(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048028
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】ガラスクロス、プリプレグ、およびプリント配線基板
(51)【国際特許分類】
H05K 1/03 20060101AFI20240401BHJP
D03D 1/00 20060101ALI20240401BHJP
D03D 15/267 20210101ALI20240401BHJP
C03C 25/1095 20180101ALI20240401BHJP
C03C 25/16 20060101ALI20240401BHJP
C03C 25/32 20180101ALI20240401BHJP
C08J 5/24 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
H05K1/03 610T
D03D1/00 A
D03D15/267
C03C25/1095
C03C25/16
C03C25/32
C08J5/24 CER
C08J5/24 CEZ
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153850
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 正朗
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 弘司
(72)【発明者】
【氏名】横江 智之
(72)【発明者】
【氏名】三品 一志
(72)【発明者】
【氏名】柿崎 宏昂
【テーマコード(参考)】
4F072
4G060
4L048
【Fターム(参考)】
4F072AA04
4F072AA07
4F072AB09
4F072AB15
4F072AB28
4F072AD23
4F072AG03
4F072AH02
4F072AH31
4F072AL13
4G060BD15
4G060BD22
4G060CB12
4L048AA03
4L048AA34
4L048AA46
4L048AA51
4L048AB07
4L048AB11
4L048AC12
4L048BA01
4L048CA00
4L048CA11
4L048CA15
4L048DA43
4L048EB00
(57)【要約】
【課題】弛みが少なく、厚さ、通気度、樹脂含浸性の特性が均一な低誘電ガラスクロス、ならびに該ガラスクロスを用いたプリプレグ、およびプリント配線基板を提供する。
【解決手段】複数本のガラスフィラメントからなるガラス糸を経糸及び緯糸として構成された、厚さ5μm~100μmのガラスクロスであって、
前記ガラスクロスの幅方向の長さが1000mm以上であって、
前記ガラスクロスの幅方向端部と幅方向中央部の経糸幅の差Xが、経糸幅の標準偏差α以下である、ガラスクロスである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本のガラスフィラメントからなるガラス糸を経糸及び緯糸として構成された、厚さ5μm~100μmのガラスクロスであって、
前記ガラスクロスの幅方向の長さが1000mm以上であり、かつ
前記ガラスクロスの幅方向端部と幅方向中央部の経糸幅の差Xが、経糸幅の標準偏差α以下である、ガラスクロス。
【請求項2】
前記経糸幅の差Xが経糸幅の標準偏差αの0.7倍以下である、請求項1に記載のガラスクロス。
【請求項3】
前記経糸幅の差Xが経糸幅の標準偏差αの0.5倍以下である、請求項1又は2に記載のガラスクロス。
【請求項4】
前記経糸幅の標準偏差αが、経糸幅の平均値βの0.08倍以下である、請求項1又は2に記載のガラスクロス。
【請求項5】
前記経糸幅の標準偏差αが、経糸幅の平均値βの0.04倍以下である、請求項1又は2に記載のガラスクロス。
【請求項6】
前記経糸幅の標準偏差αが、経糸幅の平均値βの0.03倍以下である、請求項1又は2に記載のガラスクロス。
【請求項7】
前記ガラス糸のTEXが、1.0以上25以下である、請求項1又は2に記載のガラスクロス。
【請求項8】
弾性係数が50GPa以上70GPa以下のガラス糸で構成された、請求項1又は2に記載のガラスクロス。
【請求項9】
弾性係数が50GPa以上63GPa以下のガラス糸で構成された、請求項1又は2に記載のガラスクロス。
【請求項10】
前記ガラスクロス中の、ホウ素の含有量とリンの含有量との和が、5質量%以上20質量%以下である、請求項1又は2に記載のガラスクロス。
【請求項11】
前記ガラスクロス中の、ホウ素の含有量とリンの含有量との和が、6.5質量%以上20質量%以下である、請求項1又は2に記載のガラスクロス。
【請求項12】
請求項1又は2に記載のガラスクロスと、前記ガラスクロスに含浸したマトリックス樹脂組成物と、を有するプリプレグ。
【請求項13】
請求項1又は2に記載のガラスクロスと、前記ガラスクロスに含浸したマトリックス樹脂組成物の硬化物と、を有するプリント配線基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスクロス、プリプレグ、およびプリント配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の情報通信社会の発達とともに、データ通信及び/又は信号処理が大容量で高速に行われるようになり、例えば、ハイエンドサーバー又はハイエンドルータ/スイッチ、スーパーコンピュータ、基地局等の通信機器又は計測器に用いられるプリント配線板の低誘電化が著しく進行している。そのため、プリント配線板を構成するガラスクロスにおいても、低誘電ガラスクロスが多く提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されている低誘電ガラスクロスは、従来から一般に使用されているEガラスクロスに対して、ガラス組成中に酸化ホウ素(B2O3)を多く配合し、同時に二酸化ケイ素(SiO2)等の他の成分の配合量を調整することで、低誘電率を実現している。
【0004】
低誘電ガラスクロスの性能や品質の幅方向のバラツキを改善する方法としては、特許文献2に低誘電ガラスクロスの端部弛みが改善されたガラスクロス、特許文献3に、基板反りが改善されたガラスクロスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2010-508226号公報
【特許文献2】国際公開第2021/124913号
【特許文献3】特開2017-132651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らが検討をしたところ、このような低誘電化したガラス糸を用いて作製した低誘電ガラスクロスは、従来から用いられているEガラスクロスと比較し、その性能や品質に大きなばらつきがあることがわかってきた。
【0007】
