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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047980
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】燃料電池モジュールおよび燃焼器
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20240401BHJP
   F23N 1/00 20060101ALI20240401BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20240401BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
F23N1/00 102Z
H01M8/12 101
H01M8/12 102A
H01M8/12 102B
H01M8/12 102C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153776
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】519322392
【氏名又は名称】森村SOFCテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤木 陽祐
【テーマコード(参考)】
3K068
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
3K068FB07
3K068FC01
3K068FD03
3K068HA01
5H126BB05
5H126BB06
5H127AA04
5H127AA07
5H127BA02
5H127BA13
5H127BA34
5H127BA38
5H127BA47
5H127BB02
5H127BB19
5H127EE02
5H127EE03
5H127EE16
5H127EE29
5H127EE30
(57)【要約】
【課題】燃料電池モジュールに用いられる燃焼器の燃焼性能を向上させる。
【解決手段】燃料電池モジュールは、燃料電池と、燃料電池の発電に利用されなかった燃料ガスおよび水蒸気を含む混合ガスである燃料オフガスが噴出する複数の燃料ガス噴出口が形成され、燃料オフガスを燃焼させる燃焼器と、を備える燃料電池モジュールにおいて、いずれか1つの燃料ガス噴出口である特定噴出口から噴出する燃料オフガスの燃焼熱量は、10W以上である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池と、前記燃料電池の発電に利用されなかった燃料ガスおよび水蒸気を含む混合ガスである燃料オフガスが噴出する複数の燃料ガス噴出口が形成され、前記燃料オフガスを燃焼させる燃焼器と、を備える燃料電池モジュールにおいて、
いずれか1つの前記燃料ガス噴出口である特定噴出口から噴出する前記燃料オフガスの燃焼熱量は、10W以上である、
ことを特徴とする燃料電池モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池モジュールであって、
前記特定噴出口から噴出する前記燃料オフガスの流速は、1.45m/s以下である、
ことを特徴とする燃料電池モジュール。
【請求項3】
請求項2に記載の燃料電池モジュールであって、
各前記燃料ガス噴出口の口径は、5mm以上かつ20mm以下である、
ことを特徴とする燃料電池モジュール。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の燃料電池モジュールであって、
燃料利用率70%以上での前記燃料電池の発電時において、前記特定噴出口から噴出する前記燃料オフガスの燃焼熱量は、10W以上である、
ことを特徴とする燃料電池モジュール。
【請求項5】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の燃料電池モジュールであって、
各前記燃料ガス噴出口の口径は、隣の前記燃料ガス噴出口との間隔より大きい、
ことを特徴とする燃料電池モジュール。
【請求項6】
燃料電池の発電に利用されなかった燃料ガスおよび水蒸気を含む混合ガスである燃料オフガスが噴出する複数の燃料ガス噴出口が形成され、前記燃料オフガスを燃焼させる前記燃料電池用の燃焼器において、
いずれか1つの前記燃料ガス噴出口である特定噴出口から噴出する前記混合ガスの燃焼熱量は、10W以上である、
ことを特徴とする燃焼器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、燃料電池モジュールおよび燃焼器に関する。
【背景技術】
【0002】
水素と酸素との電気化学反応を利用して発電を行う燃料電池モジュールにおいて、燃料電池と、燃料電池における発電のために燃料オフガス(燃料電池の発電に利用されなかった燃料ガスおよび水蒸気を含む混合ガス)を燃焼させる燃焼器と、を備える構成が知られている。燃焼器には、燃料オフガスが流れる燃料ガス流路が形成されている。当該燃料ガス流路は、燃料オフガスが噴出する複数の燃料ガス噴出口を含んでいる(例えば、特許文献1参照)。当該燃料ガス噴出口から噴出した燃料オフガスが酸化剤ガス(例えば、燃料電池の発電に利用されなかった酸化剤ガスである酸化オフガス)と共に燃焼する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-54150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような燃料電池モジュールにおいて、燃料利用率(燃料電池で電力に変換された燃料(H)の発熱量/燃料電池に供給される原燃料ガスが100%燃料(H)に改質されたとみなした際の燃料(H)の発熱量)を高くすることが課題となっている。
【0005】
一方で、燃料利用率が高くなるほど、燃料オフガス(燃料電池の発電に利用されなかった燃料ガスおよび水蒸気を含む混合ガス)の水素濃度が低くなることから、高燃料利用率(例えば、70%以上)で燃料電池を動作(発電)させる際には、複数の燃料ガス噴出口のうちの何れかにおいて燃焼炎の失火が生じる(ひいては、燃焼器の燃焼性能が低下する)おそれがある。特に、従来の設計思想では、燃料ガス噴出口が複数である構成においては、設計上の理由(燃料ガス噴出口から噴出する流量、流速等)等により全ての燃料ガス噴出口の口径の合計に上限が存在し、当該上限を考慮して1つの燃料ガス噴出口の口径を小さくしていたため、上記の燃焼炎の失火が生じることが多い。
