(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047983
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】通信端末
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/24 20060101AFI20240401BHJP
H01Q 9/14 20060101ALI20240401BHJP
H01Q 9/42 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
H01Q1/24 Z
H01Q9/14
H01Q9/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153780
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000113665
【氏名又は名称】マスプロ電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】福島 滉希
【テーマコード(参考)】
5J047
【Fターム(参考)】
5J047AB06
5J047FD00
(57)【要約】
【課題】設置場所の状況に応じたアンテナ特性の調整が容易な通信端末を提供する。
【解決手段】金属又は非金属の設置面に設置して使用される設置型の通信端末は、筐体(2)と、アンテナ本体(61)と、可変部(62)と、を備える。筐体は、電波を透過する材料で形成される。アンテナ本体は、筐体内に設置される。可変部は、筐体の外部からの操作によってアンテナ本体を含んだアンテナ部(6)の物理長を変化させるように構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属又は非金属の設置面に設置して使用される設置型の通信端末であって、
電波を透過する材料で形成された筐体と、
前記筐体内に設置されるアンテナ本体と、
前記筐体の外部からの操作によって前記アンテナ本体を含んだアンテナ部の物理長を変化させるように構成された可変部と、
を備える通信端末。
【請求項2】
請求項1に記載の通信端末であって、
前記可変部は、前記アンテナ本体の先端に着脱可能に構成され、前記アンテナ本体の先端に装着された状態で、先端が前記アンテナ本体から突出する長さを有する導電性のビスを備え、
前記筐体は、前記ビスの頭部を当該筐体外に露出させ、前記アンテナ本体に対する前記ビスの着脱操作に用いる操作孔
を備える通信端末。
【請求項3】
請求項1に記載の通信端末であって、
前記可変部は、
前記アンテナ本体の先端にジョイントを介して回動自在に接続される延長部と、
前記筐体の外部に露出した露出部位を有し、該露出部位を操作することで、前記延長部と前記アンテナ本体とが重なりあう重複領域を有する第1位置と、前記第1位置と比較して前記重複領域が小さくなる第2位置との間で、前記延長部を回動させるように構成された操作部と、
を備える通信端末。
【請求項4】
請求項1に記載の通信端末であって、
前記筐体内に設置され、前記アンテナ部を介した通信を少なくとも実行する処理部が実装されるプリント基板である第1基板を更に備え、
前記アンテナ本体が、前記第1基板に設けられた
通信端末。
【請求項5】
請求項1に記載の通信端末であって、
前記筐体内に設置され、前記アンテナ部を介した通信を少なくとも実行する処理部が実装されたプリント基板である第1基板と、
前記筐体内に設置され、前記第1基板とは別体に設けられるプリント基板である第2基板と、
を更に備え、
前記アンテナ本体が、前記第2基板に設けられた
通信端末。
【請求項6】
請求項5に記載の通信端末であって、
前記第2基板は、前記アンテナ部が設けられた部位以外の部位に、グランドパターンが形成された
通信端末。
【請求項7】
請求項4から請求項6までのいずれか1項に記載の通信端末であって、
前記アンテナ本体は、前記プリント基板上に形成された逆L型アンテナ又は逆F型アンテナである
通信端末。
【請求項8】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の通信端末であって、
前記アンテナ本体の少なくとも1部が、前記筐体の内面に形成されたプリントパターンによって実現される、
通信端末。
【請求項9】
金属又は非金属の設置面に設置して使用される設置型の通信端末であって、
