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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047999
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】空中表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 30/56 20200101AFI20240401BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20240401BHJP
   G03B 35/00 20210101ALI20240401BHJP
   G02B 5/00 20060101ALI20240401BHJP
   G02B 5/08 20060101ALI20240401BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20240401BHJP
   G02B 1/11 20150101ALI20240401BHJP
   G02B 5/04 20060101ALI20240401BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240401BHJP
【FI】
G02B30/56
G09F9/00 313
G09F9/00 350Z
G03B35/00 Z
G02B5/00 Z
G02B5/00 B
G02B5/08 Z
F21S2/00 431
G02B1/11
G02B5/04
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153813
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100209048
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 元嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100212705
【弁理士】
【氏名又は名称】矢頭 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(72)【発明者】
【氏名】代工 康宏
【テーマコード(参考)】
2H042
2H059
2H199
2K009
3K244
5G435
【Fターム(参考)】
2H042AA02
2H042AA03
2H042AA10
2H042AA26
2H042DB14
2H042DD04
2H042DE00
2H059AC00
2H199BA32
2H199BA51
2H199BB07
2H199BB20
2H199BB27
2H199BB29
2H199BB59
2K009AA02
2K009FF02
3K244AA01
3K244BA24
3K244BA48
3K244CA03
3K244DA01
3K244EA02
3K244EA12
3K244GA01
3K244GA08
3K244GB02
3K244GB08
3K244GB13
5G435AA01
5G435BB12
5G435EE02
5G435EE13
5G435FF02
5G435FF03
5G435FF13
5G435FF14
(57)【要約】
【課題】 表示品質を向上させることが可能な空中表示装置を提供する。
【解決手段】 空中表示装置は、画像を表示する表示素子20と、表示素子20からの光を受けるように配置され、表示素子20からの光を、表示素子20と反対側に反射し、空中に空中像を結像する光学素子50と、光学素子50の周囲を囲むように構成され、光学素子50を固定する筐体60とを含む。光学素子50と対向して配置される素子の面積は、光学素子50の面積より大きい。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示する表示素子と、
前記表示素子からの光を受けるように配置され、前記表示素子からの光を、前記表示素子と反対側に反射し、空中に空中像を結像する光学素子と、
前記光学素子の周囲を囲むように構成され、前記光学素子を固定する筐体と、
を具備し、
前記光学素子と対向して配置される素子の面積は、前記光学素子の面積より大きい
空中表示装置。
【請求項2】
前記表示素子と前記光学素子との間に配置され、前記表示素子からの光のうち斜め方向の光成分を透過する配向制御素子をさらに具備し、
前記配向制御素子の面積は、前記光学素子の面積より大きい
請求項1に記載の空中表示装置。
【請求項3】
前記配向制御素子の外周は、前記筐体まで延びる
請求項2に記載の空中表示装置。
【請求項4】
前記配向制御素子の底面に設けられ、前記表示素子からの光を通過する開口部を有し、光を吸収する光吸収層をさらに具備する
請求項2に記載の空中表示装置。
【請求項5】
前記光吸収層の外周は、前記配向制御素子の外周まで延びる
請求項4に記載の空中表示装置。
【請求項6】
前記配向制御素子は、交互に配置された複数の透明部材及び複数の遮光部材を含み、
前記複数の遮光部材は、前記配向制御素子の法線方向に対して傾いている
請求項2に記載の空中表示装置。
【請求項7】
前記配向制御素子の上面に設けられた反射防止層をさらに具備する
請求項2に記載の空中表示装置。
【請求項8】
前記表示素子と前記光学素子との間に配置され、透明な支持部材をさらに具備し、
前記支持部材の面積は、前記光学素子の面積より大きい
請求項1に記載の空中表示装置。
【請求項9】
前記支持部材の外周は、前記筐体まで延びる
請求項8に記載の空中表示装置。
【請求項10】
前記支持部材の底面に設けられ、前記表示素子からの光を通過する開口部を有し、光を吸収する光吸収層をさらに具備する
請求項8に記載の空中表示装置。
【請求項11】
前記光吸収層の外周は、前記支持部材の外周まで延びる
請求項10に記載の空中表示装置。
【請求項12】
前記支持部材の上面に設けられた反射防止層をさらに具備する
請求項8に記載の空中表示装置。
【請求項13】
前記光学素子は、平面状の基材と、前記基材の下に設けられ、それぞれが第1方向に延び、前記第1方向に直交する第2方向に並んだ複数の光学要素とを含み、
