IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 本田技研工業株式会社の特許一覧

特開2024-47986プレビュー路面検出装置、及びプレビュー路面検出方法
<>
  • 特開-プレビュー路面検出装置、及びプレビュー路面検出方法 図1
  • 特開-プレビュー路面検出装置、及びプレビュー路面検出方法 図2
  • 特開-プレビュー路面検出装置、及びプレビュー路面検出方法 図3
  • 特開-プレビュー路面検出装置、及びプレビュー路面検出方法 図4
  • 特開-プレビュー路面検出装置、及びプレビュー路面検出方法 図5
  • 特開-プレビュー路面検出装置、及びプレビュー路面検出方法 図6
  • 特開-プレビュー路面検出装置、及びプレビュー路面検出方法 図7
  • 特開-プレビュー路面検出装置、及びプレビュー路面検出方法 図8
  • 特開-プレビュー路面検出装置、及びプレビュー路面検出方法 図9
  • 特開-プレビュー路面検出装置、及びプレビュー路面検出方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047986
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】プレビュー路面検出装置、及びプレビュー路面検出方法
(51)【国際特許分類】
   B60G 23/00 20060101AFI20240401BHJP
【FI】
B60G23/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153787
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】小灘 一矢
(72)【発明者】
【氏名】柳 貴志
【テーマコード(参考)】
3D301
【Fターム(参考)】
3D301AB21
3D301DA08
3D301EA82
3D301EB16
3D301EB38
3D301EC01
3D301EC05
(57)【要約】
【課題】複数の発信機から発信された検出波が混同して受信されることを抑制することが可能なプレビュー路面検出装置を提供すること。
【解決手段】車体部材に、車両の進行方向に対して交わる方向に向けて並んで取り付けられた、複数の発信機、及び少なくとも一つの受信機を備え、車体部材と、車輪の路面接地部の少なくとも一部に対応する車両前方の路面の計測点と、の間の距離に関する値を検出する距離センサと、距離センサが検出した検出値に基づいて、車体部材から計測点までの距離である路面距離を算出する距離算出部と、を備え、発信機は、隣り合う発信機から時間差を有して検出波を発信する、プレビュー路面検出装置。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレビュー路面検出装置であって、
車体部材に、車両の進行方向に対して交わる方向に向けて並んで取り付けられた、複数の発信機、及び少なくとも一つの受信機を備え、前記車体部材と、車輪の路面接地部の少なくとも一部に対応する車両前方の路面の計測点と、の間の距離に関する値を検出する距離センサと、
前記距離センサが検出した検出値に基づいて、前記車体部材から前記計測点までの距離である路面距離を算出する距離算出部と、を備え、
前記発信機は、隣り合う前記発信機から時間差を有して検出波を発信する、
プレビュー路面検出装置。
【請求項2】
前記検出波は、前記発信機から路面に向けて発信され、
前記検出波は、レーザ波又はミリ波である、請求項1に記載のプレビュー路面検出装置。
【請求項3】
複数の前記発信機のうち少なくとも一つは、当該発信機を第1の発信機とした場合に、前記第1の発信機に対して、前記の車両の進行方向における前方向及び後方向のうちの少なくも一方に、第2の発信機をさらに有し、
前記の第1の発信機と第2の発信機とは、時間差を有して前記検出波を発信する、請求項1又は2に記載のプレビュー路面検出装置。
【請求項4】
一つまたは複数の前記受信機は、車幅方向における端部に配置されており、
前記発信機は、その発信方向が一つまたは複数の前記受信機の側へ傾くように取り付けられている、請求項3に記載のプレビュー路面検出装置。
【請求項5】
複数の前記発信機は、複数のグループに分けられており、
複数の前記発信機は、前記グループ毎に同時に前記検出波を発信する、請求項1又は2に記載のプレビュー路面検出装置。
【請求項6】
前記受信機は複数取り付けられており、
同時に前記検出波を発信する複数の前記発信機の発信方向は、複数の前記受信機のなかで、異なる前記受信機の側へ傾いている、請求項1又は2に記載のプレビュー路面検出装置。
