(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004801
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
G06F 1/20 20060101AFI20240110BHJP
F24F 3/044 20060101ALI20240110BHJP
F24F 5/00 20060101ALI20240110BHJP
F24F 7/06 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
G06F1/20 C
F24F3/044
F24F5/00 K
F24F7/06 B
G06F1/20 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104642
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】金子 研
(72)【発明者】
【氏名】田島 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】宮田 和幸
【テーマコード(参考)】
3L053
3L058
【Fターム(参考)】
3L053BB04
3L058BE08
(57)【要約】
【課題】複数の収容ラックの全体に対して均一に冷却空気を供給して、冷却対象機器を適切に冷却すること。
【解決手段】収容ラック2は、ラック設置領域13に複数配設され、冷却装置3は、第1方向X1においてラック設置領域13を挟んで対向する状態で第1方向X1の両端側に配設され、冷却空気供給部4は、ラック設置空間11の床下において冷却装置3からラック設置領域13に冷却空気を通流させる床下通流部41と、床下通流部41の冷却空気をラック設置空間11の床上に吹き出して収容ラック2に供給する床上吹出部42とが備えられ、ラック設置空間11の床下には、第1方向X1においてラック設置領域13の中央部に、第1方向X1と直交する第2方向X2に沿って延設されて、床下通流部41を第1方向X1の一方側と他方側とに区画する第1床下区画部61が備えられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却対象機器が収容される収容ラックと、
冷却装置にて生成された冷却空気を収容ラックに供給する冷却空気供給部と、
前記収容ラックに供給された空気を冷却装置に戻す空気還元部とが備えられ、
前記収容ラックは、ラック設置空間内において、第1方向の中央側領域に設定されたラック設置領域に複数配設され、
前記冷却装置は、第1方向においてラック設置領域を挟んで対向する状態で第1方向の両端側に配設され、
前記冷却空気供給部は、ラック設置空間の床下において冷却装置からラック設置領域に冷却空気を通流させる床下通流部と、ラック設置領域の床部に配設されて床下通流部の冷却空気をラック設置空間の床上に吹き出して収容ラックに供給する床上吹出部とが備えられ、
前記ラック設置空間の床下には、第1方向においてラック設置領域の中央部に、第1方向と直交する第2方向に沿って延設されて、床下通流部を第1方向の一方側と他方側とに区画する第1床下区画部が備えられている空調システム。
【請求項2】
前記収容ラックは、長尺な左右方向が第1方向に沿う姿勢で、第2方向で対向する収容ラックの前端部同士が間隔を隔てて複数並ぶ状態で配設され、
前記床上吹出部は、ラック設置領域の床部において、第2方向で収容ラックの前端部同士の間の間隙に相当する前端部間隙部位に配設され、第2方向で収容ラックの前端部同士の間の間隙を冷却空気供給空間としている請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記冷却装置は、第1方向の両端側の夫々において、第2方向で並ぶ状態で複数備えられ、
前記ラック設置空間の床下には、第1方向に沿って延設されて、第2方向で並ぶ複数の収容ラックに対応して床下通流部を複数の床下通流領域に区画する第2床下区画部が備えられている請求項2に記載の空調システム。
【請求項4】
前記冷却装置の数は、第2方向で対向する収容ラックの前端部同士の間の間隙である冷却空気供給空間の数よりも多数に設定され、