【0006】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0008】
(1)本明細書に開示される燃料電池モジュールは、燃料電池と、前記燃料電池の発電に利用されなかった燃料ガスおよび水蒸気を含む混合ガスである燃料オフガスが噴出する複数の燃料ガス噴出口が形成され、前記燃料オフガスを燃焼させる燃焼器と、を備える燃料電池モジュールにおいて、いずれか1つの前記燃料ガス噴出口である特定噴出口から噴出する前記燃料オフガスの燃焼熱量は、10W以上である。
【0009】
本燃料電池モジュールが備える燃焼器においては、特定噴出口から噴出する燃焼熱量が10W以上と大きいことにより、特定噴出口における燃焼炎の失火が抑制される。そのため、本燃料電池モジュールによれば、燃焼器の燃焼性能を向上(ひいては、燃料電池モジュールの発電性能)させることができる。
【0010】
(2)上記燃料電池モジュールにおいて、前記特定噴出口から噴出する前記燃料オフガスの流速は、1.45m/s以下である構成としてもよい。仮に特定噴出口から噴出する燃料オフガスの流速が過度に高い(例えば、1.45m/sより高い)と、比較的、特定噴出口から噴出する燃料オフガスが炎を形成する前に吹き抜けて燃焼炎の失火が生じやすくなる。これに対し、本燃料電池モジュールの燃焼器においては、特定噴出口から噴出する燃料オフガスの流速が1.45m/s以下と低いため、特定噴出口における燃焼炎の失火を更に抑制することができる。そのため、本燃料電池モジュールによれば、燃焼器の燃焼性能(ひいては、燃料電池モジュールの発電性能)を更に向上させることができる。
【0011】
(3)上記燃料電池モジュールにおいて、各前記燃料ガス噴出口の口径は、5mm以上かつ20mm以下である構成としてもよい。特定噴出口における燃焼炎の失火を更に抑制することができる。本燃料電池モジュールが備える燃焼器においては、各燃料ガス噴出口の口径が5mm以上とある程度大きいため、各燃料ガス噴出口から噴出する燃料オフガスの流量が大きくなる(かつ、流速が低くなる)ことにより燃焼器の燃焼性能がある程度確保されるものでありながら、各燃料ガス噴出口の口径が20mm以下とある程度小さいため、燃焼器を小型化することができる。そのため、本燃料電池モジュールによれば、燃焼器の燃焼性能(ひいては、燃料電池モジュールの発電性能)を更に向上させることができる。
【0012】
(4)上記燃料電池モジュールにおいて、燃料利用率70%以上での前記燃料電池の発電時において、前記特定噴出口から噴出する前記燃料オフガスの燃焼熱量は、10W以上である構成としてもよい。そのため、本燃料電池モジュールによれば、70%以上という高燃料利用率で燃料電池を動作(発電)させることにより、水素濃度が比較的低い燃料オフガスが燃料ガス噴出口から噴出する場合においても、燃焼炎の失火を効果的に抑制することができる。
【0013】
(5)上記燃料電池モジュールにおいて、各前記燃料ガス噴出口の口径は、隣の前記燃料ガス噴出口との間隔より大きい構成としてもよい。そのため、本燃料電池モジュールが備える燃焼器によれば、燃料ガス噴出口の口径がある程度大きいものでありながら、隣り合う燃料ガス噴出口の間隔がある程度狭いことにより、燃料オフガスの燃焼熱量を大きくしつつ、燃焼器を小型化することができる。
【0014】
(6)本明細書に開示される燃焼器は、燃料電池の発電に利用されなかった燃料ガスおよび水蒸気を含む混合ガスである燃料オフガスが噴出する複数の燃料ガス噴出口が形成され、前記燃料オフガスを燃焼させる前記燃料電池用の燃焼器において、いずれか1つの前記燃料ガス噴出口である特定噴出口から噴出する前記混合ガスの燃焼熱量は、10W以上である。本燃焼器によれば、上述したように、特定噴出口から噴出する燃焼熱量が10W以上と大きいことにより、特定噴出口における燃焼炎の失火を抑制することができる。
【0015】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、燃焼器、燃焼器を備える燃料電池モジュール、及びそれらの製造方法等の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態における燃料電池モジュール1の構成を模式的に示す図
図2図1に示す燃料電池モジュールの燃焼器12の分解斜視図
図3図1に示す燃料電池モジュールの燃焼器12の外観構成を示す平面図
図4図3に示す燃焼器12の本体部44の外観構成を示す平面図
図5図3のV-Vの位置における燃焼器12のYZ断面構成を示す図
図6図3のVI-VIの位置における燃焼器12のXZ断面構成を示す図
図7図3のVII-VIIの位置における燃焼器12のXZ断面構成を示す図
図8】検証試験1の結果を示す説明図
図9】検証試験2の結果を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0017】
A.本実施形態:
A-1.燃料電池モジュール1の構成:
図1は、本実施形態における燃料電池モジュール1の構成を模式的に示す図である。なお、図1において、燃料ガスFG(原燃料ガスRFG、水蒸気が混合された原燃料ガスRFGである混合ガスMG、及び燃料電池スタック(燃料電池)2において発電に使用されずに残った燃料オフガスFOGを含む)の流れが一点鎖線で示され、酸化剤ガスOG(燃料電池スタック2において発電に使用されなかった酸化剤オフガスOOGを含む)の流れが実線で示され、排気ガスEGの流れが破線で示されている。
【0018】
図1に示すように、燃料電池モジュール1は、水素と酸素との電気化学反応を利用して発電を行う燃料電池スタック2と、燃料電池スタック2に反応ガス(酸化剤ガスOG、燃料ガスFG)を供給する流体供給装置4とを備える。
【0019】
流体供給装置4は、蒸発器4aと、改質・加熱器4bとを備える。
【0020】
蒸発器4aには、水WAを供給するための水供給用配管20と、原燃料ガスRFGを供給するための原燃料ガス供給配管22と、排気ガスEGを排出するための排気ガス排出管23が接続されている。また、蒸発器4aには、改質・加熱器4bのハウジング6から蒸発器4aへ排気ガスEGを供給する排気ガス配管26と、蒸発器4aから改質器10へ混合ガスMGを供給する混合ガス導管28とが接続されている。
