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  • 特開-ゴム発泡体及び止水材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000480
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】ゴム発泡体及び止水材
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20231225BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20231225BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20231225BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20231225BHJP
   C08L 101/14 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
C08J9/04 101
C08J9/04 CEQ
C08J9/04 CES
C09K3/10 C
C08K3/26
C08L21/00
C08L101/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154661
(22)【出願日】2022-09-28
(31)【優先権主張番号】P 2022098995
(32)【優先日】2022-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笠石 航
(72)【発明者】
【氏名】小川 達司
【テーマコード(参考)】
4F074
4H017
4J002
【Fターム(参考)】
4F074AA08
4F074AA25
4F074AA76
4F074AA98
4F074AC21
4F074AC26
4F074AD09
4F074AD11
4F074AD13
4F074AD14
4F074AD19
4F074AG17
4F074BA03
4F074BA13
4F074BA16
4F074BA28
4F074BA95
4F074BB05
4F074BB29
4F074BC02
4F074CA22
4F074CC04X
4F074CC04Y
4F074CC22X
4F074DA02
4F074DA08
4F074DA09
4F074DA24
4F074DA39
4H017AA03
4H017AB07
4H017AD06
4H017AE05
4J002BB15W
4J002BG01X
4J002CH02Y
4J002DE236
4J002FD016
4J002FD140
4J002FD150
4J002FD20X
4J002FD31Y
4J002FD320
4J002GL00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】所望の性能を有する水膨張性のゴム発泡体を提供する。
【解決手段】ゴム発泡体1は、ゴム成分と、イオン性吸水樹脂と、ノニオン性界面活性剤と、発泡剤と、を含有する組成物から得られる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分と、
イオン性吸水樹脂と、
ノニオン性界面活性剤と、
発泡剤と、
を含有する組成物から得られる、ゴム発泡体。
【請求項2】
密度0.55g/cm未満である、請求項1に記載のゴム発泡体。
【請求項3】
前記発泡剤は炭酸水素ナトリウムを含む、請求項1に記載のゴム発泡体。
【請求項4】
前記組成物は、前記ゴム成分を100質量部とした場合に炭酸カルシウムを20質量部以上含有する、請求項1に記載のゴム発泡体。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のゴム発泡体を備える、止水材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ゴム発泡体及び止水材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、クロロプレンゴム、EPDM、スルホエチルアクリレート-アクリルアミド-アクリル酸共重合体ナトリウム塩の架橋物、アゾジカルボンアミド、p,p’-オキシビス(ベンゼンスルフォニルヒドラジド)等を混練し、発泡・加硫させて得られた水膨張性のゴム発泡体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-247952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、ゴム発泡体への要求は多岐にわたる。例えば、水膨張性のゴム発泡体には、水の浸透スピードの向上、軽量化等が求められている。従来の水膨張性のゴムは、種々の要求への対応が十分ではなかった。
【0005】
本開示は、所望の性能を有する水膨張性のゴム発泡体を提供することを目的とする。本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ゴム成分と、
イオン性吸水樹脂と、
ノニオン性界面活性剤と、
発泡剤と、
を含有する組成物から得られる、ゴム発泡体。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、所望の性能を有する水膨張性のゴム発泡体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ゴム発泡体の使用態様を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここで、本開示の望ましい例を示す。