電波を透過する材料で形成された筐体と、
前記筐体内に設置されるアンテナ本体と、
前記筐体の外部からの操作によって前記アンテナ本体を含んだアンテナ部の物理長を変化させるように構成された可変部と、
前記筐体内に設置され、前記アンテナ本体を介した通信を少なくとも実行する処理部が実装されたプリント基板である第1基板と、
前記筐体内に設置され、前記第1基板とは別体に設けられ、前記第1基板と対向配置され、前記アンテナ本体が実装されるプリント基板である第2基板と、
を備え、
前記可変部は、前記アンテナ本体の先端に着脱可能に構成され、前記アンテナ本体の先端に装着された状態で、ねじ部の先端が前記アンテナ本体から突出する長さを有する導電性のビスを備え、
前記筐体は、前記ビスの頭部を当該筐体外に露出させ、前記アンテナ本体に対する前記ビスの着脱操作に用いる操作孔を備え、
前記第1基板は、前記ビスと対向する部位に切欠部を備える
通信端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、設置型の通信端末に内蔵されるアンテナの特性を調整する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、独居老人の安否確認のため日常生活に必要な物品に取り付けて使用される設置型の通信端末が記載されている。この通信端末は、当該物品が使用されたか否かをチェックするセンサを内蔵し、チェック結果を無線通信等によって、所定の連絡先に通知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような設置型の通信端末は、設置場所の素材が金属であるか非金属であるかによって、通信端末が備えるアンテナの共振周波数が変化し、所要の性能が得られなくなる場合がある。例えば、通信端末を冷蔵庫に取り付ける例では、金属製の筐体部分に取り付けるか、非金属製の取手付近に取り付けるかによって、共振周波数が異なってしまう。
【0005】
一般的に、アンテナは1つの状況に最適化されるため、設置面が非金属であることを想定して最適化したアンテナは、金属の設置面に設置された場合、特にVSWRが変動し、特性が大きく劣化する。また、小さい通信端末のアンテナは帯域幅が狭い場合が多く、特性変動の影響を受け易い。このため、設置面の素材に応じて複数種類の通信端末を提供する必要があるという問題があった。
【0006】
本開示の1つの局面は、設置場所の状況に応じたアンテナ特性の調整が容易な通信端末を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、金属又は非金属の設置面に設置して使用される設置型の通信端末であって、筐体と、アンテナ本体と、可変部と、を備える。筐体は、電波を透過する材料で形成される。アンテナ本体は、筐体内に設置される。可変部は、筐体の外部からの操作によって、アンテナ本体を含んだアンテナ部の物理長を変化させるように構成される。
【0008】
このような構成によれば、可変部を操作してアンテナ部の物理長を変化させることで、アンテナ設置場所が金属面か非金属面かによって生じるアンテナ特性の変化を抑制することができる。その結果、アンテナ設置場所の状況によらず、同じ通信端末を使用することができる。
【0009】
本開示の一態様では、可変部は、アンテナ本体の先端に着脱可能に構成され、アンテナ本体の先端に装着された状態で、先端がアンテナ本体から突出する長さを有する導電性のビスを備えてもよい。筐体は、ビスの頭部を当該筐体外に露出させ、アンテナ本体に対するビスの着脱操作に用いる操作孔を備えてもよい。
【0010】
このような構成によれば、筐体の外部から操作孔を介してビスを着脱するという簡易な操作により、筐体を分解することなくアンテナ部の物理長を調整することができる。
本開示の一態様では、可変部は、延長部と、操作部と、を備えてもよい。延長部は、アンテナ本体の先端にジョイントを介して回動自在に接続される。操作部は、筐体の外部に露出した露出部位を有し、該露出部位を操作することで、延長部とアンテナ本体とが重なりあう重複領域を有する第1位置と、第1位置と比較して重複領域が小さくなる第2位置との間で、延長部を回動させるように構成される。
【0011】
このような構成によれば、筐体の外部に露出した操作部を操作するという簡易な操作により、筐体を分解することなくアンテナ部の物理量を調整することができる。
