(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048011
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】ソレノイド
(51)【国際特許分類】
H01F 7/06 20060101AFI20240401BHJP
H01F 7/126 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
H01F7/06 J
H01F7/16 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153830
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】522381236
【氏名又は名称】石坂電器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】須賀 竜一
(72)【発明者】
【氏名】石坂 剛司
【テーマコード(参考)】
5E048
【Fターム(参考)】
5E048AB01
5E048AD02
5E048CB07
(57)【要約】
【課題】シール部材の防水性を向上できるソレノイドを提供する。
【解決手段】ソレノイド33を構成するモールドコイル34は、コイル34Aと、ボビン34Bと、樹脂部34Cと、を備えている。モールドコイル34の内周側には、ハウジング36が配置されている。ハウジング36は、カバー51により覆われている。カバー51の嵌合筒部51Aとモールドコイル34の樹脂部34Cとの間には、これらの間をシールするOリング52が設けられている。Oリング52は、カバー51に設けられたシール溝51Dに装着されている。シール溝51Dの軸方向端51D1,51D2は、何れも樹脂部34Cの円筒部34C1と対向する位置に形成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソレノイドであって、該ソレノイドは、
環状に巻き付けられ、通電により磁力を発生するコイルと、
前記コイルが巻回されるボビンと、
前記ボビンの内周に配置され、前記コイルの巻回軸線方向に延び、かつ、一端側が開口した収納部と、
前記収納部に、前記コイルの巻回軸線方向に移動可能に設けられた可動子と、
前記収納部の開口と対向する位置に設けられた固定子と、
前記ボビンを覆う樹脂部と、
前記収納部を覆うカバーと、
前記カバーに設けられるシール溝および該シール溝に装着されるシール部材と、
を有し、
前記シール溝の軸方向端は、何れも前記樹脂部と対向する位置に形成されるソレノイド。
【請求項2】
前記ボビンの軸方向の一端には、環状凸部が形成される請求項1に記載のソレノイド。
【請求項3】
前記ボビンの内周であって、前記シール部材よりも軸方向の他端側には、周方向に延びる凸部と凹部とを有する突起部が設けられる請求項1に記載のソレノイド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば減衰力調整式緩衝器の減衰力調整機構に用いられるソレノイドに関する。
【背景技術】
【0002】
4輪自動車等の車両は、車体(ばね上)側と各車輪(ばね下)側との間に緩衝器(ダンパ)が設けられている。このような車両の緩衝器として、走行条件、車両の挙動等に応じて減衰力を可変に調整する減衰力調整式油圧緩衝器(減衰力調整式緩衝器)が知られている。減衰力調整式油圧緩衝器は、車両のセミアクティブ式サスペンションを構成している。
【0003】
減衰力調整式油圧緩衝器は、例えば、減衰力調整バルブの開弁圧を減衰力可変アクチュエータ(減衰力調整機構)により調整することで、発生減衰力を可変に調整する。減衰力可変アクチュエータとしては、例えば、ソレノイドが用いられている。ここで、特許文献1には、コイルと、コイルが巻回されたボビンと、ボビンの内周側に配置され一端側が開口した収納部と、収納部内にコイルの巻回軸線方向に移動可能に設けられた可動子と、収納部の開口と対向する位置に設けられた固定子と、収納部の開口とは軸方向の反対側を覆うカバーと、を備えたソレノイドが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のソレノイドは、カバーにシール溝が設けられており、このシール溝にシール部材(Oリング)が装着されている。この場合、シール溝は、ボビンとこのボビンを覆う樹脂部(外装樹脂)との境界に対向している。即ち、シール溝の軸方向の一方(シール溝を構成する一対の側壁のうちの可動子側の側壁の周縁)は、ボビンと対向している。このため、シール溝に装着されたシール部材は、ボビンと樹脂部との境界に当接し、シール部材の耐久性の低下に繋がる可能性がある。また、ボビンと樹脂部との境界に段差がある場合には、シール部材の密着性の低下、シール部材と段差との接触による損傷に繋がる可能性もあり、防水性が低下する可能性がある。そして、防水性を十分に確保できなくなった場合には、例えば水の浸入による短絡に繋がる可能性がある。
【0006】
本発明の一実施形態の目的は、シール部材の防水性を向上できるソレノイドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態は、ソレノイドであって、該ソレノイドは、環状に巻き付けられ、通電により磁力を発生するコイルと、前記コイルが巻回されるボビンと、前記ボビンの内周に配置され、前記コイルの巻回軸線方向に延び、かつ、一端側が開口した収納部と、前記収納部に、前記コイルの巻回軸線方向に移動可能に設けられた可動子と、前記収納部の開口と対向する位置に設けられた固定子と、前記ボビンを覆う樹脂部と、前記収納部を覆うカバーと、前記カバーに設けられるシール溝および該シール溝に装着されるシール部材と、を有し、前記シール溝の軸方向端は、何れも前記樹脂部と対向する位置に形成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、シール部材の防水性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態によるソレノイドが組込まれた減衰力調整式緩衝器を示す縦断面図である。
【
図2】
図1中の減衰力調整機構を示す拡大断面図である。
【
図3】
図2中のソレノイドを示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態によるソレノイドを、4輪自動車等の車両に組込まれる減衰力調整式緩衝器の減衰力調整機構に用いた場合を例に挙げ、添付図面を参照しつつ説明する。
【0011】
まず、本実施の形態によるソレノイド33が組込まれた減衰力調整式油圧緩衝器1について説明する。
図1において、減衰力調整式油圧緩衝器1(以下、緩衝器1という)は、ソレノイド33を駆動源とする減衰力調整機構17を備えている。即ち、減衰力調整式緩衝器としての緩衝器1は、シリンダとしての外筒2および内筒4と、ピストン5と、ピストンロッド8と、減衰力調整機構17とを含んで構成されている。
【0012】
油圧緩衝器である緩衝器1は、外殻をなす有底筒状の外筒2を備えている。外筒2の下端側は、ボトムキャップ3により溶接手段等を用いて閉塞されている。外筒2の上端側は、径方向内側に屈曲されたかしめ部2Aとなっている。かしめ部2Aと内筒4との間には、ロッドガイド9とシール10が設けられている。一方、外筒2の下部側には、中間筒12の接続口12Cと同心に開口2Bが形成されている。外筒2の下部側には、開口2Bと対向して減衰力調整機構17が取付けられている。ボトムキャップ3には、例えば車両の車輪側に取付けられる取付アイ3Aが設けられている。
【0013】
外筒2内には、外筒2と同軸上に内筒4が設けられている。内筒4の下端側は、ボトムバルブ13に嵌合して取付けられている。内筒4の上端側は、ロッドガイド9に嵌合して取付けられている。シリンダとしての外筒2および内筒4内には、作動液(作動流体)としての油液(オイル)が封入されている。作動液としては油液(オイル)に限らず、例えば添加剤を混在させた水等でもよい。
【0014】
