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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048026
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】炎検知方法及び炎検知システム
(51)【国際特許分類】
   G01J 1/42 20060101AFI20240401BHJP
   G08B 17/12 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
G01J1/42 C
G08B17/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153848
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小田島 徹
【テーマコード(参考)】
2G065
5C085
【Fターム(参考)】
2G065AA12
2G065AA13
2G065BA01
2G065BB27
2G065BC13
2G065BC14
2G065BC16
2G065BC22
2G065BC33
2G065BC35
2G065CA05
2G065CA12
2G065DA06
5C085AA11
5C085BA35
5C085CA08
5C085CA25
5C085DA08
5C085DA16
5C085EA01
5C085EA52
(57)【要約】
【課題】従来技術と比較し誤検知の少ない多波長炎センサを実現するための手段を提供する。
【解決手段】本発明に係る炎検知方法においては、光の第1波長帯の成分のエネルギー量に応答する第1センサから出力された信号の振幅を示す第1振幅経時変化データと、光の第2波長帯の成分のエネルギー量に応答する第2センサから出力された信号の振幅を示す第2振幅経時変化データの取得が行われる。続いて、複数の時点の各々における第1振幅経時変化データが示す振幅と第2振幅経時変化データが示す振幅の組合せを線形近似した一次関数が特定される。そのように特定された一次関数の傾きは、第1波長帯の振幅に対する第2波長帯の振幅の比(分光比)を示す。続いて、分光比を示す一次関数の傾きが所定範囲内であるか否かによって、監視領域における炎の有無が判定される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
或る期間に、光の第1の波長帯の成分のエネルギー量に応答する第1センサから出力された一連の信号が示す振幅の経時変化を表す第1振幅経時変化データと、前記期間に、光の第2の波長帯の成分のエネルギー量に応答する第2センサから出力された一連の信号が示す振幅の経時変化を表す第2振幅経時変化データとを取得するステップと、
前記期間内の複数の時点の各々に関する、前記第1振幅経時変化データが示す当該時点の振幅と前記第2振幅経時変化データが示す当該時点の振幅との組合せにおける振幅間の関係を線形近似した一次関数を特定するステップと、
前記一次関数の傾きに基づき炎の有無を判定するステップと
を備える炎検知方法。
【請求項2】
或る期間に、光の第1の波長帯の成分のエネルギー量に応答する第1センサから出力された一連の信号が示す振幅の経時変化を表す第1振幅経時変化データと、前記期間に、光の第2の波長帯の成分のエネルギー量に応答する第2センサから出力された一連の信号が示す振幅の経時変化を表す第2振幅経時変化データとを取得するステップと、
前記第1振幅経時変化データが表す波の周波数振幅特性を第1周波数振幅特性とし、前記第2振幅経時変化データが表す波の周波数振幅特性を第2周波数振幅特性とするとき、複数の周波数の各々に関する、前記第1周波数振幅特性が示す当該周波数の振幅と前記第2周波数振幅特性が示す当該周波数の振幅との組合せにおける振幅間の関係を線形近似した一次関数を特定するステップと、
前記一次関数の傾きに基づき炎の有無を判定するステップと
を備える炎検知方法。
【請求項3】
前記組合せにおける振幅間の相関係数を算出するステップを備え、
前記炎の有無を判定するステップにおいて、前記一次関数の傾きに加え、前記相関係数に基づき炎の有無を判定する
請求項1又は2に記載の炎検知方法。
【請求項4】
前記第1振幅経時変化データが表す波の周波数位相特性を第1周波数位相特性とし、前記第2振幅経時変化データが表す波の周波数位相特性を第2周波数位相特性とするとき、複数の周波数の各々に関する、前記第1周波数位相特性が示す当該周波数の位相と前記第2周波数位相特性が示す当該周波数の位相との組合せにおける位相間の相関係数を算出するステップを備え、
前記炎の有無を判定するステップにおいて、前記一次関数の傾きに加え、前記相関係数に基づき炎の有無を判定する
請求項1又は2に記載の炎検知方法。
【請求項5】
前記一次関数を第1の一次関数とするとき、
前記第1振幅経時変化データが表す波の周波数位相特性を第1周波数位相特性とし、前記第2振幅経時変化データが表す波の周波数位相特性を第2周波数位相特性とするとき、複数の周波数の各々に関する、前記第1周波数位相特性が示す当該周波数の位相と前記第2周波数位相特性が示す当該周波数の位相との組合せにおける位相間の関係を線形近似した一次関数を第2の一次関数として特定するステップを備え、
前記炎の有無を判定するステップにおいて、前記第1の一次関数の傾きに加え、前記第2の一次関数の傾きに基づき炎の有無を判定する
請求項1又は2に記載の炎検知方法。
【請求項6】