低誘電ガラスクロスは、従来のEガラスクロスと比較して弛みが大きい傾向にある。特に幅方向端部と中央部に大きな弛みが発生する。これは、低誘電ガラスクロスは、弾性係数が低く、ガラスクロスの風合いが弱いためと推測される。また、本発明者らが低誘電ガラスクロスを詳細に観察した結果、幅方向で厚さの分布が異なり、幅方向端部の厚みが中央部の厚みより約1割厚くなる傾向があることが判明した。さらに、通気度や樹脂含浸性等の特性も幅方向、特に幅方向端部で異なることが判明した。このようなガラスクロスの性能や品質のばらつきは、それを用いて得られるプリプレグ、プリント配線板用の積層板等の特性や品質にも影響を与える(樹脂含有量、耐熱性、銅箔ピール強度、寸法安定性など)。
【0008】
特許文献2に開示のガラスクロスは、経糸と平行な方向の応力-歪曲線の傾き差を、幅方向の端部と中央部とで10%以下の差異に抑えることで、ガラスクロスの端部の弛みが改善されることが開示されている。しかしながら、特許文献2に開示されているガラスクロスは、低誘電ガラスクロスの弛みにおいて、いまだ改善の余地がある。
【0009】
特許文献3に開示のガラスクロスは、経糸方向の応力-歪曲線の伸び量の幅方向差異を10%以下に抑えることで、基板の反りが改善された低誘電ガラスクロスが開示されている。しかしながら、基板の反りには、緯糸方向の伸び量も大きく関与しており、通常、ガラスクロスは経糸より緯糸の方が大きく伸びる特性を有しているため、経糸の伸び量を制御するだけでは、基板反りを改善することはできず、ガラスクロスの弛みにおいて、いまだ改善の余地がある。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、弛みが少なく、厚さ、通気度、樹脂含浸性の特性が均一な低誘電ガラスクロス、該ガラスクロスを用いたプリプレグ、プリント配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ガラスクロスの端部と中央部の経糸幅の差異を経糸幅のバラツキに対して所定範囲とすることで、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[項1]
複数本のガラスフィラメントからなるガラス糸を経糸及び緯糸として構成された、厚さ5μm~100μmのガラスクロスであって、
前記ガラスクロスの幅方向の長さが1000mm以上であり、かつ
前記ガラスクロスの幅方向端部と幅方向中央部の経糸幅の差Xが、経糸幅の標準偏差α以下である、ガラスクロス。
[項2]
前記経糸幅の差Xが経糸幅の標準偏差αの0.7倍以下である、項1に記載のガラスクロス。
[項3]
前記経糸幅の差Xが経糸幅の標準偏差αの0.5倍以下である、項1又は2に記載のガラスクロス。
[項4]
前記経糸幅の標準偏差αが、経糸幅の平均値βの0.08倍以下である、項1~3の何れか1項に記載のガラスクロス。
[項5]
前記経糸幅の標準偏差αが、経糸幅の平均値βの0.04倍以下である、項1~4の何れか1項に記載のガラスクロス。
[項6]
前記経糸幅の標準偏差αが、経糸幅の平均値βの0.03倍以下である、項1~5の何れか1項に記載のガラスクロス。
[項7]
前記ガラス糸のTEXが、1.0以上25以下である、項1~6の何れか1項に記載のガラスクロス。
[項8]
弾性係数が50GPa以上70GPa以下のガラス糸で構成された、項1~7の何れか1項に記載のガラスクロス。
[項9]
弾性係数が50GPa以上63GPa以下のガラス糸で構成された、項1~8の何れか1項に記載のガラスクロス。
[項10]
前記ガラスクロス中の、ホウ素の含有量とリンの含有量との和が、5質量%以上20質量%以下である、項1~9の何れか1項に記載のガラスクロス。
[項11]
前記ガラスクロス中の、ホウ素の含有量とリンの含有量との和が、6.5質量%以上20質量%以下である、項1~10の何れか1項に記載のガラスクロス。
[項12]
項1~11の何れか1項に記載のガラスクロスと、前記ガラスクロスに含浸したマトリックス樹脂組成物と、を有するプリプレグ。
[項13]
項1~11の何れか1項に記載のガラスクロスと、前記ガラスクロスに含浸したマトリックス樹脂組成物の硬化物と、を有するプリント配線基板。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、弛みが少なく、厚さ、通気度、樹脂含浸性等の特性が均一な低誘電ガラスクロスを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0015】
〔ガラスクロス〕
本実施形態のガラスクロスは、複数本のガラスフィラメントからなるガラス糸を経糸及び緯糸として構成された、厚さ5μm~100μmのガラスクロスであって、ガラスクロスの幅方向の長さが1000mm以上であって、幅方向端部と幅方向中央部の経糸幅の差が、経糸幅の標準偏差以下である。
【0016】
ここで幅方向端部とは、幅方向の長さが1000mm以上のガラスクロス幅方向の最端部から100mmより幅方向の最端部から250mmの領域をいう。また、幅方向中央部は幅方向の長さが1000mm以上のガラスクロスの幅方向中心から両端側に75mmまでの領域をいう。
幅方向端部と幅方向中央部の経糸幅の差、および経糸幅の標準偏差は後述する実施例記載のようにして測定する。
【0017】
低誘電ガラスクロスは、Eガラスクロスと比較して、幅方向の両端部分、中部分に弛みが発生し易い。また、幅方向の両端部近傍では、厚みが約10%厚くなる傾向にある。さらに、通気度や樹脂含浸性等の特性も幅方向、特に幅方向端部分で異なる傾向にある。本発明者らは、上記の低誘電ガラスクロスの問題を解決するために、先ず、どのような原因で上記問題が生じているか検討した結果、幅方向の両端部分では、ガラスクロスの織物構造が、幅方向の中央部分の織物構造と大きく異なっていることが判明した。
【0018】
すなわち、幅方向の長さが1000mm以上のガラスクロスの場合、経糸は、幅方向の最端部から100mmの箇所より中央側に150mmの範囲(最端部から100mmより幅方向の最端部から250mmの領域)は、幅方向には水平にほぼ一列に並び、うねり構造は殆どなく直線に近い状態であった。一方で、最端部から中央側に100mmの範囲、及び中央部では、経糸は水平に対して交互に上下して配置されており、うねり構造を有していた。このような織物構造が形成されているため、ガラスクロスを水平方向に搬送する際、最端部から中央側に約100mmまでの範囲、および中央部では、重力の作用により、経糸が伸びることでガラスクロスが下方に垂れ弛むことが判明した(最端部より100mmの箇所から中央側に150mmの範囲では、経糸が張っているため、重力の作用により垂れない)。つまり、低誘電ガラスクロスの弛みの原因は、幅方向で不均一な織物構造に起因することが明らかとなった。そして、上述した織物構造の幅方向の歪みを補正することで、低誘電ガラスクロスの弛みを改善できることを見出した。
【0019】
また、最端部から約100mmの箇所より中央側に150mmの範囲は、経糸が水平にほぼ一列に並んでいるのに沿って緯糸が大きなうねりを形成するために、厚さが厚くなることも判明した。上述と同様に、織物構造の幅方向の歪みを補正することで、低誘電ガラスクロスの厚さを幅方向で均一とすることが出来ることを見出した。さらに、通気度や、樹脂含浸性、並びに応力-歪曲線における経糸方向の伸び量及び傾きの幅方向の違いも、織物構造の幅方向の歪みを補正することで改善されることを見出した。
さらに、経糸及び緯糸が密に充填されるため、ガラスクロスの厚さも低減される。
【0020】