・密度0.55g/cm未満である、ゴム発泡体。
・前記発泡剤は炭酸水素ナトリウムを含む、ゴム発泡体。
・前記組成物は、前記ゴム成分を100質量部とした場合に炭酸カルシウムを20質量部以上含有する、ゴム発泡体。
・上記のゴム発泡体を備える、止水材。
【0010】
以下、本開示を詳しく説明する。なお、本明細書において、数値範囲について「-」を用いた記載では、特に断りがない限り、下限値及び上限値を含むものとする。例えば、「10-20」という記載では、下限値である「10」、上限値である「20」のいずれも含むものとする。すなわち、「10-20」は、「10以上20以下」と同じ意味である。
【0011】
1.ゴム発泡体1
本実施形態のゴム発泡体1は、ゴム成分と、イオン性吸水樹脂と、ノニオン性界面活性剤と、発泡剤と、を含有する組成物から得られる。
【0012】
(1)組成物
組成物は、ゴム成分、イオン性吸水樹脂、ノニオン性界面活性剤、発泡剤を含有する。組成物は、炭酸カルシウム等の充填剤を含有することが好ましい。ゴム発泡体1が架橋(加硫)ゴムである場合には、組成物は、架橋可能なゴム成分とともに、さらに架橋剤(加硫剤)、架橋促進剤(加硫促進剤)、架橋促進助剤(加硫促進助剤)、架橋活性剤(加硫活性剤)等を含んでいてもよい。組成物の各成分について説明する。
【0013】
(1.1)ゴム成分
ゴム成分は特に限定されない。ゴム成分は、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、フッ素ゴム、けい素ゴム、ウレタンゴム、多硫化ゴム、アクリルゴム、ブチルゴム、エピクロルヒドリンゴム、及び天然ゴム等よりなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。これらの中でも、ゴム成分は、EPDMであることがより好ましい。
【0014】
EPDMは、エチレン、プロピレン及びジエン類の共重合によって得られるゴムである。EPDMは、エチレン-プロピレン共重合体に、更にジエン類を共重合させて不飽和結合を導入することにより、加硫剤による加硫を可能としている。ジエン類は、特に限定されないが、非共役ジエンが好ましく、例えば、5-エチリデン-2-ノルボルネン、1,4-ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン等が用いられる。本開示の特性を得る観点から、ジエン類として5-エチリデン-2-ノルボルネンが好ましい。
EPDMにおけるASTM D 1646(JIS K6300-1)に準拠して測定したムーニー粘度ML1+4(100℃)は、特に限定されない。ムーニー粘度ML1+4(100℃)は、低密度化、スポンジの形状保持等の観点から、30以上70以下が好ましく、40以上60以下がより好ましい。
EPDMにおけるジエン類の含有量(ジエン含有量)は、特に限定されない。ジエン類の含有量は、架橋(加硫)反応及び、機械的物性の観点から、2質量%以上15質量%以下が好ましく、4質量%以上10質量%以下がより好ましい。
EPDMにおけるエチレン含有量は、特に限定されない。エチレン含有量は、ゴムの強度の観点から、40質量%以上80質量%以下が好ましく、45質量%以上70質量%以下がより好ましい。
EPDMは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0015】
(1.2)イオン性吸水樹脂
イオン性吸水樹脂は、3次元網目構造を有し、水分を樹脂中に取り込んで膨潤する性質を有する高分子(ポリマー)である。イオン性吸水樹脂は、吸水性の観点から、(メタ)アクリル酸系モノマー由来の構造単位を含有する樹脂であることが好ましい。(メタ)アクリル酸系モノマーとしては、例えばアクリル酸、アクリル酸のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩、メタクリル酸、メタクリル酸のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩が挙げられる。これらの中から、1種または2種以上のモノマーを選択して用いてもよい。(メタ)アクリル酸系モノマー由来の構造単位を含有する樹脂としては、ポリアクリル酸塩系樹脂、スルホアルキルアクリレート・アクリル酸系共重合体架橋物等を挙げることができる。イオン性吸水樹脂の具体例としては、耐塩性を有する「アクアリックCS」(株式会社日本触媒製)、「アクアリックCA」(株式会社日本触媒製)、「サンフレッシュ」(三洋化成工業株式会社製)が示される。
イオン性吸水樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0016】
イオン性吸水樹脂の吸水倍率は特に限定されない。イオン性吸水樹脂の脱イオン水に対する吸水倍率は、10倍以上が好ましく、50倍以上がより好ましく、100倍以上が更に好ましい。イオン性吸水樹脂の脱イオン水に対する吸水倍率は、例えば、1000倍以下、600倍以下、200倍以下であってもよい。イオン性吸水樹脂の人工海水(3.5%塩化ナトリウム水溶液)に対する吸水倍率は、10倍以上が好ましく、15倍以上がより好ましく、20倍以上が更に好ましい。イオン性吸水樹脂の人工海水に対する吸水倍率は、例えば、100倍以下、60倍以下、30倍以下であってもよい。なお、イオン性吸水樹脂の吸水倍率は、例えば、JIS K7223に準じて測定できる。