前記ラック設置空間の床下には、第1方向の両端部側に、第2床下区画部にて区画された複数の床下通流領域の間での冷却空気の通流を可能とする連通空間が備えられている請求項3に記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却対象機器が収容される収容ラックが備えられ、その収容ラックに冷却空気を供給することで、冷却対象機器を冷却させる空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
各種の情報処理装置が設置されるデータセンターやサーバールームでは、情報処理装置が収容される収容ラック(サーバーラックとも称する)が複数備えられており、その情報処理装置を冷却対象機器として冷却させることが求められている。そこで、空調システムとしては、冷却装置にて生成された冷却空気を収容ラックに供給する冷却空気供給部と、収容ラックに供給された空気を冷却装置に戻す空気還元部とが備えられているものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の空調システムでは、複数の収容ラックが、データセンターやサーバールームの室内空間の中央側に配設され、冷却装置が、複数の収容ラックを挟んで対向する状態で室内空間の両端部に配設されている。冷却空気供給部は、冷却装置からの冷却空気を室内空間の床下空間を通流させ、複数の収容ラックの間の床部から床上に冷却空気を吹き出して、冷却空気を収容ラックに供給している。空気還元部は、収容ラックに供給された空気を天井部から天井裏空間に供給して、天井裏空間を通流させて空気を冷却装置に戻している。
【0004】
このように、冷却空気供給部が、床下空間を利用して収容ラックに冷却空気を供給し、空気還元部が、天井裏空間を利用して冷却装置に空気を戻して、冷却装置から収容ラックに冷却空気を循環供給することで、収容ラックに収容された冷却対象機器を冷却している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の空調システムでは、冷却装置が、複数の収容ラックを挟んで対向する状態で室内空間の両端部に配設されているので、一方側の冷却装置から供給される冷却空気と他方側の冷却装置から供給される冷却空気とが室内空間の中央部等で衝突して、乱流が生じる可能性がある。
【0007】
収容ラックでは、例えば、収容される冷却対象機器の数や種類も異なることから、通常、冷却負荷の大きさは、収容ラックによって異なっている。冷却装置は、冷却対象となる収容ラックの冷却負荷を賄うように冷却空気の送風量等を制御しているので、一方側の冷却装置から供給される冷却空気の送風量と他方側の冷却装置から供給される冷却空気の送風量とが異なる場合がある。このような場合には、送風量の差によって冷却空気同士の衝突に伴う乱流が生じ易くなる。
【0008】
また、冷却空気は、床下空間を通流するので、コアンダ効果によって気流の減衰があまり期待できず、室内空間の中央部まで比較的早いスピードで通流して冷却空気同士が衝突することになり、この衝突によって乱流が生じ易くなる。
【0009】
このように、冷却空気の流れに乱流が生じると、複数の収容ラックの全体に対して均一に冷却空気を供給し難くなり、ホットスポットと呼ばれる規定値以上の高温域が発生する等、冷却対象機器を冷却でき難い状況となる。
【0010】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、複数の収容ラックの全体に対して均一に冷却空気を供給して、冷却対象機器を適切に冷却することができる空調システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1特徴構成は、冷却対象機器が収容される収容ラックと、
冷却装置にて生成された冷却空気を収容ラックに供給する冷却空気供給部と、
前記収容ラックに供給された空気を冷却装置に戻す空気還元部とが備えられ、
前記収容ラックは、ラック設置空間内において、第1方向の中央側領域に設定されたラック設置領域に複数配設され、
前記冷却装置は、第1方向においてラック設置領域を挟んで対向する状態で第1方向の両端側に配設され、
前記冷却空気供給部は、ラック設置空間の床下において冷却装置からラック設置領域に冷却空気を通流させる床下通流部と、ラック設置領域の床部に配設されて床下通流部の冷却空気をラック設置空間の床上に吹き出して収容ラックに供給する床上吹出部とが備えられ、
前記ラック設置空間の床下には、第1方向においてラック設置領域の中央部に、第1方向と直交する第2方向に沿って延設されて、床下通流部を第1方向の一方側と他方側とに区画する第1床下区画部が備えられている点にある。
【0012】
