(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047989
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】車載装置、情報処理方法及び車載システム
(51)【国際特許分類】
B60R 16/02 20060101AFI20240401BHJP
B60R 16/023 20060101ALI20240401BHJP
H04L 12/28 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
B60R16/02 645D
B60R16/023 P
H04L12/28 200Z
H04L12/28 100A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153793
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】内藤 一孝
(72)【発明者】
【氏名】谷中 裕太
【テーマコード(参考)】
5K033
【Fターム(参考)】
5K033AA04
5K033BA06
5K033DB25
5K033EC01
(57)【要約】
【課題】起動が不要な車載ECUの通信部への給電を遮断する制御を行うことができる車載装置等を提供する。
【解決手段】車載装置は、車載ネットワークに接続される複数の車載ECUと通信可能に接続される車載装置であって、前記車載ECUとの通信に関する処理を行う制御部を備え、前記車載ECUは、前記車載ネットワークに接続するための通信部を有し、前記制御部は、起動対象の車載ECUに関する情報を取得し、取得した情報に基づき、前記起動対象の車載ECUを特定し、前記起動対象の車載ECU以外となる車載ECUの前記通信部への給電を遮断する制御を行い、前記起動対象の車載ECUに対し、前記車載ネットワークを介して起動信号を出力する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載ネットワークに接続される複数の車載ECUと通信可能に接続される車載装置であって、
前記車載ECUとの通信に関する処理を行う制御部を備え、
前記車載ECUは、前記車載ネットワークに接続するための通信部を有し、
前記制御部は、
起動対象の車載ECUに関する情報を取得し、
取得した情報に基づき、前記起動対象の車載ECUを特定し、
前記起動対象の車載ECU以外となる車載ECUの前記通信部への給電を遮断する制御を行い、
前記起動対象の車載ECUに対し、前記車載ネットワークを介して起動信号を出力する
車載装置。
【請求項2】
前記車載ネットワークは、複数の通信線により構成され、
前記制御部は、
前記起動対象の車載ECUと同じ通信線に接続される他の車載ECUを特定し、
特定した前記他の車載ECUの前記通信部への給電を遮断する制御を行う
請求項1に記載の車載装置。
【請求項3】
前記車載ECUと前記車載装置とは、信号線にて接続されており、
前記制御部は、前記信号線を介して遮断信号を送信することにより、前記車載ECUの前記通信部への給電を遮断する制御を行う
請求項2に記載の車載装置。
【請求項4】
前記車載ECUには、前記通信部への給電を行うための給電線が接続されており、
前記制御部は、前記給電線に配置されるリレーをオフにすることにより、前記車載ECUの前記通信部への給電を遮断する制御を行う
請求項2に記載の車載装置。
【請求項5】
前記複数の車載ECUは、給電を遮断する制御に対応している前記通信部を有する車載ECUと、給電を遮断する制御に対応していない前記通信部を有する車載ECUとを含む
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車載装置。
【請求項6】
前記車載ネットワークは、複数の通信線により構成され、
いずれかの前記通信線に接続される前記複数の車載ECUのうち、消費電力が所定の閾値以下の車載ECU以外の車載ECUは、給電を遮断する制御に対応している前記通信部を有する
請求項5に記載の車載装置。
【請求項7】
前記車載ネットワークは、複数の通信線により構成され、
いずれかの前記通信線に接続される前記複数の車載ECUのうち、消費電力が所定の閾値よりも大きい車載ECUは、給電を遮断する制御に対応している前記通信部を有する
請求項5に記載の車載装置。
【請求項8】
前記複数の車載ECUそれぞれが、給電を遮断する制御に対応している前記通信部を有する車載ECUであるか、又は給電を遮断する制御に対応していない前記通信部を有する車載ECUであるかを示す接続形態情報が記憶される記憶部を備え、
前記制御部は、前記記憶部に記憶される前記接続形態情報を参照して、前記通信部への給電を遮断する制御の対象となる車載ECUを特定する
請求項5に記載の車載装置。
【請求項9】
車載ネットワークに接続される複数の車載ECUと、通信可能に接続されるコンピュータに、
起動対象の車載ECUに関する情報を取得し、
取得した情報に基づき、前記起動対象の車載ECUを特定し、
前記起動対象の車載ECU以外となる車載ECUの通信部への給電を遮断する制御を行い、
前記起動対象の車載ECUに対し、前記車載ネットワークを介して起動信号を出力する
処理を実行させる情報処理方法。
【請求項10】
車載ネットワークに接続される複数の車載ECUと車載装置とを含む車載システムであって、
前記車載ECUは、前記車載ネットワークに接続するための通信部を有し、
前記車載装置は、
起動対象の車載ECUに関する情報を取得し、
取得した情報に基づき、前記起動対象の車載ECUを特定し、
前記起動対象の車載ECU以外となる車載ECUの前記通信部への給電を遮断する制御を行い、
前記起動対象の車載ECUに対し、前記車載ネットワークを介して起動信号を出力する
車載システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載装置、情報処理方法及び車載システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数のECU(Electronic Control Unit)が通信バスに接続されている車載システムが開示されている。各ECUは、通信バスを介して他のECUと通信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の車載システムでは、複数のECUの消費電力に関し何ら考慮されていないという問題点がある。
【0005】
本開示は、起動が不要な車載ECUの通信部への給電を遮断する制御を行うことができる車載装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る車載装置は、車載ネットワークに接続される複数の車載ECUと通信可能に接続される車載装置であって、前記車載ECUとの通信に関する処理を行う制御部を備え、前記車載ECUは、前記車載ネットワークに接続するための通信部を有し、前記制御部は、起動対象の車載ECUに関する情報を取得し、取得した情報に基づき、前記起動対象の車載ECUを特定し、前記起動対象の車載ECU以外となる車載ECUの前記通信部への給電を遮断する制御を行い、前記起動対象の車載ECUに対し、前記車載ネットワークを介して起動信号を出力する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、起動が不要な車載ECUの通信部への給電を遮断する制御を行う車載装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態1(信号制御+CAN電源IC)に係る車載装置等を含む車載システムの構成を例示する模式図である。
【
図2】車載装置の内部構成を例示するブロック図である。
【
図3】車載ECUの内部構成を例示するブロック図である。
【