【請求項7】
プレビュー路面検出方法であって、
車体部材に車両の進行方向に対して交わる方向に向けて並んで取り付けられた、複数の発信機、及び少なくとも一つの受信機により、前記車体部材と、車輪の路面接地部の少なくとも中央部に対応する車両前方の路面の計測点と、の間の距離に関する値を検出する距離検出ステップと、
前記距離検出ステップで検出した検出値に基づいて、前記車体部材から前記計測点までの距離である路面距離を算出する距離算出ステップと、を備え、
前記距離検出ステップにおいて、前記発信機は、隣り合う前記発信機から時間差を有して検出波を発信する、プレビュー路面検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレビュー路面検出装置、及びプレビュー路面検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通参加者の中でも高齢者や障がい者や子供といった脆弱な立場にある人々にも配慮した持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する取り組みが活発化している。この実現に向けて車両の挙動安定性に関する開発を通して交通の安全性や利便性をより一層改善する研究開発に注力している。
【0003】
また、車両の挙動安定性を向上させるために、従来、自動車などの車輌のアクティブサスペンションのひとつとして、前方の路面変位を光学式センサで検出する路面検出手段と、車速を検出する車速検出手段と、前輪に対応する部位にて車体に取り付けられ車体の上下加速度を検出する上下加速度検出手段と、路面変位の情報及び上下加速度の情報を時系列に記憶する記憶手段とを有し、路面変位の検出が異常である旨の判定が行われたときには、ホイールベース及び車速に基づき車輌がホイールベースの距離だけ走行した際の車体の後輪に対応する部位の上下加速度が記憶手段に記憶された上下加速度より推定され、その推定された上下加速度に応じて後輪のアクチュエータが予見制御されるアクティブサスペンションが知られている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5-96922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の技術には、複数の路面センサから照射されたレーザ波などが混同するおそれがあり、路面状態をより正確に認識することが望まれているとの課題がある。そこで本願は上記の課題を解決するために、複数の発信機から発信された検出波が、混同して受信されることを抑制することが可能なプレビュー路面検出装置を提供すること、を目的としたものである。そして、延いてはエネルギーの効率化に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)前記課題を解決するため、本発明のプレビュー路面検出装置は、車体部材に、車両の進行方向に対して交わる方向に向けて並んで取り付けられた、複数の発信機、及び少なくとも一つの受信機を備え、前記車体部材と、車輪の路面接地部の少なくとも一部に対応する車両前方の路面の計測点と、の間の距離に関する値を検出する距離センサと、前記距離センサが検出した検出値に基づいて、前記車体部材から前記計測点までの距離である路面距離を算出する距離算出部と、を備え、前記発信機は、隣り合う前記発信機から時間差を有して検出波を発信する。
【0007】
このようなプレビュー路面検出装置によると、複数の発信機から発信された検出波が混同して受信されることを抑制することが可能なプレビュー路面検出装置を提供することができる。
【0008】
(2)本発明のプレビュー路面検出装置は、前記検出波は、前記発信機から路面に向けて発信され、前記検出波は、レーザ波又はミリ波である。
【0009】
このようなプレビュー路面検出装置によると、正確な路面距離の算出が容易になる。
【0010】
(3)本発明のプレビュー路面検出装置は、複数の前記発信機のうち少なくとも一つは、当該発信機を第1の発信機とした場合に、前記第1の発信機に対して、前記の車両の進行方向における前方向及び後方向のうちの少なくも一方に、第2の発信機をさらに有し、前記の第1の発信機と第2の発信機とは、時間差を有して前記検出波を発信する。
【0011】
このようなプレビュー路面検出装置によると、第1の発信機および第2の発信機により検出した検出値に基づいて車体のピッチ方向の移動量を推定する際、発信された検出波の混同を抑制することができる。車体の前後において異なる位置にある検出波の間で混同が生じると、誤作動への影響が大きい。このような影響の大きい誤作動の発生を抑制することができる。