或る期間に、光の第1の波長帯の成分のエネルギー量に応答する第1センサから出力された一連の信号が示す振幅の経時変化を表す第1振幅経時変化データと、前記期間に、光の第2の波長帯の成分のエネルギー量に応答する第2センサから出力された一連の信号が示す振幅の経時変化を表す第2振幅経時変化データとを取得するステップと、
前記第1振幅経時変化データが表す波の周波数位相特性を第1周波数位相特性とし、前記第2振幅経時変化データが表す波の周波数位相特性を第2周波数位相特性とするとき、複数の周波数の各々に関する、前記第1周波数位相特性が示す当該周波数の位相と前記第2周波数位相特性が示す当該周波数の位相との組合せにおける位相間の相関係数を算出するステップと、
前記相関係数に基づき炎の有無を判定するステップと
を備える炎検知方法。
【請求項7】
或る期間に、光の第1の波長帯の成分のエネルギー量に応答する第1センサから出力された一連の信号が示す振幅の経時変化を表す第1振幅経時変化データと、前記期間に、光の第2の波長帯の成分のエネルギー量に応答する第2センサから出力された一連の信号が示す振幅の経時変化を表す第2振幅経時変化データとを取得するステップと、
前記第1振幅経時変化データが表す波の周波数位相特性を第1周波数位相特性とし、前記第2振幅経時変化データが表す波の周波数位相特性を第2周波数位相特性とするとき、複数の周波数の各々に関する、前記第1周波数位相特性が示す当該周波数の位相と前記第2周波数位相特性が示す当該周波数の位相との組合せにおける位相間の関係を線形近似した一次関数を特定するステップと、
前記一次関数の傾きに基づき炎の有無を判定するステップと
を備える炎検知方法。
【請求項8】
或る期間に、光の第1の波長帯の成分のエネルギー量に応答する第1センサから出力された一連の信号が示す振幅の経時変化を表す第1振幅経時変化データと、前記期間に、光の第2の波長帯の成分のエネルギー量に応答する第2センサから出力された一連の信号が示す振幅の経時変化を表す第2振幅経時変化データとを取得する取得手段と、
前記期間内の複数の時点の各々に関する、前記第1振幅経時変化データが示す当該時点の振幅と前記第2振幅経時変化データが示す当該時点の振幅との組合せにおける振幅間の関係を線形近似した一次関数を特定する一次関数特定手段と、
前記一次関数の傾きに基づき炎の有無を判定する判定手段と
を備える炎検知システム。
【請求項9】
或る期間に、光の第1の波長帯の成分のエネルギー量に応答する第1センサから出力された一連の信号が示す振幅の経時変化を表す第1振幅経時変化データと、前記期間に、光の第2の波長帯の成分のエネルギー量に応答する第2センサから出力された一連の信号が示す振幅の経時変化を表す第2振幅経時変化データとを取得する取得手段と、
前記第1振幅経時変化データが表す波の周波数振幅特性を第1周波数振幅特性とし、前記第2振幅経時変化データが表す波の周波数振幅特性を第2周波数振幅特性とするとき、複数の周波数の各々に関する、前記第1周波数振幅特性が示す当該周波数の振幅と前記第2周波数振幅特性が示す当該周波数の振幅との組合せにおける振幅間の関係を線形近似した一次関数を特定する一次関数特定手段と、
前記一次関数の傾きに基づき炎の有無を判定する判定手段と
を備える炎検知システム。
【請求項10】
或る期間に、光の第1の波長帯の成分のエネルギー量に応答する第1センサから出力された一連の信号が示す振幅の経時変化を表す第1振幅経時変化データと、前記期間に、光の第2の波長帯の成分のエネルギー量に応答する第2センサから出力された一連の信号が示す振幅の経時変化を表す第2振幅経時変化データとを取得する取得手段と、
前記第1振幅経時変化データが表す波の周波数位相特性を第1周波数位相特性とし、前記第2振幅経時変化データが表す波の周波数位相特性を第2周波数位相特性とするとき、複数の周波数の各々に関する、前記第1周波数位相特性が示す当該周波数の位相と前記第2周波数位相特性が示す当該周波数の位相との組合せにおける位相間の相関係数を算出する相関係数算出手段と、
前記相関係数に基づき炎の有無を判定する判定手段と
を備える炎検知システム。
【請求項11】
或る期間に、光の第1の波長帯の成分のエネルギー量に応答する第1センサから出力された一連の信号が示す振幅の経時変化を表す第1振幅経時変化データと、前記期間に、光の第2の波長帯の成分のエネルギー量に応答する第2センサから出力された一連の信号が示す振幅の経時変化を表す第2振幅経時変化データとを取得する取得手段と、
前記第1振幅経時変化データが表す波の周波数位相特性を第1周波数位相特性とし、前記第2振幅経時変化データが表す波の周波数位相特性を第2周波数位相特性とするとき、複数の周波数の各々に関する、前記第1周波数位相特性が示す当該周波数の位相と前記第2周波数位相特性が示す当該周波数の位相との組合せにおける位相間の関係を線形近似した一次関数を特定する一次関数特定手段と、
前記一次関数の傾きに基づき炎の有無を判定する判定手段と
を備える炎検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炎を検知する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
各々が異なる波長帯の光に応答する複数の受光センサから出力される信号の強さに基づき、監視領域における炎の有無を判定する装置(以下、「多波長炎センサ」という)がある。
【0003】