前記複数の光学要素の各々は、前記基材の法線方向に対してそれぞれが傾き、互いに接する入射面及び反射面を有する
請求項1に記載の空中表示装置。
【請求項14】
前記表示素子及び前記光学素子は、互いに平行に配置される
請求項1に記載の空中表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空中表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像や動画などを空中像として表示可能な空中表示装置が研究され、新しいヒューマン・マシン・インターフェースとして期待されている。空中表示装置は、例えば、2面コーナーリフレクタがアレイ状に配列された2面コーナーリフレクタアレイを備え、表示素子の表示面から出射される光を反射し、空中に実像を結像する。2面コーナーリフレクタアレイによる表示方法は、収差が無く、面対称位置に実像(空中像)を表示することができる。
【0003】
特許文献1は、透明平板の表面から突出した透明な四角柱を2面コーナーリフレクタとして使用し、複数の四角柱を平面上にアレイ状に配置した光学素子を開示している。また、特許文献2は、第1及び第2光制御パネルの各々を、透明平板の内部に垂直に複数の平面光反射部を並べて形成し、第1及び第2光制御パネルを、互いの平面光反射部が直交するように配置した光学素子を開示している。特許文献1、2の光学素子は、表示素子から出射された光を直交する反射面で2回反射させ、空中像を生成している。
【0004】
特許文献1、2の光学素子を利用した表示装置は、光学素子の斜方向から観察することで空中像を認識できるものであり、光学素子の法線方向からの観察では良好な空中像を認識することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-191404号公報
【特許文献2】特開2011-175297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、表示品質を向上させることが可能な空中表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様によると、画像を表示する表示素子と、前記表示素子からの光を受けるように配置され、前記表示素子からの光を、前記表示素子と反対側に反射し、空中に空中像を結像する光学素子と、前記光学素子の周囲を囲むように構成され、前記光学素子を固定する筐体とを具備し、前記光学素子と対向して配置される素子の面積は、前記光学素子の面積より大きい、空中表示装置が提供される。
【0008】
本発明の第2態様によると、前記表示素子と前記光学素子との間に配置され、前記表示素子からの光のうち斜め方向の光成分を透過する配向制御素子をさらに具備し、前記配向制御素子の面積は、前記光学素子の面積より大きい、第1態様に係る空中表示装置が提供される。
【0009】
本発明の第3態様によると、前記配向制御素子の外周は、前記筐体まで延びる、第2態様に係る空中表示装置が提供される。
【0010】
本発明の第4態様によると、前記配向制御素子の底面に設けられ、前記表示素子からの光を通過する開口部を有し、光を吸収する光吸収層をさらに具備する、第2態様に係る空中表示装置が提供される。
【0011】
本発明の第5態様によると、前記光吸収層の外周は、前記配向制御素子の外周まで延びる、第4態様に係る空中表示装置が提供される。
【0012】
本発明の第6態様によると、前記配向制御素子は、交互に配置された複数の透明部材及び複数の遮光部材を含み、前記複数の遮光部材は、前記配向制御素子の法線方向に対して傾いている、第2態様に係る空中表示装置が提供される。
【0013】
本発明の第7態様によると、前記配向制御素子の上面に設けられた反射防止層をさらに具備する、第2態様に係る空中表示装置が提供される。
【0014】
本発明の第8態様によると、前記表示素子と前記光学素子との間に配置され、透明な支持部材をさらに具備し、前記支持部材の面積は、前記光学素子の面積より大きい、第1態様に係る空中表示装置が提供される。
【0015】
本発明の第9態様によると、前記支持部材の外周は、前記筐体まで延びる、第8態様に係る空中表示装置が提供される。
【0016】
本発明の第10態様によると、前記支持部材の底面に設けられ、前記表示素子からの光を通過する開口部を有し、光を吸収する光吸収層をさらに具備する、第8態様に係る空中表示装置が提供される。
【0017】
本発明の第11態様によると、前記光吸収層の外周は、前記支持部材の外周まで延びる、第10態様に係る空中表示装置が提供される。
【0018】
本発明の第12態様によると、前記支持部材の上面に設けられた反射防止層をさらに具備する、第8態様に係る空中表示装置が提供される。
【0019】
本発明の第13態様によると、前記光学素子は、平面状の基材と、前記基材の下に設けられ、それぞれが第1方向に延び、前記第1方向に直交する第2方向に並んだ複数の光学要素とを含み、前記複数の光学要素の各々は、前記基材の法線方向に対してそれぞれが傾き、互いに接する入射面及び反射面を有する、第1態様に係る空中表示装置が提供される。
【0020】
本発明の第14態様によると、前記表示素子及び前記光学素子は、互いに平行に配置される、第1態様に係る空中表示装置が提供される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、表示品質を向上させることが可能な空中表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る空中表示装置の分解図である。
図2図2は、図1に示した空中表示装置の平面図である。
図3図3は、図2のA-A´線に沿った空中表示装置の断面図である。
図4図4は、空中表示装置の光路を説明する模式的な側面図である。
図5A図5Aは、図1に示した配向制御素子の平面図である。
図5B図5Bは、図5AのB-B´線に沿った配向制御素子の断面図である。
図6図6は、配向制御素子の面積を説明する模式的な断面図である。
図7図7は、図1に示した光学素子の斜視図である。
図8図8は、空中表示装置のブロック図である。
図9図9は、光学素子における光の反射の様子を説明する斜視図である。
図10図10は、光学素子における光の反射の様子を説明するXZ面の側面図である。
図11図11は、光学素子における光の反射の様子を説明するYZ面の側面図である。
