(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048057
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】室内熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28F 1/32 20060101AFI20240401BHJP
F25B 39/00 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
F28F1/32 L
F28F1/32 P
F28F1/32 Z
F25B39/00 D
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153895
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】吾郷 祥太
(72)【発明者】
【氏名】中野 寛之
(57)【要約】
【課題】本開示の課題は、汎用性のある死水域低減構造を有する室内熱交換器を提供することである。
【解決手段】室内熱交換器41は、所定のフィンピッチで層状に並ぶ複数のフィン50と、フィン50を貫通し、外径が5.3mmよりも大きい複数の伝熱管60とを備えている。室内熱交換器41では、フィン50の長手方向に隣接する第1貫通孔51と第2貫通孔52との間に、頂部の高さがフィンピッチの15%以上の寸法のたわみ部53が存在することによって、フィン50上で空気の流れに乱れが生じるので、伝熱管60後方の死水域が低減され、送風騒音が抑制される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調室内ユニットの吸込口から吹出口に到る空気流れの経路において、ファンの上流側に配置される室内熱交換器であって、
所定のフィンピッチで層状に並ぶ複数のフィン(50)と、
前記フィン(50)を貫通する、外径が5.3mmよりも大きい複数の伝熱管(60)と、
を備え、
前記フィン(50)は、
第1孔(51)と、
前記フィン(50)の長手方向において前記第1孔(51)と隣接する第2孔(52)と、
前記第1孔(51)と前記第2孔(52)との間で一様にたわんだたわみ部(53)と、
を有し、
前記たわみ部(53)の頂部の高さは、前記フィンピッチの15%以上の寸法である、
室内熱交換器。
【請求項2】
前記フィン(50)は、
前記フィン(50)が板厚方向に切り起されることによって形成される切り起し部(54)と、
前記切り起し部(54)の形成によって生じるスリット(55)と、
をさらに有し、
前記たわみ部(53)の頂部の高さは、前記切り起し部(54)の高さの50%以下の寸法である、
請求項1に記載の室内熱交換器。
【請求項3】
前記フィン(50)の板厚方向および長手方向の両方向と直交する方向から前記フィン(50)を視たとき、前記たわみ部(53)の頂部と前記切り起し部(54)の頂部とは重ならない、
請求項2に記載の室内熱交換器。
【請求項4】
前記たわみ部(53)の頂部の高さは、前記フィンピッチの30%以下の寸法である、
請求項1または請求項2に記載の室内熱交換器。
【請求項5】
前記たわみ部(53)は、前記伝熱管(60)の径を拡げて前記伝熱管(60)と前記フィン(50)とを密着させる拡管加工によって形成される、
請求項1または請求項2に記載の室内熱交換器。
【請求項6】
前記フィン(50)と前記ファンとの最短距離は、15mm~30mmの範囲内である、
請求項1または請求項2に記載の室内熱交換器。
【請求項7】
前記たわみ部(53)は、層状に並んだ前記フィン(50)のうち前記ファンに近い前記フィン(50)に形成されている、
請求項1または請求項2に記載の室内熱交換器。
【請求項8】
前記切り起し部(54)の一部が、前記空気流れにおける前記伝熱管(60)の背面側の空間に位置する、
請求項2に記載の室内熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換器の空気流れにおける伝熱管の後方には、空気の動きが不活発な領域である死水域が発生する。この死水域が大きくなると送風騒音を増大させるので、死水域の増長を抑制して騒音を低減する必要がある。
【0003】