本実施形態のガラスクロスは、上述の通り、幅方向端部と幅方向中央部の経糸幅の差Xが、経糸幅の標準偏差α以下である。より好ましくは経糸幅の差Xが経糸幅の標準偏差αの0.7倍以下であり、さらに好ましくは経糸幅の差Xが経糸幅の標準偏差αの0.5倍以下である。幅方向端部と幅方向中央部の経糸幅の差Xが、経糸幅の標準偏差α以下であると、織物構造が幅方向で均一になり、ガラスクロスの弛み、厚さ、樹脂含浸性、通気度の幅方向の差が小さく改善される。
幅方向端部と幅方向中央部の経糸幅の差Xが小さい方が良く、実質的に同じ経糸幅であるのが最も良い。幅方向端部の方が幅方向中央部より広くても、経糸幅の標準偏差の0.3倍までであれば、ガラスクロスの弛み、厚さ、樹脂含浸性、通気度の幅方向の差異は改善されるので、幅方向端部と幅方向中央部の経糸幅の差Xの下限値は、-0.3αであることが好ましい(マイナス標準偏差の0.3倍)。
【0021】
本発明者らは、下記のような作用機序により、織物構造の歪みが、扁平加工、開繊加工時時に、ガラス糸束のフィラメントが散らされて糸束が拡幅されながら織物構造が再形成される過程で生じることを突き止めた。
扁平加工、開繊加工は、高圧水スプレーを利用する加工、バイブロウォッシャーによる加工、又は液体を媒体とした高周波振動を利用する加工等によって行われる。これらの加工は、ガラスクロスの経糸方向に張力を作用させて水平方向に搬送させながら行われるが、この際、ガラスクロスには、自重により、下方向に垂れるような力が作用する。さらに、これらの加工は水を利用して行われるため、水を含んだガラスクロスの自重は増し、下方向に垂れようとする力は大きくなる。このようにして、ガラスクロスには、搬送ロールによる支持と、経糸方向の張力と、自重による下方向の力とが複合的に作用する。その結果、端部から100mmの箇所より端部から300mmの範囲に、経糸張力が局所的に強く作用する。これにより、端部から100mmの箇所より端部から300mmの範囲は、経糸の拡幅が進まず、経糸は張った状態が維持される。一方、端部より100mm内側の範囲、および中央部は、経糸の拡幅が進み、織物構造が形成される過程で経糸のうねりも形成される。このようにして、織物構造の幅方向の歪みが形成されることが分かった。
【0022】
上述した、織物構造の幅方向の歪みが形成される作用機序の知見に基づき、ガラスクロス(生機)の糊水洗および高圧水スプレーによる開繊処理、シランカップリング剤処理後の高圧水スプレーによる開繊処理時に、高圧水スプレーの圧力の幅方向の分布、糊水洗および高圧水の加工力、MDに作用させる張力を調整し、幅方向の端部から100mmの箇所より端部から300mmの範囲の経糸の拡幅が、他の範囲と同等になるように以下の方法のように調整した。
【0023】
・整経・製織段階で、端部から100mmの箇所より端部から300mmの範囲の経糸の張りを他の範囲より弱くするように、経糸張力を設定して、生機を作成し、扁平加工、開繊加工を施す方法、
・最端部より100mmの範囲、および中央部の加工力を弱くし、端部から100mmの箇所より端部から300mmの範囲の加工力を強くする方法、
・扁平加工、開繊加工時の張力を弱くして、扁平加工・開繊加工時に端部から100mmの箇所より端部から300mmの範囲の経糸に作用する張力と他の範囲との張力差を小さくする方法、
・扁平加工、開繊加工の加工力を弱くして、糸束の断面構造の変化、織物構造の変化を小さく抑える方法、
これらを単独、或いは適時組み合わせることで、織物構造の幅方向の歪みが改善されることを見出した。
【0024】
本実施形態のガラスクロスは、経糸幅の標準偏差αは経糸幅の平均値βの0.08倍以下であることが好ましい。
【0025】
経糸幅の標準偏差αが経糸幅の平均値βの0.08倍以下であると、より織物構造が幅方向で均一になり易く、ガラスクロスの弛み、厚さ、樹脂含浸性、通気度の幅方向の端部と中央部との差が小さく改善されるので好ましい。
【0026】
経糸幅の標準偏差αは、好ましくは経糸幅の平均値βの0.04倍以下であり、より好ましくは経糸幅の平均値βの0.03倍以下である。
経糸幅の平均値は後述する実施例記載のように測定する。
【0027】
経糸幅の標準偏差は小さい方が、より織物構造が幅方向で均一になり易いため好ましく、特に限定されないが0以上であることが好ましい。
経糸幅の標準偏差を上記範囲内にするには、経糸に用いるガラス糸の撚り数、フィラメント径、TEX等のバラツキが小さい原糸を用いる方法、整経製織工程、扁平開繊工程の張力や加工力を幅方向で均一に近づける方法、張力や加工力の変動を小さくする方法が有効である。また、上述のように、幅方向端部と中央部の糸幅差を小さくする方法も有効である。
【0028】
本実施形態のガラスクロスは、厚さ5μm以上100μm以下である。本実施形態のガラスクロスの厚さが100μm以下であれば、プリント配線基板の高密度化、高多層化が可能となる。上記厚さはプリント配線基板の薄型化や高密度化の観点から薄い方が好ましいが、実用的な強度を維持する観点から、厚さの下限は5μmである。本実施形態ガラスクロスの厚さは好ましくは6μm以上、より好ましくは8μm以上である。また、本実施形態のガラスクロスの厚さは好ましくは98μm以下、より好ましくは96μm以下である。
本実施形態のガラスクロスの厚さは実施例記載の方法で測定することができる。
【0029】
本実施形態のガラスクロスを構成するガラス糸の弾性係数は50GPa以上が好ましく、より好ましくは51Gpa以上であり、さらに好ましくは52GPa以上である。
弾性係数が50GPa以上であれば、ガラス糸の剛性が向上し、ガラスクロス加工時の扁平加工、開繊加工時の構造変化をコントロールし、幅方向に均一な織物構造にし易い傾向にある。
他方、ガラス糸の弾性係数は70GPa以下であることが好ましく、より好ましくは65GPa以下であり、さらに好ましくは63GPa以下である。弾性係数が70GPa以下であれば、ガラス糸が適度な柔軟性を有するため、ガラスクロス加工時の整経・製織工程、扁平加工、開繊加工時に、張力や加工力の影響を受けて織物構造が変化し易いため、幅方向に均一な織物構造にし易い傾向にある。また、弾性係数が70GPa以下である場合、ガラス糸およびガラスクロスが柔らかいため、従来のガラスクロスでは、幅方向に織物構造の歪みが生じてしまう傾向があり、本実施形態によって幅方向に均一な織物構造とすることは有用である。
ガラス糸の弾性係数は実施例記載の方法で測定することができる。
【0030】
本実施形態のガラスクロスの誘電率は、1GHzの周波数において、好ましくは5.0以下であり、より好ましくは4.7以下であり、さらに好ましくは4.5以下であり、特に好ましくは4.0以下である。なお、本実施形態において、誘電率という時は特に断りがない限り、1GHzの周波数におけるものをいう。
本実施形態のガラスクロスの織り構造については、特に限定されないが、例えば、平織り、ななこ織り、朱子織り、綾織り、等の織り構造が挙げられる。このなかでも、平織り構造がより好ましい。
【0031】
本実施形態のガラスクロスを構成するガラス糸は、複数本のフィラメントを束ね、必要に応じて撚って得られるものである。この場合、ガラス糸はマルチガラスフィラメント、ガラス糸に含まれるフィラメント(ガラスフィラメント)はモノガラスフィラメントにそれぞれ分類される。