図12図12は、光学素子における入射面及び反射面の角度条件を説明する図である。
図13図13は、空中表示装置に入射する外光の様子を説明する図である。
図14図14は、変形例に係る空中表示装置1の断面図である。
図15図15は、比較例に係る空中表示装置の分解図である。
図16図16は、比較例に係る空中表示装置のX方向に沿った部分断面図である。
図17図17は、空中表示装置に入射する外光の様子を説明する図である。
図18図18は、表示素子像と空中像とを説明する図である。
図19図19は、本発明の第2実施形態に係る空中表示装置のX方向に沿った断面図である。
図20図20は、空中表示装置の内部で反射される光の様子を説明する図である。
図21図21は、本発明の第3実施形態に係る空中表示装置の分解図である。
図22図22は、図21に示した空中表示装置のX方向に沿った断面図である。
図23図23は、空中表示装置に入射する外光の様子を説明する図である。
図24図24は、変形例に係る空中表示装置1の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。ただし、図面は模式的または概念的なものであり、各図面の寸法および比率等は必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、図面の相互間で同じ部分を表す場合においても、互いの寸法の関係や比率が異なって表される場合もある。特に、以下に示す幾つかの実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための装置および方法を例示したものであって、構成部品の形状、構造、配置等によって、本発明の技術思想が特定されるものではない。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有する要素については同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0024】
[1] 第1実施形態
[1-1] 空中表示装置1の構成
図1は、本発明の第1実施形態に係る空中表示装置1の分解図である。図1において、X方向は、空中表示装置1のある1辺に沿った方向であり、Y方向は、水平面内においてX方向に直交する方向であり、Z方向は、XY面に直交する方向(法線方向ともいう)である。図2は、図1に示した空中表示装置1の平面図である。図3は、図2のA-A´線に沿った空中表示装置1の断面図である。図4は、空中表示装置1の光路を説明する模式的な側面図である。
【0025】
空中表示装置1は、画像(動画を含む)を表示する装置である。空中表示装置1は、自身の光出射面の上方の空中に、空中像を表示する。空中表示装置1の光出射面とは、空中表示装置1を構成する複数の部材のうち最上層に配置された部材の上面を意味する。空中像とは、空中に結像する実像である。
【0026】
空中表示装置1は、照明素子(バックライトともいう)10、表示素子20、光吸収層30、配向制御素子40、光学素子50、及び筐体60を備える。照明素子10、表示素子20、光吸収層30、配向制御素子40、及び光学素子50は、この順にZ方向に沿って配置され、互いに平行に配置される。照明素子10、表示素子20、及び配向制御素子40は、互いに所望の間隔を空けるようにして、図示せぬ固定部材で所望の位置に固定される。
【0027】
照明素子10は、照明光を発光し、この照明光を表示素子20に向けて出射する。照明素子10は、光源部11、導光板12、及び反射シート13を備える。照明素子10は、例えばサイドライト型の照明素子である。照明素子10は、面光源を構成する。照明素子10は、後述する角度θの斜め方向に光強度がピークになるように構成してもよい。
【0028】
光源部11は、導光板12の側面に向き合うように配置される。光源部11は、導光板12の側面に向けて光を発光する。光源部11は、例えば白色LED(Light Emitting Diode)からなる複数の発光素子を含む。導光板12は、光源部11からの照明光を導光し、照明光を自身の上面から出射する。反射シート13は、導光板12の底面から出射した照明光を、再び導光板12に向けて反射する。照明素子10は、導光板12の上面に、光学特性を向上させる部材(プリズムシート、及び拡散シートを含む)を備えていてもよい。
【0029】
表示素子20は、透過型の表示素子である。表示素子20は、例えば液晶表示素子で構成される。表示素子20の駆動モードについては特に限定されず、TN(Twisted Nematic)モード、VA(Vertical Alignment)モード、又はホモジニアスモードなどを用いることができる。表示素子20は、照明素子10から出射された照明光を受ける。表示素子20は、照明素子10からの照明光を透過して光変調を行う。そして、表示素子20は、その表示面に所望の画像を表示する。
【0030】
光吸収層30は、光を吸収するとともに、光を遮光する機能を有する。光吸収層30は、四角形の開口部31を有する。開口部31は、表示素子20の表示面とほぼ同じ面積を有し、表示素子20の表示面を露出する。光吸収層30の外周は、配向制御素子40の外周まで延びる。光吸収層30は、例えば、黒の染料又は顔料が混入された樹脂で構成される。光吸収層30は、フィルム状に形成され、配向制御素子40の底面に、透明な接着剤を用いて接着される。光吸収層30は、表示素子20の外周部分に透明な接着剤を用いて接着される。光吸収層30は、黒の塗料で構成され、この黒の塗料を配向制御素子40の底面に塗布して形成してもよい。
【0031】
配向制御素子40は、不要光を低減する機能を有する。不要光とは、空中像を生成するのに寄与しない光成分であり、法線方向に光学素子50を透過する光成分を含む。配向制御素子40は、法線方向に対して角度θの斜め方向を中心として所定の角度範囲の光成分を透過するとともに、上記角度範囲以外の光成分を遮光するように構成される。配向制御素子40の詳細な構成については後述する。
【0032】
配向制御素子40の面積は、表示素子20の面積より大きい。配向制御素子40のX方向の長さは、表示素子20のX方向の長さより長い。図3において、配向制御素子40の右側の端は、表示素子20の右側の端より右側に位置し、配向制御素子40の左側の端は、表示素子20の左側の端より左側に位置する。配向制御素子40のY方向の長さは、表示素子20のY方向の長さより長い。
