(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048006
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】運動マネージャ、ブレーキ装置の制御装置、及び制御方法
(51)【国際特許分類】
B60W 50/00 20060101AFI20240401BHJP
【FI】
B60W50/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153825
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】大橋 祐太
(72)【発明者】
【氏名】三宅 一城
(72)【発明者】
【氏名】口ノ町 敦史
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA00
3D241CC08
(57)【要約】
【課題】アプリケーションの開発の負担を軽減する。
【解決手段】運動マネージャ91は、受付部92と、調停部93と、生成部94と、記憶部95と、を備えている。受付部92は、個々のアプリケーション63から当該アプリケーション63に対応する運動要求を受け付ける。調停部93は、受付部92が受け付けた運動要求を調停する。生成部94は、調停部93による調停結果に基づいて、ブレーキ制御部96に出力する動作要求の指示値を生成する。記憶部95は、ブレーキ制御部96が制御対象とするアクチュエータ44の種別情報TIを、予め記憶している。生成部94は、記憶部95の記憶しているアクチュエータ44の種別情報TIを用いて、動作要求の指示値を生成する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される運動マネージャであって、
個々のアプリケーションから当該アプリケーションに対応する運動要求を受け付け可能な受付部と、
前記受付部が受け付けた前記運動要求を調停する調停部と、
前記調停部による調停結果に基づいて、前記車両に搭載される制御部に出力する動作要求の指示値を生成する生成部と、
前記制御部が制御対象とするアクチュエータの種別情報を、予め記憶している記憶部と、
を備え、
前記生成部は、前記記憶部の記憶している前記アクチュエータの種別情報を用いて、前記指示値を生成する
運動マネージャ。
【請求項2】
前記アクチュエータは、前記車両に制動力を与えるブレーキ装置に含まれる
請求項1に記載の運動マネージャ。
【請求項3】
前記アクチュエータは、油圧を出力するものであり、
前記指示値は、前記アクチュエータが出力する油圧の大きさを示す信号である
請求項2に記載の運動マネージャ。
【請求項4】
前記調停部は、複数の前記運動要求を前記受付部が受け付けたときには、前記指示値が示す油圧が最も大きくなる前記運動要求を選択することで、複数の前記運動要求を調停する
請求項3に記載の運動マネージャ。
【請求項5】
車両のブレーキ装置を制御する制御装置であって、
個々のアプリケーションから当該アプリケーションに対応する運動要求を受け付け可能な受付部と、前記受付部が受け付けた前記運動要求を調停する調停部と、前記調停部による調停結果に基づいて、前記車両に搭載される制御部に出力する動作要求の指示値を生成する生成部と、前記制御部が制御対象とするアクチュエータの種別情報を、予め記憶している記憶部と、を備える運動マネージャを有しており、
前記生成部は、前記記憶部の記憶している前記アクチュエータの種別情報を用いて、前記指示値を生成する
ブレーキ装置の制御装置。
【請求項6】
車両に搭載されるコンピュータが実行する制御方法であって、
個々のアプリケーションから当該アプリケーションに対応する運動要求を受け付けることと、
受け付けた前記運動要求を調停することと、
調停した調停結果に基づいて、前記車両に搭載される制御部に出力する動作要求の指示値を生成することと、
を備え、
前記指示値を生成するにあたっては、前記コンピュータが予め記憶しているアクチュエータの種別情報を用いて、前記指示値を生成する