本実施形態のガラスクロスを構成する経糸及び緯糸の打ち込み密度は、好ましくは30~120本/25mmであり、より好ましくは40~110本/25mmであり、さらに好ましくは50~100本/25mmである。
経糸及び緯糸を構成するモノガラスフィラメントの平均直径は、各々独立して、好ましくは2.5~9μmであり、より好ましくは3.0~8μmであり、さらに好ましくは3.5~7.5μmである。目的とするガラスクロスの厚さによって、適時選択して用いることができる。
経糸及び緯糸を構成するモノガラスフィラメントの平均本数は、好ましくは20本~250本、より好ましくは30本~230本、さらに好ましくは33本~220本である。
【0032】
本実施形態のガラスクロスの強熱減量値の好ましい範囲は、0.25質量%~1.5質量%であり、より好ましくは0.3質量%~1.4質量%であり、さらに好ましくは0.35質量%~1.3質量%である。
【0033】
以下、本実施形態のガラスクロスの組成について説明する。なお、ガラスクロスの組成とは、ガラスクロスを構成するガラス糸の組成と同義である。ガラスクロスを構成する元素としては、ケイ素(Si)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、リン(P)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、及びフッ素(F)、等から成る群より選択される少なくとも一つが挙げられる。
【0034】
ガラス糸のケイ素(Si)含有量は、SiO2換算で、好ましくは40~60質量%であり、より好ましくは45~55質量%であり、更に好ましくは47.0~53.5質量%であり、より更に好ましくは48.0~52.0質量%である。Siはガラス糸の骨格構造を形成する成分である。
このため、Si含有量がSiO2換算で40質量%以上であることで、ガラス糸の強度がより向上し、ガラスクロスの製造工程及びガラスクロスを用いたプリプレグの製造工程、等の後工程において、ガラスクロスの破断がより抑制される傾向にある。
また、Si含有量がSiO2換算で40質量%以上であることで、本実施形態のガラスクロスの誘電率がより低下する傾向にある。他方、Si含有量がSiO2換算で60質量%以下であることで、ガラスフィラメントの製造過程において、溶融時の粘度がより低下し、より均質なガラス組成のガラス繊維が得られる傾向にある。
このため、得られるガラスフィラメントに、部分的に失透し易い部位、又は部分的に気泡が抜け難い部位が発生し難くなることから、ガラスフィラメントに局所的に強度の弱い部位が生じ難くなる。その結果として、これを用いて得られるガラス糸から構成されるガラスクロスは、破断し難いものとなる。Si含有量は、ガラスフィラメント作製に用いる原料使用量に応じて調整することができる。
【0035】
ガラス糸のホウ素(B)含有量は、B2O3換算で、好ましくは15~40質量%であり、より好ましくは17~30質量%、又は好ましくは20~40質量%であり、更に好ましくは18~28質量%であり、より更に好ましくは19~26質量%であり、更により好ましくは20~25質量%であり、最も好ましくは20.5~24.5質量%である。
【0036】
B含有量がB2O3換算で15質量%以上であることにより、誘電率がより低下する傾向にある。また、B含有量がB2O3換算で15質量%以上であることにより、本実施形態のガラスクロスの耐脆性が向上し、また、ガラスクロスに適度な柔軟性、又はしなやかさが付与されるため、ガラス糸が、糸道ガイド、及び筬等の織機部材に接触した際、毛羽が発生し難くなる傾向にある。
【0037】
他方、ガラス糸の強度を保つには、B含有量がB2O3換算で40質量%以下であることが好ましい。B含有量が40質量%以下であることにより、耐吸湿性が向上し、後述するガラス糸表面特性の安定性が適正に保たれ易くなる。
【0038】
特に、ガラス糸における、Si含有量がSiO2換算で上記範囲、かつ、B含有量がB2O3換算で上記範囲であることで、Si及びBに関する上記効果が相乗的に奏され易いので好ましい。
【0039】
B含有量は、ガラスフィラメント作製に用いる原料の使用量(仕込み量)により、調整することができる。なお、ガラスフィラメント作製中に、作製条件、使用量又は含有量が変動し得る場合には、それを予め見越して、原料の仕込み量を調整することができる。
【0040】
ガラス糸のアルミニウム(Al)含有量は、Al2O3換算で、好ましくは11~18質量%であり、より好ましくは11~17.5質量%であり、更に好ましくは12~17.0質量%である。Al含有量がAl2O3換算で上記範囲内であることにより、電気特性、強度がより向上する傾向にある。Al含有量は、ガラスフィラメント作製に用いる原料の使用量(仕込み量)により、調整することができる。
【0041】
ガラス糸のカルシウム(Ca)含有量は、CaO換算で、好ましくは5.0~10質量%であり、より好ましくは5.0~9.0質量%であり、更に好ましくは5.0~8.5質量%である。Ca含有量がCaO換算で5.0質量%以上であることにより、ガラスフィラメントの製造過程において、溶融時の粘度がより低下し、より均質なガラス組成のガラス繊維が得られる傾向にある。また、Ca含有量がCaO換算で10質量%以下であることにより、誘電率がより向上する傾向にある。Ca含有量は、ガラスフィラメント作製に用いる原料の使用量(仕込み量)により、調整することができる。
【0042】
ガラス糸のリン(P)含有量は、P2O5換算で、好ましくは8.0質量%以下であり、より好ましくは7.0質量%以下であり、更に好ましくは6.0質量%以下である。P含有量はP2O5換算で0質量%超えでよい。P含有量がP2O5換算で0質量%超えであることにより、ガラスクロスの誘電特性がより良好となる傾向にある。また、P含有量がP2O5換算で8.0質量%以下であることにより、ガラスクロスの耐熱性が向上する傾向にある。P含有量は、ガラスフィラメント作製に用いる原料の使用量(仕込み量)により調整することができる。
【0043】
ガラスクロス中、ホウ素の含有量とリンの含有量との和は、ガラスクロスの誘電率、誘電正接を小さくし易い観点、また、幅方向に均一な織物構造にし易い観点から、5質量%以上20質量%以下であることが好ましい。ガラスクロス中のホウ素の含有量とリンの含有量との和が大きいほどガラスクロスの誘電率、誘電正接を小さくできる傾向にある。ホウ素の含有量とリンの含有量との和が5質量%以上であることにより、一般的なEガラスクロスを用いて得られる積層板に比べ、誘電率、誘電正接が有意に低下するため、データ通信や信号処理の大容量化、高速化への適用性が向上する。
ガラスクロス中、ホウ素の含有量とリンの含有量との和は、ガラスクロスの誘電率、誘電正接をより小さくし易い観点、また、幅方向に均一な織物構造によりし易い観点から6.5質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
ガラスクロス中のホウ素の含有量とリンの含有量との和が大きいほどガラスクロスの誘電率、誘電正接を小さくできる傾向にある。ホウ素の含有量とリンの含有量との和が6.5質量%以上であることにより、一般的なEガラスクロスを用いて得られる積層板に比べ、誘電率、誘電正接が有意に低下するため、データ通信や信号処理の大容量化、高速化への適用性が向上する。