図4】車載装置の制御部の処理を例示するフローチャートである。
【
図5】車載ECUの接続形態を示す接続形態テーブルに関する説明図である。
【
図6】実施形態2(信号制御+他回路電源IC)の車載ECUの内部構成を例示するブロック図である。
【
図7】実施形態3(電源供給+CAN電源IC)に係る車載装置等を含む車載システムの構成を例示する模式図である。
【
図8】車載装置の内部構成を例示するブロック図である。
【
図9】車載ECUの内部構成を例示するブロック図である。
【
図10】実施形態4(電源供給+他回路電源IC)の車載ECUの内部構成を例示するブロック図である。
【
図11】実施形態5(コスト考慮型)に係る車載装置等を含む車載システムの構成を例示する模式図である。
【
図12】車載装置の制御部の処理を例示するフローチャートである。
【
図13】車載ECUの接続形態を示す接続形態テーブルに関する説明図である。
【
図14】実施形態6(コスト優先型)に係る車載装置等を含む車載システムの構成を例示する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列挙して説明する。また、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0010】
(1)本開示の一態様に係る車載装置は、車載ネットワークに接続される複数の車載ECUと通信可能に接続される車載装置であって、前記車載ECUとの通信に関する処理を行う制御部を備え、前記車載ECUは、前記車載ネットワークに接続するための通信部を有し、前記制御部は、起動対象の車載ECUに関する情報を取得し、取得した情報に基づき、前記起動対象の車載ECUを特定し、前記起動対象の車載ECU以外となる車載ECUの前記通信部への給電を遮断する制御を行い、前記起動対象の車載ECUに対し、前記車載ネットワークを介して起動信号を出力する。
【0011】
本態様にあたっては、車載ネットワークに接続される車両に搭載される複数の車載ECUは、車載装置と通信可能に接続されており、車載装置から送信されるウェイクアップ信号又はスリープ信号を受信することにより、ウェイクアップ状態(起動状態)、又はスリープ状態(停止又は待機状態)に遷移する。複数の車載ECUそれぞれは、車載ネットワークへの接続インターフェイスとなる通信部を有している。当該通信部は、車載ネットワークにて用いられるプロコトルに対応しており、当該プロコトルが例えばCAN(Controller Area Network)又はCAN-FDである場合、通信部は、CANトランシーバ又はCANコントローラに相当する。車載ECUの通信部は、当該通信部に対する給電を遮断できるように構成されており、すなわち給電遮断構成に対応している。当該給電遮断構成は、例えば、通信部に接続される給電線に配置されるリレー又は切換回路、又は通信部に接続される信号線を介して送信される遮断信号に対応した遮断回路等を含む。給電遮断構成に対応した通信部を有する車載ECUは、車載装置の制御部による給電を遮断する制御(給電遮断制御)により、当該通信部への給電が遮断されるため、車載ネットワークへの接続、すなわち車載ネットワークを介した車載装置等との通信が不可となる。給電遮断構成に対応した通信部を有する車載ECUは、車載装置の制御部による給電を実施する制御(給電実施制御)により、当該通信部への給電が行われるため、車載ネットワークへの接続、すなわち車載ネットワークを介した車載装置等との通信が可能となる。このように、車載ECUの通信部は、車載装置の制御部による制御に応じて、電源装置からの給電が遮断された状態(非給電状態)と、給電が行われる状態(給電状態)とを遷移する。車載装置の制御部は、例えば特定のサービスを実行するため、起動対象となる車載ECUに対し、例えばウェイクアップ信号等の起動信号を出力する際、当該起動対象となる車載ECUの通信部を、給電が行われる状態(給電状態)に制御する。この際、当該起動対象の車載ECU以外の車載ECUであって、起動信号(ウエイクアップ信号)に影響を受ける車載ECUの通信部は、給電が遮断された状態(非給電状態)を維持するように制御(給電遮断制御)する。従って、車載ネットワークを介して起動信号が出力された場合であっても、非給電状態となっている通信部を有する車載ECUは、車載ネットワークに対し不通となり、当該起動信号を受信できないため起動しない。これにより、実行を要するサービスに関する処理を行う車載ECUのみを起動し、当該サービスの実行に関与しない他の車載ECUが起動することを防止(回避)し、これら他の車載ECUによって電力が不要に消費されることを抑制することができる。
【0012】
(2)本開示の一態様に係る車載装置は、前記車載ネットワークは、複数の通信線により構成され、前記制御部は、前記起動対象の車載ECUと同じ通信線に接続される他の車載ECUを特定し、特定した前記他の車載ECUの前記通信部への給電を遮断する制御を行う。
【0013】
本態様にあたっては、車載ネットワークにおいて、例えばCAN(Controller Area Network)又はCAN-FDの通信プロコトルに応じた通信が行われる場合、当該車載ネットワークの物理層は、CANバス等による複数の通信線により構成される。この際、単一の通信線(同じ通信線)には、複数の車載ECUが接続されるものとなり、これら複数の車載ECUのうち、いずれかの車載ECUを起動(ウェイクアップ)されるための起動信号(ウェイクアップ信号)は、同じ通信線に接続される全ての車載ECUに対し出力(送信)されるものとなる。このような場合であっても、車載装置の制御部は、起動対象の車載ECUと同じ通信線に接続される他の車載ECUを特定し、特定した他の車載ECUの通信部に対し、当該通信部への給電を遮断する制御を行う従って、起動対象でない車載ECU(他の車載ECU)が有するCANトランシーバ又はCANドライバー等の通信部は、車載装置の制御部により、給電が遮断された状態(非給電状態)となる。これにより、当該起動対象でない車載ECU(他の車載ECU)は、通信部の給電がされていない状態にあるため、起動信号(ウェイクアップ信号)を受信できず、起動(ウェイクアップ)しない。従って、起動対象でない車載ECUにおける停止状態を維持することができ、これら起動対象でない車載ECUによって電力が消費されることを抑制することができる。又、起動(ウェイクアップ)又は待機(スリープ)の状態遷移に対し個別に対応が可能なパーシャル機能を有する車載ECUを用いる場合と比較し、当該パーシャル機能を有する車載ECUよりも比較的に安価な車載ECUを用いて車載システムを構築することができる。すなわち、同一の通信線に複数の車載ECUが接続される車載ネットワークを含む車載システムにおいて、車載ECUの選択起動を通信部駆動電源操作方式(CAN駆動電源操作方式)にて実現することにより、製品コストを低減しつつ、起動不要な車載ECUによる暗電流が増加することを抑制することができる。
【0014】
(3)本開示の一態様に係る車載装置は、前記車載ECUと前記車載装置とは、信号線にて接続されており、前記制御部は、前記信号線を介して遮断信号を送信することにより、前記車載ECUの前記通信部への給電を遮断する制御を行う。
【0015】
車載ECUと車載装置とは、車載ネットワークを構成するCANバス等の通信線に加え、更に信号線にて接続されている。当該信号線は、車載ECUの通信部、又は通信部への給電経路に配置される切替回路又は電源ICに接続される。車載装置の制御部は、車載ECUの通信部への給電を遮断する制御を行うにあたり、信号線を介して遮断信号を、給電遮断の対象となる車載ECUに送信する。車載装置の制御部からの遮断信号は、車載ECUの通信部等に入力され、当該通信部、又は通信部への給電経路に配置される切替回路又は電源ICは、入力された遮断信号に応じて、通信部を給電が遮断された状態(非給電状態)にする。このように信号線を介して遮断信号を送信することにより、車載ECUの通信部への給電を遮断する制御を効率的に行うことができる。
