(軟質ポリウレタン研磨パッド)がある。硬質ポリウレタン研磨パッドは粗研磨等に利用され、一方、軟質ポリウレタン研磨パッドは仕上げ研磨等に利用される。軟質ポリウレタン研磨パッドはスエード(起毛皮革)に類似した質感を有する。
【0003】
軟質ポリウレタン研磨パッドの製造方法としては湿式成膜法が一般的であり、ポリウレタン樹脂をDMF(N,N-ジメチルホルムアミド)等の極性溶媒に溶解させた樹脂溶液を基材に塗布後、水系凝固液に浸漬させることで製造される。
湿式成膜法により得られる発泡体は、その内部に略涙形状の気泡が生じやすく、研磨レートが安定しないことがある。そこで、均一な発泡構造とするため、樹脂性の外殻を有する中空微粒子の混合が検討されており、例えば、特許文献1及び2には、DMF等の極性溶媒に難溶な中空微粒子を混合する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許6357291号公報
【特許文献2】特許6587464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、近年、半導体デバイス等では、配線構造の高密度化によりトポグラフィー(ディッシング・エロージョン等の平坦化特性)もより厳密なレベルが求められている。特に、高い研磨レートを示し、かつトポグラフィー性能に優れる(平坦なトポグラフィーを達成できる)研磨パッドが求められている。
【0006】
本発明は、高い研磨レートを示し、かつトポグラフィー性能に優れる研磨パッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
特許文献1及び2では、非中空微粒子を用いると研磨レートやトポグラフィー性能が悪化する旨が記載されている。しかし、本発明者らが、上記課題を解決するべく鋭意研究した結果、非中空微粒子の一種である多孔質微粒子を使用し、さらに略涙形状の気泡を形成することにより、上記課題を解決できることを知見し、本発明を完成するに至った。本発明の具体的態様は以下のとおりである。
【0008】
[1] 研磨層を有する研磨パッドであって、
前記研磨層は、ポリウレタン樹脂及び多孔質微粒子を含み、略涙形状の気泡を有する、前記研磨パッド。
[2] 前記多孔質微粒子の比表面積が1~1000m/gである、[1]に記載の研磨パッド。
[3] 前記多孔質微粒子の平均粒径が1~20μmである、[1]又は[2]に記載の研磨パッド。
[4] 前記多孔質微粒子の細孔径が2~1000nmである、[1]~[3]のいずれか1つに記載の研磨パッド。
[5] 前記多孔質微粒子が、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、及びこれらの混合物からなる群から選択されるポリマーの粒子を含む、[1]~[4]のいずれか1つに記載の研磨パッド。
[6] 前記研磨層全体に対する前記多孔質微粒子の含有量が1~30質量%である、[1]~[5]のいずれか1つに記載の研磨パッド。
[7] 前記研磨層における気泡の平均空隙径が10~70μmである、[1]~[6]のいずれか1つに記載の研磨パッド。
[8] [1]~[7]のいずれか1つに記載の研磨パッドの製造方法であって、湿式成膜法を使用する工程を含む、前記方法。
[9] 光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法であって、[1]~[7]のいずれか1つに記載の研磨パッドを使用する工程を含む、前記方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の研磨パッドは、高い研磨レートを示し、かつトポグラフィー性能に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1で得られた研磨パッドの断面を示す写真(倍率:100倍)である。
図2】実施例1で得られた研磨パッドの断面を示す写真(倍率:500倍)である。
図3】実施例2で得られた研磨パッドの断面を示す写真(倍率:100倍)である。
図4】実施例2で得られた研磨パッドの断面を示す写真(倍率:500倍)である。
図5】比較例1で得られた研磨パッドの断面を示す写真(倍率:100倍)である。
図6】比較例1で得られた研磨パッドの断面を示す写真(倍率:500倍)である。
図7】比較例3で得られた研磨パッドの断面を示す写真(倍率:100倍)である。
図8】比較例3で得られた研磨パッドの断面を示す写真(倍率:500倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(作用)
本発明者らは、研磨層を、多孔質微粒子を含み、略涙形状の気泡を有するものとすることにより、予想外にも、高い研磨レートを示し、かつトポグラフィー性能に優れる研磨パッドが得られることを見出した。これらの特性が得られる理由の詳細は明らかではないが、以下のように推察される。
【0012】
略涙形状の気泡を有する研磨層は、比較的柔軟であり、被研磨物の凹凸に沿った研磨が可能でありトポグラフィー性能に優れるが、上述のように研磨レートが安定しないことがあると考えられる。
一方、多孔質微粒子は、特許文献1及び2に開示されているような中空微粒子とは異なり、多孔質構造を有する。多孔質微粒子におけるこのような多孔質構造の部分が微小な開孔として作用するため、より多くのスラリーを保持でき、高い研磨レートを示すと考えられる。
このように、略涙形状の気泡によるトポグラフィー性能の向上と、多孔質微粒子による研磨レートの向上とが相乗的に作用して、研磨パッドが、高い研磨レートを示し、かつトポグラフィー性能に優れると考えられる。
【0013】
以下、本発明の研磨パッド、研磨パッドの製造方法、及び光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法について、説明する。