本開示の一態様は、筐体内に設置され、アンテナ部を介した通信を少なくとも実行する処理部が実装されるプリント基板である第1基板を更に備えてもよい。アンテナ本体が、第1基板に設けられてもよい。
【0012】
このような構成によれば、処理部とアンテナ本体とが1つのプリント基板上に設けられるため、装置を小型化できる。
本開示の一態様は、第1基板と、第2基板と、を更に備えてもよい。第1基板は、筐体内に設置され、アンテナ部を介した通信を少なくとも実行する処理部が実装されたプリント基板である。第2基板は、筐体内に設置され、第1基板とは別体に設けられるプリント基板である。アンテナ本体が、第2基板に設けられてもよい。
【0013】
このような構成によれば、二つある個々のプリント基板を小型化できる。
本開示の一態様では、第2基板は、アンテナ部が設けられた部位以外の部位に、グランドパターンが形成されてもよい。
【0014】
このような構成によれば、アンテナ特性を向上させることができる。
本開示の一態様では、アンテナ本体は、プリント基板上に形成された逆L型アンテナ又は逆F型アンテナであってもよい。
【0015】
このような構成によれば、プリント基板上でのアンテナ本体の高さを抑制できる。
本開示の一態様では、アンテナ本体の少なくとも1部が、筐体の内面に形成されたプリントパターンによって実現されてもよい。
【0016】
このような構成によれば、プリントパターンによって実現されているアンテナ本体の部位については、物理的な強度を考慮する必要がないため、アンテナ本体の設計を簡易におこなうことができる。
【0017】
本開示の一態様は、金属又は非金属の設置面に設置して使用される設置型の通信端末である。筐体と、アンテナ本体と、可変部と、第1基板と、第2基板と、を備える。筐体は、電波を透過する材料で形成される。アンテナ本体は、筐体内に設置される。可変部は、筐体の外部からの操作によってアンテナ本体を含んだアンテナ部の物理長を変化させるように構成される。第1基板は、筐体内に設置され、アンテナ本体を介した通信を少なくとも実行する処理部が実装されたプリント基板である。第2基板は、筐体内に設置され、第1基板とは別体に設けられ、第1基板と対向配置され、アンテナ本体が実装されるプリント基板である。可変部は、アンテナ本体の先端に着脱可能に構成され、アンテナ本体の先端に装着された状態で、ねじ部の先端がアンテナ本体から突出する長さを有する導電性のビスを備える。筐体は、ビスの頭部を当該筐体外に露出させ、アンテナ本体に対するビスの着脱操作に用いる操作孔を備える。第1基板は、ビスと対向する部位に切欠部を備える。
【0018】
このような構成によれば、アンテナ本体と第2基板との間隔より長さの大きいビスを用いることができ、アンテナ特性の調整範囲を広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態の通信端末の外観及び内部構成の一部を示す斜視図である。
【
図2】通信端末の筐体内に収納される回路部であって、アンテナビスを取り付けた状態を示す斜視図である。
【
図3】通信端末の筐体内に収納される回路部であって、アンテナビスを取り外した状態を示す斜視図である。
【
図4】アンテナビスを取り付けた状態及び取り外した状態を示すアンテナ部分の側面図である。
【
図5】通信端末におけるアンテナ部のVSWRをシミュレーションによって算出した結果を示すグラフである。
【
図6】通信端末におけるアンテナ部のゲインをシミュレーションによって算出した結果を示すグラフである。
【
図7】第2実施形態の通信端末におけるアンテナ部周辺の構造を示す平面図である。
【
図8】第2実施形態の通信端末におけるアンテナ部周辺の構造を示す側面図である。
【
図9】第3実施形態の通信端末におけるアンテナ部周辺の構造を示す平面図である。
【
図10】第3実施形態の通信端末におけるアンテナ部周辺の構造を示す側面図である。
【
図11】従来のアンテナのVSWRをシミュレーションによって算出した結果を示すグラフである。
【
図12】従来のアンテナのゲインをシミュレーションによって算出した結果を示すグラフである。
【
図13】金属ビスをアンテナ部に接近させることで特性を変化させる比較例のアンテナのVSWRをシミュレーションによって算出した結果を示すグラフである。
【
図14】背面金属板無しの条件でアンテナビスを装着/非装着とした場合について、第1実施形態のアンテナ部のVSWRをシミュレーションによって算出した結果を示すグラフである。