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運動マネージャ、ブレーキ装置の制御装置、及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、運動マネージャが記載されている。運動マネージャは、車両に搭載されている。運動マネージャは、受付部と、調停部と、生成部と、を備えている。受付部は、複数のアプリケーションから、要求を受け付ける。調停部は、受付部の受け付けた複数の要求を調停する。生成部は、調停部による調停結果に基づいて、例えばブレーキ制御部に出力する運動要求の指示値を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている運動マネージャは、複数のアプリケーションから、複数の予備制動の要求を受け付けることがある。各アプリケーションが予備制動の要求をする場合、予備制動を実現するための指示値は、ブレーキ装置の種類や構造などに応じて異なっている。したがって、アプリケーションを開発するにあたっては、アプリケーション毎に、ブレーキ装置の種類や構造などに合わせた態様で予備制動の要求を出力できるように設計しなければならない。そのため、アプリケーションの開発の負担が大きい。なお、上では、ブレーキ装置の予備制動を例として説明したが、ブレーキ装置が予備制動以外の動作をする場合、また、ブレーキ装置以外の装置の場合であっても、同様の課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本開示の一態様は、車両に搭載される運動マネージャであって、個々のアプリケーションから当該アプリケーションに対応する運動要求を受け付け可能な受付部と、前記受付部が受け付けた前記運動要求を調停する調停部と、前記調停部による調停結果に基づいて、前記車両に搭載される制御部に出力する動作要求の指示値を生成する生成部と、前記制御部が制御対象とするアクチュエータの種別情報を、予め記憶している記憶部と、を備え、前記生成部は、前記記憶部の記憶している前記アクチュエータの種別情報を用いて、前記指示値を生成する運動マネージャである。
【0006】
上記課題を解決するため、本開示の一態様は、車両のブレーキ装置を制御する制御装置であって、個々のアプリケーションから当該アプリケーションに対応する運動要求を受け付け可能な受付部と、前記受付部が受け付けた前記運動要求を調停する調停部と、前記調停部による調停結果に基づいて、前記車両に搭載される制御部に出力する動作要求の指示値を生成する生成部と、前記制御部が制御対象とするアクチュエータの種別情報を、予め記憶している記憶部と、を備える運動マネージャを有しており、前記生成部は、前記記憶部の記憶している前記アクチュエータの種別情報を用いて、前記指示値を生成するブレーキ装置の制御装置である。
【0007】
上記各構成によれば、記憶部は、アクチュエータの種別情報を予め記憶している。そして、生成部は、アクチュエータの種別情報を用いて、運動要求の指示値を生成できる。そのため、アプリケーションから受け付ける動作要求が、ブレーキ装置の種類や構造などに合わせた態様でなくても、調停した動作要求を実現するために、運動要求の指示値を生成できる。よって、アプリケーションの開発の際に、統一した規格で開発を行えばよい。すなわち、アクチュエータの種類、構造毎に、アプリケーションを開発する必要はない。
【0008】
上記課題を解決するため、本開示の一態様は、車両に搭載されるコンピュータが実行する制御方法であって、個々のアプリケーションから当該アプリケーションに対応する運動要求を受け付けることと、受け付けた前記運動要求を調停することと、調停した調停結果に基づいて、前記車両に搭載される制御部に出力する動作要求の指示値を生成することと、を備え、前記指示値を生成するにあたっては、前記コンピュータが予め記憶しているアクチュエータの種別情報を用いて、前記指示値を生成する制御方法である。
【0009】
上記構成によれば、生成工程では、コンピュータが予め記憶しているアクチュエータの種別情報を用いて、運動要求の指示値を生成できる。そのため、アプリケーションから受け付ける運動要求が、ブレーキ装置の種類や構造などに合わせた態様でなくても、調停した運動要求を実現するために、動作要求の指示値を生成できる。よって、アプリケーションの開発の際に、統一した規格で開発を行えばよい。すなわち、アクチュエータの種類、構造毎に、アプリケーションを開発する必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】