【0012】
(4)本発明のプレビュー路面検出装置は、一つまたは複数の前記受信機は、車幅方向における端部に配置されており、前記発信機は、その発信方向が一つまたは複数の前記受信機の側へ傾くように取り付けられている。
【0013】
このようなプレビュー路面検出装置によると、発信の時間差の少ない発信機から発信された検出波、特には、同時に発信された検出波の混同を抑制しつつ、より少ない受信機で受信する場合の受信感度を高めることができる。
【0014】
(5)本発明のプレビュー路面検出装置は、複数の前記発信機は、複数のグループに分けられており、複数の前記発信機は、前記グループ毎に同時に前記検出波を発信する。
【0015】
このようなプレビュー路面検出装置によると、同時に発信できる発信機が一つである場合などと比較して、複数の発信機全体での単位時間当たりののべ発信頻度を向上させることができる。
【0016】
(6)本発明のプレビュー路面検出装置は、前記受信機は複数取り付けられており、同時に前記検出波を発信する複数の前記発信機の発信方向は、複数の前記受信機のなかで、異なる前記受信機の側へ傾いている。
【0017】
このようなプレビュー路面検出装置によると、発信の時間差の少ない発信機から発信された検出波、特には、同時に発信された検出波の混同を抑制しつつ、より少ない受信機で受信する場合の受信感度を高めることができる。
【0018】
(7)前記課題を解決するため、本発明のプレビュー路面検出方法は、車体部材に車両の進行方向に対して交わる方向に向けて並んで取り付けられた、複数の発信機、及び少なくとも一つの受信機により、前記車体部材と、車輪の路面接地部の少なくとも中央部に対応する車両前方の路面の計測点と、の間の距離に関する値を検出する距離検出ステップと、前記距離検出ステップで検出した検出値に基づいて、前記車体部材から前記計測点までの距離である路面距離を算出する距離算出ステップと、を備え、前記距離検出ステップにおいて、前記発信機は、隣り合う前記発信機から時間差を有して検出波を発信する。
【0019】
このようなプレビュー路面検出方法によると、複数の発信機から発信された検出波が混同して受信されることを抑制することが可能なプレビュー路面検出方法を提供することができる。
【0020】
なお、上述の(1)から(7)は、必要に応じて、任意に組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、複数の発信機から発信された検出波が混同して受信されることを抑制することが可能なプレビュー路面検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】車両のサスペンションシステムの概要を説明する図である。
図2】距離センサの取り付け構造を示す、車両の側面図である。
図3】(a)は距離センサの配置を示し、(b)は発信機からの発信順序を示す図である。
図4】(a)は距離センサの配置を示し、(b)は発信機からの発信順序を示す、別の図である。
図5】車両の左前輪の近傍を車両の上方から下方に向けて見た図である。
図6】発信機と受信機の配置の例を示す図である。
図7】発信機と受信機の配置の別の例を示す図である。
図8】発信機と受信機の配置の別の例を示す図である。
図9】発信機からの発信順序を示す、別の図である。
図10】発信機からの発信順序を示す、別の図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(サスペンションシステム)
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。図1は、本実施形態のプレビュー路面検出装置1が適用される車両のサスペンションシステム3の概要を示す図である。
【0024】
サスペンションシステム3は、プレビュー路面検出装置1、プレビュー制御部4、サスペンション制御部5、車体部材30、アクティブサスペンションD、及び車輪Wを含む。また、プレビュー路面検出装置1は、距離算出部12、及び距離センサ11を備える。また、距離センサ11は、発信機11a等と、受信機14とを備える。なお、発信機11a等と受信機14とは、図1には図示しておらず、図3以降に順次図示する。
【0025】
サスペンションシステム3では、サスペンション制御部5が、車体部材30の姿勢が安定するようにアクティブサスペンションDを制御する。この制御は、例えば、スカイフック理論などに基づいて行われる。
【0026】
(路面変位)