多波長炎センサに関する技術を開示している特許文献として、例えば特許文献1がある。特許文献1には、各々が異なる波長帯を観測した受光信号を出力する2つの受光ユニットを備え、それらの受光ユニットが出力する受光信号の相互相関が強い場合はそれらの受光信号の積分値の比に基づき炎の有無を判定し、相互相関が弱い場合は炎の有無の判定を行わない構成の炎検出装置が記載されている。特許文献1には、異なる受光ユニットから出力される受光信号の時間的変化の同時性に基づき燃焼炎の有無を判定することで、より確実な判定を行うことができる、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-128796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多波長炎センサは、一般的に、複数の受光センサの各々が出力する信号(以下、「受光信号」という)の振幅の比が所定の範囲内に入るか否かに基づいて、炎の有無を判定する。
【0006】
多波長炎センサが備える複数の受光センサの各々が出力する受光信号の振幅は、受光センサに応じた波長帯の光の成分のエネルギー量を示す。従って、各受光センサが継続的に出力する一連の受光信号は、その受光センサに応じた波長帯の光の成分のエネルギー量の経時変化を示す。
【0007】
なお、本願において、受光センサが出力する受光信号は、振幅軸方向において連続する値を示すアナログ信号、振幅軸方向において離散する値を示すデジタル信号のいずれであってもよい。また、本願において、受光センサが出力する一連の受光信号は、時間軸方向において連続する信号、時間軸方向において断続する信号のいずれであってもよい。
【0008】
図9は、多波長炎センサが備える2つの受光センサの各々が出力した一連の受光信号の例を模式的に示したグラフである。図9に示すグラフの横軸は時間を示し、縦軸は振幅を示す。図9に含まれるグラフG1は第1の受光センサが出力した受光信号の振幅の経時変化を示し、グラフG2は第2の受光センサが出力した受光信号の振幅の経時変化を示す。
【0009】
従来技術に係る多波長炎センサの一例においては、グラフG1のピーク点P1及びボトム点B1と、それらに対応するグラフG2のピーク点P2及びボトム点B2とが特定され、グラフG1のピーク点P1とボトム点B1の振幅差D1と、グラフG2のピーク点P2とボトム点B2の振幅差D2とが算出され、例えば、振幅差D1に対する振幅差D2の比が所定範囲内であれば監視領域内に炎が有り、その比が所定範囲外であれば監視領域内に炎は無い、と判定される。
【0010】
上述の従来技術に係る多波長炎センサにおいては、グラフG1とグラフG2のピーク点とボトム点が正しく特定される必要があるが、例えば以下の理由により、それらの点を正しく特定することは容易ではない。
【0011】
(1)グラフG1が示す受光信号とグラフG2が示す受光信号の各々には、異なる不明なDCレベル(バイアス値)が含まれているため、それらのDCレベルを特定する必要がある。DCレベルの特定には、例えば移動平均の算出やローパスフィルタ処理等が用いられるが、採用する方法やパラメータ(例えば、ローパスフィルタのカットオフ周波数等)によって特定されるDCレベルが異なり、必ずしもDCレベルを一意に特定できない。すなわち、DCレベルの特定には恣意性が含まれる。
(2)グラフG1とグラフG2の各々が示す波の周期を特定する必要があるが、グラフG1とグラフG2が示す波には大小の波が含まれるため、それらの波の周期を必ずしも一意に特定することはできない。例えば、DCレベルをゼロレベルとした場合のグラフG1とグラフG2のゼロクロスポイントを特定し、時間軸方向において隣り合うゼロクロスポイント間の時間を半周期とすることで、グラフG1とグラフG2の周期を特定する方法があるが、ノイズ除去のためにグラフG1とグラフG2に対し平滑化を行うか否か、また、平滑化の方法やパラメータ(例えば、フォーパスフィルタのカットオフ周波数等)に応じて特定される周期が異なる。従って、必ずしも周期を一意に特定できない。すなわち、周期の特定には恣意性が含まれる。
(3)グラフG1とグラフG2が、異なる光源からの光に応答した信号の経時変化を示している場合がある。その場合、グラフG1とグラフG2は同期しない。しかしながら、グラフG1とグラフG2の波形がどれだけ類似した場合にそれらが同期しており、どれだけ異なった場合にそれらが同期していない、と判定するかを一意に決定することはできない。すなわち、2つの波形間の同期の有無の判定には恣意性が含まれる。
(4)特定したグラフG1のピーク点とボトム点の振幅差や、特定したグラフG2のピーク点とボトム点の振幅差が小さい場合、それらのピーク点とボトム点はノイズによるピーク点とボトム点として除去される必要がある。ただし、どれだけ振幅差が小さければノイズとして除去されるべきかを一意に決定することはできない。すなわち、ノイズとして除去されるべきピーク点及びボトム点の決定には恣意性が含まれる。
【0012】
従って、上述の従来技術に係る多波長炎センサにおいては、正しいピーク点とボトム点を特定するために、多波長炎センサの置かれた環境に応じて閾値等のパラメータが調整される必要があり、その調整が適切に行わなければ、炎の誤検知が生じやすい。
【0013】
また、上述の従来技術に係る多波長炎センサにおいては、ノイズにより生じた異常値がピーク点やボトム点と誤認される危険性がある。従って、ノイズにより炎の誤検知が生じやすい。
【0014】
上述した事情に鑑み、本発明は、従来技術に係る多波長炎センサを用いる場合と比較し、誤検知の少ない炎検知を実現するための手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するため、本発明は、或る期間に、光の第1の波長帯の成分のエネルギー量に応答する第1センサから出力された一連の信号が示す振幅の経時変化を表す第1振幅経時変化データと、前記期間に、光の第2の波長帯の成分のエネルギー量に応答する第2センサから出力された一連の信号が示す振幅の経時変化を表す第2振幅経時変化データとを取得するステップと、前記期間内の複数の時点の各々に関する、前記第1振幅経時変化データが示す当該時点の振幅と前記第2振幅経時変化データが示す当該時点の振幅との組合せにおける振幅間の関係を線形近似した一次関数を特定するステップと、前記一次関数の傾きに基づき炎の有無を判定するステップとを備える炎検知方法及び当該炎検知方法を実行する炎検知システムを提案する。