内筒4と外筒2との間には、環状のリザーバ室Aが形成されている。リザーバ室A内には、油液と共にガスが封入されている。このガスは、大気圧状態の空気であってもよく、また圧縮された窒素ガス等の気体を用いてもよい。リザーバ室Aは、ピストンロッド8の進入および退出を補償する。内筒4の長さ方向(軸方向)の途中位置には、ロッド側油室Bを環状油室Dに常時連通させる油穴4Aが径方向に穿設されている。
【0015】
ピストン5は、内筒4内に摺動可能に設けられている。ピストン5は、内筒4内に挿入されており、内筒4内をロッド側油室B(ロッド側室)とボトム側油室C(ボトム側室)との2室に画成(区画)している。ピストン5には、ロッド側油室Bとボトム側油室Cとを連通可能とする油路5A,5Bがそれぞれ複数個、周方向に離間して形成されている。
【0016】
ここで、ピストン5の下端面には、伸長側のディスクバルブ6が設けられている。伸長側のディスクバルブ6は、ピストンロッド8の伸長行程でピストン5が上向きに摺動変位するときに、ロッド側油室B内の圧力がリリーフ設定圧を越えると開弁し、このときの圧力を、各油路5Aを介してボトム側油室C側にリリーフする。リリーフ設定圧は、減衰力調整機構17がハードに設定されたときの開弁圧より高い圧に設定されている。
【0017】
ピストン5の上端面には、ピストンロッド8の縮小行程でピストン5が下向きに摺動変位するときに開弁し、これ以外のときには閉弁する縮み側逆止弁7が設けられている。逆止弁7は、ボトム側油室C内の油液がロッド側油室Bに向けて各油路5B内を流通するのを許し、これとは逆向きに油液が流れるのを阻止する。逆止弁7の開弁圧は、減衰力調整機構17がソフトに設定されたときの開弁圧より低い圧に設定され、実質的に減衰力を発生しない。この実質的に減衰力を発生しないとは、ピストン5やシール10のフリクション以下の力であり、車の運動に対し影響しない。
【0018】
ピストンロッド8は、内筒4内を軸方向(
図1の上下方向)に延びている。ピストンロッド8の下端側は、内筒4内に挿入されている。ピストンロッド8は、ナット8A等によりピストン5に固着して設けられている。ピストンロッド8の上端側は、ロッドガイド9を介して外筒2および内筒4の外部に突出している。即ち、ピストンロッド8は、一側(一端)となる下側(下端)がピストン5に連結されて他側(他端)となる上側(上端)が内筒4および外筒2の外部へ延びている。なお、ピストンロッド8の下端をさらに延ばしてボトム部(例えば、ボトムキャップ3)側から外向きに突出させ、所謂、両ロッドとしてもよい。
【0019】
内筒4の上端側には、段付円筒状のロッドガイド9が設けられている。ロッドガイド9は、内筒4の上側部分を外筒2の中央に位置決めすると共に、その内周側でピストンロッド8を軸方向に摺動可能にガイドしている。ロッドガイド9と外筒2のかしめ部2Aとの間には、環状のシール10が設けられている。シール10は、例えば、中心にピストンロッド8が挿通される孔が設けられた金属製の円輪板にゴム等の弾性材料を焼き付けることにより構成されている。シール10は、弾性材料の内周がピストンロッド8の外周側に摺接することにより、ピストンロッド8との間をシールする。
【0020】
シール10は、下面側にロッドガイド9と接触するように延びるチェック弁としてのリップシール10Aが形成されている。リップシール10Aは、油溜め室11とリザーバ室Aとの間に配置されている。リップシール10Aは、油溜め室11内の油液等がロッドガイド9の戻し通路9Aを介してリザーバ室A側に向け流通するのを許し、逆向きの流れを阻止する。
【0021】
外筒2と内筒4との間には、筒体からなる中間筒12が配設されている。中間筒12は、例えば、内筒4の外周側に上下の筒状シール12A,12Bを介して取付けられている。中間筒12は、内筒4の外周側を全周にわたって取囲むように延びた環状油室Dを内部に形成している。環状油室Dは、リザーバ室Aとは独立した油室となっている。環状油室Dは、内筒4に形成した径方向の油穴4Aによりロッド側油室Bと常時連通している。環状油室Dは、ピストンロッド8の移動によって作動液体の流れが生じる流路の一部を構成している。中間筒12の下端側には、減衰力調整バルブ18の接続管体20が取付けられる接続口12Cが設けられている。
【0022】
ボトムバルブ13は、内筒4の下端側に位置してボトムキャップ3と内筒4との間に設けられている。ボトムバルブ13は、ボトムキャップ3と内筒4との間でリザーバ室Aとボトム側油室Cとを仕切る(区画する)バルブボディ14と、バルブボディ14の下面側に設けられた縮小側のディスクバルブ15と、バルブボディ14の上面側に設けられた伸び側逆止弁16と、により構成されている。バルブボディ14には、リザーバ室Aとボトム側油室Cとを連通可能とする油路14A,14Bがそれぞれ周方向に間隔をあけて形成されている。
【0023】
縮小側のディスクバルブ15は、ピストンロッド8の縮小行程でピストン5が下向きに摺動変位するときに、ボトム側油室C内の圧力がリリーフ設定圧を越えると開弁し、このときの圧力を、各油路14Aを介してリザーバ室A側にリリーフする。リリーフ設定圧は、減衰力調整機構17がハードに設定されたときの開弁圧より高い圧に設定されている。
【0024】
伸び側逆止弁16は、ピストンロッド8の伸長行程でピストン5が上向きに摺動変位するときに開弁し、これ以外のときには閉弁する。逆止弁16は、リザーバ室A内の油液がボトム側油室Cに向けて各油路14B内を流通するのを許し、これとは逆向きに油液が流れるのを阻止する。逆止弁16の開弁圧は、減衰力調整機構17がソフトに設定されたときの開弁圧より低い圧に設定され、実質的に減衰力を発生しない。
【0025】
次に、緩衝器1の発生減衰力を可変に調整するための減衰力調整機構17について、
図1に加えて、
図2も参照しつつ説明する。
【0026】
減衰力調整機構17は、シリンダ(内筒4)内のピストン5の摺動によって生じる作動液体(油液)の流れを制御して減衰力を発生させると共に、緩衝器1の発生減衰力を可変に調整する。なお、
図2の減衰力調整機構17は、ソレノイド33のコイル34Aに外部から通電(例えば、ハードな減衰力を発生させる制御)を行うことにより、アマチュア48、作動ピン49およびパイロット弁体32が
図2の左側に移動した状態を示している。換言すれば、
図2の減衰力調整機構17は、パイロット弁体32がパイロットボディ26の弁座部26Eに着座した閉弁状態を示している。
【0027】
図1に示すように、減衰力調整機構17は、その基端側(
図1の左端側)がリザーバ室Aと環状油室Dとの間に介在して配置され、先端側(
図1の右端側)が外筒2の下部側から径方向外向きに突出するように設けられている。減衰力調整機構17は、環状油室Dからリザーバ室Aへの油液の流通を、減衰力調整バルブ18(メインバルブ23、パイロット弁体32)により制御することで、減衰力を発生する。また、減衰力調整バルブ18(メインバルブ23、パイロット弁体32)の開弁圧を、減衰力可変アクチュエータとして用いられるソレノイド33で調整することにより、発生減衰力を可変に調整する。
【0028】
このように、減衰力調整機構17は、内筒4内のピストン5の摺動によって生じる作動流体(油液)の流れを制御して減衰力を発生させる。このために、減衰力調整機構17は、減衰力調整バルブ18と、ソレノイド33とを含んで構成されている。減衰力調整バルブ18は、環状油室Dからリザーバ室Aへの油液の流通を可変に制御することにより、ハードまたはソフトな特性の減衰力を発生させる。減衰力調整バルブ18は、ソレノイド33によって駆動される。
【0029】
即ち、減衰力調整バルブ18は、ソレノイド33によって開閉弁動作が調整されるバルブ(弁)であり、ピストンロッド8の移動(伸縮)によって作動液体の流れが生じる流路(例えば、環状油室Dとリザーバ室Aとの間)に設けられている。ソレノイド33は、減衰力調整バルブ18(パイロット弁体32、延いては、メインバルブ23)の開閉弁動作を調整する。この場合、減衰力調整バルブ18(パイロット弁体32、延いては、メインバルブ23)の開弁圧は、減衰力可変アクチュエータとして用いられるソレノイド33により調整され、これによって、発生減衰力はハードまたはソフトな特性に可変に制御される。