アクティブサスペンションDの制御では、まず、プレビュー路面検出装置1が車両前方の路面変位L2を取得する。ここで、路面変位L2とは、現時点で車輪Wが接している路面Rと、計測点Pとの、路面Rと垂直な方向における距離である。なお、路面Rとは、車輪Wが接している地面を意味する。また、計測点Pとは、距離センサ11が距離を測定する地面上の点を意味する。計測点Pは、車輪Wが通過する予定の路面R上の地点でもある。路面変位L2は、予見情報ともいう。
【0027】
(プレビュー制御部)
次に、プレビュー制御部4は、プレビュー路面検出装置1から路面変位L2を取得する。そして、路面変位L2の値に基づいて、アクティブサスペンションDの応答遅れを補償する。これにより、サスペンションシステム3は、車両の乗り心地の向上を図っている。
【0028】
(車両の構成)
図2も参照しながら、サスペンションシステム3について、より具体的に説明する。図2は、距離センサ11の取り付け機構を示す車両Vの側面図である。車両Vは、車体Bと車輪Wとを備える。そして、車体Bを構成する部材には、車体部材30が含まれる。車体部材30の下側には、車輪Wが設けられている。図2には、車輪Wのうち前輪が示されている。前輪は、左側の車輪及び右側の車輪を含む。図2には、左右の車輪のうち、左側の車輪が示されている。
【0029】
(振動モデル)
アクティブサスペンションD、及び車輪Wのうちのタイヤの部分が、路面Rの凹凸を吸収する。図2に示すサスペンション制御部5は、車輪Wのタイヤの部分を、振動モデルとして制御する。この振動モデルは、ばねW1及びダンパW2が並列に配置された振動モデルである。
【0030】
(アクティブサスペンション)
アクティブサスペンションDは、懸架ばねD1及び油圧アクチュエータを用いて減衰力を制御することができる。又は、アクティブサスペンションDは、懸架ばねD1と、可変ダンパD2とが並列に配置された構成とすることもできる。可変ダンパD2は、電磁力により減衰力及び推力が制御されるダンパである。アクティブサスペンションDは、車体部材30と車輪Wとの間に備えられている。
【0031】
(サスペンション制御部)
サスペンション制御部5は、可変ダンパD2を制御対象として制御を行う。
【0032】
(アクチュエータ)
なお、アクティブサスペンションDには、アクチュエータが備えられていてもよい。アクチュエータが作動することで、サスペンションのプレビュー制御をより円滑に行うことができる。また、アクチュエータが備えられている場合、アクチュエータを制御するアクチュエータ制御部が備えられていることが好ましい。アクチュエータ制御部は、例えば、サスペンション制御部5に、その一部として備えられることができる。
【0033】
(プレビュー路面検出装置)
プレビュー路面検出装置1は、車体部材30に設置されている。プレビュー路面検出装置1は、距離センサ11及び距離算出部12を備える。
【0034】
(距離センサ)
距離センサ11は、車体部材30と、路面Rの計測点Pとの間の距離を計測する。車体部材30と、路面Rの計測点Pとの間の距離を路面距離L1とする。この計測は、超音波、レーザ光、又はミリ波レーダなどにより行われる。
【0035】
(距離算出部)
距離算出部12は、距離センサ11の計測値に基づいて、車輪Wの前方の路面変位L2を算出する。具体的には、プレビュー路面検出装置1は、距離算出部12が算出した路面距離L1から計測時の車高L3を減じて、車輪Wの前方の路面変位L2を算出する。車高L3は、路面接地部41における、車体部材30と路面Rとの間の距離である。
【0036】
すなわち、路面距離L1-車高L3=路面変位L2となる。なお、路面変位L2を算出する際、車高L3は、サスペンション制御部5が制御変数として算出している値を参照して求めることもできる。
【0037】
(到達所要時間)
プレビュー制御部4は、路面変位L2を計測した際の車速と、タイヤの接地点から路面変位L2の計測点Pまでの車両Vの進行方向の距離とから、車輪Wが路面変位L2の計測点Pを走行するまでの所要時間を求める。この所要時間を、到達所要時間とする。なお、タイヤの接地点から路面変位L2の計測点Pまでの車両Vの進行方向の距離は、距離センサ11の取り付け位置に関する情報を参照して求めることもできる。
【0038】
(予見情報)
プレビュー路面検出装置1及びプレビュー制御部4は、路面変位L2を求めることに関する前述の処理を周期的に行うことができる。これにより、路面変位L2の予見情報を得ることができる。予見情報とは、前述のように、所定時間後に通過する車輪Wの前方の路面状態に関する情報である。路面状態とは、路面変位L2、及び路面Rの凹凸の状態などを含む。
