(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048019
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】座屈拘束ブレース
(51)【国際特許分類】
E04B 1/58 20060101AFI20240401BHJP
E04H 9/02 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
E04B1/58 D
E04H9/02 311
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153840
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105843
【弁理士】
【氏名又は名称】神保 泰三
(72)【発明者】
【氏名】長濱 温子
(72)【発明者】
【氏名】岡本 勇紀
【テーマコード(参考)】
2E125
2E139
【Fターム(参考)】
2E125AA33
2E125AB01
2E125AB11
2E125AB15
2E125AC14
2E125AC15
2E125AG02
2E125AG31
2E125CA82
2E125EA25
2E139AC19
2E139BD13
(57)【要約】
【課題】アンボンド材を用いずに芯材と拘束材との間に所定のクリアランスを形成できる座屈拘束ブレースを提供する。
【解決手段】座屈拘束ブレース1は、芯材2と、箱状部材31内に硬化材32が充填されており、芯材2の弱軸方向に直交する各面に硬化材32を対向させて配置される拘束材3と、を備えている。そして、拘束材3の箱状部材31内に、硬化材32の天端から突出する突出部位4aを一定間隔で形成する突出部位形成部材4が埋設されており、突出部位4aが芯材2に接触することで、芯材2と各拘束材3の硬化材32との間に所定のクリアランスが形成される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部に接合部を有する芯材と、
箱状部材内に硬化材が充填されており、上記芯材の弱軸方向に直交する各面に上記硬化材を対向させて配置される拘束材と、を備える座屈拘束ブレースであって、
上記拘束材の上記箱状部材内に、上記硬化材の天端から突出する突出部位を一定間隔で形成する突出部位形成部材が埋設されており、上記突出部位が上記芯材に接触することで、上記芯材と各拘束材の上記硬化材との間に所定のクリアランスが形成されることを特徴とする座屈拘束ブレース。
【請求項2】
請求項1に記載の座屈拘束ブレースにおいて、上記突出部位形成部材は、金属製の棒状材または帯状体が波形状に曲げられた波形材からなり、上記波形材の頂部が上記突出部位をなすことを特徴とする座屈拘束ブレース。
【請求項3】
請求項2に記載の座屈拘束ブレースにおいて、各拘束材の短辺方向に複数の上記波形材が互いに離間して配置され、各波形材は各拘束材の長辺方向に波打つように延設されていることを特徴とする座屈拘束ブレース。
【請求項4】
請求項3に記載の座屈拘束ブレースにおいて、各拘束材に複数配置された上記波形材の位相が互いにずれていることを特徴とする座屈拘束ブレース。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の座屈拘束ブレースにおいて、両拘束材の上記波形材の配置形態が一致する一方、上記芯材を挟んだ状態の上記拘束材の一方における上記波形材の位置と、他方における上記波形材の位置とが、上記拘束材の短辺方向に互いにずれていることを特徴とする座屈拘束ブレース。
【請求項6】