【0016】
(4)本開示の一態様に係る車載装置は、前記車載ECUには、前記通信部への給電を行うための給電線が接続されており、前記制御部は、前記給電線に配置されるリレーをオフにすることにより、前記車載ECUの前記通信部への給電を遮断する制御を行う。
【0017】
本態様にあたっては、車載ECUは、通信部への給電を行うための給電線が接続されており、当該給電線を介して、鉛バッテリ、オルタネータ又は二次電池等にて構成される電源装置から通信部への給電が行われる。又は、電源装置と車載ECUとの間における給電経路には、例えば、ヒューズボックス等の電力分配装置が介在するものであってもよい。又は、車載装置が、CANゲートウェイ等の中継装置、及び電力分配装置としても機能するPLB(Power Lan Box)である場合、車載ECUは給電線を介して車載装置(PLB)に接続されるものであってもよい。給電線には、例えば、半導体リレー、機械式リレー又は開閉スイッチ等のリレーが配置されている。車載ECUの通信部への給電は、例えばPLBとして機能する車載装置から当該給電線を介して行われており、車載ECUの制御部への給電とは別系統にて、当該通信部への給電が行われるものであってもよい。車載装置の制御部は、給電線に配置されるリレーをオフにすることにより、車載ECUの通信部への給電を遮断する制御を行うため、比較的に簡易な構成にて車載ECUの通信部に対する給電遮断制御を行うことができる。
【0018】
(5)本開示の一態様に係る車載装置は、前記複数の車載ECUは、給電を遮断する制御に対応している前記通信部を有する車載ECUと、給電を遮断する制御に対応していない前記通信部を有する車載ECUとを含む。
【0019】
本態様にあたっては、車載ネットワークに接続される複数の車載ECUは、給電を遮断する制御に対応している通信部を有する車載ECUと、給電を遮断する制御に対応していない通信部を有する車載ECUとを含む。従って、例えば、起動される頻度が比較的に高い車載ECUは、給電を遮断する制御に対応していない通信部により、CANバス等の車載ネットワークに接続される。給電を遮断する制御に対応している通信部は、給電を遮断する制御に対応していない通信部よりも、高機能化又は製品仕様が複雑化することが想定され、製品コストが増加するものとなる。又、給電を遮断する制御に対応している通信部に接続される給電線にリレーを配置する場合においては、当該リレーにより部品点数が増加するため、製品コストが増加するものとなる。これに対し、例えば同じCANバスに接続される複数の車載ECUにおいて、給電を遮断する制御に対応している通信部を有する車載ECUと、給電を遮断する制御に対応していない通信部を有する車載ECUとを混在させることにより、車両全体における製品コストの削減を行うことができる。
【0020】
(6)本開示の一態様に係る車載装置は、前記車載ネットワークは、複数の通信線により構成され、いずれかの前記通信線に接続される前記複数の車載ECUのうち、消費電力が所定の閾値以下の車載ECU以外の車載ECUは、給電を遮断する制御に対応している前記通信部を有する。
【0021】
本態様にあたっては、車載ネットワークが複数のCANバスにより構成される場合、同一のCANバスに接続される複数の車載ECUの消費電力が異なることが想定される。この場合、同一のCANバスに接続される複数の車載ECUにおいて、所定の閾値以下の消費電力の車載ECU以外の車載ECUのみ、給電を遮断する制御に対応している通信部を有するものであってもよい。又は、同一のCANバスに接続される複数の車載ECUにおいて、消費電力が最小の車載ECUを、所定の閾値以下の消費電力の車載ECUとして設定するものであってもよい。この場合、当該消費電力が最小の車載ECUは、給電を遮断する制御に対応していない通信部を有する。同一のCANバスに接続される複数の車載ECUにおいて、消費電力が最小の車載ECU以外の他の車載ECUは、給電を遮断する制御に対応している通信部を有する。このように所定の閾値以下の消費電力の車載ECU、特に消費電力が最小の車載ECUは、給電を遮断する制御に対応していない通信部を有することにより、製品コストの削減を行うことができ、当該消費電力が最小の車載ECUによる電力消費を許容することにより、コスト考慮型の車載システムを構成することができる。
【0022】
(7)本開示の一態様に係る車載装置は、前記車載ネットワークは、複数の通信線により構成され、いずれかの前記通信線に接続される前記複数の車載ECUのうち、消費電力が所定の閾値よりも大きい車載ECUは、給電を遮断する制御に対応している前記通信部を有する。
【0023】
本態様にあたっては、車載ネットワークが複数のCANバスにより構成される場合、同一のCANバスに接続される複数の車載ECUの消費電力が異なることが想定される。この場合、同一のCANバスに接続される複数の車載ECUにおいて、所定の閾値よりも大きい消費電力の車載ECUのみ、給電を遮断する制御に対応している通信部を有するものであってもよい。又は、同一のCANバスに接続される複数の車載ECUにおいて、消費電力が最大の車載ECUを、所定の閾値よりも大きい消費電力の車載ECUとして設定するものであってもよい。この場合、当該消費電力が最大の車載ECUのみが、給電を遮断する制御に対応している通信部を有する。同一のCANバスに接続される複数の車載ECUにおいて、当該消費電力が最大の車載ECU以外の他の車載ECUは、給電を遮断する制御に対応していない通信部を有する。このように消費電力が最大の車載ECUのみ、給電を遮断する制御に対応している通信部を有することにより、製品コストの更なる削減を行うことができ、コスト優先型の車載システムを構成することができる。
【0024】
(8)本開示の一態様に係る車載装置は、前記複数の車載ECUそれぞれが、給電を遮断する制御に対応している前記通信部を有する車載ECUであるか、又は給電を遮断する制御に対応していない前記通信部を有する車載ECUであるかを示す接続形態情報が記憶される記憶部を備え、前記制御部は、前記記憶部に記憶される前記接続形態情報を参照して、前記通信部への給電を遮断する制御の対象となる車載ECUを特定する。
【0025】
本態様にあたっては、車載装置の記憶部等、制御部がアクセス可能な記憶領域には、車載ECUそれぞれの通信部に関する接続形態を示す接続形態情報が、例えばテーブル形式(接続形態テーブル)が記憶されている。車載装置の制御部は、記憶部に記憶される接続形態情報を参照して、通信部への給電の遮断対象となる車載ECU、すなわち給電を遮断する制御対象となる通信部を有する車載ECUを特定する。従って、車載ネットワークに接続される車載ECUにおいて、給電を遮断する制御に対応している通信部を有する車載ECUと、給電を遮断する制御に対応していない通信部を有する車載ECUとが混在する場合であっても、車載装置の制御部は、通信部への給電の遮断対象となる車載ECUを効率的に特定することができる。
【0026】
(9)本開示の一態様に係る情報処理方法は、車載ネットワークに接続される複数の車載ECUと、通信可能に接続されるコンピュータに、起動対象の車載ECUに関する情報を取得し、取得した情報に基づき、前記起動対象の車載ECUを特定し、前記起動対象の車載ECU以外となる車載ECUの通信部への給電を遮断する制御を行い、前記起動対象の車載ECUに対し、前記車載ネットワークを介して起動信号を出力する処理を実行させる。
【0027】
本態様にあたっては、コンピュータを、起動が不要な車載ECUの通信部への給電を遮断する制御を行う車載装置として機能させる情報処理方法を提供することができる。
【0028】
