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特開2024-47994ラインマーキング剤組成物及びその原液並びにラインマーク方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047994
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】ラインマーキング剤組成物及びその原液並びにラインマーク方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 101/08 20060101AFI20240401BHJP
   C09D 101/28 20060101ALI20240401BHJP
   C09D 101/12 20060101ALI20240401BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20240401BHJP
【FI】
C09D101/08
C09D101/28
C09D101/12
C09D7/61
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153805
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】396018184
【氏名又は名称】株式会社和光
(71)【出願人】
【識別番号】000005935
【氏名又は名称】美津濃株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086346
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 武信
(72)【発明者】
【氏名】橘 興太郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 圭一
(72)【発明者】
【氏名】太田 昂貴
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038BA021
4J038BA041
4J038BA101
4J038HA156
4J038HA166
4J038KA06
4J038KA08
4J038MA08
4J038NA24
4J038NA25
4J038PB02
4J038PB05
4J038PC04
4J038PC09
(57)【要約】
【課題】降雨時の水に流されることを抑制しながら、雨を超える水圧の水によっては流され得るラインマーキング剤組成物及びその原液並びにラインマーク方法の提供を図る。
【解決手段】水性造膜剤と着色剤とを含み、水性造膜剤によってマーキング対象物の少なくとも表面に着色剤を定着させるようにしたラインマーキング剤組成物であって水性造膜剤が、親水性を備えたセルロース誘導体を含むもラインマーキング剤組成物。上記ラインマーキング剤組成物が水性液に分散又は溶解されたラインマーキング原液であって、その粘度が2.0~6,000cps(20°C)であるラインマーキング原液。上記ラインマーキング原液を水で2~10倍に希釈してマーキング対象物に塗布するラインマーク方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性造膜剤と着色剤とを含み、前記水性造膜剤によってマーキング対象物の少なくとも表面に前記着色剤を定着させるようにしたラインマーキング剤組成物において、
前記水性造膜剤は、親水性を備えたセルロース誘導体を含むことを特徴とするラインマーキング剤組成物。
【請求項2】
前記親水性を備えたセルロース誘導体は、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースの少なくとも何れか1種であることを特徴とする請求項1に記載のラインマーキング剤組成物。
【請求項3】
前記着色剤は、酸化チタンを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のラインマーキング剤組成物。
【請求項4】
前記水性造膜剤が0.1~6.0質量%、前記着色剤が10~60質量%配合されたことを特徴とする請求項3に記載のラインマーキング剤組成物。
【請求項5】
請求項1に記載されたラインマーキング剤組成物が水性液に分散又は溶解されたラインマーキング原液であって、その粘度が2.0~6,000cps(20°C)であることを特徴とするラインマーキング原液。
【請求項6】
請求項1に記載されたラインマーキング剤組成物が水性液に分散又は溶解されたラインマーキング原液であって、前記親水性を備えたセルロース誘導体の分子量(GPC法)が40,000~2,500,000であることを特徴とするラインマーキング原液。
【請求項7】
