(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048042
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】眼科装置および眼球を変形させる方法
(51)【国際特許分類】
A61B 3/16 20060101AFI20240401BHJP
B05B 1/26 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
A61B3/16 300
B05B1/26 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153872
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】大宮 健
【テーマコード(参考)】
4C316
4F033
【Fターム(参考)】
4C316AA20
4C316FA12
4C316FA18
4F033BA02
4F033DA01
4F033EA02
4F033GA07
4F033JA08
4F033LA02
4F033LA12
4F033LA13
4F033NA01
(57)【要約】
【課題】眼圧の測定における被検者への負担を軽減する。
【解決手段】眼球200の変形に基づいて、眼球200の眼圧を測定する眼科装置100であって、眼球200に向けて流れる第1の気流を生成するノズル104と、前記第1の気流に該第1の気流の方向とは異なる方向からぶつかる第2の気流を生成するエアーカーテンノズル109を備える。第1の気流は、眼球200が平坦に変形した後は必用でなく、そのタイミングで第1の気流に第2の気流がぶつかることで、眼球200への高圧空気の流れが邪魔され、眼球200への不要の高圧空気の吹き付けが抑制される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼球の変形に基づいて、前記眼球の眼圧を測定する眼科装置であって、
前記眼球に向けて流れる第1の気流を生成する第1の手段と、
前記第1の気流に該第1の気流の方向とは異なる方向からぶつかる第2の気流を生成する第2の手段と
を備える眼科装置。
【請求項2】
前記第1の気流に前記第2の気流がぶつかることで、前記眼球が受ける風圧が減少する請求項1に記載の眼科装置。
【請求項3】
前記第2の気流は、前記第1の気流と交差する方向に流れる請求項1に記載の眼科装置。
【請求項4】
前記第1の手段と前記第2の手段に気体を供給する手段と、
前記第2の手段への前記気体の供給を制御する弁と
を備え、
前記弁が開放されることで、前記第2の気流が生成される請求項1に記載の眼科装置。
【請求項5】
前記第1の手段に高圧気体を供給する第1の気体供給手段と、
前記第2の手段に気体を供給する第2の気体供給手段と
を備える請求項1に記載の眼科装置。
【請求項6】
前記第2の手段は、特定の方向に流れを作る1または複数のノズルである請求項1に記載の眼科装置。
【請求項7】
前記第1の気流よりも前記第2の気流の勢いが強い請求項1に記載の眼科装置。
【請求項8】
眼球を変形させる方法であって、
前記眼球に向けて流れる第1の気流により前記眼球を変形させ、
前記眼球の変形後に、前記第1の気流に該第1の気流の方向とは異なる方向から第2の気流をぶつけることで、前記眼球への前記第1の気流の流れを阻害する眼球を変形させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼圧を測定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
眼球に空気を吹き付け、その際の眼球の変形を光学的に計測することで眼圧の測定を行う非接触型の眼科装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。この方法では、被検眼に高圧空気を当てつつ計測光を照射する。風圧により被検眼の表面が平坦になると、反射光量が最大となる。
【0003】
上記反射光の光量の変化の振る舞いと眼圧には相関関係がある。そこで、この相関関係を予め標準模型眼を対象に取得しておく。そして被検眼に高圧空気を当て、反射光の光量が最大となるまでの反射光の検出値の変化を取得し、それを上記相関関係にあてはめることで、被検眼の眼圧が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
被検眼が平坦となった以降の高圧空気の被検眼への吹き付けは不要である。しかしながら、被検眼に向かう高圧空気の流れを止めようとしても、被検眼への不要な高圧空気の流れが残る。
【0006】
この被検眼への不要な高圧空気の流れは、被検者にとって負担となる。また、上記の不要な高圧空気の存在を被検者が過剰に意識し、眼圧の測定時に被検者が過度に緊張する等の問題も生じていた。