【0033】
光学素子50は、底面側から入射した光を上面側に反射する。また、光学素子50は、底面側から斜めに入射した入射光を、例えば正面方向(法線方向)に反射する。光学素子50の詳細な構成については後述する。
【0034】
光学素子50の面積は、表示素子20の面積より大きく、配向制御素子40の面積より小さい。光学素子50のX方向の長さは、表示素子20のX方向の長さより長く、配向制御素子40のX方向の長さより短い。図3において、光学素子50の右側の端は、表示素子20の右側の端と配向制御素子40の右側の端との間に位置し、光学素子50の左側の端は、表示素子20の左側の端と配向制御素子40の左側の端との間に位置する。光学素子50のY方向の長さは、表示素子20のY方向の長さより長く、配向制御素子40のY方向の長さより短い。
【0035】
光学素子50は、空中に空中像2を結像する。空中像2は、光学素子50の素子面に平行であり、2次元の画像である。素子面とは、光学素子50が面内方向に広がる仮想的な平面を言う。素子面は、面内と同じ意味である。その他の素子の素子面についても同様の意味である。光学素子50の正面にいる観察者3は、空中像2を視認することができる。
【0036】
筐体60は、四角形の枠形状を有し、4個の側板を備える。筐体60の側板は、断面形状が逆L字形を有する。筐体60の上部には、四角形の開口部61が設けられるとともに、開口部61の周囲に沿って段差が設けられる。光学素子50は、筐体60の上部の段差に載置されるとともに、開口部61に嵌め込まれる。筐体60と光学素子50とは、透明な接着剤で接着される。
【0037】
筐体60の下部の開口部の面積は、配向制御素子40の面積と同じに設定される。筐体60の下部の開口部には、配向制御素子40が嵌め込まれる。筐体60と配向制御素子40とは、透明な接着剤で接着される。
【0038】
筐体60は、光の反射を低減可能な材料で構成することが望ましい。筐体60は、例えば、黒色の樹脂で構成される。筐体60は、例えば、その内側の面が粗面処理される。粗面処理された面は、光の反射を低減することが可能である。
【0039】
なお、筐体60の底部の構成については任意の構成を用いることが可能である。筐体60は、照明素子10、表示素子20、光吸収層30、配向制御素子40、及び光学素子50を収容可能な箱形状で構成してもよく、すなわち、照明素子10の下部に配置された底板を有する箱で構成してもよい。
【0040】
[1-1-1] 配向制御素子40の構成
図5Aは、図1に示した配向制御素子40の平面図である。図5Bは、図5AのB-B´線に沿った配向制御素子40の断面図である。
【0041】
基材41は、XY面において平面状に構成され、直方体を有する。基材41は、光を透過する。
【0042】
基材41上には、それぞれがY方向に延び、X方向に並んだ複数の透明部材43が設けられる。また、基材41上には、それぞれがY方向に延び、X方向に並んだ複数の遮光部材44が設けられる。複数の透明部材43と複数の遮光部材44とは、隣接するもの同士が接するようにして交互に配置される。
【0043】
複数の透明部材43及び複数の遮光部材44上には、基材42が設けられる。基材42は、XY面において平面状に構成され、直方体を有する。基材42は、光を透過する。
【0044】
透明部材43は、XZ面において、基材41の法線方向に対して角度θの斜め方向に延びる。透明部材43は、XZ面において、側面が角度θだけ傾いた平行四辺形である。透明部材43は、光を透過する。
【0045】
遮光部材44は、XZ面において、基材41の法線方向に対して角度θの斜め方向に延びる。遮光部材44は、XZ面において、側面が角度θだけ傾いた平行四辺形である。遮光部材44は、光を遮光する。遮光部材44の厚みは、透明部材43の厚みより薄く設定される。
【0046】
隣接する2個の遮光部材44は、Z方向において互いの端部が若干重なるように配置される。
【0047】
基材41、42、及び透明部材43としては、ガラス、又は透明な樹脂(アクリル樹脂を含む)が用いられる。遮光部材44としては、例えば、黒の染料又は顔料が混入された樹脂が用いられる。
【0048】
なお、基材41、42の一方又は両方を省略して、配向制御素子40を構成してもよい。複数の透明部材43と複数の遮光部材44とが交互に配置されていれば、配向制御素子40の機能を実現できる。
【0049】
このように構成された配向制御素子40は、法線方向に対して角度θの斜め方向の光強度がピークになるように、表示光を透過することができる。例えば、配向制御素子40は、法線方向に対して30°±30°の範囲以外の光成分を遮光するように構成される。望ましくは、配向制御素子40は、法線方向に対して30°±20°の範囲以外の光成分を遮光するように構成される。
【0050】
図6は、配向制御素子40の面積を説明する模式的な断面図である。本実施形態では、光学素子50と向き合う素子である配向制御素子40は、少なくともX方向における長さが、光学素子50のX方向の長さより長く設定される。
【0051】
図6における点“o´”は、配向制御素子40から出射する光の任意の位置である。図6における点“o´´”は、光学素子50から出射された光が結像する位置であり、空中像2が形成される位置である。点“o´”から延びる矢印は、主光線を意味する。主光線とは、放射状に拡がる光成分の中心を通る光線である。
【0052】
配向制御素子40のX方向における長さIは、以下の式(1)で表される。
I≦x+2*x´=x+2*y´*tanθ ・・・(1)
x´=y´*tanθ
x:筐体60の開口部61のX方向における長さ
y:光学素子50から空中像2までの距離
x´:光学素子50から筐体60のX方向における端部までの距離
y´:光学素子50から配向制御素子40までの距離
θ:主光線の出射角(配向制御素子40の垂線と主光線とのなす角度)
【0053】
開口部61のX方向における長さxは、空中表示装置1に求められる仕様に基づいて設計される設計値である。光学素子50から空中像2までの距離yは、空中表示装置1に求められる仕様に基づいて設計される設計値である。光学素子50から配向制御素子40までの距離y´は、距離yに基づいて最適に設計される設計値である。
【0054】