イオン性吸水樹脂の平均粒子径は特に限定されない。イオン性吸水樹脂の平均粒子径は、好ましくは5μm以上500μm以下であり、より好ましくは10μm以上100μm以下である。
【0017】
イオン性吸水樹脂の含有量は、ゴム発泡体1の水膨張倍率を向上する観点から、ゴム成分の全体を100質量部とした場合に、好ましくは5質量部以上であり、より好ましくは8質量部以上である。上記のイオン性吸水樹脂の含有量は、ゴム発泡体1の低密度化の観点から、好ましくは200質量部以下であり、より好ましくは150質量部以下であり、さらに好ましくは100質量部以下、50質量部以下、30質量部以下、20質量部以下である。これらの観点から、上記のイオン性吸水樹脂の含有量は、好ましくは5質量部以上200質量部以下であり、より好ましくは5質量部以上150質量部以下であり、さらに好ましくは5質量部以上100質量以下、5質量部以上50質量以下、5質量部以上30質量以下、8質量部以上20質量以下である。
【0018】
(1.3)ノニオン性界面活性剤
ノニオン性界面活性剤は特に限定されない。ノニオン性界面活性剤としては、エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック共重合体等の2種以上のアルキレンオキシドの共重合体、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、グルセリン脂肪酸エステル、ポリグルセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンエチレンジアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンひまし油、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンロジンエステル、ポリオキシエチレンラノリンエーテル、アセチレングリコールエチレンオキシド付加物、アルキルグリセリルエーテル等が挙げられる。ノニオン性界面活性剤がポリオキシエチレン基を有する場合は、ポリオキシエチレン基の一部がオキシプロピレン基で置換されてもよい。なお、ノニオン性界面活性剤のアルキル基は炭素数8-22程度、脂肪酸エステルのアシル基は炭素数10-22程度である。
【0019】
ノニオン性界面活性剤は、エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック共重合体が好ましい。エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック共重合体としては、例えば、下記式(I)で表されるプロピレンオキシド単位とエチレンオキシド単位を含む共重合体が好適である。式(I)で表される共重合体は、例えば、ポリプロピレングリコールに、エチレンオキシドを付加した付加物として得ることができる。ポリプロピレンオキシド部分(プロピレンオキシド単位で構成された部分)は、疎水基としての性質を有する。エチレンオキシド部分(エチレンオキシド単位で構成された部分)は、親水基としての性質を有する。
【化1】



(式(I)中、a、b、cは整数を表す。)
【0020】
ここで、bは、プロピレンオキシド単位の平均付加モル数を示す。bは、例えば12-80の数である。a+cは、エチレンオキシド単位の平均付加モル数を示す。a+cは、例えば300以下の数であり、好ましくは2-100の数である。
ノニオン性界面活性剤の重量平均分子量は、例えば、1000以上18000以下である。
【0021】
ノニオン性界面活性剤の具体例としては、「アデカプルロニックL」又は「アデカプルロニックF」(株式会社ADEKA製)、「エパン」(第一工業製薬株式会社製)、「プルロニック」(BASFジャパン株式会社製)、「ニューポールPE」(三洋化成工業株式会社製)、「プロノン」(日油株式会社製)の等が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0022】
エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック共重合体におけるポリプロピレンオキシド部分の分子量は特に限定されない。ポリプロピレンオキシド部分の分子量は、初期の水膨張速度向上の観点から、好ましくは700以上であり、より好ましくは900以上であり、さらに好ましくは1250以上、1500以上、2000以上、2500以上、3000以上である。ポリプロピレンオキシド部分の分子量は、入手し易さの点から、好ましくは4000以下であり、より好ましくは3500以下である。これらの観点から、ポリプロピレンオキシド部分の分子量は、好ましくは700以上4000以下であり、より好ましくは1250以上3500以下であり、上記の下限と上限を適宜組み合わせた範囲とすることができる。
【0023】
プロピレンオキシド単位とエチレンオキシド単位の含有率は特に限定されない。プロピレンオキシド単位とエチレンオキシド単位の合計を100モル%とした場合に、エチレンオキシド単位の含有率は、親水性を確保する点から、好ましくは5モル%以上であり、より好ましくは8モル%以上である。上記のエチレンオキシド単位の含有率は、初期の水膨張速度向上の観点から、好ましくは85モル%以下であり、より好ましくは75モル%以下であり、さらに好ましくは70モル%以下、50モル%以下、40モル%以下、30モル%以下、20モル%以下、15モル%以下である。これらの観点から、上記のエチレンオキシド単位の含有率は、好ましくは5モル%以上85モル%以下であり、より好ましくは5モル%以上75モル%以下であり、上記の下限と上限を適宜組み合わせた範囲とすることができる。
【0024】