【0030】
ここで、
図1および
図2に示すように、減衰力調整バルブ18は、バルブケース19と、接続管体20と、バルブ部材21と、を含んで構成されている。バルブケース19は、略円筒状に形成されており、その基端側が外筒2の開口2Bの周囲に固着され、先端側が外筒2から径方向外向に突出している。接続管体20は、基端側が中間筒12の接続口12Cに固定されると共に、先端側が環状のフランジ部20Aとなってバルブケース19の内側に隙間をもって配設されている。バルブ部材21は、接続管体20のフランジ部20Aに当接している。
【0031】
図2に示すように、バルブケース19の基端側は、径方向内側に向けて延びる環状の内側フランジ部19Aとなっている。バルブケース19の先端側は、バルブケース19とソレノイド33のヨーク39(一側筒部39G)とを結合するロックナット53が螺着される雄ねじ部19Bとなっている。バルブケース19の内周面とバルブ部材21の外周面との間、さらに、バルブケース19の内周面とパイロットボディ26等の外周面との間は、リザーバ室Aに常時連通する環状の油室19Cとなっている。なお、バルブケース19とソレノイド33は、ロックナット53で結合する他、例えば、バルブケースの先端側をソレノイドのヨークにかしめ付ける構成(ロックナットを用いない構成)としてもよい。
【0032】
接続管体20の内側は、一方側が環状油室Dに連通し、他方側がバルブ部材21の位置まで延びる油路20Bとなっている。また、接続管体20のフランジ部20Aとバルブケース19の内側フランジ部19Aとの間には、円環状のスペーサ22が挟持状態で設けられている。スペーサ22には、油室19Cとリザーバ室Aとを連通するため径方向の油路となる切欠き22Aが、放射状に延びて複数個設けられている。なお、本実施形態では、スペーサ22に油路を形成するための切欠き22Aを設ける構成とした。しかし、スペーサ22に代えて、バルブケース19の内側フランジ部19Aに油路を形成するための切欠き(溝)を放射状に設けてもよい。
【0033】
バルブ部材21には、径方向の中心に位置して軸方向に延びる中心孔21Aが設けられている。また、バルブ部材21には、中心孔21Aの周囲に周方向に離間して複数の油路21Bが設けられている。各油路21Bは、その一方側(
図1および
図2の左側)が接続管体20の油路20B側に常時連通している。また、バルブ部材21の他方側(
図1および
図2の右側)の端面には、油路21Bの他側開口を取囲むように形成された環状凹部21Cと、この環状凹部21Cの径方向外側に位置してメインバルブ23が離着座する環状弁座21Dとが設けられている。バルブ部材21の各油路21Bは、環状油室Dに連通した接続管体20の油路20Bと、リザーバ室Aに連通したバルブケース19の油室19Cとの間で、メインバルブ23の開度に応じた流量の圧油が流通する流路となる。
【0034】
メインバルブ23は、ディスクバルブにより構成されている。メインバルブ23は、内周側がバルブ部材21とパイロットピン24の大径部24Aとの間に挟持されている。メインバルブ23は、外周側がバルブ部材21の環状弁座21Dに離着座する。メインバルブ23の背面側の外周部には、弾性シール23Aが焼付け等の手段で固着されている。メインバルブ23は、バルブ部材21の油路21B側(環状油室D側)の圧力を受けて環状弁座21Dから離座することにより開弁する。これにより、バルブ部材21の油路21B(環状油室D側)は、油室19C(リザーバ室A側)にメインバルブ23を介して連通され、このときに矢印Y方向に流れる圧油の量(流量)は、メインバルブ23の開度に応じて可変に調整される。
【0035】
パイロットピン24は、段付円筒状に形成されており、軸方向中間部に環状の大径部24Aが設けられている。パイロットピン24は、内周側に軸方向に延びる中心孔24Bを有している。中心孔24Bの一端部(接続管体20側の端部)には、小径孔(オリフィス24C)が形成されている。パイロットピン24は、一端側(
図1および
図2の左端側)がバルブ部材21の中心孔21Aに圧入されている。この状態で、パイロットピン24の大径部24Aは、バルブ部材21との間でメインバルブ23を挟持している。
【0036】
パイロットピン24の他端側(
図1および
図2の右端側)は、パイロットボディ26の中心孔26Cに嵌合している。パイロットボディ26の中心孔26Cとパイロットピン24の他端側との間には、軸方向に延びる油路25が形成されている。この油路25は、メインバルブ23とパイロットボディ26との間に形成される背圧室27に連通している。言い換えると、パイロットピン24の他端側の側面には、軸方向に延びる油路25が周方向に複数設けられ、その他の周方向位置は、パイロットボディ26の中心孔26Cに圧入されている。
【0037】
パイロットボディ26は、略有底筒状体として形成されており、内側に段付き穴が形成された円筒部26Aと、該円筒部26Aを塞ぐ底部26Bと、を有している。パイロットボディ26の底部26Bには、パイロットピン24の他端側が嵌合される中心孔26Cが設けられている。パイロットボディ26の底部26Bの一端側(
図1および
図2の左端側)には、外径側に位置して全周にわたってバルブ部材21側に突出する突出筒部26Dが一体に設けられている。突出筒部26Dの内周面には、メインバルブ23の弾性シール23Aが液密に嵌合しており、これにより、メインバルブ23とパイロットボディ26との間に背圧室27を形成している。背圧室27は、メインバルブ23に対して閉弁方向、即ち、メインバルブ23をバルブ部材21の環状弁座21Dに着座させる方向に押圧する圧力(内圧、パイロット圧)を発生させる。
【0038】
パイロットボディ26の底部26Bの他端側(
図1および
図2の右端側)には、パイロット弁体32が離着座する弁座部26Eが、中心孔26Cを囲むように設けられている。また、パイロットボディ26の円筒部26Aの内側には、パイロット弁体32をパイロットボディ26の弁座部26Eから離れる方向に付勢するリターンばね28、ソレノイド33が非通電状態のとき(パイロット弁体32が弁座部26Eから最も離れたとき)のフェールセーフバルブを構成するディスクバルブ29、中心側に油路30Aが形成された保持プレート30等が配設されている。
【0039】
パイロットボディ26の円筒部26Aの開口端には、この円筒部26Aの内側にリターンばね28、ディスクバルブ29、保持プレート30等を配設した状態で、キャップ31が嵌合固定される。キャップ31には、例えば周方向で離間した4個所位置に切欠き31Aが形成されている。
図2に矢印Xで示すように、切欠き31Aは、保持プレート30の油路30Aを通じてソレノイド33側に流れた油液を油室19C(リザーバ室A側)に流通させる流路となっている。
【0040】
パイロット弁体32は、パイロットボディ26と共にパイロットバルブ(制御弁)を構成している。パイロット弁体32は、段付円筒状に形成されている。パイロット弁体32の先端部、即ち、パイロットボディ26の弁座部26Eに離着座する先端部は、先細りのテーパ状となっている。パイロット弁体32の内側には、ソレノイド33の作動ピン49が嵌合固定されており、ソレノイド33への通電に応じて、パイロット弁体32の開弁圧が調節される。
【0041】
即ち、制御弁としてのパイロットバルブ(パイロットボディ26およびパイロット弁体32)は、ソレノイド33の作動ピン49(より具体的には、作動ピン49に固定されたアマチュア48)の軸方向の移動により制御される。パイロット弁体32の基端側には、ばね受となるフランジ部32Aが全周にわたって形成されている。フランジ部32Aは、ソレノイド33が非通電状態のとき、即ち、パイロット弁体32が弁座部26Eから最も離間する全開位置まで変位したときに、ディスクバルブ29の内周部と当接することにより、フェールセーフバルブを構成している。
【0042】
次に、減衰力調整バルブ18と共に減衰力調整機構17を構成するソレノイド33について、
図1および
図2に加えて、
図3も参照しつつ説明する。なお、
図3は、