配向制御素子40のX方向における長さIを長くするほど、筐体60のサイズが大きくなる。よって、筐体60のサイズを小さくする観点では、“I=x+2*x´”が最も望ましい。
【0055】
また、配向制御素子40は、Y方向における長さが、光学素子50のY方向の長さより長く設定される。
【0056】
[1-1-2] 光学素子50の構成
図7は、図1に示した光学素子50の斜視図である。図7には、光学素子50の一部を拡大した拡大図も図示している。図7の拡大図は、XZ面における側面図である。
【0057】
光学素子50は、基材51、及び複数の光学要素52を備える。基材51は、XY面において平面状に構成され、直方体を有する。
【0058】
基材51の底面には、複数の光学要素52が設けられる。複数の光学要素52の各々は、三角柱で構成される。光学要素52は、三角柱の3個の側面がXY面と平行になるように配置され、1つの側面が基材51に接する。複数の光学要素52は、それぞれがY方向に延び、X方向に並んで配置される。換言すると、複数の光学要素52は、XZ面において鋸歯状を有する。
【0059】
複数の光学要素52の各々は、入射面53及び反射面54を有する。Y方向から見て、左側の側面が入射面53であり、右側の側面が反射面54である。入射面53は、表示素子20からの光が入射する面である。反射面54は、入射面53に外部から入射した光を、光学要素52の内部で反射する面である。入射面53と反射面54とは、角度θを有する。
【0060】
基材51及び光学要素52は、透明材料で構成される。光学要素52は、例えば、基材51と同じ透明材料によって基材51と一体的に形成される。基材51と光学要素52とを個別に形成し、透明な接着剤を用いて基材51に光学要素52を接着してもよい。基材51及び光学要素52を構成する透明材料としては、ガラス、又は透明な樹脂(アクリル樹脂を含む)が用いられる。
【0061】
このように構成された光学素子50は、入射光を内部で反射して、空中に実像を結像する。また、光学素子50は、素子面の正面の位置に、空中像を結像する。
【0062】
[1-1-3] 空中表示装置1のブロック構成
図8は、空中表示装置1のブロック図である。空中表示装置1は、制御部70、記憶部71、入出力インターフェース(入出力IF)72、表示部73、及び入力部74を備える。制御部70、記憶部71、及び入出力インターフェース72は、バス75を介して互いに接続される。
【0063】
入出力インターフェース72は、表示部73、及び入力部74に接続される。入出力インターフェース72は、表示部73、及び入力部74のそれぞれに対して、所定の規格に応じたインターフェース処理を行う。
【0064】
表示部73は、照明素子10、及び表示素子20を備える。表示部73は、画像を表示する。
【0065】
制御部70は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等の1つ以上のプロセッサにより構成される。制御部70は、記憶部71に格納されたプログラムを実行することで各種機能を実現する。制御部70は、表示処理部70A、及び情報処理部70Bを備える。
【0066】
表示処理部70Aは、表示部73(具体的には、照明素子10、及び表示素子20)の動作を制御する。表示処理部70Aは、照明素子10のオン及びオフを制御する。表示処理部70Aは、表示素子20に画像信号を送信し、表示素子20に画像を表示させる。
【0067】
情報処理部70Bは、空中表示装置1が表示する画像を生成する。情報処理部70Bは、記憶部71に格納された画像データを用いることが可能である。情報処理部70Bは、図示せぬ通信機能を用いて外部から画像データを取得してもよい。
【0068】
記憶部71は、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、及びSSD(Solid State Drive)等の不揮発性記憶装置と、RAM(Random Access Memory)、及びレジスタ等の揮発性記憶装置とを含む。記憶部71は、制御部70が実行するプログラムを格納する。記憶部71は、制御部70の制御に必要な各種データを格納する。さらに、記憶部71は、空中表示装置1が表示する画像のデータを格納する。
【0069】
入力部74は、例えばタッチパネルやボタンなどを含み、ユーザが入力した情報を受け付ける。情報処理部70Bは、入力部74が受け付けた情報に基づいて、表示部73に表示する画像を選択することが可能である。
【0070】
[1-2] 空中表示装置1の動作
次に、上記のように構成された空中表示装置1の動作について説明する。
【0071】
[1-2-1] 表示動作
図4の矢印は、光路を示している。図4に示すように、表示素子20の任意の点“o”から出射された光は、配向制御素子40に入射する。表示素子20から出射された光のうち角度θの光成分(角度θを中心とした所定の角度範囲の光成分を含む)は、配向制御素子40を透過する。配向制御素子40を透過した光は、光学素子50に入射する。光学素子50は、入射光を、配向制御素子40と反対側の空中に結像し、空中に空中像2を表示する。
【0072】
図9は、光学素子50における光の反射の様子を説明する斜視図である。図10は、光学素子50における光の反射の様子を説明するXZ面の側面図である。図10は、観察者3の両目(すなわち、両目を結ぶ線)がX方向に平行な状態で光学素子50を見た図である。図11は、光学素子50における光の反射の様子を説明するYZ面の側面図である。図11は、観察者3の両目がY方向に平行な状態で光学素子50を見た図である。
【0073】
配向制御素子40の任意の点“o´”から出射された光は、光学素子50の入射面53に入射し、反射面54に到達する。反射面54の法線方向に対して臨界角よりも大きい角度で反射面54に到達した光は、反射面54で全反射され、光学素子50の光学要素52が形成されている側の反対側の平面から出射される。臨界角とは、その入射角を超えると全反射する最少の入射角である。臨界角は、入射面の垂線に対する角度である。
【0074】
図10のXZ面では、点“o´”から出射された光は、光学要素52の反射面54で全反射され、その光は空中で結像されて空中像を生成する。
【0075】
図11のYZ面では、点“o´”から出射された光は、光学要素52の反射面54で反射されず、その光は空中で結像することがないため空中像の生成に寄与しない。