死水域の増長を抑制した熱交換器は、特許文献1(特開2008-180468号公報)に開示されている。この熱交換器では、フィンを波状に加工して空気の流線と波とのなす角度が10°~60°の範囲となるようにフィン部材を配置し、それによって死水域に空気が流れるようにしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、フィンが波状に加工されていない熱交換器についての検討がなく、死水域を低減する構造(以下、死水域低減構造という。)としての適用範囲が限定的である。それゆえ、汎用性のある死水域低減構造を有する熱交換器を提供する、という課題が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1観点の室内熱交換器は、空調室内ユニットの吸込口から吹出口に到る空気流れの経路において、ファンの上流側に配置される室内熱交換器であって、フィンと、伝熱管とを備える。フィンは、所定のフィンピッチで層状に並んでいる。伝熱管はフィンを貫通し、外径が5.3mmよりも大きい。また、フィンは、第1孔と、第2孔と、たわみ部とを有している。第2孔は、フィンの長手方向において第1孔と隣接する。たわみ部は、第1孔と第2孔との間で一様にたわんでいる。たわみ部の頂部の高さは、上記フィンピッチの15%以上の寸法である。
【0006】
この室内熱交換器では、フィンの長手方向において第1孔とそれに隣接する第2孔との間に、フィンピッチの15%以上の寸法であるたわみ部が存在することによって、フィン上で空気の流れに乱れが生じるので、伝熱管後方の死水域が低減され、送風騒音が抑制される。
【0007】
それゆえ、フィンが波状に加工されていない熱交換器に対しても、死水域低減構造として適用可能である。
【0008】
第2観点の室内熱交換器は、第1観点の室内熱交換器であって、フィンが切り起し部とスリットとをさらに有している。切り起し部は、フィンが板厚方向に切り起されることによって形成される。スリットは、切り起し部の形成によって生じる。たわみ部の頂部の高さは、切り起し部の高さの50%以下の寸法である。
【0009】
この室内熱交換器では、たわみ部が高くなりすぎると、切り起し部に風が当たらなくなるので、切り起し部の高さの50%以下の寸法に設定することによって、切り起し部へ風が当たるようにする。
【0010】
第3観点の室内熱交換器は、第2観点の室内熱交換器であって、フィンの板厚方向および長手方向の両方向と直交する方向からフィンを視たとき、たわみ部の頂部と切り起し部の頂部とは重ならない。
【0011】
この室内熱交換器では、たわみ部と切り起し部とが重なると、切り起し部に風が当たらなくなるので、たわみ部と切り起し部とが重ならないようにすることによって、切り起し部へ風が当たるようにする。
【0012】
第4観点の室内熱交換器は、第1観点から第3観点のいずれか1つの室内熱交換器であって、たわみ部の頂部の高さは、上記フィンピッチの30%以下の寸法である。
【0013】
この室内熱交換器では、たわみ部が高くなりすぎると、切り起し部に風が当たらなくなるので、たわみ部の頂部の高さをフィンピッチの30%以下の寸法に設定することによって、切り起し部へ風が当たるようにする。
【0014】
第5観点の室内熱交換器は、第1観点から第4観点のいずれか1つの室内熱交換器であって、たわみ部が、伝熱管の径を拡げて伝熱管とフィンとを密着させる拡管加工によって形成される。この室内熱交換器では、拡管と、たわみ部の形成が同時に行える。
【0015】
第6観点の室内熱交換器は、第1観点から第5観点のいずれか1つの室内熱交換器であって、フィンとファンとの最短距離が15mm~30mmの範囲内である。この室内熱交換器では、死水域がファンに到達しないので、騒音が抑制される。
【0016】
第7観点の室内熱交換器は、第1観点から第6観点のいずれか1つの室内熱交換器であって、たわみ部が、層状に並んだフィンのうちファンに近いフィンに形成されている。この室内熱交換器では、ファンに最も近い箇所にたわみ部を形成することによって、死水域の増長を抑制する。
【0017】
第8観点の室内熱交換器は、第2観点の室内熱交換器であって、切り起し部の一部が、空気流れにおける伝熱管の背面側の空間に位置する。この室内熱交換器では、空気流れにおける伝熱管の背面側に風を導き、死水域の増長を抑制する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本開示の一実施形態に係る室内熱交換器を備える空気調和装置の概略構成図である。