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、「A~B」を用いて数値範囲を表す際は、その範囲は両端の数値であるA及びBを含むものとする。
【0014】
1.研磨パッド
本発明の研磨パッドは、研磨層を有し、前記研磨層が、ポリウレタン樹脂及び多孔質微粒子を含み、略涙形状の気泡を有する。
研磨層が、多孔質微粒子を含み、略涙形状の気泡を有するものとすることにより、高い研磨レートを示し、かつトポグラフィー性能に優れる研磨パッドが得られる。
【0015】
(多孔質微粒子)
多孔質微粒子は、多孔質構造を有する。多孔質構造の部分が微小な開孔として作用することにより、研磨剤であるスラリーをより多く保持でき、研磨レートを向上できる。
多孔質微粒子を、研磨層を構成する成分(ポリウレタン樹脂等)に混合することによって発泡体を形成することができる。
【0016】
多孔質微粒子の平均粒径は、特に限定されないが、1~20μmが好ましく、4~15μmがより好ましく、6~10μmが最も好ましい。平均粒径が上記数値範囲であることで、研磨層の表面の平均開孔径が20μm以下となるため、被研磨物をより精密に研磨することができる。
上記平均粒径は、D50(メディアン径)に基づいた粒径とすることができ、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えばスペクトリス(株)製、マスターサイザー2000)を使用して測定することができる。
【0017】
多孔質微粒子は、特に限定されないが、ポリマー粒子を含む又はからなることができる。当該ポリマー粒子を構成するポリマーは、特に限定されないが、熱可塑性樹脂を含む又はからなることができる。当該熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、ポリメタクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリエチレン、マレイン酸共重合体、ポリエチレンオキシド、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル及び有機シリコーン系樹脂、並びにそれらの樹脂を構成する単量体を2種以上組み合わせた共重合体(例えば、塩化ビニル-エチレン共重合体等)からなる群から選択される1種以上を用いることができる。これらのうち、耐溶剤性等を向上させる観点より、ポリメタクリル酸メチル又はポリスチレンが好ましい。
多孔質微粒子は、上記の各ポリマー粒子の架橋体(架橋ポリマー粒子)とすることができる。
多孔質微粒子は、未処理の粒子であってもよく、又は、有機化合物若しくは無機化合物で表面処理された粒子であってもよい。
【0018】
多孔質微粒子の粒径のCV値(変動係数)は、特に限定されないが、5~30%であることが好ましく、5~20%であることがより好ましく、7~15%であることが最も好ましい。CV値が上記範囲であることで、均一な発泡構造が得られる。なお、多孔質微粒子の粒径のCV値は下記式に基づいて算出することができる。
【0019】
【数1】
【0020】
多孔質微粒子の比表面積は、特に限定されないが、1~1000m2/gが好ましく、1~500m2/gがより好ましく、50~200m2/gが最も好ましい。比表面積が上記数値範囲であることで、スラリーをより多く保持することができる。
多孔質微粒子の比表面積は、比表面積細孔分布測定装置(例えば島津製作所製、Tristar3000)を使用してBET法に基づいて測定することができる。
なお、多孔質微粒子の比表面積は、単位質量あたりの表面積のことをいう。
【0021】
多孔質微粒子は、多孔質構造の部分に、微小な開孔である細孔を含む。多孔質微粒子の細孔径は、特に限定されないが、2~1000nmが好ましく、10~500nmがより好ましく、10~200nmが最も好ましい。細孔径が上記数値範囲であることで、微小な開孔が多く存在し、研磨レートに優れる。
多孔質微粒子の細孔径は、比表面積細孔分布測定装置(例えば島津製作所製、Tristar3000)を使用してBJH法に基づいて測定することができる。
【0022】
多孔質微粒子は、特に限定されないが、耐溶剤性を有する微粒子とすることができる。耐溶剤性を有する多孔質微粒子を使用することにより、湿式成膜法などにより研磨層を構成する樹脂フィルムを形成する際に、使用する溶媒(例えば、DMFなどの極性溶媒)に多孔質微粒子が溶解することなく多孔質微粒子に起因する空隙を形成できる。多孔質微粒子の耐溶剤性は、例えば、下記基準に基づいて判定することができる。
・研磨層を構成する、多孔質微粒子を含む樹脂フィルムを、その100倍の質量部のDMFに入れ、室温にて1晩静置後に30分間撹拌しても多孔質微粒子が完全溶解しない場合、耐溶剤性を有すると判定する。
【0023】
多孔質微粒子の溶解度パラメータ(SP値)は、特に限定されないが、7~10(cal/cm1/2が好ましく、8.5~9.5(cal/cm1/2がより好ましい。多孔質微粒子のSP値が上記数値範囲であることで、湿式成膜法などの際に使用する溶媒(例えば、DMFなどの極性溶媒)のSP値との差を大きくすることができ、それにより上述の耐溶剤性を高めることができる。
【0024】
溶解度パラメータ(SP値)は、ヒルデブラント(Hildebrand)によって導入された値であり、溶質と溶媒の2成分系溶液の溶解度の目安となる(SP値が近い成分同士は良く溶ける)。またSP値は、経験則的に、溶液中の粒子の分散性を表す指標として用いることができ、SP値が近い成分同士は良く分散する。
SP値は、下記式に基づいて算出することができる。
【0025】
【数2】
【0026】
多孔質微粒子のSP値と後述する溶媒(極性溶媒)のSP値との差の絶対値:|(多孔質微粒子のSP値)-(溶媒のSP値)|は、特に限定されないが、2~5(cal/cm1/2が好ましい。上記差の絶対値が2(cal/cm1/2以上であることで、溶媒に対する多孔質微粒子の耐溶剤性を高めることができる。また、上記差の絶対値が5(cal/cm1/2以下であることで、溶媒に対する多孔質微粒子の分散性を適度にすることができ、均一な発泡構造が得られる。