請求項2に記載の座屈拘束ブレースにおいて、各拘束材の長辺方向に複数の上記波形材が互いに離間して配置されており、各波形材は各拘束材の短辺方向に波打つことを特徴とする座屈拘束ブレース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、芯材の強軸方向の移動を規制する棒状スペーサを備える座屈拘束ブレースに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、芯材を一対の拘束材によって拘束してなる座屈拘束ブレースが開示されている。この座屈拘束ブレースは、上記芯材が配置される側が開口した溝形鋼材と、この溝形鋼材内に充填したモルタルとを有する。そして、上記芯材が配置される高さ相当位置に、上記溝形鋼材の長さ方向に延びて芯材の強軸方向の端面に対向して当該芯材の移動を規制する棒状スペーサが溶接等により固定されている。また、上記座屈拘束ブレースにおいては、上記芯材の表面にアンボンド材が貼り付けられており、上記芯材と上記拘束材との間に所定のクリアランスが形成されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記座屈拘束ブレースにおいては、上記アンボンド材の幅は芯材の幅と同幅とされており、上記芯材の幅が細かな変更幅で設計されることから、上記アンボンド材も上記芯材の幅設計に合わせた幅で作製することとしていた。このため、アンボンド材の加工手間が生じ、アンボンド材の納期遅延や歩留まりの低下を招来していた。
【0005】
この発明は、アンボンド材を用いずに芯材と拘束材との間に所定のクリアランスを形成できる座屈拘束ブレースを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の座屈拘束ブレースは、端部に接合部を有する芯材と、
箱状部材内に硬化材が充填されており、上記芯材の弱軸方向に直交する各面に上記硬化材を対向させて配置される拘束材と、を備える座屈拘束ブレースであって、
上記拘束材の上記箱状部材内に、上記硬化材の天端から突出する突出部位を一定間隔で形成する突出部位形成部材が埋設されており、上記突出部位が上記芯材に接触することで、上記芯材と各拘束材の上記硬化材との間に所定のクリアランスが形成されることを特徴とする。
【0007】
上記の構成であれば、突出部位形成部材によって一定間隔で形成される突出部位が上記芯材に接触することで、上記芯材と各拘束材の上記硬化材との間に所定のクリアランスが形成される。これにより、アンボンド材が不要になり、このアンボンド材の加工手間に起因するアンボンド材の納期遅延等の問題を解消できる。
【0008】
上記突出部位形成部材は、金属製の棒状材または帯状体が波形状に曲げられた波形材からなり、上記波形材の頂部が上記突出部位をなしてもよい。これによれば、金属製の棒状材または帯状体が硬化材内に存在する構造となるので、補剛材である拘束材の全体座屈に対する補剛力向上が可能となる。また、硬化材の天端付近で拘束材の局部耐力向上が可能となる。
【0009】
各拘束材の短辺方向に複数の上記波形材が互いに離間して配置され、各波形材は各拘束材の長辺方向に波打つように延設されていてもよい。これによれば、複数の上記波形材によって、上記芯材と上記拘束材との間に安定的にクリアランスを形成でき、また、上記拘束材のさらなる補剛力向上が可能となる。
【0010】
各拘束材に複数配置された上記波形材の位相が互いにずれていてもよい。これによれば、硬化材の天端付近で突出部位が千鳥状に位置することになり、硬化材の天端付近における拘束材の局部耐力のさらなる向上が期待できる。
【0011】
両拘束材の上記波形材の配置形態が一致する一方、上記芯材を挟んだ状態の上記拘束材の一方における上記波形材の位置と、他方における上記波形材の位置とが、上記拘束材の短辺方向に互いにずれていてもよい。
【0012】
各拘束材の長辺方向に複数の上記波形材が互いに離間して配置されており、各波形材は各拘束材の短辺方向に波打ってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明であれば、アンボンド材を用いずに芯材と拘束材との間に所定のクリアランスを形成できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態の座屈拘束ブレースの外観を示した斜視図である。
【
図2】
図1の座屈拘束ブレースの概略の断面図である。
【
図3】
図1の座屈拘束ブレースの分解説明図である。
【
図5】座屈拘束ブレースの変形例を示す図であって、
図2のA―A矢視に相当する概略の断面図である。
【
図6】座屈拘束ブレースの変形例を示す説明図である。
【
図7】同図(A)は他の実施形態の座屈拘束ブレースの概略の断面図であり、同図(B)は同図(A)のB―B矢視の概略の断面図である。
【
図8】他の実施形態の座屈拘束ブレースの変形例を示す図であって、