本構成によれば、ラック設置空間の床下には、第1方向においてラック設置領域の中央部に第1床下区画部が備えられ、床下通流部が第1方向の一方側と他方側とに区画されているので、第1方向の一方側に配設された冷却装置からの冷却空気は、区画された床下通流部の第1方向の一方側の領域を通流し、第1方向の他方側に配設された冷却装置からの冷却空気は、区画された床下通流部の第1方向の他方側の領域を通流することになる。これにより、第1方向の一方側に配設された冷却装置からの冷却空気と第1方向の他方側に配設された冷却装置からの冷却空気とが衝突することが防止されており、この衝突による乱流の発生を効果的に防止することができる。よって、乱流によって冷却空気の気流の乱れが生じることなく、ラック設置領域に配設された複数の収容ラックに対して均一に冷却空気を供給し易くなり、それら複数の収容ラックに収容される冷却対象機器を適切に冷却することができる。
【0013】
本発明の第2特徴構成は、前記収容ラックは、長尺な左右方向が第1方向に沿う姿勢で、第2方向で対向する収容ラックの前端部同士が間隔を隔てて複数並ぶ状態で配設され、
前記床上吹出部は、ラック設置領域の床部において、第2方向で収容ラックの前端部同士の間の間隙に相当する前端部間隙部位に配設され、第2方向で収容ラックの前端部同士の間の間隙を冷却空気供給空間としている点にある。
【0014】
本構成によれば、収容ラックが、長尺な左右方向が第1方向に沿う姿勢で配設されているので、冷却空気供給空間となる第2方向で対向する収容ラックの前端部同士の間の間隙が第1方向に沿って延びることになる。それに対して、冷却装置は、第1方向の両端側に配設されているので、第1方向の両端側から第1方向に沿って冷却空気を送風することになる。
【0015】
これにより、冷却空気供給空間が延びる方向と、冷却装置が冷却空気を送風する方向とを合致させることができるので、冷却空気供給空間の全体に対して効率よく且つ均一に冷却空気を供給し易くなり、収容ラックの全体に対して均一に冷却空気を供給し易くなる。
【0016】
本発明の第3特徴構成は、前記冷却装置は、第1方向の両端側の夫々において、第2方向で並ぶ状態で複数備えられ、
前記ラック設置空間の床下には、第1方向に沿って延設されて、第2方向で並ぶ複数の収容ラックに対応して床下通流部を複数の床下通流領域に区画する第2床下区画部が備えられている点にある。
【0017】
本構成によれば、第2床下区画部が、第2方向で並ぶ複数の収容ラックに対応して床下通流部を複数の床下通流領域に区画するので、第2方向で対向する収容ラックの前端部同士の間の間隙である複数の冷却空気供給空間と複数の床下通流領域とを対応付けることができる。これにより、第2方向に並ぶ複数の冷却装置の夫々に対して、どの床下通流領域に冷却空気を通流させるかを割り当てることができる。よって、収容ラックによって冷却負荷の大きさが異なる場合でも、その収容ラックに対応する床下通流領域への冷却空気の送風量等を床下通流領域毎で調整することができるので、収容ラックの冷却負荷に柔軟に対応しながら、第2方向で並ぶ複数の収容ラックに対して効果的な冷却空気を供給することができる。
【0018】
本発明の第4特徴構成は、前記冷却装置の数は、第2方向で対向する収容ラックの前端部同士の間の間隙である冷却空気供給空間の数よりも多数に設定され、
前記ラック設置空間の床下には、第1方向の両端部側に、第2床下区画部にて区画された複数の床下通流領域の間での冷却空気の通流を可能とする連通空間が備えられている点にある。
【0019】
本構成によれば、冷却装置の数は、冷却空気供給空間の数よりも多数であるので、冷却空気供給空間に冷却空気を供給するに当たり、冷却空気供給空間に対して冷却装置を1対1で割り当てると、予備の冷却装置が存在することになる。これにより、例えば、ある冷却装置が故障しても、その故障した冷却装置が担当していた冷却空気供給空間に対して予備の冷却装置にて冷却空気を供給することができる。このように、予備の冷却装置を備えておくことで、冷却空気の供給を、24時間休むことなく、常時行うことができるので、常時の冷却が求められるデータセンターやサーバールーム等において特に有効なものとなる。
【0020】
冷却空気供給空間に対して予備の冷却装置にて冷却空気を供給するに当たり、床下通流部が第2床下区画部にて複数の床下通流領域に区画されているので、供給対象の床下通流領域に対して、予備の冷却装置から冷却空気を通流できるようにしておく必要がある。
【0021】