【0039】
サスペンション制御部5は、路面変位L2の予見情報に基づいてアクティブサスペンションDを制御する。そのため、サスペンション制御部5は、車両Vの乗り心地を向上させることができる。
【0040】
(プレビュー路面検出装置の取り付け)
本実施形態のプレビュー路面検出装置1は、前述のように、距離センサ11及び距離算出部12を含む。このうち、距離センサ11は、車体部材30に設置されている。一方、距離算出部12は、車両VのECU(Electronic Control Unit)に実装されている。
【0041】
(距離センサの取り付け)
距離センサ11の取り付けについて、図2に基づいて具体的に説明する。なお、以下に説明する距離センサ11の取り付け構造、及び図2に示す車両Vの他の構造は、説明の便宜上、簡略化されている。また、距離センサ11の取り付けは、以下に説明するものには限定されない。
【0042】
(方向の定義)
なお、車両Vの進行方向を「前」方向、後退方向を「後」方向、鉛直上側方向を「上」方向、鉛直下側方向を「下」方向、車幅方向を「左」方向及び「右」方向として説明する。また、距離センサ11などの車両用センサの取り付け構造は、原則的に左右対称である。そのため、以下の説明では左右のうちの一方側(左側)を主に説明し、他方側(右側)の説明を適宜省略する。
【0043】
図2は、距離センサ11の取り付け構造を示す車両Vの側面図である。なお、図2では、車両Vの外形を二点鎖線で示している。
(車体)
車両Vは、車体Bを主な構成要素として含んでいる。車体Bは、車体部材30に加えて、外装部材20及び距離センサ11などを含んでいる。距離センサ11は、車体部材30に固定されている。
【0044】
また、外装部材20は、車両Vの外側部位を形成する部材である。外装部材20は、車両Vの外郭を形成する。一方、距離センサ11は、路面状態を検出する装置である。
【0045】
(車両)
車両Vは、このように車体部材30、外装部材20、及び距離センサ11を備えた自動車であれば、その形式及び種類は特には限定されない。車両Vは、例えば、乗用車、バス、トラック、作業車などとすることができる。
【0046】
以下、各部材についてより詳しく説明する。
(車体部材)
車体部材30は、外装部材20を支持する機能を有する。また、車体部材30は、フロントサイドフレーム31、アッパメンバ32、バンパビームエクステンション33、及びバンパビーム34などを備えて構成されている。なお、フロントサイドフレーム31、アッパメンバ32、及びバンパビーム34は、フレーム部材と称される場合もある。
【0047】
(外装部材)
外装部材20は、エンジンフード21、フロントバンパ22、及びフロントフェンダ23を備えている。なお、フロントバンパ22は、単にバンパと称される場合もある。
【0048】
エンジンフード21は、フロントガラスの前方の上面を覆うパネル部材である。フロントバンパ22は、車両Vの前面側に位置し、例えば合成樹脂製のパネル部材によって構成されている。また、フロントバンパ22は、エアインテークなどが設けられた前面部22a、及び前面部22aの下端から後方に向けて延びる底面部22bを有している。フロントフェンダ23は、車輪Wの周辺を覆うパネル部材である。
【0049】
(距離センサの取り付け)
距離センサ11は、車両Vの前方の路面Rの状態を検出するセンサである。距離センサ11は、アッパメンバ32に固定されている。アッパメンバ32は、前述のように、車体部材30を構成する部材である。アッパメンバ32は、車輪Wの前方に配置されている。
【0050】
詳しくは、距離センサ11は、アッパメンバ32の車幅方向の外側の側面に取り付けられている。また、距離センサ11は、アッパメンバ32の前後方向の前端部に位置している。
【0051】
(距離センサの構成)
本実施形態の距離センサ11は、図2に矢印A1で示すように、車輪Wの直前の路面Rにおける路面距離L1を検出するように構成されている。路面距離L1とは、車体部材30と、路面Rの計測点Pとの間の距離である。また、距離センサ11は、レーダ式、カメラ式、レーザ式などの各種の方式のセンサから適宜選択することができる。また、距離センサ11は、単一の種類のセンサによって構成される必要はない。距離センサ11は、例えば、カメラ式とレーザ式など複数の方式のセンサが組み合わされた構成とすることもできる。
【0052】
(発信機及び受信機)
次に、図3に基づいて、距離センサ11による距離の検出について説明する。図3(a)は、車両Vの前方から車輪Wを見た際の距離センサ11の様子を示している。本実施形態の距離センサ11は、5個の発信機11aから発信機11eを備えている。各発信機からは、路面Rに向けて検出波が発信される。発信された検出波は、路面Rで反射し、受信機で受信される。受信機については、図6などに基づいて後に説明する。