【0007】
このような背景において、本発明は、眼圧の測定における被検者への負担を軽減する技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、眼球の変形に基づいて、前記眼球の眼圧を測定する眼科装置であって、前記眼球に向けて流れる第1の気流を生成する第1の手段と、前記第1の気流に該第1の気流の方向とは異なる方向からぶつかる第2の気流を生成する第2の手段とを備える眼科装置である。本発明において、前記第1の気流に前記第2の気流がぶつかることで、前記眼球が受ける風圧が減少する。本発明において、前記第2の気流は、前記第1の気流と交差する方向に流れる態様が挙げられる。
【0009】
本発明において、前記第1の手段と前記第2の手段に気体を供給する手段と、前記第2の手段への前記気体の供給を制御する弁とを備え、前記弁が開放されることで、前記第2の気流が生成される態様が挙げられる。本発明において、前記第1の手段に高圧気体を供給する第1の気体供給手段と、前記第2の手段に気体を供給する第2の気体供給手段とを備える構成が挙げられる。
【0010】
本発明において、前記第2の手段は、特定の方向に流れを作る1または複数のノズルである態様が挙げられる。本発明において、前記第1の気流よりも前記第2の気流の勢いが強い態様が挙げられる。
【0011】
本発明は、眼球を変形させる方法であって、前記眼球に向けて流れる第1の気流により前記眼球を変形させ、前記眼球の変形後に、前記第1の気流に該第1の気流の方向とは異なる方向から第2の気流をぶつけることで、前記眼球への前記第1の気流の流れを阻害する眼球を変形させる方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、眼圧の測定における被検者への負担が軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図3】処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図4】測定結果と被検眼に加わる風圧の特性を示すグラフである。
【
図7】ノズルの構造の一例を示す概念図(A)および(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.第1の実施形態
(概要)
本実施形態は、眼圧の測定のために被検眼に高圧空気を当てるための高圧空気供給手段と、該高圧空気供給手段から被検眼に噴射される高圧空気が被検眼に当たらないように、その移動を妨げるための別の空気の流れを供給する空気供給手段を備える。被検眼に噴射される高圧空気の流れに別の空気の流れがぶつかることで、高圧空気が被検眼に与える風圧を軽減する。本実施形態では、被検眼に噴射する高圧空気と別の空気の流れを同じ発生源から得る。
【0015】
(構成)
図1には、発明を利用した眼科装置100が示されている。
図1は、被検眼200を水平横の方向から見た概念図である。眼科装置100は、被検者の眼球200(被検眼200)に高圧空気を吹き付け、空気圧によって変形する被検眼200の変形の程度を光学的に検出し、被検眼200の眼圧を計測する。この原理は、従来からある眼科装置と同じである。
【0016】
眼科装置100は、高圧気体を生成する高圧気体生成手段であるシリンダ型高圧空気生成装置120を備える。シリンダ型高圧空気生成装置120は、シリンダ121、ピストン122およびピストン122を駆動する駆動装置である電磁ソレノイド123を備える。電磁ソレノイド123は、ロータリーソレノイドを用いてピストン122をクランクにより軸方向(
図1の左右の方向)に駆動する。
【0017】
ピストン122には、逆止弁124が付いている。逆止弁124は、
図1におけるピストン122の右側から左側には通気が可能で、左側から右側には、通気ができない弁の構造を有している。逆止弁124があることで、ピストン122をシリンダ121から引き出した際にシリンダ121内にピストン122の右側から空気が流入し、ピストン122をシリンダ121内に押し込んだ際にシリンダ121内の空気が圧縮される。
【0018】
眼科装置100は、測定光学系101を有する。測定光学系101は、測定光の発光部141(
図2参照)と被検眼200からの反射光の受光部142を備える。測定光学系101内の発光部141において発光された測定光は、光透過部102,103を介して、被検眼200に照射され、その反射光は測定光学系101内の受光部142で受光される。測定光としては、赤外光が使用される。
【0019】