【0076】
すなわち、観察者3が空中像を認識できる条件は、観察者3の両眼がX方向に平行、又はそれに近い状態(例えばX方向に対して±10度)である。また、観察者3の両眼がX方向に平行、又はそれに近い状態でY方向に沿って視点を移動した場合、空中像を常に認識することができる。
【0077】
図12は、光学素子50における入射面53及び反射面54の角度条件を説明する図である。
【0078】
Z方向(素子面に垂直な方向)に対する入射面53の角度をθ、Z方向に対する反射面54の角度をθ、入射面53と反射面54とのなす角度をθとする。角度をθは、以下の式(2)で表される。
θ=θ+θ ・・・(2)
【0079】
配向制御素子40から角度θで出射された光は、入射面53に入射する。光学素子50の材料の屈折率をn、空気の屈折率を1とする。入射面53における入射角をθ、屈折角をθとする。反射面54における入射角をθ、反射角をθ(=θ)とする。光学素子50の上面における入射角をθ、屈折角をθとする。屈折角θが出射角である。出射角θは、以下の式(3)で表される。
θ=sin-1(n*sin(sin-1((1/n)*sin(90°-(θ+θ)))+θ2+2θ-90°)) ・・・(3)
【0080】
反射面54における臨界角は、以下の式(4)で表される。
臨界角<θ(=θ
臨界角=sin-1(1/n) ・・・(4)
【0081】
すなわち、反射面54における入射角θは、反射面54における臨界角より大きく設定される。換言すると、反射面54の角度θは、反射面54に入射する光の入射角が臨界角より大きくなるように設定される。
【0082】
また、入射面53に入射した光は、入射面53で全反射されないように設定される。すなわち、入射面53の角度θは、入射面53に入射する光の入射角が臨界角より小さくなるように設定される。
【0083】
光学素子50の素子面と空中像2の面との角度、及び光学素子50の素子面と空中像2の面との距離は、光学素子50に入射する光の角度θ、光学素子50の屈折率、光学素子50の入射面53の角度θ、光学素子50の反射面54の角度θを最適に設定することで調整が可能である。
【0084】
[1-2-2] 外光の影響について
次に、空中表示装置1に入射する外光の影響について説明する。空中表示装置1には、外光が入射する。外光は、空中表示装置1の外部から空中表示装置1に入射する光である。外光は、太陽光、及び屋内の照明器具の光を含む。外光は、偏光していない自然光である。
【0085】
図13は、空中表示装置1に入射する外光の様子を説明する図である。
【0086】
平面視において空中表示装置1のうち表示素子20が占める領域(配向制御素子40の図13の点“A”の領域を含む)に入射した外光は、光学素子50を透過し、配向制御素子40に入射する。配向制御素子40に入射した外光は、配向制御素子40に含まれる遮光部材44によって吸収される。よって、空中表示装置1のうち表示素子20が占める領域に入射した外光が空中表示装置1の内部で反射されて、空中表示装置1の上面から出射されるのを抑制できる。
【0087】
平面視において空中表示装置1のうち表示素子20が占める領域以外の領域(配向制御素子40の図13の点“B”の領域を含む)に入射した外光は、光学素子50を透過し、配向制御素子40に入射する。配向制御素子40に入射した外光は、配向制御素子40に含まれる遮光部材44によって吸収される。よって、空中表示装置1のうち表示素子20が占める領域以外の領域に入射した外光が空中表示装置1の内部で反射されて、空中表示装置1の上面から出射されるのを抑制できる。
【0088】
結果として、空中表示装置1に入射した外光に起因して、空中表示装置1が表示する空中像2の品質が劣化するのを抑制できる。
【0089】
さらに、空中表示装置1に下側から入射した光は、光吸収層30で吸収される。よって、空中表示装置1に下側から入射した光に起因して、空中表示装置1が表示する空中像2の品質が劣化するのを抑制できる。
【0090】
[1-3] 変形例
図14は、変形例に係る空中表示装置1の断面図である。表示素子20と配向制御素子40とは、透明な接着剤21で接着されていてもよい。
【0091】
[1-4] 比較例
次に、比較例に係る空中表示装置1Aについて説明する。
図15は、比較例に係る空中表示装置1Aの分解図である。図16は、比較例に係る空中表示装置1AのX方向に沿った部分断面図である。
【0092】
空中表示装置1Aは、照明素子10、表示素子20、配向制御素子40、光学素子50、及び筐体60を備える。照明素子10、表示素子20、配向制御素子40、及び光学素子50は、この順にZ方向に沿って配置され、互いに平行に配置される。
【0093】
比較例に係る空中表示装置1Aは、第1実施形態で示した光吸収層30を備えていない。配向制御素子40の面積は、表示素子20の面積とほぼ同じである。光学素子50の面積は、配向制御素子40の面積より大きい。光学素子50のX方向の長さは、配向制御素子40のX方向の長さより長い。
【0094】
筐体60は、四角形状を有し、4個の側板と、底板とを有する。筐体60は、例えば、黒色の樹脂で構成される。筐体60の底板には、四角形の開口部62が設けられる。開口部62は、表示素子20から出射された光を通過する。開口部62の面積は、配向制御素子40の面積とほぼ同じである。
【0095】
図17は、空中表示装置1Aに入射する外光の様子を説明する図である。
【0096】
平面視において空中表示装置1Aのうち表示素子20が占める領域(配向制御素子40の図17の点“A”の領域を含む)に入射した外光は、光学素子50を透過し、配向制御素子40に入射する。配向制御素子40に入射した外光は、配向制御素子40に含まれる遮光部材44によって吸収される。よって、空中表示装置1Aのうち表示素子20が占める領域に入射した外光が空中表示装置1Aの内部で反射されて、空中表示装置1Aの上面から出射されるのを抑制できる。
【0097】
空中表示装置1Aに入射した外光のうち筐体60の底板に到達した光成分は、筐体60の底板で拡散反射される。筐体60で拡散反射された光成分は、光学素子50で観察者側に反射され、観察者に視認される。
【0098】
図18は、表示素子像と空中像とを説明する図である。表示素子像とは、表示素子20の表示面に表示される画像である。空中像は、光学素子50によって結像される実像である。