【0027】
研磨層全体に対する多孔質微粒子の含有量は、特に限定されないが、1~30質量%が好ましく、1~25質量%がより好ましく、1~20質量%が最も好ましい。多孔質微粒子の含有量が上記数値範囲内であると、多孔質微粒子が凝集することなく、均一な発泡構造が得られる。
【0028】
研磨層は、中空微粒子を含まないものとすることができる。本願において中空微粒子を含まないとは、意図的に添加しないことを意味し、中空微粒子が不純物として混入してしまうことを排除するものではない。上記多孔質微粒子は、非中空微粒子の一種であり、中空微粒子ではない。
【0029】
(ポリウレタン樹脂)
本発明の研磨パッドのポリウレタン樹脂は、ポリイソシアネート化合物とポリオール、ポリアミンなどの硬化剤を反応させて得られ、鎖延長剤を使用することもできる。
【0030】
ポリイソシアネート化合物は、ポリイソシアネート化合物とポリオールをあらかじめ反応させて高分子量化したプレポリマーの形で使用することができる。
【0031】
ポリイソシアネート化合物は、特に限定されないが、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート:ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート等の脂肪族または脂環族ジイソシアネート;又はこれらのうちの2種以上の組み合わせを含む、又はからなることができる。
【0032】
ポリオール(高分子ジオール)は、特に限定されないが、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオールを含む、又はからなることができる。これらの高分子ジオールは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリエーテルジオールは、特に限定されないが、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(テトラメチレングリコール)、ポリ(メチルテトラメチレングリコール)を含む、又はからなることができる。これらのポリエーテルジオールは、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリエステルジオールは、特に限定されないが、ジカルボン酸またはそのエステル、無水物等のエステル形成性誘導体と低分子ジオールとを直接エステル化反応またはエステル交換反応させることにより製造できる。
ポリエステルジオールを構成するジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、2-メチルコハク酸、2-メチルアジピン酸、3-メチルアジピン酸、3-メチルペンタン二酸、2-メチルオクタン二酸、3,8-ジメチルデカン二酸、3,7-ジメチルデカン二酸等の炭素数4~12の脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;等が挙げられる。これらのジカルボン酸は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリエステルジオールを構成する低分子ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール等の脂肪族ジオール;シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール等の脂環式ジオール;等が挙げられる。これらの低分子ジオールは、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。低分子ジオールの炭素数としては、例えば、6以上12以下が挙げられる。
【0033】
鎖延長剤は、特に限定されないが、エチレングリコール、ジエチレンリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、サッカロース、メチレングリコール、グリセリン、ソルビトール等の脂肪族ポリオール化合物;ビスフェノールA、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン等の芳香族ポリオール化合物、水を含む、又はからなることができる。これらの鎖延長剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0034】
(その他の成分)
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、添加剤を含むことができる。添加剤は、好ましくは、成膜助剤、発泡抑制助剤からなる群より選択される。
成膜助剤としては、疎水性活性剤等が挙げられる。疎水性活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリエーテル変性シリコーンなどのノニオン系界面活性剤や、アルキルカルボン酸などのアニオン系界面活性剤が挙げられる。
発泡抑制助剤としては、親水性活性剤等が挙げられる。親水性活性剤としては、例えば、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、燐酸エステル塩等のアニオン界面活性剤やセルロースエステルが挙げられる。
成膜助剤を添加剤として添加する場合には、0.2~10質量%であることが好ましい。発泡抑制助剤を添加剤として添加する場合には、0.2~10質量%であることが好ましい。
【0035】
ポリウレタン樹脂は、上述したポリウレタン樹脂組成物を重合させることにより製造できる。すなわち、必要に応じて触媒の存在下で有機溶剤中で重合反応を行う方法等が挙げられる。
【0036】