シリンダ121の内部空間は、電磁バルブ105を介して空気室106につながっている。圧力センサ110によって空気室106内の圧力が計測される。光透過部103の中央には、円筒形状のノズル104が配置され、空気室106内の高圧空気がノズル104から被検眼200に吹き付けられる。電磁バルブ105は、必須でなく電磁バルブ105がない構造も可能である。
【0020】
また、シリンダ121の内部空間は、配管107が接続されている。配管107には、電磁バルブ108を介して、円筒形状を有するエアーカーテンノズル109に接続されている。エアーカーテンノズル109の軸方向(気流を吹き出す方向)は、ノズル104の軸方向(気流を吹き出す方向)と異なる方向(この例では直交する方向)であり、且つ、交差する位置関係となるように設定されている。エアーカーテンノズル109から、ノズル104から被検眼200に吹き付けられる高圧空気の流れを遮るエアーカーテンを生成する気流が噴出する。エアーカーテンノズル109を透明な部材で構成し、測定光の邪魔とならないようにしてもよい。
【0021】
眼科装置200は、被検眼200の上瞼および眉毛の部分を覆うカバー111を備えている。カバー111により、瞼や眉毛に気流が当たり難くなる。また、カバー111の下側を気流が通ることで、効率よく被検眼200に高圧空気が当たる。
【0022】
(ブロック図)
図2は、眼科装置100のブロック図である。発光部141は、測定光を発光する発光素子、光学系および周辺回路を含む。受光部142は、被検眼200から反射した測定光を受光するための光学系、受光素子および周辺回路を含む。眼圧測定部143は、後述する原理により被検眼200の眼圧を求める。動作制御部144は、眼科装置100の動作の制御を行うマイクロコンピュータである。
【0023】
(眼圧の測定原理)
測定光を被検眼200に照射している状態で、シリンダ型高圧空気生成装置120の機能により、ノズル104から被検眼200に高圧空気を吹き付ける。この際、高圧空気の圧力により被検眼200の眼球が変形する。具体的には、凸形状⇒平坦⇒凹形状と被検眼の表面が変形し、それに伴い被検眼200からの反射光の光量が変化する。
【0024】
この光量の変化は、受光素子で検出される。被検眼200の表面が平坦になると、反射光量が最大となり、受光素子の出力信号のレベルは最大となり、ピークを持った出力波形となる。
【0025】
標準模型眼を用いて、上記の反射光の光量の変化と眼圧の関係を予め取得しておき、この関係に実際の被検眼200からの反射光の光量の変化を当てはめることで、被検眼200の眼圧が算出される。
【0026】
(測定の手順)
図3は、眼圧を測定するための処理の手順の一例を示すフローチャートである。眼圧の測定に際して、まず、初期状態の設定を行う(ステップS101)。初期状態では、電磁バルブ105を開放、電磁バルブ108を閉鎖、ピストン122はシリンダ121内の空気を圧縮できる状態とする。
【0027】
初期状態としたら、被検眼200に対する眼科装置100のアライメント(位置合わせ)を行う(ステップS102)。そして、被検眼200への測定光の照射を開始し(ステップS103)、次いでピストン122を電磁ソレノイド123によりシリンダ121に押し込み、被検眼200へのノズル104からの高圧空気の噴射を開始する(ステップS104)。
【0028】
被検眼200へのノズル104からの高圧空気の噴射を開始したら、被検眼200からの反射光を受光した受光素子の出力の変化を測定する(ステップS105)。この受光素子の出力の変化に基づき、圧平時(出力が最大(ピーク)となった状態)の時刻t2を予想する(ステップS106)。なお、圧平とは、被検眼200が平坦になった状態をいう。また、圧平時に得られる受光素子の出力信号を圧平信号という。圧平信号は、波形のピークの部分となる。
【0029】
反射光量の計測信号(
図4の波形1を参照)は上に凸の信号であり、そのピークの付近では、波形の接線の傾きが正の値から徐々に小さくなり、ピークの部分でゼロ(水平)となり、そこから負に変化する。このピークの手前の波形の挙動からピークの時刻t2を予測する。この例では、標準模型眼を対象に事前の実験を行い、それに基づいて上記の予測を行う。
【0030】
ここで、圧平信号が得られるタイミングをt2、ノズル104からの高圧空気の被検眼200への噴射を停止し、且つ、エアーカーテンノズル109からのエアーカーテン空気の噴射を開始する処理を行うタイミングをt1とする。
【0031】
理想的には、圧平信号が得られた直後に、ノズル104から被検眼200に向かう高圧空気にエアーカーテンノズル109からのエアーカーテン空気がぶつかり(衝突し)、被検眼200に向かう空気の流れが遮られる(あるいは流れの向きが変わる)ことが望まれる。
【0032】
ここでは、電磁バルブの動作時間や空気の移動に要する時間を考慮し、t1をt2より僅かに前の時刻とし、t1のタイミングを適切に設定することで、上記の理想的な状態が実現されるようにする。すなわち、t1<t2、t1+Δt=t2の関係において、Δtを適切に設定することで、上記の理想的な状態を実現する。