(10)本開示の一態様に係る車載システムは、車載ネットワークに接続される複数の車載ECUと車載装置とを含む車載システムであって、前記車載ECUは、前記車載ネットワークに接続するための通信部を有し、前記車載装置は、起動対象の車載ECUに関する情報を取得し、取得した情報に基づき、前記起動対象の車載ECUを特定し、前記起動対象の車載ECU以外となる車載ECUの前記通信部への給電を遮断する制御を行い、前記起動対象の車載ECUに対し、前記車載ネットワークを介して起動信号を出力する。
【0029】
本態様にあたっては、起動が不要な車載ECUの通信部への給電を遮断する制御を行う車載装置を含む車載システムを提供することができる。
【0030】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。本開示の実施形態に係る車載装置1を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0031】
(実施形態1)
以下、実施の形態について図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態1(信号制御+CAN電源IC)に係る車載装置1等を含む車載システムSの構成を例示する模式図である。
図2は、車載装置1の内部構成を例示するブロック図である。
図3は、車載ECU2の内部構成を例示するブロック図である。車載システムSは、車両Cに搭載される車載装置1、車載ECU2、及びこれらを通信可能に接続する車載ネットワーク3により構成される。車載ネットワーク3は、複数の通信線31により構成される。車載ネットワーク3における通信が、例えばCAN(Controller Area Network)又はCAN-FDの通信プロコトルに応じた通信が行われる場合、通信線31はCANバスに相当する。
【0032】
車両Cには、鉛バッテリ、オルタネータ又は二次電池等にて構成される電源装置4が搭載されている。電源装置4と、車載ECU2それぞれとは、電源線41にて接続されている。すなわち、電源装置4から延設される電源線41は、車両Cに搭載される車載ECU2の個数に応じて分岐され、当該分岐された電源線41それぞれは、車載ECU2それぞれに接続される。分岐された電源線41は、車載装置1にも接続される。電源装置4及び車載ECU2それぞれは、更に、車両Cに設けられた共通グランド等のグランド(GND)により接続(接地)される。このように電源装置4の負極はグランド(GND)に接続(接地)され、電源装置4から印加(出力)された直流電圧(電力)は、車載ECU2それぞれに印加(供給)される。
【0033】
車載ECU2それぞれと車載装置1とは、車載装置1から車載ECU2それぞれに対し延設された信号線140によって、接続されている。車載装置1は、信号線140を介して遮断信号を、車載ECU2それぞれに対し出力(送信)する。当該遮断信号を取得(受信)した車載ECU2は、当該車載ECU2が有する通信部23への給電を遮断する。このように車載ECU2それぞれは、車載装置1から出力(送信)される遮断信号に応じて通信部23への給電を遮断するように構成されており、すなわち給電を遮断する制御に対応している通信部23を有している。通信部23への給電が遮断されることにより、通信部23は非給電状態となり、車載ECU2と通信線31との接続が遮断されることにより、車載ECU2は、車載ネットワーク3に伝送される通信データの受信が不可となる。
【0034】
車載装置1は、例えばCANゲートウェイ等の中継装置である。又は、車載装置1は、車両Cの全体を統合的に制御し、中継機能を有する統合ECU(ヴィークルコンピュータ)であってもよい。又は、車載装置1は、車両Cのボディ系アクチュエータを制御するボディECU等として構成されるものであってもよい。又は、車載装置1は、通信に関する中継に加え、二次電池等の電源装置4から出力された電力を分配及び中継し、アクチュエータ等の車載器に電力を供給する電力分配装置としても機能するPLB(Power Lan Box)であってもよい。車載装置1には、各種スイッチ、センサ又はアクチュエータ等の車載機器が接続されるものであってもよい。
【0035】
車載装置1は、制御部11、記憶部12、通信部13、及び入出力I/F14を含む。制御部11は、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)等により構成してあり、記憶部12に予め記憶された制御プログラムP(プログラム製品)及びデータを読み出して実行することにより、種々の制御処理及び演算処理等を行うようにしてある。
【0036】
記憶部12は、RAM(Random Access Memory)等の揮発性のメモリ素子又は、ROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)若しくはフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ素子、又は、これら記憶デバイスの組み合わせにより構成してあり、制御プログラムP(プログラム製品)及び処理時に参照するデータが予め記憶してある。記憶部12に記憶された制御プログラムP(プログラム製品)は、車載装置1が読み取り可能な記録媒体Mから読み出された制御プログラムP(プログラム製品)を記憶したものであってもよい。また、図示しない通信網に接続されている図示しない外部コンピュータから制御プログラムP(プログラム製品)をダウンロードし、記憶部12に記憶させたものであってもよい。
【0037】
通信部13は、例えばCAN、CAN-FD又はイーサネット(Ethernet/登録商標)等の通信プロトコルを用いた入出力インターフェイスであり、制御部11は、通信部13を介して車載ネットワーク3に接続されている車載ECU2と相互に通信する。車載装置1において、通信部13は、複数個、設けられており、通信部13それぞれに対しCANバス等の通信線31が接続される。中継装置と機能する車載装置1は、これら複数の通信部13(CANバス等の通信線31)の間にて送受信される通信データを中継する。
【0038】
入出力I/F14は、例えばシリアル通信するための通信インターフェイスである。入出力I/F14は、複数の端子(出力端子)を含み、端子それぞれには、車載ECU2の通信部用電源IC231それぞれに延設される信号線140それぞれが、接続されている。信号線140は、例えば、シリアルケーブル、ワイヤーハーネス又は、一つの信号のみを送信する導電ケーブル(じか線)等により構成される。更に入出力I/F14には、車両Cの起動及び停止を行うIGスイッチ141が接続されるものであってもよい。更に、入出力I/F14には、車両Cの操作者によって操作される各種装置、及び各種センサが接続されるものであってもよい。
【0039】
車載ECU2は、車載装置1と同様に制御部21、記憶部22、及び通信部23を備える。車載ECU2は、記憶部22に記憶されているプログラムを実行することにより、各種の機能又はサービスを実行するための処理を行う。車載ECU2には、これら機能又はサービス等を実行するにあたり駆動対象となるアクチュエータ等の車載負荷が接続されている。これら車載ECU2は、鉛バッテリ、オルタネータ又は二次電池等にて構成される電源装置4と、電源線41にて接続されている。車載ECU2は、当該電源線41を介して、電源装置4から電力が供給される。車載ECU2は、車載装置1から送信されるウェイクアップ信号又はスリープ信号を受信することにより、ウェイクアップ状態(起動状態)、又はスリープ状態(停止又は待機状態)に遷移する。
【0040】
車載ECU2は、更に制御部用電源IC211、及び通信部用電源IC231を備える。電源装置4から車載ECU2に延設された電源線41は、車載ECU2の内部にて分岐され、分岐された電源線41それぞれは、制御部用電源IC211及び通信部用電源IC231に接続される。制御部用電源IC211は、制御部21を構成するマイコン等へ駆動電力を供給するマイコン電源ICとして機能する。通信部用電源IC231は、通信部23の駆動電力を供給するものであり、通信部23が例えばCANトランシーバ又はCANコントローラ等にて構成される場合、CAN電源ICとして機能する。