【
図7】圧縮率とたわみ量との関係を示すグラフである。
【
図8】たわみ量と死水域長さとの関係を管外径ごとに示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(1)空気調和装置1の概略構成
図1は、本開示の一実施形態に係る室内熱交換器41を備える空気調和装置1の概略構成図である。
図1において、空気調和装置1は、熱源側装置としての室外ユニット2と、利用側装置としての室内ユニット4とが冷媒配管によって接続されて、室内ユニット4が配置された空間の空気調和を行う。
【0020】
空気調和装置1は、冷媒回路10、各種センサおよび制御部70を有している。冷媒回路10は、圧縮機21、四路切換弁22、室外熱交換器23、室外膨張弁24、室内熱交換器41、およびアキュームレータ25が順に接続されて構成されている。
【0021】
圧縮機21、四路切換弁22、室外熱交換器23、室外膨張弁24、アキュームレータ25および室外ファン26は、室外ユニット2内に収容されている。また、室内熱交換器41および室内ファン42は、室内ユニット4内に収容されている。
【0022】
四路切換弁22は、冷房運転サイクルと暖房運転サイクルとを切換可能である。
図1では、冷房運転を行う際の接続状態を実線で示し、暖房運転を行う際の接続状態を点線で示している。
【0023】
冷房運転時には、室内熱交換器41が蒸発器として、室外熱交換器23が凝縮器として機能する。暖房運転時には、室内熱交換器41が凝縮器として、室外熱交換器23が蒸発器として機能する。
【0024】
室内ユニット4内には、室内温度センサ43が設けられている。室内温度センサ43は、室内空気の吸入口側に配置され、室内ユニット4が室内から取り込んで、室内熱交換器41を通過する前の温度(室内温度)を検出する。
【0025】
制御部70は、室外制御部72、室内制御部74、リモートコントローラ71、およびそれらを結ぶ通信線70aを含む。
【0026】
室外制御部72は、室外ユニット2内に配置される機器を制御する。室内制御部74は、室内ユニット4内に配置されている機器を制御する。リモートコントローラ71は、ユーザからの各種設定入力を受け付けたり各種表示出力を行ったりする。
【0027】
(2)室内ユニット4の概略構成
図2は、室内ユニット4の断面図である。特に断らない限り、
図2正面視の左側を前面側、右側を背面側、上側を天面側、紙面手前側を右側、紙面奥行側を左側として説明する。
【0028】
室内ユニット4は、ケーシング45、室内熱交換器41、室内ファン42、水平フラップ17、垂直フラップ18を有している。
【0029】
(2-1)ケーシング45
ケーシング45は、室内熱交換器41、室内ファン42を内部に収容している。ケーシング45は、前面グリル45a、天面板45b、背面板45c、吹出流路上面板45d、吹出流路下面板45eを有している。
【0030】
前面グリル45aは、室内ファン42が駆動することにより室内の空気をケーシング45の前面側から内側に取り込めるように、開口が設けられている。同様に、天面板45bにも、室内ファン42が駆動することにより室内の空気をケーシング45の天面側から内側に取り込めるように、開口が設けられている。
【0031】
背面板45cは、室内熱交換器41や室内ファン42の背面側および吹出流路下面板45eの背面側を覆う。吹出流路上面板45dは、室内ファン42の前側下方付近からさらに前側下方に向けて延びており、吹出流路の上面を構成している。
【0032】
吹出流路下面板45eは、室内ファン42の背面上方付近から背面側下方に向けて延びた後に前面側下方に向けて延びており、吹出流路の下面を構成している。
【0033】
(2-2)水平フラップ17
水平フラップ17は、吹出流路の下流側端部である吹出口45fを覆うことができる。水平フラップ17は、運転中は、吹出口45fを開放し、傾斜角度が調節されることにより、調和空気の吹出高さ方向を調節することができる。
【0034】
(2-3)垂直フラップ18
垂直フラップ18は、吹出流路内部において水平フラップ17よりも上流側に設けられている。運転中は、垂直フラップ18が吹出方向に略垂直な方向の軸を軸心として角度調節が行われることにより、調和空気の左右方向の吹き出し方向を調節することができる。