図2の左右方向の右側を上側にして符号を付している。即ち、
図1および
図2の左右方向は、
図3および
図4の上下方向に対応する。
【0043】
ソレノイド33は、減衰力調整機構17の減衰力可変アクチュエータとして減衰力調整機構17に組込まれている。即ち、ソレノイド33は、減衰力調整バルブ18の開閉弁動作を調整するため減衰力調整式緩衝器に用いられる。ソレノイド33は、モールドコイル34と、収納部(磁性部材)となるハウジング36と、ケース部となるヨーク39と、固定子(固定鉄心)となるアンカ41と、接合部(非磁性リング)となるシリンダ44と、可動子(可動鉄心)となるアマチュア48と、軸部となる作動ピン49と、カバー部となるカバー51と、を備えている。
【0044】
モールドコイル34は、ボビン34B(コイルボビン)の周囲にコイル34Aを巻回した状態で、これらを熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂等の樹脂部34Cで一体的に覆う(モールド成形する)ことにより略円筒状に形成されている。樹脂部34Cは、樹脂部材であり、コイル34Aの外装樹脂に対応する。モールドコイル34の周方向の一部には、軸方向または径方向外側に突出するケーブル取出部34Eが設けられている。ケーブル取出部34Eには、電線ケーブル(図示せず)が接続される。モールドコイル34のコイル34Aは、ボビン34Bの周囲に環状に巻き付けられ、外部からのケーブルを通じた電力供給(通電)により、電磁石となって磁界(磁力)を発生する。
【0045】
モールドコイル34の樹脂部34Cのうち、ヨーク39(環状部39B)と対向する側面(軸方向一側の端面)には、シール溝34Dが全周にわたって形成されている。シール溝34D内には、Oリング35が装着されている。Oリング35は、モールドコイル34とヨーク39(環状部39B)との間を液密にシールする。これにより、雨水や泥水を含むダストがヨーク39とモールドコイル34との間を介してヨーク39の筒状突起部39C側に侵入するのを防ぐことができる。
【0046】
ここで、本実施形態で採用するコイル部材は、コイル34A、ボビン34Bおよび樹脂部34Cからなるモールドコイル34としている。即ち、コイル34Aを含んで一体的に構成されるコイル部材は、電気絶縁性材料からなるボビン34Bにコイル34Aを巻回した状態で、この上(外周側)から樹脂材料をモールド(オーバモールド)することにより、コイル34Aの外周を樹脂部34Cで覆う構成としている。
【0047】
ハウジング36は、モールドコイル34の内周側(即ち、コイル34Aの内周)に配置して設けられた第1固定鉄心(収納部)を構成している。ハウジング36は、例えば低炭素鋼、機械構造用炭素鋼(S10C)等の磁性材料(磁性体)により有蓋円筒状の筒体として形成されている。ハウジング36は、収納筒部36Aと、蓋部36Bと、小径筒部36Cと、を含んで構成されている。収納筒部36Aは、モールドコイル34(コイル34A)の巻回軸線方向に延びており、一端側(
図2の左側、
図3の下側)が開口している。蓋部36Bは、収納筒部36Aの他端側(
図2の右側、
図3の上側)を閉塞している。小径筒部36Cは、収納筒部36Aの開口側(一側)に位置して、収納筒部36Aの外周を縮径させるように形成されている。
【0048】
ハウジング36の小径筒部36Cの外周には、シリンダ44の内周がろう付けにより接合される。ハウジング36の収納筒部36Aは、その内径寸法がアマチュア48の外径寸法よりも僅かに大きく形成されている。収納筒部36A内には、アマチュア48が軸方向に移動可能に収納されている。即ち、ハウジング36は、軸線方向の一端側が開口し、アマチュア48が収納されている。ハウジング36とシリンダ44は、ハウジング36(小径筒部36C)をシリンダ44の内側に圧入し、ろう付けを行うことにより、圧力容器を形成している。
【0049】
一方、ハウジング36の蓋部36Bは、収納筒部36Aを軸方向他側から閉塞する有蓋筒体として収納筒部36Aと一体に形成されている。蓋部36Bの外径は、収納筒部36Aの外径よりも小径な段付形状となっている。蓋部36Bの外周側には、カバー51の嵌合筒部51Aが嵌合している。また、ハウジング36には、蓋部36Bの内側に位置して有底の段付穴37が形成されている。段付穴37は、ブッシュ取付穴部37Aと、このブッシュ取付穴部37Aよりも奥側に位置して小径に形成された小径穴部37Bと、を有している。ブッシュ取付穴部37A内には、作動ピン49を摺動可能に支持するための軸受(第1軸受)としての第1ブッシュ38が設けられている。
【0050】
また、ハウジング36の蓋部36Bは、その他側端面がカバー51の蓋板51Bに対し軸方向の隙間をもって対向配置されている。この軸方向の隙間は、カバー51の蓋板51B側から蓋部36Bを介して軸方向の力がハウジング36に直接加わるのを防ぐ機能を有している。なお、ハウジング36の蓋部36Bについては、収納筒部36Aと必ずしも一体に同一材料(磁性体)で形成する必要はない。この場合の蓋部36Bは、磁性体の材料ではなく、例えば剛性をもった金属材料、セラミックス材料または繊維強化樹脂材料により形成することも可能である。なお、ハウジング36の収納筒部36Aと蓋部36Bとの繋ぎ目は、磁束の受け渡しを考慮した位置とする。
【0051】
ヨーク39は、アマチュア48の移動方向の一側に設けられている。ヨーク39は、ハウジング36と共にモールドコイル34(コイル34A)の内周側と外周側とにわたって磁気回路(磁路)を形成する磁性部材である。即ち、ヨーク39は、ハウジング36と同様に磁性材料(磁性体)を用いて形成されている。ヨーク39は、モールドコイル34(コイル34A)の軸方向一側(巻回軸線方向の一側)で径方向に延び、その内周側が段付きの固定穴39Aとなった環状部39Bと、環状部39Bの内周側から軸方向他側(コイル34A側)に向け固定穴39Aの軸方向に沿って筒状に突出した筒状突起部39Cと、を含んで構成されている。筒状突起部39Cは、シリンダ44との接合用の突起(筒部)を構成しており、筒状突起部39C内径側には、シリンダ44が挿入される。
【0052】
換言すれば、ヨーク39は、固定穴39Aを有しており、固定穴39A内に、アンカ41が配置されている。また、固定穴39A内には、全周にわたって内径側に突出する内向き鍔部39Dが設けられている。内向き鍔部39Dの側面(コイル34A側の側面)には、シリンダ44の軸方向一側の端面(一端面)が当接している。また、ヨーク39の内周、即ち、固定穴39Aの内面(換言すれば、筒状突起部39Cの内周面)には、シリンダ44の軸方向一側の外周が嵌合される。
【0053】
また、ヨーク39は、環状部39Bの外周側から軸方向一側(メインバルブ23側)に向けて延びる円筒状の一側筒部39Gと、環状部39Bの外周側から軸方向他側(カバー51側)に向けて延び、モールドコイル34を径方向外側から取囲むように形成された他側筒部39Hと、他側筒部39Hの先端側に設けられカバー51の鍔部51Cを抜止め状態で保持するカシメ部39Jと、を含んだ一体物として形成されている。なお、ヨーク39の他側筒部39Hには、モールドコイル34のケーブル取出部34Eを他側筒部39Hの外側に露出させるための切欠き39Kが設けられている。
【0054】
ヨーク39の一側筒部39Gと他側筒部39Hとの間には、ヨーク39の外周面に開口するように断面半円形状をなす係合凹部39Lが(全周にわたって、または、周方向に離間して複数個所に)設けられている。係合凹部39Lには、バルブケース19に螺着されるロックナット53が抜止めリング54(
図2)を介して係合される。さらに、一側筒部39Gの外周面には、シール溝39Mが全周にわたって設けられている。シール溝39Mには、Oリング40(
図2)が装着される。Oリング40は、ヨーク39(一側筒部39G)と減衰力調整バルブ18のバルブケース19との間を液密にシールする。
【0055】