例えば、Eガラスの誘電率が7程度であるのに対し、ホウ素の含有量とリンの含有量との和が7.4質量%であるとき誘電率が約4.8、また、ホウ素の含有量とリンの含有量との和が9.2質量%であるとき誘電率が約4.4と、誘電率が小さくなる傾向にある。
【0044】
ホウ素とリンの含有量の和が5質量%以上であると、本実施形態のガラスクロスが適度な柔軟性を有するため、ガラスクロス加工時の整経・製織工程、扁平加工、開繊加工時に、張力や加工力の影響を受けて織物構造が変化し易いため、幅方向に均一な織物構造にし易い傾向にある。
また、ホウ素とリンの含有量の和が6.5質量%以上であると、本実施形態のガラスクロスが適度な柔軟性を有するため、ガラスクロス加工時の整経・製織工程、扁平加工、開繊加工時に、張力や加工力の影響を受けて織物構造が変化し易いため、幅方向に均一な織物構造にし易い傾向にある。
【0045】
ホウ素の含有量とリンの含有量との和が20質量%以下であることにより、本実施形態のガラスクロスの耐吸湿性及び/又は耐熱性をホウ素の含有量とリンの含有量との和が2質量%程度であるEガラスと同等に維持できる。
【0046】
ガラスクロス中のホウ素の含有量とリンの含有量との和は、ガラス糸を製造する過程で、ホウ素とリンとを含有するガラス原材料の仕込み量により調整することができる。また、ガラス中のホウ素及びリンの含有量は、ガラス糸を製造する工程で、ガラスの原材料を熔融している工程中に変化するため、その変化量を織り込んで仕込み量を適宜調整してもよい。
なお、上記各含量は、ICP発光分光分析法により測定することができる。具体的には、Si含有量及びB含有量は、秤取したガラスクロスを炭酸ナトリウムで融解した後、希硝酸で溶解して所定の容量とし、得られたサンプルをICP発光分光分析法により測定して得ることができる。
また、Fe含有量は、秤取したガラスクロスをアルカリ溶解法により溶解して所定の容量とし、得られたサンプルをICP発光分光分析法により測定して得ることができる。
更に、Al含有量、Ca含有量、P含有量及びMg含有量は、秤取したガラスクロスを過塩素酸、硫酸、硝酸及びフッ化水素により加熱分解した後、希硝酸で溶解して所定の容量とし、得られたサンプルをICP発光分光分析法により測定して得ることができる。
なお、ICP発光分光分析装置としては、日立ハイテクサイエンス社製のPS3520VDD IIを用いることができる。
【0047】
ここで、本明細書中に記載の本実施形態のガラスクロスを構成する上記元素の含有量は、酸化物換算の記載が無ければ元素自体、酸化物換算の記載があれば、上記元素を酸化物とした際の重量である。
また、必要に応じて、上記元素の含有量が、酸化物換算とした際の重量で記載されている場合でも、酸化物換算によってではなく、元素自体の重量で換算することも可能である。
【0048】
ガラス糸のTEXは、本実施形態のガラスクロスの厚さを5μm~100μmに調整し易くなるという観点から、1.0以上25以下であることが好ましく、より好ましくは1.5以上23以下であり、更に好ましくは2.0以上21以下である。
本実施形態のガラスクロスは表面処理剤により表面処理されたものであってもよい。表面処理剤としては、特に制限されないが、例えば、シランカップリング剤が挙げられ、必要に応じて水、有機溶剤、酸、染料、顔料、界面活性剤等を合わせて用いてもよい。
【0049】
シランカップリング剤としては、特に制限されないが、例えば、式(1)で示される化合物が挙げられる。
X(R)3-nSiYn ・・・(1)
(式(1)中、Xは、アミノ基及び不飽和二重結合基のうち少なくとも1つ以上有する有機官能基であり、Yは、各々独立して、アルコキシ基であり、nは、1以上3以下の整数であり、Rは、各々独立して、メチル基、エチル基及びフェニル基からなる群より選ばれる基である。)
Xは、アミノ基及び不飽和二重結合基のうち少なくとも3つ以上を有する有機官能基であることが好ましく、Xは、アミノ基及び不飽和二重結合基のうち少なくとも4つ以上を有する有機官能基であることがより好ましい。
上記のアルコキシ基としては、いずれの形態も使用できるが、本実施形態のガラスクロスへの安定処理化の観点から、炭素数5以下のアルコキシ基が好ましい。
シランカップリング剤としては、具体的には、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン及びその塩酸塩、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン及びその塩酸塩、N-β-(N-ジ(ビニルベンジル)アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン及びその塩酸塩、N-β-(N-ジ(ビニルベンジル)アミノエチル)-N-γ-(N-ビニルベンジル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン及びその塩酸塩、N-β-(N-ベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン及びその塩酸塩、N-β-(N-ベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン及びその塩酸塩、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の公知の単体、又はこれらの混合物が挙げられる。
シランカップリング剤の分子量は、好ましくは100~600であり、より好ましくは150~500であり、さらに好ましくは200~450である。この中でも、分子量が異なる2種類以上のシランカップリング剤を用いることが好ましい。分子量が異なる2種類以上のシランカップリング剤を用いてガラス糸の表面を処理することにより、ガラスクロスの表面における表面処理剤密度が高くなり、マトリックス樹脂との反応性がさらに向上する傾向にある。
【0050】
<ガラスクロスの製造方法>
本実施形態のガラスクロスの製造方法は、特に限定されないが、ガラス糸を経糸と緯糸に用い、常法により製織し、その後、ガラスクロスの生機をシランカップリング剤による処理する等の後加工を施す方法が挙げられる。ガラスクロスの織り構造としては、特に限定されないが、例えば、平織り、ななこ織り、朱子織り、綾織り等の織り構造が挙げられる。さらに異種のガラス糸を用いた混織構造でもよい。この中でも、平織り構造が好ましい。
【0051】
本実施形態のガラスクロスの製造方法は、特に限定されないが、例えば、シランカップリング剤の濃度が0.1~3.0wt%である処理液をガラスクロスに塗布してガラスフィラメントの表面をほぼ完全にシランカップリング剤で覆う被覆工程と、加熱乾燥によりシランカップリング剤をガラスフィラメントの表面に固着させる固着工程と、ガラスクロスのガラス糸を開繊する開繊工程と、を有する方法が好適に挙げられる。
【0052】
シランカップリング剤を溶解又は分散させる溶媒としては、水、又は有機溶媒のいずれも使用できるが、安全性、地球環境保護の観点から、水を主溶媒とすることが好ましい。水を主溶媒とした処理液を得る方法としては、シランカップリング剤を直接水に投入する方法、シランカップリング剤を水溶性有機溶媒に溶解させて有機溶媒溶液とした後に該有機溶媒溶液を水に投入する方法、のいずれかの方法が好ましい。シランカップリング剤の処理液中での水分散性、安定性を向上させるために、界面活性剤を併用することも可能である。