図2は、ブレーキECU及びブレーキ装置を示す概略図である。
【
図3】
図3は、ブレーキ装置の制御方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(一実施形態)
以下、運動マネージャ、運動マネージャを有する制御装置、及び制御方法の一実施形態について説明する。以下では、運動マネージャを有する制御装置について、図面を参照して説明する。
【0012】
<車両の概略>
図1に示すように、車両10は、内燃機関20と、操舵装置30と、ブレーキ装置40と、制御装置50と、を備えている。
【0013】
内燃機関20は、車両10の駆動源である。内燃機関20は、図示は省略するが、スロットルバルブ、燃料噴射弁、及び点火装置などの複数のアクチュエータを有している。内燃機関20は、制御装置50によって上記の各アクチュエータが制御されることで、燃料を燃焼して、車両10を駆動させる。
【0014】
操舵装置30は、車両10の操舵輪の舵角を変化させる。操舵装置30は、電動パワーステアリングを有している。電動パワーステアリングは、制御装置50によってアクチュエータが制御されることで、運転者によるステアリング操作をアシストする。また、電動パワーステアリングは、制御装置50によってアクチュエータが制御されることで、運転者によるステアリングの操作量を微調整したり、運転者の操作に依らずに舵角を調整したりする。
【0015】
ブレーキ装置40は、車両10の各車輪に設けられている。ブレーキ装置40は、油圧を用いて制動力を発生させるディスクブレーキである。
図2に示すように、ブレーキ装置40は、ディスク41と、ブレーキパッド42と、ブレーキパッド42に油圧を加えるアクチュエータ44と、を有している。すなわち、アクチュエータ44は、油圧を出力するものである。ディスク41は、車両10の車輪と一体回転する回転体である。ブレーキパッド42は、車両10の車体に支持されている摩擦材である。アクチュエータ44からの油圧は、制御装置50によって制御される。ブレーキ装置40は、ディスク41とブレーキパッド42とを接触させることで、車両10に制動力を発生させる。
【0016】
図1に示すように、制御装置50は、先進安全ECU60と、エンジンECU70と、ステアリングECU80と、ブレーキECU90と、を備えている。各ECUは、図示しない内部バスを介して互いに信号をやり取り可能である。
【0017】
先進安全ECU60は、車両10の運転支援に関する機能を実現する。具体的には、先進安全ECU60は、CPU61と、ROM62と、を備えている。ROM62は、複数のアプリケーション63を記憶している。各アプリケーション63は、先進運転支援システムの機能を実現するプログラムである。アプリケーション63の例は、前走車両との車間距離を一定に保ちながら追従走行するためのACC(Adaptive Cruise Control)アプリケーションである。ACCアプリケーションは、車両10が前走車両との距離を一定に保ちながら走行できるように、車両10に搭載された各アクチュエータに加速と減速を要求する。
【0018】
また、アプリケーション63の他の例は、制限車速を認識して、車両10の速度を当該制限車速以下に維持するASL(Auto Speed Limiter)アプリケーションである。さらに、アプリケーション63の他の例は、車両10への衝突の被害を軽減させるために自動的に制動をかける衝突被害軽減ブレーキアプリケーション、いわゆるAEB(Autonomous Emergency Braking)アプリケーションである。また、アプリケーション63の他の例は、車両10が走行している車線の維持を行う車線維持支援アプリケーション、いわゆるLKA(Lane Keeping Assist)アプリケーションである。
【0019】
CPU61は、車両10に搭載された図示しない複数のセンサから検出値を取得する。CPU61は、センサからの検出値を用いて、ROM62が記憶している各アプリケーション63を実行する。CPU61が、各アプリケーション63を実行すると、当該CPU61は、各アプリケーション63での機能を実現できるように、当該アプリケーション63に対応する運動要求を出力する。なお、CPU61は、複数のアプリケーション63を同時に実行することもある。この場合、CPU61は、実行したアプリケーション63毎に、個別の運動要求を出力する。