ポリウレタン樹脂の溶解度パラメータ(SP値)は、特に限定されないが、8~14(cal/cm1/2が好ましく、8~12(cal/cm1/2がより好ましく、10~12(cal/cm1/2が最も好ましい。ポリウレタン樹脂のSP値が上記数値範囲であることで、湿式成膜法などの際に使用する溶媒(例えば、DMFなどの極性溶媒)のSP値との差を小さくすることができ、ポリウレタン樹脂を溶媒に溶解させやすくなる。
【0037】
ポリウレタン樹脂のSP値と後述する溶媒(極性溶媒)のSP値との差の絶対値:|(ポリウレタン樹脂のSP値)-(溶媒のSP値)|は、特に限定されないが、1.5(cal/cm1/2未満が好ましい。上記差の絶対値が1.5(cal/cm1/2未満であることで、ポリウレタン樹脂を溶媒に溶解させやすくなる。
【0038】
研磨層全体に対するポリウレタン樹脂の含有量は、特に限定されないが、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が最も好ましい。また、研磨層全体に対するポリウレタン樹脂の含有量は、特に限定されないが、99質量%以下とすることができる。ポリウレタン樹脂の含有量に関する上記数値範囲は、任意に組み合わせることができる。
【0039】
(研磨層)
研磨層が有する略涙形状の気泡は、異方性があり、研磨面から反対面に向けて縦長状の気泡構造を有する。
【0040】
研磨層が有する気泡は、上記略涙形状の気泡及び上記多孔質微粒子に由来する気泡を含む、又はからなることもできる。
上記略涙形状の気泡の周囲には、立体網目状に連通した小径の連通孔が存在する。多孔質微粒子に由来する気泡は、上記連通孔とは連通することのない独立気泡として存在する。
研磨層における気泡の平均空隙径(例えば上記略涙形状の気泡及び上記多孔質微粒子に由来する気泡を合わせた気泡の平均空隙径)は、特に限定されないが、10~70μmが好ましく、また、15~60μm、20~50μm、又は25~40μmとすることもできる。当該気泡の平均空隙径が上記数値範囲であることで、研磨層の剛性を保つことができ、研磨層の耐摩耗性を向上させることができる。
【0041】
上記研磨層における気泡の平均空隙径は、後述の[実施例]の<評価方法1>に記載の方法及び手順に基づいて測定することができる。
【0042】
研磨層の密度は、特に限定されないが、0.30~0.70g/cmであることが好ましく、0.40~0.60g/cmがより好ましい。
【0043】
研磨層の圧縮率は、特に限定されないが、0.1~10%であることが好ましく、0.5~7.0%がより好ましい。圧縮率が上記数値範囲内にあると、研磨層の変形が抑制され、研磨特性が変化しにくくなるため、研磨レートが向上する。
【0044】
研磨層の圧縮弾性率は、特に限定されないが、70~100%であることが好ましく、80~95%がより好ましい。圧縮弾性率が上記数値範囲内にあると、研磨層が適度な弾性を有し、トポグラフィー性能が向上する。
【0045】
研磨層のショアA硬度は、特に限定されないが、35~70°であることが好ましく、40~60°がより好ましい。ショアA硬度が上記数値範囲内にあると、研磨の進行に伴って研磨特性が変化しにくくなり、研磨レートが向上する。
【0046】
研磨層の引張り強さは、特に限定されないが、0.1~1kg/mmであることが好ましい。引張り強さが上記数値範囲内にあると、研磨層の耐摩耗性が向上する。
【0047】
研磨層の伸度は、特に限定されないが、200~600%であることが好ましく、300~500%がより好ましい。伸度が上記数値範囲内にあると、研磨層が適度に柔軟になり、被研磨物への追従性が向上し、トポグラフィー性能が向上する。
【0048】
研磨層の引裂き強さは、特に限定されないが、0.5~3.0kg/mmであることが好ましく、0.5~2.0kg/mmがより好ましい。引裂き強さが上記数値範囲内にあると、研磨層の耐摩耗性が向上し、製品寿命を向上することができる。
【0049】
研磨層の密度、圧縮率、圧縮弾性率、ショアA硬度、引張り強さ、伸度、及び引裂き強さは、後述の[実施例]の<評価方法1>に記載の方法及び手順に基づいて測定することができる。
【0050】
研磨パッドが示す研磨レートは、特に限定されないが、520Å以上が好ましく、530Å以上がより好ましく、540Å以上が最も好ましい。また、当該研磨レートは、特に限定されないが、1000Å以下、800Å以下、又は700Å以下とすることもできる。研磨レートに関する上記数値範囲は、任意に組み合わせることができる。
研磨層が示す研磨レートは、後述の[実施例]の<評価方法2>に記載の方法及び手順に基づいて測定することができる。
【0051】
研磨パッドは、上記研磨層の研磨面に対する反対面側(下面側)に、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記する)製フィルム等の可撓性フィルム、不織布及び織布から選択される1種の支持部材を有することができる。支持部材の下面側には、他面側(最下面側)に剥離紙を有して研磨定盤に研磨パッドを装着するための両面テープが貼り合わされている。
【0052】
2.研磨パッドの製造方法
本発明の研磨パッドの製造方法は、上述の研磨パッドの製造方法であって、湿式成膜法を使用する工程を含む。
研磨パッドの製造方法における研磨パッドの各構成は、上記「1.研磨パッド」に記載の各構成と同様とすることができる。
【0053】
研磨パッドは、湿式成膜法、例えば、ポリウレタン樹脂、極性溶媒、及び多孔質微粒子を混合分散させたポリウレタン樹脂溶液を調製する工程と、ポリウレタン樹脂溶液を基材に塗布する工程と、ポリウレタン樹脂溶液が塗布された基材を凝固液に浸漬するポリウレタン樹脂の凝固再生工程とを含む方法により、製造することができる。
【0054】
(1)ポリウレタン樹脂溶液を調製する工程
ポリウレタン樹脂は、上記「1.研磨パッド」に記載のポリウレタン樹脂を使用することができる。