請求項5又は6に記載されたラインマーキング原液を水で2~10倍に希釈して前記マーキング対象物に塗布することを特徴とするラインマーク方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラインマーキング剤組成物及びその原液並びにラインマーク方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
芝生(天然芝及び人工芝)やアンツーカーなどの土の競技場において陸上競技会や球技などの競技を行う際には、一般に白色のラインを引いて行われる。ところがこのラインは競技種目によって様々であり、白色以外の色のラインが用いられる場合もあるし、またラインを引かずに行われる行事もある。そのために、今日のラインは容易に消せることが求められる。具体的には、水によって容易に洗い流せることが求められる。
ところが、雨天においても競技や行事が行われる場合もあり、雨によって簡単に流されてラインが消えてしまうと、競技や行事の進行の妨げとなってしまう。
このラインを引くために、従来は粉体を芝生や土などのマーキング対象物の上に塗布していたが、今日では特許文献1~3に示す液状のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-018651号公報
【特許文献2】特開2010-090337号公報
【特許文献3】特開2011-207737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、降雨時の水に流されることを抑制しながら、雨を超える水圧の水によっては流され得るラインマーキング剤組成物及びその原液並びにラインマーク方法の提供を課題とする。
好ましくは、流された際に、環境の劣化を抑制するものを提供する。
また好ましくは、塗布用のタンクに収納して芝生に対して塗布する際に、タンク内での分離沈殿を抑制することができるものを提供する。
また好ましくは、ノズルから芝生に吐出して塗布する際に、ノズル内等の流路における目詰まりを抑制することができるものを提供する。
また好ましくは、合成樹脂によって芝が構成されている人工芝に対しても、適するものを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、水性造膜剤と着色剤とを含み、前記水性造膜剤によってマーキング対象物の少なくとも表面に前記着色剤を定着させるようにしたラインマーキング剤組成物において、前記水性造膜剤が親水性を備えたセルロース誘導体を含むラインマーキング剤組成物を提供することにより、上記の課題を解決する。
本発明の実施に際しては、前記親水性を備えたセルロース誘導体は、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースの少なくとも何れか1種とすることができる。
また、前記水性造膜剤を0.1~6.0質量%、前記着色剤を10~60質量%配合してラインマーキング剤組成物の配合とすることができる。
【0006】
また本発明は、上記のラインマーキング剤組成物が水性液に分散又は溶解されたラインマーキング原液であって、その粘度が2.0~6,000cps(20°C)であるラインマーキング原液を提供する。
さらにまた本発明は、上記ラインマーキング剤組成物が水性液に分散又は溶解されたラインマーキング原液であって、前記親水性を備えたセルロース誘導体の分子量(GPC法)が40,000~2,500,000であることを特徴とするラインマーキング原液を提供する。
【0007】
また本発明は、上記ラインマーキング原液は、水で2~10倍に希釈して前記マーキング対象物に塗布するラインマーク方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、親水性を備えたセルロース誘導体を水性造膜剤として含み、水性造膜剤によってマーキング対象物の少なくとも表面に着色剤を定着させるようにしたため、降雨時の水に流されることはなく、且つ、雨を超える水圧の水によっては流されるラインマーキング剤組成物及びその原液並びにラインマーク方法を提供することができたものである。
親水性を備えたセルロース誘導体は、医療用にも用いられており、環境の劣化を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明の実施の形態に係るラインマーキング剤組成物は、水性造膜剤と着色剤とを含むものであり、これを所定の濃度で水に溶解分散させてラインマーキング原液として、芝生や地面などのマーキング対象物の少なくとも表面に塗布してラインを描き、水が乾燥すると、水性造膜剤は、着色剤を含む塗膜をマーキング対象物の表面に形成して、その表面に着色剤を定着させる。
【0010】
[マーキング対象物について]
マーキング対象物としては、特に限定するものではないが、例えば天然芝や人工芝などの芝の他、天然の土壌やアンツーカーなどの人工の土や、アスファルトやコンクリートを示すことができる。従って、芝生や土の競技場の他、イベント会場、仮設駐車場などにも使用する事ができるものが好ましい。