【0020】
CPU61は、各運動要求を、各アプリケーション63の機能を実現する上で制御が必要なアクチュエータの制御部を有するECUに出力する。具体的には、CPU61は、エンジンECU70、ステアリングECU80、及びブレーキECU90から選ばれる1つ以上に、運動要求を出力する。
【0021】
ここで、CPU61が出力する運動要求は、内燃機関20のアクチュエータ、操舵装置30のアクチュエータ、及びブレーキ装置40のアクチュエータ44のそれぞれに対して、要求する出力の大きさを示す信号である。例えば、ブレーキ装置40への運動要求の種類は、ブレーキ装置40が出力する制動力の大きさが大きい順に、強制動、中制動、弱制動、第1予備制動、第2予備制動、第3予備制動と、段階的に分かれている。なお、強制動、中制動、弱制動、予備制動の順に、ブレーキ装置40のアクチュエータ44が出力する油圧は段階的に小さくなる。
【0022】
第1予備制動、第2予備制動、第3予備制動は、ブレーキ装置40においてディスク41とブレーキパッド42との距離を、アクチュエータ44が油圧を出力していない状態に比べて小さくすることである。具体的には、第1予備制動は、ディスク41とブレーキパッド42との距離をゼロにすることである。そして、第2予備制動及び第3予備制動は、ディスク41とブレーキパッド42とが離れているものの、両者の距離が、アクチュエータ44が油圧を出力していない状態に比べて小さな状態にすることである。そして、第3予備制動は、第2予備制動よりもディスク41とブレーキパッド42との距離が大きくすることである。したがって、これら第1予備制動、第2予備制動、第3予備制動が実行された場合、ブレーキ装置40が制動力を発揮できるまでの動作遅れが小さくなる。そして、この動作遅れは、第1予備制動、第2予備制動、第3予備制動の順に大きくなる。
【0023】
上記のようにCPU61が出力する運動要求は、例えば、ブレーキ装置40のアクチュエータ44に出力される指示値をそのまま示すものではない。つまり、運動要求は、例えば、ブレーキ装置40であれば共通のものであり、ブレーキ装置40の種類に応じて変化するものではない。その一方で、運動要求は、内燃機関20、操舵装置30、及びブレーキ装置40といったように機能が別な装置毎に異なるものである。
【0024】
エンジンECU70は、図示を省略するCPUとROMとを備えているコンピュータである。エンジンECU70のCPUは、ROMに記憶されているプログラムを実行することによって、内燃機関20を制御する。つまり、エンジンECU70は、内燃機関20を制御する制御装置である。特に、エンジンECU70は、先進安全ECU60からの運動要求に基づいて、内燃機関20を制御する。
【0025】
ステアリングECU80は、図示を省略するCPUとROMとを備えているコンピュータである。ステアリングECU80のCPUは、ROMに記憶されているプログラムを実行することによって、操舵装置30を制御する。つまり、ステアリングECU80は、操舵装置30を制御する制御装置である。特に、ステアリングECU80は、先進安全ECU60からの運動要求に基づいて、操舵装置30を制御する。
【0026】
ブレーキECU90は、図示を省略するCPUとROMとを備えているコンピュータである。ブレーキECU90のCPUは、ROMに記憶されているプログラムを実行することによって、ブレーキ装置40を制御する。つまり、ブレーキECU90は、ブレーキ装置40を制御する制御装置である。特に、ブレーキECU90は、先進安全ECU60からの運動要求に基づいて、ブレーキ装置40を制御する。
【0027】
<ブレーキECU>
以下、先進安全ECU60が記憶する各アプリケーション63が実行されたときの動作を、ブレーキECU90の場合を例として説明する。
【0028】
図2に示すように、ブレーキECU90は、運動マネージャ91と、ブレーキ制御部96と、を有している。図示は省略するが、ブレーキECU90は、CPU及びROMを備えている。ブレーキECU90のCPUは、ROMに記憶されている運動マネージャ用のプログラム及びブレーキ制御用のプログラムを実行することによって、運動マネージャ91及びブレーキ制御部96の機能を実現している。