図7(B)のB―B矢視に相当する概略の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施形態1)
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1および
図2に示すように、実施形態の座屈拘束ブレース1は、芯材2と、一対の拘束材3と、突出部位形成部材4と、を備える。
【0016】
芯材2は、長方形状の鋼製の板状体21と、この板状体21の長辺方向の両端側に位置し、他部材との接合のための接合部22と、を有しており、上記接合部22に形成されているボルト挿通孔に通したボルトによって建物の躯体に固定される。上記接合部22は、上記板状体21の両端から延設された延設部分22aに対して直交配置で板片部22bが溶接固定されることで断面略十字形をなしている。
【0017】
拘束材3は、
図3にも示すように、上記芯材2の上記板状体21の弱軸方向に直交する各面(弱軸面)にそれぞれ対向して位置する。各拘束材3は、箱状部材31と、硬化材32と、を備える。
【0018】
各箱状部材31は、一対の対向面部と当該対向面部を繋ぐ繋ぎ面部とを有する溝形鋼状に折り曲げ加工された鋼板からなり、上記芯材2側に開口が位置している。上記箱状部材31における上記対向面部の一方側は、他方側よりも高さが高くされている。そして、一方の箱状部材31における高い側の対向面部である立上部311は、他方の箱状部材31における低い側の対向面部の外側に重なっており、この重なりの箇所が溶接されることで、上記一対の拘束材3が互いに固定される。
【0019】
上記箱状部材31の長辺方向(材軸方向)の両端箇所には、当該箱状部材31の端部を形成する壁部31aが溶接固定されている。上記壁部31aの高さは、箱状部材31の低い側の対向面部の高さと同じである。上記壁部31aの中央には、上記接合部22の板片部22bにおける上記の高さが低くされた基部側との干渉を避けるように当該基部側を収容する収容凹部31bが形成されている。
【0020】
硬化材32は、箱状部材31内に充填されて硬化したものであり、例えば、モルタルまたはコンクリートである。
【0021】
上記棒状スペーサ35は、箱状部材31の長手方向に長い形状を有しており、各箱状部材31の立上部311の内面における芯材2の配置される高さ相当位置において当該箱状部材31に溶接等により固定されている。
【0022】
上記棒状スペーサ35は、上記のように、拘束材3に配置されることで、芯材2の強軸方向の端面と当該強軸方向の端面に対向する箱状部材31の立上部311の内面との間に位置し、芯材2の強軸方向の移動(変形)を規制する。すなわち、芯材2の強軸方向の移動を、上記棒状スペーサ35および当該棒状スペーサ35が位置する箇所の立上部311で受け止める。
【0023】
突出部位形成部材4は、箱状部材31内に埋設されており、硬化材32の天端から突出する突出部位4aを一定間隔で形成する。
図4にも示すように、突出部位4aが芯材2の弱軸面に接触することで、芯材2の弱軸面と各拘束材3の上記硬化材32との間に所定のクリアランスが形成される。
【0024】
各拘束材3において、突出部位形成部材4は、2本の波形材41からなる。各波形材41は、棒状材としての鉄筋(丸鋼、異形鉄筋)が一定周期の波形状に曲げられてなり、各波形材41の頂部が上記突出部位4aをなす。上記2本の波形材41は、拘束材3の短辺方向に互いに離間して配置される。両拘束材3における上記波形材41の配置形態は互いに一致しており、両拘束材3は同じ構造を有する。
【0025】
上記2本の波形材41は、各拘束材3の長辺方向に同波長で波打つように延設されている。
図4に示す例では、各拘束材3の2本の波形材41は、芯材2の強軸方向から見て重なっている。すなわち、各拘束材3内の2本の波形材41は同位相で配置されている。
【0026】
拘束材3の製作においては、各箱状部材31内に複数の波形材41をセットして硬化材32となる例えば生コンクリートを箱状部材31内に充填する。なお、この充填でセットされた複数の波形材41に位置ずれが生じないように、各波形材41を箱状部材31の内面に溶接してもよい。また、複数の波形材41を相互に固定した上で各箱状部材31内にセットしてもよい。また、複数の波形材41を相互に固定して自立できるものであれば、箱状部材31への溶接を不要にし得る。