【
図15】背面金属板無しの条件で、延長部の回転位置を0°,90°とした場合、更に、延長部の長さを1.5倍とした場合について、第3実施形態のアンテナ部のVSWRをシミュレーションによって算出した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態を説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
第1実施形態の通信端末1は、一人で暮らす見守り対象者の活動の有無を確認する、いわゆる見守りサービスの提供に用いられる。通信端末1は、冷蔵庫や部屋の扉等、見守り対象者の生活動線上に設置され、冷蔵庫や部屋の扉等の開閉時に生じる加速度や磁気の変化を検知すると、基地局に送信する。これにより、対象者に特別な動作を強いることなく、日常生活を送るだけで、対象者の見守りを可能とする。
【0021】
図1に示すように、通信端末1は、筐体2と、回路部3とを備える。
筐体2は、電波を透過する材料(例えば、樹脂)によって、外形が直方体の箱状に形成される。筐体2の内部空間に、回路部3が収納される。
【0022】
筐体2は、互いに対向する二つの面である天面2a及び底面2bを有する。
底面2bは、当該通信端末1を設置する際に、設置先となる物体の面に当接させる面である。
【0023】
天面2aには、後述するアンテナビス62の着脱に用いる操作孔21が形成される。操作孔21は、長方形をした天面2aの長手方向の一端に設けられる。
図1~
図4に示すように、回路部3は、第1基板4と、第2基板5と、アンテナ部6とを備える。
【0024】
第1基板4は、通信回路、加速度センサ、磁気センサ、制御回路等が実装される。
通信回路は、低消費電力で長距離(例えば、数km~数十km程度)のデータ通信が可能な無線通信方式であるLPWAによって基地局との無線通信を行う。LPWAは、Low Power Wide Area-networkの略である。LPAWでは、サブGHz帯(例えば、920MHz)が用いられる。
【0025】
制御回路は、例えば、加速度センサにて下限値以上の加速度が検出された場合、又は磁気センサにて下限値以上の磁気の変化が検出された場合、通信回路を介して、所定の基地局に通知を行う。
【0026】
第1基板4と第2基板5とは、スペーサ31,32を介して、基板面が略平行となる状態で一体化されている。
第2基板5は、第1基板4より長手方向の長さが大きく形成され、第1基板4と対向する面とは反対側の面(以下、非対向面)には、第1基板4と対向する部位の全体を覆うように形成されたグランドパターン51を備える。グランドパターン51は、スペーサ31,32を介して第1基板4のグランドパターン(図示せず)と互いに導通するように構成される。
【0027】
アンテナ部6は、第2基板5において、グランドパターン51が形成されていない部位、すなわち、第1基板4とは非対向となる部位に設けられる。アンテナ部6は、アンテナ本体61と、アンテナビス62とを備える。
【0028】
アンテナ本体61は、金属の薄板を2段階に屈曲することで形成される。アンテナ本体61は、取付部611と、支持部612と、水平部613とを備える。
取付部611及び水平部613は、いずれも、支持部612に対して同じ方向に90°屈曲した形状を有する。つまり、取付部611と水平部613とは、支持部612を挟んで水平となるように構成される。
【0029】
水平部613は、先端にアンテナビス62が着脱されるネジ孔614が設けられる。水平部613は、ネジ孔614が設けられた先端部の強度を維持するために、先端部が先端部以外の部分より幅広に形成されてもよい。
【0030】
取付部611は、第2基板5上に形成された導電パターンに接触した状態で固定される。つまり、水平部613が、第2基板5の基板面に対して平行な状態に保持される。この状態で、支持部612及び水平部613は、逆L型アンテナを形成する。
【0031】
なお、アンテナ本体61は、金属の薄板をL字状に屈曲することで形成されてもよい。この場合、支持部612の先端を取付部611とし、この取付部611を、第2基板5に形成された孔又は溝に差し込んで固定すればよい。
【0032】
アンテナビス62は、少なくとも表面が導電性を有するビスである。
アンテナ部6の特性は、アンテナビス62の有無によって変化する。すなわち、アンテナビス62ありの状態(
図2及び
図4上段参照)では、アンテナビス62なしの状態(