アンカ41は、アマチュア48の移動方向の一側に設けられている。アンカ41は、アマチュア48と軸方向に対向して配置されている。アンカ41は、ヨーク39の固定穴39A内に圧入等の手段を用いて固定された固定子(第2固定鉄心)である。アンカ41は、ハウジング36(第1固定鉄心)およびヨーク39と同様に低炭素鋼、機械構造用炭素鋼(S10C)等の磁性材料(磁性体)により、ヨーク39の固定穴39Aを内側から埋める形状に形成されている。アンカ41は、中心側が軸方向に延びる貫通穴41Aとなった短尺円筒状の環状体として形成されている。アンカ41の軸方向一側面(
図2に示すキャップ31と軸方向で対向する面)は、ヨーク39の環状部39Bの一側面と同様に平坦面となるように形成されている。
【0056】
アンカ41の軸方向他側(アマチュア48と軸方向で対向する他側面)には、ハウジング36の収納筒部36Aと同軸となるように円形の凹窪部41Bが凹設されている。凹窪部41Bは、その内側にアマチュア48が磁力により進入、退出可能に挿入されるように、アマチュア48よりも僅かに大径な円形溝として形成されている。このために、アンカ41の他側には、円筒状の外周凸部41Cが設けられている。外周凸部41Cの開口側の外周面は、アンカ41とアマチュア48との間で磁気特性がリニア(直線的)な特性となるように、円錐面として形成されている。即ち、角部とも呼ばれる外周凸部41Cは、アンカ41の外周側から軸方向他側に向けて筒状に突出している。そして、外周凸部41Cの外周面(開口側の外周面)は、軸方向の他側(開口側)に向けて外径寸法が漸次小さくなるように、テーパ状に傾斜したコニカル面となっている。
【0057】
また、アンカ41の外周側には、外周凸部41Cの外周に沿ってハウジング36の収納筒部36Aの開口から離れる方向に延びる側面部41Dが形成されている。この側面部41Dのうち開口から離れた側の端部は、径方向外側に向けて突出する環状のフランジ部41Eとなっている。環状のフランジ部41Eは、ハウジング36の収納筒部36Aの開口端から軸方向一側に大きく離間した位置(即ち、凹窪部41Bとは反対側の端部)に配置されている。
【0058】
環状のフランジ部41Eは、例えば、ヨーク39の固定穴39A内に圧入等の手段を用いて固定されている。環状のフランジ部41Eは、ヨーク39の固定穴39Aに対するアンカ41(側面部41D)の固定部分となり、フランジ部41Eと固定穴39Aが径方向で対向する部分でもある。アンカ41の側面部41D(環状のフランジ部41Eを除く)は、シリンダ44の内周面およびヨーク39の内向き鍔部39Dの内面と隙間(径方向隙間)を介して対向している。
【0059】
図3に示すように、アンカ41の中心(内周)側に形成された段付の貫通穴41Aには、作動ピン49を摺動可能に支持するための軸受(第2軸受)としての第2ブッシュ43が嵌合して設けられている。一方、
図2に示すように、ヨーク39の一側筒部39Gの内周側には、パイロットボディ26、リターンばね28、ディスクバルブ29、保持プレート30およびキャップ31等が挿入して設けられている。また、一側筒部39Gの外周側には、減衰力調整バルブ18のバルブケース19が嵌合(外嵌)される。
【0060】
シリンダ44は、径方向に関して、ヨーク39とアンカ41との間に設けられている。また、シリンダ44は、軸方向および径方向に関して、ヨーク39とハウジング36との間に設けられている。即ち、シリンダ44は、ハウジング36の小径筒部36Cとヨーク39の筒状突起部39Cとの間に位置してモールドコイル34(コイル34A)の内周側に設けられた非磁性の繋ぎ部材(接合部)である。シリンダ44は、非磁性体からなっている。より具体的には、シリンダ44は、例えばオーステナイト系ステンレス鋼等の非磁性材料により円筒体(単なる円筒体)として形成されている。
【0061】
シリンダ44は、モールドコイル34(コイル34A)の巻回軸線方向の一端側(ヨーク39側)の外周が、ヨーク39(固定穴39A、筒状突起部39C)の内周と接合されている。これにより、シリンダ44は、軸線方向の一側が固定子となるヨーク39に固定されている。また、シリンダ44は、モールドコイル34(コイル34A)の巻回軸線方向の他端側(ハウジング36側)の内周が、ハウジング36(小径筒部36C)の外周と接合されている。即ち、シリンダ44は、ハウジング36の小径筒部36Cの外側(外周側)に嵌合(圧入)され、ろう付けにより両者は接合されている。
【0062】
プランジャとも呼ばれるアマチュア48は、ハウジング36の収納筒部36Aとアンカ41の凹窪部41Bとの間に配置されている。アマチュア48は、コイル34Aの巻回軸線方向に移動可能に設けられた磁性体からなる可動子(可動鉄心)である。即ち、アマチュア48は、コイル34Aの内周側に軸方向へ移動可能に設けられている。アマチュア48は、ハウジング36の収納筒部36A、アンカ41の凹窪部41B、ヨーク39の筒状突起部39Cおよびシリンダ44の内周側に配置され、ハウジング36の収納筒部36Aとアンカ41の凹窪部41Bとの間で軸方向に移動可能となっている。即ち、アマチュア48は、ハウジング36の収納筒部36Aおよびアンカ41の凹窪部41Bの内周側に配置され、コイル34Aに発生する磁力により第1,第2ブッシュ38,43および作動ピン49を介して軸方向へと移動可能となっている。
【0063】
アマチュア48は、その中心側を貫通して延びる作動ピン49に固定(一体化)して設けられ、作動ピン49と一緒に移動する。作動ピン49は、ハウジング36の蓋部36Bとアンカ41とに第1,第2ブッシュ38,43を介して軸方向に摺動可能に支持されている。ここで、アマチュア48は、例えばハウジング36、ヨーク39およびアンカ41と同様に、鉄系の磁性体を用いて略円筒状に形成されている。そして、アマチュア48はコイル34Aに発生する磁力により、アンカ41の凹窪部41B内に向けて吸着される方向の推力(吸引力)が発生される。
【0064】
作動ピン49は、アマチュア48の推力をパイロット弁体32に伝達する軸部であり、中空ロッドにより形成されている。作動ピン49は、アマチュア48と一体に変位する。即ち、作動ピン49の軸方向中間部には、アマチュア48が圧入等の手段を用いて一体的に固定され、これにより、アマチュア48と作動ピン49とはサブアッセンブリ化されている。作動ピン49の軸方向の両側は、ハウジング36側の蓋部36Bとヨーク39(アンカ41)とに第1,第2ブッシュ38,43を介して摺動可能に支持されている。
【0065】
作動ピン49の一端側(
図2中の左側端部、
図3中の下側端部)は、アンカ41(ヨーク39)から軸方向に突出すると共に、その突出端には、減衰力調整バルブ18のパイロット弁体32が固定されている。このため、パイロット弁体32は、アマチュア48および作動ピン49と一緒に軸方向へと一体的に移動する。換言すれば、パイロット弁体32の開弁設定圧は、コイル34Aへの通電に基づくアマチュア48の推力に対応した圧力値となる。アマチュア48は、コイル34Aからの磁力で軸方向に移動することにより、緩衝器1のパイロットバルブ(即ち、パイロットボディ26に対するパイロット弁体32)の開閉弁を行う。
【0066】
カバー51は、ヨーク39の他側筒部39Hと共にモールドコイル34を外側から覆う磁性体カバーである。このカバー51は、モールドコイル34を軸方向他側から覆う蓋体として磁性材料(磁性体)により形成されている。カバー51は、金属部材であり、ヨーク39の他側筒部39Hと共にモールドコイル34(コイル34A)の外側で磁気回路(磁路)を形成する。カバー51は、全体として有蓋筒状に形成されており、円筒状の嵌合筒部51Aと、嵌合筒部51Aの他端側(
図2の右側端部、
図3中の上側端部)を閉塞する円皿状の蓋板51Bと、により大略構成されている。
【0067】
ここで、カバー51の嵌合筒部51Aは、ハウジング36の蓋部36Bの外周に挿嵌され、この状態でハウジング36の蓋部36Bを内側に収容する構成となっている。一方、カバー51の蓋板51Bは、その外周側が嵌合筒部51Aの径方向外側へと延びる環状の鍔部51Cとなり、鍔部51Cの外径側は、ヨーク39の他側筒部39Hに設けたカシメ部39Jに固定されている。これにより、ヨーク39の他側筒部39Hとカバー51の蓋板51Bとは、
図3に示す如く内側にモールドコイル34を内蔵した状態で予備組付け(サブアッセンブリ化)される。