【0021】
蒸発器4aは、排気ガス配管26を通じて供給された排気ガスEGの熱により、水供給用配管20から供給された水WAを蒸発させて水蒸気を生成すると共に、この水蒸気を原燃料ガス供給配管22から供給された原燃料ガスRFGと混合するように構成されている。蒸発器4aにおいて水蒸気と混合された原燃料ガスRFGである混合ガスMGは、混合ガス導管28を通じて改質器10に供給される。なお、水WAを加熱した排気ガスEGは排気ガス排出管23を通じて外部に排出される。
【0022】
改質・加熱器4bはハウジング6を備えており、このハウジング6が燃料電池スタック2の上方に鉛直方向に並べて配置されている。これらの燃料電池スタック2及びハウジング6は、断熱材8によって包囲されているとともに、燃料電池スタック2とハウジング6との間にも断熱材8が設けられているため、燃料電池スタック2は、ハウジング6(流体供給装置4)から熱的に隔離されている。この燃料電池スタック2及びハウジング6を包囲している断熱材8は、燃料電池モジュール1の最表面を構成しており、断熱材8の外側を覆う金属製の容器等は設けられていてもよいが、設けられていなくてもよい。また、ハウジング6によって密閉された空間内には、改質器10及び燃焼器12が収容されている。
【0023】
ハウジング6は、二重壁構造となっており、内壁と外壁の間に空気流路6Aが形成されている。ハウジング6の天面には空気供給パイプ24が接続されており、外部から空気供給パイプ24を通じて酸化剤ガスOGとしての空気が供給される。空気流路6Aに供給された空気(酸化剤ガスOG)は、空気流路6Aを流れる間に、燃焼器12の燃焼熱により加熱される。空気流路6A内において加熱された空気は、酸化剤ガス供給通路32を介して燃料電池スタック2に供給される。
【0024】
改質・加熱器4bと燃料電池スタック2との間には、改質器10から燃料電池スタック2に燃料ガスFGを供給する燃料供給通路30が設けられ、ハウジング6の空気流路6Aから加熱された空気(酸化剤ガスOG)を燃料電池スタック2に供給する酸化剤ガス供給通路32が設けられている。また、改質・加熱器4bと燃料電池スタック2との間には、燃料電池スタック2において発電に使用されなかった燃料ガス(より厳密には、燃料ガスおよび水蒸気を含む混合ガス)FGである燃料オフガスFOGを燃焼器12に供給するための燃料排出通路34と、燃料電池スタック2において発電に使用されなかった酸化剤ガスOGである酸化剤オフガスOOGを燃焼器12に供給するための酸化剤ガス排出通路36が接続されている。
【0025】
改質器10には、改質触媒(図示せず)が充填されており、蒸発器4aから混合ガス導管28を通じて混合ガスMG(水蒸気が混合された原燃料ガスRFG)が供給され、燃焼器12の燃焼熱により混合ガスMGを水蒸気改質して、水素を豊富に含む燃料ガスFGを生成するように構成されている。改質器10において生成された燃料ガスFGは燃料電池スタック2に送られ、燃料電池スタック2において発電に使用される。この燃料ガスFGは、改質器10と燃料電池スタック2の間に延びる燃料供給通路30を介して燃料電池スタック2に供給される。なお、燃料ガスFGを供給する燃料供給通路30は、ハウジング6及び断熱材8を貫通して燃料電池スタック2へ延びている。
【0026】
燃焼器12は、内部に空間が形成された箱形部材であり、例えば金属により形成されている。燃焼器12は、燃料電池スタック2において発電に使用されずに残った燃料オフガスFOG及び酸化剤オフガスOOGを燃焼させるように構成されている。燃料電池スタック2において発電に使用されずに残った燃料オフガスFOGは、燃焼器12と燃料電池スタック2の間に延びる燃料排出通路34を介して燃焼器12へ排出される。この燃料排出通路34も、ハウジング6及び断熱材8を貫通して燃料電池スタック2から燃焼器12へ延びている。燃焼器12へ排出された残余燃料としての燃料オフガスFOGは、燃焼器12によって燃焼され、燃焼器12の上方に配置された改質器10を加熱する。これにより、改質器10内の改質触媒(図示せず)が水蒸気改質可能な温度に加熱される。
【0027】
一方、発電用の酸化剤ガスOGである空気も外部から空気供給パイプ24を通じてハウジング6に供給され、空気流路6Aを通る間に燃焼器12の燃焼熱によって加熱され、高温になった状態で燃料電池スタック2へ供給される。流体供給装置4において加熱された発電用の空気は、ハウジング6から延びる酸化剤ガス供給通路32を介して燃料電池スタック2に供給される。この酸化剤ガス供給通路32も、ハウジング6を包囲する断熱材8を貫通してハウジング6から燃料電池スタック2へ延びている。
【0028】
燃料電池スタック2は、平板型セルスタックであり、複数の長方形の平板型燃料電池セルを積層して構成されている。燃料電池スタック2は、ハウジング6の外部に独立して設けられている。各燃料電池セルは、酸化物イオン伝導体で構成された平板状の電解質の両面に、燃料極及び空気極(酸化剤ガス極)の電極を夫々設けることにより構成され、各燃料電池セルの間にはセパレータが配置されている。各燃料電池セルには、燃料供給通路30及び酸化剤ガス供給通路32を通じて燃料ガスFG及び酸化剤ガスOGが供給され、燃料電池セルによる発電が行われる。
【0029】
燃料電池スタック2に供給され、発電に使用されずに残った残余の燃料オフガスFOGは、上述の通り、燃料排出通路34を介して燃焼器12へ排出される。また、燃料電池スタック2に供給され、発電に使用されずに残った残余の空気(酸化剤オフガスOOG)は、酸化剤ガス排出通路36を介して燃焼器12へ排出される。この酸化剤ガス排出通路36も、ハウジング6を包囲する断熱材8を貫通して燃料電池スタック2から燃焼器12へ延びている。燃焼器12へ排出された酸化剤オフガスOOGは、燃焼器12における燃焼に使用される。燃焼により生成された燃焼ガスは、排気ガスEGとして排気ガス配管26を通じて蒸発器4aに排出される。蒸発器4aに排出された排気ガスEGは、水WAを蒸発するのに用いられた後に、排気ガス排出管23から外部に排出される。
【0030】
A-2.燃焼器12の詳細構成(基本的構成):