そこで、本構成によれば、ラック設置空間の床下には、第1方向の両端部側に連通空間が備えられ、第2床下区画部にて区画された複数の床下通流領域の間で冷却空気が通流可能となっている。これにより、予備の冷却装置からの冷却空気は、連通空間を通して供給対象の床下通流領域に通流させることができ、供給対象の冷却空気供給空間に冷却空気を適切に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】ラック設置室及び機械室の床下における平面図
【
図5】第1方向視でのラック設置領域の要部を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る空調システムの実施形態について図面に基づいて説明する。
この空調システムは、
図1に示すように、各種の情報処理装置が設置されるデータセンターやサーバールーム等の冷却対象建物1に適用され、収容ラック2に収容される各種の情報処理装置等を冷却対象機器とし、冷却空気を収容ラック2に循環供給することで、冷却対象機器を冷却している。
【0024】
この空調システムは、情報処理装置等の冷却対象機器が収容される収容ラック2に加えて、
図3に示すように、冷却装置3にて生成された冷却空気を収容ラック2に供給する冷却空気供給部4と、
図4に示すように、収容ラック2に供給された空気を冷却装置3に戻す空気還元部5とが備えられている。
【0025】
冷却対象建物1では、
図1及び
図3に示すように、複数の収容ラック2が設置されるラック設置室11(ラック設置空間に相当する)と、複数の冷却装置3が設置される機械室12とが備えられている。機械室12は、
図1に示すように、第1方向X1でラック設置室11に隣接する隣室として備えられ、第1方向X1でラック設置室11を挟む状態で第1方向X1の両端側に配設されている。
【0026】
ここで、冷却対象建物1における方向について、収容ラック2を基準として設定しており、収容ラック2の左右方向を第1方向X1とし、収容ラック2の前後方向を第2方向X2とし、第1方向X1と第2方向X2とが直交する方向となっている。
【0027】
図1に示すように、ラック設置室11において第1方向X1の中央側領域がラック設置領域13に設定され、
図3に示すように、そのラック設置領域13の床上に複数の収容ラック2が配設されている。収容ラック2は、
図1に示すように、長尺な左右方向が第1方向X1に沿う姿勢で、第2方向X2で対向する収容ラック2の前端部21同士及び収容ラック2の後端部22同士が間隔を隔てて複数並ぶ状態で配設されている。
【0028】
図1に示すように、複数の収容ラック2(例えば、12個の収容ラック2)が、第2方向X2において、前端部21同士の間、及び、後端部22同士の間に、作業者等が通行可能な通路を形成する状態で間隔を隔てて配設されている。第2方向X2に間隔を隔てて配設された複数の収容ラック2を1つの列として、第1方向X1の中央部に、作業者等が通行可能な通路29を形成する状態で、第1方向X1の一方側と他方側とに1列ずつ配設されている。第1方向X1の中央部に形成される通路29は、冷却対象建物1における柱を配設するためのスペースとしても活用することができる。
【0029】
詳細な図示は省略するが、収容ラック2は、上下方向及び左右方向に並ぶ複数の収容部が備えられ、各収容部に冷却対象機器を収容可能としている。収容ラック2では、
図5に示すように、その前端部21から各収容部に冷却空気を供給して、各収容部に収容された冷却対象機器を冷却し、冷却後の空気(熱気)を収容ラック2の後端部22に排出している。これにより、第2方向X2において、収容ラック2の前端部21同士の間の通路がコールドアイル24として備えられ、収容ラック2の後端部22同士の間の通路がホットアイル25として備えられている。
【0030】
冷却空気供給部4は、
図3に示すように、ラック設置室11の床下において冷却空気を通流させる床下通流部41と、床下通流部41の冷却空気をラック設置室11の床上に吹き出す床上吹出部42とが備えられている。
【0031】
冷却装置3は、生成した冷却空気をラック設置室11の床下空間に送風しており、床下通流部41が、ラック設置室11の床下において冷却装置3から送風される冷却空気をラック設置領域13に通流させている。ラック設置室11の床下空間の全体が、床下通流部41として備えられている。
【0032】
床上吹出部42は、
図3に示すように、例えば、複数の孔部を有するパンチングメタル等により構成されており、床下通流部41の冷却空気をラック設置室11の床上に吹き出して収容ラック2に供給している。床上吹出部42は、ラック設置領域13の床部14において、第2方向X2で収容ラック2の前端部21同士の間の間隙に相当する前端部間隙部位23に配設されている(