【0029】
具体的には、
図3に示すように、ブレーキECU90のCPUは、ROMに記憶されているプログラムを実行することによって、受付工程S11と、調停工程S12と、生成工程S13と、制御工程S14と、を実行する。したがって、ブレーキECU90のCPUは、運動マネージャ91における受付部92、調停部93、生成部94として機能する。また、ブレーキECU90のCPUは、ブレーキ制御部96として機能する。
【0030】
ブレーキECU90のROMは、ブレーキ制御部96が制御対象とするブレーキ装置40のアクチュエータ44の種別情報TIを予め記憶している。種別情報TIは、車両10に搭載され得る複数種のブレーキ装置40のうちから、実際に車両10に搭載されているブレーキ装置40の種別を特定するための情報である。また、ブレーキECU90のROMは、各運動要求とその運動要求を実現するための動作要求の指示値とを対応付けた複数の指示値マップを記憶している。この指示値は、アクチュエータ44が出力する油圧の大きさを示す信号である。ブレーキECU90のROMは、種別情報TI毎の指示値マップを記憶している。
【0031】
図3に示すように、ブレーキECU90は、先進運転支援システムの機能を実現するために、先進安全ECU60から運動要求が入力されると、ブレーキ装置40の制御を開始する。ブレーキ装置40の制御を開始すると、先ず、ブレーキECU90は、受付工程S11を行う。受付工程S11では、受付部92が処理を行う。
【0032】
図2に示すように、受付部92は、先進安全ECU60から、個々のアプリケーション63に対応する運動要求を受け付け可能となっている。具体的には、各運動要求は、要求する制動力の大きさを示す信号である。また、上述したとおり、先進安全ECU60は、同時に複数のアプリケーション63を実行することもある。この場合、受付部92は、複数の運動要求を受け付けて、調停部93へ複数の運動要求を出力する。
【0033】
その後、
図3に示すように、ブレーキECU90は、処理を調停工程S12へ進める。調停工程S12では、調停部93が処理を行う。
図2に示すように、調停部93は、受付部92が受け付けた運動要求を調停する。調停部93は、受付部92が受け付けた運動要求が1つのみの場合には、その運動要求を選択する。一方、調停部93は、受付部92が受け付けた運動要求が複数ある場合には、最も制動力の大きくなる運動要求を選択することで、複数の運動要求を調停する。
【0034】
その後、
図3に示すように、ブレーキECU90は、処理を生成工程S13へ進める。生成工程S13では、生成部94が処理を行う。生成工程S13において、生成部94は、調停部93による調停結果に基づいて、車両10に搭載されるブレーキ制御部96に出力する動作要求の指示値を生成する。このとき、生成部94は、記憶部95の記憶しているアクチュエータ44の種別情報TI及びその種別情報TIに対応する指示値マップを用いて、動作要求の指示値を生成する。
【0035】
ここで、例えば調停部93による調停で、運動要求として第1予備制動が選択されたとする。同じ第1予備制動であっても、例えばアクチュエータ44の種別が異なれば、第1予備制動を実現するための指示値が異なることがある。例えば、「種別A」のアクチュエータ44で第1予備制動を実現するための指示値が「X値」であっても、「種別B」のアクチュエータ44で第1予備制動を実現するための指示値が「Y値」であることもある。そこで、生成部94は、種別情報TIに対応する指示値マップを特定する。そして、生成部94は、特定した指示値マップで、調停部93で調停された運動要求に対応する値を特定し、それを動作要求の指示値として生成する。
【0036】
その後、
図3に示すように、ブレーキECU90は、処理を制御工程S14へ進める。制御工程S14では、ブレーキ制御部96が処理を行う。
図2に示すように、ブレーキ制御部96は、生成部94が生成した動作要求の指示値を、ブレーキ装置40のアクチュエータ44に出力する。これにより、ブレーキ制御部96は、アクチュエータ44の駆動を通じて、ブレーキ装置40を制御する。その後、ブレーキECU90は、一連の処理を終了する。
【0037】
(実施形態の作用)