ノニオン性界面活性剤の含有量は、初期の水膨張速度向上の観点から、ゴム成分100質量部に対して、0質量部より多く、好ましくは0.5質量部以上であり、より好ましくは1質量部以上であり、さらに好ましくは3質量部以上である。上記のノニオン性界面活性剤の含有量は、成形性の観点から、好ましくは50質量部以下であり、より好ましくは30質量部以下であり、さらに好ましくは20質量部以下、10質量部以下である。これらの観点から、上記のノニオン性界面活性剤の含有量は、好ましくは0質量部より多く、50質量部以下であり、より好ましくは0.5質量部以上30質量部以下であり、さらに好ましくは1質量部以上20質量部以下、3質量部以上10質量部以下である。
【0025】
(1.4)発泡剤、発泡助剤
発泡剤としては、無機系発泡剤、有機系発泡剤が挙げられる。組成物は、発泡剤とともに、発泡助剤を含んでいてもよい。
【0026】
無機系発泡剤としては、例えば、炭酸水素ナトリウム(重曹)、炭酸水素アンモニウム等の炭酸水素塩、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム等の炭酸塩、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸アンモニウム等の亜硝酸塩、水素化ホウ素ナトリウム等の水素化ホウ素塩、アジド類、その他公知の無機系発泡剤が用いられる。これらの中でも、好ましくは炭酸水素塩が用いられ、より好ましくは炭酸水素ナトリウムが用いられる。上記した無機系発泡剤は、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0027】
有機系発泡剤としては、例えば、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)、N,N’-ジメチル-N,N’-ジニトロソテレフタルアミド、トリニトロソトリメチルトリアミン等のN-ニトロソ系化合物、アゾジカルボン酸アミド(ADCA)、バリウムアゾジカルボキシレート、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン等のアゾ系化合物、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)、パラトルエンスルホニルヒドラジド、ジフェニルスルホン-3,3’-ジスルホニルヒドラジド、2,4-トルエンジスルホニルヒドラジド、p,p-ビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)エーテル、ベンゼン-1,3-ジスルホニルヒドラジド、アリルビス(スルホニルヒドラジド)等のヒドラジド系化合物、p-トルイレンスルホニルセミカルバジド、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルセミカルバジド)等のセミカルバジド系化合物、トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロモノフルオロメタン等のフッ化アルカン、5-モルホリル-1,2,3,4-チアトリアゾール等のトリアゾール系化合物が挙げられる。これらの中でも、好ましくはN-ニトロソ系化合物又はアゾ系化合物が用いられ、より好ましくはN,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)又はアゾジカルボン酸アミド(ADCA)が用いられる。上記した有機系発泡剤は、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0028】
発泡剤の合計の量は、ゴム成分100重量部に対して、1質量部以上40質量部以下であることが好ましく、4質量部以上30質量部以下であることが好ましく、8質量部以上25質量部以下であることがより好ましい。
無機系発泡剤の合計の量は、ゴム成分100重量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、2質量部以上15質量部以下であることが好ましく、4質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。
有機系発泡剤の量は、ゴム成分100重量部に対して、1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、2質量部以上25質量部以下であることが好ましく、4質量部以上23質量部以下であることがより好ましい。
【0029】
発泡剤は、連通化率を向上して、水膨張速度を向上する観点から、無機系発泡剤が用いられることが好ましい。さらに、連通化率の向上と、低密度化の観点から、無機系発泡剤と有機系発泡剤が組み合わせて用いられることがより好ましく、炭酸水素ナトリウム(重曹)とN,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)が組み合わせて用いられることが更に好ましい。
無機系発泡剤と有機系発泡剤が組み合わせて用いられる場合において、無機系発泡剤と有機系発泡剤の質量の比率は特に限定されない。無機系発泡剤:有機系発泡剤は、例えば、10:90-90:10(質量比)とすることができ、25:75-75:25(質量比)、40:60-60:40(質量比)としてもよい。
【0030】
発泡助剤としては、例えば尿素系発泡助剤が挙げられる。尿素系発泡助剤は、尿素を主成分とするものであり、例えば、永和化成工業社製のセルペーストK-5、セルペースト101等が例示される。なお、主成分とは、含有率(重量%)が90重量%以上(100重量%以下)の物質をいう。