【0041】
車載ECU2の通信部23は、内部バス等にて制御部21と通信可能に接続されると共に、通信部用電源IC231と電源線41にて接続されている。通信部用電源IC231は、信号線140を介して車載装置1と接続されている。すなわち、車載装置1と車載ECU2とは、車載ネットワーク3を構成する通信線31にて接続されると共に、更に信号線140によっても接続される。
【0042】
通信部用電源IC231は、車載装置1から出力(送信)される信号に応じて、通信部23に給電を行う給電状態と、通信部23に給電を行わない非給電状態とを遷移する。すなわち、通信部用電源IC231は、車載装置1から遮断信号を受信した場合は非給電状態となり、車載装置1から供給信号を受信した場合は給電状態となる。このように通信部23は、通信部用電源IC231に接続されることにより、給電を遮断する制御に対応する。
【0043】
車載装置1の制御部11は、起動対象の車載ECU2が備える通信部用電源IC231に対し、供給信号を出力(送信)することにより、給電が行われる状態(通信部23に給電を行う給電状態)に遷移させる。車載装置1の制御部11は、当該起動対象の車載ECU2が備える通信部用電源IC231が電源経路を遮断(非給電状態)することなく、給電が行われている状態(給電状態)を維持しつつ、車載ネットワーク3を介してウェイクアップ信号等の起動信号を出力する。当該起動信号(ウェイクアップ信号)を受信した起動対象の車載ECU2は、スリープ状態(待機状態)から、ウェイクアップ状態(起動状態)に遷移する。
【0044】
この際、起動対象の車載ECU2以外の車載ECU2が備える通信部用電源IC231に対して、車載装置1は、給電を遮断する制御(遮断信号を送信)を行っており、通信部用電源IC231に接続される通信部23に対し、通信部用電源IC231(電源装置4)からの給電は行われない。従って、車載ネットワーク3を介して起動信号(ウェイクアップ信号)が送信された場合であっても、遮断状態(非給電状態)となっている通信部23を有する車載ECU2は、当該起動信号を受信できず、起動(ウェイクアップ)しないため、これら車載ECU2により電力が消費されることを防止することができる。
【0045】
車載装置1の制御部11は、プログラムを実行することにより、電源遷移マネージャとして機能し、給電遮断制御機能(給電遮断制御部)、及び通信WU/SLP制御機能(通信WU/SLP制御部)を有する(含む)。WUはウェイクアップ(Wake UP)を示し、SLPはスリープ(Sleep)を示す。電源遷移マネージャは、車載ECU2に対しウェイクアップ信号又はスリープ信号を出力することにより、当該車載ECU2をウェイクアップ状態(起動状態)、又はスリープ状態(停止又は待機状態)に遷移させる。このように状態遷移されることにより、車載ECU2は、ウェイクアップ状態(起動状態)においては電源装置4からの給電が行われ、スリープ状態(停止又は待機状態)においては、電源装置4からの給電が行わない又は消費電力が低減する。電源遷移マネージャは、いずれかの車載ECU2に対しウェイクアップ信号を出力する際、当該ウェイクアップ信号に影響を受ける他の車載ECU2(通信部用電源IC231)に対し、当該他の車載ECU2が備える通信部23への給電を遮断する制御を実行する。電源遷移マネージャとして機能する車載装置1の制御部11に関する詳細は、後述するフローチャートにて説明する。
【0046】
図4は、車載装置1の制御部11の処理を例示するフローチャートである。車載装置1の制御部11は、車両Cの起動時(IGスイッチ141がオン)又は停止時(IGスイッチ141がオフ)において、定常的に以下の処理を行う。
【0047】
車載装置1の制御部11は、起動対象の車載ECU2に関する情報を取得する(S101)。車載装置1の制御部11は、例えば、入出力I/F14に接続されているスイッチからの信号を取得、又は通信部13を介してCANメッセージ等の通信データを取得することにより、これら信号又は通信データに含まれる起動対象の車載ECU2に関する情報する。
【0048】
車載装置1は、例えば、車両Cにおけるボディ系アクチュエータを駆動制御するBCU(ボディECU)として構成されており、電源装置4から常時給電を受けている。車載装置1の制御部11は、入出力I/F14を介して、当該入出力I/F14に接続されているスイッチ又はセンサから出力される各種の信号(入力信号)を取得(受信)する。又は、車載装置1の制御部11は、CANトランシーバ等の通信部13及び車載ネットワーク3を介して、車載ECU2から送信されるCANメッセージ等の通信データを取得(受信)する。これら信号又は通信データには、例えば、車両Cとして実行する各種機能又はサービスに関する情報が含まれている。これら機能又はサービスは、予め定められた車載ECU2の処理によって行われるもとして予め定義されており、当該サービス等を実行する際に起動対象となる車載ECU2に関する情報に相当する。又は、これら信号又は通信データには、起動対象の車載ECU2に関する情報そのものが含まれているものであってもよい。車載装置1の制御部11は、これら取得した信号又は通信データをトリガーとし、以下のように電源給電や起動が必要な車載ECU2(機器)を判断し、判断結果に基づき、電源制御、通信制御、通信遮断制御、及び給電遮断制御等を含む制御処理を実施する。
【0049】
車載装置1の制御部11は、取得した情報に基づき、起動対象の車載ECU2を特定する(S102)。取得した情報、すなわち受信した信号又は通信データに、実行要求された機能又はサービスに関する情報が含まれている場合、車載装置1の制御部11は、これらサービス等に関する情報に基づき、当該サービスに関する処理を行う車載ECU2を、起動対象の車載ECU2を特定する。車載装置1の制御部11は、例えば、記憶部12に記憶されている接続形態テーブルを参照することにより、起動対象の車載ECU2を特定するものであってもよい。
【0050】
車載装置1の制御部11は、起動対象の車載ECU2と同じ通信線31に接続される他の車載ECU2を特定する(S103)。車載ネットワーク3が、例えば複数の通信線31(CANバス)により構成される場合、各CANバスそれぞれには、複数の車載ECU2が接続されることが想定される。車載装置1の制御部11は、例えば、記憶部12に記憶されている接続形態テーブルを参照することにより、起動対象の車載ECU2と同じ通信線31(CANバス)に接続される車載ECU2であって、当該起動対象の車載ECU2以外となる他の車載ECU2を特定するものであってもよい。
【0051】
図5は、車載ECU2の接続形態を示す接続形態テーブルに関する説明図である。車載装置1の記憶部12等、車載装置1の制御部11がアクセス可能な記憶領域には、車載ECU2それぞれの接続形態を示す接続形態情報が、例えばテーブル形式(接続形態テーブル)にて記憶されている。車載装置1がCANゲートウェイ等の中継装置として機能する場合、当該接続形態テーブルは、車載装置1が中継処理(ルーティング処理)を行う際に参照する経路情報(ルーティングテーブル)の一部位として構成されるものであってもよい。接続形態テーブルは、管理項目(フィールド)として、ECUID、バス番号、端子番号、及びサービス名を含む。
【0052】
ECUIDの管理項目には、車載ネットワーク3に接続される全ての車載ECU2を一意に特定する識別番号(ID)が格納される。当該識別番号(ID)は、車載ECU2の製造番号(SN)を用いるものであってもよい。車載ネットワーク3における通信プロトコルがTCP/IPの場合、識別番号(ID)は、車載ECU2のIPアドレス又はMACアドレスであってもよい。車載装置1の制御部11は、ECUIDを用いることにより、車載ECU2それぞれを一意に特定することができる。
【0053】