図3及び
図4下段参照)と比較して、アンテナビス62が水平部613から第2基板5に向けて突出している分だけ、アンテナ長が長くなる。これにより、アンテナ部6の共振周波数は、アンテナビス62ありの状態の方が、アンテナビス無しの状態より低下する。
【0033】
支持部612は、回路部3が筐体2内に収納されたときに、水平部613が筐体2の天面2aの内壁に接するような長さに設定される。
また、筐体2の天面2aに形成された操作孔21は、アンテナ本体61に形成されたネジ孔614と、一致する位置に形成される。これにより、アンテナビス62は、筐体2の外部からネジ孔614に着脱可能な構造となる。
【0034】
アンテナビス62は、ネジ孔614に最も深くまで取り付けられたときに、ネジ部の先端が第2基板5の基板面に接触することがない長さのものが用いられる。
[1-2.特性]
アンテナビス62の有無によるアンテナ特性の変化について説明する。
【0035】
まず、着脱可能なアンテナビス62を有さない従来の通信端末において、筐体2の底面2bに背面金属板がある場合と背面金属板がない場合とで、アンテナ特性が変化する様子を
図11及び
図12に示す。
図11はVSWRの周波数特性であり、
図12はアンテナの指向性である。背面金属板がない状態のときに、所定周波数(920MHz)で、VSWRが最小となるように調整される。なお、指向性は、第2基板5に形成されたグランドパターン51の影響で、第2基板5の基板面に直交する正面方向より、グランドパターン51から離れる側(マイナス角度方向)に傾いた特性を有する。
【0036】
上述のよう設定された従来の通信端末を金属面に設置することで、背面金属板がある状態になると、最適なVSWRが得られる共振周波数が920MHzから890MHzに低下し、最大ゲインも、1.5dBから-4.5dBに大きく低下する。
【0037】
本実施形態では、
図5,
図6に示すように、アンテナビス62が取り付けられた状態、かつ背面金属板がない状態のときに、所定周波数(920MHz)で、VSWRが最小となるように調整される。そして、通信端末1が金属面に設置されるときには、アンテナビス62を取り外して使用する。これにより、背面金属板があることによる共振周波数の低下が、アンテナビス62を外すことによる共振周波数の上昇によって補われ、背面金属板の有無によって、共振周波数が大きく変化することが抑制される。具体的には、従来の通信端末では、共振周波数が30MHzの低下を示していたものが、本実施形態の通信端末1では、10MHzの低下(920MHzから910MHzへの変化)に抑制される。また、最大ゲインについても、従来の通信端末では5.5dBの低下を示していたものが、本実施形態の通信端末では、0.5dBの低下(1.5dBから1.0dBへの変化)に抑制される。
【0038】
[1-3.効果]
第1実施形態の通信端末1によれば、アンテナ部6がアンテナ本体61とアンテナビス62とで構成されているため、アンテナビス62の着脱することでアンテナ長を変化させることができ、その結果、設置場所が金属面か非金属面かによる特性の変化を抑制できる。
【0039】
通信端末1では、アンテナビス62を取り付けるネジ孔614が、操作孔21を介して筐体2の外部に露出されているため、通信端末1の筐体2を分解することなく、アンテナビス62の着脱、ひいてはアンテナ特性の調整を行うことができる。
【0040】
つまり、通信端末1によれば、設置場所が金属面か非金属面かに応じて、アンテナ特性の異なる製品を別々に用意する必要がなく、使用者がアンテナビス62を着脱するだけで、設置場所に応じたアンテナ特性の調整を簡単に行うことができる。
【0041】
また、通信端末1によれば、アンテナビス62が筐体2の外面から突出することがないため、美観を損なうことなくアンテナ長を調整できる。
[2.第2実施形態]
[2-1.第1実施形態との相違点]
第2実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0042】
第2実施形態では、第2基板5aの構造が、第1実施形態とは異なっている。
図7及び
図8に示すように、第2基板5aは、アンテナ本体61のネジ孔614と対向する部分に切欠部52を有する。
【0043】
[2-2.効果]
第2実施形態によれば、第2基板5aに切欠部52を設けたことにより、ネジ部の長さが、第2基板5aの基板面とアンテナ本体61の水平部613との間隔より長いアンテナビス62を用いることが可能となる。