【0053】
検出波は、例えばレーザ波又はミリ波などとすることができる。また、発信機及び受信機による距離の検出の方式は特には限定されない。検出の方式としては、例えば、三角測量原理に基づく方式、発信した光の反射光強度を距離に換算する方式、レーザ光の飛行時間を距離換算する方式など、種々の方式を用いることができる。
【0054】
距離の検出について具体的に説明する。図3(a)に示すように、車輪Wは、路面Rのタイヤの路面接地面S1に接地している。そして、5つの発信機11aから発信機11eより、路面の計測面S2に向けて検出波が発信される。図3(a)に示す発信機を、車幅方向の外側から車幅方向の内側に向けて、順に、第1の発信機11a、第2の発信機11b、第3の発信機11c、第4の発信機11d、及び第5の発信機11eとする。そして、それぞれの発信機が発信する検出波を、第1の検出波Ra、第2の検出波Rb、第3の検出波Rc、第4の検出波Rd、及び第5の検出波Reとする。
【0055】
図3(a)に、タイヤWが路面Rと接する部分の幅を路面接地幅L4として示す。図3(a)に示す構成では、5つの発信機のうち、第4の発信機11dから発信される第4の検出波Rd、及び第5の発信機11eから発信される第5の検出波Reは、路面接地幅L4よりも車幅方向の内側の計測面S2に向けて発信されている。このように発信機を配置することで、より広範囲で路面距離を求めることができる。それにより、より広範囲の路面状況を把握することができる。その結果、路面状態をより正確に認識することができる。また、車両Vの進行方向が横方向にずれる場合、すなわち左右方向に曲がる場合であっても、サスペンションをより適切に制御することが行いやすくなる。
【0056】
なお、図3(a)に示す発信機の配置は例示であり、発信機の位置は適宜変更することができる。また、発信機が発信し、路面Rで反射した検出波を受信する受信機は、適宜、任意の位置に配置することができる。例えば、受信機は、各発信機と一体として、各発信機に配置されていてもよい。又は、受信機は、発信機とは別体として、発信機とは異なる位置に配置されていてもよい。また、発信機の個数と、受信機の個数とは同じでなくてもよい。受信機は、複数の発信機から発信された検出波を受信してもよい。詳しくは、後に説明する。
【0057】
(発信のタイミング)
本実施形態のプレビュー路面検出装置1では、発信機は、隣り合う発信機から時間差を有して検出波を発信する。図3(b)に基づいて説明する。図3(b)は、各発信機からの検出波の発信順序を示す図である。図3(b)に示すように、第1の発信機11aが発信した後、その次に、第1の発信機11aに隣り合う第2の発信機11bは発信しない。第1の発信機11aとは隣り合わない第3の発信機11cが、第1の発信機11aの次に発信する。その次も同様である。第3の発信機11cの次に、第3の発信機11cに隣り合う第4の発信機11dは発信しない。第3の発信機11cの次には、第3の発信機11cとは隣り合わない第5の発信機11eが発信する。その後も、図3(b)に示される順序で発信が繰り返されていく。以上のように、発信機は、隣り合う発信機と連続して発信することはない。このように、発信機は、隣り合う発信機から時間差を有して発信するように調整されている。
【0058】
上述の発信のタイミングは、発信機の個数が変わっても同様に調整することができる。図4(a)及び図4(b)に基づいて説明する。図4(a)は図3(a)に対応する図であり、図4(b)は図3(b)に対応する図である。図4に示す構成と図3に示す構成とでは、発信機の個数が異なる。図3に示した構成では、発信機の個数は5個であった。これに対して、図4に示す構成では、発信機の個数は6個である。図4に示す構成では、第5の発信機11eの車幅方向の内側に、さらに、第6の発信機11fが配置されている。この第6の発信機11fが発信する検出波が第6の検出波Rfである。
【0059】
図4(b)の発信順序が示すように、発信機の個数が6個になった場合であっても、発信のタイミングは、発信機が隣り合う発信機と連続して発信することがないように調整されている。これにより、発信機は、隣り合う発信機から時間差を有して発信をする。
【0060】
(発信機の発信頻度)
発信機の発信の頻度は、特には限定されない。発信の頻度は、例えば、1000Hz以上とすることができる。すなわち、1msec/回の頻度である。又は、発信の頻度は、15mm/回以上、30mm/回以下の計測周期となるように設定することができる。なお、ここでの距離は、発信機の移動距離である。