【0016】
また、本発明は、或る期間に、光の第1の波長帯の成分のエネルギー量に応答する第1センサから出力された一連の信号が示す振幅の経時変化を表す第1振幅経時変化データと、前記期間に、光の第2の波長帯の成分のエネルギー量に応答する第2センサから出力された一連の信号が示す振幅の経時変化を表す第2振幅経時変化データとを取得するステップと、前記第1振幅経時変化データが表す波の周波数振幅特性を第1周波数振幅特性とし、前記第2振幅経時変化データが表す波の周波数振幅特性を第2周波数振幅特性とするとき、複数の周波数の各々に関する、前記第1周波数振幅特性が示す当該周波数の振幅と前記第2周波数振幅特性が示す当該周波数の振幅との組合せにおける振幅間の関係を線形近似した一次関数を特定するステップと、前記一次関数の傾きに基づき炎の有無を判定するステップとを備える炎検知方法及び当該炎検知方法を実行する炎検知システムを提案する。
【0017】
また、本発明は、或る期間に、光の第1の波長帯の成分のエネルギー量に応答する第1センサから出力された一連の信号が示す振幅の経時変化を表す第1振幅経時変化データと、前記期間に、光の第2の波長帯の成分のエネルギー量に応答する第2センサから出力された一連の信号が示す振幅の経時変化を表す第2振幅経時変化データとを取得するステップと、前記第1振幅経時変化データが表す波の周波数位相特性を第1周波数位相特性とし、前記第2振幅経時変化データが表す波の周波数位相特性を第2周波数位相特性とするとき、複数の周波数の各々に関する、前記第1周波数位相特性が示す当該周波数の位相と前記第2周波数位相特性が示す当該周波数の位相との組合せにおける位相間の相関係数を算出するステップと、前記相関係数に基づき炎の有無を判定するステップとを備える炎検知方法及び当該炎検知方法を実行する炎検知システムを提案する。
【0018】
また、本発明は、或る期間に、光の第1の波長帯の成分のエネルギー量に応答する第1センサから出力された一連の信号が示す振幅の経時変化を表す第1振幅経時変化データと、前記期間に、光の第2の波長帯の成分のエネルギー量に応答する第2センサから出力された一連の信号が示す振幅の経時変化を表す第2振幅経時変化データとを取得するステップと、前記第1振幅経時変化データが表す波の周波数位相特性を第1周波数位相特性とし、前記第2振幅経時変化データが表す波の周波数位相特性を第2周波数位相特性とするとき、複数の周波数の各々に関する、前記第1周波数位相特性が示す当該周波数の位相と前記第2周波数位相特性が示す当該周波数の位相との組合せにおける位相間の関係を線形近似した一次関数を特定するステップと、前記一次関数の傾きに基づき炎の有無を判定するステップとを備える炎検知方法及び当該炎検知方法を実行する炎検知システムを提案する。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る炎検知方法又は炎検知システムによれば、従来技術に係る多波長炎センサを用いる場合と比較し、誤検知の少ない炎検知が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】一実施形態に係る炎検知システムの全体構成を示した図。
図2】一実施形態に係るデータ処理ユニットの機能構成を示した図。
図3】一実施形態に係るデータ処理ユニットの処理を説明するためのグラフ。
図4】一実施形態に係るデータ処理ユニットの処理を説明するためのグラフ。
図5】一実施形態に係るデータ処理ユニットの処理を説明するためのグラフ。
図6】一変形例に係るデータ処理ユニットの処理を説明するためのグラフ。
図7】一変形例に係るデータ処理ユニットの処理を説明するためのグラフ。
図8】一変形例に係るデータ処理ユニットの処理を説明するためのグラフ。
図9】従来技術の一例に係る多波長炎センサの処理を説明するためのグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[実施形態]
以下に本発明の一実施形態に係る炎検知システム1を説明する。図1は、炎検知システム1の全体構成を示した図である。炎検知システム1は、センサユニット11とデータ処理ユニット12を備える。
【0022】
センサユニット11は、第1センサ111と、第2センサ112と、通信インタフェース113を備える。
【0023】
第1センサ111は、受光素子1111と、フィルタ1112を備える。受光素子1111は、受けた光のエネルギー量に応じたアナログ信号を出力する素子である。フィルタ1112は光に含まれる所定の波長帯の成分を透過しその他の波長帯の成分を透過しないバンドパスフィルタである。
【0024】
第2センサ112は、受光素子1121と、フィルタ1122を備える。受光素子1121は、受光素子1111と同様に、受けた光のエネルギー量に応じたアナログ信号を出力する素子である。フィルタ1122は、フィルタ1112と同様に、光に含まれる所定の波長帯の成分を透過しその他の波長帯の成分を透過しないバンドパスフィルタである。ただし、フィルタ1112とフィルタ1122は、透過する光の成分の波長帯が異なっている。以下、フィルタ1112が透過する光の成分の波長帯(第1の波長帯の一例)を第1波長帯と呼び、フィルタ1122が透過する光の成分の波長帯(第2の波長帯の一例)を第2波長帯と呼ぶ。
【0025】