次に、本実施形態における燃焼器12の詳細構成(基本的構成)について説明する。図2から図7は、図1に示す燃料電池モジュール1の燃焼器12を示す図である。図2は分解斜視図であり、図3は燃焼器12の外観構成を示す平面図である。図4は燃焼器12の本体部44の外観構成を示す平面図である。なお、図4では、後述するカバー部材43A,43Bが省かれたときの状態が示されている。図5は、図3のV-Vの位置における燃焼器12のYZ断面構成を示す図である。図6は、図3のVI-VIの位置における燃焼器12のXZ断面構成を示す図である。図7は、図3のVII-VIIの位置における燃焼器12のXZ断面構成を示す図である。なお、各図においてハウジング6の記載は基本的に省略されており、図6,7においてはハウジング6の底面6aの一部のみが記載されている。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方と呼び、Z軸負方向を下方と呼ぶものとするが、燃焼器12は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。
【0031】
図2から図7に示すように、燃焼器12は燃料オフガスFOG及び酸化剤オフガスOOGを噴出するマニホールドからなり、このマニホールドは、図6等に示すように、ハウジング6の底面6a上に配置された本体部44及び底板42を備える。ハウジング6の底面6aには、酸化剤ガス排出通路36が接続される酸化剤ガス開口(図示せず)と、燃料排出通路34が接続される燃料開口6Cとが形成されている。
【0032】
図2図5および図6に示すように、底板42は、略長方形状の平板部42Aと、平板部42Aの中央に形成された開口部42aに接続された管状部42Bとを有する。管状部42Bは平板部42Aから下方に延びるように形成されている。なお、底板42の管状部42Bは、燃料排出通路34の一部を構成する。以下において、底板42の開口部42aを、「燃料ガス流路52の入口」ともいう。
【0033】
図2および図4等に示すように、本体部44は、平坦な略矩形の環状の縁部49と、環状である縁部49の内側において縁部49から上方に向かって突出する第1酸化剤ガス案内部46と、環状である第1酸化剤ガス案内部46の内側において第1酸化剤ガス案内部46から上方に向かって突出する燃料ガス噴出部48と、を有する。
【0034】
第1酸化剤ガス案内部46は、縁部49に沿った環状であると共に平面視(Z軸方向視)略矩形状に上方に延びるように形成された側壁部46Aと、環状である側壁部46Aの内側において側壁部46Aの上端を閉鎖する平板状の平板部46Bとを有する。側壁部46Aと平板部46Bとの境界(略矩形)における角部は湾曲状に面取りされている。また、平板部46Bの幅方向(X軸方向)の両側には、円形の開口部を形成する酸化剤ガス噴出部47が、長手方向(Y軸方向)に沿って一列に等間隔で並ぶように複数(31個)形成されている。
【0035】
図2から図4、および図6等に示すように、燃焼器12は、更に、本体部44の幅方向(X軸方向)の両側の第1酸化剤ガス案内部46上に1つずつ配置されたカバー部材43A,43Bを備える。各カバー部材43A,43Bは、第1酸化剤ガス案内部46に接続(例えば溶接)されている。各カバー部材43A,43Bは、一列に並ぶ複数(31個)の酸化剤ガス噴出部47を上方から覆うように位置している。換言すれば、各カバー部材43A,43Bは、本体部44に対して燃焼空間(後述するハウジング6の内部空間7(の燃料ガス噴出口48C周辺))側に位置している。
【0036】
全体として、2つのカバー部材43A,43Bは、互いに、平板部46Bの長手方向(Y軸方向)の中心を対称面として面対称な構成となっている。各カバー部材43A,43Bは、平坦な略矩形の縁部431A,431Bと、縁部431A,431Bに対して燃料ガス噴出部48側において縁部49から略矩形状に上方に突出する第2酸化剤ガス案内部432A,432Bと、を有する。第2酸化剤ガス案内部432A,432Bは、本体部44の中央側である燃料ガス噴出部48側に対向する部分が開口しており、後述する酸化剤ガス流路50の出口(特定空間SPA,SPBの開口部43a,43b)の一部を画定している。
【0037】
図6図3および図4等に示すように、上述したカバー部材43A,43Bと本体部44とにより、空間(以下、「特定空間」という。)SPA,SPBが形成されている。本体部44の幅方向(X軸方向)の両側の各特定空間SPA,SPBは、その下方に位置する各酸化剤ガス噴出部47と繋がっている。各特定空間SPA,SPBは、平面視(Z軸方向視)略矩形状(より正確には、燃料ガス噴出部48側である下底が上底よりもわずかに長い略台形状)である。
【0038】
各特定空間SPA,SPBは、燃料ガス噴出部48(より詳細には、後述する燃料ガス噴出口48C))側に向かって開口する開口部43a,43bを含んでいる。当該開口部43a,43bは、カバー部材43A,43Bのうち、特定空間SPA,SPBを覆う表面(以下、「特定表面」という。)SFA,SFBの一部により画定されている。
【0039】
特定表面SFA,SFBのうち開口部43a,43b側部分は、酸化剤ガス噴出部47が並ぶ方向(Y軸方向)の一端と他端との間の距離が、当該方向に直交するX軸方向に沿って燃料ガス噴出部48(燃料ガス流路52の出口(燃料ガス噴出口48C))に近づくほど長くなっている。以下において、特定空間SPA,SPBの開口部43a,43bを、「酸化剤ガス流路50の出口」ともいう。
【0040】
なお、一列に並ぶ複数(31個)の酸化剤ガス噴出部47は、燃料ガス噴出部48との間の距離が基本的に略同一であるが、平板部46Bの長手方向(Y軸方向)の両端に位置する各酸化剤ガス噴出部47のみは、燃料ガス噴出部48との間の距離が比較的短い。
【0041】
図2図3および図4等に示すように、燃料ガス噴出部48は、本体部44の幅方向(X軸方向)中央に長手方向(Y軸方向)に沿って延びるように形成されている。燃料ガス噴出部48は、第1酸化剤ガス案内部46に沿った環状であると共に平面視(Z軸方向視)略矩形状に上方に延びるように形成された側壁部48Aと、環状である側壁部48Aの内側において側壁部48Aの上端を閉鎖する天面部48Bとを備える。
【0042】