図1において細かな点を付した領域を参照)。第2方向X2で収容ラック2の前端部21同士の間の通路となるコールドアイル24に対して、床上吹出部42を通して冷却空気が供給されており、コールドアイル24が冷却空気供給空間となっている。
【0033】
空気還元部5は、
図4に示すように、収容ラック2の冷却対象機器を冷却した冷却後の空気(以下、「熱気」と称する)をラック設置室11内において通流させる第1熱気通流部51と、その第1熱気通流部51の熱気をラック設置室11の天井裏において通流させる第2熱気通流部52とが備えられている。
【0034】
収容ラック2では、
図5に示すように、冷却対象機器を冷却して温度上昇した熱気をその後端部22から排出するので、第2方向X2で収容ラック2の後端部22同士の間の通路がホットアイル25として備えられている。このホットアイル25が、
図4及び
図5に示すように、ラック設置室11内において空気を通流させる第1熱気通流部51となっている。第1熱気通流部51では、収容ラック2の後端部22から排出される熱気を、ラック設置室11の天井部15に向けて通流させている。
【0035】
第2熱気通流部52は、
図4に示すように、ラック設置室11の天井部15に形成された第1連通部16を通して第1熱気通流部51(ホットアイル25)から供給される熱気を、天井裏空間を通流させ、ラック設置室11と機械室12との間の壁部18等に形成された第2連通部17を通して機械室12に供給している。第2熱気通流部52は、ラック設置室11の天井裏空間の全体にて構成されている。第1連通部16は、天井部15のホットアイル25に対応する領域において、収容ラック2の左右方向及び前後方向に間隔を隔てて複数備えられており、第2連通部17は、壁部18において、収容ラック2の前後方向に間隔を隔てて複数備えられている。
【0036】
図1に示すように、第2方向X2において、複数並べられた収容ラック2に対して、コールドアイル24とホットアイル25とが交互に配設されている。ホットアイル25の熱気が、コールドアイル24に流入するのを防止するために、
図4及び
図5に示すように、コールドアイル24とホットアイル25とに区画するアイル区画部26が備えられている。
【0037】
アイル区画部26は、
図4及び
図5に示すように、ホットアイル25を遮蔽することで、コールドアイル24とホットアイル25とに区画している。アイル区画部26は、第1方向X1でホットアイル25の両端部においてラック設置室11の床部14から天井部15に亘って遮蔽する第1遮蔽部27(
図4参照)と、ホットアイル25に対向する収容ラック2の上端部から天井部15に亘って遮蔽する第2遮蔽部28(
図5参照)とが備えられている。このように、第1遮蔽部27及び第2遮蔽部28にてホットアイル25を遮蔽するホットアイルキャッピングが採用されている。
【0038】
機械室12は、
図1に示すように、第1方向X1においてラック設置室11を挟んで両端部に配設されているので、冷却装置3は、第1方向X1においてラック設置室11を挟んで対向する状態で第1方向X1の両端側に配設されている。冷却装置3にて第1方向X1の両端側から冷却空気を送風することで、長さの長いコールドアイル24に対しても冷却空気を均一に供給することができる。情報処理装置等の冷却対象機器の収容量について、求められる収容量が大きい大規模なデータセンター等では、例えば、収容ラック2の左右方向の長さを長くして収容量を確保している。よって、コールドアイル24の長さが長くなるが、長さの長いコールドアイル24に対しても冷却空気を均一に供給することができることから、収容量が大きい大規模なデータセンター等に対しても有用な空調システムとなっている。
【0039】
冷却装置3は、
図4に示すように、第2熱気通流部52を介して機械室12に戻される熱気を吸気して、冷却空気を生成し、その生成した冷却空気を床下通流部41に送風している。冷却装置3は、熱気を冷却処理する冷却コイル等の冷却処理部31と、冷却空気を送風する送風ファン32とが備えられている。冷却処理部31には、冷却処理部31に熱媒体(冷水)を供給する熱媒体供給路33と、冷却処理部31に供給する熱媒体の流量を調整自在な流量調整弁34とが備えられている。
【0040】
冷却装置3では、