【0044】
その結果、アンテナ長の調整範囲、ひいては共振周波数の調整範囲をより広げることができる。
[3.第3実施形態]
[3-1.第1実施形態との相違点]
第3実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0045】
第3実施形態では、アンテナ部6aにおいてアンテナ長を変化させるための構造が、第1実施形態とは異なっている。
図9及び
図10に示すように、延長部64は、水平部613の先端にジョイント63を介して回動自在に取り付けられる。なお、ジョイント63は、延長部64と一体に回動する軸部と、水平部613の先端に設けられ、軸部を回動自在に支持する軸受部とで形成されてもよい。ジョイント63には、操作孔21を介して筐体2の外部に露出するつまみ631が一体に設けられる。
【0046】
これにより、筐体2の外部に露出したつまみ631を操作してジョイント63を回転させることで、アンテナ本体61に対する延長部64の位置が変化する。つまり、つまみ631が、本開示における操作部に相当する。
【0047】
延長部64は、水平部613と重なり合う重複領域を有する第1の位置(
図9中、一点鎖線にて示す位置)と、第1の位置と比較して重複領域が小さくなる第2の位置との間を移動するように構成される。第2の位置は、第1の位置から90°回動させた位置であってもよいし、両者間の角度が鋭角又は鈍角となる位置であってもよい。
【0048】
また、水平部613には、第1の位置及び第2の位置を越えて回動することを阻止するためのストッパが設けられてもよい。また、ストッパを設ける代わりに、第1の位置及び第2の位置に該当するジョイント63の回転位置を示す目印が設けられてもよい。
【0049】
[3-2.効果]
第3実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
[4.共振周波数の調整範囲について]
上述の第1実施形態~第2実施形態では、共振周波数を調整する際に、アンテナビス62を着脱することで、アンテナ部6の物理長を変化させている。また、第3実施形態では、ジョイント63を介して回動自在に取り付けられた延長部64の回動させた位置を調整することで、アンテナ部6aの物理長を変化させている。
【0050】
これに対して、例えば、特開平10-13142号公報等に記載された比較例では、金属ビスをアンテナ部に接近させることで、アンテナ部周辺の電磁的特性を変化させ、その結果、共振周波数を変化させている。
【0051】
図13は、比較例の構成において、金属ビスからアンテナまでの距離Dを、D=5mmにした場合、D=0.5mmにした場合とで、共振周波数が変化することを示すグラフである。
【0052】
図14は、第1実施形態の構成において、比較例で使用したものと同じサイズの金属ビスをアンテナビス62として用い、アンテナビス62をアンテナ部6から取り外した状態にした場合、アンテナビス62をアンテナ部6に貫通させた状態にした場合で、共振周波数が変化することを示すグラフである。
【0053】
図15は、第3実施形態の構成において、延長部64を本体61の半分程度の長さとし、本体61と延長部64とが成す角度θを、θ=0°、22.5°、45°、67.5°、90°にした場合、更に、θ=90°かつ延長部64の長さを1.5倍にした場合で、共振周波数が変化する様子を示すグラフである。
【0054】
本実施形態のようにアンテナ部6aの物理長を変化させた場合、比較例のように、アンテナ部周辺の電磁的特性を変化させる場合と比較して、共振周波数の調整範囲を大幅に拡大することができる。特に、第3実施形態の場合、角度θの調整により、共振周波数の細かい調整が可能となる。
【0055】
[5.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0056】
(5a)上記実施形態では、回路部3が2つのプリント基板4,5を用いて構成されているが、回路部3は、1つのプリント基板で構成されてもよいし、3つ以上のプリント基板で構成されてもよい。例えば、第2基板5が省略されている場合は、第1基板4上にアンテナ部6が設けられてもよい。
【0057】
(5b)上記実施形態では、アンテナ部6は、第2基板5と一体に設けられているが、アンテナ部6の水平部613は、筐体2の天面2aの内壁面に形成されたプリントパターンであってもよい。