天面部48Bには、本体部44の幅方向(X軸方向)の中央に位置すると共に長手方向(Y軸方向)に沿って一列に並ぶ円形の開口部が複数(12個)形成されている。各開口部の周縁には円筒状の円筒側壁部48Dが形成されており、この円筒側壁部48Dの上端に燃料ガス噴出口48Cが形成されている。燃料ガス噴出口48Cは長手方向に沿って等間隔に並んでいる。燃料ガス噴出部48の長手方向(Y軸方向)の中央付近に位置する燃料ガス噴出口48C(481C)の下方に、燃料ガス流路52の入口(底板42の開口部42a)が位置している(図6等参照)。当該燃料ガス噴出口481Cは、燃料ガス流路52の入口(底板42の開口部42a)から最も近い燃料ガス噴出口48Cである。以下において、燃料ガス噴出口48Cを「燃料ガス流路52の出口」ともいい、燃料ガス噴出部48の長手方向(Y軸方向)の中央付近に位置する上記燃料ガス噴出口48C(481C)を「中央側出口481C」ともいう。
【0043】
図6等に示すように、本体部44は、縁部49がハウジング6の底面6aに当接するように配置されており、縁部49とハウジング6の底面6aとが接続(例えば溶接)されている。また、底板42は、管状部42Bがハウジング6の底面6aの燃料開口6Cを貫通するように配置されている。さらに、底板42の平板部42Aが、本体部44の平板部46Bの燃料ガス噴出部48の周囲に接続(例えば溶接)されている。
【0044】
このような構成により、ハウジング6の底面6aと、本体部44の第1酸化剤ガス案内部46との間には、酸化剤ガスOGが流れる酸化剤ガス流路50が形成される。酸化剤ガス流路50は、ハウジング6の底面6aの酸化剤ガス開口を通じて、酸化剤ガス排出通路36と連通している。
【0045】
また、酸化剤ガス流路50は、酸化剤ガス噴出部47を通じてハウジング6の内部空間7と連通している。換言すれば、燃料ガス噴出口48Cは、燃料オフガスFOGと酸化剤オフガスOOGとが混合される燃焼空間(ハウジング6の内部空間7)に向かって開口している。なお、本実施形態では、酸化剤ガス流路50には、酸化剤ガス排出通路36を介して燃料電池スタック2において発電に使用されなかった酸化剤オフガスOOGが供給されるが、これに限らず、外部から直接酸化剤ガスOGを供給することも可能である。
【0046】
また、底板42の平板部42Aと、本体部44の燃料ガス噴出部48との間には、燃料オフガスFOGが流れる燃料ガス流路52が形成される。燃料ガス流路52は、燃料ガス噴出部48の長手方向(Y軸方向)に沿って略全長にわたって延びている。燃料ガス流路52は、ハウジング6の底面6aの燃料開口6Cを通じて燃料排出通路34と連通している。また、燃料ガス流路52は、燃料ガス噴出口48Cを通じてハウジング6の内部空間7と連通している。燃料ガス噴出部48は、第1酸化剤ガス案内部46の平板部46Bに対して上方に向かって延びており、上端の燃料ガス噴出口48Cは、酸化剤ガス噴出部47よりも上方に位置している。
【0047】
全体として、底板42及び本体部44は、幅方向(X軸方向)の中心を対称面として略面対称な構成となっている。そして、燃料ガス噴出口48Cは対称面に沿うように一列に配置されている。なお、本実施形態では、燃料ガス噴出口48Cは当該対称面に沿うように一列に配置されているが、これに限らず、例えば、ジグザグの線上に一列に配置してもよい。
【0048】
図2図6および図7等に示すように、燃焼器12は、更に、底板42の平板部42Aと本体部44の燃料ガス噴出部48との間に形成された燃料ガス流路52内に配置された中仕切り部材41を備える。
【0049】
中仕切り部材41は、その幅方向(X軸方向)の両側それぞれに位置する平坦な縁部41A,41Bと、両縁部41A,41Bの内側において縁部41A,41Bから略矩形状に上方に向かって突出する中央部41Cとを備える。中仕切り部材41は、燃料ガス流路52の長手方向(Y軸方向)の略全長にわたって位置している。
【0050】
図6等に示すように、中仕切り部材41は、縁部41A,41Bが底板42の上面42bに当接するように配置されており、縁部41A,41Bと底板42の上面42bとが接続(例えば溶接)されている。
【0051】
中仕切り部材41により、燃料ガス流路52は、入口(底板42の開口部42a)側と、出口(燃料ガス噴出口48C)側とに区画されている。以下において、燃料ガス流路52の入口(底板42の開口部42a)側521を「入口側流路部521」といい、燃料ガス流路52の出口(燃料ガス噴出口48C)側522を「出口側流路部522」という。
【0052】
中仕切り部材41の中央部41Cにより囲まれた空間(以下「特定流路」という。)521aは、燃料ガス流路52の入口側流路部521の一部である。特定流路521aは、燃料ガス流路52の長手方向(Y軸方向)に沿って燃料ガス流路52の略全長にわたって延伸している(図4参照)。すなわち、特定流路521aは、複数の燃料ガス流路52の出口(燃料ガス噴出口48C)が並ぶ方向に延びている。特定流路521aは、燃料ガス流路52の入口(底板42の管状部42B)の上方に位置している。
【0053】
図6等に示すように、中仕切り部材41の中央部41Cは、燃料ガス流路52の入口(底板42の開口部42a)から第1出口(燃料ガス噴出口48C)に向かう方向(Z軸方向)(以下、「第1方向」という。)に交差する表面(以下、「第1表面」という。)を有する。第1表面411cは、特定流路521aに面している。
【0054】
中仕切り部材41の中央部41Cは、第1表面411cから、第1方向(Z軸方向)の燃料ガス流路52の入口(底板42の開口部42a)側に向かう方向(Z軸負方向)に沿って延伸して特定流路521aに面する表面(以下、「第2表面」という。)412c,413cを有する。第2表面412c,413cも、特定流路521aに面している。
【0055】
図6等に示すように、中仕切り部材41の幅方向(X軸方向)の両側における、縁部41A,41Bと中央部41Cとの境界付近には、特定流路521aと出口側流路部522とを連通する円形の開口部を形成する燃料ガス流通部414c,415cが複数(21個)形成されている。この複数(21個)の燃料ガス流通部414c,415cは、中仕切り部材41の長手方向(Y軸方向)に沿って一列に並んでいる。
【0056】
A-3.燃焼器12における燃料オフガスFOG及び酸化剤オフガスOOGの流れ:
次に、図6を参照しながら、燃焼器12における燃料オフガスFOG及び酸化剤オフガスOOGの流れについて説明する。
【0057】