【0068】
このように、ヨーク39の他側筒部39Hとカバー51の蓋板51Bとの内側にモールドコイル34を内蔵した状態では、ハウジング36の蓋部36Bがカバー51の嵌合筒部51A内に嵌着されている。これにより、カバー51の嵌合筒部51A、蓋板51Bおよびヨーク39との間で磁束の受け渡しを行うことができる。また、カバー51の嵌合筒部51Aには、モールドコイル34の樹脂部34Cが嵌合される外周側に、シール溝51Dが全周にわたって形成されている。このシール溝51D内には、シール部材としてのOリング52が装着されている。Oリング52は、モールドコイル34とカバー51(嵌合筒部51A)との間を液密にシールする。これにより、雨水や泥水を含むダストが、カバー51とモールドコイル34との間を介してハウジング36とモールドコイル34との間、さらにはハウジング36とカバー51との間等に侵入するのを防ぐことができる。
【0069】
ヨーク39とカバー51とは、
図3に示す如く内側にモールドコイル34を内蔵した状態で、
図2に示すように、締結部材としてのロックナット53と抜止めリング54とを用いて減衰力調整バルブ18のバルブケース19に締結される。この場合、ヨーク39の係合凹部39Lには、ロックナット53に先立って抜止めリング54が取付けられる。この抜止めリング54は、ヨーク39の係合凹部39Lから径方向外側へと部分的に突出し、ロックナット53による締結力をヨーク39の一側筒部39Gに伝えるものである。
【0070】
ロックナット53は、段付筒状体として形成され、その軸方向一側に位置し内周側にバルブケース19の雄ねじ部19Bに螺合する雌ねじ部53Aと、内径寸法が抜止めリング54の外径寸法よりも小さくなるように径方向内向きに屈曲され、抜止めリング54に対して外側から係合する係合筒部53Bとが設けられている。ロックナット53は、ヨーク39の係合凹部39Lに装着された抜止めリング54に対して係合筒部53Bの内側面を当接させた状態で、雌ねじ部53Aとバルブケース19の雄ねじ部19Bとを螺合することにより、減衰力調整バルブ18とソレノイド33とを一体的に結合する締結部材である。
【0071】
ところで、ソレノイド33のモールドコイル34とカバー51との間に設けられるOリング52の防水性について検討する。シール部材となるOリング52は、カバー51に設けられたシール溝51Dに装着される。ここで、例えば、カバーのシール溝が、モールドコイルを構成するボビンと樹脂部(外装樹脂)との境界に対向している場合を考える。即ち、シール溝を構成する一対の側壁(互いに軸方向に対向する側壁)のうち可動子(アマチュア)側の側壁の周縁が、ボビンと対向している場合を考える。この場合は、シール溝に装着されたOリングがボビンと樹脂部との境界に当接し、Oリングの耐久性の低下に繋がる可能性がある。特に、ボビンと樹脂部との境界に段差がある場合には、Oリングの密着性の低下、Oリングと段差との接触による損傷に繋がる可能性もあり、防水性が低下する可能性がある。そして、防水性を十分に確保できなくなった場合には、例えば水の浸入による短絡に繋がる可能性がある。また、カバーと樹脂部との間の防水をOリングで行いつつソレノイドの軸長(軸方向寸法)を短くしようとすると、ボビンおよび樹脂部の肉厚が不均等になる。この場合、ひけ(ゆがみ)が発生し、成型性が悪化する可能性がある。
【0072】
そこで、実施形態では、「ソレノイド33の軸長を短縮すること」と「Oリング52による防水性を確保すること」とを両立できるように、次の構成を採用している。即ち、実施形態では、ソレノイド33の軸長(軸方向寸法)を短縮している。この場合に、
図4に示すように、樹脂部34Cのうちシール溝51Dに対面する円筒部34C1を、ボビン34Bの軸方向の内界側(奥側、アンカ41側)に向けて延ばしている。即ち、樹脂部34C(円筒部34C1)とボビン34Bとの境界K、換言すれば、コイル34Aの軸線方向においてカバー51側に位置する樹脂部34C(円筒部34C1)とボビン34Bとの接合部Kを、コイル34Aの軸方向の内界側(奥側、アンカ41側)に設けている。そして、シール溝51Dの軸方向の両端51D1,51D2を、何れも樹脂部34C(円筒部34C1)と対向させている。また、実施形態では、樹脂部34C(円筒部34C1)の安定した成型性を確保できるように、ボビン34Bの軸方向の一側(カバー51側)の端面に、この端面から軸方向に突出する環状凸部34B1を形成している。また、ボビン34Bの内周でOリング52よりも軸方向の他側(カバー51とは反対側のアンカ41側)に、突起部34B2を設けている。以下、これらの点について、詳しく説明する。
【0073】
先ず、
図1に示すように、緩衝器1は、シリンダとしての内筒4および外筒2と、ピストン5と、ピストンロッド8と、流路となる環状油室D(より具体的には、環状油室Dとリザーバ室Aとの間の流路)と、減衰力調整バルブ18(パイロット弁体32、延いては、メインバルブ23)と、を備えている。減衰力調整バルブ18(パイロット弁体32、延いては、メインバルブ23)は、ピストンロッド8の伸縮によって作動流体の流れが生じる流路、即ち、環状油室Dとリザーバ室Aとの間に設けられている。減衰力調整バルブ18(パイロット弁体32、延いては、メインバルブ23)は、ソレノイド33によって駆動される。
【0074】
また、
図2に示すように、減衰力調整機構17は、コイル34Aと、ボビン34Bと、収納部としてのハウジング36と、可動子としてのアマチュア48と、固定子としてのアンカ41と、樹脂部34Cと、カバー51と、シール溝51Dおよびシール部材としてのOリング52と、制御弁としての減衰力調整バルブ18(より具体的には、パイロット弁体32、延いては、メインバルブ23)と、を備えている。減衰力調整バルブ18(パイロット弁体32、延いては、メインバルブ23)は、作動ピン49に固定されたアマチュア48の軸方向の移動により制御される。また、
図3に示すように、ソレノイド33は、コイル34Aと、ボビン34Bと、ハウジング36と、アマチュア48と、アンカ41と、樹脂部34Cと、カバー51と、シール溝51DおよびOリング52と、を備えている。また、ソレノイド33は、ヨーク39を備えている。
【0075】
コイル34Aは、環状に巻きつけられ、通電により磁力(磁束、磁界)を発生する。ボビン34Bは、コイル34Aが巻回されている。ハウジング36は、ボビン34Bの内周に配置されている。ハウジング36は、コイル34Aの巻回軸線方向に延び、かつ、一端側(
図3の上下方向の下側)が開口している。ハウジング36は、アマチュア48が収納されており、コイル34Aとアマチュア48との径方向間に設けられている。アマチュア48は、磁性体からなる。アマチュア48は、ハウジング36の内側(内径側)に、コイル34Aの巻回軸線方向に移動可能に設けられている。アンカ41は、アマチュア48の移動方向一側(
図3の上下方向の下側)に設けられている。即ち、アンカ41は、ハウジング36の開口と対向する位置に設けられている。樹脂部34Cは、ボビン34Bを覆っている。カバー51は、ハウジング36を覆っている。カバー51は、磁気回路を構成している。シール溝51Dは、カバー51に設けられている。Oリング52は、シール溝51Dに装着されている。ヨーク39は、アンカ41が取付けられている。
【0076】
ソレノイド33は、パイロット弁体32と共に、ソレノイドバルブ(圧力制御弁)を構成している。ソレノイド33は、コイル34Aに電流を流すことで磁束が発生し、アマチュア48、アンカ41、カバー51、ハウジング36、ヨーク39により構成される磁気回路を通ることで、アマチュア48がアンカ41に吸引される。これがアマチュア48の推力となって、パイロット弁体32の開閉が制御される。
【0077】