通信インタフェース113は、受光素子1111から出力されるアナログ信号をデジタルデータ(以下、「第1振幅データ」という)に変換し、第1振幅データを継続的に、有線又は無線により、データ処理ユニット12に送信する。以下、センサユニット11がデータ処理ユニット12に継続的に送信する一連の第1振幅データを第1振幅経時変化データという。第1振幅経時変化データは、光の第1波長帯の成分のエネルギー量に応答する第1センサ111から出力された一連の信号が示す振幅の経時変化を表す。
【0026】
また、通信インタフェース113は、受光素子1121から出力されるアナログ信号をデジタルデータ(以下、「第2振幅データ」という)に変換し、第2振幅データを継続的に、有線又は無線により、データ処理ユニット12に送信する。以下、センサユニット11がデータ処理ユニット12に継続的に送信する一連の第2振幅データを第2振幅経時変化データという。第2振幅経時変化データは、光の第2波長帯の成分のエネルギー量に応答する第2センサ112から出力された一連の信号が示す振幅の経時変化を表す。
【0027】
センサユニット11は、受光素子1111と受光素子1121が監視領域から向かってくる光を受光するように配置される。なお、監視領域とは、炎の有無を監視する対象の領域である。
【0028】
データ処理ユニット12はコンピュータである。データ処理ユニット12は、データを記憶するメモリ121と、メモリ121に記憶されているプログラムに従い各種データ処理を行うプロセッサ122を備える。また、データ処理ユニット12は、センサユニット11から送信されてくる第1振幅データと第2振幅データを受信する通信インタフェース123と、外部装置が接続される入出力インタフェース124を備える。入出力インタフェース124には、ユーザに対し各種情報を表示するディスプレイ、ユーザに対し各種情報を発音するスピーカ等の通知装置(図示略)が接続される。
【0029】
なお、センサユニット11とデータ処理ユニット12は、図1に示した構成部の他にバッテリ等の構成部を備えるが、図1には炎検知システム1の特徴の説明に必要な構成部のみが示されており、他の構成部は省略されている。
【0030】
図2は、データ処理ユニット12の機能構成を示した図である。すなわち、データ処理ユニット12のプロセッサ122が本実施形態に係るプログラムに従うデータ処理を実行することにより、図2に示す構成部を備える装置として機能する。データ処理ユニット12は、機能構成部として、取得手段1201と、記憶手段1202と、一次関数特定手段1203と、相関係数算出手段1204と、判定手段1205を備える。
【0031】
取得手段1201は、センサユニット11から送信されてくる第1振幅経時変化データと第2振幅経時変化データを取得する。記憶手段1202は各種データを記憶する。例えば、取得手段1201が取得した第1振幅経時変化データと第2振幅経時変化データは記憶手段1202に記憶される。
【0032】
一次関数特定手段1203は、或る期間内の複数の時点の各々に関する、第1振幅経時変化データが表す当該時点における振幅と第2振幅経時変化データが表す当該時点における振幅との組合せにおける振幅間の関係を線形近似した一次関数を特定する。
【0033】
図3は、或る期間における第1振幅経時変化データが表す振幅の経時変化と第2振幅経時変化データが表す振幅の経時変化を示したグラフである。グラフE1が第1振幅経時変化データにより表される振幅の経時変化を示し、グラフE2が第2振幅経時変化データにより表される振幅の経時変化を示している。
【0034】
一次関数特定手段1203は、時点t1、t2、・・・、tn(ただし、nは任意の自然数)の各々における第1振幅経時変化データが表す振幅、すなわち、振幅e1(t1)、e1(t2)、・・・、e1(tn)を特定する。また、一次関数特定手段1203は、時点t1、t2、・・・、tn(ただし、nは任意の自然数)の各々における第2振幅経時変化データが表す振幅、すなわち、振幅e2(t1)、e2(t2)、・・・、e2(tn)を特定する。
【0035】
続いて、一次関数特定手段1203は、同じ時点に応じた第1振幅経時変化データが表す振幅と第2振幅経時変化データが表す振幅を以下のように組み合わせる。
(e1(t1),e2(t1))
(e1(t2),e2(t2))
・・・
・・・
・・・
(e1(tn),e2(tn))
【0036】
続いて、一次関数特定手段1203は、上記の組合せにおける振幅間の関係を線形近似した一次関数を特定する。図4は、上記の組合せに応じたプロットの集まりで構成される散布図と、それらのプロットを近似する直線L1を示したグラフである。図4のグラフにおいて、横軸は第1振幅経時変化データが示す振幅、すなわち、時間領域における第1波長帯の振幅を示し、縦軸は第2振幅経時変化データが示す振幅、すなわち、時間領域における第2波長帯の振幅を示す。一次関数特定手段1203は、例えば最小二乗法により、直線L1により表される一次関数(以下、「一次関数L1」という)(第1の一次関数の一例)を特定する。そのように特定される一次関数L1は、第1波長帯の時間領域における振幅と第2波長帯の時間領域における振幅の関係を表す。
【0037】
一次関数特定手段1203が特定した一次関数L1を示すデータは記憶手段1202に記憶される。
【0038】
相関係数算出手段1204は、複数の周波数の各々に関する、第1振幅経時変化データが表す波の周波数位相特性(以下、「第1周波数位相特性」という)が示す当該周波数の位相と、第2振幅経時変化データが表す波の周波数位相特性(以下、「第2周波数位相特性」という)が示す当該周波数の位相との組合せにおける位相間の相関係数を算出する。
【0039】