【0099】
空中像には、表示素子像以外に、外光に起因して形成される枠が二重に視認される。図18の右側にずれた枠は、図17の点“B”で右側に拡散反射された外光に基づいて視認される。図18の左側にずれた枠は、図17の点“B”で左側に拡散反射された外光に基づいて視認される。このように、外光が空中表示装置1Aの内部で拡散反射されると、空中表示装置1Aによって生成される空中像の品質が劣化してしまう。
【0100】
これに対し、第1実施形態では、光学素子50に対向して配置される構成要素面(配向制御素子40の上面)を拡張して構成している。これにより、空中表示装置の内部で外光が反射するのを抑制できる。
【0101】
[1-5] 第1実施形態の効果
第1実施形態では、空中表示装置1は、画像を表示する表示素子20と、表示素子20からの光を受けるように配置され、表示素子20からの光のうち斜め方向の光成分を透過する配向制御素子40と、配向制御素子40からの光を受けるように配置され、配向制御素子40からの光を、配向制御素子40と反対側に反射し、空中に空中像を結像する光学素子50と、光学素子50の周囲を囲むように構成され、光学素子50を固定する筐体60とを備える。そして、光学素子50と対向して配置される素子(本実施形態では配向制御素子40)の面積は、光学素子50の面積より大きく設定される。すなわち、光学素子50に対向する素子として、一様な面を有する素子が配置される。
【0102】
空中表示装置1には、使用環境に応じて外光が入射する。外光は、空中像2を形成するのに不要な光である。第1実施形態によれば、空中表示装置1に入射した外光が空中表示装置1の内部で反射して空中表示装置1から出射されるのを抑制できる。これにより、空中表示装置1が生成する空中像2の品質が劣化するのを抑制できる。結果として、表示品質を向上させることが可能な空中表示装置1を実現できる。
【0103】
また、配向制御素子40の底面には光吸収層30が設けられ、光吸収層30は、表示素子20からの光を通過する開口部31を有する。これにより、空中像2の表示に不要な光成分を光吸収層30で吸収することができる。よって、空中像2の品質が劣化するのを抑制できる。
【0104】
また、空中表示装置1は、表示素子20から出射された光を光学素子50で反射させることで、空中に空中像を表示することができる。また、空中表示装置1は、その正面方向において、空中像を表示することができる。
【0105】
また、観察者3の両眼がX方向(すなわち、複数の光学要素52が並ぶ方向)に平行、又はそれに近い状態で光学素子50を見た場合に、観察者3は、空中像を視認することができる。また、観察者3の両眼がX方向に平行、又はそれに近い状態でY方向に沿って視点を移動した場合、空中像を常に視認することができる。また、観察者3の両眼がX方向に平行、又はそれに近い状態において、より広い視野角を実現できる。
【0106】
また、空中表示装置1を構成する複数の素子を平行に配置することができる。これにより、Z方向に小型化が可能な空中表示装置1を実現できる。
【0107】
なお、第1実施形態では、光学素子50に対向して配向制御素子40が配置される。そして、配向制御素子40の面積を光学素子50の面積より大きくしている。空中表示装置1の他の構成として、光学素子50と対向する素子が配向制御素子40以外の素子である場合、光学素子と対向して配置される素子の面積は、光学素子の面積より大きく設定される。これにより、本実施形態の効果を得ることができる。
【0108】
[2] 第2実施形態
第2実施形態は、光学素子50と対向する素子の上面に反射防止層80を設けるようにしている。
【0109】
図19は、本発明の第2実施形態に係る空中表示装置1のX方向に沿った断面図である。図19は、図2のA-A´線の位置の断面図に対応する。第2実施形態に係る空中表示装置1は、第1実施形態の構成に加えて、反射防止層80を備える。
【0110】
反射防止層80は、配向制御素子40上に設けられる。反射防止層80の面積は、配向制御素子40の面積と同じである。反射防止層80は、自身に入射した光の反射を抑制する機能を有する。反射防止層80は、透明な材料で構成され、例えば、屈折率の異なる複数の層が積層されて構成される。反射防止層80は、反射抑制層ともいう。
【0111】
図20は、空中表示装置1の内部で反射される光の様子を説明する図である。図20の構成例は、反射防止層80を備えておらず、配向制御素子40の上面が光学素子50に対向している。
【0112】
空中表示装置1に入射した外光は、光学素子50を透過する。光学素子50を透過した光の一部は、配向制御素子40の上面で反射される。光学素子50と配向制御素子40との間で反射を繰り返した光の一部(図20の戻り光)は、光学素子50を透過し、観察者に向けて出射される。よって、外光の内部反射により、空中像2の品質が劣化する可能性がある。
【0113】
これに対して、本実施形態では、光学素子50と対向する面に反射防止層80を設けている。よって、光学素子50を透過した外光が内部反射するのを抑制できる。これにより、空中像2の品質を向上させることができる。
【0114】
[3] 第3実施形態
第3実施形態は、光学素子50の全面に亘って対向するように、透明な支持部材32を配置する。さらに、支持部材32の底面に光吸収層30を配置するようにしている。そして、支持部材32及び光吸収層30を利用して、空中表示装置1の内部で外光が拡散反射して観察者側に出射されるのを抑制するようにしている。
【0115】
[3-1] 空中表示装置1の構成
図21は、本発明の第3実施形態に係る空中表示装置1の分解図である。図22は、図21に示した空中表示装置1のX方向に沿った断面図である。図22は、図2のA-A´線の位置の断面図に対応する。
【0116】
空中表示装置1は、照明素子10、表示素子20、配向制御素子40、光吸収層30、支持部材32、光学素子50、及び筐体60を備える。照明素子10、表示素子20、配向制御素子40、光吸収層30、支持部材32、及び光学素子50は、この順にZ方向に沿って配置され、互いに平行に配置される。照明素子10、表示素子20、及び配向制御素子40は、互いに所望の間隔を空けるようにして、図示せぬ固定部材で所望の位置に固定される。
【0117】