バス番号の管理項目には、同じレコードにおけるECUIDにて特定される車載ECU2が接続される通信線31(CANバス)の番号が格納される。当該バス番号は、車載装置1が備える通信部13それぞれのデバイス番号に相当する。車載装置1の制御部11は、バス番号を用いることにより、同じ通信線31(CANバス)に接続される複数の車載ECU2を特定することができる。
【0054】
端子番号の管理項目には、同じレコードにおけるECUIDにて特定される車載ECU2の通信部用電源IC231に接続される入出力I/F14の端子番号が、格納される。車載ECU2の通信部用電源IC231それぞれに対し、車載装置1の入出力I/F14から延設される信号線140それぞれが、接続される。入出力I/F14は、複数の端子を含み、通信部用電源IC231それぞれに延設される信号線140それぞれは、個々の端子に接続される。車載装置1の制御部11は、端子番号を用いることにより、給電の遮断対象となる通信部23を有する車載ECU2を、特定することができる。
【0055】
サービス名の管理項目には、同じレコードにおけるECUIDにて特定される車載ECU2が担うサービス名が、格納される。車載装置1の制御部11は、当該サービス名を用いることにより、実行すべきサービス又は機能に対応する(担う)車載ECU2を特定することができる。
【0056】
車載装置1の制御部11は、特定した他の車載ECU2に対し、遮断信号を出力する(S104)。車載装置1の制御部11は、例えば接続形態テーブルを参照することにより、起動対象の車載ECU2と同じ通信線31(CANバス)に接続される他の車載ECU2を特定し、当該他の車載ECU2が有する通信部用電源IC231に対応する入出力I/F14の端子番号を特定する。
【0057】
車載装置1の制御部11は、特定した端子番号の端子(入出力I/F14の端子)から、通信部用電源IC231に対し、遮断信号を出力する。通信部用電源IC231が例えば半導体リレー又は機械式リレーで構成されている場合、車載装置1の制御部11は、特定した端子番号の端子から、半導体リレー等をオフにするオフ信号(遮断信号)を出力する。通信部用電源IC231は、例えば、常時オン(給電)の状態を維持するものであってもよい。その上で、車載装置1からの遮断信号を受信した通信部用電源IC231は、通信部23への給電を遮断する。これにより、通信部23は非給電状態となり動作を停止し、当該車載ECU2は、通信線31(車載ネットワーク3)から切り離された状態となる。従って、当該通信線31にて、車載装置1から出力されたウェイクアップ信号等の起動信号が伝送された場合であっても、ウェイクアップ信号は車載ECU2に到達しないものとなる。
【0058】
通信部用電源IC231は、常時オン(給電)の状態を維持するとして説明したが、これに限定されない。通信部用電源IC231は、常時オフ(遮断)の状態を維持するものであってもよい。この場合、車載装置1の制御部11は、起動対象の車載ECU2に接続される通信部用電源IC231に対し、供給信号(オン信号)を出力して通信部23を給電状態に遷移させ、当該起動対象の車載ECU2が起動信号(ウエイクアップ信号)を受信できる状態にするものであってもよい。
【0059】
車載装置1の制御部11は、起動対象の車載ECU2に対し、車載ネットワーク3を介して起動信号(ウエイクアップ信号)を出力する(S105)。車載装置1の制御部11は、起動対象の車載ECU2と同じ通信線31(CANバス)に接続される他の車載ECU2に対し、当該車載ECU2が有する通信部用電源IC231に遮断信号を出力することにより、これら他の車載ECU2を通信線31(車載ネットワーク3)から切り離した状態にしている。車載装置1の制御部11は、当該切り離した状態を維持しつつ、起動対象の車載ECU2に対し、車載ネットワーク3を介して起動信号(ウエイクアップ信号)を出力する。これにより、起動対象の車載ECU2は、スリープ状態(停止又は待機状態)からウェイクアップ状態(起動状態)に遷移し、実行すべきサービス又は機能を発揮するための処理を開始する。
【0060】
車載ネットワーク3が、例えばCANのプロトコルを用いている場合、車載ネットワーク3は、複数の通信線31(CANバス)により構成されるものとなる。この場合、いずれかのCANバスにおいて、ウェイクアップ信号が伝送された場合、当該CANバスに接続されている全ての車載ECU2が、スリープ状態からウェイクアップ状態に遷移する。例えば、車両Cの駐車時(停止時)等にて特定の機能又はサービスのみを利用する場合、当該サービスに関する処理を担う車載ECU2を起動、すなわちウェイクアップ状態に遷移させることを要する。この際、当該起動対象の車載ECU2が接続されるCANバスにウェイクアップ信号が伝送されると、当該CANバスに接続される全て車載ECU2がウェイクアップ信号を受信し、起動(ウェイクアップ状態に遷移)するものとなる。この場合、利用するサービスに対応する車載ECU2のみならず、当該車載ECU2と同じCANバスに接続される全ての車載ECU2に対しても給電が行われるものなり、本来利用したいサービス等以上に電力を消費(電流が増加)するものとなる。
【0061】
これに対し、本実施形態における車載装置1を用いることにより、利用するサービスに対応する車載ECU2以外となる他の車載ECU2については、当該他の車載ECU2の通信部23への給電を遮断する。これにより、他の車載ECU2の通信部23は非給電状態となり動作を停止するため、車載ECU2と通信線31(CANバス)との接続(通信経路)が切断され、不通状態となる。これにより、これら他の車載ECU2は、起動信号(ウエイクアップ信号)を受信することなく、スリープ状態を維持することができ、これら起動対象でない車載ECU2によって電力が消費されることを抑制することができる。
【0062】
(実施形態2)
図6は、実施形態2(信号制御+他回路電源IC)の車載ECU2の内部構成を例示するブロック図である。実施形態2の車載ECU2は、実施形態1と同様に、制御部21、記憶部22、通信部23及び制御部用電源IC211を備える。車載ECU2は、更に切替回路232を備える。切替回路232には、通信部23が接続され、通信部23は切替回路232を介して、電源装置4からの電力が供給される。
【0063】
電源装置4から車載ECU2に延設された電源線41は、制御部用電源IC211に接続される。制御部用電源IC211は、制御部21へ駆動電力を供給すると共に、切替回路232を介して通信部23に対しても駆動電力を供給する。すなわち、制御部用電源IC211に接続された電源線41は、制御部用電源IC211の内部にて分岐され、分岐された電源線41それぞれは、制御部11及び、切替回路232に接続される。制御部用電源IC211は、電源装置4から印加された電圧を、制御部11等を構成するマイコン用の駆動電圧に降圧すると共に、CANトランシーバ等の通信部23の駆動電圧に降圧するレギュレータ等として機能するものであってもよい。
【0064】
切替回路232は、例えば半導体リレー又は機械式リレーで構成されており、実施形態1の通信部用電源IC231と同様に信号線140によって、車載装置1と通信可能に接続されている。切替回路232は、車載装置1から出力(送信)される信号に応じて、回路内の通電経路(半導体リレー等)を切り替え、制御部用電源IC211からの電力を通信部23に供給する給電状態と、制御部用電源IC211からの電力を通信部23に供給せず遮断する非給電状態とを遷移する。すなわち、切替回路232は、車載装置1から遮断信号を受信した場合は非給電状態となり、車載装置1から供給信号を受信した場合は給電状態となる。このように通信部23は、切替回路232に接続されることにより、給電を遮断する制御に対応する。
【0065】
(実施形態3)
図7は、実施形態3(電源供給+CAN電源IC)に係る車載装置1等を含む車載システムSの構成を例示する模式図である。
図8は、車載装置1の内部構成を例示するブロック図である。