尿素系発泡助剤の量は、ゴム成分100質量部に対して、0.5質量部以上15質量部以下が好ましく、4質量部以上10質量部以下がより好ましい。
【0031】
(1.5)充填剤
充填剤としては、炭酸カルシウム、カーボンブラック、クレー、タルク、水酸化マグネシウム、マイカ、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、ケイ酸、酸化チタン、ベントナイト、雲母、ガラス繊維、木粉等の無機充填材を挙げることができる。これらの中でも、炭酸カルシウムが用いられることが好ましく、炭酸カルシウムとカーボンブラックが組み合わせて用いられることがより好ましい。炭酸カルシウムは、カーボンブラックと比較して、ゴム発泡体1の補強性に対する影響が小さい。このため、充填材として炭酸カルシウムを用いる場合には、吸水によって膨張し易いゴム発泡体1を得ることができる。また、充填材として炭酸カルシウムを用いる場合には、ゴム発泡体1の低密度化も期待できる。
充填剤の合計の量は、ゴム成分100質量部に対して50質量部以上200質量部以下が好ましい。
充填剤として炭酸カルシウムが用いられる場合において、炭酸カルシウムの量は、ゴム成分100質量部に対して10質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましく、30質量部以上、50質量部以上、80質量部以上、100質量部以上、120質量部以上であってもよい。炭酸カルシウムの量の上限は、特に限定されず、例えば300質量部以下、200質量部以下であってもよい。
炭酸カルシウムとカーボンブラックが組み合わせて用いられる場合において、炭酸カルシウムとカーボンブラックの質量の比率は特に限定されない。炭酸カルシウム:カーボンブラックは、例えば、10:90-99:1(質量比)とすることができ、50:50-99:1(質量比)、80:20-99:1(質量比)としてもよい。
【0032】
(1.6)架橋剤、架橋促進剤、架橋促進助剤
架橋剤は、特に、限定されない。架橋剤として、例えば、硫黄、硫黄化合物、セレン、酸化マグネシウム、過酸化物系架橋剤、p-キノンジオキシム系架橋剤等の公知の架橋剤を用いることができる。架橋剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して用いてもよい。架橋剤の量は、ゴム成分100質量部に対して、0.5質量部以上3質量部以下が好ましい。
【0033】
架橋促進剤としては、例えば、チアゾール類(例えば、2―メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド等)、ジチオカルバミン酸類(例えば、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛等)、チオウレア類(例えば、ジエチルチオウレア、トリメチルチオウレアなど)、グアニジン類(例えば、ジフェニルグアニジン、ジ-o-トリルグアニジン等)、スルフェンアミド類(例えば、ベンゾチアジル-2-ジエチルスルフェンアミド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド等)、チウラム類(例えば、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等)、キサントゲン酸類(例えば、イソプロピルキサントゲン酸ナトリウム、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛等)、アルデヒドアンモニア類(例えば、アセトアルデヒドアンモニア、ヘキサメンチレンテトラミン等)、アルデヒドアミン類(例えば、n-ブチルアルデヒドアニリン、ブチルアルデヒドモノブチルアミン等)、ジチオフォスファイド系架橋促進剤等が用いられる。このような架橋促進剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。架橋促進剤の合計の量は、例えば、ゴム成分100質量部に対して0.5質量部以上8質量部以下が好ましい。
架橋促進助剤としては、酸化亜鉛、ステアリン酸等を挙げることができる。架橋促進助剤の合計の量は、例えば、ゴム成分100質量部に対して2質量部以上15質量部以下が好ましい。
発泡速度と架橋速度のタイミング調整などの観点から、架橋促進剤及び架橋促進助剤として、好ましくは、チアゾール類、ジチオカルバミン酸類、チオウレア類、酸化亜鉛、及び、ステアリン酸が用いられる。
【0034】
(1.7)その他の成分
組成物は、上記の成分以外に、軟化剤、加工助剤等の添加剤を更に含んでいてもよい。
【0035】
軟化剤としては、パラフィン系、ナフテン系、アロマ系等の鉱物系オイル、ラウリン酸、リシノール酸、バルチミン酸、綿実油、大豆油、ヒマシ油、パーム油等の植物系オイル等を挙げることができる。軟化剤の量は、ゴム成分100質量部に対して20質量部以上130質量部以下が好ましく、30質量部以上90質量部以下がより好ましい。
【0036】
(1.8)ゴム発泡体1の製造方法
ゴム発泡体1の製造方法は、特に限定されない。ゴム発泡体1は、ゴム成分、イオン性吸水性樹脂、ノニオン性界面活性剤等の原料をミキサーなどの二軸混練機によって混練し、発泡及び加硫を行い製造できる。
【0037】
2.ゴム発泡体1の物性及び用途
ゴム発泡体1は、架橋ゴムであっても、未架橋ゴムであってもよい。ゴム発泡体1は、機械的物性の観点から、架橋ゴムであることが好ましい。
【0038】
(1)水膨張倍率
ゴム発泡体1の水膨張倍率は、以下の測定方法で算出できる。
<測定方法>