【0058】
(5c)上記実施形態では、アンテナ部6として逆L型アンテナが用いられているが、例えば、逆F型アンテナが用いられてもよい。
【0059】
[6.本明細書が開示する技術思想]
[項目1]
金属又は非金属の設置面に設置して使用される設置型の通信端末であって、
電波を透過する材料で形成された筐体と、
前記筐体内に設置されるアンテナ本体と、
前記筐体の外部からの操作によって前記アンテナ本体を含んだアンテナ部の物理長を変化させるように構成された可変部と、
を備える通信端末。
【0060】
[項目2]
項目1に記載の通信端末であって、
前記可変部は、前記アンテナ本体の先端に着脱可能に構成され、前記アンテナ本体の先端に装着された状態で、先端が前記アンテナ本体から突出する長さを有する導電性のビスを備え、
前記筐体は、前記ビスの頭部を当該筐体外に露出させ、前記アンテナ本体に対する前記ビスの着脱操作に用いる操作孔
を備える通信端末。
【0061】
[項目3]
項目1に記載の通信端末であって、
前記可変部は、
前記アンテナ本体の先端にジョイントを介して回動自在に接続される延長部と、
前記筐体の外部に露出した露出部位を有し、該露出部位を操作することで、前記延長部と前記アンテナ本体とが重なりあう重複領域を有する第1位置と、前記第1位置と比較して前記重複領域が小さくなる第2位置との間で、前記延長部を回動させるように構成された操作部と、
を備える通信端末。
【0062】
[項目4]
項目1から項目3までのいずれか1項に記載の通信端末であって、
前記筐体内に設置され、前記アンテナ部を介した通信を少なくとも実行する処理部が実装されるプリント基板である第1基板を更に備え、
前記アンテナ本体が、前記第1基板に設けられた
通信端末。
【0063】
[項目5]
項目1から項目3までのいずれか1項に記載の通信端末であって、
前記筐体内に設置され、前記アンテナ部を介した通信を少なくとも実行する処理部が実装されたプリント基板である第1基板と、
前記筐体内に設置され、前記第1基板とは別体に設けられるプリント基板である第2基板と、
を更に備え、
前記アンテナ本体が、前記第2基板に設けられた
通信端末。
【0064】
[項目6]
項目5に記載の通信端末であって、
前記第2基板は、前記アンテナ部が設けられた部位以外の部位に、グランドパターンが形成された
通信端末。
【0065】
[項目7]
項目4から項目6までのいずれか1項に記載の通信端末であって、
前記アンテナ本体は、前記プリント基板上に形成された逆L型アンテナ又は逆F型アンテナである
通信端末。
【0066】
[項目8]
項目1から項目7までのいずれか1項に記載の通信端末であって、
前記アンテナ本体の少なくとも1部が、前記筐体の内面に形成されたプリントパターンによって実現される、
通信端末。
【0067】
[項目9]
金属又は非金属の設置面に設置して使用される設置型の通信端末であって、
電波を透過する材料で形成された筐体と、
前記筐体内に設置されるアンテナ本体と、
前記筐体の外部からの操作によって前記アンテナ本体を含んだアンテナ部の物理長を変化させるように構成された可変部と、
前記筐体内に設置され、前記アンテナ本体を介した通信を少なくとも実行する処理部が実装されたプリント基板である第1基板と、
前記筐体内に設置され、前記第1基板とは別体に設けられ、前記第1基板と対向配置され、前記アンテナ本体が実装されるプリント基板である第2基板と、
を備え、
前記可変部は、前記アンテナ本体の先端に着脱可能に構成され、前記アンテナ本体の先端に装着された状態で、ねじ部の先端が前記アンテナ本体から前記第1基板に向けて突出する長さを有する導電性のビスを備え、
前記筐体は、前記ビスの頭部を当該筐体外に露出させ、前記アンテナ本体に対する前記ビスの着脱操作に用いる操作孔を備え、
前記第1基板は、前記ビスと対向する部位に切欠部を備える
通信端末。
【0068】
なお、項目9には、項目4、項目6~8で特定される事項を、適宜従属させてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1…通信端末、2…筐体、2a…天面、2b…底面、3…回路部、4…第1基板、5,5a…第2基板、6,6a…アンテナ部、21…操作孔、31,32…スペーサ、51…グランドパターン、52…切欠部、61…アンテナ本体、62…アンテナビス、63…ジョイント、64…延長部、611…取付部、612…支持部、613…水平部、614…ネジ孔。