図9は、車載ECU2の内部構成を例示するブロック図である。実施形態3の車載システムSは、実施形態1と同様に車両Cに搭載される車載装置1、車載ECU2、及びこれらを通信可能に接続する車載ネットワーク3により構成される。これら車載装置1及び車載ECU2は、電源線41にて電源装置4と接続され、当該電源線41を介して、電源装置4から電力が供給される。
【0066】
車載装置1と、車載ECU2それぞれとは、給電線151により接続されており、車載ECU2の通信部23への給電は、給電線151を介して車載装置1によって行われる。車載装置1は、当該給電線151を介した電力の供給又は遮断を行うことにより、車載ECU2の通信部23を給電状態又は非給電状態に遷移させる。
【0067】
車載装置1は、実施形態1と同様に制御部11、記憶部12、通信部13、及び入出力I/F14を含み、更に電力出力部15を含む。電源装置4から延設された電源線41は、車載装置1の内部にて分岐され、分岐された電源線41それぞれは、制御部11及び電力出力部15に接続される。電力出力部15は、複数の電力出力端子を備え、入力された電力を電力出力端子それぞれから出力する。電力出力端子それぞれには、車載ECU2それぞれに延設される給電線151が接続されており、これら給電線151それぞれには、リレー152が配置されている。
【0068】
車載装置1の制御部11は、給電線151に配置されたリレー152をオン・オフ制御することにより、当該給電線151に接続される車載ECU2の通信部23を給電状態又は非給電状態に遷移させる。すなわち、車載装置1の制御部11は、電力出力端子それぞれからの電力の出力(給電)又は停止(遮断)を制御することにより、車載ECU2の通信部23の状態(給電状態又は非給電状態)を制御する。この場合、接続形態テーブルの端子番号の管理項目には、電力出力部15の電力出力端子の端子番号、又は当該電力出力端子に接続されるリレー152の番号が、格納される。
【0069】
本実施形態において、リレー152は電力出力部15の外部に設けるものとしたが、これに限定されず、これらリレー152は電力出力部15の内部に設けられるものであってもよい。又、電力出力部15が、電力出力端子を備えるとしたが、これに限定されず、入出力I/F14が電力出力端子を備えるものであってもよい。この場合、入出力I/F14が備える電力出力端子に給電線151が接続され、当該給電線151を介して車載装置1から、車載ECU2それぞれの通信部23への給電が、行われる。
【0070】
車載ECU2は、実施形態1と同様に、制御部21、記憶部22、通信部23、制御部用電源IC211、及び通信部用電源IC231を備える。通信部用電源IC231は、電源装置4から車載ECU2に延設される電源線41、すなわち制御部用電源IC211に接続される電源線41には、接続されず、車載装置1から延設された給電線151に接続される。車載ECU2において、制御部21及び記憶部22等を構成するマイコンへの電源経路と、通信部23への電源経路とは、別系統として構成されている。
【0071】
通信部用電源IC231は、給電線151を介して車載装置1から供給される電力を駆動電力として動作し、更に当該供給された電力をCANトランシーバ等の通信部23の駆動電圧に降圧するレギュレータ等として機能するものであってもよい。通信部用電源IC231は、車載装置1からの給電の有無に応じて、通信部23に給電を行う給電状態と、通信部23に給電を行わない非給電状態とを遷移する。車載ECU2の通信部23は、実施形態1と同様に通信部用電源IC231から供給される電力により駆動する。車載ECU2の通信部23は、車載装置1からの通信部用電源IC231への電力の供給又は遮断に応じて、給電状態と、非給電状態とを遷移する。このように通信部23は、通信部用電源IC231に接続されることにより、給電を遮断する制御に対応する。
【0072】
(実施形態4)
図10は、実施形態4(電源供給+他回路電源IC)の車載ECU2の内部構成を例示するブロック図である。実施形態4の車載ECU2は、実施形態3と同様に制御部21、記憶部22、通信部23、及び制御部用電源IC211を備える。車載ECU2の通信部23は、給電線151を介して車載装置1の電力出力部15と接続されており、当該車載装置1から電力が供給される。すなわち、車載ECU2において、制御部21及び記憶部22等を構成するマイコンへの電源経路と、通信部23への電源経路とは、別系統として構成されている。
【0073】
車載装置1の電力出力部15は、電源装置4から印加された電圧を、車載ECU2の通信部23の駆動電圧に降圧するものであり、実施形態3の通信部用電源IC231と同様の機能を有するものであってもよい。車載ECU2の通信部23は、給電線151を介して車載装置1の電力出力部15から供給される電力により駆動する。車載装置1の制御部11は、電力出力端子それぞれからの電力の出力(給電)又は停止(遮断)を制御することにより、車載ECU2の通信部23の状態(給電状態又は非給電状態)を制御する。このように通信部23は、給電線151を介して車載装置1に接続されることにより、給電を遮断する制御に対応する。
【0074】
(実施形態5)
図11は、実施形態5(コスト考慮型)に係る車載装置1等を含む車載システムSの構成を例示する模式図である。本実施形態の車載システムSは、実施形態1と同様に、車載装置1、車載ECU2、及びこれらを通信可能に接続する車載ネットワーク3により構成される。本実施形態における車載システムSにおいては、給電を遮断する制御に対応している通信部23を有する車載ECU2と、給電を遮断する制御に対応していない通信部23を有する車載ECU2とが混在する。
【0075】
車載ネットワーク3を構成する複数の通信線31(CANバス)それぞれにおいて、消費電力が所定の閾値以下の車載ECU2以外の車載ECU2のみが、給電を遮断する制御に対応している通信部23を有する。従って、消費電力が所定の閾値以下の車載ECU2は、給電を遮断する制御に対応していない通信部23を有し、当該車載ECU2は、車載装置1から送信されるウェイクアップ信号を、常時、受信可能に構成されている。このように給電を遮断する制御に対応していない通信部23を有する車載ECU2には、車載装置1から延設される信号線140又は給電線151は、接続されていない。
【0076】
このような接続形態とする場合、同一のCANバスに接続される複数の車載ECU2において、消費電力が最小の車載ECU2を、所定の閾値以下の消費電力の車載ECU2として設定するものであってもよい。例えば、同一のCANバスに3つの車載ECU2(A,B,C)が接続される場合、ECU(A)、ECU(B)、ECU(C)の順に消費電力(W)が小さくなるものとする(ECU(A)>ECU(B)>ECU(C))。この場合、最も消費電力が小さいECU(C)のみ、給電を遮断する制御に対応していない通信部23を有することにより、製品コストの削減を行うことができる。すなわち、消費電力が最小の車載ECU2による電力消費を許容することで、当該車載ECU2(消費電力が最小の車載ECU2)が、比較的に高価となる、給電を遮断する制御に対応している通信部23を有することを不要とでき、更に当該車載装置1と接続する給電線151又は信号線140についても、不要とすることができる。これにより、車両Cにおける製品コストの削減を行うことができ、コスト考慮型の車載システムSを構成することができる。
【0077】
図12は、車載装置1の制御部11の処理を例示するフローチャートである。車載装置1の制御部11は、車両Cの起動時(IGスイッチ141がオン)又は停止時(IGスイッチ141がオフ)において、定常的に以下の処理を行う。
【0078】
車載装置1の制御部11は、起動対象の車載ECU2に関する情報を取得する(S201)。車載装置1の制御部11は、取得した情報に基づき、起動対象の車載ECU2を特定する(S202)。車載装置1の制御部11は、実施形態1の処理S101からS102と同様にS201からS202の処理を行う。