燃料ガス流路52には、燃料排出通路34を通じて燃料電池スタック2において発電に使用されなかった燃料オフガスFOGが供給される。燃料ガス流路52に供給された燃料オフガスFOGは、中仕切り部材41(の中央部41C)の第1表面411cに衝突し、これに案内され、特定流路521aを通じてY軸方向(燃料ガス流路52の長手方向)に供給される。より詳細には、特定流路521aにおいて、燃料ガス噴出部48の長手方向(Y軸方向)の中央付近に位置する入口(底板42の開口部42a)から長手方向(Y軸方向)の両側それぞれに向かって(換言すれば、何れかの燃料ガス噴出口48C側から他の燃料ガス噴出口48C側に供給される。その過程で、燃料オフガスFOGは、中仕切り部材41に形成された何れかの燃料ガス流通部414c,415cを通じて出口側流路部522に供給され、燃料ガス噴出口48Cから鉛直上方に向かって燃焼空間(ハウジング6の内部空間7)に向かって噴出される。
【0058】
酸化剤ガス流路50には、酸化剤ガス排出通路36を通じて燃料電池スタック2において発電に使用されなかった酸化剤オフガスOOGが供給される。酸化剤ガス排出通路36を通じて酸化剤ガス流路50に供給された酸化剤オフガスOOGは、底板42の平板部42Aに衝突し、これに案内され、水平方向(XY平面方向)に外方に向かって流れる。その過程で、酸化剤オフガスOOGは、第1酸化剤ガス案内部46の側壁部46A及び平板部46Bにより、何れかの酸化剤ガス噴出部47に送られる。そして、酸化剤オフガスOOGは、第2酸化剤ガス案内部432A,432Bにより案内されて、酸化剤ガス噴出部47から燃料ガス噴出部48の側壁部48Aに向かってハウジング6の内部空間7に噴出される。酸化剤ガス噴出部47から燃料ガス噴出部48の側壁部48Aに向かって噴出された酸化剤オフガスOOGは側壁部48Aに衝突する。そして、酸化剤オフガスOOGは、側壁部48Aに沿うように上方に向かって案内される。
【0059】
このようにして噴出された燃料オフガスFOGは、着火装置(図示せず)により着火され、酸化剤オフガスOOGとともに燃焼する。そして、燃料オフガスFOGが燃焼することにより発生した燃焼熱により、改質器10が加熱され、また、ハウジング6の空気流路6Aを流れる空気が加熱される。
【0060】
A-4.燃焼器12の詳細構成(特徴的構成):
次に、本実施形態における燃焼器12の詳細構成(特徴的構成)について更に説明する。
【0061】
燃焼器12は、下記の第1特定条件を満たしている。
(第1特定条件)
いずれか1つの燃料ガス噴出口48Cである特定噴出口(48C)(本実施形態では全ての燃料ガス噴出口48Cがこれに該当)から噴出する燃料オフガスFOGの燃焼熱量BHは、10W以上である。
【0062】
上記第1特定条件における「燃料オフガスFOG」は、燃料電池スタック2において発電に使用されずに残った燃料(完全改質後のH状態)と、燃料電池スタック2の発電により生成された水蒸気(HO)と、原燃料ガスRFGを改質器10により改質した際に生成されるCOと、改質器10における水蒸気改質のために供給される水蒸気から当該水蒸気改質に利用された水蒸気を除いたものと、を含むガスである。
【0063】
上記第1特定条件における上記「燃焼熱量BH」(W)は、「燃料オフガスFOG」に含まれる「燃料電池スタック2において発電に使用されずに残った燃料(H)」が理論的に完全燃焼した際の燃焼熱量である。各燃料ガス噴出口48Cから均一に「燃料オフガスFOG」が噴出された際の熱量を各燃料ガス噴出口48Cの熱量とみなす。以上のような方針に基づいて、具体的には、「燃焼熱量BH」は数式:「燃焼熱量BH」(W)=(「燃料電池スタック2において発電に使用されずに残った燃料(H)」のうち1つの燃料ガス噴出口48Cから噴射する燃料(H)の流量(m/s))×(当該燃料(H)の低位発熱量(10.78(MJ/m))×10)により算出されるものである。
【0064】
ここで、「燃料電池スタック2において発電に使用されずに残った燃料(H)」の流量(m/s)は、原燃料ガスRFGが100%燃料(H)に改質されたとみなして、燃料電池スタック2の発電によって生じた電流値と蒸発器4aに供給される原燃料ガスRFGの流量とに基づいて算出される。したがって、「燃料電池スタック2において発電に使用されずに残った燃料(H)」の流量(m/s)を燃料ガス噴出口48Cの数で割った値が、1つの燃料ガス噴出口48Cから噴射する燃料(H)の流量(m/s)である。なお、本明細書において「流量(m/s)」は、標準状態(0℃、1気圧)における流量(m/s)を意味する。
【0065】
本実施形態の燃焼器12は、特に、燃料利用率70%以上(例えば、80%)での燃料電池スタック2の発電時において、上記第1特定条件(上記燃焼熱量BHは10W以上である)を満たす構成となっている。燃料利用率(%)は、数式:(燃料電池スタック2で電力に変換された燃料(H)の発熱量)/(燃料電池スタック2に供給される原燃料ガスRFGが100%燃料(H)に改質されたとみなした際の燃料(H)の発熱量)により算出されるものである。具体的には、燃料利用率は、原燃料ガスRFGが100%燃料(H)に改質されたとみなして、燃料電池スタック2の発電によって生じた電流値と蒸発器4aに供給される原燃料ガスRFGの流量とに基づいて算出される。
【0066】
なお、上記「燃焼熱量BH」は、各燃料ガス噴出口48Cの開口面積の合計、燃料ガス噴出口48Cの個数、燃料電池スタック2の燃料利用率、各燃料ガス噴出口48Cの口径(内径)等を制御することにより調整することができる。燃料ガス噴出口48Cの個数を少なくすると、基本的には、「燃焼熱量BH」は高くなる。燃料電池スタック2の燃料利用率を低くすると、基本的には、「燃焼熱量BH」は高くなる。
【0067】
燃焼器12は、更に、下記の第2特定条件を満たしている。
(第2特定条件)
特定噴出口(48C)から噴出する燃料オフガスFOGの流速FRは、1.45m/s以下である。
【0068】
上記第2特定条件における上記「流速FR」(m/s)は、数式:(燃料オフガスFOGの流量(m/s))÷(各燃料ガス噴出口48Cの開口面積の合計(m))により算出されるものである。
【0069】
なお、上記「流速FR」は、燃料ガス噴出口48Cの個数、燃料ガス噴出口48Cの口径、燃料ガス噴出口48Cの開口面積等を制御することにより調整することができる。燃料ガス噴出口48Cの個数、燃料ガス噴出口48Cの口径や燃料ガス噴出口48Cの開口面積を大きくすると、基本的には、「流速FR」は低くなる。
【0070】
燃焼器12は、更に、下記の第3特定条件を満たしている。
(第3特定条件)
各燃料ガス噴出口48Cの口径は、5mm以上かつ20mm以下である。
【0071】
燃焼器12は、更に、下記の第4特定条件を満たしている。
(第4特定条件)