図4に示すように、実施形態では、シール溝51Dの軸方向端は、何れも樹脂部34Cと対向する位置に形成されている。即ち、シール溝51Dの軸方向の両端51D1,51D2を、何れも樹脂部34C(円筒部34C1)と対向させている。ここで、シール溝51Dの軸方向の両端51D1,51D2のうち、コイル34Aに近い側(アンカ41側)に位置する端(側壁)を内側端51D1とし、コイル34Aから遠い側(アンカ41から離れる側)に位置する端(側壁)を外側端51D2とする。この場合、シール溝51Dは、内側端51D1と外側端51D2との両方が樹脂部34C(円筒部34C1)と対向している。換言すれば、ボビン34Bと樹脂部34C(円筒部34C1)との境界K、即ち、カバー51側に位置するボビン34Bと樹脂部34C(円筒部34C1)との接合部Kは、シール溝51Dの内側端51D1よりもコイル34Aに近い側(アンカ41側)に位置させている。これにより、シール溝51Dに装着されたOリング52がボビン34Bと樹脂部34C(円筒部34C1)との境界Kに当接することを抑制している。
【0078】
ボビン34Bと樹脂部34Cとの境界Kは、次のような構成となっている。即ち、ボビン34Bのうちカバー51の嵌合筒部51Aに対向する部位で、かつ、シール溝51Dよりもコイル34A側(アンカ41側)に位置する部位の内径寸法を「d」とする。一方、樹脂部34Cのうちシール溝51Dと対向する部位となる円筒部34C1の内径寸法を「D」とする。この場合に、ボビン34Bの内径寸法dよりも樹脂部34C(円筒部34C1)の内径寸法Dが大きい。このため、ボビン34Bと樹脂部34Cとの境界Kは、段差61を有している。このように境界Kに段差61が有っても、この段差61のエッジ(内周縁)は、シール溝51Dの内側端51D1よりもコイル34Aに近い側(アンカ41側)に位置する。このため、シール溝51Dに装着されたOリング52が段差61のエッジ(内周縁)に当接することを抑制できる。
【0079】
また、実施形態では、ボビン34Bの軸方向の一端(カバー51側の端)には、環状凸部34B1が形成されている。環状凸部34B1は、ボビン34Bの軸方向のカバー51側の端面からカバー51側に向けて全周にわたって軸方向に突出している。これにより、樹脂部34Cのうち環状凸部34B1の周囲からカバー51の嵌合筒部51Aに沿って延びる部位(即ち、円筒部34C1)にわたってひけ(ゆがみ)が発生することを抑制できる。即ち、ボビン34Bと樹脂部34C(円筒部34C1)との境界Kを内界(アンカ41側)に設けようとすると、樹脂部34C(円筒部34C1)の肉厚が不均等になりひけ(ゆがみ)が発生する可能性があるが、環状凸部34B1を設けて肉厚を一定にさせることにより、ひけ(ゆがみ)を抑制できる。
【0080】
また、実施形態では、ボビン34Bの内周であって、Oリング52よりも軸方向の他端側(カバー51とは反対側のアンカ41側)には、周方向に延びる凸部34B3と凹部34B4とを有する突起部34B2が設けられている。即ち、
図5に示すように、ボビン34Bの内周側には、周方向に延び、かつ、径方向内側に向けて突出する突起部34B2が設けられている。この場合、突起部34B2は、径方向内側に向けて突出する凸部34B3と、この凸部34B3の内周面に対して径方向外側に凹む切欠きとしての凹部34B4とを有している。この場合、凸部34B3は、突起部34B2の周方向の2個所位置に、ほぼ180度延びる半円弧状に形成されている。凹部34B4は、凸部34B3の間に設けられている。即ち、凹部34B4は、突起部34B2の周方向の2個所以上の位置(周方向にほぼ等配の位置)に設けられている。このような凹部34B4と凸部34B3とを有する突起部34B2により、樹脂部34Cの成型時にボビン34Bを位置決めすること、および、ボビン34Bを型内で安定させることができる。
【0081】
本実施形態によるソレノイド33、減衰力調整機構17および緩衝器1は、上述の如き構成を有するもので、次にその作動について説明する。
【0082】
まず、緩衝器1を自動車等の車両に実装するときには、例えば、ピストンロッド8の上端側(突出端側)が車両の車体側に取付けられ、ボトムキャップ3に設けられた取付アイ3A側が車輪側に取付けられる。また、減衰力調整機構17のソレノイド33は、車両の車体側に設けられた制御装置(コントローラ)に電気配線のケーブル(いずれも図示せず)等を介して接続される。
【0083】
車両の走行時には、路面の凹凸等により、上下方向の振動が発生すると、ピストンロッド8が外筒2から伸長、縮小するように変位し、減衰力調整機構17等により減衰力を発生することができ、車両の振動を緩衝することができる。このとき、コントローラによりソレノイド33のコイル34Aへの電流値を制御し、パイロット弁体32の開弁圧を調整することにより、緩衝器1の発生減衰力を可変に調整することができる。
【0084】
例えば、ピストンロッド8の伸び行程時には、内筒4内のピストン5の移動によってピストン5の縮み側逆止弁7が閉じる。ピストン5のディスクバルブ6の開弁前には、ロッド側油室Bの油液が加圧され、内筒4の油穴4A、環状油室D、中間筒12の接続口12Cを通じて減衰力調整バルブ18の接続管体20の油路20Bに流入する。このとき、ピストン5が移動した分の油液は、リザーバ室Aからボトムバルブ13の伸び側逆止弁16を開いてボトム側油室Cに流入する。なお、ロッド側油室Bの圧力がディスクバルブ6の開弁圧力に達すると、該ディスクバルブ6が開き、ロッド側油室Bの圧力をボトム側油室Cにリリーフする。
【0085】
減衰力調整機構17では、接続管体20の油路20Bに流入した油液は、メインバルブ23の開弁前(ピストン速度低速域)においては、
図2に矢印Xで示すように、バルブ部材21の中心孔21A、パイロットピン24の中心孔24B、パイロットボディ26の中心孔26Cを通り、パイロット弁体32を押し開き、パイロットボディ26の内側に流入する。そして、パイロットボディ26の内側に流入した油液は、パイロット弁体32のフランジ部32Aとディスクバルブ29との間、保持プレート30の油路30A、キャップ31の切欠き31A、バルブケース19の油室19Cを通ってリザーバ室Aへ流れる。ピストン速度の上昇に伴って、接続管体20の油路20Bの圧力、即ち、ロッド側油室Bの圧力が、メインバルブ23の開弁圧力に達すると、接続管体20の油路20Bに流入した油液は、
図2に矢印Yで示すように、バルブ部材21の油路21Bを通り、メインバルブ23を押し開き、バルブケース19の油室19Cを通ってリザーバ室Aへ流れる。
【0086】
一方、ピストンロッド8の縮み行程時には、内筒4内のピストン5の移動によってピストン5の縮み側逆止弁7が開き、ボトムバルブ13の伸び側逆止弁16が閉じる。ボトムバルブ13(ディスクバルブ15)の開弁前には、ボトム側油室Cの油液がロッド側油室Bに流入する。これと共に、ピストンロッド8が内筒4内に浸入した分に相当する油液が、ロッド側油室Bから減衰力調整バルブ18を介してリザーバ室Aに、伸び行程時と同様の経路で流れる。なお、ボトム側油室C内の圧力がボトムバルブ13(ディスクバルブ15)の開弁圧力に達すると、ボトムバルブ13(ディスクバルブ15)が開き、ボトム側油室Cの圧力をリザーバ室Aにリリーフする。
【0087】
これにより、ピストンロッド8の伸び行程時と縮み行程時に、減衰力調整バルブ18のメインバルブ23の開弁前は、パイロットピン24のオリフィス24Cとパイロット弁体32の開弁圧力とによって減衰力が発生し、メインバルブ23の開弁後は、該メインバルブ23の開度に応じて減衰力が発生する。この場合、ソレノイド33のコイル34Aへの通電によってパイロット弁体32の開弁圧力を調整することにより、ピストン速度に拘わらず、減衰力を直接制御することができる。
【0088】
具体的には、コイル34Aへの通電電流を小さくしてアマチュア48の推力を小さくすると、パイロット弁体32の開弁圧力が低下し、ソフト側の減衰力が発生する。一方、コイル34Aへの通電電流を大きくしてアマチュア48の推力を大きくすると、パイロット弁体32の開弁圧力が上昇し、ハード側の減衰力が発生する。このとき、パイロット弁体32の開弁圧力によって、その上流側の油路25を介して連通する背圧室27の内圧が変化する。これにより、パイロット弁体32の開弁圧力を制御することにより、メインバルブ23の開弁圧力を同時に調整することができ、減衰力特性の調整範囲を広くすることができる。
【0089】