【0079】
車載装置1の制御部11は、起動対象の車載ECU2と同じ通信線31に接続される車載ECU2であって、給電を遮断する制御に対応している通信部23を有する他の車載ECU2を特定する(S203)。本実施形態においては、車載ネットワーク3に接続される全ての車載ECU2が給電を遮断する制御に対応している通信部23を有するものでなく、給電を遮断する制御に対応している通信部23を有する車載ECU2と、給電を遮断する制御に対応していない通信部23を有する車載ECU2とが混在している。同一の通信線31(CANバス)に接続される複数の車載ECU2において、これら車載ECU2の消費電力が異なることが想定される。この場合、同一のCANバスに接続される複数の車載ECU2において、所定の閾値以下の消費電力の車載ECU2以外の車載ECU2のみ、給電を遮断する制御に対応している通信部23を有するものであってもよい。更には、同一の通信線31(CANバス)に接続される複数の車載ECU2において、消費電力が最小の車載ECU2は、給電を遮断する制御に対応していない通信部23し、当該通信部23は常時給電される接続形態(ウェイクアップ信号を常時、受信可能)とするものであってもよい。
【0080】
このような接続形態において、車載装置1の制御部11は、起動対象の車載ECU2と同じ通信線31に接続される車載ECU2であって、給電を遮断する制御に対応している通信部23を有する他の車載ECU2を特定する。車載装置1の制御部11は、例えば、記憶部12に記憶されている接続形態テーブルを参照することにより、当該他の車載ECU2を特定するものであってもよい。
【0081】
図13は、車載ECU2の接続形態を示す接続形態テーブルに関する説明図である。接続形態テーブルは、管理項目(フィールド)として、実施形態1と同様にECUID、バス番号、端子番号、及びサービス名を含み、更に接続形態を含む。ECUID、バス番号、端子番号、及びサービス名の管理項目については、実施形態1と同様の事項が格納される。
【0082】
接続形態の管理項目には、同じレコードにおけるECUIDにて特定される車載ECU2に対し、当該車載ECU2が、給電を遮断する制御に対応している通信部23を有する否か、すなわち給電を遮断する制御に対応している通信部23の有無が格納される。接続形態が有である車載ECU2は、給電を遮断する制御に対応している通信部23を有する。接続形態が無である車載ECU2は、給電を遮断する制御に対応している通信部23を有しておらず、給電を遮断する制御に対応していない通信部23を有する。当該接続形態が無である車載ECU2は、この車載ECU2が接続される通信線31(CANバス)に接続される複数の車載ECU2において、最も消費電力が少ない車載ECU2に相当する。
【0083】
車載装置1の制御部11は、接続形態テーブルを参照することにより、起動対象の車載ECU2と同じ通信線31に接続される車載ECU2であって、給電を遮断する制御に対応している通信部23を有する、他の車載ECU2(接続形態:有)を効率的に特定することができる。本実施形態において、各通信線31(CANバス)に接続される複数の車載ECU2において、最も消費電力が少ない車載ECU2に対しては、比較的に高価となる、給電を遮断する制御に対応している通信部23を有することを不要とし、製品コストの削減を図ることができる。
【0084】
車載装置1の制御部11は、特定した他の車載ECU2に対し、遮断信号を出力する(S204)。車載装置1の制御部11は、特定した他の車載ECU2における通信部23の接続形態に応じて、当該通信部23に接続される通信部用電源IC231又は切替回路232に対し、遮断信号を出力する。これにより、特定した他の車載ECU2の通信部23は、非給電状態となる。又は、車載装置1が、車載ECU2の通信部23又は通信部用電源IC231への給電を行う形態の場合、車載装置1の制御部11は、当該通信部23等への給電を遮断(停止)する。これにより、特定した他の車載ECU2の通信部23は、非給電状態となる。車載装置1の制御部11は、起動対象の車載ECU2に対し、車載ネットワーク3を介して起動信号(ウエイクアップ信号)を出力する(S205)。車載装置1の制御部11は、実施形態1の処理S104からS105と同様にS204からS205の処理を行う。
【0085】
(実施形態6)
図14は、実施形態6(コスト優先型)に係る車載装置1等を含む車載システムSの構成を例示する模式図である。本実施形態の車載システムSは、実施形態1と同様に、車載装置1、車載ECU2、及びこれらを通信可能に接続する車載ネットワーク3により構成される。本実施形態における車載システムSにおいては、給電を遮断する制御に対応している通信部23を有する車載ECU2と、給電を遮断する制御に対応していない通信部23を有する車載ECU2とが混在する。
【0086】
車載ネットワーク3を構成する複数の通信線31(CANバス)それぞれにおいて、消費電力が所定の閾値よりも大きい車載ECU2のみが、給電を遮断する制御に対応している通信部23を有する。従って、消費電力が所定の閾値以下の車載ECU2には、給電を遮断する制御に対応していない通信部23を有し、当該車載ECU2は、車載装置1から送信されるウェイクアップ信号を、常時、受信可能に構成されている。このように給電を遮断する制御に対応していない通信部23を有する車載ECU2には、車載装置1から延設される信号線140又は給電線151は、接続されていない。
【0087】
このような接続形態とする場合、同一のCANバスに接続される複数の車載ECU2において、消費電力が最大の車載ECU2を、所定の閾値よりも大きい消費電力の車載ECU2として設定するものであってもよい。例えば、同一のCANバスに3つの車載ECU2(A,B,C)が接続される場合、ECU(A)、ECU(B)、ECU(C)の順に消費電力(W)が小さくなるものとする(ECU(A)>ECU(B)>ECU(C))。この場合、最も消費電力が大きいECU(A)のみ、給電を遮断する制御に対応している通信部23を有することにより、ECU(B)及びECU(C)は、比較的に安価となる、給電を遮断する制御に対応していない通信部23を有するものとすることができる。
【0088】
このように消費電力が最大の車載ECU2のみ、給電を遮断する制御に対応している通信部23を有することにより、製品コストの更なる削減を図るコスト優先型の車載システムSを構成することができる。本実施形態における車載システムSにおいて、車載装置1の制御部11は、実施形態5と同様のフローチャートにて、通信部23、通信部用電源IC231又は切替回路232に対する制御を行うものであってもよい。
【0089】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0090】
特許請求の範囲に記載されている複数の請求項に関して、引用形式に関わらず、相互に組み合わせることが可能である。特許請求の範囲では、複数の請求項に従属する多項従属請求項を記載してもよい。多項従属請求項に従属する多項従属請求項を記載してもよい。多項従属請求項に従属する多項従属請求項が記載されていない場合であっても、これは、多項従属請求項に従属する多項従属請求項の記載を制限するものではない。
【符号の説明】
【0091】
C 車両
S 車載システム
1 車載装置
11 制御部
12 記憶部
M 記録媒体
P 制御プログラム(プログラム製品)
13 通信部
14 入出力I/F
140 信号線
141 IGスイッチ
15 電力出力部
151 給電線
152 リレー
2 車載ECU
21 制御部
211 制御部用電源IC(マイコン電源IC)
22 記憶部
23 通信部
231 通信部用電源IC
232 切替回路
3 車載ネットワーク
31 通信線
4 電源装置
41 電源線