【0011】
[水性造膜剤について]
水性造膜剤は、親水性を備えたセルロース誘導体を含むものとして実施することができる。
この親水性を備えたセルロース誘導体としては、エーテル結合によるセルロースエーテル類やエステル結合によるセルロースエステル類などのセルロース類における種々のセルロース誘導体を挙げることができ、親水性基を導入するなどして水に対して可溶化したものを好適に用いることができる。より具体的には、ヒドロキシプロピルセルロース(以下略称、HPC)、カルボキシメチルセルロース(以下略称、CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(以下略称、HPMC)を示すことができ、これらの一種又は複数種を選択して配合することができる。
HPCは、酸化プロピレンを反応させて得られるセルロース誘導体で、ヒドロキシプロポキシ基を導入することでセルロースの水酸基同士の水素結合を妨げることにより、水に対して可溶化したものである。
CMCは、セルロースのメチルおよびヒドロキシプロピルの混合エーテルであり、セルロースの骨格を構成するグルコピラノースモノマーのヒドロキシ基の一部にカルボキシメチル基 (-CH2-COOH) を結合させることにより、水に対して可溶化したものである。
HPMCは、ヒドロキシプロピル基をメチルセルロースに対して導入したセルロースエーテルであり、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC・Na)や カルボシキメチルセルロースカルシウム(CMC・Ca)と同じ範疇にあるセルロース誘導体(セル ロースエーテル類)である。
【0012】
セルロースは、本来疎水性であるが、上記のようにして水可溶化することにより、水を希釈溶媒として使用することができるため、ラインマーキング原液並びにこれを希釈調整した所定濃度のラインマーキング液を各対象物に塗付することができる。
【0013】
特に、?がれやすく塗装が困難な人工芝のポリエチレン素材に対しても、親水性基を導入することで付与されたチキソ性(例えばヒドロキシプロポキシ基を導入することでHPCに付与されたチキソ性)が基材に対して粘調密着するため、乾燥した後にもマーキング対象物の表面に塗膜を形成してラインマーキング液として求められる必要な発色性を発現させることができる。
粘調密着により形成された液体の塗膜は、後に乾燥を終えると蒸発乾固した固体の乾燥塗膜となる。このチキソ性を備えた塗膜は、ラインとして必要とされる摩擦耐性を充分に備え、また小雨程度の降雨であれば、多少の塗膜膨張があっても簡単に流出しない特性が付与される。
【0014】
他方、雨の水圧よりも高圧の水が噴射されて洗浄されると、塗膜が乾燥した状態であっても、吸水作用が働くHPC等の親水性を備えたセルロース誘導体の特性によって、洗浄に用いた水により膨潤・膨張し、易洗浄性が促進される。これに水圧による物理的な外力が加わることにより、水のみの洗浄によって、容易に洗い流すことができる易洗浄性が発揮される。
【0015】
また、水溶化したHPC等の親水性を備えたセルロース誘導体のチキソトロピー性は、酸化チタンの沈降、沈殿を抑制する効果があり、ライン塗料自体の長期保存化を実現させる。
さらに、固形成分が固く沈殿し、分離した製品を使用する場合にあっても、再撹拌による復帰作業が、液自体が安定しているため簡略化できる。
またさらに、塗装機器、噴霧器、ラインカーのノズル詰まりなどを抑制し、使用した機器も洗い易く作業効率を向上させることができる。
【0016】
[HPCの詳細]
水分を含まないラインマーキング剤組成物のHPCの分子量(GPC法)は、40,000~2,500,000が好ましく、特に140,000~1,000,000好適であり、さらに好ましくは400,000~800,000である。
【0017】
実施の形態に係るラインマーキング剤組成物は、水を加えて調製され水に分散又は溶解されたラインマーキング原液として、供給される。このラインマーキング原液は、使用現場にて、水によって2~10倍にさらに希釈され、マーキング対象物に塗布され得る。
上記ラインマーキング原液の粘度は、2.0~6,000cps(20°C)が好ましく、6.0~4,000cps(20°C)が好適であり、さらに100~2,000cps(20°C)がより好ましい。
【0018】
HPCの配合率(水を除くラインマーキング剤組成物全体に対する固形分の質量%)は、0.1~6.0%が好ましく、特に1.0~4.0%が好適である。配合率が少なすぎると易洗浄性、保存性などの効果が低下し、多すぎると粘度が高く(ゲル状)なるため使用が困難になる。
【0019】
[着色剤について]