なお、コイル34Aの断線等によりアマチュア48の推力が失われた場合には、パイロット弁体32がリターンばね28により後退(弁座部26Eから離れる方向に変位)し、パイロット弁体32のフランジ部32Aとディスクバルブ29とが当接する。この状態では、ディスクバルブ29の開弁圧によって減衰力を発生することができ、コイルの断線等の不調時にも、必要な減衰力を得ることができる。
【0090】
ここで、実施形態によれば、シール溝51Dの軸方向端となる内側端51D1と外側端51D2は、何れも樹脂部34C(円筒部34C1)と対向する位置に形成されている。このため、シール溝51Dに装着されたOリング52を樹脂部34C(円筒部34C1)に当接させることができる。即ち、シール溝51Dに装着されたOリング52がボビン34Bにまで達することを抑制できる。これにより、Oリング52が樹脂部34C(円筒部34C1)とボビン34Bとの境界Kに当接することを抑制できる。このため、Oリング52の耐久性の確保、樹脂部34C(円筒部34C1)との密着性の確保、Oリング52の損傷の抑制を図ることができ、Oリング52による防水性を向上できる。
【0091】
実施形態によれば、ボビン34Bの軸方向の一端となるカバー51側の端(端面)に環状凸部34B1が形成されている。このため、シール溝51Dの内側端51D1と外側端51D2との両方を樹脂部34C(円筒部34C1)に対向させるために、樹脂部34C(円筒部34C1)をボビン34Bの軸方向に沿ってアンカ41側に延ばしても、当該部に、即ち、樹脂部34Cのうちシール溝51Dに対向する部分である円筒部34C1にひけ(ゆがみ)が発生することを抑制できる。即ち、ボビン34Bのカバー51側の端面に環状凸部34B1を形成することにより、樹脂部34Cのうちボビン34Bの環状凸部34B1の周囲を覆う部位からシール溝51Dに対向する部位(即ち、円筒部34C1)にわたって、肉厚を一定にすることができる。これにより、樹脂部34Cのシール溝51Dに対向する部位(円筒部34C1)にひけ(ゆがみ)が発生することを抑制できる。
【0092】
実施形態によれば、ボビン34Bの内周でOリング52よりも軸方向の他端側となるアンカ41側には、周方向に延びる凸部34B3と凹部34B4とを有する突起部34B2が設けられている。このため、成型時に型内でボビン34Bを安定させることができる。即ち、突起部34B2の凸部34B3が金型で挟まれることにより、ボビン34Bが軸方向へ移動することを抑制できる。また、突起部34B2の凹部34B4は、金型の一部が嵌合することにより、ボビン34Bの周方向(回転方向)の移動を抑制することができる。これにより、ボビン34Bを型内で安定させることができ、成型安定性を確保できる。
【0093】
なお、実施形態では、アンカ41の凹窪部41Bを平坦な底面とすると共に、この凹窪部41Bに対面するアマチュア48の対向部も平坦にした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、アンカの凹窪部にアマチュアに向けて断面三角形状に突出する中間凸部を設けると共に、この中間凸部に対応してアマチュアに断面三角形状の溝部を設ける構成としてもよい。
【0094】
実施形態では、ハウジング36とシリンダ44、および、シリンダ44とヨーク39とを、ろう材を介して接合する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、ハウジング36とシリンダ44、および、シリンダ44とヨーク39を溶接にて接合してもよい。
【0095】
実施形態では、アンカ41をヨーク39の固定穴39A内に圧入により固定する場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、ねじ等の螺合手段、かしめ手段等を用いてアンカをヨーク内に固定する構成としてもよい。
【0096】
実施形態では、アンカ41とヨーク39とを別体(別部品)に構成した場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、アンカとヨークとを一体(一部品)に構成してもよい。
【0097】
実施形態では、シリンダ44の一側をヨーク39に固定する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、シリンダ(接合部)の一側をアンカに固定する構成としてもよい。
【0098】
実施形態では、ヨーク39に他側筒部39Hを設け、他側筒部39Hの先端側(軸方向他側)をカシメ部39Jによりカバー51の外周側に固定する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、ヨークの環状部と他側筒部とを別体に形成し、この他側筒部をカバー部と一体に形成する構成としてもよい。
【0099】
実施形態では、ソレノイド33を比例ソレノイドとして構成した場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、ON/OFF式のソレノイドとして構成してもよい。
【0100】
実施形態では、外筒2と内筒4とからなる複筒式の緩衝器1を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、単筒式の筒部材(シリンダ)からなる減衰力調整式緩衝器に用いてもよい。
【0101】
実施形態では、ソレノイド33を緩衝器1の減衰力可変アクチュエータとして用いる場合、即ち、減衰力調整バルブ18のパイロットバルブを構成するパイロット弁体32をソレノイド33の駆動対象物とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、ソレノイドは、例えば、油圧回路に用いるバルブ等の各種機械装置に組込まれるアクチュエータ、即ち、直線的に駆動すべき駆動対象物を駆動する駆動装置として広く用いることができる。
【0102】
以上説明した実施形態によれば、シール溝の軸方向端は、何れも樹脂部と対向する位置に形成される。このため、シール溝に装着されたシール部材を樹脂部に当接させることができる。即ち、シール溝に装着されたシール部材がボビンにまで達することを抑制できる。これにより、シール部材が樹脂部とボビンとの境界に当接することを抑制できる。このため、シール部材の耐久性の確保、樹脂部との密着性の確保、シール部材の損傷の抑制を図ることができ、シール部材の防水性を向上できる。
【0103】
実施形態によれば、ボビンの軸方向の一端に環状凸部が形成されている。このため、シール溝の軸方向端を何れも樹脂部に対向させるために、樹脂部をボビンの軸方向に沿って延ばしても、樹脂部のうちシール溝に対向する部分にひけ(ゆがみ)が発生することを抑制できる。即ち、ボビンの軸方向の一端に環状凸部を形成することにより、樹脂部のうちボビンの環状凸部の周囲を覆う部位からシール溝に対向する部位にわたって、肉厚を一定にすることができる。これにより、樹脂部(シール溝に対向する部位)にひけ(ゆがみ)が発生することを抑制できる。
【0104】
実施形態によれば、ボビンの内周でシール部材よりも軸方向の他端側には、周方向に延びる凸部と凹部とを有する突起部が設けられている。このため、成型時に型内でボビンを安定させることができる。即ち、突起部の凸部が金型で挟まれることにより、ボビンが軸方向へ移動することを抑制できる。また、突起部の凹部は、金型の一部が嵌合することにより、ボビンの周方向(回転方向)の移動を抑制することができる。これにより、ボビンを型内で安定させることができる。
【符号の説明】
【0105】
1 緩衝器(減衰力調整式緩衝器)
2 外筒(シリンダ)
4 内筒(シリンダ)
5 ピストン
8 ピストンロッド
17 減衰力調整機構
18 減衰力調整バルブ
32 パイロット弁体(制御弁)
33 ソレノイド
34A コイル
34B ボビン
34B1 環状凸部
34B2 突起部
34B3 凸部
34B4 凹部
34C 樹脂部
36 ハウジング(収納部)
41 アンカ(固定子)
48 アマチュア(可動子)
51 カバー
51D シール溝
51D1 内側端(軸方向端)
51D2 外側端(軸方向端)
52 Oリング(シール部材)