上記実施形態によれば、各アプリケーション63は、ブレーキ装置40のアクチュエータ44に対する具体的な指示値ではなく、複数種類の運動要求のうちのいずれかを、ブレーキECU90に出力する。運動マネージャ91は、ブレーキ装置40の種別に応じて、要求する運動要求を満足させるように、アクチュエータ44への動作要求の指示値を出力する。
【0038】
(実施形態の効果)
(1)上記実施形態によれば、記憶部95は、アクチュエータ44の種別情報TIを予め記憶している。そして、生成部94は、アクチュエータ44の種別情報TIを用いて、動作要求の指示値を生成する。そのため、アプリケーション63から受け付ける運動要求が、ブレーキ装置40の種類や構造などに合わせた具体的な指示値でなくてよく、予め定められた複数の運動要求のいずれかであればよい。よって、アプリケーション63の開発の際に、上記の運動要求に応じた統一した規格で開発を行えばよい。すなわち、アクチュエータ44の種類、構造毎に、適切な具体的な指示値を出力できるような個別のアプリケーション63を開発する必要はない。
【0039】
(2)上記実施形態によれば、アクチュエータ44は、ブレーキ装置40に含まれている。ブレーキ装置40は、先進運転支援システムの機能を実現する各アプリケーション63からの運動要求を受ける蓋然性がある。その上、ブレーキ装置40は、車両10の種類に応じて無数の種類が存在する。そのため、ブレーキ装置40を動作させることで運動要求を実現するアプリケーション63について、上記実施形態の構成を採用することは特に好適である。
【0040】
(3)上記実施形態によれば、アクチュエータ44は、油圧を出力するものである。また、アクチュエータ44への動作要求の指示値は、アクチュエータ44が出力する油圧の大きさを示す信号である。アクチュエータ44の出力が油圧である場合、ブレーキ装置40が出力する制動力又は予備制動による動作待ちの時間は、ブレーキ装置40の種類や構造に大きく影響を受ける。そのため、記憶部95がブレーキ装置40の種別情報TIを記憶していることの効果を得るうえで好適である。
【0041】
(4)上記実施形態によれば、調停部93は、複数の運動要求を受付部92が受け付けたときには、動作要求の指示値が示す油圧が最も大きくなる運動要求を選択することで、複数の運動要求を調停する。そのため、制動力が必要な場合にはより制動力が大きくなる運動要求を選択できる。また、予備制動の運動要求のみを受け付けている場合には、より動作待ちの時間が短くなる運動要求を選択できる。したがって、制動力が不足したり、動作待ちの時間が過度に長くなったりすることを防止できる。
【0042】
(5)運動要求で要求される動作待ちの時間とするようにブレーキ装置40を操作するための動作要求の指示値は、ブレーキ装置40の種類や構造などに応じて特に異なっている。したがって、アプリケーション63を開発するにあたっては、動作待ちの時間の長さが異なる予備制動を実現するには、制動力を発生させる本制動に比べて、より詳細なブレーキ装置40の種類や構造の情報が必要となる。具体的にはどの程度の動作要求の指示値であれば、ディスク41とブレーキパッド42との隙間がどの程度の大きさになるのかという対応関係は、ブレーキ装置40の種類や構造に強く依存する。上記実施形態によれば、アプリケーション63が運動要求の種類には、制動力がゼロである予備制動が複数含まれている。そして、記憶部95が記憶しているブレーキ装置40のアクチュエータ44の種別情報を用いて、生成部94は、予備制動についての運動要求について、アクチュエータ44へ要求する指示値を生成できる。よって、予備制動についての運動要求をする際、より大きくなり得るアプリケーション63の開発の負担を軽減できる。
【0043】
(その他の実施形態)
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0044】
・車両10は、内燃機関20に加えて、又は代えて、車両10の駆動源となるモータを備えていてもよい。この場合、制御装置50は、モータを制御対象とするモータECUを、エンジンECU70に加えて、又は代えて備えていてもよい。
【0045】
・ブレーキ装置40の種類や構造は、上記実施形態の構造に限られない。ブレーキ装置40のアクチュエータ44の種別情報TIを記憶部95が記憶していれば、運動マネージャ91はブレーキ装置40の種類や構造に併せた動作要求を生成できる。
【0046】