図3に示すように、流量調整弁34の開度を制御することで、生成する冷却空気の温度を調整可能となっており、送風ファン32の回転速度を制御することで、冷却空気の送風量を調整可能となっている。例えば、冷却装置3は、吹出温度センサT1の検出温度が設定温度になるように、流量調整弁34の開度を制御する吹出温度制御と、吹出温度センサT1と戻り温度センサT2との温度差が設定温度差になるように、送風ファン32の回転速度を制御する送風量制御とを行っている。吹出温度センサT1は、床下通流部41に配設されており、冷却装置3から床下通流部41に送風される冷却空気の温度を検出している。戻り温度センサT2は、機械室12の上方側に配設されており、第2熱気通流部52にて機械室12に戻される熱気の温度を検出している。
【0041】
冷却装置3は、
図1に示すように、第1方向X1の両端側の夫々において、第2方向X2で並ぶ状態で複数備えられている。吹出温度センサT1及び戻り温度センサT2(
図3参照)は、複数の冷却装置3の夫々に対応して備えられており、各冷却装置3は、個別に吹出温度制御と送風量制御とを行っている。例えば、1つの冷却装置3には、吹出温度センサT1と戻り温度センサT2とが1つずつ備えられており、各冷却装置3は、自己に対応する吹出温度センサT1と戻り温度センサT2との検出温度情報に基づいて、個別に吹出温度制御と送風量制御とを行っている。
【0042】
各冷却装置3から送風される冷却空気は、
図3に示すように、床下通流部41や床上吹出部42の冷却空気供給部4にて供給対象となる収容ラック2に供給され、その収容ラック2の冷却対象機器を冷却した熱気が、
図4に示すように、第1熱気通流部51や第2熱気通流部52の空気還元部5にて各冷却装置3に戻されている。これにより、複数の冷却装置3の夫々に対応して備えられる、複数の吹出温度センサT1の夫々及び複数の戻り温度センサT2の夫々は、各冷却装置3において冷却空気の供給対象となる収容ラック2の冷却状況を反映した温度情報を取得することになる。よって、複数の冷却装置3の夫々は、基本的には、冷却空気の供給対象となる収容ラック2の冷却負荷を賄うように、吹出温度制御と送風量制御とを行うことになる。
【0043】
収容ラック2では、例えば、収容される冷却対象機器の数や種類も異なることから、通常、冷却負荷の大きさは、収容ラック2によって異なっている。よって、複数の冷却装置3の夫々が、冷却空気の供給対象となる収容ラック2の冷却負荷を賄うように、吹出温度制御と送風量制御とを行うと、複数の冷却装置3の夫々における冷却空気の送風量が異なる場合がある。
【0044】
このとき、冷却装置3が、
図1及び
図3に示すように、第1方向X1の両端側に配設されているので、第1方向X1の一方側に配設された冷却装置3から送風される冷却空気と第1方向X1の他方側に配設された冷却装置3から送風される冷却空気との衝突によって、乱流が発生してしまい、コールドアイル24の全体に均一に冷却空気を供給することができなくなる。
【0045】
そこで、ラック設置室11の床下には、ラック設置室11の床下空間の全体を冷却空気の通流空間とする床下通流部41が備えられているが、
図1の太い点線にて示すように、その床下通流部41を第1方向X1で区画する第1床下区画部61が備えられている。ちなみに、
図1では、ラック設置室11及び機械室12の平面図を示しており、ラック設置室11の床下に存在する第1床下区画部61や第2床下区画部62を太い点線にて示している。
【0046】
第1床下区画部61は、
図2に示すように、第1方向X1においてラック設置領域13の中央部に、第2方向X2に沿って延設されて、床下通流部41を第1方向X1の一方側床下通流領域43(
図2において上方側領域)と他方側床下通流領域44(
図2において下方側領域)とに区画している。第1床下区画部61は、
図1の太い点線にて示すように、第1方向X1においてラック設置領域13の中央部に形成される通路29の下方側に配設されている。ちなみに、
図2では、ラック設置室11及び機械室12の床下における平面図を示しているが、ラック設置室11の床上に設置される収容ラック2を点線にて示している。
【0047】
第1床下区画部61は、床下通流部41(床下空間)の下端部から上端部に亘って上下方向に延びる板状体が備えられ、
図2に示すように、その板状体を第2方向X2の全長に亘って直線状に延設することで、床下通流部41を一方側床下通流領域43と他方側床下通流領域44とに区画している。
【0048】
このように、第1床下区画部61にて、床下通流部41を一方側床下通流領域43と他方側床下通流領域44とに区画することで、冷却空気同士の衝突による乱流の発生を防止して、コールドアイル24の全体に均一に冷却空気を供給することができる。