図5は、第1周波数位相特性と第2周波数位相特性を示したグラフである。グラフF1が第1周波数位相特性、すなわち、第1振幅経時変化データが表す波の周波数位相特性を示し、グラフF2が第2周波数位相特性、すなわち、第2振幅経時変化データが表す波の周波数位相特性を示している。グラフF1及びグラフF2の横軸は周波数を示し、縦軸は位相を示す。
【0040】
相関係数算出手段1204は、或る期間の第1振幅経時変化データを、例えば高速フーリエ変換し、図5のグラフF1に示される第1周波数位相特性を特定する。また、相関係数算出手段1204は、同じ期間の第2振幅経時変化データを、例えば高速フーリエ変換し、図5のグラフF2に示される第2周波数位相特性を特定する。
【0041】
相関係数算出手段1204は、周波数f1、f2、・・・、fm(ただし、mは任意の自然数)の各々における第1周波数位相特性が示す位相、すなわち、位相g1(f1)、g1(f2)、・・・、g1(fm)を特定する。また、相関係数算出手段1204は、周波数f1、f2、・・・、fm(ただし、mは任意の自然数)の各々における第2周波数位相特性が示す位相、すなわち、位相g2(f1)、g2(f2)、・・・、g2(fm)を特定する。
【0042】
続いて、相関係数算出手段1204は、同じ周波数に応じた第1周波数位相特性が示す位相と第2周波数位相特性が示す位相を以下のように組み合わせる。
(g1(f1),g2(f1))
(g1(f2),g2(f2))
・・・
・・・
・・・
(g1(fm),g2(fm))
【0043】
続いて、相関係数算出手段1204は、上記の組合せにおける位相間の相関係数(以下、「相関係数C」という)を算出する。相関係数算出手段1204が算出した相関係数Cは記憶手段1202に記憶される。
【0044】
判定手段1205は、一次関数特定手段1203により特定された一次関数L1の傾きと、相関係数算出手段1204により算出された相関係数Cとに基づき、監視領域における炎の有無を判定する。
【0045】
なお、一次関数L1の傾きは第1波長帯の振幅に対する第2波長帯の振幅の比(以下、「分光比」という)を示す。
【0046】
また、相関係数Cは第1波長帯の振幅の経時変化と第2波長帯の振幅の経時変化の同期性を示す。すなわち、相関係数Cが1に十分に近ければ、第1波長帯の振幅の経時変化と第2波長帯の振幅の経時変化が同期しており、第1センサ111と第2センサ112が同じ光源からの光を受光していることが分かる。
【0047】
判定手段1205は、例えば、一次関数L1の傾きが炎の分光比に応じた所定範囲内であり、かつ、相関係数Cが1を上限とする所定範囲(例えば、0.8~1.0等)内である場合、監視領域に炎が有ると判定し、それ以外の場合、監視領域に炎は無いと判定する。
【0048】
以上がデータ処理ユニット12の機能構成の説明である。
【0049】
データ処理ユニット12は、監視領域における炎の有無の判定結果、すなわち、炎感知の結果の通知を、データ処理ユニット12に接続されているディスプレイ、スピーカ等の通知装置に指示する。通知装置は、データ処理ユニット12からの指示に従い、監視領域における炎の有無をユーザに通知する。
【0050】
上述した炎検知システム1によれば、一次関数の傾きで示される分光比と、相関係数で示される同期の有無に基づき炎の有無が判定されるため、センサユニット11の置かれる環境に左右されず、ノイズ耐性の高い炎検知が行われる。その結果、従来技術による場合と比較し、誤検知の少ない炎検知が実現される。
【0051】
[変形例]
上述の実施形態は本発明の一具体例であって、本発明の技術的思想の範囲内において様々に変形可能である。以下にそれらの変形の例を示す。なお、以下に示す2以上の変形例が適宜組み合わされてもよい。
【0052】
(1)上述した実施形態においては、第1振幅経時変化データが示す第1波長帯の時間領域における振幅と、第2振幅経時変化データが示す第2波長帯の時間領域における振幅との関係を示す一次関数L1の傾きにより示される分光比が、炎の有無の判定に用いられる。これに代えて、第1振幅経時変化データが示す第1波長帯の周波数領域における振幅と、第2振幅経時変化データが示す第2波長帯の周波数領域における振幅との関係を示す一次関数の傾きにより示される分光比が、炎の有無の判定に用いられてもよい。
【0053】
この変形例において、一次関数特定手段1203は、複数の周波数の各々に関する、第1振幅経時変化データが表す波の周波数振幅特性(以下、「第1周波数振幅特性」という)が示す当該周波数の振幅と、第2振幅経時変化データが表す波の周波数振幅特性(以下、「第2周波数振幅特性」という)が示す当該周波数の振幅との組合せにおける振幅間の関係を線形近似した一次関数を特定する。
【0054】
図6は、第1周波数振幅特性と第2周波数振幅特性を示したグラフである。グラフH1が第1周波数振幅特性、すなわち、第1振幅経時変化データが表す波の周波数振幅特性を示し、グラフH2が第2周波数振幅特性、すなわち、第2振幅経時変化データが表す波の周波数振幅特性を示している。グラフH1及びグラフH2の横軸は周波数を示し、縦軸は振幅を示す。
【0055】
一次関数特定手段1203は、或る期間の第1振幅経時変化データを、例えば高速フーリエ変換し、図6のグラフH1に示される第1周波数振幅特性を特定する。また、一次関数特定手段1203は、同じ期間の第2振幅経時変化データを、例えば高速フーリエ変換し、図6のグラフH2に示される第2周波数振幅特性を特定する。
【0056】
一次関数特定手段1203は、周波数h1、h2、・・・、hp(ただし、pは任意の自然数)の各々における第1周波数振幅特性が示す振幅、すなわち、振幅j1(h1)、j1(h2)、・・・、j1(hp)を特定する。また、一次関数特定手段1203は、周波数h1、h2、・・・、hp(ただし、pは任意の自然数)の各々における第2周波数振幅特性が示す振幅、すなわち、振幅j2(h1)、j2(h2)、・・・、j2(hp)を特定する。