水に触れる前の(未膨張)のゴム発泡体1から30mm×30mm×2mmの試験片を作製する。試験片を、室温(23℃)の水道水に4日間、7日間、又は14日間のいずれかの期間浸漬させる。浸漬後の試験片の体積を求め、以下の式に基づき水膨張倍率を算出する。
水膨張倍率[倍] = (浸漬後の試験片の体積)/(浸漬前の試験片の体積)
【0039】
ゴム発泡体1の水膨張倍率(4日後)は、特に限定されない。ゴム発泡体1の水膨張倍率(4日後)は、上記の測定方法で算出した場合に、1.00倍であってもよく、好ましくは1.05倍以上であり、より好ましくは1.10倍以上、1.20倍以上、1.25倍以上である。ゴム発泡体1の水膨張倍率(4日後)の上限は、通常、20倍以下であり、10倍以下であってもよい。
ゴム発泡体1の水膨張倍率(7日後)は、特に限定されない。ゴム発泡体1の水膨張倍率(7日後)は、上記の測定方法で算出した場合に、1.00倍であってもよく、好ましくは1.08倍以上であり、より好ましくは1.20倍以上、1.30倍以上、1.35倍以上である。ゴム発泡体1の水膨張倍率(7日後)の上限は、通常、20倍以下であり、10倍以下であってもよい。
ゴム発泡体1の水膨張倍率(14日後)は、特に限定されない。ゴム発泡体1の水膨張倍率(14日後)は、上記の測定方法で算出した場合に、好ましくは1.10倍以上であり、より好ましくは1.30倍以上であり、更に好ましくは1.40倍以上、1.50倍以上である。ゴム発泡体1の水膨張倍率(14日後)の上限は、通常、20倍以下であり、10倍以下であってもよい。
【0040】
(2)硬さ
ゴム発泡体1の硬さは特に限定されない。JIS K6253に基づいて、タイプCデュロメータを用いて測定したゴム発泡体1の硬さは、好ましくは10以上70以下であり、より好ましくは20以上60以下であり、更に好ましくは25以上50以下である。なお、ゴム発泡体1の硬さは、未膨張のゴム発泡体1で測定する。
【0041】
(3)引張強さ
ゴム発泡体1の引張強さは特に限定されない。JIS K6251に基づいて測定したゴム発泡体1の引張強さは、好ましくは0.35MPa以上であり、より好ましくは0.40MPa以上であり、さらに好ましくは0.50MPa以上である。ゴム発泡体1の引張強さの上限は特に限定されず、例えば、5.0MPa以下であってもよい。なお、ゴム発泡体1の引張強さは、未膨張のゴム発泡体1で測定する。
【0042】
(4)伸び
ゴム発泡体1の伸びは特に限定されない。JIS K6251に基づいて測定したゴム発泡体1の伸びは、好ましくは250%以上であり、より好ましくは300%以上であり、さらに好ましくは400%以上である。ゴム発泡体1の伸びの上限は特に限定されず、例えば、3000%以下であってもよい。なお、ゴム発泡体1の伸びは、未膨張のゴム発泡体1で測定する。
【0043】
(5)密度
ゴム発泡体1の密度は特に限定されない。JIS K6268に基づいて測定したゴム発泡体1の密度は、低密度化の観点から、好ましくは0.62g/cm以下であり、より好ましくは0.58g/cm以下であり、0.55g/cm以下、0.55g/cm未満、0.50g/cm以下、0.45g/cm以下、0.40g/cm以下、0.35g/cm以下、0.30g/cm以下であってもよい。ゴム発泡体1の密度は、例えば、0.10g/cm以上とすることができる。なお、ゴム発泡体1の密度は、未膨張のゴム発泡体1で測定する。
【0044】
(6)用途
ゴム発泡体1の用途は特に限定されない。ゴム発泡体1は、非発泡の水膨張性のゴムに比して密度が小さく、諸物性に優れるから、止水材として好適である。具体的には、ゴム発泡体1は、シールド工法用セグメント目地部の止水材等の土木用止水材、コンクリート打ち継ぎ部の止水材等の建築用止水材、マンホール用止水材、下水配管等の配管用止水材、通信ケーブル用止水材、結露防止用止水材、遮水用マット等の広範な用途に利用できる。また、ゴム発泡体1は、目地部等において一次止水を行うシーリング材と組み合わせて、二次止水を行う止水材として用いてもよい。ゴム発泡体1が二次止水を行う止水材として用いられることで、長期の止水性を確保できる。また、ゴム発泡体1は、イオン性吸水樹脂を含有するから、淡水等の低イオン濃度の溶液を止水する止水材として特に有効である。
【0045】
ゴム発泡体1の形状は特に限定されない。ゴム発泡体1の形状は、用途に応じて、角柱状、円柱状、筒状、環状、シート状であってもよい。図1に角柱状のゴム発泡体1の断面図を示す。ゴム発泡体1は、部材3と部材4間の止水を行う止水材として用いられている。図1の左側は、未膨張のゴム発泡体1を表す。図1の右側は、水を吸収して膨張したゴム発泡体1を表し、矢印は外側から浸入する水を表す。部材3と部材4の間の隙間が大きくなった場合には、ゴム発泡体1が水膨張して直ぐに隙間を埋めることで、部材3と部材4の間の止水性を確保できる。
【0046】
3.本実施形態の作用効果
本実施形態によれば、ゴム発泡体1における初期の水膨張速度(水の浸透スピード)を向上できる。イオン性吸水樹脂は、一般的に、ノニオン性吸水樹脂に比して吸水倍率が高く、ゴム発泡体1の初期の水膨張速度の向上に寄与できる。他方、ゴム成分は透水性に乏しいため、初期の水膨張速度を向上するうえで、ゴム発泡体1の内部に存在するイオン性吸水樹脂まで水が浸透するのに要する時間が問題となる。本願発明者らは、ゴム成分とイオン性吸水樹脂とともに、ノニオン性界面活性剤を配合することで、初期の水膨張速度を向上できることを見出し、本開示のゴム発泡体1を開発するに至った。
【0047】
ゴム発泡体1の初期の水膨張速度を向上できる理由は次のように推測される。但し、本開示は、この推定理由によって何ら限定解釈されるものではない。