【0053】
シランカップリング剤の処理液をガラスクロスに塗布する方法としては、(ア)シランカップリング剤の処理液をバスに溜め、ガラスクロスを浸漬、通過させる方法(以下、「浸漬法」という。)、(イ)ロールコーター、ダイコーター、又はグラビアコーター等でシランカップリング剤の処理液をガラスクロスに直接塗布する方法等が挙げられる。上記(ア)の浸漬法にて塗布する場合は、ガラスクロスの処理液への浸漬時間を0.5秒以上1分以下にすることが好ましい。また、ガラスクロスに処理液を塗布した後、溶媒を加熱乾燥させる方法としては、熱風、電磁波等公知の方法が挙げられる。
【0054】
加熱乾燥温度は、シランカップリング剤とガラスとの反応が十分に行われるように、好ましくは90℃以上であり、より好ましくは100℃以上である。また、加熱乾燥温度は、シランカップリング剤が有する有機官能基の劣化を防ぐために、好ましくは300℃以下であり、より好ましくは200℃以下である。
【0055】
開繊工程の開繊方法としては、特に限定されないが、例えば、ガラスクロスを、スプレー水(高圧水開繊)、バイブロウォッシャー、超音波水、マングル等で開繊加工する方法が挙げられる。バスケットホールの総面積を一定の範囲に保つためには、スプレー水により開繊工程を行うことが好ましい。
【0056】
スプレー水で開繊する場合、水圧は適宜設定すればよく、ガラスクロスに存在するバスケットホールの総面積を調整するために、水圧は一定にすることが好ましい。ここで、水圧を一定にするとは、開繊を実施するために設定したスプレーの水圧と、実際の水圧の最大値、最小値との差を小さくすることを指す。開繊工程前後においても、加熱乾燥させる工程を有していてもよい。
【0057】
<プリプレグ>
本実施形態は、前記したガラスクロスとマトリックス樹脂組成物との複合体であるプリプレグでもある。マトリックス樹脂組成物は、該ガラスクロスに含浸している。
プリプレグは、常法に従って製造することができる。例えば、ガラスクロスに、マトリックス樹脂組成物を有機溶剤で希釈したワニスを含浸させた後、乾燥炉にて有機溶剤を揮発させ、マトリックス樹脂組成物含浸プリプレグを作製することができる。
【0058】
マトリックス樹脂組成物を構成する樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれも使用可能である。熱硬化性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、a)エポキシ基を有する化合物と、エポキシ基と反応する、アミノ基、フェノール基、酸無水物基、ヒドラジド基、イソシアネート基、シアネート基、及び水酸基等の少なくとも1つを有する化合物と、を、無触媒で、又は、イミダゾール化合物、3級アミン化合物、尿素化合物、燐化合物等の反応触媒能を持つ触媒を添加して、反応させて硬化させるエポキシ樹脂;b)ビニル基、アリル基、メタクリル基、及びアクリル基の少なくとも1つを有する化合物を、熱分解型触媒、又は光分解型触媒を反応開始剤として使用して、硬化させるラジカル重合型硬化樹脂;c)シアネート基を有する化合物と、マレイミド基を有する化合物と、を反応させて硬化させるマレイミドトリアジン樹脂;d)マレイミド化合物と、アミン化合物と、を反応させて硬化させる熱硬化性ポリイミド樹脂;e)ベンゾオキサジン環を有する化合物を加熱重合により架橋硬化させるベンゾオキサジン樹脂等が挙げられる。
【0059】
また、熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリスルホン、ポリエーテルスルフォン、ポリアリレート、芳香族ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、熱可塑性ポリイミド、不溶性ポリイミド、ポリアミドイミド、フッ素樹脂等が挙げられる。また、熱硬化性樹脂と、熱可塑性樹脂を併用してもよい。
【0060】
本実施形態の一つであるガラスクロスとマトリックス樹脂組成物とから構成されるプリプレグにおけるマトリックス樹脂組成物を構成する樹脂は、好ましくは、ポリフェニレンエーテル樹脂である。さらに好ましくは、ビニル基、アリル基、メタクリル基、及びアクリル基等の炭素-炭素二重結合を含む官能基が主鎖末端に1分子当たり1.5~5個存在するポリフェニレンエーテル樹脂である。また、好ましくは、数平均分子量500~8,000のポリフェニレンエーテル樹脂である。マトリックス樹脂がポリフェニレンエーテル樹脂であると、誘電特性に優れるために好ましい。
【0061】
また、マトリックス樹脂組成物を構成する樹脂が、上記の官能基及び数平均分子量を有することにより、プリプレグ作製工程、プレス成型工程において、樹脂組成物がガラスクロスの内部まで浸透し易く、ガラスクロスとの接着点が多く確保されるために、誘電特性が優れると推測されるが、本実施形態のようにガラスの面内均一性が高く、通気度が小さいために、ガラスクロスの上下に形成される樹脂マトリックス層同士の直接の接着点数が下がる系においても、ガラスクロスと樹脂組成物の界面の強い接着性が発現することにより、耐熱性や絶縁信頼性が向上する。
【0062】
<プリント配線基板>
本実施形態は、前記したガラスクロスと、前記ガラスクロスに含浸したマトリックス樹脂組成物の硬化物と、を有するプリント配線基板でもある。
また、本実施形態のプリント配線基板は、前記プリプレグを用いて製造される。すなわち、本実施形態のプリント配線基板は、本実施形態のプリプレグを成形してなるプリント配線基板である。本実施形態のプリプレグを用いてプリント配線基板を製造することにより、高品質で、複数の伝送線路の信号伝播速度差が軽減されたプリント配線基板を提供することができる。
【実施例0063】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0064】
〔弾性係数〕
ガラス糸の弾性係数は、ガラス糸を溶融、冷却して得られるガラスバルクを試験片に用い、パルスエコーオーバーラップ法により測定した。
【0065】
〔評価:全幅における経糸幅の平均値、経糸幅の標準偏差〕
ガラスクロスのMD方向と垂直方向に、カメラを走査させ、ガラスクロス全幅分の経糸の画像を取得し、経糸1本毎の糸幅を測定した。ガラスクロス全幅分の経糸幅の平均値と標準偏差を求めた。
【0066】
〔評価:端部、および中央部の経糸幅〕
ガラスクロスのMD方向と垂直方向に、カメラを走査させ、ガラスクロス全幅分の経糸の画像を取得し、経糸1本毎の糸幅を測定した。
ガラスクロスの幅方向の両端部より100mmの箇所より端部から250mmの範囲の経糸幅の平均をそれぞれ求め、糸幅の狭い方の値を、端部の経糸幅とした。また、幅方向中心より左右75mmの範囲の経糸幅の平均値を求め、中央部の経糸幅とした。
【0067】
〔評価:厚さ 平均値〕
ガラスクロスの幅方向の両端部および各測定点との間隔が等間隔となるように、幅方向の3点の測定点の厚さを、JIS R3420に準拠して測定した。得られた3点の厚さを平均し、小数点第一桁を四捨五入し、厚さの平均値を求めた(μm)。
【0068】
〔評価:厚さ 端部、中央部〕