【0049】
床下通流部41には、
図1の太い点線にて示すように、第1方向X1で区画する第1床下区画部61だけでなく、第2方向X2で区画する第2床下区画部62が備えられている。第2床下区画部62は、
図2に示すように、第1方向X1に沿って延設されて、第2方向X2で並ぶ複数の収容ラック2に対応して床下通流部41を複数の床下通流領域45~48に区画している。
【0050】
第2床下区画部62は、第1床下区画部61と同様に、床下通流部41(床下空間)の下端部から上端部に亘って上下方向に延びる板状体が備えられ、
図2に示すように、その板状体を第1方向X1に沿って直線状に延設することで、床下通流部41を複数の床下通流領域45~48に区画している。
【0051】
第2床下区画部62は、
図2に示すように、第2方向X2に間隔を隔てて複数備えられており、各床下通流領域45~48に存在する収容ラック2の数が冷却装置3の制御単位に合わせた数になるように、床下通流部41を複数の床下通流領域45~48に区画している。第2床下区画部62は、
図1の太い点線にて示すように、コールドアイル24又はホットアイル25の下方側に配設されている。
【0052】
この実施形態では、
図2に示すように、第2方向X2に並ぶ状態で12個の収容ラック2が備えられているので、第2床下区画部62が、第2方向X2に間隔を隔てて3つ備えられ、各床下通流領域45~48に存在する収容ラック2の数が冷却装置3の制御単位に合致するように、床下通流部41を第1~第4床下通流領域45~48の4つの床下通流領域に区画している。
【0053】
このように、第2床下区画部62にて床下通流部41を第1~第4床下通流領域45~48に区画することで、第2方向X2に並ぶ複数の冷却装置3の夫々に対して、どの床下通流領域45~48に冷却空気を送風させるかを割り当てることができる。よって、冷却装置3が吹出温度制御と送風量制御とを行うに当たり、床下通流領域45~48を1つの単位(制御単位)として吹出温度制御と送風量制御とを行うことができるので、床下通流領域45~48毎に冷却空気の温度や送風量を調整することができる。
【0054】
例えば、第1床下通流領域45に対応する収容ラック2の冷却負荷と、第2床下通流領域46に対応する収容ラック2の冷却負荷との大きさが異なっていても、第1床下通流領域45に対応する収容ラック2の冷却負荷を賄えるだけの冷却空気が第1床下通流領域45に送風され、第2床下通流領域46に対しても、第2床下通流領域46に対応する収容ラック2の冷却負荷を賄えるだけの冷却空気が送風される。このように、空調システムでは、第2床下区画部62にて区画された第1~第4床下通流領域45~48毎に、冷却空気の温度や送風量を制御するゾーン制御を行うことができる。
【0055】
第2方向X2に並ぶ複数の冷却装置3の夫々に対して、どの床下通流領域45~48に冷却空気を送風させるかを割り当てるに当たり、例えば、1つのコールドアイル24に対して1つの冷却装置3を割り当てる形態を採用することが考えられる。しかしながら、ある冷却装置3が故障してしまうと、その冷却装置3に割り当てたコールドアイル24に対して冷却空気を適正に供給できなくなる。
【0056】
そこで、冷却装置3の数は、
図1に示すように、コールドアイル24の数よりも多数に設定されている。つまり、ラック設置領域13に設置された複数の収容ラック2の全体における全冷却負荷(各収容ラック2の冷却負荷の合計)を賄うために必要となる台数よりも多い台数の冷却装置3が設置されている。よって、複数の冷却装置3にて全冷却負荷を賄っている状態であっても、予備の冷却装置3が存在することになる。ある冷却装置3が故障しても、予備の冷却装置3を作動させることで、故障した冷却装置3が担当していたコールドアイル24にも冷却空気を供給することができ、そのコールドアイル24に対向する収容ラック2の冷却負荷を賄うことができる。
【0057】
しかしながら、
図2を参照すると、第2床下区画部62にて区画された複数の床下通流領域45~48の間での冷却空気の通流が全く阻止されていると、冷却装置3が送風可能な床下通流領域45~48が割り当てたものだけに限られることになり、別の床下通流領域45~48に冷却空気を送風することができない。
【0058】
そこで、第2床下区画部62は、