ノニオン性界面活性剤は、ゴム成分とイオン性吸水樹脂との界面において、疎水性の部分をゴム成分側に、親水性の部分をイオン性吸水樹脂側にして存在すると考えられる。すなわち、ゴム成分の周囲に、イオン性吸水樹脂に連なる親水性の部分による水の経路が形成されると考えられる。この親水性の部分による水の経路を通って、ゴム発泡体1の表面に付着した水が浸透することで、ゴム発泡体1の内部に存在するイオン性吸水樹脂まで水が浸透するのに要する時間が短縮され得る。このようにして、初期の水膨張速度を向上できると推測される。
【0048】
また、ゴム発泡体1が密度0.55g/cm未満である場合には、密度0.55g/cm以上の場合に比して、ゴム発泡体1を組付ける際の作業性が良い。さらに、密度0.55g/cm未満のゴム発泡体1を採用することによって、例えば非発泡のゴムに比して、初期の水膨張速度を向上できる。その理由は定かではないが、ゴム発泡体1内部の気泡がイオン性吸水樹脂に連なる親水性の部分による水の経路を構成している可能性がある。
【0049】
また、組成物がゴム成分を100質量部とした場合に炭酸カルシウムを20質量部以上含有する場合には、吸水によって膨張し易いゴム発泡体1を得ることができる。そのメカニズムは定かではないが、炭酸カルシウムはカーボンブラックと比較してゴム発泡体1の補強性に対する影響が小さいことに起因すると推測される。
【0050】
また、発泡剤として、重曹等の無機発泡剤を用いた場合には、水の浸透スピードを高めることができる。そのメカニズムは定かではないが、無機発泡剤は有機発泡剤に比して発泡倍率が小さいため、ゴム発泡体1内部に多数の微細な気泡が形成され、気泡の連通率が向上したためと推測される。すなわち、発泡剤として、重曹等の無機発泡剤を用いることで、ゴム発泡体1内部に好適に水の経路を構成できる可能性がある。
【0051】
また、ノニオン系界面活性剤として、エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック共重合体を用いた場合には、低密度化を実現しつつ、より一層好適に初期の水膨張速度を向上できる。例えば、エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック共重合体における、ポリプロピレンオキシド部分の分子量2000以上(例えば3250)、かつ、エチレンオキシド単位の含有率20モル%以下(例えば10モル%)であれば、好適に、ノニオン系界面活性剤の含有量を抑えつつ、EPDMとイオン性吸水樹脂の親和性を向上できる。また、エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック共重合体の含有量がゴム成分100質量部に対して3質量部以上15質量部以下であれば、好適に、ノニオン系界面活性剤の含有量を抑えつつ、EPDMとイオン性吸水樹脂の親和性を向上できる。このように、ノニオン系界面活性剤の種類、疎水性の部分と親水性の部分のバランス、及び含有量等を調整することで、ゴム発泡体1の低密度化を実現しつつ、より一層好適に初期の水膨張速度を向上できる。
【実施例0052】
以下、実施例により更に具体的に説明する。
【0053】
1.ゴム発泡体の作製(実験例1-12)
表1及び表2に示す配合割合で、実験例1-12のゴム発泡体を作製した。実験例1-7、11、12は実施例であり、実験例8-10は比較例である。表1及び表2において「8*」のように、「*」が付されている場合には、比較例であることを示している。表1及び表2に記載した主要な原料の詳細を以下に示す。
・EPDM-1:EPDM、三井化学製 三井EPT4045、ムーニー粘度ML1+4(100℃) 45、ジエン含有量 8.1質量%、エチレン含有量 54質量%
・EPDM-2:EPDM、住友化学製 エスプレン505A、ムーニー粘度ML1+4(100℃) 47、ジエン含有量 9.5質量%、エチレン含有量 50質量%
・EPDM-3:EPDM、アランセオ製 Keltan2650、ムーニー粘度ML1+4(125℃) 25、ジエン含有量 6.0質量%、エチレン含有量 53質量%
・イオン性吸水樹脂:アクリル酸ナトリウム塩、日本触媒製 アクアリック CS 6S
・ノニオン性界面活性剤:エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック共重合体、ADEKA アデカプルロニックL101、ポリプロピレンオキシド部分の分子量 3250、エチレンオキサイド単位の含有率 10モル%
・カーボンブラック:旭カーボン製 旭#60UG
・炭酸カルシウム:白石カルシウム社製、ホワイトンSB
・軟化剤(オイル):パラフィン系オイル、出光興産社製 PS-430
・架橋剤:硫黄、ラインケミー製 レノグランS-80
・架橋促進剤-1:チアゾール系架橋促進剤、三新化学製 サンミックスM-75E
・架橋促進剤-2:チアゾール系架橋促進剤、三新化学製 サンセラーM-G
・架橋促進剤-3:ジチオカルバミン酸塩系架橋促進剤、ラインケミー製 レノグランZDBC-80
・架橋促進剤-4:ジチオカルバミン酸塩系架橋促進剤、大内新興化学製 アルファグランPZ-75
・架橋促進剤-5:チオウレア系架橋促進剤、大内新興化学製 ノクセラーBUR
・架橋促進剤-6:チオウレア系架橋促進剤、ラインケミー製 レノグランDETU-80
・架橋促進助剤-1:酸化亜鉛、井上石灰工業製 メタZ L-40
・架橋促進助剤-2:ステアリン酸、日本油脂製 ステアリン酸つばき
・架橋活性剤:グリコール系加硫活性剤、ADEKA製、PEG#4000
・発泡剤-1:アゾジカルボン酸アミド(ADCA)、永和化成工業製、ネオスレンEM804A