・アクチュエータ44は油圧を出力させるものに限られない。ブレーキ装置40の発生させる制動力などに合わせて、適宜異なるタイプに変更されればよい。この場合であっても、記憶部95がブレーキ装置40の種別情報TIを記憶していれば、生成部94は、適切な動作要求の出力値を生成できる。
【0047】
・上記実施形態では、ブレーキECU90に運動マネージャ91が含まれており、ブレーキ装置40の制御を例として説明したが、運動マネージャが含まれるECUはこれに限られない。例えば、運動マネージャは、ブレーキECU90に加えて、又は代えて、エンジンECU70及びステアリングECU80の少なくとも一方に備わっていてもよい。この場合、例えば、エンジンECU70に含まれる運動マネージャにおいては、当該運動マネージャの記憶部は、内燃機関20の各アクチュエータの種別情報を記憶していればよい。そして、当該運動マネージャの生成部は、当該記憶部が記憶している内燃機関20のアクチュエータの種別情報を用いて、動作要求の指示値を生成すればよい。
【0048】
・運動マネージャ91は、ブレーキ装置40の制御をする場合であっても、ブレーキ装置40に含まれる場合に限られない。例えば、運動マネージャ91は、先進安全ECU60に含まれてもよい。また例えば、制御装置50は、内燃機関20、操舵装置30、及びブレーキ装置40をまとめて管理する管理ECUを備えていてもよく、この場合、運動マネージャ91は、管理ECUに含まれていてもよい。
【0049】
・制御装置50は、運動マネージャ91を有する装置と、ブレーキ制御部96を有する装置と、に分かれていてもよい。つまり、受付工程S11と、調停工程S12と、生成工程S13と、を実行するCPUと、制御工程S14を実行するCPUと、が異なっていてもよい。
【0050】
・上記実施形態では、先進安全ECU60において、複数のアプリケーション63は、同一のCPU61で実行されるとしたが、これに限られない。個々のアプリケーション63は、異なるCPUによって実行されてもよい。
【0051】
・アプリケーション63は、上記実施形態で例示したアプリケーションに限られない。例えば、アプリケーション63は、車両10の速度が上限速度を超えないように制御するISA(Untelligent Speed Assistance)アプリケーションであってもよい。
【0052】
・アプリケーション63を実行することによって運動マネージャ91へ出力する運動要求は、制動力の大きさを示す信号に限られない。この運動要求は、運動要求の出力先であるECUの種類に応じて適宜に変更できる。例えば、操舵装置30への運動要求であれば、操舵角の大きさを示す信号にすればよい。
【0053】
・調停部93は、動作要求の出力値の大小に基づいて、運動要求を調停しなくてもよい。例えば、調停部93は、緊急度の高いアプリケーション63からの信号を選択するように調停してもよい。より具体的には、例えば、AEBアプリケーションと、LKAアプリケーションと、から運動要求を受付部92が受け付けたときには、緊急度の高いAEBアプリケーションからの運動要求を選択することで調停してもよい。
【0054】
・各アプリケーション63は、運動要求のうち、制動力の大きさがゼロより大きい場合には、要求加速度を運動要求として出力してもよい。つまり、この場合、制動力の大きさがゼロである第1予備制動~第3予備制動についての運動要求のみに、上記実施形態の技術を適用してもよい。この場合であって、予備制動についての運動要求をするアプリケーション63の開発の際の負担を軽減できる。
【0055】
・上記実施形態では、生成部94は、記憶部95の記憶している指示値マップを用いて、動作要求の指示値を生成したが、これに限られない。例えば、生成部94は、指示値マップの代わりに、基準値にアクチュエータ44の種別に応じた係数を乗算して、指示値を生成していてもよい。
【符号の説明】
【0056】
10…車両
20…内燃機関
30…操舵装置
40…ブレーキ装置
50…制御装置
60…先進安全ECU
61…CPU
62…ROM
63…アプリケーション
70…エンジンECU
80…ステアリングECU
90…ブレーキECU
91…運動マネージャ
92…受付部
93…調停部
94…生成部
95…記憶部
96…ブレーキ制御部
S11…受付工程
S12…調停工程
S13…生成工程