ガラスクロスの幅方向の両端部より100mm内側を測定点として、JIS R3420に準拠して厚さを測定した。得られた2点の厚さのうち、大きい値を、端部の厚さ(μm)とした。
【0069】
また、ガラスクロスの幅方向の中心を測定点として、JIS R3420に準拠して厚さを測定した。得られた厚さを、中央部の厚さ(mm)とした。
【0070】
〔評価:通気度 端部、中央部〕
ガラスクロスの幅方向の両端部より100mm内側を測定点として、JIS R3420に準拠して通気度を測定した。得られた2点の通気度のうち、大きい値を、端部の通気度(cm3/cm2/s)とした。
【0071】
また、ガラスクロスの幅方向の中心を測定点として、JIS R3420に準拠して通気度を測定した。得られた通気度を、中央部の通気度(cm3/cm2/s)とした。
【0072】
〔評価:ガラスクロスの樹脂含浸性評価〕
ガラスクロスの幅方向の両端部より100mm内側から含浸測定用の試験片をそれぞれ採取した。また、ガラスクロスの幅方向の中心から含浸測定用の試験片を採取した。
【0073】
23±2℃の環境下にて、ビスフェノールA型エポキシ樹脂をベンジルアルコールに溶解し、粘度230±5mPa・sの含浸性評価用のワニスを作製した。次いで、ガラスクロス試験片を含浸性評価用のワニスに浸漬し、横から光を照射しながら、光学顕微鏡にて含浸性評価用ワニスがガラスクロスに含浸する様子を光学顕微鏡で観察した。
そして、ガラスクロス試験片を含浸性評価用ワニスに浸漬してから所定時間後のボイド数(含浸性評価用ワニスの未含浸部位)をカウントした。このとき、光学顕微鏡で観察したガラスクロスの視野範囲は、経糸方向約6.5mm、緯糸方向約9mmとした。
【0074】
幅方向の両端部に関しては、ボイド数の多い方の値を、端部の残ボイド数(本)とした。
【0075】
実施例1、比較例1のガラスクロスは、2分後のボイド数をカウントした。
実施例2、2B、2C、2D、2E、2F、比較例2のガラスクロスは、3分後のボイド数をカウントした。
実施例3、4、比較例3、4、参考例1のガラスクロスは、5分後のボイド数をカウントした。
実施例5、6、比較例5、6のガラスクロスは、8分後のボイド数をカウントした。
【0076】
〔評価:クロス搬送中の弛み量〕
巻き芯に巻かれたロール状ガラスクロスから、張力150Nの条件でガラスクロスを巻きだし、2m搬送させた時点で、ガイドロールで90°屈曲させた。巻出し~ガイドロール間のガラスクロスのバタつきを、変位計(キーエンス社製のレーザーアプリセンサ)を用いて測定した。ガラスクロスの幅方向の両端部より100mm内側の2点、および幅方向の中心に変位計を設置し変位計で計測された、ガラスクロスの垂直方向の位置の最大位置と最小位置の差をガラスクロスのバタつきの大きさとした(単位:mm)。
【0077】
〔評価:応力-歪曲線における荷重50N/inchをかけた際の経糸方向の伸び量の幅方向差異(%)、および応力-歪曲線の傾きの幅方向の差異(%)〕
ガラスクロスに経糸方向に張力をかけた際の伸び量、及び傾きを、JIS R3420のガラス試験-般試験法、7.4引張り強さの項に記載された方法を準用して測定した。該JIS規定の方法では、幅約30mm、長さ約250mmの試験片を織物の経糸方向から採り、該試験片の両端部の糸をほぐし幅約25mmとし、約150mmのつかみ間隔を確保してつかみ部に取り付け、引張り速度約200mm/minで引っ張り、破断時の荷重を求める。本実施形態においては、測定精度を向上させるために引っ張り速度を約5mm/minとした以外は上記JIS規定の方法と同一の条件で引っ張り試験を行った。
ガラスクロスの幅方向の両端部より50mm内側~200mm内側の範囲から応力―歪曲線測定用の試験片をそれぞれ採取した。また、ガラスクロスの幅方向の中心から応力-歪曲線測定用の試験片を採取した。
ガラスクロスの幅25mm当り荷重が50Nを掛けた際の変位量(mm)を求め、幅方向端部と中央部の伸び量の比を求めた。なお、幅方向の両端部に関しては、伸び量の大きい方の値を、端部の伸び量(mm)とした。
また、ガラスクロスの幅25mm当たり荷重50Nを掛けた際の伸び量(mm)から、傾きを求め(伸び量(mm)/50N)、幅方向端部と中央部の傾きの比を求めた。なお、幅方向の両端部に関しては、傾きの大きい方の値を、端部の傾きとした。
【0078】
<比較例1>
経糸、緯糸ともに、AGY社製の低誘電ガラス糸LCBC1700(弾性係数61GPa、TEX2.92)を使用し、エアジェットルームを用い、経糸打込み密度74本/25mm、緯糸打ち込み密度74本/25mmのガラスクロス(生機)を製織した。
得られた生機を糊水洗および高圧水スプレーによる開繊処理を施した。次いで、400℃で24時間加熱処理し脱糊した後、表面処理剤としてシランカップリング剤を用いた処理液にガラスクロスを浸漬し、絞液後、120℃で1分乾燥した。さらに高圧水スプレーによる開繊加工を実施し、幅1300mmのガラスクロスを得た。
【0079】
<実施例1>
幅方向の端部から100mmより端部から300mmの範囲と、他の範囲の経糸幅が同等になるように、整経時の張力と開繊時の高圧水スプレーの圧力を幅方向で調整し、糊水洗および高圧水スプレーによる開繊加工時のライン張力を低く調整した以外は、比較例1と同様の方法で、幅1300mmのガラスクロスを製造した。
【0080】
整経時の張力は、幅方向の端部から100mmより端部から300mmの範囲の張力を他の範囲張力の0.8倍とした。高圧水スプレーの圧力は、幅方向の端部から100mmより端部から300mmの範囲のスプレー圧を他の範囲の1.2倍とした。糊水洗および高圧水スプレーによる開繊加工時のライン張力を比較例1に対し0.5倍とした。
【0081】
<比較例2>
経糸、緯糸ともに、AGY社製の低誘電ガラス糸LCD1020(弾性係数61GPa、TEX4.86)を使用し、エアジェットルームを用い、経糸打込み密度69本/25mm、緯糸打ち込み密度69本/25mmのガラスクロス(生機)を製織した。
得られた生機を糊水洗および高圧水スプレーによる開繊処理を施した。次いで、400℃で24時間加熱処理し脱糊した後、表面処理剤としてシランカップリング剤を用いた処理液にガラスクロスを浸漬し、絞液後、120℃で1分乾燥した。さらに高圧水スプレーによる開繊加工を実施し、幅1300mmのガラスクロスを得た。
【0082】
<実施例2>
幅方向の端部から100mmより端部から300mmの範囲と、他の範囲の経糸幅が同等になるように、整経時の張力と開繊時の高圧水スプレーの圧力を幅方向で調整し、糊水洗および高圧水スプレーによる開繊加工時のライン張力を低く調整した以外は、比較例2と同様の方法で、幅1300mmのガラスクロスを製造した。
【0083】
整経時の張力は、幅方向の端部から100mmより端部から300mmの範囲の張力を他の範囲張力の0.8倍とした。高圧水スプレーの圧力は、幅方向の端部から100mmより端部から300mmの範囲のスプレー圧を他の範囲の1.2倍とした。糊水洗および高圧水スプレーによる開繊加工時のライン張力を比較例2に対し0.5倍とした。
【0084】
<実施例2B>
幅方向の端部から100mmより端部から300mmの範囲の張力を他の範囲張力の0.9倍とした。
高圧水スプレーの圧力は、幅方向の端部から100mmより端部から300mmの範囲のスプレー圧を他の範囲の1.2倍とした。