ポリウレタン樹脂溶液中のポリウレタン樹脂の濃度は、例えば、10~50質量%、好ましくは20~40質量%である。この濃度範囲であれば、シート密度が適切な範囲に調整され、所望の発泡構造を形成することができる。
【0055】
極性溶媒は、特に限定されないが、DMF、DMAc、THF、DMSO、NMP、アセトン、又はこれらのうちの2種以上の混合物を含む、又はからなることができる。これらのうちでも、ポリウレタン樹脂の溶解性に優れる等の観点より、DMFが好ましい。
極性溶媒のSP値は、特に限定されないが、9~13(cal/cm1/2が好ましく、10~13(cal/cm1/2がより好ましい。極性溶媒のSP値が上記数値範囲であることで、ポリウレタン樹脂のSP値又は多孔質微粒子のSP値との差を適切な範囲に制御できる。
DMFを使用する場合、ポリウレタン樹脂の良溶媒であるDMFは、水に対して任意の割合で混合することができるため、凝固液(水)との置換速度が速く、ポリウレタン樹脂溶液の下層(基材の側)の側のDMFが上層(表面層)の側へ速やかに移動し、下層の側に比較的大きな発泡(シート厚さ方向に縦長をなす発泡)を形成し易い。これにより、研磨層に略涙形状の気泡を形成することができる。
【0056】
ポリウレタン樹脂に、混合分散させる多孔質微粒子は、上記「1.研磨パッド」に記載の多孔質微粒子を使用することができる。
【0057】
ポリウレタン樹脂のSP値と溶媒(極性溶媒)のSP値との差の絶対値、及び多孔質微粒子のSP値と溶媒(極性溶媒)のSP値との差の絶対値は、上記「1.研磨パッド」に記載の数値範囲内とすることができる。
【0058】
ポリウレタン樹脂溶液は、必要に応じて、更に添加剤を含んでいても良い。添加剤としては、特に制限されないが、ポリウレタン樹脂の凝固再生工程で、ポリウレタン樹脂の凝固速度を調整して所望の発泡形状を形成する点から、カーボンブラック等の顔料、疎水性活性剤、親水性活性剤が好ましい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。添加剤の配合量は、特に制限されず、ウレタン樹脂含有溶液100質量部に対して、例えば、30質量部以下、好ましくは20質量部以下(例えば、1~15質量部)である。しかし、ディフェクト発生の要因となり得るカーボンブラック等の添加剤は使用しないことが好ましい。
【0059】
(2)ポリウレタン樹脂溶液の塗布工程
ポリウレタン樹脂溶液の塗布工程で用いる基材は、可撓性を有する材料であれば良く、例えば、プラスチックフィルム(例えば、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム等)、不織布等が挙げられる。基材にポリウレタン樹脂含有溶液を塗布する方法としては、特に制限されず、例えば、慣用のコーター(ナイフコーター、リバースコータ、ロールコータ等)を用いて塗布する方法が挙げられる。塗布厚みは、所定の発泡構造を形成する点から、例えば、0.5~2.5mm、好ましくは1.0~2.0mm、更に好ましくは1.2~1.8mmである。
【0060】
(3)ポリウレタン樹脂の凝固再生工程
ポリウレタン樹脂の凝固再生工程で、ポリウレタン樹脂溶液が塗布された基材を浸漬する凝固液は、ポリウレタン樹脂に対する貧溶媒(水等)を主成分とする。凝固液としては、例えば、水、水と極性の溶剤(例えば、DMF、DMAc、THF、DMSO、NMP、アセトン等)との混合溶液等が挙げられる。尚、混合溶液中の極性溶剤の濃度は、0.5~30質量%が好ましい。
【0061】
ポリウレタン樹脂の凝固再生工程により、基材上で凝固したポリウレタン発泡シートが得られる。本発明の研磨パッドの製造方法は、更に、基材上で凝固して得られたポリウレタン発泡シートを、必要により基材から剥離した後、洗浄及び乾燥する工程を含んでいても良い。
【0062】
(4)ポリウレタン樹脂の洗浄及び乾燥工程
洗浄及び乾燥により、ポリウレタン樹脂中に残留する極性溶媒及び凝固液(水)が除去される。洗浄に用いられる洗浄液は、通常、水が使用される。乾燥は、通常、80~150℃で5~60分程度行なう。
【0063】
本発明の研磨パッドの製造方法は、更に、表面又は表面及び裏面に研削処理を施したり、必要により切削による溝加工やエンボス加工等の表面処理を施しても良い。
【0064】
研削処理(バフ処理)の方法は、特に制限されず、例えば、サンドペーパーによる方法が挙げられる。研削処理(バフ処理)する面は、研磨面(表面層側の面)と非研磨面(定盤貼付け側の面)の前者のみでも両者でも良い。研削処理量(バフ処理量)は、所望の表面形状に応じて、例えば、0.05~0.3mm、好ましくは0.1~0.2mmである。これにより、研磨パッドの表面層に、ポリウレタンの発泡の開孔、多孔質微粒子の気泡の開孔が形成されるとともに、シートの厚みが均一化される。
【0065】
溝加工やエンボス加工において、加工温度及び加工圧力は特に制限されるものではないが、加工温度は、例えば、100~200℃、好ましくは120~180℃であり、加工圧力は、例えば、3~6MPa、好ましくは4~5MPaである。加工時間も特に制限されないが、例えば、30~300秒、好ましくは60~180秒である。
【0066】
溝加工やエンボス加工により形成された凹部は、ランダムに形成しても良いが、規則的(例えば、格子状、同心円状、放射状、ハニカム状)に形成しても良い。凹部の幅は、例えば、0.3~3.0mm、好ましくは0.5~1.5mm、更に好ましくは0.8~1.2mmである。隣り合う凹部の平均中心間距離は、例えば、1~100mm、好ましくは2~20mmである。これにより、研磨パッドの表面層側へのスラリーの供給と排出を促すことができる。
【0067】
上記のようにして得られた研磨層について、研磨面に対する反対面側(下面側)に、上述の支持部材を張り合わせて研磨パッドを製造することができる。
【0068】
3.光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法