【0033】
Δtは、電磁ソレノイド123の応答速度、ピストン122で押し出される空気の動き、使用する電磁バルブの性能等によって決まる。適切なΔtの値は、実験的に予め求めておく必要がある。
【0034】
ステップS106において時刻t2を得たら、ステップS107に進む。ステップS107では、ノズル104から被検眼200への高圧空気の噴射を抑える処理を開始するか否か、の判定が行われる。具体的には、被検眼200への高圧空気の噴射を抑えるための処理を開始するタイミングt1か否か、の判定が行われる。ここで、時刻t2はステップS106において得られ、t1=t2-Δtから時刻t1が得られる。
【0035】
ステップS107がYESであれば、被検眼200への高圧空気の噴射停止処理およびエアーカーテン空気噴射開始処理が行われる(ステップS108)。この処理では、被検眼200への高圧空気の噴射を停止するために、電磁バルブ105を閉鎖し、またエアーカーテン空気の噴射を開始するために電磁バルブ108が開放される。ここで、電磁バルブ105の閉鎖と電磁バルブ108の開放は同時に行われる。なお、電磁ソレノイド123によるピストン122の駆動は継続して行う。
【0036】
この後、圧平信号のピークを検出したら(ステップS109)、圧平信号を得る過程における被検眼200からの反射光の光量の変化に基づき、被検眼200の眼圧の値を算出する(ステップS110)。
【0037】
電磁ソレノイド123の停止は、ノズル104からの空気の噴出が十分に弱くなった段階で行われる。このタイミングは予め実験的に求めておく。
【0038】
(作用効果)
ステップS108において、電磁弁105が閉鎖され、電磁弁108が解放される。この際、電磁ソレノイド123によるピストン122の駆動は継続して行われる。電磁弁105を閉鎖しても、空気室106内の圧縮された空気は、引き続いてノズル104から被検眼200に向かって噴出する。この空気流の風量と風圧は、電磁弁105が閉鎖されているので徐々に低下する。
【0039】
他方において、エアーカーテンノズル109から上方に噴出するエアーカーテン空気は、ピストン122によって押し出されるので、時間の経過に従って、風量および風圧が増加する。このため、エアーカーテンノズル109から噴出するエアーカーテン空気の風量と風圧をノズル104から噴出する高圧空気の風量と風圧より大きくでき、効果的にノズル104から被検眼200に向かう高圧空気の流れを阻害できる。
【0040】
ノズル104から被検眼200に向かう高圧空気の流れを抑えることで、被検者への負担が軽減される。
【0041】
また、電磁ソレノイド123は、ピストン122を加速しつつ押す。このため、電磁弁105を閉鎖した後に、ピストン122は更に加速して配管107にシリンダ121内の空気を押し込む。そのため、エアーカーテンノズル109から噴出するエアーカーテン空気の空気流の風量と風圧をノズル104から噴出する空気流の風量と風圧より大きくできる。
【0042】
この場合、エアーカーテンノズル109から噴出する空気の勢いを、ノズル104から噴出する空気の勢いよりも強く(大きく)でき、より効果的に被検眼200に加わる風圧の抑制効果が得られる。
【0043】
本実施形態では、止めようとしても止まらないノズル104からの被検眼200への空気流に対して、エアーカーテンノズル109からの空気流を衝突させる。これにより、空気流の流れを被検眼200の方向から逸らす。
図1の例では、被検眼200の上方にノズル104からの空気の流れを逸らす。こうして、被検眼200に不要な高圧空気が当たらないようにする。
【0044】
本実施形態は、エアーカーテンノズル109から上方に噴出する高圧空気によりエアーカーテンを形成し、このエアーカーテンによりノズル104から噴出する高圧空気の流れを遮り、被検眼200に加わる風圧を抑える仕組みと捉えることもできる。
【0045】
また、カバー111を設けることで、上方に逸らされた高圧空気が上瞼や眉毛に当たらないようにし、被検者への負担が軽減される。
【0046】
また、エアーカーテンノズル109から噴き出す空気によりエアーカーテンが形成されるので、非検眼200からの涙滴のノズル104への付着やノズル104からの吸込みが防止される。
【0047】
(測定結果)
図4には、被検眼200からの反射光量の検出信号の変化を示す波形1、ノズル104から噴出する空気の風圧を示す波形2、波形3および波形4が示されている。
【0048】
波形1の縦軸は受光素子の出力の値(相対値)であり、横軸は経過時間(相対値)である。波形2~波形4の縦軸は風圧(相対値)であり、横軸は経過時間(相対値)である。波形1~波形4の横軸(経過時間)のスケールは合わせてある。