着色剤としては、公知の顔料を適宜選択して用いることができるが、例えば、酸化チタン, 炭酸カルシウム, タルク, クレイ, サチンホワイトその他の天然物粉砕品、ガラス粉等の無機顔料やそれらを表面処理した無機顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエロー、イミダゾロン、レーキレッド、キナクリドン等の有機顔料、またアクリル樹脂、アクリル- スチレン共重合体等の架橋微粒子や中空微粒子であるプラスチックピグメントなどを示すことができ、その1種または2種以上の混合によって所望の色を調製して用いることができる点は、従来の塗料やマーキング剤と同じである。このうち、白色に発色するマーキング剤組成物の顔料としては、炭酸カルシウムや酸化チタンを示すことができるが、隠蔽力の面で酸化チタンが好ましい。
【0020】
酸化チタンとしては、粉砕、分級したものを用いることができるが、これに脂肪酸等で表面処理したものも好適に使用される。また発色性が発現するものであれば、その他の天然物の他、有機物などの合成物を粉砕、分級したり、析出させたりしたものを使用しても構わない。
酸化チタンは、隠蔽力の点で比較的大粒径のものが好ましく、その平均粒子径は、0.2~0.5μmが好ましく特に0.4μm以上がより好ましい。
【0021】
前記したHPC等の親水性を備えたセルロース誘導体を混合して使用すると、固くハードな沈降が伴い易い大粒径酸化チタンにおいても、水分散液の分散状態を安定させることができる。なお、上記のような大粒径酸化チタンを使用すると、チタン粒子サイズより小さな人工芝表面の微小な傷や凹凸に、チタンの粒子が入り込まず付着しにくくなるため、水で洗い流した後、ライン塗料が葉などの基材に残らずきれいな洗浄状態になることも期待される。
【0022】
酸化チタンの配合率(水を除くラインマーキング剤組成物全体に対する固形分の質量%)は、10~60%が好ましく、特に20~40%が好適である。配合率が少なすぎると発色性が不足し、多すぎると高濃度すぎ易洗浄性が低下する恐れがある。また液の沈降・沈殿が増加し、保存安定性不良が伴う恐れがある。
【0023】
[添加剤について]
本発明の実施の形態に係るラインマーキング剤組成物には、上記成分以外に、必要に応じて公知の分散剤、湿潤剤、防腐剤、防カビ剤、消泡剤などの添加剤を含んでも構わない。
【0024】
ただし、アクリル酸ソーダの共重合体等、乾燥塗膜に固化が伴う合成樹脂は、易洗浄性がそこなう事と高アルカリ性の洗浄液を用いる場合もあるため、環境面からも使用はしないことが好ましく、使用した場合にあっても、その配合量を極力少なくすることが好ましい。
【0025】
分散剤としては、顔料を水に均一に分散し、長期間安定な水分散体を得るものであればよく、酸化チタン等の無機顔料は、通常使用されるポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリル酸ソーダの共重合体、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物の塩等が好適に使用される。また、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等の有機顔料は、通常使用されるポリカルボン酸のアルキルアミン塩、ブロック共重合体のアルキルアンモニウム塩等が好適に使用される。分散剤の添加量は、顔料に対し0.1~3質量%の範囲で使用されるが、耐水性を保持するためには極力少ない方がよく、0.2~1質量%が好ましい。
【0026】
湿潤剤としては、ラインの形成時に芝の表面に均一にマーキング剤を塗布する目的で添加されるものであれば良く、例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩、ポリカルボン酸塩、ポリリン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩等のアニオン系界面活性剤、シリコン系湿潤剤、フッ素系湿潤剤、アセチレングリコール系湿潤剤等が挙げられる。耐水性を保持できる湿潤剤として、ジアルキルスルホコハク酸塩やアセチレングリコール系湿潤剤が特に好ましく、通常マーキング剤に対し0.1~0.5質量%の範囲で使用される。
【0027】
防腐剤としては、一般的に安全性の高いものであれば特に制限なく、例えば、ソルビン酸、ロダン塩、高級アルコール、イソチアゾリン系防腐剤等が挙げられる。通常、マーキング剤に対し0.01~0.5質量%の範囲で使用される。消泡剤としては、マーキング剤の調製時の泡立ちを防止する目的で添加されるものであればよく、例えば鉱油系消泡剤、シリコン系消泡剤、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ジアルキルスルホン酸塩、アセチレングリコール系消泡剤等が挙げられる。ジアルキルスルホン酸塩やアセチレングリコール系は湿潤剤としての性能を持ち合わせているので都合がよく、通常、マーキング剤に対し0.1~0.5質量%の範囲で使用される。