本発明の光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法は、上述の研磨パッドを使用する工程を含む。
上記研磨する方法における研磨パッドの各構成は、上記「1.研磨パッド」に記載の各構成と同様とすることができる。
【0069】
被研磨物である光学材料又は半導体材料は、特に限定されないが、特に半導体ウエハの上に酸化物層、金属層等が形成されたデバイスが好ましい。
上記の研磨パッドを使用する工程は、光学材料又は半導体材料を仕上げ研磨する工程をさらに含むことができる。
【0070】
上記の研磨パッドを使用する工程は、研磨スラリー(スラリー)を使用する工程をさらに含むことができる。研磨スラリーを使用する場合、多孔質微粒子における多孔質構造の部分が微小な開孔として作用するため、より多くのスラリーを保持でき、高い研磨レートを示すことができる。
研磨スラリーに砥粒成分が含まれていることが好ましい。研磨スラリーに含まれる液体成分としては、特に限定されないが、水、酸、アルカリ、有機溶剤等が挙げられ、被研磨物の材質や所望の研磨条件等によって選択される。研磨スラリーに含まれる砥粒成分としては、特に限定されないが、シリカ、珪酸ジルコニウム、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化マンガン等が挙げられる。研磨スラリーは、液体成分に可溶な有機物やpH調整剤等、その他の成分を含有していてもよい。
【実施例0071】
本発明を以下の例により実験的に説明するが、以下の説明は、本発明の範囲が以下の例に限定して解釈されることを意図するものではない。
【0072】
(材料)
後述の実施例1~3及び比較例1~3で使用した材料を以下に列挙する。
【0073】
・ポリウレタン樹脂:
ポリウレタン樹脂(1)・・・エステル系ポリウレタン樹脂(DIC株式会社製、商品名「UW-2」、固形分濃度30質量%、SP値:10~12(cal/cm1/2、100%樹脂モジュラス:6MPa)
【0074】
・溶媒:
DMF・・・N,N-ジメチルホルムアミド(SP値:12.1(cal/cm1/2
【0075】
・微粒子:
多孔質微粒子(1)・・・積水化成品工業株式会社製のテクポリマー(登録商標)(組成:架橋ポリメタクリル酸メチル、構造:多孔質状、SP値:9.0~9.5(cal/cm1/2、比表面積:85m2/g、平均粒径:6~10μm、細孔径:100nm、CV値:15%)
多孔質微粒子(2)・・・積水化成品工業株式会社製のテクポリマー(登録商標)(組成:架橋ポリスチレン、構造:多孔質状、SP値:8.5~9.0(cal/cm1/2、比表面積:85m2/g、平均粒径:6~10μm、細孔径:100nm、CV値:20%)
中空微粒子(1)・・・Expancel(登録商標) 461DU20(日本フィライト株式会社製)(シェル組成:アクリロニトリル-塩化ビニリデン共重合体、構造:中空状、SP値:12~12.5(cal/cm1/2、未膨張の状態での平均粒径:6~9μm)
中空微粒子(2)・・・積水化成品工業株式会社製のテクポリマー(登録商標)(シェル組成:架橋ポリメタクリル酸メチル、構造:中空状、SP値:9.0~9.5(cal/cm1/2、比表面積:0.8m2/g、平均粒径:6~10μm)
【0076】
なお、本実施例において、100%樹脂モジュラスは、無発泡の樹脂シートを100%伸ばしたとき(元の長さの2倍に伸ばしたとき)に掛かる荷重を断面積で割った値を意味する。100%樹脂モジュラスは、樹脂溶液を薄く引き延ばし熱風乾燥し、200μm程度の厚みの乾式フィルムを作製後、しばらく養生したのち、全長90mm、両端部幅20mm、つかみ具間距離50mm、平行部幅10mm、厚さ200μmのダンベル状に試料を打ち抜き、測定試料を万能材料試験機テンシロン(株式会社エイ・アンド・デイ製テンシロン万能試験機「RTC-1210」)の上下エアチャックにはさみ、20℃(±2℃)、湿度65%(±5%)の雰囲気下で、引っ張り速度100mm/分で引っ張り、100%伸長時(2倍延伸時)の張力を試料の初期断面積で割ることにより求めた。
【0077】
(実施例1)
上記ポリウレタン樹脂(1)100質量部、上記多孔質微粒子(1)3.4質量部、溶媒(DMF)20質量部を含む樹脂含有溶液を得た。
【0078】
次に、成膜用基材として、PETフィルムを用意し、そこに、上記樹脂含有溶液を、ナイフコータを用いて1.0mmの厚みで塗布し、凝固浴(凝固液:水)に浸漬し、上記樹脂含有溶液を凝固させた後、洗浄・乾燥させた後にPETフィルムから剥離して樹脂フィルム(厚み1.0mm)を得た。得られた樹脂フィルムの表面に形成されたスキン層側に研削処理を施した(研削量:200μm)。その後、樹脂フィルムの一部を格子状の金型でエンボス加工を行い、当該樹脂フィルム(研磨層)の裏面に両面粘着テープを貼り合わせ研磨パッドを得た。
得られた研磨パッドにおいて、研磨層中のポリウレタン樹脂(固形分)及び微粒子の含有量は、それぞれ90質量%及び10質量%と算出できる。
【0079】
(実施例2)
実施例1の多孔質微粒子(1)の量を3.4質量部から7.5質量部に変更する以外は、実施例1と同様にして、樹脂含有溶液を得た。そして、上記樹脂含有溶液を使用して、実施例1と同様にして、樹脂フィルムの成膜、研削処理、及びエンボス加工を行い、実施例2の研磨パッドを得た。
得られた研磨パッドにおいて、研磨層中のポリウレタン樹脂(固形分)及び微粒子の含有量は、それぞれ80質量%及び20質量%と算出できる。
【0080】
(実施例3)
実施例1の多孔質微粒子(1)3.4質量部に代えて、上記多孔質微粒子(2)3.4質量部を使用する以外は、実施例1と同様にして、樹脂含有溶液を得た。そして、上記樹脂含有溶液を使用して、実施例1と同様にして、樹脂フィルムの成膜、研削処理、及びエンボス加工を行い、実施例3の研磨パッドを得た。
得られた研磨パッドにおいて、研磨層中のポリウレタン樹脂(固形分)及び微粒子の含有量は、それぞれ90質量%及び10質量%と算出できる。