【0027】
上記の構成であれば、突出部位形成部材4における一定間隔で形成される突出部位4aが上記芯材2に接触することで、上記芯材2と各拘束材3の上記硬化材32との間に所定のクリアランスが形成される。これにより、アンボンド材が不要になり、このアンボンド材の加工手間に起因するアンボンド材の納期遅延等の問題を解消できる。
【0028】
また、波形材41をなす鉄筋が硬化材32内に存在する構造となるので、補剛材である拘束材3の全体座屈に対する補剛力向上が可能となる。また、硬化材32の天端付近で拘束材3の局部耐力向上が可能となる。
【0029】
また、拘束材3の短辺方向に複数の上記波形材41が互いに離間して配置されると、複数の上記波形材41によって、芯材2と拘束材3との間に安定的にクリアランスを形成でき、また、拘束材3のさらなる補剛力向上が可能となる。
【0030】
図5に示すように、各拘束材3の2本の波形材41が、例えば、互いに位相を半波長ずらして配置されてもよい。このように各拘束材3において2本の波形材41が互いに位相をずらして配置されると、硬化材32の天端付近で突出部位4aが千鳥状に位置することになり、硬化材32の天端付近における拘束材3の局部耐力のさらなる向上が期待できる。なお、3本の波形材41を用いる場合、両端の2本の波形材41の位相を互いに同じとし、中央側の波形材41の位相を半波長ずらしてもよい。
【0031】
また、両拘束材3は同じ構造を有するが、
図6に示すように、上記芯材2を挟んで配置された状態の上記拘束材3の一方における上記波形材41の位置と、他方における上記波形材41の位置とが、上記拘束材3の短辺方向に互いにずれていてもよい。
【0032】
(実施形態2)
以下、この発明の他の実施の形態を説明する。実施形態1と同様の部材には同一の符号を付記してその説明を省略する。
【0033】
図7(A)および
図7(B)に示すように、この実施形態の座屈拘束ブレース1Aでは、各拘束材3の長辺方向に複数の波形材41が一定間隔をおいて配置されており、各波形材41は各拘束材3の短辺方向に波打っている。各波形材41において、突出部位4aは2カ所以上存在する。
【0034】
このような形態でも、突出部位形成部材4によって一定間隔で形成される突出部位4aが上記芯材2に接触することで、上記芯材2と各拘束材3の上記硬化材32との間に所定のクリアランスが形成される。これにより、アンボンド材が不要になり、このアンボンド材の加工手間に起因するアンボンド材の納期遅延等の問題を解消できる。
【0035】
上記の例では、上記芯材2を挟んで配置された状態の両拘束材3内の複数の波形材41の配置ピッチを一致させたが、これに限らず、
図8に示すように、上記芯材2を挟んで配置された状態の一方の拘束材3内の複数の波形材41の配置ピッチと他方の拘束材3内の複数の波形材41の配置ピッチを半ピッチ等ずらしてもよい。
【0036】
また、以上の例では、波形材41として鉄筋(丸鋼、異形鉄筋)を用いたが、これに限らない。例えば、タイトフレーム状の金属製帯状体を波形材41として用いてもよい。幅が広い帯状体であれば、この帯状体が1本備えられた構造の拘束材とすることもできる。また、帯状体の頂部(突出部位となる箇所)は、芯材2に線接触または面接触することになるが、上記頂部に帯状体の幅方向に一定間隔で切り込みを入れることで、芯材2に点接触または線接触させることができる。また、幅が広い帯状体であれば、この帯状体を箱状部材31に溶接ではなくビス固定することもできる。
【0037】
また、以上の例では、波形材41の波形は山形であったが、半円形の波形であってもよい。また、突出部位形成部材4は、波形材41を用いる構成に限らず、短尺のアングル部材や棒体を箱状部材31内に一定間隔で配置した構造でもよい。
【0038】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 :座屈拘束ブレース
1A :座屈拘束ブレース
2 :芯材
3 :拘束材
4 :突出部位形成部材
4a :突出部位
21 :板状体
22 :接合部
22a :延設部分
22b :板片部
31 :箱状部材
31a :壁部
31b :収容凹部
32 :硬化材
35 :棒状スペーサ
41 :波形材
311 :立上部