配向制御素子40の面積は、表示素子20の面積とほぼ同じである。配向制御素子40のX方向の長さは、表示素子20のX方向の長さとほぼ同じである。配向制御素子40のY方向の長さは、表示素子20のY方向の長さとほぼ同じである。
【0118】
光吸収層30は、四角形の開口部31を有する。開口部31は、配向制御素子40と同じ面積を有し、配向制御素子40を露出する。光吸収層30は、支持部材32の底面に設けられ、支持部材32の底面に貼り付けられる。光吸収層30の外周は、支持部材32の外周まで延びる。
【0119】
支持部材32は、配向制御素子40の上方に設けられ、例えば配向制御素子40に透明な接着剤を用いて接着される。支持部材32は、透明な材料で構成され、光を透過する。支持部材32としては、ガラス、又は透明な樹脂(アクリル樹脂を含む)が用いられる。
【0120】
支持部材32の面積は、配向制御素子40の面積より大きい。支持部材32のX方向の長さは、配向制御素子40のX方向の長さより長い。図22において、支持部材32の右側の端は、配向制御素子40の右側の端より右側に位置し、支持部材32の左側の端は、配向制御素子40の左側の端より左側に位置する。支持部材32のY方向の長さは、配向制御素子40のY方向の長さより長い。
【0121】
光学素子50は、支持部材32に対向して配置される。光学素子50の面積は、配向制御素子40の面積より大きく、支持部材32の面積より小さい。光学素子50のX方向の長さは、配向制御素子40のX方向の長さより長く、支持部材32のX方向の長さより短い。図22において、光学素子50の右側の端は、配向制御素子40の右側の端と支持部材32の右側の端との間に位置し、光学素子50の左側の端は、配向制御素子40の左側の端と支持部材32の左側の端との間に位置する。光学素子50のY方向の長さは、配向制御素子40のY方向の長さより長く、支持部材32のY方向の長さより短い。
【0122】
筐体60の下部の開口部の面積は、支持部材32の面積と同じに設定される。筐体60の下部の開口部には、支持部材32が嵌め込まれる。筐体60と支持部材32とは、透明な接着剤で接着される。
【0123】
[3-2] 外光の影響について
次に、空中表示装置1に入射する外光の影響について説明する。図23は、空中表示装置1に入射する外光の様子を説明する図である。
【0124】
平面視において空中表示装置1のうち表示素子20が占める領域(配向制御素子40の図23の点“A”の領域を含む)に入射した外光は、光学素子50を透過し、配向制御素子40に入射する。配向制御素子40に入射した外光は、配向制御素子40に含まれる遮光部材44によって吸収される。よって、空中表示装置1のうち表示素子20が占める領域に入射した外光が空中表示装置1の内部で反射されて、空中表示装置1の上面から出射されるのを抑制できる。
【0125】
平面視において空中表示装置1のうち表示素子20が占める領域以外の領域(支持部材32の図23の点“B”の領域を含む)に入射した外光は、光学素子50を透過し、支持部材32に入射する。支持部材32に入射した光は、光吸収層30で吸収される。よって、空中表示装置1のうち表示素子20が占める領域以外の領域に入射した外光が空中表示装置1の内部で反射されて、空中表示装置1の上面から出射されるのを抑制できる。
【0126】
結果として、空中表示装置1に入射した外光に起因して、空中表示装置1が表示する空中像2の品質が劣化するのを抑制できる。
【0127】
さらに、空中表示装置1に下側から入射した光は、光吸収層30で吸収される。よって、空中表示装置1に下側から入射した光に起因して、空中表示装置1が表示する空中像2の品質が劣化するのを抑制できる。
【0128】
[3-3] 変形例
図24は、変形例に係る空中表示装置1の断面図である。表示素子20と配向制御素子40とは、透明な接着剤21で接着されていてもよい。配向制御素子40と支持部材32とは、透明な接着剤22で接着されていてもよい。
【0129】
[3-4] 第3実施形態の効果
第3実施形態によれば、空中表示装置1が表示する空中像2の品質が劣化するのを抑制できる。その他の効果は、第1実施形態と同じである。
【0130】
なお、第3実施形態に第2実施形態を適用することも可能である。すなわち、支持部材32の上面に反射防止層80をさらに設けてもよい。
【0131】
また、第3実施形態において、配向制御素子40を省略して空中表示装置1を構成してもよい。
【0132】
[4] その他の実施例
上記実施形態では、表示素子20と光学素子50とを平行に配置している。しかし、これに限定されず、光学素子50に対して表示素子20を斜めに配置してもよい。表示素子20と光学素子50との角度は、0度より大きく45度より小さい範囲に設定される。
【0133】
上記実施形態では、光学要素52の左側の側面が入射面53、右側の側面が反射面54として定義している。しかし、これに限定されず、入射面53と反射面54とを逆に構成してもよい。この場合、実施形態で説明した空中表示装置1の作用も左右が逆になる。
【0134】
上記実施形態では、表示素子20として液晶表示素子を例に挙げて説明しているが、これに限定されるものではない。表示素子20は、自発光型である有機EL(electroluminescence)表示素子、又はマイクロLED(Light Emitting Diode)表示素子などを用いることも可能である。マイクロLED表示素子は、画素を構成するR(赤)、G(緑)、B(青)をそれぞれLEDで発光させる表示素子である。自発光型の表示素子20を用いる場合、照明素子10は不要である。
【0135】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0136】
1…空中表示装置、2…空中像、3…観察者、10…照明素子、11…光源部、12…導光板、13…反射シート、20…表示素子、21,22…接着剤、30…光吸収層、31…開口部、32…支持部材、40…配向制御素子、41,42…基材、43…透明部材、44…遮光部材、50…光学素子、51…基材、52…光学要素、53…入射面、54…反射面、60…筐体、61,62…開口部、70…制御部、70A…表示処理部、70B…情報処理部、71…記憶部、72…入出力インターフェース、73…表示部、74…入力部、75…バス、80…反射防止層。
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