燃料ガス噴出口48C(端に位置する燃料ガス噴出口48Cを除く)の口径は、隣の燃料ガス噴出口48Cとの間隔より大きい。「隣の燃料ガス噴出口48C」とは、他の燃料ガス噴出口48Cのうち、最も近い燃料ガス噴出口48Cであり、「隣の燃料ガス噴出口48Cとの間隔」とは、互いに隣り合う燃料ガス噴出口48Cを画定する輪郭線同士の最短距離である(図3および図4のΔK参照)。
【0072】
A-5.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の燃料電池モジュール1は、燃料電池スタック(燃料電池)2と、燃料オフガスFOGを燃焼させる燃焼器12と、を備える。燃焼器12には、燃料電池スタック2の発電に利用されなかった燃料ガスおよび水蒸気を含む混合ガスである燃料オフガスFOGが噴出する複数の燃料ガス噴出口48Cが形成されている。いずれか1つの燃料ガス噴出口48Cである特定噴出口(48C)(本実施形態では全ての燃料ガス噴出口48Cがこれに該当)から噴出する燃料オフガスFOGの燃焼熱量BHは、10W以上である。
【0073】
本実施形態の燃料電池モジュール1が備える燃焼器12においては、特定噴出口(48C)から噴出する燃焼熱量BHが10W以上と大きいことにより、特定噴出口(48C)における燃焼炎の失火が抑制される。そのため、本実施形態の燃料電池モジュール1によれば、燃焼器12の燃焼性能を向上(ひいては、燃料電池モジュール1の発電性能)させることができる。なお、上記第1特定条件(上記燃焼熱量BHは10W以上である)を満たすことによる優位性は、下記の「検証試験1」等により見出されたものである。
【0074】
また、本実施形態の燃料電池モジュール1が備える燃焼器12では、特定噴出口(48C)から噴出する燃料オフガスFOGの流速FRは、1.45m/s以下である。仮に特定噴出口(48C)から噴出する燃料オフガスFOGの流速FRが過度に高い(例えば、1.45m/sより高い)と、比較的、特定噴出口(48C)から噴出する燃料オフガスFOGが炎を形成する前に吹き抜けて燃焼炎の失火が生じやすくなる。これに対し、本実施形態の燃料電池モジュール1の燃焼器12においては、特定噴出口(48C)から噴出する燃料オフガスFOGの流速FRが1.45m/s以下と低いため、特定噴出口(48C)における燃焼炎の失火を更に抑制することができる。そのため、本実施形態の燃料電池モジュール1によれば、燃焼器12の燃焼性能(ひいては、燃料電池モジュール1の発電性能)を更に向上させることができる。なお、上記第2特定条件(上記流速FRは1.45m/s以下である)を満たすことによる優位性は、下記の「検証試験2」等により見出されたものである。
【0075】
また、本実施形態の燃料電池モジュール1が備える燃焼器12では、各燃料ガス噴出口48Cの口径は、5mm以上かつ20mm以下である。特定噴出口(48C)における燃焼炎の失火を更に抑制することができる。本実施形態の燃料電池モジュール1が備える燃焼器12においては、各燃料ガス噴出口48Cの口径が5mm以上とある程度大きいため、各燃料ガス噴出口48Cから噴出する燃料オフガスFOGの流量が大きくなる(かつ、流速が低くなる)ことにより燃焼器12の燃焼性能がある程度確保されるものでありながら、各燃料ガス噴出口48Cの口径が20mm以下とある程度小さいため、燃料ガス噴出口48Cを複数設けたとしても燃焼器12を小型化することができる。そのため、本実施形態の燃料電池モジュール1によれば、燃焼器12の燃焼性能(ひいては、燃料電池モジュール1の発電性能)を更に向上させることができる。
【0076】
また、本実施形態の燃料電池モジュール1が備える燃焼器12では、燃料利用率(燃料電池スタック2で電力に変換された燃料(H)の発熱量)/(燃料電池スタック2に供給される原燃料ガスRFGが100%燃料(H)に改質されたとみなした際の燃料(H)の発熱量)70%以上での燃料電池スタック2の発電時において、特定噴出口(48C)から噴出する燃料オフガスFOGの燃焼熱量BHは、10W以上である。そのため、本実施形態の燃料電池モジュール1によれば、70%以上という高燃料利用率で燃料電池スタック2を動作(発電)させることにより、水素濃度が比較的低い燃料オフガスFOGが燃料ガス噴出口48Cから噴出する場合においても、燃焼炎の失火を効果的に抑制することができる。
【0077】
また、本実施形態の燃料電池モジュール1が備える燃焼器12では、燃料ガス噴出口48C(端に位置する燃料ガス噴出口48Cを除く)の口径は、隣の燃料ガス噴出口48Cとの間隔より大きい。そのため、本実施形態の燃料電池モジュール1が備える燃焼器12によれば、燃料ガス噴出口48Cの口径がある程度大きいものでありながら、隣り合う燃料ガス噴出口48Cの間隔がある程度狭いことにより、燃料オフガスFOGの燃焼熱量BHを大きくしつつ、燃焼器12を小型化することができる。
【0078】
A-6.検証試験1:
次に、検証試験1について説明する。検証試験1は、上記第1特定条件(上記燃焼熱量BHは10W以上である)による優位性を見出す根拠となった試験である。図8は、検証試験1の結果を示す説明図である。
【0079】
本試験では、図8に示す14個の燃焼器12のサンプルSP1,・・・,SP14を準備し、各サンプルについて、燃料電池スタック2の燃料利用率が異なる条件下で、燃料ガス噴出口48Cから燃料オフガスFOGを噴出させることにより、これらを燃焼させ、その際の燃焼炎の失火の有無を確認した。このとき、燃焼器12の各サンプルを電気炉内に設置し、電気炉内の燃焼環境温度を約700℃とした。本試験では、図8に示すように、各サンプルの燃料ガス噴出口48Cから噴出する燃料オフガスFOGの流速FRが略均一(0.4m/s程度)で燃焼熱量BHが互いに異なるように調整した。
【0080】
図8に示すように、各サンプル(SP1,・・・,SP14)は、燃料電池スタック2の燃料利用率(%)と、各燃料ガス噴出口48Cの口径(mm)とが互いに異なっている。各燃料ガス噴出口48Cの口径が4.2mmであるサンプルSP1,・・・,SP7における燃料ガス噴出口48Cの個数は24個であり、各燃料ガス噴出口48Cの口径が7.5mmであるサンプルSP8,・・・,SP14における燃料ガス噴出口48Cの個数が9個である。それに伴い、各サンプル(SP1,・・・,SP14)は、各燃料ガス噴出口48Cにおける燃焼熱量BH(W)が互いに異なっている。
【0081】