【0049】
波形1に示すように、被検眼200の表面が風圧により平坦に近づくに従って、受光素子で受光される反射光量が増大し、その出力が増大する。そして、被検眼200の表面が平坦になると(圧平時)、受光素子で受光される反射光量がピークとなる。他方で、更に風圧を受けて、被検眼200の表面が凹型に変形すると、受光素子で受光される反射光量が減少する。こうして、波形1が得られる。
【0050】
波形2は、電磁バルブ105を開放、電磁バルブ108を閉鎖した状態において、ピストン122をシリンダ121に押し込み、それにより空気室106内の空気を圧縮することで、ノズル104から被検眼200に高圧気体を吹き付け、圧平信号のピークが得られたタイミングでピストン122の駆動を停止(電磁ソレノイド123をOFF)した場合のデータである。
【0051】
波形2の場合、停止後も慣性によりピストン122が移動するので、圧平信号のピークが得られた後も被検眼200へのノズル104からの空気の流れは残り、被検眼200は風圧を感じることになる。
【0052】
波形3と波形4は、本実施形態の場合の例である。波形3と波形4の違いは、ステップS108を実行するタイミングの違いである。波形3は、圧平信号のピークが得られたことを契機にステップS108を実行した場合である。この場合、エアーカーテンノズル109から噴出する空気流による効果が発生するまでのタイムラグ(前述のΔt)があるので、被検眼200に向かう空気の流れの影響が一部存在する。
【0053】
波形4は、
図3のフローを採用した場合であり、圧平信号のピークが得られる前に、予測に基づきステップS108を実行した場合である。この場合、エアーカーテンノズル109から噴出する空気流による効果が発生するまでのタイムラグ(前述のΔt)を考慮して処理を早めに始めているので、圧平信号のピークが得られた後における被検眼200に向かう空気の流れの抑制効果が効果的に得られている。
【0054】
すなわち、波形4は、圧平信号のピークのタイミングを予測して、その予測に基づきステップS108の処理を開始した場合であり、波形3は当該予測を行わずに処理を行った場合である。
図4に示すように、上記の予測を行わずに、圧平信号のピークが得られたことを契機にステップS108を実行した場合(波形3)、圧平信号のピークが得られた後における被検眼への空気の流れの抑制効果は、波形4の場合程顕著ではないが、従来の場合(波形2)よりは良好な効果が得られる。
【0055】
2.第2の実施形態
本実施形態は、第1の気流と第2の気流を別の発生源から得る。
図5には、眼科装置210が示されている。機能は、
図1の眼科装置100と同じである。
図1と同じ符号の部分は、
図1の場合と同じである。この例では、エアーカーテンノズル109からの高圧空気の発生源としてシリンダ型高圧空気生成装置130を用いる。
【0056】
シリンダ型高圧空気生成装置130は、シリンダ131,シリンダ131内で可動可能なピストン132、ピストン132を駆動する駆動装置である電磁ソレノイド133により構成されている。
【0057】
本実施形態では、
図3のステップS108において、電磁バルブ105を閉鎖、ピストン122の駆動停止、ピストン132の駆動開始(シリンダ131への押し込みを開始)を行う。
【0058】
これにより、シリンダ131内の空気がエアーカーテンノズル109から上方に向かって吹き出し、それがノズル104から被検眼200に向けて噴出する空気に衝突することで、被検眼200が不要な風圧に曝されにようにする。エアーカーテンノズル109の機能は、第1の実施形態の場合と同じである。
【0059】
本実施形態のようにエアーカーテンノズル109から噴射する高圧気体の生成源を独立に用意した場合、エアーカーテンノズル109から噴出する高圧気体の風量と風圧を、ノズル104から噴出する高圧気体の風量と風圧の最大値よりも大きな値に容易に設定できる。こうすることで、被検眼200に不要な風圧が加わる問題をより効果的に低減できる。
【0060】
すなわち、エアーカーテンノズル109から噴出する空気の勢いを、ノズル104から噴出する空気の勢いよりも強く(大きく)でき、より効果的に被検眼200に加わる風圧の抑制効果が得られる。
【0061】
3.第3の実施形態
第1または第2の実施形態において、気流の生成源として高圧ボンベを用いることが可能である。利用する気体は、空気以外に人体に無害な気体が利用可能である。このような気体としては、窒素、ヘリウム、二酸化炭素等が挙げられる。
【0062】
4.第4の実施形態
第1または第2の実施形態において、気流の生成源としてマイクロポンプやファンを用いることが可能である。例えば、マイクロポンプやファンを用いた場合、事前にマイクロポンプやファンを稼働させておき、電磁バルブ等の通気経路の開閉手段によって気流の供給のONとOFFを切り替えるようにする。