【0035】
(2-4)室内ファン42
室内ファン42は、クロスフローファンである。室内ファン42が回転駆動することにより、前面グリル45aを介して室内熱交換器41に向かう空気流れと、天面板45bを介して室内熱交換器41に向かう空気流れと、吹出流路上面板45dと吹出流路下面板45eで囲われた吹出流路を介して吹出口45fから室内に送られる空気流れを生じさせる。
【0036】
(2-5)室内熱交換器41
室内熱交換器41は、側面視において両端が下方に向いて屈曲する逆V字状となるように配置されている。
【0037】
室内熱交換器41は、フィンチューブ式熱交換器であり、薄板のフィン50が板厚方向に所定のピッチで複数枚配置されたフィン群5と、フィン群5の各フィン50を貫通する複数の伝熱管60を有している。
【0038】
室内熱交換器41は、前面側の第1熱交換部41aと、背面側の第2熱交換部41bと、によって構成されている。
【0039】
(3)室内熱交換器41のフィン50の構成
図3は、フィン50の切り起し部54の配置説明図である。ここでは、
図3を参照しながら、室内熱交換器41のうち、特に、第1熱交換部41aのフィン50を例に挙げて説明する。第2熱交換部41bは、輪郭および傾斜姿勢以外は、第1熱交換部41aと同様である。
【0040】
第1熱交換部41aのフィン50は、板厚方向に伝熱管60を貫通させるカラー部56と、第1~第5切り起し部(541~545)とを有している。フィン50は、カラー部56と第1~第5切り起し部(541~545)とを有するフィン部が空気流れFの方向に2列に並んでいる。
【0041】
当該2列のフィン部うち、空気流れFにおける上流側フィン部が第1フィン部50aであり、下流側フィン部が第2フィン部50bである。第1フィン部50aと第2フィン部50bとは一体的に成形されているが、両者の境界には熱伝導を抑制するための複数のミシン目57が設けられている。
【0042】
(3-1)カラー部56
カラー部56は、
図3に示すように、伝熱管60が貫通する第1貫通孔51、第2貫通孔52の周縁から板厚方向に起立する円筒状の突出部である。カラー部56は、フィン50の長手方向に所定間隔で並んでいる。第1フィン部50aから視て、第2フィン部50bのカラー部56は長手方向に所定間隔の1/2だけずれている。ここで言う、所定間隔とは、第1貫通孔51と第2貫通孔52との中心間距離である。
【0043】
(3-2)切り起し部54
切り起し部54は、フィン50が板厚方向に切り起されることによって形成される。切り起し部54として、第1~第5切り起し部(541~545)がフィン50の長手方向に隣接するカラー部56の間に形成されている。
【0044】
(3-2-1)第1フィン部50aの第1~第5切り起し部(541~545)
第1フィン部50aにおける第1~第5切り起し部(541~545)は、空気流れFの方向に沿って上流側から第1切り起し部541、第2切り起し部542、第3切り起し部543の順で並んでいる。
【0045】
第4切り起し部544および第5切り起し部545は、第1フィン部50aの長手方向に沿って隣接した状態で、第3切り起し部543の下流側に位置している。
【0046】
但し、第1フィン部50aの切り起し部の数量および位置は、上記構成に限定されるものではなく、フィン50の構成に応じて設定されればよい。
【0047】
(3-2-2)第2フィン部50bの第1~第5切り起し部(541~545)
第2フィン部50bにおける第1~第5切り起し部(541~545)は、空気流れFの方向に沿って下流側から第1切り起し部541、第2切り起し部542、第3切り起し部543の順で並んでいる。
【0048】
第4切り起し部544および第5切り起し部545は、第2フィン部50bの長手方向に沿って隣接した状態で、第3切り起し部543の上流側に位置している。
【0049】
但し、第2フィン部50bの切り起し部の数量および位置は、上記構成に限定されるものではなく、フィン50の構成に応じて設定されればよい。
【0050】
第1フィン部50aから視て、第2フィン部50bのカラー部56が長手方向に所定間隔の1/2だけずれている関係で、第1~第5切り起し部(541~545)も、第1フィン部50aから視て、第2フィン部50bの長手方向に所定間隔の1/2だけずれている。ここで言う、所定間隔とは、第1貫通孔51と第2貫通孔52との中心間距離である。