【0061】
(発信機の前後配置)
図3及び図4では、複数の発信機が、車両Vの進行方向に対して交わる方向に向けて並んで取り付けられた。すなわち、複数の発信機が、車幅方向に並んで配置されていた。発信機は、車両Vの進行方向に並べて配置することもできる。図5に基づいて説明する。図5は、車両Vの左前輪の近傍を、車両Vの上方から下方に向けて見た図である。
【0062】
図5に示すように、第2の発信機11bの進行方向における前方に、第1の前方発信機11F1が配置されている。また、第2の発信機11bの進行方向における後方に、第1の後方発信機11B1が配置されている。
【0063】
図5に示すような構成において、第2の発信機11bと、第1の前方発信機11F1とは、時間差を有して検出波を発信する。また、第2の発信機11bと、第1の後方発信機11B1とは、時間差を有して検出波を発信する。これにより、検出波が混同して受信されることを抑制することができる。
【0064】
なお、前後方向の発信機については、前方発信機及び後方発信機が、共に設けられている必要はない。前方発信機及び後方発信機のうちの何れか一方のみが設けられていてもよい。
【0065】
車両Vの進行方向における前後方向に発信機が配列されることで、車両Vが旋回するときなどに、より精度の高いプレビュー制御を行うことができる。だだし、検出波を受信する際に、検出波の混同が生じると、大きな誤作動につながりやすい。これに関して、本実施形態のプレビュー路面検出装置では、前後方向に配置された発信機の間での、検出波の混同を抑制することができる。それらの発信機が、時間差を有して検出波を発信するからである。
【0066】
(受信機の配置の仕方)
受信機の配置の仕方には種々の方法が考えられる。例えば、先に説明したように、受信機を発信機と一体として配置することができる。これに対して、図6から図8は、受信機が発信機とは別の位置に配置された構成を示している。また、図6から図8は、それぞれ、受信機と発信機との、異なる配置を示している。
【0067】
受信機の配置の仕方の一例では、一つまたは複数の受信機は、車幅方向における端部に配置されており、発信機は、その発信方向が一つまたは複数の受信機の側へ傾くように取り付けられることができる。以下、具体的に説明する。
【0068】
図6に示す配置例では、発信機と受信機14とは、センサ筐体16に配置されている。センサ筐体16において、第1の発信機11aから第5の発信機11eの5個の発信機は、車幅方向に並んで配置されている。そして、受信機14は、センサ筐体16における車幅方向の一方の端部に配置されている。
【0069】
また、各発信機からの検出波の発信方向は、路面Rに対して垂直ではない。発信方向は、受信機14の方向に傾斜している。これにより、路面Rで反射した検出波は、効率よく受信機14に到達する。よって、より少ない受信機14で受信する場合であっても、受信感度の低下を抑制することができる。
【0070】
次に図7に示す配置例について説明する。図7に示す配置例は、図6に示す配置例とは異なり、センサ筐体16に、受信機14が2個備えられている。具体的には、センサ筐体16の車幅方向における一方の端部に第1の受信機14aが配置されており、センサ筐体16の車幅方向における他方の端部に第2の受信機14bが配置されている。
【0071】
そして、第1の発信機11aが発信した第1の検出波Ra、第2の発信機11bが発信した第2の検出波Rb、及び第3の発信機11cが発信した第3の検出波Rcは、第1の受信機14aで受信される。これに対して、第4の発信機11dが発信した第4の検出波Rd、及び第5の発信機11eが発信した第5の検出波Reは、第2の受信機14bで受信される。
【0072】
受信が効率的に行われるように、第1の発信機11a、第2の発信機11b、及び第3の発信機11cからの検出波の発信方向は、第1の受信機14aの方向に傾斜している。これに対して、第4の発信機11d、及び第5の発信機11eからの検出波の発信方向は、第2の受信機14bの方向に傾斜している。このような配置により、少ない受信機で受信する場合に、受信機1個当たりの負担を少なくしながらも、効率よく検出波を受信することができる。
【0073】
(同時発信)