【0028】
蛍光増白剤は、上記のHPC等の親水性を備えたセルロース誘導体と大粒径酸化チタンを用いた場合には特に必要とされないが、一般的に使用される蛍光増白剤の水溶液または水分散体などをラインの鮮明性を高めるために用いることを妨げるものではない。
【0029】
[調製について]
マーキング剤組成物並びにその原液の調製は、従来公知の方法で行うことができる。具体的には、HPC等の親水性を備えたセルロース誘導体を撹拌しながら水に加え溶解し、1~15質量%の溶液を調製する。
【0030】
次に、必要に応じて防腐剤などの添加剤を水に仕込み、これに酸化チタンなどの顔料と、上記のHPC等の親水性を備えたセルロース誘導体水溶液とを加えて分散させる。その際に消泡剤を必要に応じて添加しても構わない。
【実施例0031】
[実施例1]
【0032】
撹拌装置のついたステンレス容器に92質量部の水を仕込み、撹拌しながら8質量部のHPC(商品名:klucel Ashland製)を投入し、72時間かけて溶解し8%HPC水溶液を調製した。撹拌装置のついたステンレス配合釜に水49.8質量部と防腐剤(商品名:レバナックスBX150 昌栄化学製)0.1質量部を仕込み、撹拌しながら酸化チタン(商品名:PFR404 石原産業製)30質量部投入し24時間分散して酸化チタン分散液を得た。次に8%HPC水溶液20質量部と消泡剤(商品名:BYK018 BYK製)0.1質量部を加えて撹拌してラインマーキング原液を得た。
[実施例2~8]
【0033】
表1に示す配合処方に伴い、実施例2~7は、HPCの分子量、酸化チタンの平均粒子径を下記の如く変更した以外は実施例1と同様に調製し、実施例8は炭酸カルシウムを使用し実施例1と同様に調整した。
[比較例1]
【0034】
表1に示す比較例1は、HPCを用いることなく実施例1と同様に調製したものである。
【0035】
【表1】
【0036】
かくして得られた上記各実施例及び各比較例の各調合原液を、それぞれ水で3倍に希釈し、蓋付き円筒状のポリビンに50ml入れて室内にて1週間静置後、液の沈降状態を観察した。その結果を表2に示す。更に各調合液を、人工芝(美津濃株式会社製)に対し噴霧器を用いて120mm巾 900mm長さ(塗付量0.5kg/m2)塗付したものを各試験の試料とした。
【0037】
液の沈降状態、発色性、非流れ性、易洗浄性の評価は上記試験試料を目視観察し、塗装適性は機器の詰まり、洗い易さ等、使用しながら確認した。総合評価は、上記の各項目を総合的に検討して、ラインマーキング剤組成物及びラインマーキング原液としての適性を総合的に判断し、5段階で評価した。
【0038】
尚、非流れ性については、一定量(2リットル/min)の水道水を、家庭用の小口径のシャワーノズルから20秒間各試料に噴射した後、ライン塗料の残留程度(流れ具合)を観察した。
【0039】
易洗浄性については、一定量(20リットル/min)の水道水を、競技場備え付けの一般的なホースシャワーに用いられているノズルから20秒間各試料に噴射して洗浄した後、ライン塗料の洗浄程度(流れ具合)を観察した。塗装適性については、タンクからノズルまで送られてノズルから吐出されるか否か、塗装時の状態を確認した。
【0040】
各評価の基準は下記の通りとした。
[液の安定性]
◎:全体が均一で沈降がみられない
〇:ビンの底に僅かに固形物有り
△:ビンの底に固形物がやや有り
×:ビンの底に固い固形物が多い
[発色性]
◎:発色が非常に良い(線が鮮明に且つ明確に見える)
〇:発色性が良い(線が明確に見える)
△:発色性やや不良(線が見える)
×:発色性不良(線が見え難い)
[非流れ性]
◎:流れない
〇:ほとんど流れない
△:流れるが残る
×:簡単に流れてしまう
[易洗浄性]
◎:簡単に洗い流せて易洗浄性が非常に良い
〇:洗い流せて易洗浄性が良い
△:一部洗い流せず易洗浄性やや不良
×:洗い流せず易洗浄性不良
[塗装適性]
◎:塗装適性に非常に優れる
〇:塗装適性が優れる
△:塗装適性がやや悪い
×:塗装適性が悪い
[総合評価]
1:適性がない
2:適性が劣る
3:適性が有る
4:適性が良い
5:適性がとても良い
【0041】
【表2】
【0042】
次に実施例1の人工芝用ライン塗料を、水で3倍に希釈し、多目的用人工芝競技場でラインカーにて塗付量0.5kg/m2で白線を引いた。
【0043】
乾燥した塗面は、ライン材として充分な発色性を発現していた。その後、競技場備え付けの一般的なホースシャワーを用いて水洗浄した結果、目視できない程度まで水道水だけで消去できた。また洗浄排水についても危険性の低い中性を示し、人工芝は害することなく良好な状態であった。
以上により実施例1の易洗浄性人工芝用ライン塗料は、液の安定性や発色性が高く、水洗浄のみで簡単に易洗浄できると共に、環境汚染が少なく
人工芝に対して悪影響がないことが実証された。