【0063】
5.第5の実施形態
ここでは、
図1または
図5におけるエアーカーテンノズル109の形状のバリエーションについて説明する。
図6にエアーカーテンノズル109の先端の形状を工夫した一例を示す。この例では、エアーカーテンノズル109の先端の部分が被検眼200から離れる方向に曲がっている。これにより、エアーカーテンノズル109から噴出する空気流にぶつかったノズル104から被検眼200に噴出する空気流が、より効果的に上方に指向するようにしている。
【0064】
6.第6の実施形態
図7(A)は、
図1または
図5におけるエアーカーテンノズル109を眼科装置100の正面から見た状態の一例である。
図7(B)は、
図7(A)と別の態様を示す図である。
図7(B)の場合、エアーカーテンノズル109を3つのエアーカーテンノズル109a,109b,109cに分割している。エアーカーテンノズル109bは、被検眼200の正面の方向と交差するように真っすぐ上を指向している。エアーカーテンノズル109aとエアーカーテンノズル109cは、被検眼200の前方においてエアーカーテンノズル109bの軸線と交差するように斜め上の方向を指向している。この例では、3つのノズルの軸線が、被検眼200の正面前方の位置で交差するように調整されている。1つだと気流が小さい場合などは、気流の発生機構が複数あった場合でも良いし、まとめて一つのノズルに合体させても良い。
【0065】
被検眼に当たる風圧を抑制するための空気流を作るための第2のノズル(
図7の場合は、エアーカーテンノズル109)の数は、
図7に例示する数に限定されない。
【0066】
7.第7の実施形態
被検眼に当たる風圧を抑制するための空気流を作るための第2のノズル(
図1および
図4のエアーカーテンノズル109)の断面の形状は、円形に限定されず、楕円形、四角形、長方形、角が丸い長方形等が可能である。また、ノズルの先端を徐々に拡径や幅広とする構造、逆にノズルの先端を徐々に縮径や幅狭とする構造も可能である。
【0067】
8.第8の実施形態
圧平信号ピークが検出された後における被検眼200への不要な空気の吹き付けを抑制できるのであれば、エアーカーテンノズル109から噴出するエアーカーテン気体の圧力が、ノズル104から噴出する高圧気体の圧力と同じあるいは弱くてもよい。
【0068】
9.第9の実施形態
図8には、眼科装置300が示されている。
図1と同じ符号の部分は、
図1の場合と同じである。この例では、ノズル104の途中において、被検眼200への高圧空気流(第1の気流)を遮るための別の第2気流を流す。
【0069】
すなわち、パイプ状のノズル104の途中にパイプ状の配管150と151が接続されている。ノズル104と配管150,151の接続は交差した十字路構造となっている。配管150は、シリンダ141内のピストン142の一方の側の空間141aに接続され、配管151は、シリンダ141内のピストン142の他方の側の空間141bに接続されている。
【0070】
ピストン142は電磁ソレノイド143によって駆動される。例えば、ピストン142が図の上方に移動すると、空間141aから配管150の空気が送り込まれる。他方において、空間141bに配管151内の空気が吸い込まれる。
【0071】
この際、配管150から配管151への気流が発生し、それがエアーカーテンとなり、ノズル104内を空気室106から被検眼200の方向に流れる気流が遮断される。配管150から配管151への気流が十分に強ければ、上記の遮断機能は有効に機能する。動作の手順は、基本的に
図3と同じである。この場合、ステップS108において、電磁バルブ105を閉鎖、ピストン122を停止、ピストン142を駆動する処理が実行される。
【0072】
図8の眼科装置は、眼球に高圧気体を吹き付けるためのノズルの流路と、該ノズルの流路と交差する別の流路を備え、この別の流路に気体を流すことで、前記ノズルから前記眼球に吹き付けられる前記高圧気体の生成を抑制する。
【0073】
10.その他
図1と
図5の構成において、ノズル104から被検眼200に向かう空気の流れを逸らす方向は、上方に限定されない。被検眼の右または左の方向、下の方向に気流を逸らす構成が可能である。
【符号の説明】
【0074】
100…眼圧測定用の眼科装置、101…測定光学系、102…光透過部、103…光透過部、104…ノズル、105…電磁弁、106…空気室、107…配管、108…電磁弁、109…エアーカーテンノズル、110…圧力センサ、111…カバー、120…シリンダ型高圧空気生成装置、121…シリンダ、122…ピストン、123…電磁ソレノイド、124…逆止弁、130…シリンダ型高圧空気生成装置、131…シリンダ、132…ピストン、133…電磁ソレノイド。