【0051】
(3-3)スリット55
切り起し部54が形成されることによって、切り起し部54がない面と切り起し部54との間に空気が通過することができる隙間(
図4参照)ができる。この隙間をスリット55という。本分野では、切り起し部54および上記隙間を含めてスリットと呼ぶこともあるが、ここでは隙間のみをスリット55とする。
【0052】
以後、説明の便宜上、どの切り起し部に対応するスリットであるのかを明確にするため、例えば、第2切り起し部542の形成によって生じたスリット55は第2スリット552と表示し、第3切り起し部543の形成によって生じたスリット55は第3スリット553と表示する。
【0053】
(3-4)たわみ部53
図4は、
図3のA-A断面図である。また、
図5は、
図3のB-B断面図である。
図4において、たわみ部53は、カラー部56の間で円弧上に隆起している部位である。
【0054】
たわみ部53は、カラー部56の間で、且つ第1~第5切り起し部(541~545)がない領域に形成されている。
【0055】
たわみ部53を形成する目的は、フィン50上を流れる空気の軌道をたわみ部53で変動させ、空気の流れに乱れを生じさせて、伝熱管60の後方の死水域を低減することである。
【0056】
具体的には、
図5に示すように、空気流れFは、第2スリット552を通過した直後に、たわみ部53に沿った流れとなって第3スリット553に入る軌道となり、たわみ部53がない場合とは異なる流れとなる。これによって空気の流れに乱れが生じる。
【0057】
但し、たわみ部53の頂部と切り起し部54の頂部とが重なるほどに高くなると、スリット55を通過しようとする空気の流れを阻害することになるので、たわみ部53の高さ制限が必要となる。
【0058】
それゆえ、たわみ部53の頂部と切り起し部54の頂部とが重ならないように、たわみ部53の頂部の高さは、切り起し部54の高さの50%以下の寸法に設定されている。ここで、「たわみ部53の頂部の高さ」とは、フィン50が並ぶ方向の寸法であって、第1貫通孔51の中心と第2貫通孔52の中心とを結ぶ平面からの高さである。
【0059】
本実施形態では、たわみ部53の頂部の高さは、層状に並ぶフィン群5のフィン50同士の間隔(以下、「フィンピッチ」という。)の15%以上、30%以下の範囲であり、切り起し部54の高さの50%以下の寸法である。
【0060】
(4)たわみ部53の形成方法
たわみ部53は、伝熱管60の径を拡げて伝熱管60とフィン50とを密着させる拡管加工によって形成される。
【0061】
図6は、たわみ部53の形成過程を示す説明図である。
図6において、伝熱管60の内部に、伝熱管60の内径よりも所定寸法だけ大きい径を有する拡管ヘッドHが挿入される。このとき、伝熱管60の外径がR方向(径方向)に拡大し、伝熱管60がフィン50のカラー部56に密着する。
【0062】
そして、フィン50の長手方向に隣接するカラー部56間の最短距離であるLが、拡管前のLaから拡管後のLbまで圧縮され、その結果として、たわみ部53が形成される。このときの圧縮率Cpは、Cp=(La-Lb)/Laで算出される。
【0063】
図7は、圧縮率Cpとたわみ量Dとの関係を示すグラフである。
図7において、横軸は圧縮率Cp(%)、縦軸はたわみ量D(mm)を示している。
【0064】
たわみ部53のたわみ量は、前述の通り、空気の通り道であるスリット55を完全に閉塞しないように、フィンピッチの15%以上、30%以下の範囲に設定される。例えば、フィンピッチが1.60mmである場合、たわみ部53のたわみ量は、0.24mm~0.4mmの範囲である。この場合、圧縮率Cpは、0.8~4.7%の範囲に設定されればよい。
【0065】
(5)たわみ部53のたわみ量Dと死水域長さKとの関係
図8は、たわみ量Dと死水域長さKとの関係を管外径ごとに示したグラフである。
図8において、横軸はたわみ量D(mm)、縦軸は死水域長さK(mm)を示している。また、管外径φ5.3、φ6.5、φ7.6は、拡管後の管外径を示しており、拡管前はそれぞれ、φ5、φ6、φ7である。
【0066】
死水域長さKが長くなると室内ファン42と干渉して騒音となる。それゆえ、室内ファン42と室内熱交換器41とが最も接近している部分において、死水域が室内ファン42と干渉しないようにする必要がある。