糊水洗および高圧水スプレーによる開繊加工時のライン張力を比較例2に対し0.5倍とした。
【0085】
<実施例2C>
幅方向の端部から100mmより端部から300mmの範囲の張力を他の範囲張力の0.8倍とした。
高圧水スプレーの圧力は、幅方向の端部から100mmより端部から300mmの範囲のスプレー圧を他の範囲の1.1倍とした。
糊水洗および高圧水スプレーによる開繊加工時のライン張力を比較例2に対し0.5倍とした。
【0086】
<実施例2D>
幅方向の端部から100mmより端部から300mmの範囲の張力を他の範囲張力の0.9倍とした。
高圧水スプレーの圧力は、幅方向の端部から100mmより端部から300mmの範囲のスプレー圧を他の範囲の1.1倍とした。
糊水洗および高圧水スプレーによる開繊加工時のライン張力を比較例2に対し0.5倍とした。
【0087】
<実施例2E>
幅方向の端部から100mmより端部から300mmの範囲の張力を他の範囲張力の0. 9倍とした。
高圧水スプレーの圧力は、幅方向の端部から100mmより端部から300mmの範囲のスプレー圧を他の範囲の1.1倍とした。
糊水洗および高圧水スプレーによる開繊加工時のライン張力を比較例2に対し0.8倍とした。
【0088】
<実施例2F>
高圧水スプレーによる開繊加工を実施した後に、耳房を含む両端部を切り落とし、幅1250mmに加工した以外は、実施例2と同様の方法で、幅1250mmのガラスクロスを製造した。
【0089】
<比較例3>
経糸、緯糸ともに、AGY社製の低誘電ガラス糸LCD510(弾性係数61GPa、TEX9.73)を使用し、エアジェットルームを用い、経糸打込み密度52.5本/25mm、緯糸打ち込み密度52.5本/25mmのガラスクロス(生機)を製織した。
得られた生機を糊水洗および高圧水スプレーによる開繊処理を施した。次いで、400℃で24時間加熱処理し脱糊した後、表面処理剤としてシランカップリング剤を用いた処理液にガラスクロスを浸漬し、絞液後、120℃で1分乾燥した。さらに高圧水スプレーによる開繊加工を実施し、幅1300mmのガラスクロスを得た。
【0090】
<実施例3>
幅方向の端部から100mmより端部から300mm内側のと、他の範囲の経糸幅が同等になるように、整経時の張力と開繊時の高圧水スプレーの圧力を幅方向で調整し、糊水洗および高圧水スプレーによる開繊加工時のライン張力を低く調整した以外は、比較例3と同様の方法で、幅1300mmのガラスクロスを製造した。
【0091】
整経時の張力は、幅方向の端部から100mmより端部から300mmの範囲の張力を他の範囲張力の0.8倍とした。
高圧水スプレーの圧力は、幅方向の端部から100mmより端部から300mmの範囲のスプレー圧を他の範囲の1.2倍とした。
糊水洗および高圧水スプレーによる開繊加工時のライン張力を比較例3に対し0.5倍とした。
【0092】
<比較例4>
経糸、緯糸ともに、AGY社製の低誘電ガラス糸LCD520(弾性係数56GPa、TEX9.47)を使用した以外は、比較例3と同様の方法で、幅1300mmのガラスクロスを得た。
【0093】
<実施例4>
経糸、緯糸ともに、AGY社製の低誘電ガラス糸LCD520(弾性係数56GPa、TEX9.47)を使用した以外は、実施例3と同様の方法で、幅1300mmのガラスクロスを得た。
【0094】
<比較例5>
経糸、緯糸ともに、AGY社製の低誘電ガラス糸LCDE340(弾性係数61GPa、TEX14.59)を使用し、エアジェットルームを用い、経糸打込み密度59本/25mm、緯糸打ち込み密度61本/25mmのガラスクロス(生機)を製織した。
得られた生機を糊水洗および高圧水スプレーによる開繊処理を施した。次いで、400℃で24時間加熱処理し脱糊した後、表面処理剤としてシランカップリング剤を用いた処理液にガラスクロスを浸漬し、絞液後、120℃で1分乾燥した。さらに高圧水スプレーによる開繊加工を実施し、幅1300mmのガラスクロスを得た。
【0095】
<実施例5>
幅方向の端部から100mmより端部から300mmの範囲と、他の範囲の経糸幅が同等になるように、整経時の張力と開繊時の高圧水スプレーの圧力を幅方向で調整し、糊水洗および高圧水スプレーによる開繊加工時のライン張力を低く調整した以外は、比較例5と同様の方法で、幅1300mmのガラスクロスを製造した。
【0096】
整経時の張力は、幅方向の端部から100mmより端部から300mmの範囲の張力を他の範囲張力の0.8倍とした。
高圧水スプレーの圧力は、幅方向の端部から100mmより端部から300mmの範囲のスプレー圧を他の範囲の1.2倍とした。
糊水洗および高圧水スプレーによる開繊加工時のライン張力を比較例5に対し0.5倍とした。
【0097】
<比較例6>
経糸、緯糸ともに、AGY社製の低誘電ガラス糸LCE255(弾性係数61GPa、TEX19.45)を使用し、エアジェットルームを用い、経糸打込み密度60本/25mm、緯糸打ち込み密度57本/25mmのガラスクロス(生機)を製織した。
得られた生機を糊水洗および高圧水スプレーによる開繊処理を施した。次いで、400℃で24時間加熱処理し脱糊した後、表面処理剤としてシランカップリング剤を用いた処理液にガラスクロスを浸漬し、絞液後、120℃で1分乾燥した。さらに高圧水スプレーによる開繊加工を実施し、幅1300mmのガラスクロスを得た。
【0098】
<実施例6>
幅方向の端部から100mmより端部から300mmの範囲と、他の範囲の経糸幅が同等になるように、整経時の張力と開繊時の高圧水スプレーの圧力を幅方向で調整し、糊水洗および高圧水スプレーによる開繊加工時のライン張力を低く調整した以外は、比較例6と同様の方法で、幅1300mmのガラスクロスを製造した。
【0099】
整経時の張力は、幅方向の端部から100mmより端部から300mmの範囲の張力を他の範囲張力の0.8倍とした。
高圧水スプレーの圧力は、幅方向の端部から100mm中央部より端部から300mm内側の範囲のスプレー圧を他の範囲の1.2倍とした。
糊水洗および高圧水スプレーによる開繊加工時のライン張力を比較例6に対し0.5倍とした。
【0100】
<参考例1>
経糸、緯糸ともに、Eガラス糸D450(弾性係数74GPa、TEX11.05)を使用した以外は、比較例3と同様の方法で、幅1300mmのガラスクロスを得た。
【0101】
実施例の低誘電ガラスクロスは、比較例のガラスクロスに比較して、バタつきが小さく抑えられた。また、実施例のガラスクロスは、比較例のガラスクロスに比較して、幅方向の端部と中央部で、厚さ、通気度、樹脂含浸性、応力-歪曲線における伸び量及び傾きが、同等であった。
参考例に示した従来の弾性係数が高いEガラスクロスは、比較例3と同様の方法でガラスクロスの製造を行ったが、比較例3及び4のガラスクロスに比べて、バタつきは小さく、厚さ、通気度、樹脂含浸性、応力-歪曲線における伸び量及び傾きも、幅方向の端部と中央部とで同等であった。
弛みが大きく、バタつきが大きいことは、弾性係数が低い低誘電ガラスクロスに特有の課題であったが、本実施形態により解決することが明らかとなった。
【0102】
【0103】
【0104】
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