図2に示すように、第1方向X1の全長に亘って床下通流部41を区画しているのではなく、第2床下区画部62にて区画された複数の床下通流領域45~48の間での冷却空気の通流を可能とする連通空間49が備えられている。例えば、連通空間49が第1方向X1の途中部位に配設されていると、冷却装置3から送風された冷却空気が割り当てた床下通流領域45~48を途中まで通流したのち、連通空間49を通して別の床下通流領域45~48に通流することになり、各床下通流領域45~48における冷却空気の流れを乱し易くなる。そこで、連通空間49は、冷却装置3の配設箇所に近接する第1方向X1の両端部側に備えられている。冷却装置3から送風される冷却空気は、直ぐに、割り当てた床下通流領域45~48だけでなく、別の床下通流領域45~48にも通流されることになり、各床下通流領域45~48における冷却空気の流れが乱れるのを抑制しながら、別の床下通流領域45~48にも冷却空気を通流させることができる。
【0059】
このようにして、冷却装置3の数をコールドアイル24の数よりも多数に設定するとともに、連通空間49を備えることで、基本的には、第2床下区画部62にて区画された第1~第4床下通流領域45~48毎に冷却空気の温度や送風量を制御するゾーン制御を行いながら、冷却装置3の故障等の不都合が生じても、複数の床下通流領域45~48の間での冷却空気の通流を許容して、ラック設置領域13に設置された複数の収容ラック2の全体に対して冷却空気を適切に供給することができ、複数の収容ラック2の全体における全冷却負荷を賄うことができる。
【0060】
複数の冷却装置3をどのように運転されるかについては、全ての冷却装置3を常時作動させておくこともできるが、例えば、全ての冷却装置3を作動状態とするのではなく、作動停止用設定台数だけ冷却装置3を作動停止状態とすることができる。これにより、作動停止状態の冷却装置3に対してメンテナンス作業を行うことができ、冷却装置3の故障の発生を未然に防止することができる。
【0061】
冷却装置3を作動停止状態とする場合には、作動停止状態とする冷却装置3を、固定とするのではなく、変更条件が満たされる毎に変更させることができる。例えば、設定時間が経過することを変更条件に設定すると、作動停止状態とする冷却装置3を定期的に順番に変更させることができる。また、どの冷却装置3を作動停止状態とするかについては、設置箇所や作動時間等に応じて予め選択条件を設定しておき、その選択条件に基づいて、作動停止状態とする冷却装置3を選択することができる。例えば、全ての冷却装置3の作動時間が均一になるように選択条件を設定することで、作動時間の偏りがなく、冷却装置3の故障の発生を極力抑制することができる。
【0062】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、夫々単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0063】
(1)上記実施形態では、床下通流部41を第1方向X1で複数の領域に区画する第1床下区画部61に加えて、床下通流部41を第2方向X2で複数の領域に区画する第2床下区画部62が備えられているが、第2床下区画部62を省略することができる。
【0064】
(2)上記実施形態では、ホットアイル25の熱気がコールドアイル24に流入するのを防止するために、ホットアイル25を遮蔽する第1遮蔽部27及び第2遮蔽部28を備えて、ホットアイルキャッピングを採用しているが、逆に、コールドアイル24を遮蔽する遮蔽部を備えて、コールドアイルキャッピングを採用することもできる。
【0065】
(3)上記実施形態では、収容ラック2の配設の仕方について、長尺な左右方向が第1方向X1に沿う姿勢で、第2方向X2で間隔を隔てて複数並ぶ状態で配設しているが、逆に、長尺な左右方向が第2方向X2に沿う姿勢で、第1方向X1で間隔を隔てて複数並ぶ状態で配設することもでき、収容ラック2をどのように配設するかは適宜変更が可能である。
【0066】
(4)上記実施形態では、収容ラック2を設置するラック設置室11と、冷却装置3を設置する機械室12とを別々の部屋として備えられているが、収容ラック2及び冷却装置3を同じ部屋(同じ空間)に設置することもできる。
【符号の説明】
【0067】
2 収容ラック
3 冷却装置
4 冷却空気供給部
5 空気還元部
11 ラック設置室(ラック設置空間)
12 機械室
13 ラック設置領域
23 前端部間隙部位
24 コールドアイル(冷却空気供給空間)
41 床下通流部
42 床上吹出部
45 第1床下通流領域
46 第2床下通流領域
47 第3床下通流領域
48 第4床下通流領域
49 連通空間
61 第1床下区画部
62 第2床下区画部