図7に示す配置例は、複数の発信機が検出波を同時に発信する場合に、それらの発信機の発信方向を、それぞれ異なる受信機の側へ傾ける場合に利用することができる。例えば、第3の発信機11cと第4の発信機11dとが同時に検出波を発信する場合を考える。第3の発信機11cの発信方向は、第1の受信機14aの側に傾ける。一方、第4の発信機11dの発信方向は、第2の受信機14bの側に傾ける。このようにすることで、同時に発信される検出波の発信方向を、異なる受信機の側へ傾けることができる。これにより、隣り合う発信機が発信した検出波が混同されることを抑制することができる。
【0074】
(垂直への発信)
なお、受信機の個数が少ない場合であっても、各発信機からの検出波の発信方向は、受信機14の方向に傾斜していることには限定されない。図8に示すように、受信機の個数が1個であっても、各発信機からの検出波の発信方向を路面Rに対して垂直な方向にすることもできる。このような構成では、センサ筐体16を小型化することが容易になる。発信機と受信機14との、車幅方向における距離を短くすることができるためである。
【0075】
(グループ化)
発信機のグループ化について説明する。発信機は、複数のグループに分けることができる。そして、発信機は、グループ毎に同時に検出波を発信する。すなわち、同じグループに属する複数の発信機は、同時に検出波を発信する。以下、図9及び図10に基づいて説明する。図9及び図10は、いずれも発信機からの発信順序を示す図である。図9に示す発信順序と、図10に示す発信順序とでは、発信機の個数が異なる。図9に示す構成では、発信機は5個である。一方、図10に示す構成では、発信機は6個である。発信機の配列としては、図9の発信順序は、図3(a)の配列に対応する。一方、図10の発信順序は、図4(a)の配列に対応する。
【0076】
(グループ化)
図9に示す発信順序では、第1の発信機11a、第3の発信機11c及び第5の発信機11eが第1のグループに属している。そして、残る第2の発信機11b及び第4の発信機11dが第2のグループに属している。そして、第1のグループに属する3個の発信機が同時に発信する。次いで、第2のグループに属する2個の発信機が同時に発信する。以降、これを順に繰り返す。これにより、隣り合う発信機から同時に発信しないようにしながらも、発信頻度を高めることができる。
【0077】
図10に示す発信順序では、前述のように、図9に示す発信順序よりも、発信機が1つ増加している。そのため、第2のグループに、第2の発信機11b及び第4の発信機11dに加えて、第6の発信機11fが追加されている。これにより、第1のグループ及び第2のグループ共に、属する発信機の個数が3個になっている。
【0078】
発信機の個数が増えた場合でも、図9で説明した発信順序と同様な発信順序とすることができる。すなわち、まず、第1のグループに属する3個の発信機が同時に発信する。次いで、第2のグループに属する3個の発信機が同時に発信する。以降、これを順に繰り返す。これにより、発信機が増加した場合であっても、隣り合う発信機から同時に発信しないようにしながらも、発信頻度を高めることができる。
【0079】
(プレビュー路面検出方法)
本実施形態のプレビュー路面検出装置1を用いて、以下のようなプレビュー路面検出方法を実行することもできる。すなわち、プレビュー路面検出方法であって、車体部材30に車両Vの進行方向に対して交わる方向に向けて並んで取り付けられた、複数の発信機、及び少なくとも一つの受信機14により、車体部材30と、車輪Wの路面接地部41の少なくとも中央部43に対応する車両前方の路面の計測点Pと、の間の距離に関する値を検出する距離検出ステップと、距離検出ステップで検出した検出値に基づいて、車体部材30から計測点Pまでの距離である路面距離L1を算出する距離算出ステップと、を備え、距離検出ステップにおいて、発信機は、隣り合う発信機から時間差を有して検出波を発信すること、を含む方法によりプレビュー路面を検出することができる。
【0080】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限定されることなく、種々の変更、変形及び組み合わせが可能である。
【符号の説明】
【0081】
1 プレビュー路面検出装置
3 サスペンションシステム
4 プレビュー制御部
5 サスペンション制御部
11 距離センサ
11aからf 発信機
12 距離算出部
14 受信機
16 センサ筐体
20 外装部材
41 路面接地部
43 中央部
30 車体部材
B 車体
D アクティブサスペンション
D1 懸架ばね
D2 可変ダンパ
L1 路面距離
L2 路面変位
L3 車高
L4 路面接地幅
P 計測点
R 路面
V 車両
W 車輪
W1 ばね
W2 ダンパ
RaからRe 検出波
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10