各燃料ガス噴出口48Cにおける燃焼熱量BHが10W以上であるサンプルSP1,・・・,SP3,SP8・・・,SP14では失火が「無し」であるのに対し、各燃料ガス噴出口48Cにおける燃焼熱量BHが10W未満であるサンプルSP4,・・・,SP7では失火が「有り」であった。この結果から、上記燃焼熱量BHが10W以上である構成においては、各燃料ガス噴出口48Cにおける燃焼炎の失火が抑制されることが確認された。
【0082】
A-7.検証試験2:
次に、検証試験2について説明する。検証試験2は、上記第2特定条件(上記流速FRは1.45m/s以下である)による優位性を見出す根拠となった試験である。図9は、検証試験2の結果を示す説明図である。
【0083】
本試験では、検証試験1と同様に、図9に示す14個の燃焼器12のサンプルSP15,・・・,SP28を準備し、検証試験1と同様に、各サンプルについて、燃料電池スタック2の燃料利用率が異なる条件下で、燃料ガス噴出口48Cから燃料オフガスFOGを噴出させることにより、これらを燃焼させ、その際の燃焼炎の失火の有無を確認した。検証試験1と同様に、燃焼器12の各サンプルを設置した電気炉内の燃焼環境温度を約700℃とした。本試験では、図9に示すように、燃料電池スタック2の燃料利用率が同じサンプルについて、燃焼熱量BHを同等にするとともに、流速が互いに異なるように調整した。
【0084】
図9に示すように、各サンプル(SP15,・・・,SP28)は、燃料電池スタック2の燃料利用率(%)と、各燃料ガス噴出口48Cの口径(mm)とが互いに異なっている。各サンプル(SP15,・・・,SP28)における燃料ガス噴出口48Cの個数はいずれも9個である。本試験では、上述したように、燃料利用率が同等であるサンプル(例えば、サンプルSP15とサンプルSP22)について、当該燃焼熱量BHが同等である。
【0085】
各燃料ガス噴出口48Cにおける流速FRが1.45m/s以下である全てのサンプルSP15,・・・,SP28では失火が「無し」であった。この結果から、上記流速FRが1.45m/s以下である構成においては、各燃料ガス噴出口48Cにおける燃焼炎の失火が発生しないことが確認された。
【0086】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0087】
上記実施形態における燃料電池モジュール1の構成や燃料電池モジュール1を構成する各部分の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。上記実施形態における燃焼器12や燃料電池スタック2の構成も、あくまで一例であり、種々変形可能である。
【0088】
上記実施形態では、第1特定条件、第2特定条件、・・・、第4特定条件の全てを満たしているが、これらの条件のうち、第1特定条件のみを満たすとしてもよいし、第1特定条件と他の何れか1つまたは2つの条件のみを満たすとしてもよい。
【0089】
燃焼器12は、特に、燃料利用率70%以上での燃料電池スタック2の発電時において、上記第1特定条件を満たす構成となっているが、燃料利用率70%未満での燃料電池スタック2の発電時において、上記第1特定条件を満たす構成であってもよい。
【0090】
また、燃焼器12が複数備える各種開口部(燃料ガス噴出口48C、酸化剤ガス噴出部47、燃料ガス流通部414c,415c)の個数、配置、および開口面積等は、上記の態様に特に限定されるものではなく(但し、上記特定条件は満たす点を除く)、種々変更可能である。また、複数の燃料ガス噴出口48Cの口径が互いに異なっていてもよく、その場合、複数の燃料ガス噴出口48Cの口径がいずれも5mm以上かつ20mm以下であることが好ましい。なお、燃料ガス噴出口48Cの形状は、円形に限らず、矩形状や楕円形などであってもよい。燃料ガス噴出口48Cの形状が円形ではない場合、燃料ガス噴出口48Cの開口面積から算出した円相当径を、本発明で言う「口径」とみなすことができる。
【0091】
また、上記実施形態では、燃料電池セルは固体酸化物形燃料電池(SOFC)であるが、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)といった他のタイプの燃料電池であってもよい。また、上記実施形態では、燃料電池スタック2は平板型の燃料電池スタックであるが、他のタイプ(いわゆる円筒平板型や円筒形)の燃料電池スタックであってもよい。
【符号の説明】
【0092】
1:燃料電池モジュール 2:燃料電池スタック 4:流体供給装置 4a:蒸発器 4b:改質・加熱器 6:ハウジング 6A:(ハウジングの)空気流路 6C:(ハウジングの)燃料開口 6a:(ハウジングの)底面 7:(ハウジングの)内部空間 8:断熱材 10:改質器 12:燃焼器 20:水供給用配管 22:原燃料ガス供給配管 23:排気ガス排出管 24:空気供給パイプ 26:排気ガス配管 28:混合ガス導管 30:燃料供給通路 32:酸化剤ガス供給通路 34:燃料排出通路 36:酸化剤ガス排出通路 41:中仕切り部材 41A,41B:(中仕切り部材の)縁部 41C:(中仕切り部材の)中央部 42:底板 42A:(底板の)平板部 42B:(底板の)管状部 42a:(底板の)開口部 42b:(底板の)上面 43A,43B:カバー部材 43a,43b:(カバー部材の)開口部 44:(カバー部材の)本体部 46:第1酸化剤ガス案内部 46A:(第1酸化剤ガス案内部の)側壁部 46B:(第1酸化剤ガス案内部の)平板部 47:酸化剤ガス噴出部 48:燃料ガス噴出部 48A:(燃料ガス噴出部の)側壁部 48B:(燃料ガス噴出部の)天面部 48C:燃料ガス噴出口 48D:(燃料ガス噴出部の)円筒側壁部 49:(燃焼器の本体部の)縁部 50:酸化剤ガス流路 52:燃料ガス流路 411c:(中仕切り部材の)第1表面 412c,413c:(中仕切り部材の)第2表面 414c,415c:燃料ガス流通部 431A,431B:(カバー部材の)縁部 432A,432B:第2酸化剤ガス案内部 481C:中央側出口(中央側に位置する燃料ガス噴出口) 521:入口側流路部 521a:特定流路 522:出口側流路部 FG:燃料ガス FOG:燃料オフガス MG:混合ガス OG:酸化剤ガス OOG:酸化剤オフガス RFG:原燃料ガス SFA,SFB:特定表面 SPA,SPB:特定空間 WA:水
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9