【0081】
(比較例1)
実施例1の多孔質微粒子(1)3.4質量部を添加せず、微粒子を使用しない以外は、実施例1と同様にして、樹脂含有溶液を得た。そして、上記樹脂含有溶液を使用して、実施例1と同様にして、樹脂フィルムの成膜、研削処理、及びエンボス加工を行い、比較例1の研磨パッドを得た。
【0082】
(比較例2)
実施例1の多孔質微粒子(1)3.4質量部に代えて、上記中空微粒子(1)3.4質量部を使用する以外は、実施例1と同様にして、樹脂含有溶液を得た。そして、上記樹脂含有溶液を使用して、実施例1と同様にして、樹脂フィルムの成膜、研削処理、及びエンボス加工を行い、比較例2の研磨パッドを得た。
【0083】
(比較例3)
実施例1の多孔質微粒子(1)3.4質量部に代えて、上記中空微粒子(2)3.4質量部を使用する以外は、実施例1と同様にして、樹脂含有溶液を得た。そして、上記樹脂含有溶液を使用して、実施例1と同様にして、樹脂フィルムの成膜、研削処理、及びエンボス加工を行い、比較例3の研磨パッドを得た。
得られた研磨パッドにおいて、研磨層中のポリウレタン樹脂(固形分)及び微粒子の含有量は、それぞれ90質量%及び10質量%と算出できる。
【0084】
実施例1及び2並びに比較例1及び3で得られた各研磨パッドについて測定した、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、JSM-5000LV)による断面写真を図1~8に示す。
図1及び2は、実施例1の研磨パッドについて、100及び500倍の倍率でそれぞれ測定した断面写真である。図3及び4は、実施例2の研磨パッドについて、100及び500倍の倍率でそれぞれ測定した断面写真である。図5及び6は、比較例1の研磨パッドについて、100及び500倍の倍率でそれぞれ測定した断面写真である。図7及び8は、比較例3の研磨パッドについて、100及び500倍の倍率でそれぞれ測定した断面写真である。
【0085】
<評価方法1>
上記のようにして得られた実施例1~3及び比較例1~3それぞれの研磨パッドに含まれる上記樹脂フィルム(研磨層)について、以下の密度、圧縮率、圧縮弾性率、ショアA硬度、引張り強さ、伸度、引裂き強さ、並びにポリウレタンの発泡による気泡及び微粒子の気泡の平均空隙径の測定を行い、表1の結果を得た。
【0086】
(密度)
密度は、研磨パッドを構成する樹脂フィルムの部分から樹脂フィルム試料片(10cm×10cm)を切り出し、該試料片の質量を自動天秤で測定後、下記式:
密度(g/cm)=質量(g)/(10(cm)×10(cm)×試料片の厚さ(cm))
により算出して求めた。
【0087】
(圧縮率)、(圧縮弾性率)
圧縮率及び圧縮弾性率は、JIS L 1021に準拠して求めた。具体的には、研磨パッドを構成する樹脂フィルムの部分から樹脂フィルム試料片(10cm×10cm)を切り出し、室温において無荷重状態から初荷重を30秒間かけた後の厚さtを測定し、次に、厚さtの状態から最終荷重を5分間かけた後の厚さtを測定した。次いで厚さtの状態から全ての荷重を取り除き、5分放置(無荷重状態とした)後、再び初荷重を30秒間加えた後の厚さt0’を測定した。
そして、圧縮率は、圧縮率(%)=100×(t-t)/tの式で算出し、圧縮弾性率は、圧縮弾性率(%)=100×(t0'-t)/(t-t)の式で算出した。このとき、初荷重は100g/cm、最終圧力は1120g/cmであった。
【0088】
(ショアA硬度)
ショアA硬度は、研磨パッドを構成する樹脂フィルムの部分から樹脂フィルム試料片(10cm×10cm)を切り出し、複数枚の該試料片を厚さが4.5mm以上となるように重ね、A型硬度計(日本工業規格、JIS K7311)にて測定した。
【0089】
(引張り強さ)、(伸度)
研磨パッドを構成する樹脂フィルムの部分からダンベル形状(長さ9cm、幅2cm、くびれ部の幅1cm)に打ち抜き、測定試料を測定機の上下エアチャックにはさみ、引張速度100mm/min、初期つかみ間隔50mmで測定を開始し、測定値がピーク(切断)に達した値を強力(最大荷重)として得た。また、測定試料が切断(破断)した時の伸度を伸度とした。
上記測定はn数2で行ない、破断強度(kgf/mm)=強力(最大荷重)kgf/(厚さ(mm)×試料巾(10mm))より破断強度を算出し、その平均値から破断強度(引張り強さ)を算出した。また、上記伸度も平均値を算出した。尚、試料厚みは、測定試料をチャック装着する際、厚み計を用いて測定し、寸法表を用いて算出した。
上記引張り強さおよび伸度は、株式会社エー・アンド・デイ製、テンシロン万能試験機RTCにて日本工業規格(JIS K6550)に準じた方法で測定した。
【0090】
(引裂き強さ)
研磨パッドを構成する樹脂フィルムの部分から樹脂フィルム試料片(100mm×25mm)を切り出した。得られた該試料片の幅方向中心部において、長手方向に向かって長手方向端部より70mm切込みを入れ、該試料片における切込みの終端部より切込みに沿って25mmの位置の2箇所を治具で挟んで固定し、それらの2箇所を切込みに沿う反対方向(2箇所の一方を他方に対して180度回転させた方向)に万能材料試験機テンシロン(株式会社A&D製、テンシロン型万能試験機RTC-1210)で引張り、試料が切れるまで測定し、測定値がピークとなった強力(最大荷重)kgを求めた。そして、下記式:
引き裂き強さ(kg/mm)=強力(最大荷重)kg/厚さ(mm)
により引裂き強さを求めた。
【0091】
(ポリウレタンの発泡による気泡及び微粒子の気泡の平均空隙径)