・発泡剤-2:N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)、永和化成工業製、セルラー L-70
・発泡剤-3:炭酸水素ナトリウム(重曹)、永和化成工業製、ネオスレンHM50FA
・発泡助剤-1:尿素、永和化成工業製、ESA-1
・発泡助剤-2:尿素、永和化成工業製、セルペーストK5
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
各ゴム発泡体は、具体的には以下のように作製した。
ゴム成分(EPDM-1、EPDM-2、EPDM-3)に、イオン性吸水樹脂、ノニオン性界面活性剤、カーボンブラック、白色フィラー、軟化剤等を配合して配合物を準備した。その後、この配合物をミキサーなどの二軸混練機によって、排出温度100℃、回転数25rpmの条件で混練した。混錬した配合物に、8インチロールで架橋剤、架橋促進剤、発泡剤を投入し組成物を調製した。組成物を押出成形等で成形し、発泡、加硫して、実験例1-12のゴム発泡体を得た。
【0057】
2.評価方法
水膨張倍率(倍)は、実施形態に記載の方法で測定した。
硬さは、JIS K6253に基づいて、タイプCデュロメータを用いて測定した。
引張強さ(MPa)は、JIS K6251に基づいて測定した。
伸び(%)は、JIS K6251に基づいて測定した。
密度(g/cm)は、JIS K6268に基づいて測定した。
【0058】
3.結果
結果を表1及び表2に併記する。
(1)実験例1-12の各要件の充足状況
実験例1-7、11、12のゴム発泡体は、下記要件(a)-(d)を全て満たしている。
・要件(a):ゴム成分を含有する。
・要件(b):イオン性吸水樹脂を含有する。
・要件(c):ノニオン性界面活性剤を含有する。
・要件(d):発泡剤を含有する。
これに対して、実験例8のゴム発泡体は、要件(c)を満たしていない。実験例9のゴム発泡体は、要件(b)を満たしていない。実験例10のゴム発泡体は、要件(b),(c)を満たしていない。
【0059】
また、実験例1-7のゴム発泡体のうち実験例1-4、6、7のゴム発泡体は、以下の要件を満たしている。
・要件(e):密度0.55g/cm未満である。
また、実験例1-7、11、12のゴム発泡体のうち実験例1-5、7、12のゴム発泡体は、以下の要件を満たしている。
・要件(f):発泡剤は炭酸水素ナトリウムを含む。
また、実験例1-7、11、12のゴム発泡体は、以下の要件を満たしている。
・要件(g):組成物は、前記ゴム成分を100質量部とした場合に炭酸カルシウムを20質量部以上含有する。
【0060】
(2)結果及び考察
実験例1-7のゴム発泡体は、14日後の水膨張倍率が1.16倍以上であり、密度が小さかった。実験例4、5のゴム発泡体は、硬さ、引張強さ、伸び等の物性が良好であった。実験例11、12のゴム発泡体は、14日後の水膨張倍率が1.25倍以上であった。要件(a)-(d)を全て満たす場合には、諸物性が良好な水膨張性のゴム発泡体が得られることが示唆された。
【0061】
実験例4と実験例8は、イオン性吸水樹脂の含有量が共に50.0質量部である。実験例4はノニオン性界面活性剤を含有し、実験例10はノニオン性界面活性剤を含有しない。実験例4と実験例8を比較すると、実験例4は、特に4日後の水膨張倍率と、7日後の14日後の水膨張倍率が実験例8よりも大きかった。要件(a)-(d)を全て満たす場合には、初期の水膨張速度を向上できることが示唆された。
【0062】
実験例1と実験例7は、イオン性吸水樹脂の含有量が共に10.0質量部であり、同種かつ同量の発泡剤を含んでいる。実験例7はカーボンブラック 10.0質量部、炭酸カルシウム 150.0質量部を含み、実験例1はカーボンブラック 45.0質量部、炭酸カルシウム 60.0質量部を含む。実験例7の密度は0.240g/cmであり、実験例1の密度は0.360g/cmであった。このことから、炭酸カルシウムを含有することで、低密度化に寄与できることが示唆された。
【0063】
実験例6と実験例7は、イオン性吸水樹脂の含有量が共に10.0質量部である。実験例7は発泡剤としてDPTと重曹を含み、実験例6は発泡剤としてADCAを含む。実験例7は、4日後、7日後、14日後の水膨張倍率が実験例6よりも大きかった。このことから、発泡剤として無機発泡剤を含むことで、初期の水膨張速度を向上できることが示唆された。
【0064】
実験例6と実験例11は、実験例6が重曹を含まず、実験例11が重曹を含む点を除き、その他の原料の配合割合が同じである。実験例6は発泡剤としてADCAのみを含み、実験例11は発泡剤としてADCAと重曹を含む。重曹を含む実験例11は、4日後、7日後、14日後の水膨張倍率が、重曹を含まない実験例6よりも大きかった。このことから、発泡剤として重曹を含むことで、初期の水膨張速度を向上できることが示唆された。
【0065】
実験例7と実験例12は、実験例7が重曹を含み、実験例12が重曹を含まない点を除き、その他の原料の配合割合が同じである。実験例7は発泡剤としてDPTと重曹を含み、実験例12は発泡剤としてDPTのみを含む。重曹を含む実験例7は、4日後、7日後、14日後の水膨張倍率が、重曹を含まない実験例12よりも大きかった。このことから、発泡剤として重曹を含むことで、初期の水膨張速度を向上できることが示唆された。
【0066】
4.実施例の効果
以上の実施例によれば、所望の性能を有する水膨張性のゴム発泡体を提供できる。
【0067】
本開示は上記で詳述した実施形態に限定されず、様々な変形又は変更が可能である。
【符号の説明】
【0068】
1…ゴム発泡体
図1