【0057】
続いて、一次関数特定手段1203は、同じ周波数に応じた第1周波数振幅特性が示す振幅と第2周波数振幅特性が示す振幅を以下のように組み合わせる。
(j1(h1),j2(h1))
(j1(h2),j2(h2))
・・・
・・・
・・・
(j1(hp),j2(hp))
【0058】
続いて、一次関数特定手段1203は、上記の組合せにおける振幅間の関係を線形近似した一次関数を特定する。図7は、上記の組合せに応じたプロットの集まりで構成される散布図と、それらのプロットを近似する直線L2を示したグラフである。図7のグラフにおいて、横軸は第1周波数振幅特性が示す振幅、すなわち、周波数領域における第1波長帯の振幅を示し、縦軸は第2周波数振幅特性が示す振幅、すなわち、周波数領域における第2波長帯の振幅を示す。一次関数特定手段1203は、例えば最小二乗法により、直線L2により表される一次関数(以下、「一次関数L2」という)(第1の一次関数の一例)を特定する。
【0059】
上記のように特定される一次関数L2は、第1波長帯の周波数領域における振幅と第2波長帯の周波数領域における振幅の関係を表す。そして、一次関数L2の傾きは、上述した実施形態における一次関数L1の傾きと同様に、分光比、すなわち、第1波長帯の振幅に対する第2波長帯の振幅の比を示す。
【0060】
一次関数特定手段1203が特定した一次関数L2を示すデータは記憶手段1202に記憶される。
【0061】
この変形例において、判定手段1205は、実施形態における一次関数L1の傾きに代えて、上記のように一次関数特定手段1203により特定された一次関数L2の傾きを用いて、監視領域における炎の有無を判定する。
【0062】
すなわち、判定手段1205は、一次関数L2の傾きが炎の分光比に応じた所定範囲内であり、かつ、相関係数Cが1を上限とする所定範囲(例えば、0.8~1.0等)内である場合、監視領域に炎が有ると判定し、それ以外の場合、監視領域に炎は無いと判定する。
【0063】
ところで、この変形例においては、上述のように、周波数領域における第1波長帯の振幅と第2波長帯の振幅の関係を表す一次関数L2の傾きにより示される分光比に基づき、炎の有無を判定する。この一次関数L2は、図7に例示される散布図から特定されるが、第1センサ111と第2センサ112が同じ光源からの光を受光し、正しい信号を出力しているならば、この散布図にプロットで示される、周波数領域における同じ周波数の第1波長帯の振幅と第2波長帯の振幅の組合せにおける振幅間の相関係数は、十分に1に近いはずである。従って、その相関係数が1から大きく乖離している場合、第1センサ111と第2センサ112が異なる光源からの光を受光しているか、もしくは、第1センサ111又は第2センサ112が出力した信号にノイズが含まれる等の理由で、一次関数L2の傾きが、炎の分光比を示していない可能性が高い。
【0064】
従って、相関係数算出手段1204が、上述した変形例において一次関数特定手段1203が一次関数L2の特定に用いる、以下の、周波数領域における第1波長帯の振幅と第2波長帯の振幅の組合せにおける振幅間の相関係数(以下、「相関係数Q」という)を算出し、判定手段1205が相関係数Qに基づき、炎の有無を判定してもよい。
(j1(h1),j2(h1))
(j1(h2),j2(h2))
・・・
・・・
・・・
(j1(hp),j2(hp))
【0065】
判定手段1205は、例えば、一次関数L2の傾きが炎の分光比に応じた所定範囲内であり、相関係数Qが1を上限とする所定範囲(例えば、0.8~1.0等)内であり、かつ、相関係数Cが1を上限とする所定範囲(例えば、0.8~1.0等)内である場合、監視領域に炎が有ると判定し、それ以外の場合、監視領域に炎は無いと判定する。
【0066】
(2)上述した実施形態においては、第1振幅経時変化データが示す第1波長帯の周波数領域における位相と、第2振幅経時変化データが示す第2波長帯の周波数領域における位相との相関性を示す相関係数Cに基づき、炎の有無が判定される。これに代えて、もしくは加えて、第1振幅経時変化データが示す第1波長帯の周波数領域における位相と、第2振幅経時変化データが示す第2波長帯の周波数領域における位相との関係を示す一次関数の傾きに基づき、炎の有無が判定に用いられてもよい。
【0067】
この変形例において、一次関数特定手段1203は、上述した実施形態において相関係数算出手段1204が相関係数Cの算出に用いる、以下の、第1周波数位相特性が示す位相と第2周波数位相特性が示す位相の組合せを用いる。
(g1(f1),g2(f1))
(g1(f2),g2(f2))
・・・
・・・
・・・
(g1(fm),g2(fm))
【0068】
なお、一次関数特定手段1203が上記の組合せの生成を行ってもよいし、相関係数算出手段1204が生成した上記の組合せを一次関数特定手段1203が利用してもよい。
【0069】
一次関数特定手段1203は、上記の組合せにおける位相間の関係を線形近似した一次関数を特定する。
【0070】
図8は、上記の組合せに応じたプロットの集まりで構成される散布図と、それらのプロットを近似する直線L3を示したグラフである。図8のグラフにおいて、横軸は第1周波数位相特性が示す位相、すなわち、周波数領域における第1波長帯の位相を示し、縦軸は第2周波数位相特性が示す位相、すなわち、周波数領域における第2波長帯の位相を示す。一次関数特定手段1203は、例えば最小二乗法により、直線L3により表される一次関数(以下、「一次関数L3」という)(第2の一次関数の一例)を特定する。