ポリウレタンの発泡による気泡及び微粒子の気泡の平均空隙径は、上記(ショアA硬度)と同様にして得た樹脂フィルム試料片(10cm×10cm)の断面を走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、JSM-5000LV)で約5mm四方の範囲を500倍に拡大し、9箇所について観察した。この画像を画像処理ソフト(Image Analyzer V20LAB Ver.1.3、株式会社ニコン製)により二値化処理して該試料内に存在する空隙(ポリウレタンの発泡による気泡及び微粒子の気泡を合わせた気泡)の総個数を確認し、各空隙の空隙面積から円相当径及びその平均値を平均空隙径として算出した。なお、二値化処理にて微粒子の判別ができなかった部分については、微粒子の輪郭が判別可能なように、フリーハンドツールで補正することができる。空隙径の測定においては、該空隙径のカットオフ値(下限)を4μmとし、ノイズ成分を除外した。尚、ここで示す空隙とはポリウレタンの発泡による気泡と微粒子の気泡の両者をいう。
【0092】
<評価方法2>
また、上記のようにして得られた実施例1~3及び比較例1~3それぞれの研磨パッドについて、以下の研磨条件で研磨加工を行ない、研磨レート及びトポグラフィー性能(研磨均一性)の測定及び評価を行い、表1の結果を得た。尚、研磨パッドを使用するときには、研磨パッドを研磨層の研磨面が被研磨物と向き合うように研磨機の研磨定盤に取付けた。そして、研磨パッドの研磨面にスラリーを供給しつつ、研磨定盤を回転させて、被研磨物の加工表面を研磨した。
【0093】
被研磨物としては、12インチのシリコンウェハ上にテトラエトキシシランをCVDで絶縁膜が1μmの厚さになるように形成した基板(均一性(CV%)が13%)を用いた。25枚の基板を順次研磨した。
【0094】
(研磨条件)
研磨機:EBARA F-REX300
研磨ヘッド:GII
スラリー:Planar社 Slurry(コロイダイルシリカ、pH:9.7)
被研磨物:300mmφSIO2(TEOS)
パッド径:740mmφ
パッドブレイク:9N×30分、ダイヤモンドドレッサー54rpm、定盤回転数80rpm
研磨圧:175hPa
超純水:200ml/min
研磨:定盤回転数70rpm、ヘッド回転数71rpm、スラリー流量200ml/min、研磨時間60秒
【0095】
(研磨レート)
研磨レートは、1分間あたりの研磨量を厚さ(Å)で表したものである。研磨した25枚の基板について、研磨加工前後の基板の絶縁膜について各々17箇所の厚み測定結果から、25枚の全基板の平均値を求めた。尚、厚み測定は、光学式膜厚膜質測定器(KLAテンコール社製、ASET-F5x)のDBSモードにて測定した。
【0096】
(トポグラフィー性能)
段差、表面粗さ、微細形状測定装置(KLAテンコール社製、P-16+)を用いて、研磨した基板におけるメタル配線と酸化膜配線の段差を測定し、「良好:〇、不良:×」の基準に沿ってトポグラフィー性能の評価を行った。トポグラフィー性能の評価が良好であれば、平坦なトポグラフィーを達成できている。
【0097】
【表1】
【0098】
表1の結果より、実施例1~3の研磨パッドは、研磨レートが高く、かつトポグラフィー性能に優れることがわかった。また、図1~4より、実施例1及び2の研磨パッドの研磨層においては、湿式成膜法でのポリウレタンの発泡による気泡(略涙形状の気泡、図1~4の大きな黒い部分)と多孔質微粒子の気泡(図1~4の小さな黒い部分)との両方が形成されていることが確認できた。さらに、実施例1に関する図1及び2と実施例2に関する図3及び4との比較より、多孔質微粒子の添加量を増やすと多孔質微粒子の気泡の数が増加することが確認できた。
実施例1~3において使用された多孔質微粒子は、多孔質構造を有しており、比較例2及び3で使用されているような中空微粒子に比べて、表面積が大きくなっている。研磨層の表面(研磨面)において、このような多孔質微粒子の多孔質構造の部分が微小な開孔として作用し、より多くのスラリーを保持できるようになるため、多孔質微粒子を使用した実施例1~3の研磨パッドは高い研磨性能を示したと推察できる。
【0099】
一方、比較例1~3の研磨パッドは、研磨レートが低く、かつトポグラフィー性能に劣ることがわかった。
【0100】
図5及び6より、微粒子を添加していない比較例1の研磨パッドの研磨層においては、湿式成膜法でのポリウレタンの発泡による気泡は形成されているものの、微粒子の気泡は形成されていないことが確認できた。
比較例1の研磨パッドは、実施例1~3の研磨パッドとは異なり、多孔質微粒子の空隙を有していないため、研磨層の表面(研磨面)で保持できるスラリー量が少なく、研磨性能に劣ったと考えられる。
なお、図5及び6において、複数の涙形状の気泡の間に小さな気泡が複数存在しているが、これらの気泡も湿式成膜法により形成されたものであり、中空の空隙である。該空隙は互いに連通した連通孔であるため、スラリー保持性は低い。
【0101】
また、比較例2の研磨パッドの研磨層においては、湿式成膜法でのポリウレタンの発泡による気泡は形成されているものの、中空微粒子の気泡は形成されていないことが確認できた。
比較例2において、湿式成膜法において使用した溶媒(DMF)のSP値と中空微粒子のSP値との差が小さい。そのため、比較例2では、中空微粒子が溶媒に溶解してしまい研磨層に残らなかったため、中空微粒子の気泡が形成されなかったと考えられる。このように比較例2では、中空微粒子の気泡が形成されなかったため、研磨性能に劣ったと考えられる。
【0102】
さらに、図7及び8より、比較例3の研磨パッドの研磨層においては、湿式成膜法でのポリウレタンの発泡による気泡と中空微粒子の気泡との両方が形成されていることが確認できた。
比較例3において使用された中空微粒子は、実施例1~3で使用した多孔質微粒子とは異なり、多孔質構造を有していない。そのため、中空微粒子の表面で保持できるスラリー量が少なく、比較例3の研磨パッドは研磨性能に劣ったと考えられる。
【0103】
以上の結果より、ポリウレタン樹脂及び多孔質微粒子を含み、略涙形状の気泡を有する研磨層を有する研磨パッドが、研磨レートが高く、かつトポグラフィー性能に優れることが確認できた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8