【0067】
具体的には、
図2の楕円Eで囲まれた領域で発生する死水域の長さKを、当該領域のフィン50と室内ファン42との最短距離Mよりも小さくする必要がある。本実施形態では、当該最短距離Mは15mmである。また、本実施形態では、管外径7mmの伝熱管を使用しており、拡管後の管外径は7.6mmである。
【0068】
図8に示すように、管外径φ7.6では、死水域長さKが最短距離Mの15mm以下になるためには、たわみ量Dを0.25mm以上に設定する必要がある。
【0069】
逆に、たわみ量Dを0.25mm以上に設定することができない場合には、上記最短距離Mを15mmより長くすればよいが、実現性に鑑みれば最短距離Mは、15mm~30mmの範囲が望ましい。
【0070】
(6)特徴
(6-1)
室内熱交換器41では、フィン50の長手方向に隣接する第1貫通孔51と第2貫通孔52との間に、頂部の高さがフィンピッチの15%以上の寸法のたわみ部53が存在することによって、フィン50上で空気の流れに乱れが生じるので、伝熱管60後方の死水域が低減され、送風騒音が抑制される。
【0071】
(6-2)
室内熱交換器41では、たわみ部53が高くなりすぎると、切り起し部54に風が当たらなくなるので、たわみ部53の頂部の高さを切り起し部54の高さの50%以下の寸法に設定することによって、切り起し部54へ風が当たるようにしている。
【0072】
(6-3)
室内熱交換器41では、たわみ部53と切り起し部54とが重なると、切り起し部54に風が当たらなくなるので、たわみ部53の頂部と切り起し部54の頂部とが重ならないようにすることによって、切り起し部54へ風が当たるようにしている。
【0073】
(6-4)
室内熱交換器41では、たわみ部53が高くなりすぎると、切り起し部54に風が当たらなくなるので、たわみ部53の頂部の高さをフィンピッチの30%以下の寸法に設定することによって、切り起し部54へ風が当たるようにしている。
【0074】
(6-5)
室内熱交換器41では、たわみ部53が、伝熱管60の径を拡げて伝熱管60とフィン50とを密着させる拡管加工によって形成されるので、拡管と、たわみ部53の形成が同時に行える。
【0075】
(6-6)
室内熱交換器41では、フィン50と室内ファン42との最短距離が15mm~30mmの範囲内である。
【0076】
(6-7)
室内熱交換器41では、たわみ部53が、層状に並んだ前記フィン50のうち室内ファン42に近いフィン50に形成されている。これによって、死水域の増長を抑制する。
【0077】
(7)変形例
図9は、変形例に係るフィン50の部分平面図である。
図9において、上段には上記実施形態におけるフィン50の部分平面図を記載し、下段には本変形例におけるフィン50の部分平面図を記載している。
【0078】
上記実施形態では、空気流れFの下流側にある第1切り起し部541を空気流れFの上流側から視たとき、第1切り起し部541の両端は伝熱管60の下流域の域外へ距離Gだけ離れている。それゆえ、この距離Gの区間を空気が抜けることによって、死水域が増大する虞がある。
【0079】
一方、変形例では、空気流れFの下流側にある第1切り起し部541を空気流れFの上流側から視たとき、第1切り起し部541の両端は伝熱管60の下流域の域内へ距離Xだけ入り込んでいる。それゆえ、空気抜けを抑制して、伝熱管60の背面側に空気流を導き、死水域の増長を抑制する。
【0080】
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0081】
4 室内ユニット(空調室内ユニット)
41 室内熱交換器
42 室内ファン(ファン)
45f 吹出口
50 フィン
51 第1貫通孔(第1孔)
52 第2貫通孔(第2孔)
53 たわみ部
54 切り起し部
55 スリット
60 伝熱管
541 第1切り起し部(切り起し部)
542 第2切り起し部(切り起し部)
543 第3切り起し部(切り起し部)
544 第4切り起し部(切り起し部)
545 第5切り起し部(切り起し部)
552 第2スリット(スリット)
553 第3スリット(スリット)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0082】