【0071】
第1センサ111と第2センサ112が同じ光源からの光を受光している場合、一次関数L3の傾きは1に十分に近い値となる。従って、この変形例において、判定手段1205は、例えば、一次関数L1の傾きが炎の分光比に応じた所定範囲内であり、かつ、一次関数L3の傾きが1を含む所定範囲(例えば、0.9~1.1等)内である場合、監視領域に炎が有ると判定し、それ以外の場合、監視領域に炎は無いと判定する。
【0072】
(3)上述した実施形態においては、第1波長帯の時間領域における振幅と第2波長帯の時間領域における振幅の関係を表す一次関数L1の傾きにより示される分光比に基づき、炎の有無を判定する。この一次関数L1は、図4に例示される散布図から特定されるが、第1センサ111と第2センサ112が同じ光源からの光を受光し、正しい信号を出力しているならば、この散布図にプロットで示される、時間領域における同じ時点の第1波長帯の振幅と第2波長帯の振幅の組合せにおける振幅間の相関係数は、十分に1に近いはずである。従って、その相関係数が1から大きく乖離している場合、第1センサ111と第2センサ112が異なる光源からの光を受光しているか、もしくは、第1センサ111又は第2センサ112が出力した信号にノイズが含まれる等の理由で、一次関数L1の傾きが、炎の分光比を示していない可能性が高い。
【0073】
従って、相関係数算出手段1204が、上述した実施形態において一次関数特定手段1203が一次関数L1の特定に用いる、以下の、時間領域における第1波長帯の振幅と第2波長帯の振幅の組合せにおける振幅間の相関係数(以下、「相関係数K」という)を算出し、判定手段1205が相関係数Kに基づき、炎の有無を判定してもよい。
(e1(t1),e2(t1))
(e1(t2),e2(t2))
・・・
・・・
・・・
(e1(tn),e2(tn))
【0074】
判定手段1205は、例えば、一次関数L1の傾きが炎の分光比に応じた所定範囲内であり、相関係数Kが1を上限とする所定範囲(例えば、0.8~1.0等)内であり、かつ、相関係数Cが1を上限とする所定範囲(例えば、0.8~1.0等)内である場合、監視領域に炎が有ると判定し、それ以外の場合、監視領域に炎は無いと判定する。
【0075】
(4)上述した実施形態において、炎検知システム1は、炎の有無の判定において、一次関数の傾きにより示される分光比を用いる。これに代えて、炎検知システム1が、炎の有無の判定において、一次関数の傾きにより示される分光比に代えて、従来技術において用いられる分光比を用いてもよい。例えば、炎検知システム1が、第1波長帯の時間領域における振幅のピーク値とボトム値の差に対する、第2波長帯の時間領域における振幅のピーク値とボトム値の差(図9参照)の比を分光比として算出し、炎の有無の判定に用いてもよい。
【0076】
(5)上述した実施形態において、炎検知システム1は、炎の有無の判定において、第1波長帯と第2波長帯の位相の同期性を示す指標値として、第1波長帯の振幅の経時変化と第2波長帯の振幅の経時変化の同期性を示す相関係数を算出して用いる。炎検知システム1が、炎の有無の判定において、2つの波長帯の振幅の経時変化の同期性を示す相関係数に代えて、従来技術において用いられる位相の同期性を示す指標値(例えば、第1振幅経時変化データと第2振幅経時変化データの相互相関関数)を算出して用いてもよい。
【0077】
また、炎検知システム1が、炎の有無の判定において位相の同期性を用いず、例えば分光比のみに基づいて炎の有無の判定を行ってもよい。
【0078】
(6)上述した実施形態において、炎検知システム1が備える受光センサの数は2つであるものとしたが、炎検知システム1が3以上の受光センサを備え、それらの受光センサが出力する3系列以上の信号に基づき炎検知を行ってもよい。
【0079】
(7)上述した実施形態において、データ処理ユニット12に接続されるセンサユニット11の数は1つであるものとしたが、複数のセンサユニット11がデータ処理ユニット12に接続されてもよい。
【0080】
(8)上述した実施形態において、炎検知システム1はセンサユニット11とデータ処理ユニット12により構成されるものとしたが、炎検知システム1の構成はこれに限られない。例えば、炎検知システム1が、センサユニット11とデータ処理ユニット12の機能を備える1つの装置で構成されてもよい。
【0081】
(9)上述した実施形態又は変形例において、周波数振幅特性又は周波数位相特性を特定するために高速フーリエ変換が行われるものとしたが、時間領域のデータから周波数領域のデータを特定するために用いられる変換方法は高速フーリエ変換に限られない。例えば、離散フーリエ変換等が用いられてもよい。
【0082】
(10)本発明は、上述した炎検知システム1により例示される炎検知システム、上述したデータ処理ユニット12が行う処理により例示される炎検知方法、及び、上述したデータ処理ユニット12が行う処理により例示される処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを提供する。
【符号の説明】
【0083】
1…炎検知システム、11…センサユニット、12…データ処理ユニット、111…第1センサ、112…第2センサ、113…通信インタフェース、121…メモリ、122…プロセッサ、123…通信インタフェース、124…入出力インタフェース、1111…受光素子、1112…フィルタ、1121…受光素子、1122…フィルタ、1201…取得手段、1202…記憶手段、1203…一次関数特定手段、1204…相関係数算出手段、1205…判定手段。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9